JP2003064318A - 撥水性被膜とその作製方法 - Google Patents

撥水性被膜とその作製方法

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JP2003064318A
JP2003064318A JP2001261720A JP2001261720A JP2003064318A JP 2003064318 A JP2003064318 A JP 2003064318A JP 2001261720 A JP2001261720 A JP 2001261720A JP 2001261720 A JP2001261720 A JP 2001261720A JP 2003064318 A JP2003064318 A JP 2003064318A
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repellent
polymer
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Youho Tei
容宝 鄭
Genjitsu Kuruma
源日 車
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RI YOUKO
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水に対する接触角が150°以上となる撥水
性被膜を簡便に形成する新たな手段と、かかる新たな形
成方法を用いて、高い再現性で作製可能な水に対する接
触角が150°以上となる撥水性被膜を提供する。 【解決手段】 表面上、粘着性を有する撥水性高分子を
含む層と、その表面に固着された撥水性シリカ粒子とか
らなる被膜であり、粘着性を有する撥水性高分子を含む
層自体の表面における水の接触角は、120°以下であ
り、撥水性シリカ粒子の平均粒子径は、0.1〜100
μmの範囲に、対応させて、その表面に固着された粒子
の面密度は、102〜108個/mm2の範囲に選択した
撥水性被膜とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、撥水性被膜ならび
に撥水性被膜の作製方法に関し、より具体的には、水の
接触角が120°に満たない材料からなる表面上に形成
した際、その被膜表面における水の接触角を150°以
上とすることが可能な撥水性被膜、ならびに、かかる撥
水性被膜を作製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プラスチック、ゴム、金属、ガラスなど
の材料からなる表面への、水滴の付着は、これら表面に
対する水の濡れ性に起因している。具体的には、この水
の濡れ性のため、平坦な表面を持つ、プラスチック、ゴ
ム、金属、ガラスなどの材料からなる表面へ雨水などの
落下すると、水自体の表面張力とこの濡れ性に由来する
密着力との均衡する範囲内の液量で水滴がこれら表面に
付着する。この状態で、付着した水滴が乾固すると、雨
水中に含まれていた汚濁物が、汚れとして残留する。ま
た、付着した水滴が乾固するまでの間に、大気中に浮遊
している微細な塵などが水滴表面に付着することで、更
に汚れが増す。場合によっては、大気中に浮遊している
黴の胞子が、水滴表面に付着し、発芽し、菌体の増殖を
起こすこともある。
【0003】身近に体験する事例としては、自動車のフ
ロントガラスなど、表面に落下した雨滴が流れ落ち易す
くするため、ある程度の角度を持って配置されている場
合でも、一定のサイズに達しない水滴は流れ落ちない現
象が起こる。このような比較的に小さな水滴が付着する
ため、視界を悪くし、雨天における走行時の大きな妨げ
ともなっている。あるいは、窓ガラスのように、垂直に
配置されているガラス面においても、大気中の水分が結
露する現象がよく見られるが、この結露現象も、同じ
く、水の濡れ性のため、一定のサイズに達しない水滴は
流れ落ちない現象の一種である。窓ガラスの場合、自動
車のフロントガラスのように、ワイパーを利用して、比
較的に小さな水滴を掃き集めて、流れ落ちる量とするが
なされないので、結露した比較的に小さな水滴がそのま
ま残り、乾固すると、後に水滴の跡が汚れとして残って
しまう。同様な水滴付着の現象は、プラスチック、ゴ
ム、金属、ガラスなど、ある程度、水に対する濡れ性を
示す材料表面で一般的に起きている。
【0004】この水滴付着を回避する手段として、撥水
性被膜を形成する方法、ならびに、親水性材料の表面を
利用する方法が提案されている。親水性材料の被膜を利
用する方法の代表的なものとして、酸化チタン膜が知ら
れている。この酸化チタンは、半導体の一種であり、そ
の性質を利用して、その表面上で各種光化学反応を起こ
すことが従来より知られているが、それに加えて、その
結晶構造に起因して、水との濡れ性が極めて優れ、超親
水性表面となる。従って、酸化チタン表面に水滴が落下
しても、その表面上で速やかに拡り、水滴形状が維持で
きない。この拡った水は、互いに集まり、容易に流れ落
ちる結果、この酸化チタンような超親水性材料で被覆さ
れた表面上では、最早水滴の付着が起こらなくなる。た
だし、この酸化チタンなどの超親水性材料を利用する場
合、予め、下地の表面に、緻密で平坦な酸化チタン膜層
を形成する必要があり、その利用範囲は自ずから限定を
受ける。
【0005】一方、撥水性被膜を形成する方法では、撥
水性を示す有機高分子の塗布膜を利用して、水に対する
濡れ性を大幅に低下させる手段が広く利用されている。
所謂、撥水性コート剤と呼ばれるものであり、既に、シ
リコーン系とフッ素系の二種の撥水性有機高分子を利用
する撥水性コート剤が市販されてもいる。これら撥水性
有機高分子を、溶剤中に溶解した溶液とし、目的とする
表面に均一に塗布し、溶剤を蒸散・除去して、撥水性有
機高分子の被膜としている。得られる撥水性有機高分子
被膜は、用いている撥水性有機高分子の撥水性のため、
その表面は、水に対する濡れ性が大幅に低下し、付着可
能な水滴の大きさ上限は大幅に下がる結果、大半の水滴
は容易に表面を滑落する。また、被膜形成が、溶剤中に
溶解した溶液の塗布、その後の溶媒の自然蒸散という手
段を利用するので、対象となる表面の形状に依存せず利
用でき、室外において、種々の材料からなる物品表面へ
の応用に適している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】かかる撥水性コート剤
など、塗布形成可能な撥水性被膜を利用する方法におい
ては、撥水性被膜上における水の濡れ性が低いほど、そ
の撥水性能、水滴の滑落性が優れたものとなる。この水
の濡れ性の指標としては、水に対する接触角を通常利用
され、この接触角が大きいほど水の濡れ性が低いことを
示す。水滴付着を抑制する際には、この水に対する接触
角が少なくとも140°以上となる撥水性被膜を利用す
ることが必要となる。
【0007】上記の市販されている撥水性コート剤に利
用されているシリコーン系とフッ素系の二種の撥水性有
機高分子自体は、その被膜上における水に対する接触角
は、110°前後であり、ある程度の大きさの水滴の付
着防止には効果を有するものの、微細な水滴の付着をも
抑制するには至っていない。
【0008】より高い撥水性能、水滴の滑落性を有する
撥水性被膜、つまり、水に対する接触角が少なくとも1
40°以上となる撥水性被膜を形成可能な手段が更に望
まれている。特に、水に対する接触角が150°以上の
撥水性被膜となると、かかる撥水性被膜を形成した表面
を、僅かに、例えば、20℃程度傾けるのみで、微細な
水滴に至るまで、簡単に滑落を起こすので、水滴付着に
対する十分な防止効果が得られ、水に対する接触角が1
50°以上となる撥水性被膜を形成する手段の開発が望
まれている。既に、幾つか、水に対する接触角が150
°以上となる撥水性被膜を形成する手段が提案されてお
り、例えば、特開平2−8263号公報、特開平2−8
284号公報、特開平2−8285号公報などには、フ
ルオロアルキル基、シリコンを含む高分子を撥水性材料
を利用し、かかる撥水性材料を溶解可能な芳香族炭化水
素溶媒や、含ハロゲン炭化水素溶媒を含む、混合溶媒中
に、この撥水性材料と微細な粒状物を含む混合液組成物
を利用して、場合によっては、接触角が150°以上と
なる撥水性被膜が得られることが記載されている。しか
し、なお、水滴付着に対する十分な防止効果が得られ
る、水に対する接触角が150°以上となる撥水性被膜
を形成する新たな手段の開発が望まれている。
【0009】本発明は前記の課題を解決するもので、本
発明の目的は、水滴付着に対する十分な防止効果が得ら
れる、水に対する接触角が150°以上となる撥水性被
膜を簡便に形成する新たな手段と、かかる新たな形成方
法を用いて、高い再現性で作製可能な水に対する接触角
が150°以上となる撥水性被膜を提供することにあ
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の課
題を解決すべく、鋭意研究・検討を進めたところ、その
材料自体は、撥水性を有するものの、平坦な表面とした
際には、水に対する接触角が120°に満たない、例え
ば、110°以下であるものであっても、その表面に微
細な凹凸構造を持たせると、所謂、フラクタル構造に類
する被膜表面構造を達成すると、かかる表面上では、実
質的な水に対する接触角は、140°以上、加えて、条
件の最適化を行うと、接触角が150°以上の超撥水性
を示すことを見出した。かかる知見に基づき、水に対す
る接触角が150°以上の超撥水性を示す撥水性被膜を
簡便に形成する手段、条件の最適化を進めたところ、本
発明者らは、撥水性被膜の主な構成要素である樹脂成分
として、粘着性を有する撥水性高分子を利用し、この粘
着性を有する撥水性高分子を含む層自体の表面における
水の接触角は、120°以下である場合であっても、全
体の被膜表面の構造を、この粘着性を有する撥水性高分
子を含む層と、前記粘着性を有する撥水性高分子を含む
層表面に固着された、撥水性シリカ粒子とからなる被膜
とすることにより、前記の粘着性を有する撥水性高分子
を含む層自体の表面における水の接触角より、格段に大
きな接触角が得られることを見出した。更に、本発明者
らは、その条件の最適化を図るため検討を進めた結果、
用いる撥水性シリカ粒子の平均粒子径を、0.1〜10
0μmの範囲に選択した上で、対応させて、被膜表面に
固着されるこの撥水性シリカ粒子の面密度を、102
108個/mm2の範囲に選択することで、得られる撥水
性被膜においては、実質的な水に対する接触角が150
°以上の超撥水性が達成されることを見出し、本発明を
完成するに至った。
【0011】すなわち、本発明の撥水性被膜は、水の接
触角が120°に満たない材料からなる表面上に形成し
た際、その被膜表面における水の接触角を150°以上
とすることが可能な撥水性被膜であって、前記表面上に
形成された、粘着性を有する撥水性高分子を含む層と、
前記粘着性を有する撥水性高分子を含む層表面に固着さ
れた、撥水性シリカ粒子とからなる被膜であり、前記粘
着性を有する撥水性高分子を含む層自体の表面における
水の接触角は、120°以下であり、前記撥水性シリカ
粒子の平均粒子径は、0.1〜100μmの範囲に選択
され、対応させて、表面に固着された前記撥水性シリカ
粒子の面密度は、102〜108個/mm2の範囲に選択
されていることを特徴とする撥水性被膜である。その
際、前記粘着性を有する撥水性高分子を含む層の平均膜
厚は、前記撥水性シリカ粒子の平均粒子径に対して、
0.1〜10倍の範囲に選択されていることが好まし
い。
【0012】本発明の撥水性被膜においては、前記粘着
性を有する撥水性高分子を含む層は、粘着性含フッ素高
分子あるいは、前記粘着性含フッ素高分子と粘性シリコ
ーン樹脂との混合物からなる層であることが望ましい。
その際、前記粘着性含フッ素高分子として、水に対する
溶解性を有さない含フッ素高分子であって、かつアルコ
ール、エステル、ケトン、エーテルからなる群から選択
され、分子内にハロゲン置換を有していない有機溶媒で
あって、その沸点は、120℃以下、60℃以上である
有機溶媒のいずれかに対して、溶解可能な含フッ素高分
子を用いることがより好ましい。また、前記粘性シリコ
ーン樹脂としては、アルコール、エステル、ケトン、エ
ーテルからなる群から選択され、分子内にハロゲン置換
を有していない有機溶媒であって、その沸点は、120
℃以下、60℃以上である有機溶媒のいずれかに対し
て、溶解可能な粘性シリコーン樹脂を利用することがよ
り好ましい。
【0013】加えて、本発明は、上記する本発明の撥水
性被膜を形成する方法の発明をも提供し、すなわち、本
発明にかかる撥水性被膜の作製方法は、水の接触角が1
20°に満たない材料からなる表面上に、その被膜表面
における水の接触角を150°以上とすることが可能な
撥水性被膜を形成する方法であって、前記表面上に、粘
着性を有する撥水性高分子を含む層を形成し、また、前
記粘着性を有する撥水性高分子を含む層の表面に、撥水
性シリカ粒子を均一な面密度で固着し、表面に撥水性シ
リカ粒子が固着されてなる粘着性を有する撥水性高分子
を含む層からなる被膜を形成する工程を有し、前記粘着
性を有する撥水性高分子は、表面に撥水性シリカ粒子が
固着されていない場合、かかる粘着性を有する撥水性高
分子を含む層自体表面における水の接触角が、120°
以下となる材料を選択し、前記撥水性シリカ粒子は、そ
の平均粒子径が0.1〜100μmの範囲に選択される
粒子を用い、対応させて、表面に固着される前記撥水性
シリカ粒子の面密度を、102〜108個/mm2の範囲
に選択することを特徴とする撥水性被膜の作製方法であ
る。その際、前記粘着性を有する撥水性高分子を含む層
の平均膜厚を、前記撥水性シリカ粒子の平均粒子径に対
して、0.1〜10倍の範囲に選択することが好まし
い。
【0014】本発明の撥水性被膜の作製方法において
は、前記粘着性を有する撥水性高分子として、粘着性含
フッ素高分子あるいは、前記粘着性含フッ素高分子と粘
性シリコーン樹脂との混合物のいずれかを用いることが
好ましい。その際、利用する前記粘着性含フッ素高分子
は、水に対する溶解性を有さない含フッ素高分子であっ
て、かつアルコール、エステル、ケトン、エーテルから
なる群から選択され、分子内にハロゲン置換を有してい
ない有機溶媒であって、その沸点は、120℃以下、6
0℃以上である有機溶媒のいずれかに対して、溶解可能
な含フッ素高分子であることがより好ましい。一方、利
用する前記粘性シリコーン樹脂は、アルコール、エステ
ル、ケトン、エーテルからなる群から選択され、分子内
にハロゲン置換を有していない有機溶媒であって、その
沸点は、120℃以下、60℃以上である有機溶媒のい
ずれかに対して、溶解可能な粘性シリコーン樹脂である
ことがより好ましい。
【0015】本発明の撥水性被膜の作製方法において
は、例えば、前記粘着性を有する撥水性高分子を含む層
表面上への撥水性シリカ粒子の固着は、前記撥水性シリ
カ粒子を、前記粘着性を有する撥水性高分子を含む溶液
中に分散してなる分散液を用い、かかる分散液を、被膜
形成を行う表面上に、直接塗布または噴霧して、均一な
分散液層を形成し、その後、分散液層内の前記粘着性を
有する撥水性高分子を含む溶液に含まれる溶媒を蒸発・
除去し、前記粘着性を有する撥水性高分子の表面上への
析出を行い、次いで、残余する分散液層内に含まれる前
記撥水性シリカ粒子を析出した前記粘着性を有する撥水
性高分子の層上にかかる粘着性を有する撥水性高分子を
利用して固着する方法を利用することができる。この方
法を用いる際には、前記分散液中に含有される撥水性シ
リカ粒子の分散密度を、0.50wt%〜1.5wt%
の範囲に選択することが好ましい。加えて、前記分散液
中に含有される前記粘着性を有する撥水性高分子の濃度
を、0.01wt%〜1.0wt%の範囲に選択するこ
とがより好ましい。なお、前記分散液を構成する溶媒と
して、アルコール、エステル、ケトン、エーテルからな
る群から選択され、分子内にハロゲン置換を有していな
い有機溶媒であって、その沸点は、120℃以下、60
℃以上である有機溶媒のいずれかを用いることが望まし
い。
【0016】さらには、本発明の撥水性被膜の作製方法
においては、例えば、前記粘着性を有する撥水性高分子
を含む層表面上への撥水性シリカ粒子の固着は、前記粘
着性を有する撥水性高分子を含む溶液を用い、かかる溶
液を、被膜形成を行う表面上に、直接塗布または噴霧し
て、均一な溶液層を形成し、その後、溶液層内の前記粘
着性を有する撥水性高分子を含む溶液に含まれる溶媒を
蒸発・除去し、前記粘着性を有する撥水性高分子の表面
上への析出を行い、前記粘着性を有する撥水性高分子の
析出層を形成し、次いで、前記粘着性を有する撥水性高
分子を溶解可能な溶媒に前記撥水性シリカ粒子を分散し
てなる分散液を用い、かかる分散液を、前記粘着性を有
する撥水性高分子の析出層の表面上に、直接塗布または
噴霧して、均一な分散液層を形成し、その後、分散液層
内の前記粘着性を有する撥水性高分子を溶解可能な溶媒
を蒸発・除去し、部分的に再溶解した前記粘着性を有す
る撥水性高分子の表面上への再析出を行い、また、分散
液層内に含まれる前記撥水性シリカ粒子を再析出してい
る前記粘着性を有する撥水性高分子の層上にかかる粘着
性を有する撥水性高分子を利用して固着する方法を採用
することもできる。この方法を採用する際には、前記分
散液中に含有される撥水性シリカ粒子の分散密度を、
0.50wt%〜1.5wt%の範囲に選択することが
好ましい。一方、前記溶液中に含有される前記粘着性を
有する撥水性高分子の濃度を、0.5wt%〜2.5w
t%の範囲に選択することが好ましい。なお、前記分散
液を構成する溶媒として、アルコール、エステル、ケト
ン、エーテルからなる群から選択され、分子内にハロゲ
ン置換を有していない有機溶媒であって、その沸点は、
120℃以下、60℃以上である有機溶媒のいずれかを
用いることが望ましい。
【0017】加えて、本発明の撥水性被膜は、より具体
的には、上記のいずれかの構成を有する撥水性被膜を、
光透過性を示す、粘着性を有する撥水性高分子を含む層
と、前記粘着性を有する撥水性高分子を含む層表面に固
着された、撥水性シリカ粒子とからなる被膜であること
を特徴とする撥水性被膜とすることができる。
【0018】また、本発明の撥水性被膜の用途の一つと
して、上記するいずれかの構成を有する撥水性被膜を形
成する、水の接触角が120°に満たない材料からなる
表面が塗板表面であり、かかる塗板表面に対する超撥水
性ワックス皮膜として、本発明の撥水性被膜を使用する
方法が挙げられる。あるいは、用途の一つとして、上記
するいずれかの構成を有する撥水性被膜を形成する、水
の接触角が120°に満たない材料からなる表面がガラ
ス表面であり、かかるガラス表面に対する超撥水性コー
ト皮膜として、本発明の撥水性被膜を使用する方法が挙
げられる。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の撥水性被膜においては、
水の接触角が120°に満たない材料からなる表面、例
えば、ガラス、金属などの無機材料や、プラスチック、
ゴムなどの有機材料により構成されている表面に対し
て、その表面全体を覆うように粘着性を有する撥水性高
分子を含む層で被覆し、この粘着性を有する撥水性高分
子を含む層の表面上に、含有している粘着性を有する撥
水性高分子の接着力を利用して、微細な粒子径の撥水性
シリカ粒子を緻密に固着することで、全体的に、かかる
均一な面密度を有する撥水性シリカ粒子が、フラクタル
構造に類する微視的な表面凹凸構造を形成している。そ
の結果、露呈している撥水性シリカ粒子自体は、高い撥
水性を有し、表面に乗っている水滴は、この撥水性シリ
カ粒子と密に接触するので、かかる撥水性被膜で覆われ
た表面上における、実質的な水に対する接触角は、少な
くとも、140°以上、特に、利用する撥水性シリカ粒
子の平均粒子径を、0.1〜100μmの範囲に、好ま
しくは0.5〜50μmの範囲に、より好ましくは、2
〜30μmの範囲に選択し、その際、対応させて、表面
に固着された前記撥水性シリカ粒子の面密度を、102
〜108個/mm2の範囲に、好ましくは、5×102
5×104個/mm2の範囲に選択することにより、接触
角が150°を超える、所謂、超撥水性の表面被覆膜と
なっている。
【0020】すなわち、本発明の撥水性被膜において
は、前記粘着性を有する撥水性高分子を含む層自体は、
本来の表面を構成する材料よりも、撥水性能に優れる樹
脂層である必要はあるものの、水との接触角が、120
°以下となる材料を選択することができる。従って、本
来の表面と、かかる粘着性を有する撥水性高分子を含む
層とを比較すると、水に対する接触角が極端に優る必要
はなく、少なくとも、粘着性を有する撥水性高分子を含
む層自体における、水に対する接触角は、90°を超
え、120°以下となる材料を選択することができる。
【0021】一方、撥水性シリカ粒子自体は、その表面
は高い撥水性を示すものであり、そのため、それ自体で
は、ある程度、水との濡れ性を有するガラス、金属など
の無機材料や、プラスチック、ゴムなどの有機材料によ
り構成されている表面に対する付着力は弱いものであ
る。そのため、前記粘着性を有する撥水性高分子を含む
層を利用して、その粘着性を利用して、撥水性シリカ粒
子のより安定な固着を達成している。
【0022】具体的には、撥水性シリカ粒子は、シリカ
表面に疎水性基を有する分子の被膜を被覆することによ
り撥水性を付与されており、この疎水性基との相互作用
により、相互に密着を達成できる粘着性を有する撥水性
高分子を利用する。より具体的には、シリコーン系また
はフッ素系の撥水性有機高分子の内、撥水性シリカ粒子
表面の疎水性皮膜分子との相溶性に富む、粘着性の撥水
性高分子を利用することが望ましい。同時に、粘着性を
有する撥水性高分子を含む層は、対象とする材料表面上
にも密着性を示すことも必要であり、これら二つの性能
を合わせ持つ粘着性の撥水性高分子の一例として、側鎖
として、水酸基を有する粘着性の含フッ素高分子、ある
いは、粘性シリコーンオイルなどの撥水性を有する粘着
性高分子を挙げることができる。従って、粘着性を有す
る撥水性高分子として、前記粘着性含フッ素高分子ある
いは、粘着性含フッ素高分子と粘性シリコーン樹脂との
混合物のいずれかを用いることがより好ましい。
【0023】前記の粘着性含フッ素高分子の一例、つま
り、好適な含フッ素高分子の具体例として、フルオロエ
チレン−ビニルエーテル共重合体のゼッフルGK−51
0(商品名:ダイキン工業(株)製)、ルミフロン(商
品名:旭硝子(株)製)などの市販されている含フッ素
高分子を挙げることができる。また、好適な粘性シリコ
ーン樹脂の具体例として、アミノ変性シリコーンの他、
エポキシ変性シリコーン(東レ・ダウ・コーニング SF
8413 等)、カルボキシ変性シリコーン(東レ・ダ
ウ・コーニング SF8418 等)などの市販されてい
るシリコーン樹脂を挙げることができる。
【0024】本発明の撥水性被膜においては、粘着性を
有する撥水性高分子を含む層の表面に、撥水性シリカ粒
子がその表面を露呈している状態で緻密に固着された状
態とする。そのため、撥水性シリカ粒子が、粘着性を有
する撥水性高分子を含む層の内部に完全に埋没する形態
を避けることが好ましい。具体的には、撥水性シリカ粒
子の平均粒子径に対して、表面に形成される粘着性を有
する撥水性高分子を含む層の平均膜厚を、前記平均粒子
径の0.1〜10倍の範囲にすることで、撥水性シリカ
粒子の大半が、粘着性を有する撥水性高分子を含む層の
樹脂層内部に埋没し、樹脂層表面上に、その表面を露呈
している状態で緻密に固着された状態で存在する撥水性
シリカ粒子数が減少することを防止できる。
【0025】その際、粘着性を有する撥水性高分子を含
む層を対象とする材料表面に均一な膜厚で被覆形成する
手段としては、かかる樹脂層を構成する粘着性の撥水性
高分子、例えば、前記粘着性含フッ素高分子と粘性シリ
コーン樹脂とを目的とする組成比で、有機溶媒中に均一
に溶解し、この溶液を利用して、表面に均一な塗布液層
を設け、含有する有機溶媒を蒸散・除去して、皮膜状に
析出する手法を用いることが望ましい。この溶液の塗布
液層を設ける際に利用する手段は、通常、液状の塗料等
の皮膜形成を行う際に利用される手段、例えば、ブラ
シ、ローラ塗布法、スプレー塗布法などが利用でき、ま
た、いずれの方法を採用する際にも、単位面積当たりの
塗布液量を所定の量に制御・調整する。
【0026】溶液を塗布した後、含有される有機溶媒を
蒸散・除去する工程は、室温下、自然乾燥により行うこ
とが、広い範囲への応用を図る上で好ましい。すなわ
ち、利用される有機溶媒は、室温付近で徐々に蒸発し、
長くとも、数時間の間には除去可能なものが好ましく、
より具体的には、その沸点は、120℃以下、60℃以
上である有機溶媒であって、アルコール、エステル、ケ
トン、エーテルからなる群から選択され、分子内にハロ
ゲン置換を有していない有機溶媒を利用するとより好ま
しい。この乾燥工程では、蒸散する有機溶媒は、回収、
処理を行うことが最も望ましいが、使用環境によって
が、少なくとも、一部が大気中に拡散する可能性があ
り、その際にも、環境を汚染したり、人体に悪影響を及
ぼさないものを用いることがより好ましい。その観点か
ら、分子内にハロゲン置換を有する有機溶媒、例えば、
ハロゲノアルカン類などは、環境汚染の要因となるもの
も多く、一般に好ましいものではない。同じく、芳香族
溶媒も、生体などへの影響を有するものが少なくなく、
一般に好ましいものではない。一方、アルコール、エス
テル、ケトン、エーテルからなる群から選択され、分子
内にハロゲン置換を有していない有機溶媒は、少量であ
れば水に溶解し、また、微生物により分解されるので、
最終的に環境汚染を生じないものとなり、より適するも
のである。
【0027】従って、粘着性を有する撥水性高分子を含
む層を構成する粘着性を有する撥水性高分子としては、
前記アルコール、エステル、ケトン、エーテルからなる
群から選択され、分子内にハロゲン置換を有していない
有機溶媒のうち、その沸点は、120℃以下、60℃以
上である有機溶媒に対して、溶解可能なものを選択する
ことがより望ましい。利用する前記粘着性含フッ素高分
子は、水に対する溶解性を有さない含フッ素高分子であ
って、かつアルコール、エステル、ケトン、エーテルか
らなる群から選択され、分子内にハロゲン置換を有して
いない有機溶媒であって、その沸点は、120℃以下、
60℃以上である有機溶媒のいずれかに対して、溶解可
能な含フッ素高分子、例えば、側鎖に水酸基を有するフ
ルオロエチレン−ビニルエーテル共重合体などであるこ
とがより好ましい。一方、利用する前記粘性シリコーン
樹脂は、アルコール、エステル、ケトン、エーテルから
なる群から選択され、分子内にハロゲン置換を有してい
ない有機溶媒であって、その沸点は、120℃以下、6
0℃以上である有機溶媒のいずれかに対して、溶解可能
な粘性シリコーン樹脂、例えば、アミノ変性シリコーン
などであることがより好ましい。
【0028】粘着性を有する撥水性高分子を含む層を構
成する粘着性を有する撥水性高分子は、その表面に撥水
性シリカ粒子を安定に固着する際、バインダーとして機
能するものであり、上記の粘着性含フッ素高分子、ある
いは、この粘着性含フッ素高分子と粘性シリコーン樹脂
との混合物を利用することが一層好ましい。一般的に、
上記の粘着性含フッ素高分子自体は、室温では固体状態
であるが、粘性シリコーン樹脂は、室温でも粘性液体状
態であるので、溶液塗布法を利用する時、粘着性含フッ
素高分子と粘性シリコーン樹脂との混合物を用いる際に
は、両者が分離することはなく、混合物の層として溶液
から析出する。勿論、有機溶媒に対する溶解度、溶液中
の含有濃度に応じて、析出初期と終期の間では、混合物
中の比率に若干の差違が生じるものの、最表面は、粘着
性含フッ素高分子と粘性シリコーン樹脂との比率は、当
初の比率よりも、両者の差が少なくなっている。その結
果、粘着性含フッ素高分子と粘性シリコーン樹脂との混
合物を用いる際、溶液塗布法を利用して得られる粘着性
を有する撥水性高分子を含む層の最表面は、用いている
粘着性含フッ素高分子と粘性シリコーン樹脂とが比較的
に近接する比率を示すものとすることができる。この併
用される粘性シリコーン樹脂は、室温でも液状であるた
め、形成される粘着性を有する撥水性高分子を含む層の
最表面において、析出される樹脂層の平坦性を向上させ
る機能を有する。そのため、粘性シリコーン樹脂を含む
混合物を利用すると、形成される樹脂層は、膜厚の局所
的な偏移がなく、平坦な表面となり、乱反射による光透
過性の低下を抑制する効果を示す。
【0029】一方、かかる粘着性を有する撥水性高分子
を含む層の表面に固着される撥水性シリカ粒子は、その
外形は、概ね球形のものを用いる。本発明の撥水性被膜
においては、粘着性を有する撥水性高分子を含む層の表
面に、その表面を露呈している状態で緻密に固着された
状態の撥水性シリカ粒子自体が、フラクタル構造に類す
る微細な凸部として機能し、この微細な凸部として機能
する撥水性シリカ粒子相互の表面面上での間隔を、フラ
クタル構造に類する作用を達成するに十分な狭いものと
している。そのため、利用する撥水性シリカ粒子の平均
粒子径は、少なくとも5μm以下、更に、平均粒子径を
細かなものを用いるとより好ましい。より具体的には、
利用する撥水性シリカ粒子の平均粒子径は、0.1〜1
00μmの範囲に、好ましくは0.5〜50μmの範囲
に、より好ましくは、2〜30μmの範囲に選択する。
隣接する撥水性シリカ粒子相互の平均間隔は、前記の平
均粒子径に応じて、狭くすることが必要となる。すなわ
ち、撥水性シリカ粒子の平均粒子径を、0.1〜100
μmの範囲に、好ましくは0.5〜50μmの範囲に、
より好ましくは、2〜30μmの範囲に選択する際に
は、対応させて、表面に固着された前記撥水性シリカ粒
子の面密度を、102〜108個/mm2の範囲に、好ま
しくは、5×102〜5×104個/mm2の範囲に選択
することにより、平均粒子径と粒子相互の平均間隔の比
率を適正な範囲とすることが可能となる。勿論、撥水性
シリカ粒子自体は、その表面は、極めて高い撥水性を示
すものであり、例えば、球形のシリカ粒子表面に、ヘキ
サメチルジシラザンを用いた撥水性処理を施したものな
どが好適である。
【0030】なお、撥水性シリカ粒子の平均粒子径を、
0.1〜100μmの範囲に、好ましくは0.5〜50
μmの範囲に、より好ましくは、2〜30μmの範囲に
選択し、対応させて、表面に存在する前記撥水性シリカ
粒子の面密度を、102〜108個/mm2の範囲に、好
ましくは、5×102〜5×104個/mm2の範囲に選
択すると、仮に、ガラス表面などへ、前記の撥水性シリ
カ粒子自体を直接付着させるのみでも、その表面は、超
撥水性を示すフラクタル構造に類したものとなり、実質
的な水に対する接触角は、少なくとも140°以上、通
常、150°を超えたものとできる。勿論、このような
付着された状態では、撥水性シリカ粒子は表面上に安定
に固定されておらず、本発明の撥水性被膜は、上記の粘
着性を有する撥水性高分子を含む層表面に、含有されて
いる粘着性を有する撥水性高分子をバインダーとして利
用することで、その固着状態に、実用上満足される、機
械的な強度・安定性を付与している。加えて、粘着性を
有する撥水性高分子を含む層自体も、対象とする表面よ
りも、その水に対する接触角は大きなものとすること
で、表面に固着されている撥水性シリカ粒子が部分的に
剥落した際にも、実質的な水に対する接触角を、通常、
150°を超えたものに長期間維持することを可能とし
ている。
【0031】表面の固着されている撥水性シリカ粒子の
面密度は高ければ、高いほど、平均的な撥水性シリカ粒
子相互の間隔は、狭くなり、撥水性は高くなるものの、
上記の撥水性シリカ粒子の面密度を、102〜108個/
mm2の範囲を超えて高くしても、それ以上の水に対す
る接触角の上昇は極僅かなものとなる。一方、固着され
ている撥水性シリカ粒子の面密度は高ければ、高いほ
ど、より緻密な凹凸構造の表面が形成されており、この
撥水性シリカ粒子の球面上表面による光屈折、乱反射に
起因して、光透過性がしだいに低下する。しかし、撥水
性シリカ粒子の平均粒子径を、0.1〜100μmの範
囲に、好ましくは0.5〜50μmの範囲に、より好ま
しくは、2〜30μmの範囲に選択し、その際、表面に
固着された前記撥水性シリカ粒子の面密度を、102
108個/mm2の範囲に、好ましくは、5×102〜5
×104個/mm2の範囲に選択することにより、極めて
高い撥水性を達成しつつ、前記の撥水性シリカ粒子の球
面上表面による光屈折、乱反射に由来する光透過性の低
下を最小限とでき、本発明の撥水性被膜全体として、そ
の光透過性、つまり、透明性の高いものに維持できる。
【0032】一方、粘着性を有する撥水性高分子を含む
層自体の膜厚が増すと、それを構成する粘着性を有する
撥水性高分子自体、光散乱を誘起する結果、光透過性、
つまり、透明性を低下させる要因となる。加えて、表面
に僅かに生じる膜厚揺らぎ自体、膜厚が厚くなるに伴
い、徐々に大きくなり、光屈折、乱反射に由来する光透
過性の低下要因ともなる。この観点からも、粘着性を有
する撥水性高分子を含む層の平均膜厚を、前記撥水性シ
リカ粒子の平均粒子径に対して、0.1〜10倍の範囲
に選択することで、光透過性、透明性も好適な範囲に維
持できるので、一層好ましい。
【0033】なお、この本発明の撥水性被膜を形成する
方法は、粘着性を有する撥水性高分子を含む層の形成
と、その表面上への撥水性シリカ粒子の固着を同時に行
うため、撥水性シリカ粒子を、前記粘着性を有する撥水
性高分子を含む溶液中に分散してなる分散液を用いて、
この分散液を、被膜形成を行う表面上に、直接塗布また
は噴霧して、均一な分散液層を形成する方法を採ること
ができる。その後、分散液層内の前記粘着性を有する撥
水性高分子を含む溶液に含まれる溶媒を、放置する間に
蒸発・除去すると、含まれている粘着性を有する撥水性
高分子の表面上への析出が始まり、次いで、分散溶媒が
更に減少すると、残余する分散液層内に含まれる前記撥
水性シリカ粒子が、既に析出した粘着性を有する撥水性
高分子の層上に沈降し、表面の粘着性を有する撥水性高
分子を利用して、最終的に固着がなされる方法を利用す
ることができる。いわば、これは、一液塗布方法による
被膜形成方法である。
【0034】あるいは、予め粘着性を有する撥水性高分
子を含む層を形成した後、その表面上への撥水性シリカ
粒子を含む分散液を塗布し、樹脂層の表面を部分的に溶
解し、その後、溶媒が蒸散する際、分散液層内に含まれ
る撥水性シリカ粒子の沈降と、溶解した粘着性を有する
撥水性高分子成分の再析出とによって、析出した粘着性
を有する撥水性高分子の層上に、撥水性シリカ粒子の最
終的な固着がなされる方法を利用することができる。い
わば、これは、二段階塗布方法による被膜形成方法であ
る。
【0035】いずれの方法を用いる際にも、粘着性を有
する撥水性高分子を含む層の形成に利用する、粘着性を
有する撥水性高分子を含む溶液に利用する溶媒は、その
沸点は、120℃以下、60℃以上である有機溶媒であ
って、アルコール、エステル、ケトン、エーテルからな
る群から選択され、分子内にハロゲン置換を有していな
い有機溶媒を利用するとより好ましい。かかるアルコー
ルとしては、プロパノール、イソプロピルアルコール、
ブタノールなどの、また、エステルとしては、酢酸ブチ
ルなど、薄い塗布液層とした際にも、室温で徐々に蒸散
し、粘着性を有する撥水性高分子を含む層の膜厚の均一
性が確保できるものがより好ましいものである。また、
含有する粘着性を有する撥水性高分子の種類に応じて、
複数種の溶媒を混合して用いることもできる。例えば、
対象とする材料表面に対して、濡れ性に優れるアルコー
ルと、そのアルコールの均一に混合される他の有機溶媒
との混合溶媒を用いることも好ましい。
【0036】また、二段階塗布法を用いる際、撥水性シ
リカ粒子を含む分散液の分散溶媒としても、先に形成さ
れている粘着性を有する撥水性高分子を含む層表面に対
して、良好な濡れ性を示すものが好ましく、前記粘着性
を有する撥水性高分子を含む溶液に利用する溶媒を用い
ることが好ましい。その際、撥水性シリカ粒子を含む分
散液を塗布すると、形成されている粘着性を有する撥水
性高分子を含む層の表面は、部分的に溶解するものの、
溶媒が蒸散すると、溶解した粘着性を有する撥水性高分
子は再析出し、撥水性シリカ粒子は、その表面にかかる
粘着性を有する撥水性高分子をバインダー成分として、
固着がなされる。
【0037】一液塗布方法を採用する際には、撥水性シ
リカ粒子を、粘着性を有する撥水性高分子を含む溶液に
分散して、分散液とするが、この分散液中における撥水
性シリカ粒子の分散濃度は、目的とする被膜表面に固着
すべき、撥水性シリカ粒子の面密度に応じて、適宜選択
すべきものである。すなわち、塗布される分散液層の、
単位面積当たりの塗布液量を考慮し、その塗布液量中に
含まれる撥水性シリカ粒子の粒子数が、目標とする撥水
性シリカ粒子の面密度に見合ったものとなるように、分
散液中における撥水性シリカ粒子の分散濃度を選択す
る。例えば、撥水性シリカ粒子の平均粒子径を、0.1
〜100μmの範囲に、好ましくは0.5〜50μmの
範囲に、より好ましくは、2〜30μmの範囲に選択
し、その際、対応させて、表面に固着された前記撥水性
シリカ粒子の面密度を、102〜108個/mm2の範囲
に、好ましくは、5×102〜5×104個/mm2の範
囲に選択する際には、均一な分散状態を達成する上で
は、撥水性シリカ粒子の分散濃度を0.50wt%〜
1.0wt%の範囲とすることが望ましい。対応して、
単位面積当たり、表面に塗布される分散液量は、0.0
2〜0.1 ml/cm2の範囲に選択するとよい。
【0038】一方、粘着性を有する撥水性高分子を含む
溶液中に溶解させる、粘着性を有する撥水性高分子の含
有濃度の合計は、前記撥水性シリカ粒子の分散濃度に応
じて、また、目的とする粘着性を有する撥水性高分子を
含む層の膜厚に応じて、適宜選択することができる。例
えば、撥水性シリカ粒子の平均粒子径を、0.1〜10
0μmの範囲に、好ましくは0.5〜50μmの範囲
に、より好ましくは、2〜30μmの範囲に選択し、対
応させて、表面に固着する撥水性シリカ粒子の面密度
を、102〜108個/mm2の範囲に、好ましくは、5
×102〜5×104個/mm2の範囲に選択する場合、
粘着性を有する撥水性高分子を含む層の平均膜厚を、前
記撥水性シリカ粒子の平均粒子径に対して、0.1〜1
0倍の範囲に選択すると、粘着性を有する撥水性高分子
の含有濃度の合計は、0.01wt%〜1.0wt%の
範囲に、より好ましくは0.035wt%〜1.0wt
%の範囲に選択することが好ましい。
【0039】なお、二段階塗布法を利用する際には、予
め粘着性を有する撥水性高分子を含む層を形成するの
で、その際利用される粘着性を有する撥水性高分子を含
む溶液中に溶解させる、粘着性を有する撥水性高分子の
含有濃度の合計は、目的とする粘着性を有する撥水性高
分子を含む層の膜厚に応じて、適宜選択することができ
る。従って、前記の一液塗布法に用いる溶液よりも、そ
の粘着性を有する撥水性高分子の含有濃度の合計は、よ
り広い範囲に選択可能となる。なお、粘着性を有する撥
水性高分子の含有濃度の合計を、0.05wt%〜2.
5wt%の範囲、より好ましくは、0.05wt%〜
1.5wt%の範囲に選択すると、同様に好ましいもの
となる。また、二段階塗布法を利用する際、利用する撥
水性シリカ粒子の分散液中における、撥水性シリカ粒子
の分散濃度は、目的とする被膜表面に固着すべき、撥水
性シリカ粒子の面密度に応じて、適宜選択すべきもので
ある。すなわち、塗布される分散液層の、単位面積当た
りの塗布液量を考慮し、その塗布液量中に含まれる撥水
性シリカ粒子の粒子数が、目標の面密度に見合ったもの
となるように、分散液中における撥水性シリカ粒子の分
散濃度を選択する。例えば、撥水性シリカ粒子の平均粒
子径を、0.1〜100μmの範囲に、好ましくは0.
5〜50μmの範囲に、より好ましくは、2〜30μm
の範囲に選択し、対応させて、表面に固着された撥水性
シリカ粒子の面密度を、102〜108個/mm2の範囲
に、好ましくは、5×102〜5×104個/mm2の範
囲に選択する際には、均一な分散状態を達成する上で
は、撥水性シリカ粒子の分散濃度を0.5wt%〜1.
5wt%の範囲とすることが望ましい。対応して、単位
面積当たり、表面に塗布される分散液量は、0.02〜
0.1 ml/cm2の範囲に選択するとよい。なお、
この分散液に用いる分散溶媒は、前工程で用いる粘着性
を有する撥水性高分子を含む溶液中の溶媒と全く同じで
なくともよいが、一旦形成した樹脂層表面部の粘着性を
有する撥水性高分子を部分的に溶解可能な溶媒を用い
る。勿論、前工程で用いる粘着性を有する撥水性高分子
を含む溶液中の溶媒と全く同じものを用いることも好ま
しいものとなる。
【0040】上記の一液塗布方法、二段階塗布法のいず
れを利用する際には、対象とする材料表面は、粘着性を
有する撥水性高分子を含む層により被覆され、その樹脂
層の表面に、含有している粘着性を有する撥水性高分子
の接着力を利用して、微細な粒子径の撥水性シリカ粒子
が緻密に、安定に固着されたものとなる。また、固着さ
れた撥水性シリカ粒子は、少なくとも、その上部は、撥
水性シリカ粒子自体の表面を露呈した状態とされる。す
なわち、粘着性を有する撥水性高分子を含む層と撥水性
シリカ粒子との固着される下端部は、バインダーとして
機能する粘着性を有する撥水性高分子により、その粒子
表面は覆われるが、撥水性シリカ粒子全体が、粘着性を
有する撥水性高分子を含む層中に埋没し、粘着性を有す
る撥水性高分子を含む層の表面に、埋没されている撥水
性シリカ粒子に由来する凸形状が形成されたものとは構
造上異なったものとなる。
【0041】なお、かかる本発明の撥水性被膜では、そ
の超撥水性は、下層の粘着性を有する撥水性高分子を含
む層自体の撥水性のみに因るものでないので、従来の、
極めて高い撥水性を示す含フッ素樹脂の皮膜を形成する
手法のように、高い撥水性を示す含フッ素樹脂の溶解を
行うため、ヘキサフルオロメタキシレンのようなフッ素
を含む特殊な有機溶媒を利用することなく、簡便に形成
することが可能となる。より具体的には、含フッ素樹脂
の溶解を行うため、ヘキサフルオロメタキシレンの他、
フッ素を含むフロン系溶媒、あるいは、ハロゲン置換を
有する有機溶媒など、環境に悪影響を及ぼすことが懸念
されている溶媒を用いる必要がなく、かかる本発明の撥
水性被膜は、開放環境でその被膜形成を行う応用にも適
している。例えば、ガラス表面へ形成することで、超撥
水性ガラスコート膜として利用でき、より具体的には、
屋外に面した窓ガラス面への超撥水性ガラスコートに応
用できる。また、各種塗装を施した塗装鋼板の表面に形
成することで、超撥水性ワックスコートと同様な効果を
発揮でき、より具体的には、屋外にて使用される自動車
ボディー表面への、雨水などの水滴付着を防止する超撥
水性ワックスコートに応用できる。
【0042】なお、前記の屋外での超撥水性コート膜と
しての利用は、雨水などの水滴付着を防止する結果、表
面に付着していた埃が付着した水滴に溶け込み、付着し
た水滴がそのまま乾固する際、凝集して、強固な汚れと
して残る現象を大幅に軽減する効果をも有する。すなわ
ち、撥水性を高めることで、水滴の滑落性が大幅に向上
するので、付着したまま残る水滴の比率は大幅に少なく
なり、また、僅かに水滴が残留するとしても、その水滴
個々の液量は僅かなもので、前記の汚れを生じるには至
らないものとなる。加えて、窓ガラスなどでは、超撥水
性ガラスコート膜として利用すると、仮に結露を生じる
環境、天候になった際、その結露自体は回避できないも
のの、結露で発生した水滴は、極小さなものを除き、そ
の殆ど全ては、ガラス表面を滑落するので、実質的に結
露によるくもり、水滴の残留を回避することもできる。
【0043】加えて、超撥水性ガラスコート膜や超撥水
性ワックスコートとして、本発明の撥水性被膜を利用す
る際、粘着性含フッ素高分子と粘性シリコーン樹脂との
混合物を用いた粘着性を有する撥水性高分子を含む層上
に、極めて微細な撥水性シリカ粒子を均一に固着した被
膜の形態とすると、かかる被膜全体として、光透過性、
透明性も高いものとなり、より好ましいものとなる。
【0044】
【実施例】以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的
に説明する。なお、これら実施例は、いずれも本発明に
おける最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は
これら実施例により限定されるものではない。
【0045】(実施例1)水の接触角が120°に満た
ない材料からなる表面として、ガラス表面ならびに、金
属表面、具体的には、アルミニウム表面を対象として、
下記する手順で粘着性を有する撥水性高分子を含む層
と、この粘着性を有する撥水性高分子を含む層表面に固
着された、撥水性シリカ粒子とからなる被膜を作製し、
その被膜表面の水に対する接触角を測定し、撥水性を評
価した。
【0046】粘着性を有する撥水性高分子を含む層の形
成に用いる樹脂成分として、粘着性含フッ素高分子であ
る、フルオロエチレン−ビニルエーテル共重合体の含フ
ッ素塗料用樹脂材料市販品:ダイキン工業(株)製 ゼ
ッフルGK−510(商品名)と、粘性シリコーン樹脂
である、粘度1,200cStのアミノ変性シリコーン
市販品:東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製
型番 SF8417との混合物を用いた。一方、撥水性
シリカ粒子として、表面にヘキサメチルジシラザンを用
いた撥水性処理を施されている、撥水性シリカ粒子市販
品:CABOT製 品名:CAB−O−SiL 型番:
TS−530 平均粒子径 20μmを利用した。
【0047】室温において、酢酸ブチル/イソプロピル
アルコール=2/8(重量比)の混合溶媒に、前記含フ
ッ素高分子を0.1wt%、アミノ変性シリコーンを
0.025wt%の濃度で溶解した溶液を調製する。こ
の溶液に、前記撥水性シリカ粒子を種々の添加量で加
え、高速回転攪拌器を用いて室温で均一に分散して、分
散液を作製する。
【0048】前記溶液と、撥水性シリカ粒子の分散濃度
を種々に変えた分散液を、それぞれ、予め表面を洗浄し
た、ガラス表面、ならびに、アルミ表面に、それぞれ、
単位面積当たりの塗布液量を、0.05 ml/cm2
として、直接噴霧状に塗布する。その後、表面上に均一
に形成された塗布液膜を、室温で30分間静置し、含ま
れる混合溶媒を蒸散させ、被膜を形成する。この被膜
は、ガラス表面、ならびに、アルミ表面上に、含フッ素
高分子とアミノ変性シリコーンとの混合物からなる層
が、含まれる樹脂成分の粘着性により均一に被覆し、そ
の表面には、分散液中に添加されている撥水性シリカ粒
子が、含まれる樹脂成分の粘着性により、粘着性を有す
る撥水性高分子を含む層の表面に均一な面密度で固着さ
れたものとなる。なお、かかる表面に固着されている撥
水性シリカ粒子の面密度は、分散液中の分散濃度に比例
したものとなる。
【0049】なお、対比のため、撥水性シリカ粒子を全
く添加していない溶液を用いて、粘着性を有する撥水性
高分子を含む層のみを表面に作製しているが、その層の
平均膜厚は、0.5μmである。従って、この粘着性を
有する撥水性高分子を含む層の平均膜厚は、用いている
撥水性シリカ粒子の平均粒子径の0.025倍に相当す
る。従って、樹脂層の表面に固着している撥水性シリカ
粒子は、少なくとも、その90%以上の部分を前記樹脂
層表面より上に露呈する形態となっている。
【0050】表1に、上記の各被膜について、水に対す
る接触角を測定した結果、ならびに、撥水性シリカ粒子
の分散濃度、被膜表面上の面密度を併せて示す。
【0051】
【表1】
【0052】表1に示すとおり、粘着性を有する撥水性
高分子を含む層のみでは、水に対する接触角は、100
°以下であるが、粘着性を有する撥水性高分子に加え
て、撥水性シリカ粒子を添加した分散液を用いて形成し
た被膜においては、接触角は140°以上となってお
り、特には、撥水性シリカ粒子の分散濃度は0.5wt
%以上とし、形成された撥水性被膜表面上に固着されて
いる撥水性シリカ粒子の面密度が、5×102個/mm2
以上とすることで、接触角が150°以上の撥水性被膜
となることが確認される。なお、上記の接触角の測定で
は、測定上の誤差として、2°程度の誤差が見込まれ、
ガラス表面とアルミ表面のいずれに対しても、撥水性シ
リカ粒子の分散濃度は0.75wt%以上、1.5%以
下の範囲とし、撥水性被膜表面上に固着されている撥水
性シリカ粒子の面密度が、5×102個/mm2以上、2
×103個/mm2以下の範囲とすることで、接触角が少
なくとも155°以上の撥水性被膜となり、その範囲で
は、撥水性シリカ粒子の面密度を増しても、それ以上に
接触角の大きな向上は生じていない。
【0053】なお、これら接触角が140°以上の撥水
性被膜表面について、10μlの純水を滴下し、その水
滴の滑落性の評価を試みたところ、表面の傾斜角を20
°未満でも、全て表面の水滴の滑落が生じ、正確な滑落
角の測定は困難であった。少なくとも、接触角が150
°以上の撥水性被膜においては、その滑落性に差違は見
出されない。
【0054】(実施例2)水の接触角が120°に満た
ない材料からなる表面として、ガラス表面ならびに、金
属表面、具体的には、アルミニウム表面を対象として、
下記する手順で粘着性を有する撥水性高分子を含む層
と、この粘着性を有する撥水性高分子を含む層表面に固
着された、撥水性シリカ粒子とからなる被膜を作製し、
その被膜表面の水に対する接触角を測定し、撥水性を評
価した。
【0055】粘着性を有する撥水性高分子を含む層の形
成に用いる樹脂成分は、上記の実施例1と同じ、市販の
含フッ素高分子とアミノ変性シリコーンを、また、撥水
性シリカ粒子も、上記の実施例1と同じ、市販の撥水性
シリカ粒子を利用した。
【0056】室温において、酢酸ブチル/イソプロピル
アルコール=2/8(重量比)の混合溶媒に、前記アミ
ノ変性シリコーンを0.025wt%、含フッ素高分子
を0.01wt%〜1.5wt%の範囲で、種々の濃度
で溶解した溶液複数種を調製する。この複数種の溶液
に、それぞれ、前記撥水性シリカ粒子を分散濃度が0.
75wt%となる添加量で加え、高速回転攪拌器を用い
て室温で均一に分散して、対応する分散液複数種を作製
する。
【0057】この含フッ素高分子の含有濃度を種々に変
えた分散液を、それぞれ、予め表面を洗浄した、ガラス
表面、ならびに、アルミ表面に、それぞれ、単位面積当
たりの塗布液量を、0.05 ml/cm2として、直
接噴霧状に塗布する。その後、表面上に均一に形成され
た塗布液膜を、室温で30分間静置し、含まれる混合溶
媒を蒸散させ、被膜を形成する。この被膜は、ガラス表
面、ならびに、アルミ表面上に、含フッ素高分子とアミ
ノ変性シリコーンとの混合物からなる層が、含まれる樹
脂成分の粘着性により均一に被覆し、その表面には、分
散液中に添加されている撥水性シリカ粒子が、含まれる
樹脂成分の粘着性により、粘着性を有する撥水性高分子
を含む層の表面に均一な面密度で固着されたものとな
る。なお、かかる表面に形成される被膜において、粘着
性を有する撥水性高分子を含む層(樹脂層)の平均膜厚
は、含フッ素高分子とアミノ変性シリコーンの含有濃度
の合計にほぼ比例したものとなる。
【0058】表2に、上記の各被膜について、水に対す
る接触角を測定した結果、ならびに、含フッ素高分子の
含有濃度、樹脂層の平均膜厚を併せて示す。
【0059】
【表2】
【0060】表2に示す通り、分散液中における、含フ
ッ素高分子の含有濃度を0.01wt%〜1.5wt%
の範囲に選択する際、形成される被膜はいずれも、接触
角は140°以上であり、特に、1.0wt%以下0.
01wt%の範囲に含フッ素高分子の含有濃度を選択す
ることで、概ね接触角は150°以上に達している。分
散液中における含フッ素高分子の含有濃度が0.05w
t%以下では、樹脂層の平均膜厚は、0.1μm以下と
なり、また、樹脂層中に含まれる粘着性含フッ素高分子
の比率も低下する結果、被膜全体としての接着力の低下
が生じていた。従って、時間経過とともに、雨水などに
打たれる延べ回数が増すと、樹脂層の表面に固着する撥
水性シリカ粒子の剥落が生じ易く、また、被膜自体の剥
離も生じ易くなる。一方、含フッ素高分子の含有濃度を
増すとともに、樹脂層の平均膜厚が増加し、1.0wt
%では、5μmに達している。その際、樹脂層中に含ま
れる粘着性含フッ素高分子の比率も増し、粘性アミノ変
性シリコーンと比較して、光透過性が乏しい含フッ素高
分子の比率が高く、かつ平均膜厚も増す結果、被膜全体
の光透過性、より具体的には、透明性の低下が起こる。
【0061】結論として、含有濃度0.025wt%の
アミノ変性シリコーンに対して、含フッ素高分子の含有
濃度を0.01wt%〜1.5wt%の範囲として、形
成される被膜は、その樹脂層中に含まれるアミノ変性シ
リコーンと含フッ素高分子との比率は、光透過性を許容
できる範囲に維持しつつ、接着力も、必要な水準を維持
したものとなる。なかでも、含有濃度0.025wt%
のアミノ変性シリコーンに対して、含フッ素高分子の含
有濃度を0.05wt%〜0.5wt%の範囲、特に
は、0.1wt%前後に選択すると、十分な光透過性、
すなわち、優れた透明性と、好ましい接着力との良い均
衡がとれたものとなる。
【0062】なお、これら接触角が140°以上の撥水
性被膜表面について、10μlの純水を滴下し、その水
滴の滑落性の評価を試みたところ、表面の傾斜角を20
°未満でも、全て表面の水滴の滑落が生じ、正確な滑落
角の測定は困難であった。少なくとも、接触角が150
°以上の撥水性被膜においては、その滑落性に差違は見
出されない。
【0063】(実施例3)水の接触角が120°に満た
ない材料からなる表面として、ガラス表面ならびに、金
属表面、具体的には、アルミニウム表面を対象として、
下記する手順で粘着性を有する撥水性高分子を含む層
と、この粘着性を有する撥水性高分子を含む層表面に固
着された、撥水性シリカ粒子とからなる被膜を作製し、
その被膜表面の水に対する接触角を測定し、撥水性を評
価した。
【0064】粘着性を有する撥水性高分子を含む層の形
成に用いる樹脂成分は、上記の実施例1と同じ、市販の
含フッ素高分子とアミノ変性シリコーンを、また、撥水
性シリカ粒子も、上記の実施例1と同じ、市販の撥水性
シリカ粒子を利用した。
【0065】室温において、酢酸ブチル/イソプロピル
アルコール=2/8(重量比)の混合溶媒に、前記アミ
ノ変性シリコーンを0.025wt%、含フッ素高分子
を0.1wt%の含有濃度で溶解した溶液を調製する。
一方、酢酸ブチル/イソプロピルアルコール=2/8
(重量比)の混合溶媒に、前記撥水性シリカ粒子を種々
の添加量で加え、高速回転攪拌器を用いて室温で均一に
分散して、分散濃度が0.25wt%〜1.5wt%の
分散液複数種を作製する。
【0066】先ず、この含フッ素高分子とアミノ変性シ
リコーンを溶解した溶液を、それぞれ、予め表面を洗浄
した、ガラス表面、ならびに、アルミ表面に、それぞ
れ、単位面積当たりの塗布液量を、0.05 ml/c
2として、直接噴霧状に塗布する。その後、表面上に
均一に形成された塗布液膜を、室温で30分間静置し、
含まれる混合溶媒を蒸散させ、樹脂層を形成する。乾燥
後、この樹脂層で被覆された表面の斑(余剰な少量の樹
脂成分)を布で拭き取り、さらに、撥水性シリカ粒子の
分散液を、単位面積当たりの塗布液量を、0.05 m
l/cm2として、直接噴霧状に塗布する。樹脂層の表
面は、分散液の溶媒と接している間に、部分的に再溶解
を起こすものの、室温において30分間放置する間に、
溶媒の酢酸ブチル/イソプロピルアルコール=2/8
(重量比)が蒸散するに伴い、再び、析出して、樹脂層
を再構成する。同時に、分散液に均一に分散されている
撥水性シリカ粒子は、再溶解した樹脂成分の再析出とと
もに、その表面へ固着され、粘着性を有する撥水性高分
子を含む層と、この粘着性を有する撥水性高分子を含む
層表面に固着された、撥水性シリカ粒子とからなる被膜
が、前記の二段階の塗布工程によっても作製される。
【0067】実施例1と同じく、かかる表面に固着され
ている撥水性シリカ粒子の面密度は、分散液中の分散濃
度に比例したものとなる。対比のため、撥水性シリカ粒
子を全く添加していない溶媒を用いて、一旦形成した、
粘着性を有する撥水性高分子を含む層の表面に塗布し、
室温で放置乾燥させると、その層の平均膜厚は、0.5
μmである。従って、この粘着性を有する撥水性高分子
を含む層の平均膜厚は、用いている撥水性シリカ粒子の
平均粒子径の0.025倍に相当する。従って、樹脂層
の表面に固着している撥水性シリカ粒子は、少なくと
も、その90%以上の部分を前記樹脂層表面より上に露
呈する形態となっている。
【0068】表3に、上記の各被膜について、水に対す
る接触角を測定した結果、ならびに、撥水性シリカ粒子
の分散濃度、被膜表面上の面密度を併せて示す。
【0069】
【表3】
【0070】表3に示すとおり、粘着性を有する撥水性
高分子を含む層のみでは、水に対する接触角は、100
°以下であるが、粘着性を有する撥水性高分子に加え
て、撥水性シリカ粒子を添加した分散液を用いて形成し
た被膜においては、接触角は140°以上となってお
り、特には、撥水性シリカ粒子の分散濃度は0.5wt
%以上とし、形成された撥水性被膜表面上に固着されて
いる撥水性シリカ粒子の面密度が、5×102個/mm2
以上とすることで、接触角が150°以上の撥水性被膜
となることが確認される。なお、上記の接触角の測定で
は、測定上の誤差として、2°程度の誤差が見込まれ、
ガラス表面とアルミ表面のいずれに対しても、撥水性シ
リカ粒子の分散濃度は0.75wt%以上、1.5%以
下の範囲とし、撥水性被膜表面上に固着されている撥水
性シリカ粒子の面密度が、5×102個/mm2以上、2
×103個/mm2以下の範囲とすることで、接触角が少
なくとも155°以上の撥水性被膜となり、その範囲で
は、撥水性シリカ粒子の面密度を増しても、それ以上に
接触角の大きな向上は生じていない。
【0071】なお、これら接触角が140°以上の撥水
性被膜表面について、10μlの純水を滴下し、その水
滴の滑落性の評価を試みたところ、表面の傾斜角を20
°未満でも、全て表面の水滴の滑落が生じ、正確な滑落
角の測定は困難であった。少なくとも、接触角が150
°以上の撥水性被膜においては、その滑落性に差違は見
出されない。
【0072】(実施例4)水の接触角が120°に満た
ない材料からなる表面として、ガラス表面ならびに、金
属表面、具体的には、アルミニウム表面を対象として、
下記する手順で粘着性を有する撥水性高分子を含む層
と、この粘着性を有する撥水性高分子を含む層表面に固
着された、撥水性シリカ粒子とからなる被膜を作製し、
その被膜表面の水に対する接触角を測定し、撥水性を評
価した。
【0073】粘着性を有する撥水性高分子を含む層の形
成に用いる樹脂成分は、上記の実施例1と同じ、市販の
含フッ素高分子とアミノ変性シリコーンを、また、撥水
性シリカ粒子も、上記の実施例1と同じ、市販の撥水性
シリカ粒子を利用した。
【0074】室温において、酢酸ブチル/イソプロピル
アルコール=2/8(重量比)の混合溶媒に、前記アミ
ノ変性シリコーンを0.025wt%、含フッ素高分子
を0.05wt%〜2.5wt%の範囲で、種々の濃度
で溶解した溶液複数種を調製する。一方、酢酸ブチル/
イソプロピルアルコール=2/8(重量比)の混合溶媒
に、前記撥水性シリカ粒子を分散濃度が0.75wt%
となる添加量で加え、高速回転攪拌器を用いて室温で均
一に分散して、分散液を別途作製する。
【0075】先ず、前記含フッ素高分子とアミノ変性シ
リコーンを溶解した溶液複数種を、それぞれ、予め表面
を洗浄した、ガラス表面、ならびに、アルミ表面に、そ
れぞれ、単位面積当たりの塗布液量を、0.05 ml
/cm2として、直接噴霧状に塗布する。その後、表面
上に均一に形成された塗布液膜を、室温で30分間静置
し、含まれる混合溶媒を蒸散させ、樹脂層を形成する。
乾燥後、この樹脂層で被覆された表面の斑(余剰な少量
の樹脂成分)を布で拭き取り、さらに、各樹脂層の表面
に、撥水性シリカ粒子の分散液を、単位面積当たりの塗
布液量を、0.05 ml/cm2として、直接噴霧状
に塗布する。その際、各樹脂層の表面は、分散液の溶媒
と接している間に、部分的に再溶解を起こすものの、室
温において30分間放置する間に、溶媒の酢酸ブチル/
イソプロピルアルコール=2/8(重量比)が蒸散する
に伴い、再び、析出して、樹脂層を再構成する。同時
に、分散液に均一に分散されている撥水性シリカ粒子
は、再溶解した樹脂成分の再析出とともに、その表面へ
固着され、粘着性を有する撥水性高分子を含む層と、こ
の粘着性を有する撥水性高分子を含む層表面に固着され
た、撥水性シリカ粒子とからなる被膜が、前記の二段階
の塗布工程によって作製される。なお、かかる二段階の
塗布工程を利用する際にも、表面に形成される各被膜に
おいて、粘着性を有する撥水性高分子を含む層(樹脂
層)の平均膜厚は、用いた溶液中における含フッ素高分
子とアミノ変性シリコーンの含有濃度の合計にほぼ比例
したものとなる。
【0076】表4に、上記の各被膜について、水に対す
る接触角を測定した結果、ならびに、含フッ素高分子の
含有濃度、樹脂層の平均膜厚を併せて示す。
【0077】
【表4】
【0078】表4に示す通り、樹脂層の形成に用いる溶
液中における、含フッ素高分子の含有濃度を0.05w
t%〜2.5wt%の範囲に選択する際、形成される被
膜はいずれも、接触角は140°以上であり、特に、
1.5wt%以下0.05wt%の範囲に含フッ素高分
子の含有濃度を選択することで、概ね接触角は150°
以上に達している。溶液中における含フッ素高分子の含
有濃度が0.05wt%未満では、樹脂層の平均膜厚
は、0.1μm未満となり、また、樹脂層中に含まれる
粘着性含フッ素高分子の比率も低下する結果、被膜全体
としての接着力の低下が生じていた。従って、時間経過
とともに、雨水などに打たれる延べ回数が増すと、樹脂
層の表面に固着する撥水性シリカ粒子の剥落が生じ易
く、また、被膜自体の剥離も生じ易くなる。一方、含フ
ッ素高分子の含有濃度を増すとともに、樹脂層の平均膜
厚が増加し、1.5wt%以上では、7μm以上に達し
ている。その際、樹脂層中に含まれる粘着性含フッ素高
分子の比率も増し、粘性アミノ変性シリコーンと比較し
て、光透過性が乏しい含フッ素高分子の比率が高く、か
つ平均膜厚も増す結果、被膜全体の光透過性、より具体
的には、透明性の低下が起こる。
【0079】結論として、この二段階の塗布工程を用い
る際には、樹脂層の形成に用いる溶液では、含有濃度
0.025wt%のアミノ変性シリコーンに対して、含
フッ素高分子の含有濃度を0.05wt%〜2.5wt
%の範囲として、形成される被膜は、その樹脂層中に含
まれるアミノ変性シリコーンと含フッ素高分子との比率
は、光透過性を許容できる範囲に維持しつつ、接着力
も、必要な水準を維持したものとなる。なかでも、含有
濃度0.025wt%のアミノ変性シリコーンに対し
て、含フッ素高分子の含有濃度を0.05wt%〜1.
5wt%の範囲、より好ましくは、0.1wt%〜1.
0wt%の範囲に選択すると、十分な光透過性、すなわ
ち、優れた透明性と、好ましい接着力との良い均衡がと
れたものとなる。
【0080】なお、これら接触角が140°以上の撥水
性被膜表面について、10μlの純水を滴下し、その水
滴の滑落性の評価を試みたところ、表面の傾斜角を20
°未満でも、ほぼ全て表面の水滴の滑落が生じ、正確な
滑落角の測定は困難であった。少なくとも、接触角が1
50°以上の撥水性被膜においては、その滑落性に差違
は見出されない。
【0081】(実施例5)水の接触角が120°に満た
ない材料からなる表面として、塗板表面、具体的には、
表面に塗装処理を施した鋼板の表面を対象として、下記
する手順で粘着性を有する撥水性高分子を含む層と、こ
の粘着性を有する撥水性高分子を含む層表面に固着され
た、撥水性シリカ粒子とからなる被膜を作製し、その被
膜表面の水に対する接触角を測定し、撥水性を評価し
た。
【0082】粘着性を有する撥水性高分子を含む層の形
成に用いる樹脂成分は、上記の実施例1と同じ、市販の
含フッ素高分子とアミノ変性シリコーンを、また、撥水
性シリカ粒子も、上記の実施例1と同じ、市販の撥水性
シリカ粒子を利用した。
【0083】室温において、酢酸ブチル/イソプロピル
アルコール=2/8(重量比)の混合溶媒に、前記含フ
ッ素高分子を0.1wt%、アミノ変性シリコーンを
0.025wt%の濃度で溶解した溶液を調製する。こ
の溶液に、前記撥水性シリカ粒子を種々の添加量で加
え、高速回転攪拌器を用いて室温で均一に分散して、分
散液を作製する。この実施例5においても、調製した分
散液中における、撥水性シリカ粒子の分散濃度は、0.
25wt%〜1.5wt%の範囲とした。
【0084】前記溶液と、撥水性シリカ粒子の分散濃度
を種々に変えた分散液を、それぞれ、予め表面を水洗浄
した、塗板表面に単位面積当たりの塗布液量を、0.0
5ml/cm2として、直接噴霧状に塗布する。その
後、表面上に均一に形成された塗布液膜を、室温で30
分間放置し、含まれる混合溶媒を蒸散させ、被膜を形成
する。この被膜は、塗板表面上に、含フッ素高分子とア
ミノ変性シリコーンとの混合物からなる層が、含まれる
樹脂成分の粘着性により均一に被覆し、その表面には、
分散液中に添加されている撥水性シリカ粒子が、含まれ
る樹脂成分の粘着性により、粘着性を有する撥水性高分
子を含む層の表面に均一な面密度で固着されたものとな
る。なお、かかる表面に固着されている撥水性シリカ粒
子の面密度は、分散液中の分散濃度に比例したものとな
る。
【0085】なお、対比のため、撥水性シリカ粒子を全
く添加していない溶液を用いて、粘着性を有する撥水性
高分子を含む層のみを表面に作製しているが、その層の
平均膜厚は、0.5μmである。従って、この粘着性を
有する撥水性高分子を含む層の平均膜厚は、用いている
撥水性シリカ粒子の平均粒子径の0.025倍に相当す
る。従って、樹脂層の表面に固着している撥水性シリカ
粒子は、少なくとも、その90%以上の部分を前記樹脂
層表面より上に露呈する形態となっている。
【0086】表5に、上記の各被膜について、水に対す
る接触角を測定した結果、ならびに、撥水性シリカ粒子
の分散濃度、被膜表面上の面密度を併せて示す。
【0087】
【表5】
【0088】表5に示すとおり、粘着性を有する撥水性
高分子を含む層のみでは、水に対する接触角は、100
°以下であるが、粘着性を有する撥水性高分子に加え
て、撥水性シリカ粒子を添加した分散液を用いて形成し
た被膜においては、接触角は140°以上となってお
り、特には、撥水性シリカ粒子の分散濃度は0.5wt
%以上とし、形成された撥水性被膜表面上に固着されて
いる撥水性シリカ粒子の面密度が、8×102個/mm2
以上とすることで、接触角が150°以上の撥水性被膜
となることが確認される。なお、上記の接触角の測定で
は、測定上の誤差として、2°程度の誤差が見込まれ、
塗板表面に対しても、撥水性シリカ粒子の分散濃度を
0.75wt%以上、1.5wt%以下の範囲とし、撥
水性被膜表面上に固着されている撥水性シリカ粒子の面
密度が、8×102個/mm2以上、2×103個/mm2
以下の範囲とすることで、接触角が少なくとも155°
以上の撥水性被膜となり、その範囲では、撥水性シリカ
粒子の面密度を増しても、それ以上に接触角の大きな向
上は生じていない。
【0089】なお、これら接触角が140°以上の撥水
性被膜表面について、10μlの純水を滴下し、その水
滴の滑落性の評価を試みたところ、表面の傾斜角を20
°未満でも、全て表面の水滴の滑落が生じ、正確な滑落
角の測定は困難であった。少なくとも、接触角が150
°以上の撥水性被膜においては、その滑落性に差違は見
出されない。
【0090】(実施例6)水の接触角が120°に満た
ない材料からなる表面として、塗板表面、具体的には、
表面に塗装処理を施した鋼板の表面を対象として、下記
する手順で粘着性を有する撥水性高分子を含む層と、こ
の粘着性を有する撥水性高分子を含む層表面に固着され
た、撥水性シリカ粒子とからなる被膜を作製し、その被
膜表面の水に対する接触角を測定し、撥水性を評価し
た。
【0091】粘着性を有する撥水性高分子を含む層の形
成に用いる樹脂成分は、上記の実施例1と同じ、市販の
含フッ素高分子とアミノ変性シリコーンを、また、撥水
性シリカ粒子も、上記の実施例1と同じ、市販の撥水性
シリカ粒子を利用した。
【0092】室温において、酢酸ブチル/イソプロピル
アルコール=2/8(重量比)の混合溶媒に、前記アミ
ノ変性シリコーンを0.025wt%、含フッ素高分子
を0.1wt%の含有濃度で溶解した溶液を調製する。
一方、酢酸ブチル/イソプロピルアルコール=2/8
(重量比)の混合溶媒に、前記撥水性シリカ粒子を種々
の添加量で加え、高速回転攪拌器を用いて室温で均一に
分散して、分散濃度が0.25wt%〜1.5wt%の
分散液複数種を作製する。
【0093】先ず、この含フッ素高分子とアミノ変性シ
リコーンを溶解した溶液を、それぞれ、予め表面を水洗
浄した塗板表面に、単位面積当たりの塗布液量を、0.
05ml/cm2として、直接噴霧状に塗布する。その
後、表面上に均一に形成された塗布液膜を、室温で30
分間静置し、含まれる混合溶媒を蒸散させ、樹脂層を形
成する。乾燥後、この樹脂層で被覆された表面の斑(余
剰な少量の樹脂成分)を布で拭き取り、さらに、撥水性
シリカ粒子の分散液を、単位面積当たりの塗布液量を、
0.05 ml/cm2として、直接噴霧状に塗布す
る。樹脂層の表面は、分散液の溶媒と接している間に、
部分的に再溶解を起こすものの、室温において30分間
放置する間に、溶媒の酢酸ブチル/イソプロピルアルコ
ール=2/8(重量比)が蒸散するに伴い、再び、析出
して、樹脂層を再構成する。同時に、分散液に均一に分
散されている撥水性シリカ粒子は、再溶解した樹脂成分
の再析出とともに、その表面へ固着され、粘着性を有す
る撥水性高分子を含む層と、この粘着性を有する撥水性
高分子を含む層表面に固着された、撥水性シリカ粒子と
からなる被膜が、前記の二段階の塗布工程によっても作
製される。
【0094】実施例3と同じく、かかる表面に固着され
ている撥水性シリカ粒子の面密度は、分散液中の分散濃
度に比例したものとなる。対比のため、撥水性シリカ粒
子を全く添加していない溶媒を用いて、一旦形成した、
粘着性を有する撥水性高分子を含む層の表面に塗布し、
室温で放置乾燥させると、その層の平均膜厚は、0.5
μmである。従って、この粘着性を有する撥水性高分子
を含む層の平均膜厚は、用いている撥水性シリカ粒子の
平均粒子径の0.025倍に相当する。従って、樹脂層
の表面に固着している撥水性シリカ粒子は、少なくと
も、その90%以上の部分を前記樹脂層表面より上に露
呈する形態となっている。
【0095】表6に、上記の各被膜について、水に対す
る接触角を測定した結果、ならびに、撥水性シリカ粒子
の分散濃度、被膜表面上の面密度を併せて示す。
【0096】
【表6】
【0097】表6に示すとおり、粘着性を有する撥水性
高分子を含む層のみでは、水に対する接触角は、100
°以下であるが、粘着性を有する撥水性高分子に加え
て、撥水性シリカ粒子を添加した分散液を用いて形成し
た被膜においては、接触角は140°以上となってお
り、特には、撥水性シリカ粒子の分散濃度は0.5wt
%以上とし、形成された撥水性被膜表面上に固着されて
いる撥水性シリカ粒子の面密度が、8×102個/mm2
以上とすることで、接触角が150°以上の撥水性被膜
となることが確認される。なお、上記の接触角の測定で
は、測定上の誤差として、2°程度の誤差が見込まれ、
塗板表面に対しても、撥水性シリカ粒子の分散濃度を
0.75wt%以上、1.5wt%以下の範囲とし、撥
水性被膜表面上に固着されている撥水性シリカ粒子の面
密度が、8×102個/mm2以上、2×103個/mm2
以下の範囲とすることで、接触角が少なくとも155°
以上の撥水性被膜となり、その範囲では、撥水性シリカ
粒子の面密度を増しても、それ以上に接触角の大きな向
上は生じていない。
【0098】なお、これら接触角が140°以上の撥水
性被膜表面について、10μlの純水を滴下し、その水
滴の滑落性の評価を試みたところ、表面の傾斜角を20
°未満でも、全て表面の水滴の滑落が生じ、正確な滑落
角の測定は困難であった。少なくとも、接触角が150
°以上の撥水性被膜においては、その滑落性に差違は見
出されない。
【0099】(比較例1)水の接触角が120°に満た
ない材料からなる表面として、ガラス表面を対象とし
て、下記する手順で、撥水性シリカ粒子のみをガラス表
面に付着させ、その表面について、水に対する接触角を
測定し、撥水性を評価した。
【0100】撥水性シリカ粒子は、上記の実施例1と同
じ、市販の撥水性シリカ粒子を利用した。イソプロピル
アルコールに、前記撥水性シリカ粒子を分散濃度が0.
75wt%となる量で加え、高速回転攪拌器を用いて室
温で均一に分散して、イソプロピルアルコール分散液を
作製する。
【0101】予め表面を洗浄した、ガラス表面に、前記
撥水性シリカ粒子のイソプロピルアルコール分散液を、
単位面積当たりの塗布液量を、0.05 ml/cm2
として、直接噴霧状に塗布する。その後、表面上に均一
に形成された塗布液膜を、室温で30分間静置し、含ま
れる溶媒を蒸散させ、撥水性シリカ粒子を表面に付着さ
せる。この処理によって、付着されている撥水性シリカ
粒子の面密度は、1×103個/mm2に相当する。この
撥水性シリカ粒子を均一に付着させたガラス表面でも、
水に対する接触角は、140°を超え、156°〜15
8°に達する。なお、撥水性シリカ粒子は、ガラス表面
に弱く付着しているのみであり、僅かな要因でも、剥落
を起こし、通常、昼夜の気温差、風などのある環境下に
置くと、2〜3日目には、残留している撥水性シリカ粒
子の面密度は、当初の1/3以下に減少し、水に対する
接触角も有意に低下し始める。また、この付着されてい
る撥水性シリカ粒子は、機械的な除去、例えば、水洗い
によっても、剥落を生じるため、屋外で、風雨に曝され
る環境下では、前記の2〜3日間を待たず、水に対する
接触角も有意に低下し始めることもある。
【0102】(比較例2)水の接触角が120°に満た
ない材料からなる表面として、ガラス表面を対象とし
て、下記する手順で、粘着性を示さないアミノ変性シリ
コーンのみを含む層と、このアミノ変性シリコーンのみ
を含む層表面に付着した撥水性シリカ粒子とからなる被
膜を作製し、その被膜表面の水に対する接触角を測定
し、撥水性を評価した。
【0103】前記のアミノ変性シリコーンは、上記の実
施例1と同じ、市販のアミノ変性シリコーンであり、ま
た、撥水性シリカ粒子は、上記の実施例1と同じ、市販
の撥水性シリカ粒子を利用した。
【0104】室温において、酢酸ブチル/イソプロピル
アルコール=2/8(重量比)の混合溶媒に、前記アミ
ノ変性シリコーンを0.025wt%の含有濃度で溶解
した溶液を調製する。次いで、この溶液に、撥水性シリ
カ粒子を分散濃度が0.75wt%となる量で加え、高
速回転攪拌器を用いて室温で均一に分散して、分散液を
作製する。
【0105】予め表面を洗浄したガラス表面に、調製し
た撥水性シリカ粒子の分散液を、単位面積当たりの塗布
液量を、0.05 ml/cm2として、直接噴霧状に
塗布する。その後、表面上に均一に形成された塗布液膜
を、室温で30分間静置し、含まれる溶媒を蒸散させ、
アミノ変性シリコーンのみを含む層(樹脂層)を表面に
析出させ、同時に、撥水性シリカ粒子をこの樹脂層表面
に付着させる。この処理によって、樹脂層表面に付着さ
れている撥水性シリカ粒子の面密度は、1×103個/
mm2に相当する。この撥水性シリカ粒子を均一に付着
させた表面でも、水に対する接触角は、140°を超
え、155°〜158°に達する。なお、撥水性シリカ
粒子は、アミノ変性シリコーンのみを含む樹脂層表面に
弱く付着しているのみであり、僅かな要因でも、剥落を
起こし、通常、昼夜の気温差、風などのある環境下に置
くと、2〜3日目には、残留している撥水性シリカ粒子
の面密度は、当初の1/3以下に減少し、水に対する接
触角も有意に低下し始める。
【0106】(比較例3)水の接触角が120°に満た
ない材料からなる表面として、塗板表面を対象として、
下記する手順で、撥水性シリカ粒子のみを塗板表面に付
着させ、その表面について、水に対する接触角を測定
し、撥水性を評価した。
【0107】撥水性シリカ粒子は、上記の実施例1と同
じ、市販の撥水性シリカ粒子を利用した。イソプロピル
アルコールに、前記撥水性シリカ粒子を分散濃度が0.
75wt%となる量で加え、高速回転攪拌器を用いて室
温で均一に分散して、イソプロピルアルコール分散液を
作製する。
【0108】予め表面を水洗浄した、塗板表面に、前記
撥水性シリカ粒子のイソプロピルアルコール分散液を、
単位面積当たりの塗布液量を、0.05 ml/cm2
として、直接噴霧状に塗布する。その後、表面上に均一
に形成された塗布液膜を、室温で30分間静置し、含ま
れる溶媒を蒸散させ、撥水性シリカ粒子を表面に付着さ
せる。この処理によって、付着されている撥水性シリカ
粒子の面密度は、1×103個/mm2に相当する。この
撥水性シリカ粒子を均一に付着させたガラス表面でも、
水に対する接触角は、140°を超え、156°〜15
8°に達する。なお、撥水性シリカ粒子は、塗板表面に
弱く付着しているのみであり、僅かな要因でも、剥落を
起こし、通常、昼夜の気温差、風などのある環境下に置
くと、2〜3日目には、残留している撥水性シリカ粒子
の面密度は、当初の1/3以下に減少し、水に対する接
触角も有意に低下し始める。また、この付着されている
撥水性シリカ粒子は、機械的な除去、例えば、水洗いに
よっても、剥落を生じるため、屋外で、風雨に曝される
環境下では、前記の2〜3日間を待たず、水に対する接
触角も有意に低下し始めることもある。
【0109】(実施例7)実施例1において、撥水性シ
リカ粒子の分散濃度を0.75wt%に選択した条件で
ガラス表面に形成した撥水性被膜を、屋外において、窓
ガラスと同様の風雨に曝される環境において、3週間放
置した。その後、この撥水性被膜表面について、水に対
する接触角を測定したところ、当初は、表1に示す通
り、156°であったものが、3週間放置した後でも、
155°と有意な差違は認められなかった。また、実際
に表面に固着されている撥水性シリカ粒子の剥落の有無
と、その程度を観察した結果、少なくとも、当初の90
%程度は、剥落せず残留していることが判明した。
【0110】加えて、実施例5において、撥水性シリカ
粒子の分散濃度を0.75wt%に選択した条件で塗板
表面に形成した撥水性被膜を、屋外において駐車した自
動車と同様に、昼夜の気温差、風などがあり、風雨に曝
される環境下において、3週間放置した。その後、この
撥水性被膜表面について、水に対する接触角を測定した
ところ、当初は、表1に示す通り、158°であったも
のが、3週間放置した後でも、157°と有意な差違は
認められなかった。また、実際に表面に固着されている
撥水性シリカ粒子の剥落の有無と、その程度を観察した
結果、少なくとも当初の90%程度は、剥落せず残留し
ていることが判明した。
【0111】以上の屋外環境下での耐久性の検討結果よ
り、本発明の撥水性被膜は、屋外に面した窓ガラス面へ
の超撥水性ガラスコート、屋外にて使用される自動車ボ
ディー表面への、雨水などの水滴付着を防止する超撥水
性ワックスコートなどとしても、応用できることが検証
される。
【0112】(実施例8)水の接触角が120°に満た
ない材料からなる表面として、ガラス表面を対象とし
て、下記する手順で粘着性を有する撥水性高分子を含む
層と、この粘着性を有する撥水性高分子を含む層表面に
固着された、撥水性シリカ粒子とからなる被膜を作製
し、その被膜表面の水に対する接触角を測定し、撥水性
を評価した。併せて、形成された撥水性被膜の光透過
性、透明性をも評価した。
【0113】粘着性を有する撥水性高分子を含む層の形
成に用いる樹脂成分は、上記の実施例1と同じ、市販の
含フッ素高分子とアミノ変性シリコーンを、また、撥水
性シリカ粒子も、上記の実施例1と同じ、市販の撥水性
シリカ粒子を利用した。
【0114】室温において、酢酸ブチル/イソプロピル
アルコール=2/8(重量比)の混合溶媒に、前記含フ
ッ素高分子を0.1wt%、アミノ変性シリコーンを
0.0125wt%〜0.05wt%の濃度範囲で溶解
した溶液複数種を調製する。この溶液複数種に、調製さ
れる分散液中における、撥水性シリカ粒子の分散濃度
が、0.75wt%となる添加量で上記撥水性シリカ粒
子を加え、高速回転攪拌器を用いて室温で均一に分散し
て、分散液複数種を作製する。
【0115】前記アミノ変性シリコーンの含有濃度を種
々に変えた分散液を、それぞれ、予め表面を洗浄した、
ガラス表面に単位面積当たりの塗布液量を、0.05
ml/cm2として、直接噴霧状に塗布する。その後、
表面上に均一に形成された塗布液膜を、室温で30分間
放置し、含まれる混合溶媒を蒸散させ、被膜を形成す
る。この被膜は、ガラス表面上に、含フッ素高分子とア
ミノ変性シリコーンとの混合物からなる層が、含まれる
樹脂成分の粘着性により均一に被覆し、その表面には、
分散液中に添加されている撥水性シリカ粒子が、含まれ
る樹脂成分の粘着性により、粘着性を有する撥水性高分
子を含む層の表面に均一な面密度で固着されたものとな
る。なお、かかる表面に形成されている含フッ素高分子
とアミノ変性シリコーンとの混合物からなる層の平均膜
厚は、含フッ素高分子とアミノ変性シリコーンの含有濃
度の合計に比例したものとなる。
【0116】表7に、上記の各被膜について、水に対す
る接触角を測定した結果、ならびに、アミノ変性シリコ
ーンの含有濃度、樹脂層の平均膜厚を併せて示す。加え
て、各被膜の透明性(光透過性)の評価結果をも、表7
に示す。
【0117】
【表7】
【0118】表7に示す通り、樹脂層の形成に用いる、
アミノ変性シリコーンの含有濃度を0.0125wt%
〜0.05wt%の範囲に選択する際、形成される被膜
はいずれも、150°以上に達している。分散液中にお
けるアミノ変性シリコーンの含有濃度が0.025wt
%以下では、樹脂層の平均膜厚は、0.5μm以下とな
り、透明性(光透過性)は十分に優れた範囲に留まって
いる。なお、アミノ変性シリコーンの含有濃度を増すと
ともに、樹脂層の平均膜厚が増加し、0.05wt%で
は、0.8μm以上に達し、被膜全体の光透過性、より
具体的には、透明性に若干の低下が起こる。
【0119】
【発明の効果】本発明の撥水性被膜は、水の接触角が1
20°に満たない材料からなる表面上に形成した際、そ
の被膜表面における水の接触角を150°以上とするこ
とが可能な撥水性被膜であり、具体的には、表面上に形
成された、粘着性を有する撥水性高分子を含む層と、そ
の粘着性を有する撥水性高分子を含む層表面に固着され
た、撥水性シリカ粒子とからなる被膜であり、その際、
粘着性を有する撥水性高分子を含む層自体の表面におけ
る水の接触角は、120°以下であっても、前記撥水性
シリカ粒子の平均粒子径を、0.1〜100μmの範囲
に、好ましくは0.5〜50μmの範囲に、より好まし
くは、2〜30μmの範囲に選択し、加えて、対応させ
て、表面に固着された前記撥水性シリカ粒子の面密度
を、102〜108個/mm2の範囲に、好ましくは、5
×102〜5×104個/mm2の範囲に選択すること
で、この粘着性を有する撥水性高分子を含む層表面に、
粘着性を有する撥水性高分子をバインダーとして利用
し、極めて微細な撥水性シリカ粒子が、その撥水性表面
を上面に露呈した状態で、緻密に安定に固着されている
被膜となっている。その結果、撥水性表面を上面に露呈
した状態で固定されている撥水性シリカ粒子が凸部とし
て機能し、かかる被膜表面の微視的な構造は、所謂、フ
ラクタル構造に類する、高い撥水性を示す凸部が高い面
密度で形成されたものとなり、実質的な水に対する接触
角が150°以上の超撥水性被膜として機能するものと
なる。加えて、本発明の撥水性被膜においては、実質的
な水に対する接触角が150°以上の超撥水性被膜とし
て機能することに伴い、その表面での水滴の滑落性は極
めて高くなり、表面への水滴付着を効果的に防止でき
る。加えて、粘着性を有する撥水性高分子を含む層の平
均膜厚を、前記撥水性シリカ粒子の平均粒子径に対し
て、0.01〜10倍の範囲に選択し、また、用いる粘
着性を有する撥水性高分子として、粘着性を有する含フ
ッ素高分子と粘性シリコーン樹脂との混合物を利用し
て、かかる樹脂層自体の平坦性を確保すると、撥水性被
膜全体の光透過性、透明性も優れたものに維持すること
ができる。かかる本発明の撥水性被膜は、開放環境でそ
の被膜形成を行う応用にも適しており、例えば、ガラス
表面へ形成することで、超撥水性ガラスコート膜として
利用でき、より具体的には、屋外に面した窓ガラス面へ
の超撥水性ガラスコートに応用できる。また、各種塗装
を施した塗装鋼板の表面に形成することで、超撥水性ワ
ックスコートと同様な効果を発揮でき、より具体的に
は、屋外にて使用される自動車ボディー表面への、雨水
などの水滴付着を防止する超撥水性ワックスコートに応
用できる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B05D 7/24 302 B05D 7/24 302J 302Y C09D 5/00 C09D 5/00 Z 7/12 7/12 127/12 127/12 183/04 183/04 C09K 3/18 C09K 3/18 102 102 104 104 // C03C 17/30 C03C 17/30 B Fターム(参考) 4D075 AA01 CA36 DA23 DC13 EA07 EB16 EB42 4G059 AA01 AC22 FA11 FA22 FA28 FB05 4H020 BA04 BA12 BA32 4J038 CD091 DL031 GA09 HA446 JA18 JA25 JA32 JA56 KA02 KA06 KA20 NA05 NA07 NA12 PA21 PB07 PC02 PC03 PC07 PC08

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水の接触角が120°に満たない材料か
    らなる表面上に形成した際、その被膜表面における水の
    接触角を150°以上とすることが可能な撥水性被膜で
    あって、 前記表面上に形成された、粘着性を有する撥水性高分子
    を含む層と、 前記粘着性を有する撥水性高分子を含む層表面に固着さ
    れた、撥水性シリカ粒子とからなる被膜であり、 前記粘着性を有する撥水性高分子を含む層自体の表面に
    おける水の接触角は、120°以下であり、 前記撥水性シリカ粒子の平均粒子径は、0.1〜100
    μmの範囲に選択され、 対応させて、表面に固着された前記撥水性シリカ粒子の
    面密度は、102〜108個/mm2の範囲に選択されて
    いることを特徴とする撥水性被膜。
  2. 【請求項2】 前記粘着性を有する撥水性高分子を含む
    層の平均膜厚は、 前記撥水性シリカ粒子の平均粒子径に対して、0.1〜
    10倍の範囲に選択されていることを特徴とする請求項
    1に記載の撥水性被膜。
  3. 【請求項3】 前記粘着性を有する撥水性高分子を含む
    層は、 粘着性含フッ素高分子あるいは、前記粘着性含フッ素高
    分子と粘性シリコーン樹脂との混合物からなる層である
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の撥水性被
    膜。
  4. 【請求項4】 前記粘着性含フッ素高分子は、 水に対する溶解性を有さない含フッ素高分子であって、
    かつアルコール、エステル、ケトン、エーテルからなる
    群から選択され、分子内にハロゲン置換を有していない
    有機溶媒であって、その沸点は、120℃以下、60℃
    以上である有機溶媒のいずれかに対して、溶解可能な含
    フッ素高分子であることを特徴とする請求項3に記載の
    撥水性被膜。
  5. 【請求項5】 前記粘性シリコーン樹脂は、 アルコール、エステル、ケトン、エーテルからなる群か
    ら選択され、分子内にハロゲン置換を有していない有機
    溶媒であって、その沸点は、120℃以下、60℃以上
    である有機溶媒のいずれかに対して、溶解可能な粘性シ
    リコーン樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の
    撥水性被膜。
  6. 【請求項6】 水の接触角が120°に満たない材料か
    らなる表面上に、その被膜表面における水の接触角を1
    50°以上とすることが可能な撥水性被膜を形成する方
    法であって、 前記表面上に、粘着性を有する撥水性高分子を含む層を
    形成し、 また、前記粘着性を有する撥水性高分子を含む層の表面
    に、撥水性シリカ粒子を均一な面密度で固着し、表面に
    撥水性シリカ粒子が固着されてなる粘着性を有する撥水
    性高分子を含む層からなる被膜を形成する工程を有し、 前記粘着性を有する撥水性高分子は、表面に撥水性シリ
    カ粒子が固着されていない場合、かかる粘着性を有する
    撥水性高分子を含む層自体表面における水の接触角が、
    120°以下となる材料を選択し、 前記撥水性シリカ粒子は、その平均粒子径が0.1〜1
    00μmの範囲に選択される粒子を用い、 対応させて、表面に固着される前記撥水性シリカ粒子の
    面密度を、102〜108個/mm2の範囲に選択するこ
    とを特徴とする撥水性被膜の作製方法。
  7. 【請求項7】 前記粘着性を有する撥水性高分子を含む
    層の平均膜厚を、 前記撥水性シリカ粒子の平均粒子径に対して、0.1〜
    10倍の範囲に選択することを特徴とする請求項6に記
    載の撥水性被膜の作製方法。
  8. 【請求項8】 前記粘着性を有する撥水性高分子とし
    て、 粘着性含フッ素高分子あるいは、前記粘着性含フッ素高
    分子と粘性シリコーン樹脂との混合物のいずれかを用い
    ることを特徴とする請求項6または7に記載の撥水性被
    膜の作製方法。
  9. 【請求項9】 前記粘着性含フッ素高分子は、水に対す
    る溶解性を有さない含フッ素高分子であって、かつアル
    コール、エステル、ケトン、エーテルからなる群から選
    択され、分子内にハロゲン置換を有していない有機溶媒
    であって、その沸点は、120℃以下、60℃以上であ
    る有機溶媒のいずれかに対して、溶解可能な含フッ素高
    分子であることを特徴とする請求項8に記載の撥水性被
    膜の作製方法。
  10. 【請求項10】 前記粘性シリコーン樹脂は、 アルコール、エステル、ケトン、エーテルからなる群か
    ら選択され、分子内にハロゲン置換を有していない有機
    溶媒であって、その沸点は、120℃以下、60℃以上
    である有機溶媒のいずれかに対して、溶解可能な粘性シ
    リコーン樹脂であることを特徴とする請求項8に記載の
    撥水性被膜の作製方法。
  11. 【請求項11】 前記粘着性を有する撥水性高分子を含
    む層表面上への撥水性シリカ粒子の固着は、 前記撥水性シリカ粒子を、前記粘着性を有する撥水性高
    分子を含む溶液中に分散してなる分散液を用い、 かかる分散液を、被膜形成を行う表面上に、直接塗布ま
    たは噴霧して、均一な分散液層を形成し、 その後、分散液層内の前記粘着性を有する撥水性高分子
    を含む溶液に含まれる溶媒を蒸発・除去し、 前記粘着性を有する撥水性高分子の表面上への析出を行
    い、 次いで、残余する分散液層内に含まれる前記撥水性シリ
    カ粒子を析出した前記粘着性を有する撥水性高分子の層
    上にかかる粘着性を有する撥水性高分子を利用して固着
    することによりなすことを特徴とする請求項6に記載の
    撥水性被膜の作製方法。
  12. 【請求項12】 前記分散液中に含有される撥水性シリ
    カ粒子の分散密度を、0.50wt%〜1.5wt%の
    範囲に選択することを特徴とする請求項11に記載の撥
    水性被膜の作製方法。
  13. 【請求項13】 前記分散液中に含有される前記粘着性
    を有する撥水性高分子の濃度を、0.035wt%〜
    1,0wt%の範囲に選択することを特徴とする請求項
    11に記載の撥水性被膜の作製方法。
  14. 【請求項14】 前記分散液を構成する溶媒として、ア
    ルコール、エステル、ケトン、エーテルからなる群から
    選択され、分子内にハロゲン置換を有していない有機溶
    媒であって、その沸点は、120℃以下、60℃以上で
    ある有機溶媒のいずれかを用いることを特徴とする請求
    項11に記載の撥水性被膜の作製方法。
  15. 【請求項15】 前記粘着性を有する撥水性高分子を含
    む層表面上への撥水性シリカ粒子の固着は、 前記粘着性を有する撥水性高分子を含む溶液を用い、 かかる溶液を、被膜形成を行う表面上に、直接塗布また
    は噴霧して、均一な溶液層を形成し、 その後、溶液層内の前記粘着性を有する撥水性高分子を
    含む溶液に含まれる溶媒を蒸発・除去し、前記粘着性を
    有する撥水性高分子の表面上への析出を行い、前記粘着
    性を有する撥水性高分子の析出層を形成し、 次いで、前記粘着性を有する撥水性高分子を溶解可能な
    溶媒に前記撥水性シリカ粒子を分散してなる分散液を用
    い、 かかる分散液を、前記粘着性を有する撥水性高分子の析
    出層の表面上に、直接塗布または噴霧して、均一な分散
    液層を形成し、 その後、分散液層内の前記粘着性を有する撥水性高分子
    を溶解可能な溶媒を蒸発・除去し、 部分的に再溶解した前記粘着性を有する撥水性高分子の
    表面上への再析出を行い、 また、分散液層内に含まれる前記撥水性シリカ粒子を再
    析出している前記粘着性を有する撥水性高分子の層上に
    かかる粘着性を有する撥水性高分子を利用して固着する
    ことによりなすことを特徴とする請求項6に記載の撥水
    性被膜の作製方法。
  16. 【請求項16】 前記分散液中に含有される撥水性シリ
    カ粒子の分散密度を、0.50wt%〜1.5wt%の
    範囲に選択することを特徴とする請求項15に記載の撥
    水性被膜の作製方法。
  17. 【請求項17】 前記溶液中に含有される前記粘着性を
    有する撥水性高分子の濃度を、0.5wt%〜2.5w
    t%の範囲に選択することを特徴とする請求項15に記
    載の撥水性被膜の作製方法。
  18. 【請求項18】 前記分散液を構成する溶媒として、ア
    ルコール、エステル、ケトン、エーテルからなる群から
    選択され、分子内にハロゲン置換を有していない有機溶
    媒であって、その沸点は、120℃以下、60℃以上で
    ある有機溶媒のいずれかを用いることを特徴とする請求
    項15に記載の撥水性被膜の作製方法。
  19. 【請求項19】 前記撥水性被膜は、 光透過性を示す、粘着性を有する撥水性高分子を含む層
    と、前記粘着性を有する撥水性高分子を含む層表面に固
    着された、撥水性シリカ粒子とからなる被膜であること
    を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の撥水性被
    膜。
  20. 【請求項20】 前記請求項1〜5のいずれかに記載の
    撥水性被膜を形成する、水の接触角が120°に満たな
    い材料からなる表面が塗板表面であり、かかる塗板表面
    に対する超撥水性ワックス皮膜として、前記請求項1〜
    5のいずれかに記載の撥水性被膜を使用する方法。
  21. 【請求項21】 前記請求項1〜5のいずれかに記載の
    撥水性被膜を形成する、水の接触角が120°に満たな
    い材料からなる表面がガラス表面であり、かかるガラス
    表面に対する超撥水性コート皮膜として、前記請求項1
    〜5のいずれかに記載の撥水性被膜を使用する方法。
JP2001261720A 2001-08-30 2001-08-30 撥水性被膜とその作製方法 Pending JP2003064318A (ja)

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