JP2003061385A - 永久磁石同期モータの位置センサレス制御装置 - Google Patents

永久磁石同期モータの位置センサレス制御装置

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JP2003061385A
JP2003061385A JP2001245538A JP2001245538A JP2003061385A JP 2003061385 A JP2003061385 A JP 2003061385A JP 2001245538 A JP2001245538 A JP 2001245538A JP 2001245538 A JP2001245538 A JP 2001245538A JP 2003061385 A JP2003061385 A JP 2003061385A
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magnet synchronous
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Tomokuni Iijima
友邦 飯島
Kazunari Narasaki
和成 楢崎
Toru Tazawa
徹 田澤
Ichiro Oyama
一朗 大山
Yukinori Maruyama
幸紀 丸山
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 永久磁石同期モータの位置センサレス制御装
置において、起動時にモータが回転している場合でも、
スムーズに起動させることができる装置を得ること。 【解決手段】 ブート・ストラップ型チャージ・ポンプ
を利用した制御装置において、相電流の大きさが小さい
とき充電し相電流の大きさが大きいとき充電しないよう
に下側スイッチング素子の通電を制御する充電制御手段
と、相電流に基づき複数の起動手段から1つを選択する
起動手段選択手段と、から構成し、起動時にロータが回
転していても、ブラシレスモータをスムーズに起動させ
ることができる永久磁石同期モータの位置センサレス制
御装置を実現する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、位置センサを用い
ずに永久磁石同期モータを駆動制御する位置センサレス
制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ロータに永久磁石を有する永久磁石同期
モータは、界磁に永久磁石を使用するため高効率である
とともに、機械的な転流機構を用いないため保守性に優
れており、ファン用やポンプ用など様々な用途に使用さ
れている。しかしながら、永久磁石同期モータでは、ロ
ータの回転に同期してステータ巻線に電流を流す必要が
ある。永久磁石同期モータを駆動制御する従来のモータ
制御装置においては、永久磁石同期モータに取り付けら
れたホール素子、レゾルバあるいは光エンコーダなどの
位置センサを用いてロータの角度情報を得ていた。その
ため、従来の永久磁石同期モータはこの位置センサの分
だけ製造コストが上昇し大型化していた。位置センサを
省略することにより、低コスト化と小型化とを実現した
従来の永久磁石同期モータの位置センサレス制御装置と
して、電気学会論文集、D117巻、1号、平成9年、
98頁〜104頁に記載されたもの(以下、従来例1と
呼ぶ)、及び電気学会研究会資料、半導体電力変換研究
会、SPC−97−7、37頁〜42頁に記載されたも
の(以下、従来例2と呼ぶ)が知られている。以下、こ
れらの従来例1及び2について説明する。
【0003】従来例1は、ある程度の高速回転時におい
て、永久磁石同期モータのロータ角度を推定するもので
ある。まず、相巻線に流れる相電流を検知し、これらの
相電流値を座標変換し、γ軸電流値iγとδ軸電流値i
δとを得る。次に、永久磁石同期モータのモデルを示す
d軸とq軸の電圧方程式にパラメータ(巻線抵抗値、イ
ンダクタンス値、誘起電圧定数など)をあてはめ、γ軸
電流モデル値iγmとδ軸電流モデル値iδmとを作成
する。さらに、各電流値と各電流モデル値との誤差であ
るγ軸電流誤差値Δiγとδ軸電流誤差値Δiδとを求
める。そして、これらの電流誤差値に基づきロータの推
定角度と推定誘起電圧とを補正する。このようにして生
成した推定角度を用いて相巻線に所定の電流を流し、ロ
ータを所定の向きに回転させる。
【0004】従来例2は、永久磁石同期モータを停止状
態から起動する場合の制御に関する。モータの停止時、
あるいは低速回転時において、d軸インダクタンスとq
軸インダクタンスの差がある突極性を有する永久磁石同
期モータのロータの回転角度を推定するものである。ま
ず、γ軸に電圧パルスを印加する。次に、この電圧パル
スによる相電流の電流応答値を検知し、これらの相電流
の電流応答値を座標変換して、γ軸電流応答値Δiγと
δ軸電流応答値Δiδとを作成する。突極性を有する永
久磁石同期モータはロータの回転に応じてインダクタン
スが変化する。このインダクタンスの変化により電流応
答値が変化することを利用し、これらのγ軸電流応答値
Δiγとδ軸電流応答値Δiδとに基づき推定角度を求
める。求めた推定角度を用いて相巻線に電流を流しロー
タを所定の向きに回転させる。起動時にロータが停止し
ているモータを高速で回転始動させるためには、まず、
従来例2の方式で起動し、適時に従来例1の方式に切り
替えて加速させ、高速で回転させる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
永久磁石同期モータの位置センサレス制御装置は、以下
の問題点を有する。永久磁石同期モータをファンに使用
したとき、ファンの起動直前に強い外の風がファンに当
たると、その風の力でロータが回転する場合がある。ま
た、永久磁石同期モータを用いた他の回転機械におい
て、起動時にすでにロータが回転している場合がある。
このようにモータの起動時にすでにロータが回転してい
る場合に、起動時にロータが停止していることを前提に
した従来例2の方式により起動すると、モータをスムー
ズに起動させることができなかった。これを解決するこ
とがこのような永久磁石同期モータにおける課題であっ
た。本発明は、上記の課題を解決するため、永久磁石同
期モータの起動時にすでにロータが回転している場合で
あっても、支障なく起動させることができる位置センサ
レス制御装置を実現することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の永久磁石同期モ
ータの位置センサレス制御装置は、複数相のステータ巻
線が配置されたステータと永久磁石が配置されたロータ
とを有する永久磁石同期モータの制御装置であって、前
記ステータ巻線に流れる相電流を検知する電流センサ、
前記相電流の大きさが所定値より小さいときは前期ステ
ータ巻線を短絡させ、前記相電流の大きさが前記所定値
以上のときは前期ステータ巻線を短絡させないように制
御する短絡制御部、前記永久磁石同期モータを起動する
ための複数の起動部、及び前記相電流に応じて前記複数
の起動部の1つを選択する起動部選択部を有する。
【0007】本発明は以下の効果を有する。永久磁石同
期モータでは、ロータが回転しているとき永久磁石によ
り各相のステータ巻線に誘起電圧が発生する。このとき
ステータ巻線を短絡すると、誘起電圧の大きさに比例し
た相電流が流れる。この状態でモータをスムーズに起動
させるためには、誘起電圧の大きさに応じて、起動方式
を切り替える必要がある。そこで、上記の構成により、
ステータ巻線の短絡時の相電流の大きさに応じて起動方
式を選択する。これにより起動時にロータがすでに回転
している場合であっても、永久磁石同期モータをスムー
ズに起動させることができる位置センサレス制御装置を
実現できる。また、ロータが回転していると、ステータ
巻線を短絡したときに流れる相電流によりロータの回転
にブレーキがかかる。そこで、上記の構成により、ステ
ータ巻線を短絡したときの相電流を検出して過大な相電
流が流れないように制御する。これにより、起動時にロ
ータが回転している場合であっても、過大なブレーキが
かかるのを防止しつつ永久磁石同期モータをスムーズに
起動させることができる位置センサレス制御装置を実現
できる。
【0008】本発明の永久磁石同期モータの位置センサ
レス制御装置の前記起動部選択部は、前記短絡制御部が
前記ステータ巻線を短絡させない期間が所定値より短い
ときは前記低速用起動部を選択し、前記短絡制御部が前
記ステータ巻線を短絡させない期間が所定値以上に長い
ときは前記高速用起動部を選択する。永久磁石同期モー
タにおいてロータが回転しているとき、永久磁石により
各相のステータ巻線に誘起電圧が発生する。ステータ巻
線を短絡すると、誘起電圧の大きさに比例した相電流が
流れる。この状態でモータをスムーズに起動させるため
には、誘起電圧の大きさに応じて起動方式を切り替える
必要がある。そこで、上記の構成により、ステータ巻線
の短絡時の相電流の大きさを、前記短絡制御部が前記短
絡手段を動作させない期間の長さで判定して、起動方式
を選択する。これにより、起動時にロータが回転してい
る場合であっても、永久磁石同期モータをスムーズに起
動させることができる制御装置を実現できる。
【0009】本発明の永久磁石同期モータの位置センサ
レス制御装置の前記起動部選択部は、前記短絡制御部が
前記ステータ巻線を短絡中の前記相電流の変化の割合が
所定値より小さいときは前記低速用起動部を選択し、前
記短絡制御部が前記ステータ巻線を短絡中の前記相電流
の変化の割合が所定値以上のときは前記高速用起動部を
選択する。永久磁石同期モータのロータが回転している
とき、永久磁石により各相のステータ巻線に誘起電圧が
発生する。ステータ巻線を短絡すると誘起電圧の大きさ
に比例した大きさの相電流が流れる。この状態でモータ
をスムーズに起動するためには、誘起電圧の大きさに応
じて、起動方式を切り替える必要がある。そこで、上記
の構成により、ステータ巻線の短絡時の電流の大きさ
を、前記短絡制御部が動作中の前記相電流の変化の割合
で判定して、起動方式を選択する。これにより、起動時
にロータが回転している場合であっても、永久磁石同期
モータをスムーズに起動させることができる永久磁石同
期モータの位置センサレス制御装置を実現できる。
【0010】本発明の永久磁石同期モータの位置センサ
レス制御装置の前記起動部選択部は、前記短絡制御部が
前記ステータ巻線を短絡する前の前記相電流が実質的に
零でないときは起動を中止する。ロータが高速で回転し
ていて、ステータ巻線の誘起電圧が主電源の電圧よりも
大きいときは、ステータ巻線を短絡しないときでも相電
流が流れる。このようにロータが高速で回転していると
きにモータを起動すると、過大な電流がスイッチング素
子を流れ、スイッチング素子を破損するおそれがあるな
ど危険である。そこで、この構成により、ステータ巻線
の短絡前に相電流が流れているときは、回転速度が大き
いと判定し起動を中止する。これにより、高速回転中の
起動による危険を回避することができる永久磁石同期モ
ータの位置センサレス制御装置を実現できる。
【0011】本発明の他の観点の永久磁石同期モータの
位置センサレス制御装置は、それぞれの一方の端部が中
性点に接続された複数相のステータ巻線が配置されたス
テータと永久磁石が配置されたロータとを有する永久磁
石同期モータの制御装置であって、主電源の正極と、前
記ステータ巻線のそれぞれの他方の端部との間にそれぞ
れ接続された上側スイッチング素子、前記主電源の負極
と、前記ステータ巻線のそれぞれの他方の端部との間に
それぞれ接続された下側スイッチング素子、前記上側ス
イッチング素子を駆動する駆動回路にそれぞれ電力を供
給する独立した上側電源、及び前記下側スイッチング素
子を駆動する駆動回路にそれぞれ電力を供給する下側電
源を有する。前記上側電源は、ダイオードとコンデンサ
とを有し、前記下側スイッチング素子が通電することに
より前記下側電源により前記ダイオードを通じ前記コン
デンサが充電される。上記の構成の永久磁石同期モータ
の位置センサレス制御装置において、前記ステータ巻線
に流れる相電流を検知する電流センサ、前記相電流の大
きさが所定値より小さいときは前記上側電源を充電し、
前記相電流の大きさが前記所定値以上のときは前期上側
電源が充電されないように前記下側スイッチング素子の
通電を制御する充電制御手段、永久磁石同期モータを起
動する複数の起動手段、及び前記相電流に基づき前記複
数の起動手段から1つを選択する起動部選択部を有す
る。
【0012】永久磁石同期モータにおいて、ロータが回
転しているとき、永久磁石によりステータ巻線に誘起電
圧が発生する。この状態で、下側スイッチング素子を通
電状態にすることにより上側電源を充電すると、ステー
タ巻線が短絡されるため、誘起電圧の大きさに比例した
相電流が流れる。この状態でモータをスムーズに起動さ
せるためには、誘起電圧の大きさに応じて、起動方式を
切り替える必要がある。そこで、上記の構成により、上
側電源を充電時の相電流の大きさにより起動方式を選択
する。これにより、起動時にロータが回転している場合
であっても、永久磁石同期モータをスムーズに起動させ
ることができる制御装置を実現できる。
【0013】ロータが回転しているとき、下側スイッチ
ング素子を通電状態にすることにより上側電源を充電す
ると、ステータ巻線が短絡されるため相電流が流れ、ブ
レーキがかかる。そこで、上記の構成により、上側電源
を充電時に流れる相電流を監視し、過大な相電流が流れ
ないように制御する。これにより、起動時にロータが回
転している場合であっても、過大なブレーキがかかるの
を防止しつつ永久磁石同期モータをスムーズに起動させ
ることができる永久磁石同期モータの位置センサレス制
御装置を実現できる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の永久磁石同期モータの位
置センサレス制御装置の好適な実施例を図1から図14
を参照して説明する。
【0015】《第1実施例》以下、本発明の第1実施例
の永久磁石同期モータの位置センサレス制御装置を図1
から図11を参照して説明する。第1実施例の概要を図
1及び図4を参照して以下に説明する。第1実施例の永
久磁石同期モータの位置センサレス制御装置は、図4に
示す上側IGBT52u、52v、52wの駆動回路5
4u、54v、54wの電源である上側電源55u、5
5v、55wを充電するときの相電流を監視する。相電
流が所定値より大きいとき上側電源の充電を中止して、
過大な電流が流れないように制御する。これにより、起
動時にロータが回転している場合であっても、過大なブ
レーキがかかるのを防止しつつ永久磁石同期モータをス
ムーズに起動させる。
【0016】また、第1実施例の永久磁石同期モータの
位置センサレス制御装置は、上側IGBT52u、52
v、52wの駆動回路54u、54v、54wの電源で
ある上側電源55u、55v、55wを充電するときの
相電流の大きさに基づき起動部35内のいずれかを選択
する。これにより、起動時にロータが回転している場合
であっても、永久磁石同期モータをスムーズに起動させ
ることができる。なお、上側電源55u、55v、55
wを充電するときの相電流の大きさは、充電を中止する
期間の長さで判定する。さらに、第1実施例の永久磁石
同期モータの位置センサレス制御装置は、上側電源55
u、55v、55wの充電前の相電流を監視し、相電流
が流れているときは、回転速度が非常に大きいと判定し
起動を中止する。これにより、高速回転時の起動動作を
起こすことによる危険を回避する。
【0017】[永久磁石同期モータの構造]第1実施例
の永久磁石同期モータの位置センサレス制御装置によっ
て制御される永久磁石同期モータ(Interior Permanent
Magnet Synchronous Motor、以後IPMSMと略記す
る)の構造を説明する。図1は、本発明の第1実施例に
おける永久磁石同期モータの位置センサレス制御装置の
ブロック図である。IPMSM10は、電磁鋼板の積層
体のティースを有するステータ(図示せず)と、ステー
タのティースに巻回された被覆銅線の相電流が流れるス
テータ巻線11u、11v、11wと、ステータに対向
し近接して配置されたロータ12とを有する。ステータ
巻線11u、11v、11wはスター結線(各ステータ
巻線11u、11v、11wの一方の端部が点Pで接続
される結線方法であり、この点Pは中性点と呼ばれる)
されている。
【0018】図2は、IPMSM10のロータ12の断
面図である。図2では図を見易くするためハッチングを
施していない。ロータ12は、シャフト13で回転可能
に支持され、シャフト13と回転中心が同一であり電磁
鋼板の積層体であるロータヨーク14と、ロータヨーク
14の内部に配置された8個の永久磁石15を有する。
ロータ12の外周部に8つの磁極が形成されるため、磁
極数は8である。ロータヨーク14の外周部において、
隣り合う永久磁石15の間にくぼみ14Aが形成されて
いる。この構成のIPMSM10は、ロータヨーク14
の外周が円筒状のものと比較して、誘起電圧の波形が滑
らかになり、コギング・トルク、及びトルク・リップル
が小さく、低騒音、低振動が要求される産業用用途に適
する。
【0019】図2において、d軸、q軸を以下のように
定める。d軸を永久磁石15の磁束と同じ向きに定義す
る。また、q軸をd軸から電気角で90°進んだ向きに
定義する。d軸方向の磁束を点線で、q軸方向の磁束を
一点鎖線で示す。図2の紙面上ではq軸はd軸から2
2.5°進んだ向きに定義されている。このような位置
関係を表す角度を機械角という。一方、電気的な変化に
着目した位置関係を表す角度を電気角という。よく知ら
れているように、電気角と機械角との間には(電気角)
=(機械角×極数/2)の関係がある。以下、特に明示
しないとき、位置関係を表す角度は電気角である。
【0020】永久磁石同期モータであるIPMSM10
は、突極性が比較的小さい。突極性を以下に説明する。
IPMSM10において、図2のように、d軸方向の磁
束は、空気中(ロータ12の外部)と電磁鋼鈑部(ロー
タヨーク14)と永久磁石15とを通る。一方、q軸方
向の磁束は、空気中(ロータ12の外部)と電磁鋼鈑部
(ロータヨーク14)とを通る。電磁鋼鈑の透磁率は大
きく、空気及び永久磁石の透磁率は小さい。したがっ
て、d軸方向の磁束の経路に永久磁石15が配置される
と、d軸方向の磁束は通りにくく、d軸インダクタンス
Ldは小さい。一方、ロータヨーク14の外周部の永久
磁石15の間にくぼみ14Aが形成されているため、q
磁方向の磁束の経路においては空気の占める割合が大き
い。そのため、q軸方向の磁束は通りにくく、q軸イン
ダクタンスLqは小さい。このように、図2のロータヨ
ーク14を有する永久磁石同期モータは、外周部が円筒
状であるロータヨークを有する永久磁石同期モータに比
較して、q軸インダクタンスLqが小さいため、突極性
が比較的小さい。
【0021】図1のIPMSM10において、ステータ
巻線11u、11v、11wに流れる相電流により発生
する回転磁界と永久磁石15により発生する界磁との相
互作用によりトルク(マグネット・トルク)が発生す
る。また、磁束のとおりやすさの違いを利用し、相電流
による回転磁束を発生させることにより、トルク(リラ
クタンス・トルク)が発生する。
【0022】[座標系]次に、座標系について説明す
る。図3は本発明の第1実施例における座標系の説明を
するためのモータの略図である。図3において、説明を
簡単にするために、磁極数が2のIPMSM10Aを例
にして説明する。d軸及びq軸は、ロータ12Aと共に
回転する座標軸である。d軸の向きを、ロータ12に配
置された永久磁石15による磁束と同じ向きとし、q軸
をd軸に対して電気角で90°進んだ向きとする。ステ
ータ巻線11uとd軸のなす角度を角度θとする。正の
向きは、反時計回りであり、u相、v相、w相の順とす
る。
【0023】[永久磁石同期モータの位置センサレス制
御装置20の構成]図1を参照して第1実施例の永久磁
石同期モータの位置センサレス制御装置20の構成を説
明する。永久磁石同期モータの位置センサレス制御装置
20は、IPSMS10のステータ巻線11u、11v
の電流を検出する電流センサ23u、23vを有し、そ
れぞれアナログu相電流値iuaとアナログv相電流値
ivaとを検出する。アナログu相電流値iua、アナ
ログv相電流値ivaはワンチップマイクロコンピュー
タ(以下、マイコンという)21のADC33u、AD
C33vにそれぞれ入力される。マイコン21は、駆動
部22に対して、スイッチング信号guhv、gul
v、gvhv、gvlv、gwhv、gwlv(図4に
図示)を出力する。スイッチング信号guhv、gul
v、gvhv、gvlv、gwhv、gwlvはステー
タ巻線11u、11v、11wに接続された駆動部22
を制御する。
【0024】マイコン21は、CPU、RAM、RO
M、タイマ、ADC、ポート、及びこれらをつなぐバス
などのハードウェアにより構成され、ソフトウェアによ
り所定の処理を行うが、図1では前記所定の処理を行う
機能要素によって表している。すなわち、マイコン21
は、アナログu相電流値iua、アナログv相電流値i
vaがそれぞれ入力され、ディジタルのu相電流値i
u、v相電流値ivをそれぞれ出力するアナログ・ディ
ジタル・コンバータ(Analog Digital Converter。以
後、ADCと略記する)33u、33vと、u相電流値
iuとv相電流値ivとが入力され、スイッチング指令
guh、gul、gvh、gvl、gwh、gwlと充
電中止回数ηとを出力する充電制御部31とを有する。
マイコン21はさらに、スイッチング指令guh、gu
l、gvh、gvl、gwh、gwlが入力され、スイ
ッチング信号guhv、gulv、gvhv、gvl
v、gwhv、gwlvを出力するポート32と、u相
電流値iuとv相電流値ivと充電中止回数ηとが入力
され、起動部指標値ζを出力する起動部選択部34と、
起動部指標値ζが入力されスイッチング指令guh、g
ul、gvh、gvl、gwh、gwlを出力する起動
部35とを有する。起動部35は、低速用起動部41、
高速用起動部42及び起動中止処理部43を有する。駆
動部22、充電制御部31及びポート32により、ステ
ータ巻線を短絡・制御する短絡制御部49を構成してい
る。
【0025】図4は、図1に示す駆動部22の詳細な構
成を示す回路図である。駆動部22は、コレクタが主電
源51の正極に接続され、エミッタがステータ巻線11
u、11v、11wにそれぞれ接続された上側IGBT
(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート・
バイポーラ・トランジスタ)52u、52v、52w
と、上側IGBT52u、52v、52wのそれぞれに
逆並列接続された上側フライホイール・ダイオード53
u、53v、53wを含んでいる。
【0026】駆動部22はさらに、スイッチング信号g
uhv、gvhv、gwhvがそれぞれ入力され、上側
IGBT52u、52v、52wのゲート電圧をそれぞ
れ制御する、フォトカプラを含む上側駆動部54u、5
4v、54wと、負極が上側IGBT52u、52v、
52wのエミッタにそれぞれ接続され、上側駆動部54
u、54v、54wのそれぞれの電源として働く上側電
源55u、55v、55wとを含んでいる。駆動部22
はさらに、コレクタがステータ巻線11u、11v、1
1wにそれぞれ接続され、エミッタが主電源51の負極
に接続された下側IGBT56u、56v、56wと、
下側IGBT56u、56v、56wのそれぞれに逆並
列接続された下側フライホイール・ダイオード57u、
57v、57wを含んでいる。
【0027】駆動部22はさらに、スイッチング信号g
ulv、gvlv、gwlvがそれぞれ入力され、下側
IGBT56u、56v、56wのゲート電圧をそれぞ
れ制御する、フォトカプラを含む下側駆動部58u、5
8v、58wと、主電源51に接続され負極が主電源5
1の負極と共通であり下側駆動部58u、58v、58
wの共通な電源である下側電源59とを含んでいる。駆
動部22はさらに、一端が下側電源59の正極に接続さ
れ、他端が上側電源55u、55v、55wに接続され
た抵抗60を含んでいる。上側電源55u、55v、5
5wは、当技術分野ではよく知られたブート・ストラッ
プ型チャージ・ポンプであり、それぞれのアノードが抵
抗60に接続され、それぞれのカソードが上側駆動部5
4u、54v、54wのそれぞれの正極に接続されたダ
イオードと、上側駆動部54u、54v、54wの正極
と負極との間にそれぞれ接続されたコンデンサとを有す
る。
【0028】[永久磁石同期モータの位置センサレス制
御装置20の動作原理]第1実施例の永久磁石同期モー
タの位置センサレス制御装置20の動作原理を図4を参
照して説明する。まず、第1動作を説明する。上側電源
55u、55v、55wのコンデンサを充電するとき
(以下、上側電源55u、55v、55wを充電すると
き、と略記する)の相電流振幅が永久磁石同期モータの
安全運転の見地から定められた所定値より大きいときは
充電を中止して過大な電流が流れないように制御する。
そして、ロータ12が回転している場合であっても、過
大なブレーキがかかるのを防止しつつ永久磁石同期モー
タをスムーズに起動させる。下側電源59は、DC/D
Cコンバータで構成され、常に下側駆動部58u、58
v、58wに電力を供給する。
【0029】上側電源55u、55v、55wは、それ
ぞれの下側IGBT56u、56v、56wをオンにし
てが通電すると下側電源59により充電される。下側I
GBT56uが通電すると、下側IGBT56uのコレ
クタの電圧が主電源51の負極電位と同一となる(厳密
には、コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vcesatだけ
電位が高い)。上側電源55uの負極は下側IGBT5
6uのコレクタと共通に接続されているため、上側電源
55uの負極電位は、主電源51の負極電位と同一であ
り、かつ下側電源59の負極と同一である。上側電源5
5uのコンデンサに電荷が蓄積されていないときは、下
側電源59の正極電位に比べて、上側電位55uの正極
電位が低い。そのため、下側電源59の正極から上側電
源55uの正極に向かって電流が流れる。すなわち、下
側電源59の正極から抵抗60を通って電流が流れ、さ
らに上側電源55uのダイオードを電流が流れて上側電
源55uのコンデンサが充電される。電流は、上側電源
55uの正極電位が下側電源59の正極電位と同一とな
るまで流れ続ける(厳密には、ダイオードによる電圧降
下分だけ、上側電源55uの正極電位が低い)。上記の
動作はv相、及びw相についても同様である。
【0030】このように、IPMSM10の起動前に、
あらかじめ下側IGBT56u、56v、56wを通電
することにより、上側電源55u、55v、55wを充
電する必要がある。図5の(a)〜(c)は、第1実施
例において、ロータ12が停止しているときの、スイッ
チング信号gulvと充電電圧と相電流振幅iaとの関
係を示す波形図である。初期の充電電圧は0である。図
4において、下側IGBT56u、56v、56wをオ
ンにして通電すると、上側電源55u、55v、55w
が充電される。図5の(a)のように、高電位Hのスイ
ッチング信号gulvを期間T後低電位Lにし、期間T
だけ下側IGBT56uを通電させる。すると、図5の
(b)のように、上側電源55uの充電電圧は徐々に上
昇し、最終的に下側電源59の電源電圧値と同一になる
(厳密には、下側IGBT56uのコレクタ・エミッタ
間飽和電圧Vcesatや、上側電源55uのダイオー
ドの電圧降下の影響で多少異なる)。このとき、相電流
は図5の(c)に示すように流れない。この動作はv
相、及びw相についても同様である。
【0031】ロータ12が回転しているときに上側電源
55u、55v、55wを充電すると相電流が流れ、ブ
レーキがかかる。上記のように、上側電源55u、55
v、55wを充電するために、下側IGBT56u、5
6v、56wをオンにして通電すると、下側IGBT5
6u、56v、56wのコレクタ電位が同一となるた
め、ステータ巻線11u、11v、11wの端子電圧も
同一となる。これは、ステータ巻線11u、11v、1
1wを短絡したことと等価である。ロータ12が回転し
ているときには、ステータ巻線11u、11v、11w
に誘起電圧が発生している。このため、ステータ巻線1
1u、11v、11wを短絡すると、この誘起電圧によ
り相電流が流れ、ブレーキトルクが発生する。この状態
で、上側電源55u、55v、55wを充電すると、過
大な相電流が流れて駆動素子(下側IGBT56u、5
6v、56wなど)の破壊や、過大なブレーキトルクに
よる使用機器の不具合が発生する。そこで、相電流を監
視し、過大な電流が流れないように、充電の実行及び中
止を行う。
【0032】図6は、第1実施例において、ロータ12
が回転しているときのスイッチング信号gulvと充電
電圧と相電流振幅iaとの関係を示す波形図である。I
PMSM10の起動前に、図6の(a)のように、スイ
ッチング信号gulvを高電位Hから低電位Lにする
と、下側IGBT56uが通電する。その結果、図6の
(b)のように、上側電源55uの充電電圧が徐々に上
昇する。誘起電圧により相電流が流れるため、図6の
(c)のように相電流振幅iaが増加する。相電流振幅
iaに閾値(図6の(c)の点線で示される値)を設定
し、この閾値に達すると、図6の(a)のように、スイ
ッチング信号gulvを高電位Hにし、下側IGBT5
6uの通電を中止し、充電を中止する。相電流振幅ia
が閾値以下になったら、再び充電を開始する。
【0033】このように、上側電源55u、55v、5
5wの充電時に相電流振幅iaが閾値以上になると充電
を中止し、過大な電流が流れないように制御する。すな
わち、第1の動作では、誘起電圧の大きさにより充電を
中止する期間を変化させる。これにより、起動前にロー
タ12が回転している場合であっても、過大なブレーキ
がかかるのを防止しつつ永久磁石同期モータをスムーズ
に起動させることができる。第2の動作では、上側電源
55u、55v、55wを充電しているときの相電流の
大きさ(具体的には、充電を中止する期間の長さ)によ
り複数の起動部のいずれかを選択する。これにより、起
動時にロータ12が回転している場合であっても、永久
磁石同期モータをスムーズに起動させることができる。
【0034】第2の動作においては、誘起電圧の大きさ
により、充電を中止する期間を変化させる。前記のよう
に、ロータ12が回転しているときには誘起電圧が発生
するため、上側電源55u、55v、55wを充電する
と相電流が流れる。回転数が大きいと、誘起電圧も大き
くなるため相電流が大きくなる。図7は、第1実施例に
おいて、ロータが比較的高速で回転しているときの、ス
イッチング信号gulv、充電電圧及び相電流振幅ia
の波形を示す波形図である。図6と比較すると、図7で
は、ロータ12が比較的高速で回転しているので誘起電
圧が大きくなり、相電流振幅iaが増加するときの傾き
が大きくなるため、充電を中止する合計の期間が長くな
る。図8は、第1実施例における誘起電圧の大きさと充
電中止期間との関係を示すグラフである。図8に示すよ
うに、誘起電圧と充電中止期間はほぼ比例する。
【0035】前記従来例1の、高速回転時において永久
磁石同期モータのロータの角度を推定するものでは、高
速回転時の高い誘起電圧を利用してロータ12の角度θ
を推定する(高速用推定方式)。そのため、誘起電圧が
低い低速域では、高速用推定方式を用いて起動すること
ができない。前記従来例2の、停止時あるいは低速回転
時においてロータの角度を推定するものでは(低速用推
定方式)、設定された所定の時間ごとに電圧パルスを印
加し、その電流応答によりロータ12の角度θを推定す
る。そのため、高速回転時には1回の電圧パルスを印加
する間に変化するロータ12の回転角度が大きく、制御
性が悪い。また、低速用推定方式は、電圧パルスの印加
により電流が急峻に変化する。このため騒音が発生し、
電流波形が歪んで損失が増加する。このことから、低速
推定方式で起動する領域を最小限にし、高速用推定方式
で起動できる領域では、出来るだけ高速用推定方式で起
動したほうがよい。そこで、誘起電圧が十分大きいとき
は、高速用推定方式を用いて起動し、それ以外の誘起電
圧が小さいときは、低速用推定方式を用いて起動する。
このように、第2の動作では誘起電圧の大きさに応じて
起動方式を切り替えることにより、低速推定方式を用い
た起動を最大限回避し、騒音及び損失の発生を回避す
る。
【0036】第2の動作では、上側電源55u、55
v、55wの充電を中止する期間の長さにより、起動方
式を切り替える。これにより、起動時においてロータ1
2が回転している場合であっても、永久磁石同期モータ
をスムーズに起動させることができる。
【0037】第3の動作では、上側電源55u、55
v、55wを充電する前に相電流を監視する。相電流が
流れているときは、回転数が非常に大きいと判定し起動
をしない。これにより、高速回転時の起動による危険を
回避する。回転数が非常に大きいときは、誘起電圧が主
電源51の電圧より高いため、上側フライホイール・ダ
イオード53u、53v、53w、及び下側フライホイ
ール・ダイオード57u、57v、57wを通じて相電
流が流れる。すなわち、上側IGBT52u、52v、
52w、及び下側IGBT56u、56v、56wが非
通電であるのに相電流が流れるときは、ロータ12が非
常に高速で回転していることを示す。一般に、ロータ1
2が高速で回転しているときに起動すると、過大な電流
が駆動部22のIGBTを流れIGBTを破損するおそ
れがあるなど危険である。そこで、充電前に相電流が流
れているときは、回転数が非常に大きいと判定して起動
を中止する。
【0038】[永久磁石同期モータの位置センサレス制
御装置20の動作の詳細]以下、第1実施例の永久磁石
同期モータの位置センサレス制御装置20の動作を詳細
に説明する。まず、図1に示す電流センサ23u、23
vの動作を説明する。電流センサ23u、23vは、そ
れぞれステータ巻線11u、11vに流れる電流を検知
し、アナログ電圧信号であるアナログu相電流値iu
a、アナログv相電流値ivaを出力する。電流センサ
22u、22vは、ホール電流検出器を備えている。ホ
ール電流検出器は、半導体磁電変換素子の一種であるホ
ール素子を内蔵し、外部磁界の強弱を電圧信号に変換し
て出力する。電流センサ22uは、u相電流によりステ
ータ巻線11uの周囲に発生する磁界の強さを検出す
る。検出された磁界の強さについての情報は一旦、電圧
信号に変換される。この電圧信号は、電流センサ22u
内の電気回路で更に処理され、アナログ電圧信号である
アナログu相電流値iuaとして出力される。また、v
相に関しても同様に、電流センサ22vはステータ巻線
11vに流れる電流を検知し、アナログ電圧信号である
アナログv相電流値ivaを出力する。
【0039】次に、図4に示す駆動部22の動作を説明
する。駆動部22は、図1のポート32から入力される
スイッチング信号guhv、gulv、gvhv、gv
lv、gwhv、gwlvに基づきステータ巻線11
u、11v、11wの端子電圧を制御する。スイッチン
グ信号guhv、gulv、gvhv、gvlv、gw
hv、gwlvは、高電位H(IGBT53uから56
wのオフによる非通電)、及び低電位L(IGBT53
uから56wのオンによる通電)のいずれかの電位をと
る。主電源51は、駆動部22に電力を供給する例えば
280V程度の直流電源である。主電源51は、3相商
用電源を図示を省略した3相ダイオード・ブリッジによ
り整流し、電解コンデンサとフィルム・コンデンサ等に
より平滑した直流を出力する。下側電源59は、降圧D
C/DCコンバータから構成され、主電源51の電圧を
降圧して下側駆動部58u、58v、58w用の15V
程度の電圧を出力する。下側電源59の負極は、主電源
51の負極に接続されるとともに、下側IGBT56
u、56v、56wのエミッタに接続されている。
【0040】下側駆動部58u、58v、58wは、そ
れぞれのスイッチング信号gulv、gvlv、gwl
vに応じて下側IGBT56u、56v、56wのゲー
ト電圧を制御する。フォトカプラを有する下側駆動部5
8uには下側電源59からの電力がアンプ部に供給され
ている。所定の高電位Hの電圧がダイオード部のアノー
ド端子に与えられ、スイッチング信号gulvがカソー
ド端子に与えられている。スイッチング信号gulvが
高電位Hのときはダイオード部には電流が流れず、下側
IGBT56uのゲートに接続されたアンプ部の出力の
電位は下側電源59の負極と同一となる。従って、スイ
ッチング信号gulvが高電位Hのとき、下側IGBT
56uのゲート−エミッタ間電圧は約0Vであり、下側
IGBT56uはオフとなり非通電状態になる。一方、
スイッチング信号gulvが低電位Lのとき、ダイオー
ド部には電流が流れ、下側IGBT56uのゲートに接
続されたアンプ部の出力の電位は下側電源59の正極と
同一となる。従って、スイッチング信号gulvが低電
位Lのときは下側IGBT56uのゲート−エミッタ間
電圧は約15Vであり、下側IGBT56uはオンとな
り通電状態になる。なお、図示を省略したが、ダイオー
ド部に流れる電流を制御するための抵抗がマイコン21
から駆動部22の間に挿入されている。上記の動作は、
v相、及びw相についても同様である。
【0041】上側電源55u、55v、55wは、それ
ぞれ上側駆動部54u、54v、54w用の電源(15
V程度)として働く。上側電源55u、55v、55w
の負極は、それぞれ上側IGBT52u、52v、52
wのエミッタに接続されている。下側IGBT56u、
56v、56wがオンになり通電状態になると、上側電
源55u、55v、55wの各コンデンサが抵抗60を
経て充電される。上側駆動部54u、54v、54w
は、それぞれのスイッチング信号guhv、gvhv、
gwhvに応じて下側IGBT52u、52v、52w
のゲート電圧を制御する。フォトカプラを有する上側駆
動部54uは、上側電源55uからの電力がアンプ部に
供給されている。所定の高電位Hの電圧がダイオード部
のアノード端子に与えられ、スイッチング信号guhv
がダイオード部のカソード端子に与えられている。スイ
ッチング信号guhvが高電位Hのときは、ダイオード
部には電流が流れず、下側IGBT52uのゲートに接
続されたアンプ部の出力の電位は上側電源55uの負極
と同一となる。従って、スイッチング信号guhvが高
電位Hのときは、上側IGBT52uのゲート−エミッ
タ間電圧は約0Vであり、上側IGBT52uはオフと
なり非通電状態になる。一方、スイッチング信号guh
vが低電位Lのときは、ダイオード部には電流が流れ、
上側IGBT52uのゲートに接続されたアンプ部の出
力の電位は上側電源55uの正極と同一となる。従っ
て、スイッチング信号guhvが低電位Lのときは、上
側IGBT52uのゲート−エミッタ間電圧は約15V
であり、上側IGBT52uはオンとなり通電状態にな
る。なお、図示を省略したが、ダイオード部に流れる電
流を制御するための抵抗がマイコン21から駆動部22
の間に挿入されている。上記の動作は、v相、及びw相
についても同様である。
【0042】次に、図1を参照してマイコン21の動作
を説明する。マイコン21は、永久磁石同期モータの位
置センサレス制御装置20を制御するための様々な処理
を行う。ADC33u、33vは、所定のタイミングで
起動され、アナログ電圧信号であるアナログu相電流値
iua、アナログv相電流値ivaをマイコン21内の
数値データであるu相電流値iu、v相電流値ivにそ
れぞれ変換する。ポート32は、マイコン21内の数値
データであるスイッチング指令guh、gul、gv
h、gvl、gwh、gwlに基づきディジタル電圧信
号であるスイッチング信号guhv、gulv、gvh
v、gvlv、gwhv、gwlvの電位を制御する。
スイッチング指令guhが0(非通電)のとき、スイッ
チング信号guhvはH(高電位)になる。一方、スイ
ッチング指令guhが1(通電)のとき、スイッチング
信号guhvはL(低電位)になる。他のスイッチング
信号gulv、gvhv、gvlv、gwhv、gwl
vについても同様に、それぞれスイッチング指令gu
l、gvh、gvl、gwh、gwlに基づき制御され
る。
【0043】図1、図4、図9、図10、図11を参照
して動作を説明する。図9は、本発明の第1実施例にお
けるマイコンの動作を示すフローチャートである。ステ
ップS100において動作を開始し、ステップS200
に進む。ステップS200において、上側電源55u、
55v、55wの充電前の相電流振幅iaを検知する。
ステップS300、及びステップS500で、起動部選
択部34の処理を行う。また、S611、S621、及
びS631で、それぞれ低速用起動部41、高速用起動
部42、起動中止処理部43の処理を行う。
【0044】図10は、相電流振幅iaの検知ステップ
S200の詳細な処理を示すフローチャートである。ス
テップS201において、相電流振幅iaの検知ステッ
プS200の動作を開始し、ステップS202に進む。
ステップS202において、ADC33u、33vを起
動してステップS203に進む。ステップS203にお
いて、w相電流値iwを演算する。演算では、w相電流
値iwを、u相電流値iuとv相電流値ivとの和に−
1を乗じて求める。ADC33u、33vの変換には所
定の時間を要するときは、u相電流値iu及びv相電流
値ivが生成されるまで演算を待つ。変換終了時に割り
込み動作によりステップS203の処理をしてもよい。
ステップS203の終了後、ステップS204に進む。
【0045】ステップS204において、相電流振幅i
aを演算する。演算では、u相電流値iu、v相電流値
iv及びw相電流値iwのそれぞれの二乗の値の和に
(2/3)を乗じたものの平方根により相電流振幅ia
を求める。ステップS204が終了後、ステップS20
5に進み、相電流振幅iaの検知ステップS200の処
理を終了する。ステップS200の終了後、図9に示す
ステップS300に進む。ステップS300において、
相電流振幅iaを、所定の設定値εiaと比較をする。
相電流振幅iaが設定値εia未満のとき、ステップS
400に進み、相電流振幅iaが設定値εia以上のと
き、ステップS630に進む。
【0046】ステップS400は充電制御部31の処理
を示す。ステップS400において、上側電源55u、
55v、55wを充電する。図11は、充電制御のステ
ップS400の処理を示すフローチャートである。ステ
ップS401において、上側電源55u、55v、55
wの充電制御ステップS400の処理を開始し、ステッ
プS411に進む。ステップS411において、充電中
止回数ηを0にリセットして、ステップS412に進
む。ステップS412において、カウンタ値iを0にリ
セットし、ステップS421に進む。ステップS421
において、相電流振幅iaを検知する。この処理は前記
のステップS200の処理と同様であるので説明を省略
する。ステップS421の処理の終了後、ステップS4
22に進む。ステップS422において、相電流振幅i
aを、あらかじめ設定された閾値ia0と比較する。閾
値ia0は図6の(c)及び図7の(c)に点線で示さ
れた値である。相電流振幅iaが閾値ia0以上のと
き、ステップS431に進み、相電流振幅iaが閾値i
a0未満のとき、ステップS441に進む。
【0047】相電流振幅iaが閾値ia0以上のとき、
ステップS431において、下側IGBT56u、56
v、56wの通電を停止し、ステップS432で充電中
止回数ηを1だけ増やす。相電流振幅iaが閾値ia0
未満のとき、ステップS441において、下側IGBT
56u、56v、56wをオンにして通電する。ステッ
プS431、ステップS432、ステップS441及び
それ以後の処理を詳しく説明する。ステップS431に
おいて、下側のスイッチング指令gul、gvl、gw
lを全て0(非通電)にする。ステップS431の処理
の終了後、ステップS432に進む。ステップS432
において、充電中止回数ηを1だけ増加させる。ステッ
プS432の処理の終了後、ステップS451に進む。
ステップS441において、下側のスイッチング指令g
ul、gvl、gwlを全て1(通電)にする。ステッ
プS441の処理の終了後、ステップS451に進む。
ステップS451において、カウンタ値iを1だけ増加
させる。ステップS451の処理の終了後、ステップS
452に進む。ステップS452において、カウンタ値
iを、所定の設定値i0と比較する。カウンタ値iが設
定値i0以上のとき、ステップS471に進む。カウン
タ値iが設定値i0未満のとき、ステップS461に進
む。
【0048】以上の処理により、ステップS412にお
いてカウンタ値iを0にし、ステップS451において
カウンタ値iを1だけ増加させる。ステップS452に
おいてカウンタ値iに基づきステップS461を経てス
テップS421に戻る。これにより、ステップS421
からステップS451までの処理を設定値i0回だけ繰
り返す。ステップS461は、所定の設定時間だけ待機
する処理を行う。ステップS461の処理の終了後、ス
テップS421に戻る。ステップS471において、下
側のスイッチング指令gul、gvl、gwlを全て0
(非通電)にして充電を終了する。ステップS471の
処理の終了後、ステップS481に進み、上側電源55
u、55v、55wの充電制御ステップS400の処理
を終了する。図9に示すステップS400の処理の終了
後、ステップS500に進む。ステップS500におい
て、充電中止回数ηを、所定の設定値η0と比較する。
充電中止回数ηが設定値η0未満のときはステップS6
10に進む。充電中止回数ηが設定値η0以上のときは
ステップS620に進む。
【0049】ステップS610において、起動部指標値
ζを1とし、次に、ステップS611において、低速用
起動方式(例えば、従来例2)を用いて起動する。この
ように、誘起電圧が小さく、上側電源55u、55v、
55wを充電するときの相電流振幅iaが小さく、かつ
充電中止回数ηが小さいときは低速用起動方式を用い
る。ステップS620において、起動部指標値ζを2と
し、次に、ステップS621において、高速用起動方式
(例えば、従来例1)を用いて起動する。このように、
誘起電圧が大きく、上側電源55u、55v、55wを
充電するときの相電流振幅iaが大きく、かつ充電中止
回数ηが大きいときは高速用起動方式を用いる。ステッ
プS630において、起動部指標値ζを3とし、次に、
ステップS631において、起動中止処理(例えば、パ
ネルによる表示)を行う。このように、誘起電圧が非常
に大きく、上側電源55u、55v、55wを充電する
前に相電流が流れているとき、起動を中止する。
【0050】[永久磁石同期モータの位置センサレス制
御装置20の効果]第1実施例の永久磁石同期モータの
位置センサレス制御装置20は、以下の3つの効果を有
する。第1の効果は以下の通りである。上側電源55
u、55v、55wを充電するときの相電流を監視し、
相電流振幅iaが大きいとき、上側電源55u、55
v、55wの充電を中止する。これにより過大な電流が
流れないように制御して、起動時にロータが回転してい
る場合であっても、過大なブレーキがかかるのを防止し
つつ永久磁石同期モータをスムーズに起動させることが
できる永久磁石同期モータの位置センサレス制御装置を
実現できる。
【0051】第2の効果は以下の通りである。上側電源
55u、55v、55wを充電するときの相電流振幅i
aに基づき起動部を選択する。具体的には、充電を中止
する期間の長さで判定する。これにより、起動時におい
てロータが回転している場合であっても、永久磁石同期
モータをスムーズに起動させることができる永久磁石同
期モータの位置センサレス制御装置を実現できる。
【0052】第3の効果は以下の通りである。上側電源
55u、55v、55wの充電前に相電流を監視し、相
電流が流れているときは、回転速度が非常に大きいと判
定し、起動を中止する。これにより、高速回転時の起動
による危険を回避することができる永久磁石同期モータ
の位置センサレス制御装置を実現できる。
【0053】≪第2実施例≫本発明の第2実施例の永久
磁石同期モータの位置センサレス制御装置を図12から
図14を参照して説明する。第2実施例は、前記の第1
実施例のものと以下の点で異なる。第1実施例では、上
側電源55u、55v、55wの充電を中止する合計期
間(充電中止回数η)に基づき、起動部を選択した。第
2実施例では、上側電源55u、55v、55wを充電
するとき相電流の変化の割合(変化割合ρ)に基づき、
起動部を選択する。
【0054】[永久磁石同期モータの位置センサレス制
御装置2020の構成]図12は、本発明の第2実施例
における永久磁石同期モータの位置センサレス制御装置
2020の構成を示すブロック図である。図12を図1
と比較すると、図12のマイコン2021に含まれる充
電制御部2031と起動部選択部2034が、図1の充
電制御部31及び起動部選択部34と異なる。その他の
構成は、第1実施例の図1と同様であるので同じ符号を
付し、重複する説明は省略する。
【0055】充電制御部2031は、u相電流値iuと
v相電流値ivとが入力され、スイッチング指令gu
h、gul、gvh、gvl、gwh、gwlと変化割
合ρとを出力する。起動部選択部2034は、u相電流
値iuとv相電流値ivと変化割合ρとが入力され、起
動部指標値ζを出力する。
【0056】[永久磁石同期モータの位置センサレス制
御装置2020の動作]第1実施例では、上側電源55
u、55v、55wの充電を中止する合計期間(充電中
止回数η)に基づき起動手段を選択した。第2実施例で
は、上側電源55u、55v、55wを充電するときの
相電流の変化の割合(変化割合ρ)に基づき起動手段を
選択する。ロータ12が回転しているときには誘起電圧
が発生するため、上側電源55u、55v、55wを充
電するときは相電流が流れる。誘起電圧の大きさに応じ
て、充電中の相電流の変化する割合が変化する。回転数
が大きくなると、誘起電圧も大きくなるため、相電流も
大きくなる。図6の(c)と図7の(c)の波形を比較
すると、図7の(c)では、ロータ12が高速で回転し
ているため、誘起電圧が大きく、相電流振幅iaが増加
するときの傾きが大きくなる。
【0057】第1実施例で説明したものと同じ理由で、
誘起電圧の大きさに応じて起動方式を切り替える必要が
ある。そこで第2実施例では、相電流振幅iaが変化す
る割合(以後、変化割合ρと呼ぶ)に基づいて起動方式
を切り替える。すなわち、変化割合ρが小さいときは低
速用起動方式により起動する。変化割合ρが大きいとき
は高速用起動方式により起動する。
【0058】以下、第2実施例の永久磁石同期モータの
位置センサレス制御装置2020の動作を詳細に説明す
る。図13は、本発明の第2実施例におけるマイコン2
021の動作を示すフローチャートである。ステップS
100、S200及びS300の処理は図9のものと同
じであるので重複する説明は省略する。ステップS24
00の処理は、充電制御部2031で行われる。ステッ
プS300及びステップS2500の処理は、起動部選
択部2034で行われる。
【0059】ステップS2400において、上側電源5
5u、55v、55wを充電する。図14は、充電制御
のステップS2400の処理を示すフローチャートであ
る。ステップS2401において、上側電源55u、5
5v、55wの充電制御ステップS2400の処理を開
始し、ステップS412に進む。ステップS412にお
いて、カウンタ値iを0にして、ステップS2491に
進む。相電流振幅ia1を0にして、ステップS241
に進む。ステップS421において、図9のステップS
200と同じ処理により、相電流振幅iaを検知する。
ステップS421の処理の終了後、ステップS4292
に進む。ステップS2492において、スイッチング指
令gulが1(通電)かどうか判定する。スイッチング
指令gulが1(通電)のときはステップS2493に
進む。スイッチング指令gulが0(非通電)のときは
ステップS2494に進む。
【0060】ステップS2493において、変化割合ρ
を求める。変化割合ρは、今回の相電流振幅iaから前
回の相電流振幅ia1を減算したものにロー・パス・フ
ィルタの係数k1を掛けたものと、1から係数k1を減
算したものに変化割合ρを掛けたものの和で表される。
ロー・パス・フィルタは1次のディジタル・ロー・パス
・フィルタを使用する。係数k1は、0から1の間の値
をとり、小さくなるほどロー・パス・フィルタの作用が
大きくなる。ステップS2493の処理の終了後、ステ
ップS2494に進む。ステップS2494において、
今回の相電流振幅iaを前回の相電流振幅ia1に代え
て保存する。ステップS2494の処理の終了後、ステ
ップS422に進む。ステップS2492、S249
3、S2494の処理により、上側電源55u、55
v、55wを充電するときのみ、ステップS2493に
おいて変化割合ρを生成する。なお、前回の相電流振幅
ia1は、ステップS2491において0に初期化さ
れ、ステップS2494において更新される。
【0061】ステップS422、ステップS431、ス
テップS441、ステップS451、ステップS45
2、ステップS461及びステップS471の処理は、
前記の第1実施例における処理と同様であるので重複す
る説明は省略する。ただし、図11に含まれているステ
ップS432は設けられていないため、ステップS43
1の処理の終了後、ステップS451に進む。ステップ
S471の処理の終了後、ステップS2481に進む。
ステップS2481において、上側電源55u、55
v、55wの充電制御ステップS2400の処理を終了
する。図13において、ステップS2400の処理の終
了後、ステップS2500に進む。
【0062】ステップS2500において、変化割合ρ
を、所定の設定値ρ0と比較する。変化割合ρが設定値
ρ0未満のときはステップS610に進む。変化割合ρ
が設定値ρ0以上のとき、ステップS620に進む。ス
テップS610において、起動部指標値ζを1とし、次
に、ステップS611に進み、低速用起動方式(例え
ば、従来例2)を用いて起動する。誘起電圧が小さく、
上側電源55u、55v、55wを充電するときの相電
流振幅iaが小さく、かつ変化割合ρが小さいときは低
速用起動方式を用いる。ステップS620において、起
動部指標値ζを2とし、次に、ステップS621に進
み、高速用起動方式(例えば、従来例1)を用いて起動
する。誘起電圧が大きく、上側電源55u、55v、5
5wを充電するときの相電流振幅iaが大きく、かつ変
化割合ρが大きいとき高速用起動方式を用いる。
【0063】ステップS630において、起動部指標値
ζを3とし、次に、ステップS631において、起動中
止処理(例えば、起動中止をパネルに表示する)を行
う。このように、誘起電圧が非常に大きく、上側電源5
5u、55v、55wを充電する前に相電流が流れてい
るときは起動を中止する。
【0064】[永久磁石同期モータの位置センサレス制
御装置2020の効果]第2実施例の永久磁石同期モー
タの位置センサレス制御装置2020は、以下の3つの
効果を有する。第1の効果は以下の通りである。上側電
源55u、55v、55wを充電するときの相電流を監
視し、相電流振幅iaが大きいときは上側電源55u、
55v、55wの充電を中止することにより、過大な電
流が流れないように制御する。これにより、起動時にロ
ータが回転している場合であっても、過大なブレーキが
かかるのを防止しつつ永久磁石同期モータをスムーズに
起動させることができる永久磁石同期モータの位置セン
サレス制御装置を実現できる。
【0065】第2の効果は以下の通りである。上側電源
55u、55v、55wを充電するときの相電流振幅i
aに基づき起動部35を選択する。具体的には、相電流
振幅iaの変化割合ρで判定する。これにより、起動時
にロータが回転している場合であっても、永久磁石同期
モータをスムーズに起動させることができる永久磁石同
期モータの位置センサレス制御装置を実現できる。
【0066】第3の効果は以下の通りである。上側電源
55u、55v、55wを充電する前に相電流を監視
し、相電流が流れているときは、回転速度が非常に大き
いと判定し起動を中止する。これにより、高速回転時の
起動による危険を回避することができる永久磁石同期モ
ータの位置センサレス制御装置を実現できる。第1実施
例及び第2実施例において、低速用起動方式として従来
例2のものを用いているが、これに限定されるものでは
ない。例えば、初期位置を検知し、特願平11-327976号
公報に示されたもので駆動してもよい。また、高速用起
動方式を従来例1としたが、本発明はこれに限定されな
い。例えば、特願2000-017639に示されたものでもよ
い。本発明において上側電源55u、55v、55wを
充電するときの電流の大きさに基づいて選択する起動方
式は、特定の起動方式に限定されるものではなく、他の
種々の起動方式を適用することができる。上側電源55
u、55v、55wとして、ブート・ストラップ型チャ
ージ・ポンプを用いているが、これらをDC/DCコン
バータによる3つの独立した電源で構成してもよい。こ
の場合には、充電は不要だが、ステータ巻線を短絡した
ときの電流の大きさに基づき起動方式を選択することに
より、ロータ12が回転中であってもスムーズな起動を
実現する。
【0067】上側電源の充電前に相電流を1度だけ検知
したが、複数回検知してもよい。電流センサ23u、2
3vがオフセットを持つ場合、起動前に電流センサ23
u、23vのオフセットを検知する必要がある。オフセ
ットの検出は、電流センサ23u、23vの検出出力
(アナログu相電流値iu、及びアナログv相電流値i
v)を複数回入力し、これらの平均を取ることにより、
高精度で電流センサのオフセットを検知できる。この検
出値に基づき、充電前に相電流が流れているかどうかを
判定してもよい。検知されたオフセットが非常に大きい
ときは、充電前に相電流が流れているため、高速回転し
ていると判定する。高速回転からの起動の危険を防止す
るために起動を中止する。また、充電前に相電流が流れ
ているときは電流センサの正しいオフセット補正ができ
ないため、起動を中止する。
【0068】図11及び図14のステップS461にお
いて、待機の処理をしたが、割り込みにより次のステッ
プS421に移行してもよい。また、さらにソフトウェ
アによる制御効率を上げるために、割り込み処理を適宜
変更してもよい。例えば、一定の間隔での割り込み処理
においてADC33u、33vを起動し、ADC33
u、33vの終了割り込み処理で一連の処理を実行して
もよい。第1及び第2実施例において、マイコン21、
2021のADC33u、33vを用いて、ディジタル
のu相電流値iu、v相電流値ivを検知し、相電流の
大きさに応じて、充電の実行及び中止をしたが、アナロ
グの相電流の大きさを検知してもよい。例えば、絶対値
回路により、それぞれアナログu相電流値iua、及び
アナログv相電流値ivaの絶対値を生成し、コンパレ
ータを用いて閾値と比較してもよい。このときは、適宜
ヒステリシスを設けるとよい。
【0069】第1及び第2実施例において、相電流振幅
iaを検知し、その都度、充電の実行及び中止を行った
が、変化割合ρを用いて相電流振幅iaが閾値ia0を
超える時刻を予測し充電を中止してもよい。また、上側
電源55u、55v、55wを充電するときの相電流に
より、ロータ12の角度θを推定し、起動に利用するこ
とにより、起動時ショックを小さくすることができる。
さらに、回転数ωを推定し、起動に利用することによ
り、起動時のショックを小さくすることができる。回転
数ωは、推定した角度θの微分、あるいは、充電時の電
流の大きさが回転数ωに比例することから求めてもよ
い。
【0070】第1及び第2実施例において、全ての相の
上側電源55u、55v、55wを同時に充電している
が、これらを選択的に充電してもよい。上述の方法で角
度θ、速度ωを推定後、最小の誘起電圧である相のみの
充電を行えば、相電流が流れることはなくブレーキトル
クの発生を防止できる。主電源51は、商用3相電源を
3相ブリッジで整流し、コンデンサで平滑したが、これ
に限定されない。商用単相電源を同様に用いてもよい。
また、電池、あるいはPFCを用いてもよい。さらに、
主電源51が回生機能を持ってもよい。
【0071】スイッチング素子としてIGBTを使用し
たが、これに限定されるものではなく、MOS−FE
T、あるいはバイポーラ・トランジスタを用いてもよ
い。また、フライ・ホイール・ダイオードは、IGBT
の寄生ダイオードを利用してもよい。第1及び第2実施
例において、図2のようなロータ形状を持つIPMSM
を制御する例を示したが、本発明はこれに限定されな
い。ロータの外周が円筒形のIPMSMを制御してもよ
い。また、永久磁石をロータの表面に配置した表面磁石
型同期モータ(Surface Permanent Magnet Synchronous
Motor)や、永久磁石をロータの表面に埋め込んだイン
セット型永久磁石同期モータを制御してもよい。
【0072】
【発明の効果】以上の各実施例で詳細に説明したよう
に、本発明によれば、上側スイッチング素子の駆動回路
の電源である上側電源の充電時の相電流を監視する。そ
して、相電流の大きさが大きいときは上側電源の充電を
中止することにより、過大な電流が流れないように制御
する。これにより、起動時においてロータが回転してい
る場合であっても、過大なブレーキを防止しつつ永久磁
石同期モータをスムーズに起動する永久磁石同期モータ
の位置センサレス制御装置を実現できる。また、上側ス
イッチング素子の駆動回路の電源である上側電源の充電
時の相電流の大きさに基づき起動部を選択する。これに
より、起動時においてロータが回転している場合であっ
ても、永久磁石同期モータをスムーズに起動する永久磁
石同期モータの位置センサレス制御装置を実現できる。
なお、上側電源を充電するときの相電流の大きさは、充
電を中止する期間の長さで判定する。あるいは、上側電
源を充電するときの相電流の大きさは、充電中の相電流
が変化する割合で判定する。また、上側電源を充電する
前に相電流を監視し、相電流が流れているときは、回転
速度が非常に大きいと判定し、起動を中止することによ
り、高速回転時の起動による危険を回避する永久磁石同
期モータの位置センサレス制御装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例における永久磁石同期モー
タの位置センサレス制御装置のブロック図
【図2】本発明の第1実施例におけるIPMSMのロー
タの断面図
【図3】本発明の第1実施例における座標系の説明図
【図4】本発明の第1実施例における駆動部の回路図
【図5】(a)は本発明の第1実施例におけるロータが
停止したときのスイッチング信号のレベルを示す図、
(b)は同充電電圧の図、(c)は同相電流振幅を示す
【図6】(a)は本発明の第1実施例におけるロータが
回転するときのスイッチング信号のレベルを示す図、
(b)は同充電電圧の図、(c)は同相電流振幅を示す
【図7】(a)は本発明の第1実施例におけるロータが
比較的高速で回転しているときのスイッチング信号のレ
ベルを示す図、(b)は同充電電圧の図、(c)は同相
電流振幅を示す図
【図8】本発明の第1実施例における誘起電圧の大きさ
と充電中止期間との関係を示す図
【図9】本発明の第1実施例におけるマイコンの動作を
示すフローチャート
【図10】本発明の第1実施例における相電流振幅検知
の処理の各ステップを示すフローチャート
【図11】本発明の第1実施例における充電制御の処理
の各ステップを示すフローチャート
【図12】本発明の第2実施例における永久磁石同期モ
ータの位置センサレス制御装置のブロック図
【図13】本発明の第2実施例におけるマイコンの動作
を示すフローチャート
【図14】本発明の第2実施例における充電制御の処理
の各ステップを示すフローチャート
【符号の説明】
10 IPMSM 11u、11v、11w ステータ巻線 12 ロータ 15 永久磁石 20、2020 永久磁石同期モータの位置センサレス
制御装置 22 駆動部 23u、23v 電流センサ 31 充電制御部 34 起動部選択部 35 起動部 41 低速用起動部 42 高速用起動部 43 起動中止処理部 51 主電源 52u、52v、52w 上側IGBT 54u、54v、54w 上側駆動部 55u、55v、55w 上側電源 56u、56v、56w 下側IGBT 58u、58v、58w 下側駆動部 59 下側電源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田澤 徹 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 大山 一朗 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 丸山 幸紀 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 5H560 AA01 BB04 BB17 DA14 DA18 DB20 DC12 EB01 GG04 JJ02 SS01 TT11 TT15 UA06 XA13

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数相のステータ巻線が配置されたステ
    ータと永久磁石が配置されたロータとを有する永久磁石
    同期モータの制御装置であって、 前記ステータ巻線に流れる相電流を検知する電流セン
    サ、 前記相電流の大きさが所定値より小さいときは前期ステ
    ータ巻線を短絡させ、前記相電流の大きさが前記所定値
    以上のときは前期ステータ巻線を短絡させないように制
    御する短絡制御部、 前記永久磁石同期モータを起動するための複数の起動
    部、及び前記相電流に応じて前記複数の起動部の1つを
    選択する起動部選択部を有する永久磁石同期モータの位
    置センサレス制御装置。
  2. 【請求項2】 前記起動部選択部は、低速用起動部と高
    速用起動部の内のいずれか一方を選択することを特徴と
    する請求項1に記載の永久磁石同期モータの位置センサ
    レス制御装置。
  3. 【請求項3】 前記起動部選択部は、前記短絡制御部が
    前記ステータ巻線を短絡させない期間が所定値より短い
    ときは前記低速用起動部を選択し、前記短絡制御部が前
    記ステータ巻線を短絡させない期間が所定値以上に長い
    ときは前記高速用起動部を選択することを特徴とする請
    求項2に記載の永久磁石同期モータの位置センサレス制
    御装置。
  4. 【請求項4】 前記起動部選択部は、前記短絡制御部が
    前記ステータ巻線を短絡中の前記相電流の変化の割合が
    所定値より小さいときは前記低速用起動部を選択し、前
    記短絡制御部が前記ステータ巻線を短絡中の前記相電流
    の変化の割合が所定値以上のときは前記高速用起動部を
    選択することを特徴とする請求項2に記載の永久磁石同
    期モータの位置センサレス制御装置。
  5. 【請求項5】 前記起動部選択部は、前記短絡制御部が
    前記ステータ巻線を短絡する前の前記相電流が実質的に
    零でないときは起動を中止することを特徴とする請求項
    1に記載の永久磁石同期モータの位置センサレス制御装
    置。
  6. 【請求項6】 それぞれの一方の端末が中性点に接続さ
    れた複数相のステータ巻線が配置されたステータと永久
    磁石が配置されたロータとを有する永久磁石同期モータ
    の制御装置であって、 主電源の正極と、前記ステータ巻線のそれぞれの他方の
    端部との間にそれぞれ接続された上側スイッチング素
    子、 前記主電源の負極と、前記ステータ巻線のそれぞれの他
    方の端部との間にそれぞれ接続された下側スイッチング
    素子、 前記上側スイッチング素子を駆動する駆動回路にそれぞ
    れ電力を供給する独立した上側電源、及び前記下側スイ
    ッチング素子を駆動する駆動回路にそれぞれ電力を供給
    する下側電源を有し、 前記上側電源は、ダイオードとコンデンサとを有し、前
    記下側スイッチング素子が通電することにより前記下側
    電源により前記ダイオードを通じ前記コンデンサが充電
    されるようになされた永久磁石同期モータの制御装置に
    おいて、 前記ステータ巻線に流れる相電流を検知する電流セン
    サ、 前記相電流の大きさが所定値より小さいときは前記上側
    電源を充電し、前記相電流の大きさが前記所定値以上の
    ときは前期上側電源が充電されないように前記下側スイ
    ッチング素子の通電を制御する充電制御手段、 永久磁石同期モータを起動する複数の起動部、及び前記
    相電流に基づき前記複数の起動部から1つを選択する起
    動部選択部を有する永久磁石同期モータの位置センサレ
    ス制御装置。
  7. 【請求項7】 前記起動部選択部は、低速用起動部と高
    速用起動部のいずれか一方を選択することを特徴とする
    請求項6に記載の永久磁石同期モータの位置センサレス
    制御装置。
  8. 【請求項8】 前記起動部選択部は、前記充電制御部が
    前記上側電源の充電を中止する期間が所定期間より短い
    ときは前記低速用起動部を選択し、前記充電制御部が前
    記上側電源の充電を中止する期間が前記所定期間以上の
    ときは前記高速用起動部を選択することを特徴とする請
    求項7に記載の永久磁石同期モータの位置センサレス制
    御装置。
  9. 【請求項9】 前記起動部選択部は、前記充電制御部が
    前記上側電源を充電しているときの前記相電流の変化の
    割合が所定値より小さいときは前記低速用起動部を選択
    し、前記充電制御部が前記上側電源を充電しているとき
    の前記相電流の変化の割合が前記所定値以上のときは前
    記高速用起動部を選択することを特徴とする請求項7に
    記載の永久磁石同期モータの位置センサレス制御装置。
  10. 【請求項10】 前記起動部選択部は、前記充電制御部
    が前記上側電源を充電する前の前記相電流が実質的に零
    でないときは起動を中止することを特徴とする請求項6
    に記載の永久磁石同期モータの位置センサレス制御装
    置。
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