JP2003080353A - 溶融金属の鋳造方法 - Google Patents

溶融金属の鋳造方法

Info

Publication number
JP2003080353A
JP2003080353A JP2002255933A JP2002255933A JP2003080353A JP 2003080353 A JP2003080353 A JP 2003080353A JP 2002255933 A JP2002255933 A JP 2002255933A JP 2002255933 A JP2002255933 A JP 2002255933A JP 2003080353 A JP2003080353 A JP 2003080353A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
molten metal
mold
casting
electromagnetic
acceleration
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2002255933A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3704329B2 (ja
Inventor
Katsuhiro Sasai
勝浩 笹井
Takehiko Fuji
健彦 藤
Hiroshi Harada
寛 原田
Eiichi Takeuchi
栄一 竹内
Hajime Hasegawa
一 長谷川
Keisuke Fujisaki
敬介 藤崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2002255933A priority Critical patent/JP3704329B2/ja
Publication of JP2003080353A publication Critical patent/JP2003080353A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3704329B2 publication Critical patent/JP3704329B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Continuous Casting (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 パウダー巻き込みに起因する表面欠陥を発生
させることなく、等軸晶率を向上させると共に、等軸晶
自体をさらに微細化できる移動磁界により振動を付与
し、凝固の不安定性を抑制し、鋳片表面性状改善を安定
して得る連続鋳造方法を提供する。 【解決手段】 鋳型近傍に設けた電磁コイルにより、鋳
型内に注入した溶融金属に電磁力を印加しながら溶融金
属を凝固させる溶融金属の鋳造方法において、鋳型内の
溶融金属プールの近傍に電磁コイルを設置し、該電磁コ
イルによって発生する移動磁界により、鋳型内で凝固を
完了させる過程、または、鋳型内で冷却・凝固し下方に
引抜く過程における凝固前面の溶融金属に、大加速度と
小加速度を交互に付与し、溶融金属を振動させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶鋼を、電磁コイ
ルにより振動を付与して鋳造する溶融金属の鋳造方法に
関する。特に、鋳型内で溶融金属が凝固する際、発生す
る溶融金属中の気体やパウダーの巻き込み、および、温
度が不均一であることによる表面割れの発生を防止し、
さらに、内部組織をより微細化する溶融金属の鋳造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、鋼の連続鋳造において、凝固組
織を等軸晶化し、凝固時の溶質偏析を軽減する方法とし
て電磁攪拌が広く利用されている(例えば、特開昭50
−23338号公報)。電磁攪拌は、凝固界面近傍に強
制的に溶鋼流動を与え、柱状デンドライトを分断するこ
とにより等軸晶組織を得ようとするものであり、等軸晶
率を高めるための電磁攪拌条件が種々検討され、偏析低
減にある程度の効果を発揮している。
【0003】しかしながら、従来の鋳型内電磁攪拌で
は、等軸晶が生成し難い鋼種(例えば、C濃度が0.1
%以下の鋼種)で品質を満足できる等軸晶率が必ずしも
得られていない。このような難等軸晶化の鋼種で、等軸
晶率を向上させるには鋳型内電磁攪拌の推力を上げるこ
とが考えられるが、鋳型内の溶鋼表面流速が速くなり、
溶鋼表面を被覆しているパウダーを巻き込むため、表面
欠陥が発生するといった問題も生じる。
【0004】また、偏析厳格材の中には等軸晶率を高め
るだけでは品質要求レベルを満足しないものもあり、こ
のような鋼種の場合等軸晶の粒径自体をさらに微細化す
る必要がある。
【0005】従来、交流静止磁界により、電流を流す−
流さないのオン−オフのパルス波を付与して、鋳型壁側
中心に向かう電磁力を発生させ、表面性状に対する潤滑
効果および軟接触効果を得ることについて報告されてい
る(例えばUSP5722480)が、電流を常に流し
ているものではなく、かつ、振動波の加速度を制御する
ものではない。
【0006】また、特開平9−182941号には、下
降流の発達を抑制し、介在物の下部への拡散を防止する
ために、電磁攪拌の攪拌方向を周期的に反転させる方法
が開示されている。しかし、この技術においても移動磁
界により凝固前面に振動波を付与するものではない。ま
た、加速度を制御して凝固組織の微細化および介在物の
清浄化をはかり、さらにメニスカスの安定化をはかるも
のではない。
【0007】その他、特開昭64−71557号には、
溶融物を水平面内で回転させる磁界を発生する電磁コイ
ルを、静止状態で存続させるために交番させるものが開
示されているが、これは、メニスカス流速が零のもので
ある。
【0008】また、特公平3−44858号では、鋳片
のV偏析やポロシティを防止するために、鋳片引き抜き
方向に直角な平面内で循環流を生じさせる電磁攪拌にお
いて、攪拌方向を10〜30秒のサイクルで反転させな
がら攪拌する方法、特開昭54−125132号では、
ステンレス鋼のリジングを防止するため鋳造温度を規定
した上で、電磁攪拌による鋳片の正・負偏析を防止する
ため、電磁攪拌において2つの位相の異なる電流値の比
を規定し、電流の通電方向を切り換え、一定方向への通
電時間を5〜50秒とした方法が開示されている。
【0009】さらに、特開昭60−102263号に
は、厚肉9%Ni低温用鋳鋼の鋳造欠陥を防止するため
に、電磁攪拌の交番時間を10〜30秒として方法が開
示されている。
【0010】これら技術は比較的遅い周期での交番撹拌
であり、移動磁界により凝固前面に振動波を付与し、そ
の振動波の加速度を制御する技術とは全く異なってい
る。
【0011】そこで、上記の課題を解決し、さらに凝固
組織を微細化にしてかつ介在物の洗浄効果をも発揮し
て、その上でメニスカスの安定化を可能とする技術開発
が望まれている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来
の鋳型内電磁攪拌におけるこれらの問題点を解決するた
め、パウダー巻き込みに起因する表面欠陥を発生させる
ことなく、等軸晶率を向上させると共に、等軸晶自体を
さらに微細化できる移動磁界により振動を付与する連続
鋳造方法を提供することである。
【0013】また、本発明の他の目的は、上記のような
電磁力印加による鋳造方法の問題点を解消し、凝固の不
安定性を抑制し、鋳片表面性状改善を安定して得ること
ができる連続鋳造方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の要旨は、次のとおりである。
【0015】(1) 鋳型近傍に設けた電磁コイルによ
り、鋳型内に注入した溶融金属に電磁力を印加しながら
溶融金属を凝固させる溶融金属の鋳造方法において、鋳
型内の溶融金属プールの近傍に電磁コイルを設置し、該
電磁コイルによって発生する移動磁界により、鋳型内で
凝固を完了させる過程、または、鋳型内で冷却・凝固し
下方に引抜く過程における凝固前面の溶融金属に、大加
速度と小加速度を交互に付与し、溶融金属を振動させる
ことを特徴とする溶融金属の鋳造方法。
【0016】(2) 鋳型近傍に設けた電磁コイルによ
り、鋳型内に注入した溶融金属に電磁力を印加しながら
溶融金属を凝固させる溶融金属の鋳造方法において、鋳
型内の溶融金属プールの近傍に電磁コイルを設置し、該
電磁コイルによって発生する移動磁界により、鋳型内で
凝固を完了させる過程、または、鋳型内で冷却・凝固し
下方に引抜く過程における凝固前面の溶融金属に、大加
速度と小加速度を交互に付与し、溶融金属を周期的に振
動させることを特徴とする溶融金属の鋳造方法。
【0017】(3) 鋳型近傍に設けた電磁コイルによ
り、鋳型内に注入した溶融金属に電磁力を印加しながら
溶融金属を凝固させる溶融金属の鋳造方法において、鋳
型内の溶融金属プールの近傍に電磁コイルを設置し、該
電磁コイルによって発生する移動磁界により、鋳型内で
凝固を完了させる過程、または、鋳型内で冷却・凝固し
下方に引抜く過程における凝固前面の溶融金属に、大加
速度での加速と小加速度での加速を行い、該大加速度と
該小加速度との方向ベクトルの向きを同一または反対の
ものを組み合せて、溶融金属の流速が所定の流速を越え
ない範囲内で付与し、溶融金属を振動させることを特徴
とする溶融金属の鋳造方法。
【0018】(4) 鋳型近傍に設けた電磁コイルによ
り、鋳型内に注入した溶融金属に電磁力を印加しながら
溶融金属を凝固させる溶融金属の鋳造方法において、鋳
型内の溶融金属プールの近傍に電磁コイルを設置し、該
電磁コイルによって発生する移動磁界により、鋳型内で
凝固を完了させる過程、または、鋳型内で冷却・凝固し
下方に引抜く過程における凝固前面の溶融金属に、順逆
方向の加速度を付与し、溶融金属を周期的に振動させる
ことを特徴とする溶融金属の鋳造方法。
【0019】(5) 前記(1)〜(4)のいずれかに
記載の溶融金属の鋳造方法において、鋳型内で冷却・凝
固し下方に引抜く過程が、スラブ、ブルーム、中厚スラ
ブ、または、ビレットを連続鋳造する過程であることを
特徴とする溶融金属の鋳造方法。
【0020】(6) 前記(1)〜(5)のいずれかに
記載の溶融金属の鋳造方法において、順方向の加速の間
および逆方向の加速の間に、0.3秒以下0.03秒以
上の加速停止時間または電源停止時間を設けることを特
徴とする溶融金属の鋳造方法。
【0021】(7) 前記(1)〜(6)のいずれかに
記載の溶融金属の鋳造方法において、溶融金属を周期的
に振動させるとともに、順方向または逆方向に旋回させ
ることを特徴とする溶融金属の鋳造方法。
【0022】(8) 前記(1)〜(7)のいずれかに
記載の溶融金属の鋳造方法において、溶融金属を周期的
に振動させるとともに、周波数100Hz以上30KHz以
下の短周期の振動を付加することを特徴とする溶融金属
の鋳造方法。
【0023】(9) 前記(1)〜(8)のいずれかに
記載の溶融金属の鋳造方法を実施する電磁コイル設備で
あって、溶融金属を順逆方向に周期的に振動させる電磁
駆動装置、該電磁駆動装置へ通電する通電装置、およ
び、該通電を制御する通電制御装置からなることを特徴
とする電磁コイル設備。
【0024】(10) 前記(1)〜(8)のいずれか
に記載の溶融金属の鋳造方法を実施する電磁コイル設備
であって、電磁コイル、および、該電磁コイルに、溶融
金属を順逆方向に周期的に振動させる電流を通電する電
源装置または波形発生装置からなることを特徴とする電
磁コイル設備。
【0025】(11) 前記(1)〜(8)のいずれか
に記載の溶融金属の鋳造方法を実施する電磁コイル設備
であって、溶融金属を順逆方向に周期的に振動させると
ともに、振動方向の変換時に速やかに指令値に立ち上げ
る機能を有する電磁駆動装置、該電磁駆動装置へ通電す
る通電装置、および、該通電を制御する通電制御装置か
らなることを特徴とする電磁コイル設備。
【0026】(12) 前記(1)〜(8)のいずれか
に記載の溶融金属の鋳造方法を実施する電磁コイル設備
であって、電磁駆動装置、該電磁駆動装置へ通電する通
電装置、該通電を制御する通電制御装置、および、電磁
ブレーキからなることを特徴とする電磁コイル設備。
【0027】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の電磁コイルにお
ける、電磁力印加した時の鋳型内での溶融金属の旋回状
況を示す図である。なお、この図の符号1は電磁コイ
ル、2は長辺側側壁、3は短辺側側壁、4は浸漬ノズル
である。
【0028】本発明の第1の特徴は、鋳型の電磁コイル
によって、移動磁界を発生して、旋回させるものではな
く、移動磁界による振動として、溶鋼流動に順逆方向に
加速度を付与し、凝固前面を行き来させるものである。
さらには、この振動波の加速度を制御するものである。
【0029】また、連続鋳造だけでなく、固定鋳型の鋼
塊プロセスに対しても適用されるものである。電磁コイ
ルとして、リニアモーターを用いるが、移動磁界を発生
させるものであればよく、必ずしも直線状に移動磁界を
発生する必要はなく、例えば、回転磁界を発生するもの
でもよく、正逆方向に振動を付与できるものであればよ
い。
【0030】本発明の第2の特徴は、上記の振動では、
リニアモーターでの正逆転時の負荷を大きくして連続通
電することによって、電流の立ち上がりが遅かったもの
を、電流の立ち上がりを速くした。
【0031】そのため、電磁力の立ち上がりが速くな
り、その結果、溶融金属に付与される振動の加速度を広
範囲で制御することができる。
【0032】本発明は、以上の特徴に基づき、従来の電
磁攪拌による旋回に代わって、移動磁界による振動波
を、加速度を制御しつつ凝固前面に付与することによっ
て、柱状の分断力を向上させ凝固組織の微細化を促進
し、同時に介在物の洗浄効果を向上させた上で、メニス
カスの変化、例えば、メニスカスの形状の乱れに及ぼす
影響をできるだけ抑制するものであり、これによって鋳
片の内部品質および表層品質を格段に向上させることが
できる。
【0033】本発明者らは、連続鋳造における従来の電
磁撹拌の流速が、一般に20〜100cm/s程度であ
り、これらの流速範囲で電磁撹拌による等軸晶生成の機
構を詳細に検討した。
【0034】その結果、電磁撹拌は柱状デンドライトを
流れの上流側に傾ける効果を有するものの、従来から言
われている柱状デンドライトを分断する効果は比較的小
さく、むしろ電磁攪拌により凝固シェルと溶鋼間の熱伝
達が促進され、溶鋼過熱度が低下することにより、凝固
核の生成を容易にしていることを明らかにした。
【0035】本発明者らは、これらの知見を基に、従来
の電磁攪拌が持っている溶鋼過熱度の低減効果を損なう
ことなく、柱状デンドライトの分断効果を従来と比べて
飛躍的に高める方法についてさらに実験的研究を重ね、
図2(a)に示すように、電磁コイルの電流を周期的に
変動させ、凝固前面を行き来させる振動波を付与するこ
とが極めて有効であること、これにより等軸晶率を向上
させるだけでなく、等軸晶の粒径自体も微細化できるこ
とを見いだした。
【0036】電磁コイルの電流を、図2(a)のパター
ンで変動させると、これに対応して凝固前面の振動流速
は、図2(b)のように、若干なまりながら追従する。
【0037】凝固前面の振動流速が一定であるt2また
はt4の領域では、振動流による柱状デンドライトの分
断効果は小さいが、順方向の加速領域t1および逆方向
の加速領域t3では、凝固前面の振動流に加速度が生じ
ており、一定速度の旋回流に比べて、非常に大きな力を
柱状デンドライトに作用させることができる。
【0038】この効果により、柱状デンドライトの分断
効果を飛躍的に高めることが可能である。しかも、t2
の領域で凝固前面における振動流速を従来と同等にすれ
ば、凝固シェルと溶鋼間の熱伝達促進による溶鋼過熱度
の低減効果も損なわれることがない。
【0039】加速領域(t1とt3)では、柱状デンド
ライトを分断するに十分な力が凝固前面に作用すること
から、本発明は、凝固前面への介在物捕捉を抑制する洗
浄効果をも向上させることができる。
【0040】このため、従来は凝固速度の速い鋳片表層
部で多くの介在物が捕捉され、清浄度が低下していた
が、本発明により鋳造した鋳片では、表層20mm以内
の平均全酸素濃度を鋳片内部の平均全酸素濃度よりも低
くすることが可能である。
【0041】また、従来の電磁攪拌による旋回流では、
メニスカスの乱れや、等軸晶率を向上させるために旋回
流速を上げると、パウダーの巻き込みが生じたり、鋳型
短辺側側壁に衝突して強い下降流を連続的に引き起こす
ことになるが、凝固前面を行ったり来たりさせる振動波
であれば、メニスカスの乱れやパウダー巻き込み、下降
流の影響をも抑制でき、安定した鋳造が可能である。
【0042】加えて、振動波に旋回流を重ね合わせるこ
とにより、メニスカス形状を安定させながら、介在物の
洗浄や核生成をさらに促進することも可能である。
【0043】従来の電磁攪拌では、広範囲の領域にわた
って溶質元素の負偏析帯を発生させるため、材質が確保
できないといった問題を生ずる。しかし、本発明の凝固
前面を行ったり来たりする振動波であれば、非常に薄い
負偏析が多層状に生成するため、負偏析帯が分散され、
凝固組織微細化および負偏析防止を同時に達成すること
ができる。
【0044】さらに、この多層状の薄い負偏析帯は、図
8(a)、図8(b)および図9に示すように、振動の
周期に対応して、鋳片表層からほぼ同じ距離に鋳片外周
に沿って均一に生成しており、鋳片表層における割れの
進展防止、粒界酸化の抑制等の機能を有している。
【0045】併せて、層状の負偏析帯の間にある正偏析
帯の柱状晶(デンドライト)は、各正偏析帯毎にその成
長方向を交互に反転させており、一方向に柱状晶が成長
した鋳片に比べて、より割れ発生に強い凝固組織になっ
ていると言える。
【0046】このため、本発明の鋳造方法により、表層
を高機能化させた鋳片を製造することも可能である。
【0047】次に、加速時間係数について説明する。液
体状態における質点を考えると、その質点運動について
も、動力学の法則から「一定時間の質点の運動量に関し
て、その変化は作用する力の時間の力積に等しい」こと
になり、振動状態での作用力の変化に適用することが考
えられる。
【0048】すなわち、本発明で加速時間係数とした
(加速度×加速時間)は、振動のパラメータとして、振
動状態の緩急を表現するものとして力積もしくは作用力
の変化の程度を示すことができる。
【0049】このことから、加速時間係数を振動状態の
パラメータとして、溶融状態での振動の保持時間(t
2、t4)、加速度付与時間(t1、t3)を調整する
ことによって、振動の緩急を制御することが可能とな
る。
【0050】本発明における凝固前面を行ったり来たり
する振動には、効果を安定して得るための適正周期が存
在する。この適正周期の上限値および下限値の考え方は
以下のとおりである。
【0051】鋳片の周方向に均一に加速度を与えるため
には、凝固前面の境界層が剥離しない時間で、加速方向
を反転させる必要がある。この時間を実験により求める
と、5秒未満であり、1周期の振動時間(以下、振動周
期と称する)は、10秒未満となる。
【0052】一方、鋳片の鋳造方向に対して振動の効果
を発現させるためには、鋳片が電磁コイルのコア部分を
通過する間に最低1周期の振動を付与する必要がある。
この時の振動周期はコア長さ/鋳造速度以下となる。
【0053】よって、振動周期の上限値は、鋳片周方向
と鋳造方向の両安定性を確保するための条件から決定さ
れ、上述の両周期の内で小さい方の周期となる。
【0054】また、本発明において、振動時に凝固前面
の溶鋼を加速する条件は、(振動周期)≧2/(電磁コ
イルの周波数)となる。移動磁界を発生させる電磁コイ
ルの周波数としては、高いものでも10Hz程度である
から、振動周期の下限値は、0.2秒以上となる。
【0055】なお、本発明では、基準点の変位の時間微
分を流速として、流速の時間微分を加速度としている。
加速度は振動流速が零の時点の流速の時間微分、もしく
は、加速領域t1またはt3から計算される(最大振動
流速−最小振動流速)/t1、または、(最大振動流速
−最小振動流速)/t3、であってもよい。
【0056】ここで、基準点とは、鋳型長辺側の辺中
心、あるいは、1/4幅で凝固前面から前方20mmの位
置である。
【0057】そして、加速時間係数の加速時間は、加速
領域t1まではt3で規定される時間t1またはt3で
ある。さらに、前記加速度に時間を乗じて、全時間につ
いて積分したものを、時間当たりで平均化して、これを
流速の平均速度として表示したものが平均(旋回)流速
である。
【0058】また、図2において、加速領域(t1,t
3)が大加速時間であり、加速度の絶対値が小さい(t
2,t4)領域が小加速時間となる。
【0059】次に、本発明で製造される鋳片について説
明する。鋳片の第1の特徴は、ピッチ2mm以下で3層
以上の多層構造からなる負偏析帯を有していること、お
よび、前記負偏析帯の厚みが30mm以下であることで
ある。
【0060】この負偏析帯については、図8(a)およ
び図9に示すように、鋳片のコーナーに対して負偏析帯
のコーナーが鮮明になっている場合と、図8(b)に示
すように、鋳片のコーナーに対して負偏析帯のコーナー
が不鮮明になっている場合がある。
【0061】先ず、図8(a)の場合には、多層構造の
負偏析帯の平均的プロフィルの負偏析帯の中央負偏析線
(m)のコーナー点(C)を決定し、当該コーナー点か
ら鋳片内部に5mm離れて隣り合う2辺上の点(E)か
ら隣り合う2辺に平行線を引き、前記負偏析線(m)と
の交点(F)におけるシェル厚みD1と、鋳片幅方向中
央点におけるシェル厚みD2との差を、3mm以下に規
定する。
【0062】図8(b)の場合には、円弧状の負偏析帯
の中央負偏析線(m)の隣り合う2辺から外挿した仮想
コーナー点(C')を決定し、当該コーナー点から鋳片
内部に5mm離れて隣り合う2辺上の点(E)から隣り
合う2辺に平行線を引き、中央負偏析線(m)との交点
(F)におけるシェル厚みD1と、鋳片幅方向中央点に
おけるシェル厚みD2との差を、3mm以下に規定す
る。
【0063】同様に、偏向構造のデンドライトまたは結
晶組織帯の平均的プロフィルのデンドライトまたは結晶
組織帯の中央線のコーナー点、または、円弧状のデンド
ライトまたは結晶組織帯の中央線の隣り合う2辺から外
挿した仮想コーナー点を決定して、前記と同様に規定す
る。
【0064】一方、円形鋳片に対しては、多層構造の負
偏析帯、偏向構造のデンドライトまたは結晶組織帯の平
均的プロフィルの該負偏析帯の中央負偏析線(m)上の
点におけるシェル厚みのバラツキを、3mm以下に規定
する。
【0065】さらに、より具体的には、多層構造の負偏
析帯、偏向構造のデンドライトまたは結晶組織帯を規定
している。
【0066】すなわち、負偏析帯、偏向構造のデンドラ
イトまたは結晶組織帯について、図7に示す位置関係を
基に、下記(1)式で定義される凝固シェル厚みD(m
m)から決まる鋳造方向のコア中心位置における凝固シ
ェル厚みD0(mm)に対して、厚み方向にD0±15m
mの範囲内で、下記(2)式で定義されるピッチPを有
し鋳型内周方向に多層構造からなる負偏析帯、偏向構造
のデンドライトまたは結晶組織帯を形成することを規定
している。
【0067】 D=k(L/V)n −−−(1) ただし、D:凝固シェル厚み L:メニスカスから電磁コイルのコア中心までの長さ V:鋳造速度 k:凝固係数 n:定数(0.5〜1.0) P=U×t/2 −−−(2) ただし、U:凝固速度(dD/dt(mm/s)) t:振動周期 なお、本発明では、設置位置は鋳型内に限られたもので
はなく、原理的に連続鋳造機内で未凝固溶鋼が存在する
領域であれば、どの位置でも適用可能である。
【0068】本発明における溶融金属は、特に、特定の
溶融金属に限定されるものではないが、ここでは、鋼を
中心として、以下、実施例によってさらに説明する。
【0069】
【実施例】(実施例1)本実施例において、等軸晶率と
等軸晶粒径を及ぼす電磁コイルに基づく振動パターンの
影響を定量的に明らかにする目的で、周波数10Hzの
電磁コイルを配置した鋳型への溶鋼注入実験を行った。
【0070】0.35%Cを含有する溶鋼50kgを高周
波溶解炉で溶解し、温度1600℃で、横200mm、縦
100mm、高さ300mmの銅製鋳型に注入した。注入
後、直ちに、所定の振動パターンで、鋳型内の溶鋼を振
動させながら凝固させた。
【0071】鋳造後の鋼塊は横断面で切断し、凝固組織
を顕出した後、等軸晶域の面積率(等軸晶面積率)と等
軸晶の円相当径を評価した。
【0072】振動パターンは、図2で、電磁コイルの電
流を最大100アンペア、最小−100アンペアとし、
順方向の加速度付与時間であるコイル電流増加時間t
1、逆方向の加速度付与時間であるコイル電流減少時間
t3、最小コイル電流保持時間t4を、所定の値に設定
することにより変化させた。
【0073】コイル電流の変動周期(t1+t2+t3
+t4)と等軸晶面積率の関係を、図3に示す。等軸晶
面積率は振動周期を減少することにより大きくなるが、
振動周期が0.2秒より短くなると急激に減少する。こ
れは、コイル電流の周期が減少すると凝固前面の振動流
速がそれに追従できなくなるためである。
【0074】図4に、電磁コイル電流の周期と等軸晶の
円相当径の関係を示す。凝固前面における加速度の絶対
値(逆方向の加速領域では、−10cm/s2となるた
め)が10cm/s2未満では、等軸晶の円相当径が振動
周期に依存せず、等軸晶の微細化効果が得られていない
が、凝固前面における加速度の絶対値が10cm/s2
上になると、振動周期が10秒未満で等軸晶が微細化す
ることが分かる。
【0075】上記以外で微細効果が得られない理由は、
凝固前面における振動流速の加速度が10cm/s2未満
では、柱状デンドライトに働く力が小さいため微細化効
果が得られず、また振動周期が10秒以上になる凝固前
面で境界層の剥離が生じ、柱状デンドライトに加速度に
よる分断力か働き難くなるためである。この点から、等
軸晶を微細化する振動条件は、等軸晶率を向上する条件
に比べて厳しいことが分かる。
【0076】この結果、等軸晶率を向上させ、かつ等軸
晶粒径を微細化するためには、電磁コイル電流の周期を
0.2秒以上10秒未満にすると共に、凝固前面におけ
る加速度の絶対値を10cm/s2以上にすればよいこと
がわかる。
【0077】なお、本発明の加速度については、溶湯中
のC量によってその効果が異なり、C≦0.1%では3
0〜300cm/s2、0.1%≦C≦0.35%では、
{80[C]+38}〜300cm/s2、0.35%≦
C≦0.5%では、{133.3[C]−36.7}〜
300cm/s2、0.5%≦Cでは、30〜300cm/
2に限定する。なお、ここで上限を付与しているの
は、これを超える条件については実験で確認していない
からである。
【0078】これは、等軸晶率とC量の関係に着目し実
験により知見したものである。
【0079】(実施例2)本実施例では、2ストランド
のビレット連続鋳造機を用いて、120mm角、炭素濃度
0.35%の炭素鋼鋳片を鋳造速度1.2m/min で3
0分間鋳造した。タンディッシュ内の溶鋼温度は153
0℃である。
【0080】一方のストランドでは、電磁撹拌装置のコ
イル電流を200アンペア一定、周波数10Hzとした従
来の電磁撹拌により、60cm/sの流速で、30分間撹
拌した。
【0081】他方のストランドでは、本発明の振動を付
与できる電磁コイルを鋳型内に設置し、コイル電流の1
周期の振動時間を2s(最大コイル電流200アンペ
ア、最小コイル電流−200アンペア、コイル電流増加
時間0.8s、コイル電流減少時間0.8s、最大コイ
ル電流保持時間0.2s、最小コイル電流保持時間0.
2s)、順・逆方向の加速度を50cm/s2の条件(第
2図参照)で、凝固前面の溶鋼を振動させた。
【0082】鋳片の横断面を切断し、凝固組織を顕出し
た後、等軸晶面積率および等軸晶円相当径を評価した。
【0083】また、鋳片の表層品質については、鋳造後
の鋳片を検査ラインで目視観察し、1鋳片当たりに発生
したパウダー系欠陥の個数を調査した。
【0084】従来の電磁撹拌を実施した鋳片の等軸晶率
は30%、等軸晶の円相当径は3.0mmであった。ま
た、溶鋼の流速は60cm/sとなりパウダー巻き込みの
限界流速を越えたため、溶鋼表面のパウダーを巻き込
み、パウダー系欠陥が5個/鋳片発生した。さらに、鋳
片横断面の表層側に20mm幅程度の負偏析帯も形成され
ていた。
【0085】一方、本発明の電磁コイルにより振動を付
与した場合には、鋳片の等軸晶面積率は50%、等軸晶
の円相当径は1.3mmであり、従来の電磁撹拌に比べて
等軸晶面積率が向上しているだけでなく、等軸晶の粒径
も微細化していた。
【0086】さらに、鋳型内の凝固前面の溶鋼を振動さ
せたため、パウダー巻き込みは起こらず、パウダー系欠
陥も発生しなかった。鋳片横断面にはピッチ1.5mmで
表層15mmに多層状の負偏析帯および多層状の偏向構造
のデンドライトが形成されていた。
【0087】(実施例3)本実施例では、2ストランド
の連続鋳造機を用いて、厚み250mm×幅1500mm、
炭素濃度0.35%の炭素鋼鋳片を鋳造速度1.8m/
min で30分間鋳造した。タンディッシュ内の溶鋼温度
は1550℃である。
【0088】一方のストランドでは、電磁撹拌装置のコ
イル電流を500アンペア一定、周波数2Hzとした従来
の電磁撹拌により、60cm/sの流速で30分間撹拌し
た。
【0089】他方のストランドでは、本発明の振動を付
与できる電磁コイルを鋳型内に設置し、鋳造前半の15
分間はコイル電流の1周期の振動時間を2s(最大コイ
ル電流400アンペア、最小コイル電流−400アンペ
ア、コイル電流増加時間0.8s、コイル電流減少時間
0.8s、最大コイル電流保持時間0.2s、最小電流
保持時間0.2s)、順逆方向の加速度を70cm/s2
の条件(図2、参照)で、鋳造後半の15分間はコイル
電流の1周期の振動時間を2.1s(最大コイル電流4
00アンペア、最小コイル電流−400アンペア、コイ
ル電流増加時間0.8s、コイル電流減少時間0.8
s、最大コイル電流保持時間0.2s、最小電流保持時
間0.2s、順方向の加速の間および逆方向の加速の間
に加速停止時間を0.05s)、順逆方向の加速度を5
0cm/s2の条件(図5、参照)で、凝固前面の溶鋼を
振動させた。
【0090】鋳片の横断面を切断し、凝固組織を顕出し
た後、等軸晶面積率および等軸晶円相当径を評価した。
【0091】また、鋳片の表層品質については、鋳造後
の鋳片を検査ラインで目視観察し、1スラブ当たりに発
生したパウダー系欠陥の個数を調査した。加えて、鋳片
表面のオシレーションマークはメニスカスの形状と対応
するため、オシレーションマークの高低差も同時に調査
した。
【0092】従来の電磁撹拌を実施した鋳片の等軸晶率
は30%、等軸晶の円相当径は3.0mmであった。ま
た、溶鋼の流速は60cm/sとなりパウダー巻き込みの
限界流速を越えたため、溶鋼表面のパウダーを巻き込
み、パウダー系欠陥が5個/スラブ発生した。
【0093】さらに、メニスカスの乱れが大きいため、
オシレーションマークの高低差は35mmにも達してい
た。さらに、鋳片横断面の表層側に20mm幅程度の負
偏析帯も形成されていた。
【0094】一方、本発明の電磁コイルにより振動を付
与した場合には、加速停止時間の有り無しに関わらず、
鋳片の等軸晶面積率は50%、等軸晶の円相当径は1.
3mmであり、従来の電磁撹拌に比べて等軸晶面積率が向
上しているだけでなく、等軸晶の粒径も微細化してい
た。さらに、鋳型内の凝固前面の溶鋼を振動させたた
め、パウダー巻き込みは起こらず、パウダー系欠陥も発
生しなかった。
【0095】鋳片横断面には、振動の周期に応じたピッ
チ1.5mmで表層15mmに多層状の負偏析帯および偏
向構造のデンドライトが形成されていた。オシレーショ
ンマークについては、加速停止時間を設けなかった鋳片
で5mm、加速停止時間を設けた鋳片で3mmとなってお
り、何れも従来の電磁撹拌に比べてメニスカスの形状は
均一化しているが、加速停止時間を設けた方が、よりメ
ニスカスの均一化は良好であった。これは、加速停止時
間を設けることで、急加速が緩和され、よりメニスカス
の均一化が達成されたためである。
【0096】なお、本発明で、加速停止時間を0.3秒
以下0.03秒以上としたのは、加速停止時間を0.3
秒超にすると、加速の効果が低下し、加速停止時間を
0.03秒未満にすると、メニスカスの均一化効果が現
れないためである。
【0097】(実施例4)本実施例では、2ストランド
の連続鋳造機を用いて、厚み250mm×幅1500mm、
炭素濃度0.35%の炭素鋼鋳片を、鋳造速度1.8m
/minで30分間鋳造した。タンディッシュ内の溶鋼温
度は1550℃である。
【0098】一方のストランドでは、電磁撹拌装置のコ
イル電流を500アンペア一定、周波数2Hzとした従来
の電磁撹拌により、60cm/sの流速で30分間撹拌し
た。
【0099】他方のストランドでは、本発明の振動を付
与できる電磁コイルを鋳型内に設置し、コイル電流の1
周期の振動時間を2s(最大コイル電流400アンペ
ア、最小コイル電流−400アンペア、コイル電流増加
時間0.4s、コイル電流減少時間0.8s、最大コイ
ル電流保持時間0.3s、最小電流保持時間0.5
s)、順方向の加速度を100cm/s2、逆方向の加速
度を50cm/s2条件(図6、参照)で、凝固前面の溶
鋼を振動させた。鋳片の横断面を切断し、凝固組織を顕
出した後、等軸晶面積率および等軸晶円相当径を評価し
た。
【0100】また、鋳片の表層品質については、鋳造後
の鋳片を検査ラインで目視観察し、1スラブ当たりに発
生したパウダー系欠陥の個数を調査した。加えて、鋳片
表層の介在物個数を顕微鏡観察した。
【0101】従来の電磁撹拌を実施した鋳片の等軸晶率
は28%、等軸晶の円相当径は3.1mmであった。ま
た、溶鋼の流速は60cm/sとなりパウダー巻き込みの
限界流速を越えたため、溶鋼表面のパウダーを巻き込
み、パウダー系欠陥が6個/スラブ発生した。さらに、
鋳片横断面の表層側に20mm幅程度の負偏析帯も形成
されていた。
【0102】一方、本発明の電磁コイルにより振動と順
・逆方向の時間差に基づく旋回流を付与した場合には、
鋳片の等軸晶面積率は55%、等軸晶の円相当径は1.
3mmであり、従来の電磁撹拌に比べて等軸晶面積率が向
上しているだけでなく、等軸晶の粒径も微細化してい
た。さらに、鋳型内の凝固前面の溶鋼を振動させたた
め、パウダー巻き込みは起こらず、パウダー系欠陥も発
生しなかった。
【0103】鋳片横断面には振動の周期に応じたピッチ
1.5mmで表層15mmに多層状の負偏析帯および偏向構
造のデンドライトが形成されていた。また、電磁コイル
により振動と旋回流を同時に付与することにより、柱状
デンドライトの分断効果がさらに増加し、実施例3の振
動のみを加えた場合より等軸晶率が増加した。
【0104】なお、振動に旋回流速を付与する場合、振
動によるパウダー巻き込みの抑制効果が得られるが、そ
れでも旋回流速が1m/sを越えるとパウダーの巻き込
みが生じるため、旋回流速は1m/s以下に限定した。
【0105】(実施例5)本実施例では、2ストランド
の連続鋳造機を用いて、厚み250mm×幅1500mm、
炭素濃度0.35%の炭素鋼鋳片を、鋳造速度1.8m
/minで30分間鋳造した。タンディッシュ内の溶鋼温
度は1550℃である。
【0106】一方のストランドでは、電磁撹拌装置のコ
イル電流を500アンペア一定、周波数2Hzとした従来
の電磁撹拌により、60cm/sの流速で30分間撹拌し
た。
【0107】他方のストランドでは、本発明の振動を付
与できる電磁コイルを鋳型内に設置し、コイル電流の1
周期の振動時間を2s(最大コイル電流400アンペ
ア、最小コイル電流−400アンペア、コイル電流増加
時間0.8s、コイル電流減少時間0.8s、最大コイ
ル電流保持時間0.2s、最小電流保持時間0.2
s)、順逆方向の加速度を50cm/s2の条件(図2、
参照)で、凝固前面の溶鋼を振動させつつ、さらにメニ
スカスから1m下の位置に設けた電磁ブレーキにより静
磁界で磁界強度3000ガウスを印加した。
【0108】鋳片の横断面を切断し、凝固組織を顕出し
た後、等軸晶面積率および等軸晶円相当径を評価した。
また、鋳片の表層品質については、鋳造後の鋳片を検査
ラインで目視観察し、1スラブ当たりに発生したパウダ
ー系欠陥の個数を調査した。
【0109】従来の電磁撹拌を実施した鋳片の等軸晶率
は31%、等軸晶の円相当径は2.9mmであった。ま
た、溶鋼の流速は60cm/sとなりパウダー巻き込みの
限界流速を越えたため、溶鋼表面のパウダーを巻き込
み、パウダー系欠陥が4個/スラブ発生した。さらに、
鋳片横断面の表層側に20mm幅程度の負偏析帯も形成
されていた。
【0110】一方、本発明の電磁コイルにより振動を付
与し、且つ電磁ブレーキを印加した場合には、鋳片の等
軸晶面積率は56%、等軸晶の円相当径は1.3mmであ
り、従来の電磁撹拌に比べて等軸晶面積率が向上してい
るだけでなく、等軸晶の粒径も微細化していた。さら
に、鋳型内の凝固前面の溶鋼を振動させたため、パウダ
ー巻き込みは起こらず、パウダー系欠陥も発生しなかっ
た。
【0111】鋳片横断面には振動の周期に応じたピッチ
1.5mmで表層15mmに多層状の負偏析帯および偏向構
造のデンドライトが形成されていた。また、電磁コイル
による振動と電磁ブレーキを併用した場合には、実施例
3の振動のみを加えた場合よりも等軸晶率が増加した。
【0112】これは、電磁ブレーキにより高温溶鋼の鋳
片内部への浸透が防止され、電磁コイルの振動により生
成した等軸晶核の再溶解が抑制されたためである。
【0113】なお、電磁コイルによる振動に加速停止時
間を設ける場合には、電磁ブレーキを連続で印加する必
要はなく、同期させて印加することも可能である。
【0114】
【発明の効果】以上の如く、本発明の電磁コイルにより
振動パターンを調整して溶融金属に振動を付与する方法
によれば、凝固前面に大きな力を付与できるため、従来
の方法に比べて等軸晶を増加させることが可能となるだ
けでなく、等軸晶の粒径をも微細化できる。
【0115】さらに、これらの効果により凝固組織微細
化のために流速を必要以上に高める必要がなく、パウダ
ー巻き込みに起因する表面欠陥も防止できる。
【0116】なお、本発明の固定鋳型における場合に
は、従来材における、内部組織の改善が著しくなるた
め、生産性およびコスト改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る鋳型内での電磁コイルの配置の概
要を示す図である。
【図2】本発明の振動流パターンを説明する図である。
(a)は、本発明の電磁コイル電流のパターンを説明す
る図であり、(b)は、凝固前面の振動流速のパターン
を説明する図である。
【図3】電磁コイル電流の周期と等軸晶率の関係を示す
図である。
【図4】電磁コイル電流の周期と等軸晶円相当径の関係
を示す図である。
【図5】順方向の加速の間および逆方向の加速の間に、
0.3秒以下0.03秒以上の加速停止時間を設けた実
施例を示す図である。
【図6】順方向の加速度を100cm/s2、逆方向の加
速度を50cm/s2とした実施例を示す図である。
【図7】電磁コイルの鋳造方向のコア中心での凝固シェ
ル厚みの位置の概要を示す図である。
【図8】本発明鋳片のコーナーの組織を模式的に示す図
である。(a)は、負偏析帯が鮮明なコーナーを示す図
であり、(b)は、負偏析帯が鮮明でない場合のコーナ
ーを示す図である。
【図9】図8(a)の負偏析帯の鮮明なコーナーを示す
金属組織写真である。
【符号の説明】
1…電磁コイル 2…長辺側側壁 3…短辺側側壁 4…浸漬ノズル 5…凝固シェル 6…鋳片 7…メニスカス
フロントページの続き (72)発明者 原田 寛 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 (72)発明者 竹内 栄一 兵庫県姫路市広畑区富士町1番地 新日本 製鐵株式会社広畑製鐵所内 (72)発明者 長谷川 一 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 (72)発明者 藤崎 敬介 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内 Fターム(参考) 4E004 AA09 MB12 NB01 NB02

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋳型近傍に設けた電磁コイルにより、鋳
    型内に注入した溶融金属に電磁力を印加しながら溶融金
    属を凝固させる溶融金属の鋳造方法において、鋳型内の
    溶融金属プールの近傍に電磁コイルを設置し、該電磁コ
    イルによって発生する移動磁界により、鋳型内で凝固を
    完了させる過程、または、鋳型内で冷却・凝固し下方に
    引抜く過程における凝固前面の溶融金属に、大加速度と
    小加速度を交互に付与し、溶融金属を振動させることを
    特徴とする溶融金属の鋳造方法。
  2. 【請求項2】 鋳型近傍に設けた電磁コイルにより、鋳
    型内に注入した溶融金属に電磁力を印加しながら溶融金
    属を凝固させる溶融金属の鋳造方法において、鋳型内の
    溶融金属プールの近傍に電磁コイルを設置し、該電磁コ
    イルによって発生する移動磁界により、鋳型内で凝固を
    完了させる過程、または、鋳型内で冷却・凝固し下方に
    引抜く過程における凝固前面の溶融金属に、大加速度と
    小加速度を交互に付与し、溶融金属を周期的に振動させ
    ることを特徴とする溶融金属の鋳造方法。
  3. 【請求項3】 鋳型近傍に設けた電磁コイルにより、鋳
    型内に注入した溶融金属に電磁力を印加しながら溶融金
    属を凝固させる溶融金属の鋳造方法において、鋳型内の
    溶融金属プールの近傍に電磁コイルを設置し、該電磁コ
    イルによって発生する移動磁界により、鋳型内で凝固を
    完了させる過程、または、鋳型内で冷却・凝固し下方に
    引抜く過程における凝固前面の溶融金属に、大加速度で
    の加速と小加速度での加速を行い、該大加速度と該小加
    速度との方向ベクトルの向きを同一または反対のものを
    組み合せて、溶融金属の流速が所定の流速を越えない範
    囲内で付与し、溶融金属を振動させることを特徴とする
    溶融金属の鋳造方法。
  4. 【請求項4】 鋳型近傍に設けた電磁コイルにより、鋳
    型内に注入した溶融金属に電磁力を印加しながら溶融金
    属を凝固させる溶融金属の鋳造方法において、鋳型内の
    溶融金属プールの近傍に電磁コイルを設置し、該電磁コ
    イルによって発生する移動磁界により、鋳型内で凝固を
    完了させる過程、または、鋳型内で冷却・凝固し下方に
    引抜く過程における凝固前面の溶融金属に、順逆方向の
    加速度を付与し、溶融金属を周期的に振動させることを
    特徴とする溶融金属の鋳造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶
    融金属の鋳造方法において、鋳型内で冷却・凝固し下方
    に引抜く過程が、スラブ、ブルーム、中厚スラブ、また
    は、ビレットを連続鋳造する過程であることを特徴とす
    る溶融金属の鋳造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶
    融金属の鋳造方法において、順方向の加速の間および逆
    方向の加速の間に、0.3秒以下0.03秒以上の加速
    停止時間または電源停止時間を設けることを特徴とする
    溶融金属の鋳造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶
    融金属の鋳造方法において、溶融金属を周期的に振動さ
    せるとともに、順方向または逆方向に旋回させることを
    特徴とする溶融金属の鋳造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれか1項に記載の溶
    融金属の鋳造方法において、溶融金属を周期的に振動さ
    せるとともに、周波数100Hz以上30KHz以下の短周
    期の振動を付加することを特徴とする溶融金属の鋳造方
    法。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の溶
    融金属の鋳造方法を実施する電磁コイル設備であって、
    溶融金属を順逆方向に周期的に振動させる電磁駆動装
    置、該電磁駆動装置へ通電する通電装置、および、該通
    電を制御する通電制御装置からなることを特徴とする電
    磁コイル設備。
  10. 【請求項10】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の
    溶融金属の鋳造方法を実施する電磁コイル設備であっ
    て、電磁コイル、および、該電磁コイルに、溶融金属を
    順逆方向に周期的に振動させる電流を通電する電源装置
    または波形発生装置からなることを特徴とする電磁コイ
    ル設備。
  11. 【請求項11】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の
    溶融金属の鋳造方法を実施する電磁コイル設備であっ
    て、溶融金属を順逆方向に周期的に振動させるととも
    に、振動方向の変換時に速やかに指令値に立ち上げる機
    能を有する電磁駆動装置、該電磁駆動装置へ通電する通
    電装置、および、該通電を制御する通電制御装置からな
    ることを特徴とする電磁コイル設備。
  12. 【請求項12】 請求項1〜8のいずれか1項に記載の
    溶融金属の鋳造方法を実施する電磁コイル設備であっ
    て、電磁駆動装置、該電磁駆動装置へ通電する通電装
    置、該通電を制御する通電制御装置、および、電磁ブレ
    ーキからなることを特徴とする電磁コイル設備。
JP2002255933A 1997-12-08 2002-08-30 溶融金属の鋳造方法 Expired - Fee Related JP3704329B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002255933A JP3704329B2 (ja) 1997-12-08 2002-08-30 溶融金属の鋳造方法

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9-337195 1997-12-08
JP33719597 1997-12-08
JP9-348151 1997-12-17
JP34815197 1997-12-17
JP2002255933A JP3704329B2 (ja) 1997-12-08 2002-08-30 溶融金属の鋳造方法

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP53064099A Division JP3372958B2 (ja) 1997-12-08 1998-12-08 溶融金属の鋳造方法およびその装置並びに鋳片

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003080353A true JP2003080353A (ja) 2003-03-18
JP3704329B2 JP3704329B2 (ja) 2005-10-12

Family

ID=27340816

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002255933A Expired - Fee Related JP3704329B2 (ja) 1997-12-08 2002-08-30 溶融金属の鋳造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3704329B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006281314A (ja) * 2005-03-11 2006-10-19 Jfe Steel Kk 鋼の連続鋳造方法

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4495224B2 (ja) * 2008-03-12 2010-06-30 新日本製鐵株式会社 優れた凝固組織を有する鋳片

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006281314A (ja) * 2005-03-11 2006-10-19 Jfe Steel Kk 鋼の連続鋳造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP3704329B2 (ja) 2005-10-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3372958B2 (ja) 溶融金属の鋳造方法およびその装置並びに鋳片
US4030534A (en) Apparatus for continuous casting using linear magnetic field for core agitation
JP2008173668A (ja) 凝固方法
US3952791A (en) Method of continuous casting using linear magnetic field for core agitation
JP3704329B2 (ja) 溶融金属の鋳造方法
JP2004322120A (ja) 鋼の連続鋳造方法
JP4065099B2 (ja) 溶鋼の連続鋳造方法および連続鋳造鋳片
JP3257546B2 (ja) 鋼の連続鋳造方法
JP2917223B2 (ja) 金属の凝固組織微細化鋳造方法
JP3388686B2 (ja) 連続鋳造ストランド内の流動制御方法
SU1355113A3 (ru) Способ электромагнитного перемешивани расплавленной стали в процессе непрерывного лить слитков
JP4163817B2 (ja) 溶鋼の連続鋳造方法、電磁振動印加装置および連続鋳造鋳片
JP2541953B2 (ja) 連続鋳造鋳片の中心偏析防止方法
JP2002126856A (ja) 連続鋳造方法と鋳片
JP3422946B2 (ja) 溶鋼の連続鋳造方法および連続鋳造鋳片
JPH01271031A (ja) 複層鋳片の連続鋳造方法
JP5018144B2 (ja) 鋼の連続鋳造方法
JPH04309436A (ja) 複層鋳片の連続鋳造方法
JPS59159257A (ja) 連続鋳造法による中・高炭素キルド鋼の製造方法
JPH03254338A (ja) 連続鋳造方法
JP2001321906A (ja) 連続鋳造方法及び連鋳鋳片
JPH10156494A (ja) 溶鋼の連続鋳造方法
JP2002331341A (ja) 微細な凝固組織を有する鋳片または鋳塊の鋳造方法及びその鋳造装置
JPH0122063B2 (ja)
JP2005238318A (ja) 鋼の連続鋳造装置および連続鋳造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20050131

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050412

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050610

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20050712

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20050722

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080729

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090729

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090729

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100729

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110729

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120729

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130729

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130729

Year of fee payment: 8

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130729

Year of fee payment: 8

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130729

Year of fee payment: 8

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130729

Year of fee payment: 8

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees