JP2003073300A - 造血前駆細胞動員増強剤 - Google Patents

造血前駆細胞動員増強剤

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JP2003073300A
JP2003073300A JP2001266208A JP2001266208A JP2003073300A JP 2003073300 A JP2003073300 A JP 2003073300A JP 2001266208 A JP2001266208 A JP 2001266208A JP 2001266208 A JP2001266208 A JP 2001266208A JP 2003073300 A JP2003073300 A JP 2003073300A
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cells
colony stimulating
enhancer
test
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JP2001266208A
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Hiroki Hayasawa
宏紀 早澤
Muneo Yamada
宗夫 山田
Takuma Sakurai
琢磨 桜井
Eriko Misawa
江里子 三澤
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Morinaga Milk Industry Co Ltd
Original Assignee
Morinaga Milk Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 マクロファージコロニー刺激因子を有効成分
とする、造血系の再構築を目的とした移植に供される造
血前駆細胞の動員を増強するための薬剤を提供する。 【解決手段】 マクロファージコロニー刺激因子類、及
び該因子類の薬学的に許容される塩類からなる群より選
択される1種又は2種以上の混合物を、造血前駆細胞動
員増強剤の有効成分とし、顆粒球コロニー刺激因子と組
合せて使用すること、又は顆粒球コロニー刺激因子をさ
らに含有することを望ましい態様とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薬学及び医薬分野
に関し、具体的には造血前駆細胞の動員を増強するため
の薬剤に関する。本発明の造血前駆細胞動員増強剤は、
造血系の再構築を目的とした移植に供される造血前駆細
胞の動員の増強に好適に用いことができる。
【0002】
【従来の技術】造血幹細胞は、すべての血液細胞に分化
できる「多分化能」と自分自身を複製できる「自己複製
能」を有する未分化な細胞として定義される。この自己
複製能を応用して、造血幹細胞を移植し造血機能を再構
築させる方法が、白血病のような難治性疾患に対する有
効な治療法となっている。造血幹細胞移植は、一般的に
全身放射線照射や大量の抗癌剤投与により、患者自身の
造血能を消失させた状態で行なわれる。このような骨髄
破壊的前処置によって、移植された造血幹細胞から白血
球が供給されてくるまでにかなりの日数を要することに
なる。その間、感染の危険を避けるために無菌室での管
理が必要になり、移植後の白血球をできるだけ早く回復
させる目的で、顆粒球コロニー刺激因子(以下、G−C
SFと略記することがある。)などのサイトカインが使
用されてきた。
【0003】一方、造血幹細胞の供給源としては、今ま
では骨髄細胞を使用する骨髄移植が主流であったが、近
年、臍帯血中にも豊富に存在する造血幹細胞を利用する
臍帯血移植や、顆粒球コロニー刺激因子などのサイトカ
インを投与することによって末梢血に流出してくる骨髄
由来の造血幹細胞を利用する末梢血幹細胞移植などの方
法が急速に増えつつある。特に、末梢血幹細胞は採取が
容易であることに加え、顆粒球コロニー刺激因子を用い
た末梢血への造血幹細胞の動員に保険の適用が承認され
たことによって、自家及び同種ともに今後さらに普及す
るものと予想される。
【0004】従来から末梢血幹細胞の動員効率を上げる
目的として、顆粒球コロニー刺激因子とともにそれ以外
のサイトカイン等のタンパク質との併用投与による効果
が検討されている。
【0005】特開平8−127539号公報(以下、従
来技術1と記載する。)には、ヒトインターロイキン−
11、及びヒトインターロイキン−11とヒト顆粒球コ
ロニー刺激因子の両者、を含有する末梢血幹細胞増加剤
に関する技術が開示されている。
【0006】また、ステムセルファクター(stem cell
factor:以下、SCFと略記する。)は、単独では造血
刺激効果は低いが、インターロイキン−3、顆粒球コロ
ニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子
(以下、GM−CSFと略記することがある。)、エリ
スロポエチン(以下、EPOと略記することがある。)
等との共存下で、その効果は相乗的に増加すること等
(「末梢血幹細胞移植の実際」、原田実根ら編、南江
堂、第60ページ、2001年:以下、従来技術2と記
載する。)が報告されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従
来技術1に使用されているインターロイキン−11は、
現在まで医薬品としての認可はなされておらず、直ぐに
ヒトへ応用するには安全性の面など問題点は残されたま
まである。
【0008】また、従来技術2のSCFには肥満細胞を
刺激するために注射部位の発赤、硬結、さらにはアナフ
ィラキシー様症状の発現があったため、本臨床試験は中
断されている状態である。
【0009】従って、前述の問題点を解決すべく、造血
系の再構築に有用な造血前駆細胞を安全かつ効果的に大
量に動員する方法の開発が待望されていた。本発明者ら
は、従来よりマクロファージコロニー刺激因子(以下、
M−CSFと略記することがある。)の持つ作用につい
て鋭意研究を重ねた結果、顆粒球コロニー刺激因子と併
せてマクロファージコロニー刺激因子を投与することに
より、末梢血中に造血前駆細胞に特徴的な表面抗原を表
出する細胞群の割合を増加させることができることを見
出した。また、顆粒球コロニー刺激因子とマクロファー
ジコロニー刺激因子を併せて投与することにより、顆粒
球やマクロファージからなるコロニー、及び更に未熟な
初期造血系高増殖能を有するコロニーを形成しうる未分
化な細胞である造血前駆細胞を末梢血中に動員する効果
を高め、従来技術に比して副作用が伴わずより安全に末
梢血中に、造血前駆細胞の動員を増強することを見い出
し、本発明を完成した。
【0010】本発明の目的は、安全性が高く様々な成熟
血液細胞に分化しうる造血前駆細胞を、効果的且つ簡便
に末梢血に動員することが可能な造血前駆細胞動員増強
剤を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決する本発
明は、以下のとおりである。 (1)マクロファージコロニー刺激因子類、及び該因子
類の薬学的に許容される塩類からなる群より選択される
1種又は2種以上の混合物を有効成分として含有する造
血前駆細胞動員増強剤。
【0012】(2)顆粒球コロニー刺激因子と組合せて
使用されることを特徴とする(1)に記載の造血前駆細
胞動員増強剤。
【0013】(3)顆粒球コロニー刺激因子をさらに含
有する(1)に記載の造血前駆細胞動員増強剤。
【0014】
【発明の実施の形態】次に、本発明について具体的に説
明する。本明細書において百分率は、特に断りのない限
り重量による表示である。本発明において、「動員」と
は、生体内に分散されている細胞を特定の部位に移動お
よび集約させることを意味し、「増強」とは、この作用
をさらに高めることを意味する。従って、動員増強剤
は、生体内に分散されている細胞を特定の部位に移動お
よび集約させる効果を増強する薬剤を表す。
【0015】本発明の造血前駆細胞動員増強剤(以下、
「本発明の動員増強剤」と略記する。)の有効成分は、
マクロファージコロニー刺激因子類、及び該因子類の薬
学的に許容される塩類からなる群より選択される1種又
は2種以上の混合物である。マクロファージコロニー刺
激因子類は、マクロファージコロニー刺激因子又はマク
ロファージコロニー刺激因子の薬理学的に許容される誘
導体であり、好ましくはマクロファージコロニー刺激因
子そのものである。更に、マクロファージコロニー刺激
因子はヒト由来のものが好ましい。前記誘導体として
は、例えばマクロファージコロニー刺激因子のアミノ酸
配列を有するペプチド、当該アミノ酸配列の一部が脱落
又は置換したペプチド、及び当該アミノ酸配列の一部に
他のアミノ酸が挿入又は付加したペプチド等が挙げられ
る。
【0016】マクロファージコロニー刺激因子の製造法
としては、特に制限されるものではないが、例えば、ヒ
ト尿中から物理化学的方法により単離することも可能で
あり、また、遺伝子工学的に製造することもできる。
【0017】例えば、マクロファージコロニー刺激因子
は、ヒト尿から物理化学的に単離する方法として特開昭
63−198700号公報、特開昭63−250400
号公報、特表昭62−501607号公報等、また遺伝
子工学的に製造する方法として特表平1−502397
号公報等に記載された方法により製造することが出来
る。
【0018】前記の方法により製造されたマクロファー
ジコロニー刺激因子は、軟寒天中で哺乳動物の骨髄細胞
に作用し、単球・マクロファージ系細胞からなるコロニ
ーの形成を促進する活性(以下コロニー刺激活性と記載
することがある。)を有している。本発明において使用
するマクロファージコロニー刺激因子類としては、これ
と同様のコロニー刺激活性を有するタンパク因子であれ
ば使用可能であり、その種類は特に限定されない。具体
的には、特開昭63−198700号公報の製造法によ
るヒト尿から物理化学的に単離したマクロファージコロ
ニー刺激因子、及び特表平1−502397号公報の製
造法で製造される組換え型マクロファージコロニー刺激
因子が好ましい。また、これらのマクロファージコロニ
ー刺激因子のアミノ酸配列を有するペプチド、当該アミ
ノ酸配列の一部が脱落又は置換したペプチド、当該アミ
ノ酸配列の一部に他のアミノ酸が挿入又は付加したペプ
チド等も、本発明に用いることのできるマクロファージ
コロニー刺激因子類として例示することができるが、こ
れらに限定されず、前記コロニー刺激活性を有するもの
であれば全て本発明に使用することができる。
【0019】前記のとおり物理化学的方法又は遺伝子工
学的方法により得られたマクロファージコロニー刺激因
子に、必要により安定剤としてヒト血清アルブミン、糖
類等を含む緩衝液を添加し、マクロファージコロニー刺
激因子を溶解し、以下、常法により無菌濾過し、凍結乾
燥し、本発明の動員増強剤を製造することができる。
尚、ヒト血清アルブミン及び糖類の他に、薬理学的に許
容される成分を添加することも可能である。
【0020】また、本発明においては、マクロファージ
コロニー刺激因子類の薬学的に許容される塩類も使用す
ることが可能であり、酸付加塩、金属錯体等の無毒性の
塩、カルボン酸塩等を例示することができる。より具体
的には、酸付加塩としては塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、
シュウ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、
酒石酸塩等を、金属錯体としては亜鉛、鉄、カルシウ
ム、マグネシウム、アルミニウム等の錯体を、カルボン
酸塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金
属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類
金属塩、アンモニウム塩等を例示することができる。こ
れらの塩類は常法により製造することができる。
【0021】本発明の動員増強剤は、上記のようなマク
ロファージコロニー刺激因子類、又は該因子類の薬学的
に許容される塩類の1種を単独で使用してもよく、任意
の2種またはそれ以上の混合物として使用してもよい。
【0022】本発明に使用するマクロファージコロニー
刺激因子類及び/又はマクロファージコロニー刺激因子
類の薬学的に許容される塩類からなる群より選択される
1種又は2種以上の混合物を、医薬的に許容可能な担
体、賦形剤、pH調整剤、防腐剤、安定剤等と組み合わ
せて製剤にすることが可能である。例えば常法により滅
菌して注射用生理食塩水、注射用蒸留水等に溶解し、製
剤にすることが可能である。点滴、静注、皮下注、腹腔
内投与等適宜の投与形態及び投与量に応じて製剤中の有
効成分の量は適宜選択される。
【0023】マクロファージコロニー刺激因子は元来ヒ
トの体液中に含有されている天然の物質であるので、こ
れを有効成分とする動員増強剤は、副作用が極めて少な
い利点がある。尚、マクロファージコロニー刺激因子の
急性毒性については、既に特公平6−11705号公報
の実験例1に具体的に試験データとして記載されている
とおり、C57BL系雄性マウスを用いた試験におい
て、LD50が、腹腔内投与では4g/kg体重、静脈内
投与では2g/kg体重、皮下投与では4g/kg体重
であることが確認されている。
【0024】また、本発明の動員増強剤の投与量は、そ
の投与形態、年齢、症状等により異なるが、具体的に
は、マクロファージコロニー刺激因子換算で体重1kg
当たり10μgから1mgの範囲が挙げられる。本発明
の動員増強剤は、静脈内に投与することが好ましく、1
日1回を数日間連日投与することが可能であり、該本発
明の動員増強剤と顆粒球コロニー刺激因子とを併用投与
することにより、造血前駆細胞の末梢血への動員が増強
される。尚、本発明の動員増強剤の投与のタイミング
は、顆粒球コロニー刺激因子の投与の前後及び同時期の
いずれも可能である。あるいは、本発明の動員増強剤
は、マクロファージコロニー刺激因子類及び/又はマク
ロファージコロニー刺激因子類の薬学的に許容される塩
類とともに、顆粒球コロニー刺激因子を含有していても
よい。その場合は、本発明の動員増強剤と顆粒球コロニ
ー刺激因子とを併用投与する必要はない。
【0025】マクロファージコロニー刺激因子と顆粒球
コロニー刺激因子を投与することによって、造血前駆細
胞を主として末梢血へ効果的に動員することができる。
マクロファージコロニー刺激因子と顆粒球コロニー刺激
因子の投与量の比は、動員する細胞の種類に応じて、適
宜設定することが望ましい。
【0026】本発明の動員増強剤によって動員が増強さ
れる造血前駆細胞としては、好中球・マクロファージ系
前駆細胞、単球・マクロファージ系前駆細胞、巨核球系
前駆細胞、早期赤芽球系前駆細胞、初期造血系高増殖能
コロニー形成細胞等が挙げられる。動員された造血前駆
細胞は、一般的に行なわれているように、血球比重分離
液等を用いて回収するという方法の他に、適切な表面抗
原に対する特異抗体を利用して、フローサイトメーター
により、選択的に目的の細胞群を濃縮することも可能で
ある。
【0027】前記の方法に従って得られた造血前駆細胞
は、未熟な造血幹細胞を検出する方法によって確認し、
及びその種類を特定することが可能である。例えば、in
vitroにおけるコロニー形成試験では、未熟な造血幹細
胞を各種サイトカインの存在下にメチルセルロース又は
軟寒天などの半固形培地中で培養することによって、形
成される細胞集塊(コロニー)から、造血幹細胞の数や
性質を推定する方法である。このコロニーを分析するこ
とにより、in vitroにおいて種々の造血幹細胞や造血前
駆細胞の分化・増殖過程を捉えることができる。また、
in vivoにおける長期骨髄再構築能は、致死量放射線照
射したマウスに造血幹細胞を移植することによって、マ
ウスの造血系を再構築し、長期間維持することができる
かを調べる方法であり、造血幹細胞の多分化能と自己複
製能を評価する上で信頼性が高いとされている。
【0028】また、末梢血中に動員された造血前駆細胞
は、採取後にサイトカインの添加培養によって、増幅あ
るいは分化誘導を行なった後、目的に応じて使用するこ
とができる。例えば、造血幹細胞移植に使用する細胞と
して用いることができる。
【0029】
〔実施例1〕
次の組成の注射剤を常法により製造した。 マクロファージコロニー刺激因子(森永乳業社製) 0.625(%) 塩化ナトリウム(和光純薬社製) 0.9 注射用蒸留水(大塚製薬社製) 98.475
【0030】〔実施例2〕天然型マクロファージコロニ
ー刺激因子0.4mg、ヒト血清アルブミン(ウェルフ
ァイド社製)320mg、マンニトール(関東化学社
製)4g、リン酸水素二ナトリウム(関東化学社製)
1.2g、及びリン酸二水素ナトリウム(関東化学社
製)0.12gを、注射用蒸留水(大塚製薬社製)10
0mlに溶解し、0.22μm滅菌済みメンブランフィ
ルターを用いて濾過滅菌した後、滅菌済みバイアルビン
に10mlずつ分注し、常法により凍結乾燥してマクロ
ファージコロニー刺激因子製剤(注射剤)を10本製造
した。
【0031】〔試験例1〕この試験は、本発明の動員増
強剤及び/又はG−CSFの投与後、末梢血中の白血球
数の変化及び末梢血への造血前駆細胞の動員を確認する
ために行った。 (1)試験動物 体重20〜25gの7〜9週齢C57BL/6系雄性マ
ウス(日本チャールスリバーから購入)を、無作為に4
群(1群5匹)に分けて使用した。
【0032】(2)試料の調製 1日当たり、実施例1の造血前駆細胞動員増強剤を生理
食塩水で100倍希釈した試験溶液200μlの用量の
静脈投与、及び生理食塩水で62.5μg/mlに希釈
した組換え型ヒトG−CSF(商品名ノイトロジン:中
外製薬社製)200μlの用量の皮下投与の併用投与
を、2日間連日行ったマウスを試験試料群とした。
【0033】また、1日当たり、実施例1の造血前駆細
胞動員増強剤を生理食塩水で100倍希釈した試験溶液
を200μlの用量で2日間連日静脈投与したマウスを
対照試料群1とした。更に、生理食塩水で62.5μg
/mlに希釈した組換え型ヒトG−CSF(商品名ノイ
トロジン:中外製薬社製)を200μlの用量で2日間
連日皮下投与したマウスを対照試料群2とした。陰性コ
ントロールとして、1日当たり、生理食塩水200μl
を2日間連日投与したマウスを陰性試料群とした。
【0034】3日目に、クロロホルム麻酔下にて各試料
群の血液を採取し、血液の1/10量の3.8%クエン
酸ナトリウム溶液(赤沈用チトラール:山之内製薬社
製)を添加して、試験試料群、陰性試料群および対照試
料群2種類の末梢血溶液を調製した。
【0035】(3)試験方法 各試料群の末梢血溶液中の白血球の数は、自動血球計数
装置(シスメックス社製)を用いて計測した。更に前記
白血球中に含まれる未熟な造血前駆細胞の数を測定する
ために、未熟な造血前駆細胞の表面マーカーとされるS
ca−1及びc−kitを指標として、フィコエリスリ
ン(以下、「PE」と略記することがある。)標識のS
ca−1抗体(ファーミンジェン社製)、及びフルオレ
セインイソチオシアネート(以下、「FITC」と略記
することがある。)標識のc−kit抗体(ファーミン
ジェン社製)を用いて各試料群の末梢血白血球を30分
間染色した。染色した細胞は、固定及び洗浄した後、F
ACS Calibur(ベクトンディッキンソン社
製)による解析を行って算出した。
【0036】(4)試験結果 本試験の結果は表1に示すとおりである。表1は、末梢
血中1ml当たりに含まれる白血球数およびマウスにお
ける未熟な造血前駆細胞の表面マーカーとされるSca
−1陽性c−kit陽性細胞の数を表わす。表1から明
らかなとおり、従来の造血前駆細胞動員剤であるG−C
SFを投与した対照試料群2では、白血球数の増加及び
Sca−1陽性c−kit陽性細胞の数の増加が認めら
れた。更に、G−CSFに本発明の動員増強剤を併せて
投与した試験試料群においては、白血球数及びSca−
1陽性c−kit陽性細胞の数が、対照試料群2に比し
て更に増加する結果が確認された。尚、本発明の動員増
強剤の単独投与である対照試料群1では、陰性試料群に
比べて白血球数及びSca−1陽性c−kit陽性細胞
の数の増加は認められなかった。
【0037】従って、本発明の動員増強剤はG−CSF
と併用投与することによって、G−CSFによる造血前
駆細胞の末梢血への動員作用を更に増強することが明ら
かとなった。
【0038】
【表1】
【0039】〔試験例2〕この試験は、本発明の動員増
強剤及び/又はG−CSFの投与後、末梢血単核球中に
コロニー形成能を有する好中球・マクロファージ系前駆
細胞(以下、「CFU−GM」と略記する。)が動員さ
れていることを確認するために行った。
【0040】(1)試料の調製 試験例1と同様の方法で調製した試験試料群、対照試料
群2種類、及び陰性試料群の各末梢血溶液に、各々等量
の0.5%ウシ血清アルブミン及び0.2mMエチレン
ジアミン四酢酸二ナトリウムを含むダルベッコリン酸緩
衝液を加えて、リンホライト−M(セダレーン社)に重
層し、1900回転で、4℃、30分間遠心分離して単
核球層の細胞を回収した。末梢血から分離した単核球
は、7.5%牛胎児血清(以下、「FCS」と略記する
ことがある。)を添加したRPMI−1640培地(ア
イシーエヌ社製)に1ml当たり5×106個となるよ
うに懸濁して、試験試料群、対照試料群2種類、及び陰
性試料群の単核球懸濁液を調製した。
【0041】(2)試験方法 30mmシャーレ(ファルコン社製)1枚当たりに、予
め、成長因子として組換え型マウス顆粒球・マクロファ
ージコロニー刺激因子(ベーリンガーマンハイム社製)
を50単位ずつ添加し、次いで5×106個/mlとな
るように調製した前記試験試料群、対照試料群2種類、
及び陰性試料群の単核球懸濁液を、それぞれ細胞数が5
×105個となるように100μlずつ添加した。更
に、22%FCSを含むマッコイ5A培地(ギブコ社
製)に、終濃度が0.33%になるように寒天(ディフ
コ社製)を溶解した軟寒天培地溶液900μlずつをシ
ャーレに添加して、炭酸ガスインキュベータにて37℃
で培養し、7日後に形成されるコロニーを倒立顕微鏡下
で計数した。
【0042】(3)試験結果 本試験の結果は表2に示すとおりである。表2は形成さ
れたCFU−GMのコロニー数の結果である。表2から
明らかなとおり、本発明の動員増強剤とG−CSFを併
用投与した試験試料群と、G−CSFのみを投与した対
照試料群2ではCFU−GMが効果的に末梢血中に動員
されていることが確認された。更に、試験試料群は、対
照試料群2に比して、より多くのCFU−GMを動員す
ることが確認された。陰性試料群及び本発明の動員増強
剤単独投与の対照試料群1では、末梢血中にCFU−G
Mを動員する作用は確認されなかった。
【0043】従って、本発明の動員増強剤は、G−CS
Fと併用して投与することにより、G−CSFが有する
造血前駆細胞動員効果を増強するとともに、コロニー形
成能を有するCFU−GMを末梢血に動員する作用を増
強することが明らかとなった。
【0044】
【表2】
【0045】〔試験例3〕この試験は、本発明の動員増
強剤及び/又はG−CSFの投与後、末梢血単核球中に
コロニー形成能を有する単球・マクロファージ系前駆細
胞(以下、「CFU−M」と略記する。)が動員されて
いることを確認するために行った。 (1)試料の調製 試験例2の試料の調製方法と同様の方法で試験試料群、
対照試料群2種類、及び陰性試料群の単核球懸濁液を調
製した。
【0046】(2)試験方法 試験例2の成長因子を組換え型ヒトM−CSF(森永乳
業社製:以下、「rhM−CSF」と略記することがあ
る。)に変更し、シャーレ1枚当たり1000単位ずつ
添加したこと以外は、試験例2の試験方法と同様に行っ
た。
【0047】(3)試験結果 本試験の結果は表3に示すとおりである。表3は形成さ
れたCFU−Mのコロニー数の結果である。表3から明
らかなとおり、本発明の動員増強剤とG−CSFを併用
投与した試験試料群と、G−CSFのみを投与した対照
試料群2ではCFU−Mが効果的に末梢血中に動員され
ていることが確認された。更に、試験試料群は、対照試
料群2に比して、より多くのCFU−Mを動員すること
が確認された。陰性試料群及び本発明の動員増強剤単独
投与の対照試料群1では、末梢血中にCFU−Mを動員
する作用は確認されなかった。
【0048】従って、本発明の動員増強剤は、G−CS
Fと併用して投与することにより、G−CSFが有する
造血前駆細胞動員効果を増強するとともに、試験例2で
明らかとなったコロニー形成能を有するCFU−GMへ
の効果以外に、CFU−Mも末梢血に動員する作用を増
強することが明らかとなった。
【0049】
【表3】
【0050】〔試験例4〕この試験は、本発明の動員増
強剤及び/又はG−CSFの投与後、末梢血単核球中に
コロニー形成能を有する巨核球系前駆細胞(以下、「C
FU−Meg」と略記する。)が動員されていることを
確認するために行った。 (1)試料の調製 試験例2の試料の調製方法と同様の方法で試験試料群、
対照試料群2種類、及び陰性試料群の単核球懸濁液を調
製した。
【0051】(2)試験方法 試験例2の成長因子を、シャーレ1枚当たり、組換え型
マウストロンボポエチン(ジェンザイム社製:以下、
「rmTPO」と略記することがある。)25ng、組
換え型マウスステムセルファクター (バイオソース社
製:以下、「rmSCF」と略記することがある。)1
00ng、及び組換え型マウスインターロイキン−3
(バイオソース社製:以下、「rmIL−3」と略記す
ることがある。)20ngの3種類に変更して併せて添
加したこと以外は、試験例2の試験方法と同様に行っ
た。
【0052】(3)試験結果 本試験の結果は表4に示すとおりである。表4は形成さ
れたCFU−Megのコロニー数の結果である。表4か
ら明らかなとおり、本発明の動員増強剤とG−CSFを
併用投与した試験試料群と、G−CSFのみを投与した
対照試料群2ではCFU−Megが効果的に末梢血中に
動員されていることが確認された。更に、試験試料群
は、対照試料群2に比して、より多くのCFU−Meg
を動員することが確認された。陰性試料群及び本発明の
動員増強剤単独投与の対照試料群1では、末梢血中にC
FU−Megを動員する作用は確認されなかった。
【0053】従って、本発明の動員増強剤は、G−CS
Fと併用して投与することにより、G−CSFが有する
造血前駆細胞動員効果を増強するとともに、CFU−G
MやCFU−Mへの効果以外に、CFU−Megも末梢
血に動員する作用を増強することが明らかとなった。
【0054】
【表4】
【0055】〔試験例5〕この試験は、本発明の動員増
強剤及び/又はG−CSFの投与後、末梢血単核球中に
コロニー形成能を有する早期赤芽球系前駆細胞(以下、
「BFU−E」と略記する。)が動員されていることを
確認するために行った。 (1)試料の調製 試験例2の試料の調製方法と同様の方法で試験試料群、
対照試料群2種類、及び陰性試料群の単核球懸濁液を調
製した。
【0056】(2)試験方法 試験例2の成長因子を、シャーレ1枚当たり、組換え型
ヒトエリスロポエチン(中外製薬社製:以下、「rhE
PO」と略記することがある。)を2単位、及びrmS
CF(バイオソース社製)を100ngの2種類に変更
して併せて添加したこと以外は、試験例2の試験方法と
同様に行った。
【0057】(3)試験結果 本試験の結果は表5に示すとおりである。表5は形成さ
れたBFU−Eのコロニー数の結果である。表5から明
らかなとおり、本発明の動員増強剤とG−CSFを併用
投与した試験試料群と、G−CSFのみを投与した対照
試料群2ではBFU−Eが効果的に末梢血中に動員され
ていることが確認された。更に、試験試料群は、対照試
料群2に比して、より多くのBFU−Eを動員すること
が確認された。陰性試料群及び本発明の動員増強剤単独
投与の対照試料群1では、末梢血中にBFU−Eを動員
する作用は確認されなかった。
【0058】従って、本発明の動員増強剤は、G−CS
Fと併用して投与することにより、G−CSFが有する
造血前駆細胞動員効果を増強するとともに、CFU−G
MやCFU−M、及びCFU−Megへの効果以外に、
BFU−Eも末梢血に動員する作用を増強することが
明らかとなった。
【0059】
【表5】
【0060】〔試験例6〕この試験は、本発明の動員増
強剤及び/又はG−CSFの投与後、骨髄系細胞コロニ
ーよりもさらに未分化な初期造血系高増殖能コロニー形
成細胞(以下、「HPP−CFC」と略記する。)が動
員されていることを確認するために行った。 (1)試料の調製 試験例2の試料の調製の単核球の調製と同様の方法で、
試験試料群、対照試料群2種類、及び陰性試料群の単核
球懸濁液を調製した。
【0061】(2)試験方法 30mmシャーレ(ファルコン社製)に成長因子とし
て、rmSCF(バイオソース社製)100ng、rm
IL−3(バイオソース社製)20ng、組換え型ヒト
インターロイキン−1(ジェンザイム社製:以下、「r
hIL−1」と略記することがある。)5ng、及びr
hM−CSF(森永乳業社製)100ngを添加した。
次いで、37℃に保温した、ビタミンおよびグルタミン
を添加した20%FCSを含むマッコイ5A培地(ギブ
コ社製)に、終濃度が0.5%になるように寒天(ディ
フコ社製)を溶解した軟寒天培地溶液を1mlずつを加
えて混和し、寒天培地下層とした。
【0062】前記試験試料群、対照試料群2種類、及び
陰性試料群の各単核球懸濁液を、0.33%寒天溶液で
5倍に希釈(1×106個/ml)して単核球寒天培地
懸濁液を調製し、これを前記シャーレ中の寒天培地下層
の上に0.5m流し込み、均一に広げて固めた後、炭酸
ガスインキュベータにて37℃で培養した。14日後、
形成されたコロニー数を肉眼で計数した。
【0063】(3)試験結果 この試験の結果は表6に示すとおりである。表6は、形
成されたHPP−CFCのコロニー数の結果である。表
6から明らかなとおり、陰性試料群に比して、対照試料
群2である従来の造血前駆細胞の動員剤G−CSFによ
ってHPP−CFCは増加し、対照試料群1である本発
明の動員増強剤を単独で投与することでも、HPP−C
FCは若干増加することが確認された。更に、試験試料
群である本発明の動員増強剤とG−CSFを併せて投与
することにより、HPP−CFCの動員作用は顕著に増
強された。
【0064】従って、本発明の動員増強剤は、G−CS
Fと併用して投与することにより、G−CSFが有する
HPP−CFCの末梢血中への動員を効果的に増強する
ことが明らかとなった。
【0065】
【表6】
【0066】
【発明の効果】以上詳記したとおり、本発明は造血前駆
細胞の動員増強剤に関し、本発明によって奏される効果
は次のとおりである。 (1)本発明の造血前駆細胞動員増強剤は、従来の造血
前駆細胞動員剤と併用することにより、その動員効果を
確実に増強し、コロニー形成能を有する未熟な造血前駆
細胞を効果的且つ簡便に末梢血中に動員することが可能
である。 (2)本発明の造血前駆細胞動員増強剤の有効成分であ
るマクロファージコロニー刺激因子は、医薬品としてす
でに認可されており、安全に使用することが可能であ
る。 (3)本発明の造血前駆細胞動員増強剤は、末梢血幹細
胞移植及び末梢血前駆細胞移植に有効な医薬品として利
用することが可能である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 桜井 琢磨 神奈川県座間市東原5丁目1番83号 森永 乳業株式会社生物科学研究所内 (72)発明者 三澤 江里子 神奈川県座間市東原5丁目1番83号 森永 乳業株式会社生物科学研究所内 Fターム(参考) 4C084 AA01 AA16 DA19 MA02 NA05 ZA512

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マクロファージコロニー刺激因子類、及
    び該因子類の薬学的に許容される塩類からなる群より選
    択される1種又は2種以上の混合物を有効成分として含
    有する造血前駆細胞動員増強剤。
  2. 【請求項2】 顆粒球コロニー刺激因子と組合せて使用
    されることを特徴とする請求項1に記載の造血前駆細胞
    動員増強剤。
  3. 【請求項3】 顆粒球コロニー刺激因子をさらに含有す
    る請求項1に記載の造血前駆細胞動員増強剤。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015006183A (ja) * 2013-06-24 2015-01-15 ステムバイオス テクノロジーズ, インコーポレイテッドStembios Technologies, Inc. 幹細胞及びそのデータを獲得する方法
CN105713870A (zh) * 2016-03-04 2016-06-29 佰通生物技术(苏州)有限公司 一种基于集落刺激因子1对干细胞的活化方法

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