JP2003033186A - リボヌクレオペプチドリセプター - Google Patents
リボヌクレオペプチドリセプターInfo
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Abstract
天然の酵素の特徴の一つである「協同性の発揮」に注目
して、複数のサブユニットからなる機能性ドメインを合
目的に設計し協同性を発揮することにより、より効率的
に目的とする基質に対して高い分子認識能を提供する分
子認識場を作製すること。 【解決手段】 ペプチドサブユニットと特異的に相互作
用して結合するペプチド結合領域、及び基質と特異的に
結合する領域を形成する基質結合領域を含むRNAサブ
ユニットとペプチドサブユニットの複合体(リボヌクレ
オペプチド)から成るリボヌクレオペプチドリセプタ
ー。
Description
選択性を有し、任意の基質に対する結合部位を作成する
ことが可能なリボヌクレオペプチド複合体である、リボ
ヌクレオペプチドリセプターに関する。
温和な条件のもとで、基質特異的に効率よく進行してい
る。この優れた機能を人工的に構築して「任意の基質に
対して、望み通りの化学反応を行う」ことは、化学・生
物学領域における非常に大きな目的である。
を作り出すのは難しく、タンパク質や核酸から成る酵素
の三次元構造が数多く解明されて原子レベルで構造と機
能を議論できるようになってきた現在においても、望み
通りの機能を持った三次元構造体の一般的な構築法は確
立されていない。
あること、温和な条件で反応が進行すること、そして
触媒的に機能することが挙げられるが、これらの機能
を支えているのが酵素の「活性中心」である。活性中心
は安定な三次元構造をもったドメインの中にあり、基質
のかたちに適合し、化学反応を効率よく進行させるため
の官能基が配置されていると同時に、化学反応の進行に
従って変化しうる柔らかな構造により形成されている。
応の各ステップで最適化した柔軟性のある立体構造を設
計することが人工的に酵素を作製するための必要条件で
あると考えられる。
・核酸)を用いて、多くの官能基と疎水的な部分からな
る活性中心を進化させてきたが、「多様な分子種の中か
ら目的に応じた最適なものを選び出す」方法は、今では
生物の進化に任せて何億年もかけなくとも実験室で実現
可能な手法になっている。
酸をつなぎあわせたタンパク質の混合物(約103000種
類)から望みの機能を持ったものを選び出すのは非効率
的な方法である。そこで、「活性中心のおおまかなかた
ち」は既知の三次構造を利用してコンピューターにより
分子をデザインする Structure−based design の手法
で設計したのち、構造ドメインの一部を多様化させた分
子種(ライブラリー)中から目的の機能をもった分子を
選び出すコンビナトリアルな手法を組み合わせる、とい
う方法が人工酵素を作る上で有効である。
段階として、酵素の活性部位をはじめとする既知のタン
パク質や核酸の立体構造をもとにしながら、安定な三次
元構造を形成する新しい活性中心の前駆体、即ち、「機
能性ドメイン前駆体」を持った機能性ドメインのデザイ
ンが重要である。
e−based Design) を用いると、望みの機能を持った安
定な三次元構造の前駆体を設計することは可能である。
しかしながら、前駆体の機能を合目的に最適化していく
ために、機能性ドメイン前駆体には予めいくつかの特性
を持たせておくことが必要となる。
めには機能性ドメイン前駆体は協同性を発揮するために
柔軟な構造をとり得ること、そしてコンビナトリアルな
手法によって多様な分子種を作製できることが必要であ
る。
中間体の類似化合物に対するモノクローナル抗体を利用
する抗体触媒法や、RNA分子にコンビナトリアルな手法
を応用するRNAアプタマー法を用いて多くの人工リセプ
ターや人工酵素が作製されてきた。しかしながら、これ
らは天然リセプターや酵素に比べて低い活性しか示すこ
とが出来なかった。又、いずれの場合も望みの基質に対
して反応を行う人工酵素を作製するための一般的手法と
しては用いることができない。
設計では着目されなかった天然の酵素の特徴の一つであ
る「協同性の発揮」に注目して、複数のサブユニットか
らなる機能性ドメインを合目的に設計し協同性を発揮す
ることにより、より効率的に目的とする基質に対して高
い分子認識能を提供する分子認識場を作製することに成
功し、本発明を完成した。
プチドサブユニットの複合体(リボヌクレオペプチド)
から成るリボヌクレオペプチドリセプターに係る。
ットと特異的に相互作用して結合するペプチド結合領
域、及び基質と特異的に結合する領域を形成する基質結
合領域を含むものである。更に、本発明のリボヌクレオ
ペプチドリセプターにおいて、RNAサブユニットの基
質結合領域とペプチドサブユニットの両者によって基質
と特異的に結合する領域が形成されていることが好まし
い。
びペプチドサブユニットは、RNAとペプチドとの空間
的配置、分子間の相互作用様式が構造解析により既に解
明されているものから、目的とする基質の種類などに基
づき、当業者が適宜選択することができる。
は、RNAサブユニットのペプチド結合領域とペプチド
サブユニットとの特異的な相互作用に影響を与えないよ
うな塩基配列を選択する。
て、ヒト後天性免疫不全症ウイルス(HIV)の逆転写
酵素(Rev)由来のRNAがある。特に、以下の塩基
配列: ggucugggcgca-(N)n-ugacgguacaggcc (塩基配列において(N)nは基質結合領域を示し、「N」
はアデニン、ウラシル、グアニン及びシトシンから任意
に選択される一種類の塩基を示し、「n」は15〜30
の整数、好ましくは、20である)を含むRNAを挙げ
ることができる。
の塩基配列を上げることが出来る。 (1)5'-nguguannnnnnnuanncun-3' (2)5'-uggaauggcguacuccnnnn-3' (3)5'-nnuugucnngugguannnnn-3' 上記塩基配列の一端または両端に、ペプチドサブユニッ
トとの相互作用を阻害しない限り、適宜、任意の種類及
び数の塩基を付加することも可能である。
して、上記ヒト後天性免疫不全症ウイルス(HIV)の
逆転写酵素(Rev)由来のRNAサブユニットと組み
合わせて使用できる、Rev応答エレメント(RRE)
由来のペプチドを挙げることが出来る。特に、以下の1
7個のアミノ酸から成るアミノ酸配列: TR(X)2RRN(X)3R(X)6 (アミノ酸配列において(X)は任意に選択されるアミ
ノ酸を示す)を含むペプチドが好ましい。上記アミノ酸
配列の一端または両端に、RNAサブユニットとの相互
作用を阻害しない限り、適宜、任意の種類及び数のアミ
ノ酸又は酢酸残基(Ac)を付加することも可能であ
る。
ある本発明のリボヌクレオペプチドリセプターの一例と
しては、以下の塩基配列を有するRNAサブユニット: ggucugggcgca-gguguacuggggguauucuc-ugacgguacaggcc 、及び、以下のアミノ酸配列を有するペプチドサブユニ
ット: TRQARRNRRRRWRERQR が好ましい。
を利用した、本発明リボヌクレオペプチドリセプターの
製造方法に係る。特に、ペプチド結合領域とランダムな
塩基配列を有する基質結合領域が結合したRNAサブユ
ニットを作成し、該RNAサブユニットとペプチドサブ
ユニットとの複合体を形成させ、インビトロセレクショ
ン法によって、該複合体と目的の基質を反応させた後に
該基質に対する結合能を有する複合体を選択することか
ら成る、リボヌクレオペプチドリセプターの製造方法に
係る。
体からRNAを回収し、回収したRNAを逆転写反応に
よりDNAに変換し、これをPCRにより増幅させるこ
とにより新たなRNAサブユニットを作成し、該RNA
サブユニットに基づき、再び、ペプチドサブユニットと
の複合体を形成させ、インビトロセレクション法によっ
て該基質に対する結合能を有する複合体を選択する操作
を繰り返すことによって、基質に対するより高い親和性
を有する複合体を得ることが出来る。
可能であり、例えば、アデノシントリリン酸(ATP)
等の生体内の重要な代謝反応等に関わる分子を挙げるこ
とが出来る。 このような基質と複合体との反応系及び
その反応条件等は、それらの種類等に応じては当業者が
適宜選択することが出来る。
そこからRNAを回収する等の操作が容易と成るため
に、アガロース等のに公知である適当な樹脂に該基質が
固定化された基質状態で複合体との反応を行うことが好
ましい。
応、PCR等の各反応における手順及び反応条件は当業
者には周知のものである。
ドリセプターを含む機能性ドメイン、及び、該リセプタ
ーを基質結合部位として有する人工酵素にも係る。
能および化学反応性をもつ人工酵素の一般的な設計法を
確立する上での第一段階の目標として、複数のサブユニ
ットからなり、基質結合部位として機能するリボヌクレ
ペプチドリセプターを作製する。空間的配置、分子間の
相互作用様式が、構造解析により解明されたRNAとペ
プチドの複合体をもとに、本発明のリボヌクレオペプチ
ドを構成する複合体RNA及びペプチドを夫々のサブユ
ニットとして設計する。
いと推定されるRNAの領域にランダムな塩基配列を導
入し、この塩基配列を基質との結合領域としたRNA分
子を第一のサブユニットであるRNAサブユニットとす
る。次に、RNAとの結合部位を保存しながら基質と相
互作用しうるようにデザインしたペプチドを第二のサブ
ユニットであるペプチドサブユニットとして合成し、R
NAサブユニットとの複合体(リボヌクレオペプチド)
を形成させる。
性のあるリボヌクレオペプチドのライブラリーの中か
ら、インビトロ(in vitro)セレクション法を用いて、
例えば、ATP(アデノシン5'−3リン酸) のような、
目的の基質に対し結合能を有するリボヌクレオペプチド
分子を選択し、これらを増幅することで新たなリボヌク
レオペプチドライブラリーを作製する。このようにし
て、多種類の分子種から選択を繰り返すことで合目的
に、目的の基質に対してより選択的に結合する結合能の
高いリボヌクレオペプチド複合体を選択することができ
る。
明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定される
ものではない。
の調製 RNA−ペプチド複合体の設計は、RNAとペプチドの
空間的配置と相互作用様式がNMR構造解析により解明
されたHIV RevペプチドとRRE (Rev Response Elemen
t) RNAとの複合体(Battiste, J. L.; Mao, H.; Ra
o, N.S.; Tan, R.; Muhandiram, D. R.; Kay, L.E.; Fr
ankel, A. D.; Williamson, J. R. Science 1996, 273,
1547−1551)を基にして行った。以下に記載するよう
にDNAライブラリー及びRNAライブラリーを調製
し、ペプチドとの特異的な結合に影響を及ぼさないと推
定されるRNA領域に20塩基のランダムな塩基配列が
導入された、RNAサブユニットを作成した。
1:5'-ggaataggtctgggcgca-(N)20-tgacggtacaggcgaaa
g-3')、プライマーrev−01 (5'-ctttcggcctgtaccgtca-
3')を含む溶液をアニーリングした後、Klenowポリメラ
ーゼにより2本鎖DNAを調製した後、プライマーfor
−01 (5'-tcaatacgactcactataggaataggtctgggcgca-
3') とプライマーrev−01を用いてPCRによりプロモ
ーターを含むDNAライブラリーを調製した。PCR反
応液はフェノール−クロロホルム処理により除タンパ
ク、酢酸アンモニウムを用いてエタノール沈殿した後、
TEに溶解し、NICKカラム(ファルマシア社)を用
い、dNTPs、及びプライマーを除去し精製した。
7RNAポリメラーゼによるRNAの転写反応を行っ
た。Epicentre社のキット(AmpliScribe T7 Transcript
ion Kits)のプロトコ−ルに従い、1 μg の鋳型dsD
NAを用い37℃、3時間反応させた。37℃、15分間のD
NAse処理後フェノール・クロロホルム処理、エタノー
ル沈殿、NAP−5カラムを用いて精製し、5'-ggaauag
gucugggcgca-(N)20-ugacgguacaggccgaaag-3'を得た。
100μMとなるように20mM Tris−HCl (pH7.
6)、150 mM NaClを含んだバッファーに希釈し
80℃3分加熱後2時間かけてフォールディングさせた。
基質と相互作用しうるようにデザインしたペプチドを第
二のサブユニットとして合成し、RNAサブユニットと
の複合体(リボヌクレオペプチド)ライブラリーを形成
させた。尚、上記ペプチドとしては、天然のHIV Rev
タンパク質がRRE配列へ結合するために必須である34
から50番目のアミノ酸をとりだし、化学合成により作成
したものを使用した。また、ペプチドの安定性を向上さ
せるため、N末端はアセチル化し、C末端はアミド化し
た。以上の化学合成反応は当業者に周知の方法で行うこ
とが出来る。
Szostak, J. W. Nature 1990, 346, 818−822) を用い
て本発明のリボヌクレオペプチドリセプターを選択し
た。インビトロセレクション法は20塩基のランダムなR
NA塩基配列部分からなるRNA (RREN20)とREV
ペプチドを用いて作製したリボヌクレオペプチドライブ
ラリーの中から、ATPが固定化された樹脂に結合する
リボヌクレオペプチドを選択し、それを回収し増幅した
後、ふたたび選択する、という方法をとった。
NA分子に変換し、さらにPCR反応により増幅した
後、転写反応により新たなRNAプールを作製し、これ
をもとにして新たなリボヌクレオペプチドライブラリー
を作成し、再び、ATPに対するインビトロセレクショ
ン法を用いて、ATPに対し選択的に結合するリボヌク
レオペプチドリセプターを選択した。ATPに対し、こ
のようなインビトロセレクション法のサイクルを繰り返
すことにより、リボヌクレオペプチドライブラリーにつ
いて、ATPに対する親和性の増強が認められた。尚、
インビトロセレクション法の具体的な手順及び反応条件
は以下の通りである。
されたATP樹脂(2.6 μmol/ml樹脂容量)と、4%
beadedアガロース固定されたグルコース樹脂(0.147 μ
mol/ml樹脂容量)を用いた。樹脂はあらかじめ、結合バ
ッファー(10 mM Tris−HCl pH7.6、100 m
M KCl、5mM MgCl2)に平衡化した。AT
Pの糖部分に結合する複合体を予め除去するためのグル
コースプレセレクションとして50 μl容量のグルコー
ス樹脂に、10μMのRNA(RNAサブユニット)、15
μM ac−Rev−am (Ac−TRQARRNRRRRWR
ERQR−NH 2) (ペプチドサブユニット)を加え氷
上で30分時々攪拌しながら結合させた。反応後、上清を
50μl容量のATP樹脂に加え、時々攪拌しながら氷上
で30分結合させた。結合反応後上清を除いた後、300 μ
lの結合バッファー(ペプチド存在下選択を行ったもの
は1μM Revペプチドを含んだ結合バッファー)で3回
洗浄した。固定化されたリガンドに結合したRNAは、
10mM ATPを含んだ結合バッファー100μlで溶出
させこれを3回繰り返した。
含んだ結合バッファ−に溶解した後、フェノ−ル抽出を
行ない、RNAサブユニットを分離・単離した。こうし
て回収したRNAは10μl TEに溶解し、1.5μlのR
NAを鋳型として、プライマーrev−01とのアニーリン
グについては80 ℃3分加熱後30分かけるところ以外はP
romega社のキット(Reverse Transcription System)の
プロトコールに従い、逆転写反応(42℃、30分間反応)
を行った。反応液を99℃5分間加熱処理し逆転写酵素を
失活させた後、反応液の一部について94 ℃ 30sec、55
℃ 30sec、72℃ 1minの条件でPCRを行い、5サイク
ル毎に反応液を分取し、8% PAGE により増幅DNA量
を分析した。PAGEでの分析により、指数的にDNAの増
幅が確認されるサイクル数でPCRを行い、dsDNAを
精製し次のサイクルに用いた。
により得られたDNAをBamHI、EcoRI認識領域を含むよ
うに設計したPCRプライマー(for−02:5'-gcgggatc
ctttcggcctgtaccgtca-3'、rev−02:5'-cggaattctaatac
gactcactatagg-3')により増幅した。PCR反応液は、
フェノール−クロロホルム処理により除タンパク、酢酸
アンモニウムを用いてエタノール沈殿した後、EcoRI反
応用緩衝液中でBamHI、EcoRIにより同時に切断した。反
応液はフェノール−クロロホルムにより除タンパクした
後、エタノール沈殿により精製した。 [クローニング用ベクターの調製]pUC19 (10μg)をEc
oRI反応用緩衝液中でBamHI、EcoRIにより同時に切断し
た。反応液はフェノール−クロロホルムにより除タンパ
ク後、エタノール沈殿により精製した。 [ライゲーションと形質転換]BamHI、EcoRIにより切断
したpUC19 にクローニング用インサートDNAをモル比
で3倍量加え、TaKaRaライゲーションキットver.1のプ
ロトコールに従い16℃、30分間ライゲ−ションを行っ
た。反応液を直接DH5αコンピーテントセル(ライブ
ラリーエフィシエンシーGibco BRL)に加え、プロトコ
ールに従い形質転換を行った。
法を用い、キットのプロトコールに従いPCR反応を行
った。PCRサンプルからの未反応ddNTPsの除去にはCT
AB(cetyl−trimethyl ammonium bromide)沈殿法を用
いた。
の結合試験 (1)各RNAクローンの調製 クローニングし、配列解析を行ったプラスミドDNA1
ngを鋳型として、T7プロモーターを含んだプライマー
を用いてPCRにより転写用の2本鎖DNAを増幅し
(PCR反応は94 ℃、30 sec、55 ℃、30 sec、72
℃、1 minの条件で30サイクル行った)、鋳型DNAを
調製したのち前述のプロトコールに従ってRNAを転写
精製して実験に用いた。
mM KCl,5 mMMgCl2 pH7.6)で平衡化
し、10% DMSO存在下[32P]pCp、RNA Ligase
(NEB)で3’末端標識を行った各RNA10 μM、ペプチ
ド15 μMの条件で結合試験を行った。結合反応はRN
A、樹脂、ペプチドを氷上30分間インキュベート後、30
0 μl 1×結合バッファーで樹脂を3回洗浄した後150
μl 10m M ATPを含む1×結合バッファーで3回
溶出し、ATPにより溶出されたRNAの放射活性とト
ータルRNAの放射活性との比から結合活性(%)を算
出した。
Aの配列解析を行ったところ、得られたRNA配列は3
種類の相同性の高い配列 (class I, II, III) が認めら
れた。これらを以下の表1に示した。尚、表1の各配列
において、ハイフン「−」で示された部分は、クローン
02の塩基と同一の塩基である為省略したものである。
プチド複合体を形成させATPとの結合活性を評価した
結果によれば、上記の各クラスごとにATP結合におけ
るペプチド分子の影響は異なるものであった。即ち、cl
ass II, III のRNAについてはペプチド非存在下につ
いてもATP結合活性を示したが、class IのRNAを
含んだリボヌクレオペプチド複合体については、ペプチ
ド存在下についてのみATP結合活性を示したことか
ら、class I のRNAにおいてはRNA分子とペプチド
分子によりATPに対する基質結合領域が形成されたこ
とが示唆された。
の結合活性はペプチド非存在下1.2±0.1%、ペプチド存
在下20.1±4.7%であった。class II に属するクローン0
6の結合活性はペプチド非存在下28.4±2.1%、ペプチド
存在下21.6±1.2%であった。class III に属するクロー
ン30の結合活性はペプチド非存在下17.0±2.4%、ペプチ
ド存在下25.6±3.3%であった。同様の条件で、すでに報
告されているATPアプタマーの解離定数は3μMであ
り、樹脂に対する結合(%)が40%であったことから、
class IリボヌクレオペプチドのATPに対する解離定
数は約10μMであると考えられる。
Pを添加し競合試験を行った。樹脂50μlを結合バッフ
ァー(10mM Tris−HCl, 100mM KCl, 50mM MgC
l2, pH7.6)で平衡化し、[32P]pCp、RNA
Ligase(NEB)で3’末端標識を行った各RNA10μ
M、ペプチド15μMの条件で結合試験を行った。あらか
じめ中性になるように調製したATP誘導体を添加し、
結合反応はRNA、樹脂、ペプチドを氷上30分間インキ
ュベ−ト後、300μl 1×結合バッファーで樹脂を3回
洗浄した後150μl 10mM ATPを含む1×結合バッ
ファーで3回溶出し、ATPにより溶出されたRNAの
放射活性とトータルRNAの放射活性との比から結合割
合(%)を算出した。
しては20mMで白濁が起こり10mMまでしか評価できな
かった。ATP については濃度の増加に応じて競合阻
害が起こったが、CTP、UTPについては用いた濃度
範囲で競合阻害は認められず、いずれのクラスのリボヌ
クレオペプチドリセプターについてもATPに対して選
択的に結合することがわかった。
ーにおいては、機能性ドメインの前駆体として三次元構
造が明らかになっている「RNA−ペプチド複合体」を
利用している。こうして得られた本発明のリボヌクレオ
ペプチドリセプターは、二つのサブユニット(RNA
とペプチド)を組み合わせることにより柔軟な構造が形
成され、協同性の発揮が期待される、RNA、ペプチ
ド両サブユニット共に化学的もしくは分子生物学的にラ
イブラリー化できる、非天然アミノ酸を導入すること
が容易である等の点から、理想的な機能性ドメイン前駆
体であるのみならず、多様な分子種を作製して望みの機
能性ドメインへと発展させることが可能である。
トリアルな手法を多段階に用いて、例えば酵素反応の出
発物質と反応中間体に対しては親和性が高く、生成物に
対しては親和性が低い、という特性がある分子種をRN
A−ペプチド複合体ライブラリーから選び出すことが出
来るため、より高機能な人工酵素が作製できると期待さ
れる。
基本骨格を示す。RNAの塩基配列は、例えば、5'-ggu
cugggcgca(N)20ugacgguacaggccであり、図1のRNA
中、黒い部分がA、U、G、Cすべての塩基からなる混
合20塩基配列である。下線部はペプチド結合部位であ
る。ペプチドのアミノ酸配列は、例えば、Ac−TRQ
ARRNRRRRWRERQRである。
Claims (17)
- 【請求項1】 RNAサブユニットとペプチドサブユニ
ットの複合体から成るリボヌクレオペプチドリセプタ
ー。 - 【請求項2】 RNAサブユニットがペプチド結合領域
及び基質結合領域を含むことを特徴とする、請求項1記
載のリボヌクレオペプチドリセプター。 - 【請求項3】 RNAサブユニットの基質結合領域とペ
プチドサブユニットとによって基質と特異的に結合する
領域が形成されていることを特徴とする、請求項1又は
2記載のリボヌクレオペプチドリセプター。 - 【請求項4】 ペプチド結合領域がステム部分を形成
し、基質結合領域ががペプチド結合領域に挟まれた中央
ループ部分を形成することを特徴とする、請求項1、2
又は3記載のリボヌクレオペプチドリセプター。 - 【請求項5】 RNAサブユニットのペプチド結合領域
がヒト後天性免疫不全症ウイルス(HIV)の逆転写酵
素(Rev)由来であり、ペプチドサブユニットがRe
v応答エレメント(RRE)由来であることを特徴とす
る、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のリボヌク
レオペプチドリセプタ−。 - 【請求項6】 RNAサブユニットが以下の塩基配列: ggucugggcgca-(N)n-ugacgguacaggcc (塩基配列において(N)nは基質結合領域を示し、「N」
はアデニン、ウラシル、グアニン及びシトシンから任意
に選択される一種類の塩基を示し、「n」は15〜30
の整数である)を含むことを特徴とする、請求項1ない
し5項のいずれか一項に記載のリボヌクレオペプチドリ
セプター。 - 【請求項7】 塩基配列において、「n」が20である
ことを特徴とする請求項6記載のリボヌクレオペプチド
リセプター。 - 【請求項8】 (N)nが以下の塩基配列: 5'-nguguannnnnnnuanncun-3' から成ることを特徴とする請求項7記載のリボヌクレオ
ペプチドリセプター。 - 【請求項9】 ペプチドサブユニットが以下の17個の
アミノ酸から成るアミノ酸配列: TR(X)2RRN(X)3R(X)6 (アミノ酸配列において(X)は任意に選択される一種
類のアミノ酸を示す)を含むことを特徴とする、請求項
1ないし8のいずれか一項に記載のリボヌクレオペプチ
ドリセプター。 - 【請求項10】 ペプチドサブユニットが以下のアミノ
酸配列: TRQARRNRRRRWRERQR から成ることを特徴とする、請求項9記載のリボヌクレ
オペプチドリセプター。 - 【請求項11】 RNAサブユニットが以下の塩基配
列: ggucugggcgca-gguguacuggggguauucuc-ugacgguacaggcc から成り、アデノシントリリン酸(ATP)結合能を有
することを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか
一項に記載のリボヌクレオペプチドリセプター。 - 【請求項12】 ペプチド結合領域とランダムな塩基配
列を有する基質結合領域が結合したRNAサブユニット
を作成し、該RNAサブユニットとペプチドサブユニッ
トとの複合体を形成させ、インビトロセレクション法に
よって、該複合体と目的の基質を反応させた後に該基質
に対する結合能を有する複合体を選択することから成
る、請求項1ないし11のいずれか一項に記載のリボヌ
クレオペプチドリセプターの製造方法。 - 【請求項13】 選択された複合体からRNAを回収
し、回収したRNAを逆転写反応によりDNAに変換
し、これをPCRにより増幅させることにより新たなR
NAサブユニットを作成し、該RNAサブユニットに基
づき、再び、ペプチドサブユニットとの複合体を形成さ
せ、インビトロセレクション法によって該基質に対する
結合能を有する複合体を選択する操作を繰り返すことに
よって、該基質に対するより高い親和性を有する複合体
を得ることから成る、請求項12に記載のリボヌクレオ
ペプチドリセプターの製造方法。 - 【請求項14】 基質が固定化された樹脂を使用して、
複合体と基質との反応を行うことを特徴とする、請求項
11又は13に記載のリボヌクレオペプチドリセプター
の製造方法。 - 【請求項15】 基質がアデノシントリリン酸(AT
P)であることを特徴とする、請求項10ないし14の
いずれか一項に記載のリボヌクレオペプチドリセプター
の製造方法。 - 【請求項16】 請求項1ないし11のいずれか一項に
記載のリボヌクレオペプチドリセプターを含む機能性ド
メイン。 - 【請求項17】 請求項1ないし11のいずれか一項に
記載のリボヌクレオペプチドリセプターを基質結合部位
として有する人工酵素。
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