JP2003026476A - スカンジア安定化ジルコニア電解質 - Google Patents

スカンジア安定化ジルコニア電解質

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JP2003026476A
JP2003026476A JP2001208328A JP2001208328A JP2003026476A JP 2003026476 A JP2003026476 A JP 2003026476A JP 2001208328 A JP2001208328 A JP 2001208328A JP 2001208328 A JP2001208328 A JP 2001208328A JP 2003026476 A JP2003026476 A JP 2003026476A
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oxygen
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JP2001208328A
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Kazuo Hata
和男 秦
Norikazu Aikawa
規一 相川
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Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スカンジア安定化ジルコニア電解質の高温長
時間使用時における酸素イオン導電率の経時変化を少な
くし、安定して高い導電性と酸素ガス透過性を持続し、
特に2000時間までの初期導電率の劣化程度を低減す
ると共に、優れた高温強度と強度持続性を有する酸素分
離システムまたは酸素検出システム用のスカンジア安定
化ジルコニア電解質を提供すること。 【解決手段】 スカンジア安定化ジルコニアであって、
更に2A族、3A族、4A族、5A族、7A族、8族、
3B族および4B族元素よりなる群から選択される少な
くとも1種の元素を含む複合酸化物の少なくとも1種
を、スカンジア安定化ジルコニアに対し0.01〜5質
量%含む酸素分離システムまたは酸素検出システム用の
スカンジア安定化ジルコニア電解質を開示する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はスカンジア安定化ジ
ルコニア電解質に関し、特に高温条件下でも安定して優
れた酸素イオン導電性を示す他、優れた酸素ガス透過性
を有すると共にその持続性にも優れており、且つハンド
リングに十分な機械的強度を有し、酸素発生器、酸素富
化器、酸素フリーガス発生器などの酸素分離システム
用、あるいは酸素センサーなどの酸素検出システム用と
して優れた性能を有するスカンジア安定化ジルコニア電
解質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】濃淡電池の作動原理を利用した数多くの
酸素分離システムや酸素検出システムに、カルシウムや
イットリウムで安定化されたジルコニアやフルオロライ
ト型あるいはペロブスカイト型の結晶構造を有する複合
酸化物などからなる酸素イオン導電性セラミックが使用
されている。
【0003】これらのセラミックは、化学的な駆動電位
が加わったとき、高温条件下で酸素イオン導電性を示す
もので、化学的駆動電位を提供するための十分な酸素分
圧比を与えると、酸素を含むガスの流れから酸素を抽出
するための膜として使用し得ることが確認されている。
しかも、上記セラミックは酸素に対して優れた選択透過
性を有し、抽出される酸素流量は従来の有機高分子膜に
比べると数オーダー大きいという特長を有しているの
で、今後もその研究はますます活発化していくものと思
われる。
【0004】しかしこれらのセラミックは、高温条件下
でなければ優れた酸素イオン導電性を示さないので、有
機高分子膜の使用温度域に比べて非常に高い(例えば6
00〜1000℃程度)温度条件下で使用しなければな
らず、実用システムを構築する上で大きな問題になって
くる。しかも使用に際して高温に曝されるため長期安定
性が損なわれ、システムとしての耐久性にも問題があ
る。特に、酸素富化燃焼法式を用いた燃焼器や給湯器な
どに適用する場合は、所定量の酸素を発生させるのに要
する電力を小さく抑えると共に、耐久年数も10年以上
が要求される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な事
情に着目してなされたもので、その目的は、カルシウム
やイットリアで安定化された一般的なジルコニア電解質
よりも優れた酸素イオン導電性を有し、しかもその経時
変化が少なくて高レベルの導電性を長期的に持続し、具
体的には2000時間までの初期導電率の劣化程度を軽
減し、更には、酸素ガス透過性とその長期持続性をも改
善し、その結果として、酸素分離システムや酸素検出シ
ステムをより低い温度で作動可能にすると共に、酸素分
離効率を更に向上せしめ、更には、優れた高温強度と強
度持続性を与えることによって電解質の薄膜化を増進し
得る様なジルコニア電解質を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係る酸素分離システムまたは酸素検出
システム用のスカンジア安定化ジルコニア電解質とは、
酸素分離システムまたは酸素検出システムに用いられる
ジルコニア系電解質であって、スカンジアで安定化され
ると共に、更に2A族、3A族、4A族、5A族、7A
族、8族、3B族および4B族元素よりなる群から選択
される少なくとも1種の元素を含む複合酸化物の少なく
とも1種を、スカンジア安定化ジルコニアに対し0.0
1〜5質量%含有するところに要旨を有している。
【0007】上記複合酸化物としては、中でもアルミニ
ウムおよび/またはチタニウム元素を含むものが好まし
く、具体的には、3〜15モル%のスカンジアで安定化
されると共に、アルミニウム元素またはチタニウム元素
を含むペロブスカイト型、スピネル型などの結晶構造を
有するMgAl24、CaAl24、SrAl24、B
aAl24、VAlO4、NbAlO4、TaAlO4
MnTiO4、YAlO 3、LaAlO3、PrAlO3
NdAlO3、MgTiO3、CaTiO3、SrTi
3、BaTiO3、Al2TiO5、Al2MnO5、V2
TiO7、Nb2TiO7、Ta2TiO7等よりなる群か
ら選択される少なくとも1種を、スカンジア安定化ジル
コニアに対し0.01〜5質量%含有するものが好まし
い。
【0008】中でも、3〜15モル%のスカンジアで安
定化されると共に、アルミニウム元素を含むペロブスカ
イト型、スピネル型などの結晶構造を有するMgAl2
4、LaAlO3、Al2TiO5よりなる群から選択さ
れる少なくとも1種を、スカンジア安定化ジルコニアに
対して0.01〜5質量%含有するものは、とりわけ好
ましいものとして推奨される。
【0009】
【発明の実施の形態】前述した様な課題の下で本発明者
らは、スカンジアで安定化されたジルコニア電解質を対
象とし、該電解質の導電率の経時変化を低減すると共
に、酸素ガス透過性やその持続性も改善して、より耐久
性に優れた電解質を得るべく、様々の角度から研究を進
めてきた。
【0010】その結果、導電率の経時変化は結晶構造の
変化とグレイン粒子径の安定性に大きく影響され、スカ
ンジア安定化ジルコニアにある特定の複合酸化物を特定
量含有させれば、初期導電性を若干低下させるだけで、
その後の導電性の経時変化を小さく抑え得ることを見出
し、上記本発明に想到したものである。
【0011】また上記特定の複合酸化物は、スカンジア
安定化ジルコニアセラミックスに対し分散強化剤として
も作用し、結果として優れた高温強度と強度持続性を与
えることも見出した。
【0012】まず本発明では、酸素分離システムまたは
酸素検出システム用として用いられるスカンジアで安定
化されジルコニアを対象とするもので、一般的なスカン
ジアの添加量は3モル%以上、15モル%以下である。
即ちスカンジアの含有量が3モル%未満では、セラミッ
クスの結晶構造に単斜晶の割合が多くなり、ジルコニア
の安定化が不十分となって満足のいく強度が得られ難く
なる。一方、スカンジアによる安定化効果は約15モル
%で飽和し、高価なスカンジアをそれ以上に含有させる
ことは、経済的不利益を被るだけである。
【0013】高温耐久強度と常温でのハンドリング強度
を高める上では、正方晶系を主体とする結晶構造を有す
るものであることが好ましく、そのためのより好ましい
スカンジアの量は3.5モル%以上で、より好ましい上
限は9モル%以下、更に好ましくは6モル%以下であ
る。
【0014】また本発明のにおいては、機械的強度と共
に導電率の経時変化を抑えるため、2A族、3A族、4
A族、5A族、7A族、8族、3B族および4B族元素
よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む
複合酸化物の少なくとも1種を、スカンジア安定化ジル
コニアに対し0.01〜5質量%含有させることが必要
となる。
【0015】ここで、2A族、3A族、4A族、5A
族、7A族、8族、3B族および4B族元素とは、例え
ば、理化学辞典、第5版(岩波書店:1998年4月2
4日発行)に記載されている元素の周期表(短周期型)
に示されている族のことであり、具体的には、2A族元
素としてMg,Ca,Sr,Baなど;3A族元素とし
てY,La,Ce,Pr,Ndなど;4A族元素として
Ti,Zr,Hfなど;5A族元素としてV,Nb,T
aなど;7A族元素としてMnなど;8族元素としてF
e,Co,Niなど;3B族元素としてAl,Ga,I
nなど;4B族元素であるGe,Snなどが例示され
る。
【0016】また複合酸化物とは、それぞれ単独の酸化
物の結晶構造とは異なる新たな結晶構造を有する、酸素
元素を除く2成分以上の元素からなる酸化物を意味す
る。
【0017】上記元素を含む複合酸化物のより具体的な
例としては、アルミニウム元素またはチタニウム元素を
含むペロブスカイト型、スピネル型などの結晶構造を有
するMgAl24、CaAl24、SrAl24、Ba
Al24、VAlO4、NbAlO4、TaAlO4、M
nTiO4、YAlO3、LaAlO3、PrAlO3、N
dAlO3、MgTiO3、CaTiO3、SrTiO3
BaTiO3、Al2TiO5、Al2MnO5、V2TiO
7、Nb2TiO7、Ta2TiO7、Y2Ti27,Sm2
Ti27,Gd2Ti27や、コージェライト(Mg2
4Si518)、フォルステライト(Mg2SiO4)、
ステアタイト(Mg3Si410)、ジルコン(ZrSi
4)、LaGaO3,CaCeO3,BaCeO3等が挙
げられる。
【0018】上記複合酸化物の中でも、スカンジア安定
化ジルコニアの導電率の初期劣化傾向を抑えると共に、
焼結性を高めてその結晶構造を安定化させる上で特に好
ましいのは、Alを含むペロブスカイト型やスピネル型
などの結晶構造を有する複合酸化物、例えばLaAlO
3、MgAl24、Al2TiO5から選択される少なく
とも1種の複合酸化物を含むものが好ましい。
【0019】上記複合酸化物の効果を有効に発揮させる
には、スカンジアで安定化されたジルコニアの総量、具
体的には、ジルコニア分とスカンジア分の合計量に対
し、0.01質量%以上、5質量%以下の範囲で含有さ
せるのがよく、より好ましくは0.1質量%以上、3質
量%以下、更に好ましくは0.3質量%以上、2質量%
以下の範囲である。
【0020】上記複合酸化物の含有量が0.01質量%
を下回る場合は、前述した作用効果が有効に発揮され
ず、逆に5質量%を上回る場合は、初期導電率を低下さ
せる原因になるので好ましくない。
【0021】更に本発明においては、不純物として混入
してくる恐れのある酸化ケイ素、および/またはNa,
K,Rb,Csの如きアルカリ金属の酸化物の含有量を
極力少なく抑えることが望ましく、好ましくは何れも
0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下
に抑えるのがよい。
【0022】上記酸化ケイ素やアルカリ金属酸化物類
は、ジルコニアや前記複合酸化物に比べると低融点の溶
融型酸化物であり、高温に長時間曝されるとスカンジア
安定化ジルコニア中の粒界付近に偏析して導電率を低下
させる恐れがあるからである。
【0023】従って本発明の酸素分離システムまたは酸
素検出システム用スカンジア安定化ジルコニア電解質中
には、酸化ケイ素および/またはアルカリ金属酸化物が
実質的に含まれていないことが望ましいが、何れもジル
コニア原料粉末中に不可避的に混入してくる成分であ
り、より好ましくは酸化ケイ素の含有量は0.03質量
%以下、アルカリ金属酸化物の合計含有量は0.01質
量%以下に抑えることが望ましい。
【0024】ここでアルカリ金属酸化物の合計量とは、
Na2O,K2O,Rb2O,Cs2Oとしたときの各酸化
物の合計量を言う。
【0025】本発明でいう導電率とは、酸素分離システ
ムまたは酸素検出システム用の電解質膜として用いられ
るセラミックから、導電率測定用サンプルとしてダイヤ
モンドカッターで一部切り出されたテストピースを使用
し、直流4端子法で測定した値をいい、最初から導電率
測定用サンプルとして作製されたテストピースを用いた
値ではない。尚、この測定に用いたテストピースの大き
さは、長さ50mm、幅5mmで厚さ0.01〜0.5
mmとした。
【0026】次に、本発明の酸素分離システムまたは酸
素検出システム用スカンジア安定化ジルコニア電解質に
おいては、その結晶構造が立方晶を主体とするものであ
る場合、そのグレイン粒子径で平均径が1μm以上、3
μm以下、最大径が4μm以上、8μm以下で、その変
動係数が35%以下であることが、導電率や酸素ガス透
過性の経時変化を抑えると共に高レベルの強度を確保す
る上で好ましい。
【0027】また、その結晶構造が正方晶を主体とする
ものでは、そのグレイン粒子径で平均径が0.1μm以
上、0.5μm以下、最大径が0.5μm以上、1.0
μm以下で、その変動係数が30%以下であることが、
導電率や酸素ガス透過性の経時変化を抑えると共に高温
強度耐久性を確保する上で好ましい。
【0028】グレイン粒子径の変動係数が、立方晶の場
合で35%を上回り、あるいは正方晶の場合で30%を
上回るものでは、導電率の経時変化が大きくなると共
に、ワイブル係数が10以下に低下する傾向が生じてく
る。なおワイブル係数とは、強度バラツキの度合いを反
映する材料定数とみなされ、酸素分離システムまたは酸
素検出システム用の固体電解質として使用するには、ワ
イブル係数で10以上、より好ましくは12以上、更に
好ましくは15以上とすることによって、素材としての
信頼性が高められ、発電システムの設計も容易となる。
一方この値が10以下のものは、強度バラツキが大きく
て材料としての信頼性を欠き、実用にそぐわなくなる。
【0029】ここで、上記スカンジア安定化ジルコニア
セラミックスのグレイン粒子径は、その表面を走査型電
子顕微鏡で写真撮影し(10,000〜20,000
倍)、写真視野内の全グレイン粒子の大きさをノギスで
測定した値を元に、個々のデータを集計して求めた平均
径、最大径および変動係数をいう。なお、グレイン粒子
径をノギスで測定する際に、写真視野の端縁に位置する
グレイン粒子で粒子全体が現れていないものは測定対象
から外し、また、縦・横方向の寸法の異なるグレイン粒
子については、その長径と短径の平均値をその粒子径と
した。
【0030】また本発明で言う強度とは、JlS R1
601の規定に準拠し、導電率測定用のテストピースと
同様にして作製したテストピースを用いて測定した3点
曲げ強度を言い、高温耐久性とは、950℃で1000
時間以上保持した後に測定した高温強度の経時変化の小
さいものを言う。
【0031】この様に本発明の酸素分離システムまたは
酸素検出システム用スカンジア安定化ジルコニア電解質
は、添加物として2A族、3A族、4A族、5A族、7
A族、8族、3B族および4B族元素よりなる群から選
択される少なくとも1種の元素を含む複合酸化物の少な
くとも1種を、スカンジア安定化ジルコニアに対し0.
01〜5質量%添加することで、スカンジア安定化ジル
コニア電解質の導電率や酸素ガス透過性の経時変化が抑
えられると共に、耐久性や常温強度、高温耐久性におい
て一層優れたものとなるので、酸素分離システムまたは
酸素検出システム用の固体電解質として極めて有用なも
のとなる。
【0032】中でも、前記複合酸化物としてLaAlO
3、MgAl24、Al2TiO5よりなる群から選ばれ
る少なくとも1種を使用した本発明のスカンジア安定化
ジルコニア電解質は、それらの複合酸化物が含まれてい
ないものに比べて初期導電率の低下率が非常に小さく、
導電率の経時安定性にも優れており、且つ酸素ガス透過
性やその高温持続性にも優れているので、例えば0.0
1〜0.5mm程度の薄膜シート状とすることにより、
酸素分離システムまたは酸素検出システムの固体電解質
膜用として極めて優れた性能を発揮する。
【0033】こうした優れた特性を有する本発明に係る
酸素分離システムまたは酸素検出システム用スカンジア
安定化ジルコニア電解質の原料となる粉末は、市販のス
カンジア安定化ジルコニア粉末に前記特定元素の複合酸
化物粉末をそのまま添加混合して原料粉末としてもよい
し、アルコキシドや硝酸塩、炭酸塩などの水溶液等の形
で市販ジルコニア粉末に添加し、必要によっては更に他
の添加物などと共に配合し、加水分解・濾過・洗浄・仮
焼・混合粉砕などの処理を施して原料粉末としてもよ
い。
【0034】この原料粉末の粉体としての好ましい粒度
分布は、平均粒子径が0.3〜3μm、好ましくは0.
5〜1.5μmで、比表面積は3〜30m2/g、好ま
しくは5〜15m2/gである。
【0035】特に、混合粉砕後さらに噴霧乾燥してから
造粒し、10〜100μm程度の顆粒状とした原料粉末
は、その後に成形・焼成したセラミックスとしての密度
を理論密度の95%以上、好ましくは97%以上、更に
好ましくは98%以上にまで高めるのに好適である。
【0036】噴霧乾燥する場合は、上記粉砕混合したジ
ルコニア粉末をそのままスプレードライ等により噴霧乾
燥してもよいが、噴霧乾燥する際にバインダー成分を添
加し、それを噴霧乾燥してバインダーを含む顆粒状とし
たものを原料粉末として使用すれば、成形性や焼結性を
更に高めることができるので好ましい。
【0037】ここで用いられるバインダー(A)の種類
に格段の制限はないが、水溶性のものが好ましく、従来
から知られた有機質もしくは無機質のバインダーを適宜
選択して使用できる。上記バインダー(A)のうち、有
機質バインダーの具体例としては、例えばエチレン系共
重合体、スチレン系共重合体、アクリレート系及びメタ
クリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイ
ン酸系共重合体、ビニルブチラール系樹脂、ビニルアセ
タール系樹脂、ビニルホルマール系樹脂、ビニルアルコ
ール系樹脂、ワックス類、エチルセルロース等のセルロ
ース類が例示され、また無機質バインダーの具体例とし
ては、ジルコニアゾル、アルミナゾル、チタニアゾル等
が単独で若しくは2種以上を混合して使用できる。これ
らのバインダーは、単独で使用し得る他、必要により2
種以上を混合して使用することも勿論可能である。
【0038】該バインダー(A)の好ましい配合量は、
スカンジア安定化ジルコニア粉末と前記添加複合酸化物
との合計量100質量部に対し、バインダーの固形分換
算で0.5質量部以上、10質量部以下、より好ましく
は1質量部以上、5質量部以下である。
【0039】この様にして調製されたジルコニア粉末を
含む顆粒状の原料粉末は、プレス成形用原料として好適
に使用できる。
【0040】本発明に係るスカンジア安定化ジルコニア
電解質の製法は特に制限されず、上記の様にして調製し
たスカンジア安定化ジルコニア粉末を使用し、金型やラ
バーを用いたプレス成形法、押出成形法、ドクターブレ
ードによるシート成形法、支持基体へのスラリーコート
法や蒸着法等によって成膜し、焼成する方法が採用され
る。
【0041】特に10〜200μmの薄膜シート状物を
製造するには、ドクターブレード法によるシート成形が
好適であり、前述した特定の複合酸化物が配合されたス
カンジア安定化ジルコニア原料粉末とバインダー(B)
および分散媒からなるスラリーをキャリアフィルム上に
敷き延べてシート状に成形し、これを乾燥し分散媒を揮
発させることによってグリーンシートを得、これを切
断、パンチング等により適当な寸法に揃えてから焼成す
ればよい。
【0042】焼成は、上記の様な方法で成形したグリー
ンシートあるいはスラリーコート体を棚板や多孔質セッ
ター上に載置し、1300〜1600℃、好ましくは1
350〜1500℃程度、最も一般的には1400〜1
450℃で1〜5時間程度加熱することによって行なわ
れる。
【0043】シート状の該ジルコニアセラミックスは、
高度の熱的、機械的、電気的、化学的特性を有してお
り、酸素分離システムまたは酸素検出システムの固体電
解質膜用として実用化する場合は、要求強度を満たしつ
つ通電ロスを可及的に抑えるため、シート厚さを0.0
1mm以上、より好ましくは0.02mm以上で、0.
6mm以下、より好ましくは0.3mm以下、更に好ま
しくは0.2mm以下とするのが良い。
【0044】大きさは特に制限されないが、実用規模で
十分な性能の酸素分離システムを得るには、4cm2
上、好ましくは50cm2以上、更に好ましくは100
cm2以上の寸法とすることが望ましい。また酸素検出
システムに適用する場合は、センサー形状により1mm
2程度のチップサイズから100cm2、以上の寸法のも
のが適宜選択して使用できる。
【0045】またシートの形状は、正方形や長方形、も
しくは円盤状が一般的であるが、これらに限定される理
由はなく、中央部に穴が形成されたドーナツ状や、他の
任意の多角形状や穴明き多角形状など、どの様な形状で
あっても構わない。
【0046】更にシート形状以外に、円盤状や一方が封
じられた円筒状、ハニカム状、コルゲート状、ディンプ
ル状などの3次元形状のものも有効に使用できる。
【0047】上記スラリーに配合されるバインダー
(B)の種類にも格別の制限はなく、従来から知られた
有機質もしくは無機質のバインダーを適宜選択して使用
することができる。有機質バインダーとしては、例えば
エチレン系共重合体、スチレン系共重合体、アクリレー
ト系及びメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重
合体、マレイン酸系共重合体、ビニルブチラール系樹
脂、ビニルアセタール系樹脂、ビニルホルマール系樹
脂、ビニルアルコール系樹脂、ワックス類、エチルセル
ロース等のセルロース類等が例示される。
【0048】これらの中でも未焼成ジルコニア系成形体
を得る際の成形性や強度、焼成時の熱分解性等の点か
ら、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピ
ルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアク
リレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘ
キシルアクリレート等の炭素数10以下のアルキル基を
有するアルキルアクリレート類;メチルメタクリレー
ト、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イ
ソブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2
−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレー
ト、ドデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレー
ト、シクロヘキシルメタクリレート等の炭素数20以下
のアルキル基を有するアルキルメタクリレート類;ヒド
ロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリ
レート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシ
プロピルメタクリレート等のヒドロキシアルキル基を有
するヒドロキシアルキルアクリレートまたはヒドロキシ
アルキルメタクリレート類;ジメチルアミノエチルアク
リレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のア
ミノアルキルアクリレートまたはアミノアルキルメタク
リレート類;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、モノイ
ソプロピルマレートの如きマレイン酸半エステル等のカ
ルボキシル基含有モノマー;などの少なくとも1種を重
合または共重合させることによって得られる、数平均分
子量が20,000〜200,000、より好ましくは
50,000〜100,000の(メタ)アクリレート
系共重合体が好ましいものとして推奨される。
【0049】これらの有機質バインダーは、単独で使用
し得る他、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用
することができる。特に好ましいのはイソブチルメタク
リレートおよび/または2−エチルヘキシルメタクリレ
ートを60質量%以上含むモノマーの重合体である。
【0050】また無機質バインダーとしては、ジルコニ
アゾル、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル等が
単独で若しくは2種以上組み合わせて使用できる。
【0051】ジルコニア系原料粉末とバインダーの使用
比率は、前者100質量部に対して後者5〜30質量
部、より好ましくは10〜20質量部の範囲が好適であ
り、バインダーの使用量が不足する場合は、成形体の強
度や柔軟性が不十分となり、逆に多過ぎると、スラリー
の粘度調節が困難になるばかりでなく、焼成時のバイン
ダー成分の分解放出が多く且つ激しくなって均質な焼結
体が得られ難くなる。
【0052】この様にして得られたジルコニア粉末を含
むスラリーは、ドクターブレード法により好適にシート
成形することができる。
【0053】また未焼成ジルコニア成形体の製造に使用
される溶媒としては、水;メタノール、エタノール、2
−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール等
のアルコール類;アセトン、2−ブタノン等のケトン
類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素
類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等
の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブ
チル等の酢酸エステル類等が適宜選択して使用される。
これらの溶媒も単独で使用し得る他、2種以上を適宜混
合して使用することができる。これら溶媒の使用量は、
グリーンシート成形時におけるスラリーの粘度を加味し
て適当に調節すればよいが、好ましくはスラリー粘度が
1〜10Pa・s、より好ましくは2〜5Pa・sの範囲となる
様に調整するのがよい。
【0054】上記スラリーの調製に当たっては、ジルコ
ニア系原料粉末の解膠や分散を促進するため、ポリアク
リル酸、ポリアクリル酸アンモニウム等の高分子電解
質、クエン酸、酒石酸等の有機酸、イソブチレンまたは
スチレンと無水マレイン酸との共重合体およびそのアン
モニウム塩あるいはアミン塩、ブタジエンと無水マレイ
ン酸との共重合体およびそのアンモニウム塩等の分散
剤;未焼成成形体(グリーンシート)に柔軟性を付与す
るためのフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のフ
タル酸エステル類、プロピレングリコール等のグリコー
ル類やグリコールエーテル類などの可塑剤;更には界面
活性剤や消泡剤などを必要に応じて添加することができ
る。
【0055】上記原料配合からなるスラリーを前述の様
な方法で成形し、乾燥してジルコニア系グリーン体を得
た後、これを加熱焼成することによって本発明の酸素分
離システムまたは酸素検出システム用スカンジア安定化
ジルコニア電解質を得る。
【0056】この焼成工程では、反りやうねり等の変形
を生じることなく平坦度の高い薄肉シート状の焼結体を
得るための手段として、該グリーンシート以上の面積を
有し、JIS K7125(1987)で規定されてい
る「プラスチックフィルムおよびシートの摩擦係数試験
方法」に準拠して測定される静摩擦係数が1.5以下
で、通気性が0.0005m/s・kPa以上である多孔質シ
ートの間に、前記グリーンシートを、その周縁がはみ出
さない様に挟み込んで焼成し、あるいは上記多孔質シー
トを前記グリーンシートの周縁がはみ出さない様に載せ
てから焼成を行なうことが望ましい。
【0057】
【実施例】以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をよ
り具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例に
よって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適
合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であ
り、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含され
る。
【0058】実施例1 4.5モル%スカンジア部分安定化ジルコニア粉末(第
一稀元素化学社製:商品名「4.5ScSZ」)100
質量部に、比表面積が17m2/gで平均粒子径が0.
35μmのアルミニウムマグネシウムスピネル(岩谷化
学工業社製:商品名「SP−12」)0.5質量部を添
加し、この混合粉末(A)100質量部に対し、水70
質量部と、エチルアクリレートを主成分とする水溶性ア
クリレート共重合体からなるバインダーを固形分換算で
5質量部加え、ボールミルで20時間分散混合した後、
得られたスラリーをスプレードライ法により噴霧乾燥す
ることにより、バインダー添加0.5質量%MgAl2
4分散4.5モル%スカンジア部分安定化ジルコニア
粉末(B)を得た。該粉末のシリカ含量は0.003質
量%、酸化ナトリウム含量は0.001質量%であっ
た。
【0059】得られたジルコニア粉末(B)を用いて、
ラバープレス法により1000kg/cm2の圧力で板
状に成形した後、1430℃で3時間焼成し、1辺が約
50mmの正方形で、厚さが0.5mmのMgAl24
を0.5質量%含有する酸素分離システムまたは酸素検
出システム用の4.5モル%スカンジア部分安定化ジル
コニアシート(I)を得た。このシート焼結体の密度は
理論密度の98.5%であった。
【0060】また、上記で得た混合粉末(A)100質
量部を、メタクリル酸エステル共重合体からなるバイン
ダー(分子量:30,000、ガラス転移温度:−8
℃)を固形分換算で14質量部、可塑剤としてジブチル
フタレート2質量部、分散媒としてトルエン/イソプロ
ピルアルコール(質量比:3/2)の混合溶剤50質量
部と共に、直径5mmのジルコニアボールが装入された
ナイロンポットに入れ、臨界速度の70%の約60rp
mで40時間混練してスラリーを調製した。
【0061】このスラリーの一部を採取し、トルエン/
イソプロピルアルコール(質量比:3/2)の混合溶剤
で希釈して、島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測
定装置「SALD−1000」を用いて、スラリー中の
固形成分の粒度分布を測定したところ、平均粒子径(5
0体積%径)は0.54μm、90体積%径は1.71
μm、限界粒子径(100体積%径)は4.06μmで
あった。
【0062】このスラリーを濃縮脱泡してから粘度を3
Pa・s(23℃)に調整し、最後に200メッシュの
フィルターに通してから、ドクターブレード法によりポ
リエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗工
し、厚さ約0.13mmのグリーンシートを得た。この
グリーンシートを1辺が約125mmの正方形に切断
し、その上下をウネリ最大高さが10μmの99.5%
アルミナ多孔質板で挟んで脱脂した後、1400℃で3
時間焼成し、1辺が約100mmの正方形で、厚さが
0.1mmのMgAl24を0.5質量%含む酸素分離
システムまたは酸素検出システム用の4.5モル%スカ
ンジア部分安定化ジルコニアシート(II)を得た。
【0063】上記ジルコニアシート(I)と(II)を、
ダイヤモンドカッターで幅5mm、長さ50mmの短冊
状に切断して導電率測定用と3点曲げ強度測定用のテス
トピースとし、これを950℃および750℃に保持し
た電気炉中に500時間、1000時間、2000時間
および3000時間曝した後、導電率と3点曲げ強度を
測定した。
【0064】導電率の測定は、上記温度に曝されたテス
トピースに直径0.2mmの白金線を1cm間隔で4ヵ
所巻付け、白金ペーストを塗ってから100℃で乾燥・
固定して電流・電圧端子とし、白金線がテストピースに
密着する様に白金線を巻いたテストピースの両端をアル
ミナ板で挟み、上から約500gの加重をかけた状態
で、外側の2端子に0.1mAの一定電流を流し、内側
の2端子の電圧をデジタルマルチメーター(アドバンテ
スト社製:商品名「TR6845型」)を用いて、直流
4端子法により測定した。
【0065】導電率の耐久安定性は、初期の導電率と所
定時間後の導電率の経時変化を測定し、その比から下記
式 導電率の劣化率={(初期導電率−所定時間保持後の導
電率)/初期導電率}×100(%) によって求めた。
【0066】曲げ強度の測定は、JIS R1601に
準拠し、高温に曝されたテストピースを室温で測定し、
初期の曲げ強度と所定時間後の曲げ強度との比から下記
式 強度劣化率={(初期強度−所定時間保持後の強度)/
初期強度}×100(%) によって求めた。
【0067】更に、得られた酸素分離システムまたは酸
素検出システム用のジルコニアシート(I)と(II)の
組成をICP発光分析法によって測定した。
【0068】また、「電学論B」109巻4号145頁に記載
されたガス透過性評価を参考にして、直径38mmの円
盤状テストピースを図1(図中、1は電解質シート、2
は補強用アルミナシート、3はシール材、4は管状電気
炉、5は真空ポンプ、6は酸素濃度計、7は流量計、8
はアルミナ管を示す)に示すSOFC単電池用の酸素ガ
ス透過量測定装置に取り付け、各スカンジア安定化電解
質シートの酸素ガス透過速度を測定した。なお、電解質
シートの有効透過断面積は6cm2とした。
【0069】電解質シート1の補強のため、上下を直径
0.5mmの貫通孔を多数有する1mm厚のアルミナ板
2(外周から内側5mmはシールのため貫通孔はなく、
緻密質になっている)に挟み、外径38mm、内径28
mmのアルミナ間でシールして固定し、管状電気炉で9
50℃と750℃に保持した。
【0070】上記所定温度に保持した状態で電解質シー
ト1の下方側の真空ポンプ5により下方内部を約10-3
気圧となる様に減圧し、ポンプ5の出口側には流量計6
と酸素濃度計7を取り付けて酸素ガスの初期透過速度を
求めると共に、2000時間経過後の透過速度からその
劣化率を求めた。
【0071】結果を表1に併記する。
【0072】実施例2 硝酸ランタン塩の水溶液と硝酸アルミニウム塩の水溶液
を、La/Al比で1.02となる様に混合し、アンモ
ニア水で共沈させて水酸化物を得、これを乾燥してから
800℃で仮焼し、次いで粉砕して再度1200℃で焼
成することにより、ランタンアルミネート粉末を得た。
該粉末の比表面積は12m2/gであった。
【0073】4.0モル%スカンジア部分安定化ジルコ
ニア粉末(第一稀元素社製:商品名「4ScSZ」)1
00質量部に、上記で得たランタンアルミネート粉末を
1.0質量部、水60質量部および、前記実施例1で用
いたのと同じバインダー(日本触媒社製:商品名「AT
−502」)1質量部を加え、ボールミルで20時間分
散混合した後、スプレードライで噴霧乾燥することによ
り、本発明に係る酸素分離システムまたは酸素検出シス
テム用のバインダー添加LaAlO3分散4.0モル%
スカンジア部分安定化ジルコニア粉末(C)を得た。該
粉末のシリカ含量は0.002質量%、酸化ナトリウム
含量は0.001質量%であった。
【0074】この粉末(C)を用いて、前記実施例1と
同様にしてラバープレスにより板状にしてから焼成し、
1辺が約50mmの正方形で厚さが0.5mmのLaA
lO 3を1.0質量%含有する酸素分離システムまたは
酸素検出システム用の4.0モル%スカンジア部分安定
化ジルコニアシート(III)を得た。このシート焼成体
の密度は、理論密度の97.6%であった。
【0075】このシートを用いて、前記実施例1と同様
にテストピースを作成し、導電率と3点曲げ強度の耐久
安定性を求めると共に、酸素ガスの初期透過速度と20
00時間後の劣化率を求め、表1に示す結果を得た。
【0076】実施例3 スカンジアで安定化されていないジルコニア粉末(住友
大阪セメント社製:商品名「OZC−0」)に対し、酸
化スカンジウム粉末(三津和化学社製:試薬99.9
%)を8モル%になる様に添加して混合し、該混合粉末
100質量部に対して、更にアルミン酸チタネート粉末
を1.5質量%添加して合計2Kgの粉末を得、この粉
末を純水3Kgと共に0.5mm系のジルコニアボール
の入ったビーズミル(コトブキ技研工業社製:商品名
「アペックスミルAM−1」)に入れ、ローター先端周
速度が7m/秒で1時間湿式粉砕した。
【0077】得られたスラリーをロータリーエバーポレ
ータに入れ、更に等量のオクチルアルコールを入れて、
加熱減圧しながら水を流出させてオクチルアルコール置
換スラリーを得た。このスラリーを更に加熱減圧してオ
クチルアルコールを流出させた後、減圧乾燥することに
より、本発明に係る酸素分離システムまたは酸素検出シ
ステム用のAl2TiO51.5質量%分散8.0モル%
スカンジア安定化ジルコニア粉末(D)を得た。該粉末
のシリカ含量は0.002質量%、酸化ナトリウム含量
は0.001質量%であった。
【0078】この粉末を用いて、125Kg/cm2
圧力で前記実施例1と同様にラバープレスによって板状
に成形してから1450℃で焼成し、1辺が約50mm
の正方形で、厚さ0.5mmの酸素分離システムまたは
酸素検出システム用のAl2TiO51.5質量%含有
8.0モル%スカンジア安定化ジルコニアシート(IV)
を得た。このシート焼成体の密度は、理論密度の97.
0%であった。
【0079】このシートを用いて、前記実施例1と同様
にしてテストピースを作成し、導電率と3点曲げ強度の
耐久安定性を求めると共に、酸素ガスの初期透過速度と
2000時間後の劣化率を求め、表1に示す結果を得
た。
【0080】
【表1】
【0081】比較例1 4.5モル%スカンジア部分安定化ジルコニア粉末(第
一稀元素化学社製:商品名「4.5ScSZ」)100
質量部に対して、水70質量部、エチルアクリレートを
主成分とする水溶性アクリレート共重合体からなるバイ
ンダー(日本触媒社製:商品名「AT−502」)を固
形分換算で5質量部加え、ボールミルで20時間分散混
合した後、得られたスラリーをスプレードライによって
噴霧乾燥することにより、バインダー添加4.5モル%
スカンジア部分安定化ジルコニア粉末(a)を得た。該
粉末のシリカ含量は0.004質量%、酸化ナトリウム
含量は0.001質量%であった。
【0082】上記で得た粉末(a)を使用し、ラバープ
レスにより1000kg/cm2の圧力で板状に成形し
た後、1400℃で3時間焼成して、1辺が約50mm
の正方形で、厚さ0.5mmの酸素分離システムまたは
酸素検出システム用の4.5モル%スカンジア部分安定
化ジルコニアシート(i)を得た。このシート焼結体の
密度は理論密度の98.5%であった。このシートを用
いて前記実施例1と同様にしてテストピースを作成し、
導電率と3点曲げ強度の耐久安定性を求めると共に、酸
素ガスの初期透過速度と2000時間後の劣化率を求
め、表2に示す結果を得た。
【0083】比較例2 4.5モル%スカンジア部分安定化ジルコニア粉末(第
一稀元素化学社製:商品名「4.5ScSZ」)100
質量部に、比表面積が17m2/gで、平均粒子径が
0.35μmのアルミニウムマグネシウムスピネル(岩
谷産業社製:商品名「SP−12」)を8.0質量部添
加した以外は前記実施例1と同様にして、MgAl24
が8質量%分散した4.5%スカンジア部分安定化ジル
コニア粉末(A)を得た。該粉末のシリカ含量は0.0
09質量%、酸化ナトリウム含量は0.004質量%で
あった。
【0084】この粉末(A)100質量部に対し、水7
0質量部と、エチルアクリレートを主成分とする水溶性
アクリレート共重合体からなるバインダー(日本触媒社
製:商品名「AT−502」)を固形分換算で5質量部
加え、ボールミルで20時間分散混合した後、得られた
スラリーをスプレードライによって噴霧乾燥することに
より、バインダー添加8.0質量%MgAl24分散
4.5モル%スカンジア部分安定化ジルコニア粉末
(b)を得た。
【0085】得られたジルコニア粉末(b)を用いて、
ラバープレスにより1000kg/cm2の圧力で板状
に成形した後、1400℃で3時間焼成して、1辺が約
50mmの正方形で、厚さ0.5mmの酸素分離システ
ムまたは酸素検出システム用のMgAl248.0質量
%含有4.5モル%スカンジア部分安定化ジルコニアシ
ート(ii)を得た。このシート焼結体の密度は理論密度
の97.0%であった。このシートを用いて前記実施例
1と同様にしてテストピースを作成し、導電率と3点曲
げ強度の耐久安定性を求めると共に、酸素ガスの初期透
過速度と2000時間後の劣化率を求め、表2に示す結
果を得た。
【0086】
【表2】
【0087】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、ス
カンジア安定化ジルコニア電解質に特定の複合酸化物を
含有させることによって、この種のジルコニア系セラミ
ックスに欠けていた高温条件下でのイオン導電性の長期
安定性を改善し、更には安定して優れた酸素ガス透過性
を示すと共に、高温雰囲気に長時間さらされたときにも
イオン導電性や酸素ガス透過性の経時劣化が少なく、強
度持続性にも優れた酸素分離システムまたは酸素検出シ
ステム用スカンジア安定化ジルコニア電解質を提供し得
ることになった。
【0088】従ってこの電解質は、高温に長期間さらさ
れる過酷な条件で使用される酸素分離システムや酸素検
出システム用として有効に活用できる。
【0089】なお本発明が適用される酸素分離システム
または酸素検出システムは、例えば、自動車エンジン排
ガス部の酸素濃度を検出し、電子式燃料噴射装置に連動
させるための酸素濃度センサー、あるいは、希薄燃焼シ
ステムの希薄混合域における空燃費を検知するためのセ
ンサー、製鉄用溶鉱炉や転炉などにおける酸素濃度を検
知するためのセンサー、工業用ボイラーや、家庭用ない
し業務用給湯器、あるいは石油ストーブの如き燃焼熱利
用型暖房設備などにおける燃焼管理や燃焼制御のための
酸素センサーなど、様々の分野で幅広く活用できる。
【0090】そして、本発明の酸素分離システムまたは
酸素検出システム用スカンジア安定化ジルコニア電解質
は、その優れたイオン導電性や酸素ガス透過性とそれら
の安定性、および強度持続性を活かし、上記の如き様々
の分野で利用される酸素分離システムまたは酸素検出シ
ステム用の酸化物形固体電解質膜として有効に活用でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施例で使用した酸素ガス透
過量測定装置を示す概念図である。
【符号の説明】
1 電解質シート 2 補強用アルミナシート 3 シール材 4 管状電気炉 5 真空ポンプ 6 酸素濃度計 7 流量計 8 アルミナ管
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G031 AA01 AA03 AA07 AA09 AA11 AA12 AA29 AA30 BA03 4G042 BA31 4G048 AA03 AB02 AB05 AC08 AE05

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スカンジア安定化ジルコニアにおいて、
    更に2A族、3A族、4A族、5A族、7A族、8族、
    3B族および4B族元素よりなる群から選択される少な
    くとも1種の元素を含む複合酸化物の少なくとも1種
    を、スカンジア安定化ジルコニアに対し0.01〜5質
    量%含有することを特徴とする酸素分離システムまたは
    酸素検出システムに用いられるスカンジア安定化ジルコ
    ニア電解質。
  2. 【請求項2】 前記複合酸化物が、アルミニウムおよび
    /またはチタニウム元素を含むものである請求項1に記
    載のスカンジア安定化ジルコニア電解質。
  3. 【請求項3】 前記スカンジア安定化ジルコニアが、3
    〜15モル%のスカンジアで安定化されると共に、前記
    複合酸化物としてLaAlO3、MgAl2 4およびA
    2TiO5よりなる群から選択される少なくとも1種の
    複合酸化物を含有するものである請求項2に記載のスカ
    ンジア安定化ジルコニア電解質。
  4. 【請求項4】 酸化ケイ素および/またはアルカリ金属
    酸化物の含有量が、それぞれ0.1質量%以下である請
    求項1〜3のいずれかに記載のスカンジア安定化ジルコ
    ニア電解質。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011105589A (ja) * 2009-10-23 2011-06-02 Nippon Shokubai Co Ltd スカンジア安定化ジルコニアシートの製造方法、および当該製造方法により得られるスカンジア安定化ジルコニアシート、並びにスカンジア安定化ジルコニア焼結粉末

Cited By (3)

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JP2011105589A (ja) * 2009-10-23 2011-06-02 Nippon Shokubai Co Ltd スカンジア安定化ジルコニアシートの製造方法、および当該製造方法により得られるスカンジア安定化ジルコニアシート、並びにスカンジア安定化ジルコニア焼結粉末
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