JP2003071460A - 液体処理方法および装置 - Google Patents

液体処理方法および装置

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JP2003071460A
JP2003071460A JP2001264200A JP2001264200A JP2003071460A JP 2003071460 A JP2003071460 A JP 2003071460A JP 2001264200 A JP2001264200 A JP 2001264200A JP 2001264200 A JP2001264200 A JP 2001264200A JP 2003071460 A JP2003071460 A JP 2003071460A
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insulator
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Shigeto Adachi
成人 足立
Junji Haga
潤二 芳賀
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 液体に対して高電圧パルスを印加して電極間
に放電状態を形成させて液体を改質するに際し、被処理
液への漏れ電流を抑制すべく設けた絶縁物の表面で発生
する沿面放電を抑制し、効率よく放電処理を行うことの
できる液体の処理方法およびその為の装置を提供する。 【解決手段】 少なくとも一対の電極対を備えると共
に、該電極対のうちの少なくとも一方の電極が絶縁物か
ら突出して液体に浸漬される様に配置し、上記電極対間
に高電圧パルスを印加して電極間に放電状態を形成させ
ることにより、電極対間に存在する液体を改質する液体
の処理方法において、該絶縁物における該液体に浸漬さ
せた電極との境界部近傍に電界緩和領域を形成するよう
にし、例えば高誘電体材料を配置して前記電界緩和領域
を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、(1)下水処理場
や屎尿処理場における下水処理過程、或いは食品工場や
化学工場の排水過程等から排出される有機性廃液の生物
学的な好気性処理または嫌気性処理、(2)前記各工場
の廃液(但し、有機性廃液以外を含む)、清浄な純水を
製造する過程における被処理水や上下水道水および食品
や飲料水を滅菌・殺菌処理、脱色処理、脱臭処理、或い
は(3)前記の各種液体の滅菌・殺菌処理、脱色処理、
脱臭処理の際やゴミ焼却炉の浸出の際等に現出されるダ
イオキシン、環境ホルモン、PCB等の難分解性物質の
分解処理、等に適用される液体の処理方法、およびこの
様な処理方法を実施する為に用いられる装置に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】前記(1)〜(3)に示した各種用途に
おいて、水の再利用や微量汚染物質の除去等の方法とし
ては、従来から活性炭処理、オゾン処理、膜処理等によ
る各種方法が知られており、実用化が進められている。
しかしながら、活性炭処理では、有機物の汚濁物質の吸
着除去は可能であるが、殺菌効果がなく、また活性炭を
頻繁に交換する必要がある。また、オゾン処理では、脱
色、脱臭、殺菌効果は優れているが、オゾンの残留によ
る二次処理の問題がある。更に、膜処理では、水処理の
観点からは優れているものの維持管理が煩雑でコストも
高く、しかも廃棄物が発生するという問題がある。
【0003】本発明者らは前記の様な水処理についてか
ねてより研究を進めており、その研究の一環として特開
平11−253999号のような技術を提案している。
この技術では、例えば液体中に含有される有害な細菌類
を死滅させて該液体を清浄化する方法として、または、
液体中に含有される細菌やその死骸等からなる汚損成分
を減容化すべく該汚損成分を好気的微生物が生化学的に
処理しやすい状態に改質する方法として、前記液体に高
電圧パルス放電処理を行うところに特徴を有している。
この技術を図面を用いて説明する。
【0004】図1は、本発明者らが先に提案した処理装
置の構成を模式的に示した図であり、この装置は被処理
液体が有機性廃液であって、その有機性廃液を生物学的
に好気性処理する場合を想定したものである。図1に示
した装置において、まず活性汚泥槽(曝気槽)1に経路
7から有機性廃液を導入し、該活性汚泥槽1中の活性汚
泥と前記有機性廃液を混合しつつ曝気する。活性汚泥に
は好気性微生物が存在しており、該好気性微生物によっ
て前記有機性廃液中の有機汚濁物質が二酸化炭素や水に
分解処理され、また前記有機汚濁物質が微生物に同化さ
れて活性汚泥が増殖する。
【0005】この処理された混合液は、経路8から沈澱
装置2に導入されて上澄液20と沈澱汚泥10に固液分
離され、該上澄液20は処理済水として経路9から排出
される。尚この処理済水は、放流先の排出基準に従って
必要により高次処理(硝化脱窒素処理やオゾン処理等)
されて放流される。
【0006】一方、前記沈澱汚泥10の一部は、ポンプ
16によって返送経路11から前記活性汚泥槽1に返送
されて活性汚泥槽1における微生物源となると共に、沈
澱汚泥10の一部は、経路12からポンプ17によって
改質装置18の改質槽3に導入される。該改質装置18
は、改質槽3と電源4を備えており、該電源4に接続さ
れた棒状電極(+極)5と平板電極(一極)6が、改質
槽(処理容器)3内の汚泥に浸漬する様にして平行に配
設されている。改質槽3内部にある汚泥沈澱装置2から
導入された沈澱汚泥10は、電気的にはある所定の誘電
率を示す誘電体とみなすことができ、前記電極5,6間
に誘電体が満たされた状態で電圧を加えて電極5,6に
夫々正負の電荷を搬送すると、前記誘電体(汚泥)には
電界が形成されこの電界の強さがある程度以上となった
ときに絶縁破壊を生じ、電極5,6間に放電が発生す
る。
【0007】前記の様にして電極5,6間に高電圧パル
ス放電処理することによって、沈澱汚泥は可溶化・低分
子化(改質)する。即ち、高電圧パルス放電により沈澱
汚泥中の微生物は死滅し、更に細胞破壊等により分解さ
れて低分子の有機物や無機物が生成し、また微生物以外
の有機物も低分子化されて、好気性微生物に易分解性の
物質(以下、改質汚泥と称することがある)となる。
【0008】次に、改質装置18において生成した前記
改質汚泥を、返送経路(返送手段)13から活性汚泥槽
(好気性処理槽)1に返送する。該活性汚泥槽1内にお
いては、前記改質汚泥を好気性微生物が餌として利用し
分解する。
【0009】この様に汚泥を高電圧パルス放電処理によ
り改質して活性汚泥槽1に返送するという様にして循環
することにより、汚泥は減容化され、その結果余剰汚泥
として排出される量が低減する。尚この余剰汚泥は、経
路15を介して系外に排出される。
【0010】またこの様に、棒状の電極と平面状の電極
の間に急峻な立ち上がりの電圧を印可することによっ
て、線状ではなく面状の広域的な放電領域を被処理液中
に形成し、広範囲の処理液に対して放電を作用すること
ができ、効率よく処理することできる。
【0011】本発明者らは、上記改質装置における高電
圧パルス放電処理にて汚泥の改質を更に効率よく行うべ
く検討を重ねてきた。その研究の一環として、前記高電
圧パルス放電処理にて、電圧が支配的なストリーマ放電
を発生させるよりも、電流が支配的な放電を発生させる
方が被処理水中の汚泥の可溶化がより促進されるとし
て、該電流が支配的な放電の発生確率を向上させるべ
く、電界集中用の導電部を有する電極を使用したり、電
極を棒状または線状電極と同心円状電極との組み合わせ
とすることによって、立体的な放電領域を形成するよう
にした液体処理方法や装置について既に提案している
(特開2000−189978号)。
【0012】しかしながら、これらの放電処理方法にお
いては、電極間で電圧を印加してから放電するまでの間
や放電時に、放電の発生していない被処理水領域に電流
が流れるといった、いわゆる漏れ電流(後記図2の符号
28)の発生が起こるといった問題がある。これらの漏
れ電流はジュール損となり、エネルギー的に無駄である
ばかりでなく、被処理液の水温を不必要に上げてしまう
要因にもなる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】この様な事情に鑑み、
電極対間にパルス状の電力を供給して電極対間に存在す
る液体を改質するに際し、前記漏れ電流の発生を抑制す
ることのできる液体処理方法の確立についても研究を進
めてきた。そして、放電領域以外の領域を漏れ電流領域
と考え、放電領域以外の領域のほぼ全域または一部に絶
縁物を配置したり、または、これらの漏れ電流が被処理
液に接する電極の露出面積に影響を受けるとして、該電
極を絶縁物で覆って露出面積を小さくした液体処理方法
および装置を既に提案している(特願2000−186
492号、但し未公開)。
【0014】図2は上述の様な放電処理装置を模式的に
示した断面説明図であり、高電圧パルス装置27から高
電圧を印加させて棒状電極25とリング状の平板電極2
6の間で放電を生じさせ、被処理液23中の汚泥を改質
する装置を示したものであるが、この図2に示す様に電
極25が絶縁物24であまり覆われていない場合には広
範囲に渡って漏れ電流28が発生する。従って、図3に
示す如く絶縁物24の電極被覆部分を増加させること等
が行われてきた。
【0015】ところが前記図3に示す如く絶縁物24表
面では沿面放電35が生じ易く、沿面放電35が生じる
と電極先端36からの放電量が減少して汚泥処理量が減
少することにもなりかねないので、効率よく液体の放電
処理を行うには該沿面放電の発生を抑止する必要があ
る。前記特願2000−186492号でも、絶縁物に
おける漏れ電流の流れる面に沿った表面の面積を増加さ
せて沿面放電の発生を抑制することが提案されている。
【0016】本発明は、この様な課題に対し別の観点か
ら検討したものであり、その目的は、高電圧パルスを印
加して電極間に放電状態を形成させて液体を改質するに
際し、確実に前記沿面放電を抑制して効率よく放電処理
を行うことのできる液体の処理方法およびその為の装置
を提供するところにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明に係る液体処理方
法とは、少なくとも一対の電極対を備えると共に、該電
極対のうちの少なくとも一方の電極が絶縁物から突出し
て液体に浸漬される様に配置し、上記電極対間に高電圧
パルスを印加して電極間に放電状態を形成させることに
よって、電極対間に存在する液体を改質する液体の処理
方法において、該絶縁物における該液体に浸漬させた電
極との境界部近傍(前記図3の符号37)に電界緩和領
域を形成することによって、該絶縁物表面で生じる沿面
放電を軽減させるようにするところに要旨を有するもの
である。
【0018】前記電界緩和領域の形成、即ち、絶縁物表
面で生じ易い高電界強度領域の電界強度を弱めるにあた
っては、(1)該絶縁物における該液体に浸漬させた電
極との境界部近傍に、(i)高誘電体材料を配置する
か、(ii)表面が凸球面または凹球面を有する導電体材
料もしくは半導体材料を配置するか、(iii)電気抵抗
体材料または半導体材料を配置するか、または(iv)絶
縁物側から離れる方向に導電率が順次高くなる材料を配
置するのがよい。または、(2)該絶縁物と他方電極と
の最短距離が電極間最短距離の1.2倍以上となるよう
絶縁物および電極を配置することによっても前記電界緩
和領域を形成することができる。
【0019】本発明は上述の様な方法に用いる装置も含
むものであって、少なくとも一対の電極対を備えると共
に、該電極対のうちの少なくとも一方の電極が絶縁物か
ら突出して液体に浸漬される様に配置され、上記電極対
間に高電圧パルスを印加して電極間に放電状態を形成さ
せて、電極対間に存在する液体を改質する液体の処理装
置において、該絶縁物における該液体に浸漬させた電極
との境界部近傍に電界緩和領域が形成されているところ
に特徴を有する。この様な装置として、(A)前記電界
緩和領域が、(a)高誘電体材料を配置して形成された
装置、(b)表面が凸球面または凹球面を有する導電体
材料もしくは半導体材料を配置して形成された装置、
(c)電気抵抗体材料または半導体材料を配置して形成
された装置、(d)絶縁物側から離れる方向に導電率が
順次高くなる材料を配置して形成された装置を挙げるこ
とができる。
【0020】また本発明には、(B)該絶縁物と他方電
極との最短距離が電極間最短距離の1.2倍以上となる
よう絶縁物および電極が配置されることによって前記電
界緩和領域が形成される装置も含まれる。
【0021】尚、上記改質とは、従来技術にて述べた通
り、汚泥の殺菌および可溶化や低分子化をいうものとす
る。
【0022】
【発明の実施の形態および実施例】本発明者らは、前述
した如く、前記公報にて提案した方法とは別の観点か
ら、漏れ電流抑制に用いる絶縁物の表面にて生じる沿面
放電の発生を抑止し、効率よく放電処理を行える液体の
処理方法およびその為の装置について検討したところ、
次の様な知見が得られた。即ち被処理液中の絶縁物表面
近傍では、被処理液の他の領域と比較して電界強度が極
端に高く、この電界強度の高さが絶縁物表面における沿
面放電の発生要因となっていることから、絶縁物の表面
近傍に電界強度の緩和された領域を設ければよいことを
見出したのである。
【0023】尚、本発明でいう上記電界緩和領域とは、
絶縁物表面近傍の領域であって電界強度が5.00×1
7V/m以下である領域をいい、この様に電界強度の
低い領域を形成することによって沿面放電が生じないこ
とがわかった。
【0024】そして本発明では、この様な電界強度緩和
領域の形成にあたって、次の様な方法および装置が有効
であることを見出した。以下、本発明に係る液体処理方
法および装置に関して、実施例を示す図面を参照しつつ
具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定さ
れる訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適
当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは
いずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0025】(実施形態1)本実施形態1は、絶縁物に
おける液体に浸漬させた電極との境界部近傍に、高誘電
体材料を配置して前記電界緩和領域を形成する場合を示
す。
【0026】図4(a)は本実施形態1に係る放電処理
装置の構成を概略的に例示した断面図であり、該放電処
理装置は、電極が棒状電極25とリング状の平板電極2
6で構成されており、棒状電極25が絶縁物24で固定
され、絶縁物24における被処理液体23に浸漬させた
電極25との境界部近傍に高誘電体材料29を配置した
ものである。
【0027】被処理液23中において、電極25,26
間に電圧を印加して電極25から放電が生ずるまでの1
00ナノ秒間は、電界強度の分布は誘電率に支配を受け
易い。従って、電界強度の高くなり易い電極25周辺の
絶縁物表面に、上記の様な高誘電体材料29を配置する
ことによって、該絶縁物表面近傍の電界強度を被処理水
と同等程度とすることができ、結果として該絶縁物表面
における沿面放電の発生を抑制することができるのであ
る。また、棒状電極25は高誘電体材料29で覆われて
いるので、漏れ電流28の発生も最小限に抑えることが
できる。
【0028】前記高誘電体材料としては、Bi23(比
誘電率:ε=40)、SiC(ε=42)、Ta2
5(ε=27)、ZrO2(ε=22.5)、HfO
2(ε=22)や、ハフニウム酸鉛(ε=90)やジル
コン酸鉛(ε=80)等のセラミックスが例として挙げ
られるが、より高い比誘電率を有することから、上記ハ
フニウム酸鉛やジルコン酸鉛等の様な比誘電率80〜9
0の高誘電体セラミックスを用いることが好ましい。ま
た本発明は、高誘電体材料の形状まで規定するものでは
なく、その態様に応じて立方体、長方体、円柱のものな
どを用いることができる。また高誘電体材料は、図4
(a)に示す様な形態で配置される他、図4(b)や図
4(c)の如く配置されているものや、電界緩和領域に
接する絶縁物24の全表面が高誘電体材料29で覆われ
ているものであってもよい。
【0029】上記構成の放電処理装置において、棒状電
極25のみを被処理液23中に位置せしめ、かかる両電
極25、26の間に、棒状電極25の方がリング状の平
板電極26よりも高電位となるよう、高電圧パルス発生
装置27から、例えば数100ナノ秒以下の非常に急峻
な立ち上がりの高電圧パルスを両電極25、26間に印
加すればよい。尚、図4(a)では、棒状電極(アノー
ド電極)25のみが被処理水23に浸漬しているが、リ
ング状の平板電極(カソード電極)26のみが浸漬する
場合や、アノード電極およびカソード電極の両電極が浸
漬している場合にも本発明を適用することができる。以
下、実施形態2〜5について、図4(a)と同じ構成部
分については同一の符号を付して重複説明を避ける。
【0030】図5は、図4(a)の様な装置を用いて放
電処理を行った場合の電界強度を測定したもので、絶縁
物として材質がポリエチレンのものを用い、高誘電体と
してセラミック(比誘電率93)を用いている。図5に
おけるE1(アノード先端)の電界強度は1.28×1
8V/m、E2(アノードと高誘電体との境界近傍)
の電界強度は4.88×107V/m、E3(高誘電体
セラミックスと絶縁物[ポリエチレン]との境界近傍)の
電界強度は3.54×107V/mであった。一方図6
は、前記高誘電体を設けていない装置を用いて放電処理
を行った場合の電界強度を測定したもので、絶縁物とし
て材質がポリエチレンのものを用いている。図7は、図
6における棒状電極(アノード電極)中心からの距離と
電界強度との関係を示したもので、棒状電極と絶縁物と
の界面近辺の電界強度は7×107V/mであることが
分かる。
【0031】これらの結果を比較すると、本発明で規定
する如く高誘電体材料を配置することによって、絶縁物
における液体に浸漬させた電極との境界部近傍の、著し
く高い電界強度領域の電界強度が緩和されることがわか
る。
【0032】(実施形態2)本実施形態2は、絶縁物に
おける液体に浸漬させた電極との境界部近傍に、表面が
凸球面または凹球面を有する導電体材料もしくは半導体
材料を配置して前記電界緩和領域を形成する場合を示
す。
【0033】図8(a)は本実施形態2に係る放電処理
装置の構成を概略的に例示した断面図であり、該放電処
理装置は、電極が棒状電極25とリング状の平板電極2
6とで構成されており、棒状電極25が絶縁物24で固
定され、絶縁物24における被処理液体に浸漬させた電
極25との境界部近傍に、表面が凸球面または凹球面を
有する導電体材料もしくは半導体材料30を配置してい
る。
【0034】この様に表面が凸球面または凹球面を有す
る導電体材料もしくは半導体材料を配置することによっ
て、高電圧パルス発生装置27から電極25に流れる電
流を、前記導電体材料もしくは半導体材料30で一端拡
散させて電界緩和領域を形成することができるのであ
る。このことは、アノード電極表面からの距離と電界強
度の関係をアノード電極径別に示した図9からも説明す
ることができる。即ち、図9は、アノード電極径が大き
くなるほどアノード電極表面の電界強度が小さくなるこ
とを示したグラフであるが、本発明にて、絶縁物24に
おける被処理液体に浸漬させた電極25との境界部近傍
に前記凸球面または凹球面を有する導電体材料もしくは
半導体材料30を設けることによって、アノード電極径
を大きくした場合と同様の電界強度緩和の効果が得られ
るのである。更に前記導電体材料もしくは半導体材料3
0を通過した電流を再度電極25に集中させて、電極先
端部分36で良好に放電を行うこともできるのである。
【0035】前記導電体材料として、その材質が鉄、ス
テンレス鋼、アルミニウム、しんちゅうのもの等が挙げ
られるが、腐食防止の観点からはステンレス鋼を用いる
ことが好ましい。また本発明で用いる半導体材料は、導
電体と絶縁体の中間の抵抗値を有する材質であって20
0Ω・m〜108Ω・mのものをいい、その材質がカー
ボン、シリコンのもの等が挙げられるが、割れ難さから
シリコン製のものを用いることが好ましい。また、前記
凸球面または凹球面には、完全な球状のものの他、曲率
の異なる面を有する球面体などが含まれる。前記表面が
凸球面または凹球面を有する導電体材料もしくは半導体
材料30は、図8(a)に示す様な形態で配置される
他、図8(b)や図8(c)の様に配置されているもの
であってもよい。
【0036】(実施形態3)本実施形態3は、絶縁物に
おける液体に浸漬させた電極との境界部近傍に、電気抵
抗体材料または半導体材料を配置して前記電界緩和領域
を形成する場合を示す。
【0037】図10(a)は本実施形態3に係る放電処
理装置の構成を概略的に例示した断面図であり、該放電
処理装置は、電極が棒状電極25とリング状の平板電極
26とで構成されており、棒状電極25が絶縁物24で
固定され、絶縁物24における被処理液体に浸漬させた
電極25との境界部近傍に、電気抵抗体材料または半導
体材料31を配置している。
【0038】この様に電気抵抗体材料または半導体材料
31を配置することによって、電界強度の弱まった電界
緩和領域が形成されることから、絶縁物表面における沿
面放電の発生を抑制することができるのである。また、
棒状電極25は電気抵抗体材料または半導体材料31で
覆われているので、漏れ電流28の発生も最小限に抑え
ることができる。
【0039】尚、本実施形態3に係るその他の放電処理
装置として、図11(a)に示すように、絶縁物におけ
る液体に浸漬させた電極との境界部近傍に電気抵抗体材
料または半導体材料を形成すると共に、これらに液体浸
漬電極を接合して前記電界緩和領域を形成する構成とす
ることもできる。この様に、絶縁物24における被処理
液体に浸漬させた電極25との境界部近傍に、電気抵抗
体材料または半導体材料31を配置し、かつ電極25の
液体浸漬部分34を該電気抵抗体材料または半導体材料
31に接合することによっても、電界強度の弱まった電
界緩和領域が形成されることから、絶縁物表面における
沿面放電の発生を抑制することができる。また、該電気
抵抗体材料または半導体材料31を設け、放電発生に必
要な長さの棒状電極部分34を該電気抵抗体材料または
半導体材料31に接合することで、漏れ電流28の発生
も最小限に抑制することができるのである。
【0040】本発明の電気抵抗体材料とは抵抗率が0.
1〜200Ω・mのものをいい、その材質が鉄、ステン
レス鋼、アルミニウム、しんちゅうのもの等が挙げられ
るが、腐食防止の観点からはステンレス鋼を用いること
が好ましい。またここで用いる半導体材料は、導電体と
絶縁体の中間の抵抗値を有する材質であって200Ω・
m〜108Ω・mのものをいい、その材質がシリコン、
カーボンのものが挙げられるが、シリコン製のものが割
れ難いので好ましく使用できる。本発明は、前記電気抵
抗体材料または半導体材料の形状まで特定するものでは
なく、その態様に応じて立方体、長方体、円柱のものな
どを用いることができる。また前記電気抵抗体材料また
は半導体材料は、図10(a)や図11(a)に示す様
な形態で配置される他、図10(b)や図10(c)、
図11(b)や図11(c)の様に配置されていてもよ
い。
【0041】また前記図11の実施形態では、電極25
の被処理水23に浸漬する部位34を前記電気抵抗体材
料または半導体材料31に接合して設けているが、該接
合方法として、溶接、ハンダ付、接着、はめ込み、ネジ
等が挙げられる。
【0042】(実施形態4)本実施形態4は、絶縁物に
おける液体に浸漬させた電極との境界部近傍に、絶縁物
側から離れる方向に導電率が順次高くなる材料を配置し
て前記電界緩和領域を形成する場合を示す。
【0043】図12(a)は本実施形態4に係る放電処
理装置の構成を概略的に例示した断面図であり、該放電
処理装置は、電極が棒状電極25とリング状の平板電極
26とで構成されており、棒状電極25が絶縁物24で
固定され、絶縁物24における被処理液体に浸漬させた
電極25との境界部近傍に、絶縁物側から離れる方向に
導電率が順次高くなる材料32を配置している。
【0044】この様に絶縁物24側から離れる方向に導
電率が順次高くなる材料32を配置することによって、
電界強度の弱まった電界緩和領域が形成されることか
ら、絶縁物表面における沿面放電の発生を抑制すること
ができるのである。また棒状電極25は、絶縁物24側
から離れる方向に導電率が順次高くなる材料32で覆わ
れているので、漏れ電流28の発生も最小限に抑えるこ
とができる。
【0045】尚、本実施形態4に係るその他の放電処理
装置として、図13(a)に示すように、絶縁物におけ
る液体に浸漬させた電極との境界部近傍に絶縁物側から
離れる方向に導電率が順次高くなる材料を形成すると共
に、これらに液体浸漬電極を接合して前記電界緩和領域
を形成する構成とすることもできる。この様に、絶縁物
24における被処理液体に浸漬させた電極25との境界
部近傍に、絶縁物24側から離れる方向に導電率が順次
高くなる材料32を配置し、かつ電極25の液体浸漬部
分34を絶縁物24側から離れる方向に導電率が順次高
くなる材料32に接合することによっても、電界強度の
弱まった電界緩和領域が形成されることから、絶縁物表
面における沿面放電の発生を抑制することができる。ま
た、絶縁物24側から離れる方向に導電率が順次高くな
る材料32を設け、放電発生に必要な長さの棒状電極部
分34を該絶縁物24側から離れる方向に導電率が順次
高くなる材料32に接合することで、漏れ電流28の発
生も最小限に抑制することができるのである。
【0046】本実施形態4における電界緩和領域を形成
する材料は、絶縁物側から離れる方向に導電率が順次高
くなるものであればよく、構成形態まで特定するもので
はない。従って、絶縁物24側から離れる方向に導電率
が順次高くなるシート状の材料を積層したものであって
もよいし、液体状や砂状の原材料を注入して形成された
ものであってもよく、その形状が、立方体、長方体、円
柱の形状のもの等を用いることができる。上記材料32
の形成には、原材料としてシリコンや、カーボン、ステ
ンレス鋼等を用いたり、ゴムにカーボン量を変化させて
添加し、導電率を変化させたものを用いたりすることが
できる。前記絶縁物側から離れる方向に導電率が順次高
くなる材料は、図12(a)や図13(a)に示す様な
形態で配置される他、図12(b)や図12(c)、図
13(b)や図13(c)の如く配置されていてもよ
い。
【0047】また前記図13の実施形態では、電極25
の被処理水23に浸漬する部分34を前記絶縁物24側
から離れる方向に導電率が順次高くなる材料32に接合
して設けているが、該接合方法としては、上記実施形態
3の場合と同様に溶接、ハンダ付、接着、はめ込み、ネ
ジ等が挙げられる。
【0048】(実施形態5)本実施形態5は、絶縁物と
他方電極との最短距離が電極間最短距離の1.2倍以上
となるよう配置して、絶縁物における液体に浸漬させた
電極との境界部近傍に前記電界緩和領域を形成する場合
を示す。
【0049】図14は本実施形態5に係る放電処理装置
の構成を概略的に例示する断面図であり、該放電処理装
置は、電極が棒状電極25とリング状の平板電極26と
で構成されており、棒状電極25が絶縁物24で固定さ
れ、該絶縁物24と他方電極26との最短距離が電極2
5と電極26の間の最短距離の1.2倍以上となるよう
配置された形態となっている。
【0050】本発明では、前記実施形態1〜4に示す如
く、絶縁物24における該液体に浸漬させた電極25と
の境界部近傍に特定の材料を配置するのみならず、この
様に絶縁物およびアノード電極とカソード電極の両電極
を配置することによっても、絶縁物24における液体に
浸漬させた電極25との境界部近傍の電界強度を小さく
することができ、前記電界緩和領域を形成することがで
きるのである。前記絶縁物と他方電極との最短距離は、
電極25と電極26の間の最短距離の1.4倍以上であ
ることが好ましい。
【0051】尚、図14の処理容器22の体積は、前記
図4、図8または図10〜13に示した処理容器22と
比較して相対的に小さいが、この様に、絶縁物およびア
ノード電極とカソード電極の両電極の配置を制御して前
記電界緩和領域を形成する場合には、処理容器の体積を
相対的に狭めて処理系内の電気抵抗値を多少上昇させる
ことによって、漏れ電流の低減を図ることができるので
ある。
【0052】電極の形態として、上述した実施形態1〜
5では、棒状の電極およびリング状の平板電極との組み
合わせを示したが、本発明はこれに限定されるものでは
なく、棒状または線状電極と円筒状電極の組み合わせ、
パイプ状電極とリング状電極との組み合わせ、パイプ状
電極と円筒状電極との組み合わせ等であってもよい。望
ましくは、上述した実施形態1〜5にて用いた棒状の電
極とリング状の平板電極との組み合わせの如く、立体的
な広範囲の放電領域を確保できるものがよい。尚、棒状
または線状の電極を用いる場合には、該電極の径を小さ
くした方が放電領域における電界強度を高めることがで
き、低電圧で効率よく放電処理を行えることができるの
で望ましい。本発明の高電圧パルス放電処理に用いる電
極の素材としては、カソード電極にタングステン・トリ
ウム合金等が、アノード電極にステンレス鋼等が推奨さ
れ、また、両電極を銅・タングステン合金等としてもよ
い。
【0053】本発明で用いる絶縁物として、その材質が
セラミックス、ポリエチレン、テフロン(登録商標)の
もの等を好ましく用いることができ、その形状は、態様
に応じて立方体状、長方体状、円柱状のもの等を用いる
ことができる。
【0054】また、上述した実施形態1〜5では、本発
明に係る放電処理方法および装置の適用対象である被処
理液体について明言していないが、本発明の放電処理方
法および装置は、例えば、下水処理場や屎尿処理場にお
ける下水処理過程或いは食品工場や化学工場の排水過程
等から排出される有機性廃液、生物実験培養液、飲料水
または飲料物製造用水等の被処理液体に対し、その1種
または2種以上が混在するものに適用でき、その改質を
図ることができる。
【0055】
【発明の効果】以上に詳述したように、本発明の如く液
体の処理方法・装置を採用することによって、絶縁物に
おける被処理液体に浸漬させた電極との境界部近傍の高
電界強度を緩和させて該領域にて生ずる沿面放電を抑止
することができ、また該絶縁物を設けることで漏れ電流
も抑制しつつ、効率よく液体の放電処理操業を行うこと
ができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明者らが先に提案した高電圧処理装置の構
成例を模式的に示した図である。
【図2】従来の放電処理装置を模式的に示した断面説明
図である。
【図3】従来のその他の放電処理装置を模式的に示した
断面説明図である。
【図4】(a)は実施形態1に係る放電処理装置の構成
を概略的に例示した断面図であり、(b)および(c)
は高誘電体材料29のその他の配置形態を示した棒状電
極25近傍の拡大断面図である。
【図5】実施形態1における放電時の棒状電極25と平
板電極26間の電界強度の分布を示す等電位面図であ
る。
【図6】従来例における放電時の棒状電極と平板電極間
の電界強度の分布を示す等電位面図である。
【図7】図6に示す従来例における棒状電極(アノード
電極)中心からの距離と電界強度との関係を示すグラフ
である。
【図8】(a)は実施形態2に係る放電処理装置の構成
を概略的に例示した断面図であり、(b)および(c)
は表面が凸球面または凹球面を有する導電体材料または
半導体材料30のその他の配置形態を示した棒状電極2
5近傍の拡大断面図である。
【図9】アノード電極表面からの距離と電界強度の関係
をアノード電極径別に示したグラフである。
【図10】(a)は実施形態3に係る放電処理装置の構
成を概略的に例示した断面図であり、(b)および
(c)は電気抵抗体材料または半導体材料31のその他
の配置形態を示した棒状電極25近傍の拡大断面図であ
る。
【図11】実施形態3に係るその他の放電処理装置の構
成を概略的に例示した断面図である。
【図12】(a)は実施形態4に係る放電処理装置の構
成を概略的に例示した断面図であり、(b)および
(c)は絶縁物側から離れる方向に導電率が高くなる材
料32のその他の配置形態を示した棒状電極25近傍の
拡大断面図である。
【図13】実施形態4に係るその他の放電処理装置の構
成を概略的に例示した断面図である。
【図14】実施形態5に係る放電処理装置の構成を概略
的に例示した断面図である。
【符号の説明】
1 活性汚泥槽 2 沈澱装置 3 改質槽 4 電源 5 棒状電極 6 平板電極 7,8,9,12,15 経路 10 沈澱汚泥 11,13 返送経路 16,17 ポンプ 18 改質装置 20 上澄液 22 処理容器 23 被処理液 24 絶縁物 25 棒状電極 26 リング状の平板電極 27 高電圧パルス電源 28 漏れ電流 29 高誘電体 30 表面が凸球面または凹球面を有する導電体材料ま
たは半導体材料 31 抵抗体材料または半導体材料 32 絶縁物側から離れる方向に導電率が順次高くなる
材料 33 絶縁物被覆電極部分 34 液体浸漬電極部分 35 沿面放電 36 棒状電極25の電極先端部位 37 絶縁物における液体に浸漬させた電極との境界部
近傍
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4D061 DA03 DA08 DB01 DB19 DC03 DC04 EA13 EB07 EB19 EB20 EB34

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも一対の電極対を備えると共
    に、該電極対のうちの少なくとも一方の電極が絶縁物か
    ら突出して液体に浸漬される様に配置し、上記電極対間
    に高電圧パルスを印加して電極間に放電状態を形成させ
    ることによって、電極対間に存在する液体を改質する液
    体の処理方法において、 該絶縁物における該液体に浸漬させた電極との境界部近
    傍に電界緩和領域を形成することによって、該絶縁物表
    面で生じる沿面放電を軽減させるようにすることを特徴
    とする液体の処理方法。
  2. 【請求項2】 前記電界緩和領域を高誘電体材料を配置
    して形成する請求項1に記載の液体の処理方法。
  3. 【請求項3】 前記電界緩和領域を表面が凸球面または
    凹球面を有する導電体材料もしくは半導体材料を配置し
    て形成する請求項1に記載の液体の処理方法。
  4. 【請求項4】 前記電界緩和領域を電気抵抗体材料また
    は半導体材料を配置して形成する請求項1に記載の液体
    の処理方法。
  5. 【請求項5】 前記電界緩和領域を前記絶縁物側から離
    れる方向に導電率が順次高くなる材料を配置して形成す
    る請求項1に記載の液体の処理方法。
  6. 【請求項6】 前記電界緩和領域を、前記絶縁物と他方
    電極との最短距離が電極間最短距離の1.2倍以上とな
    るよう配置して形成する請求項1に記載の液体の処理方
    法。
  7. 【請求項7】 少なくとも一対の電極対を備えると共
    に、該電極対のうちの少なくとも一方の電極が絶縁物か
    ら突出して液体に浸漬される様に配置され、上記電極対
    間に高電圧パルスを印加して電極間に放電状態を形成さ
    せることによって、電極対間に存在する液体を改質する
    液体の処理装置において、 該絶縁物における該液体に浸漬させた電極との境界部近
    傍に電界緩和領域が形成されていることを特徴とする液
    体の処理装置。
  8. 【請求項8】 前記電界緩和領域は、高誘電体材料を配
    置して形成されたものである請求項7に記載の液体の処
    理装置。
  9. 【請求項9】 前記電界緩和領域は、表面が凸球面また
    は凹球面を有する導電体材料もしくは半導体材料を配置
    して形成されたものである請求項7に記載の液体の処理
    装置。
  10. 【請求項10】 前記電界緩和領域は、電気抵抗体材料
    または半導体材料を配置して形成されたものである請求
    項7に記載の液体の処理装置。
  11. 【請求項11】 前記電界緩和領域は、前記絶縁物側か
    ら離れる方向に導電率が順次高くなる材料を配置して形
    成されたものである請求項7に記載の液体の処理装置。
  12. 【請求項12】 前記電界緩和領域は、前記絶縁物と他
    方電極との最短距離が電極間最短距離の1.2倍以上と
    なるよう配置して形成されたものである請求項7に記載
    の液体の処理装置。
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