JP2003007341A - リチウム二次電池の特性評価方法 - Google Patents

リチウム二次電池の特性評価方法

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JP2003007341A JP2001190197A JP2001190197A JP2003007341A JP 2003007341 A JP2003007341 A JP 2003007341A JP 2001190197 A JP2001190197 A JP 2001190197A JP 2001190197 A JP2001190197 A JP 2001190197A JP 2003007341 A JP2003007341 A JP 2003007341A
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temperature
secondary battery
magnetic
lithium secondary
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Hirofumi Iizaka
浩文 飯坂
Jun Sugiyama
純 杉山
Tatsuo Noritake
達夫 則竹
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Abstract

(57)【要約】 【課題】リチウム二次電池の低温出力特性の判定が正極
活物質の段階で迅速・簡便に評価できる方法を提供する
こと。 【解決手段】本発明のリチウム二次電池の特性評価方法
は、リチウム二次電池の正極活物質に用いられるリチウ
ム遷移金属複合酸化物について、磁場中で降温させる過
程での磁気転移温度における帯磁率と磁場のない状態で
降温させた後に磁場中で昇温させる過程での磁気転移温
度における帯磁率との差又は所定温度で測定した残留磁
化を測定し、その差から該リチウム二次電池の低温出力
特性を判定することを特徴とする。つまり、リチウム遷
移金属複合酸化物を正極活物質としてリチウム二次電池
に用いた場合の低温出力特性を、高信頼度で、迅速か
つ、簡便に評価するのに優れた方法となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リチウムイオンの
吸蔵・脱離現象を利用したリチウム二次電池の正極活物
質に用いることのできるリチウムニッケル複合酸化物の
正極活物質としての特性を評価するのに適したリチウム
二次電池の特性評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】パソコン、ビデオカメラ、携帯電話等の
小型化に伴い、情報関連機器、通信機器の分野では、こ
れらの機器に用いる電源として、高エネルギー密度であ
るという理由から、リチウム二次電池が実用化され広く
普及するに至っている。また一方で、自動車の分野にお
いても、環境問題、資源問題から電気自動車の開発が急
がれており、この電気自動車用の電源としても、リチウ
ム二次電池が検討されている。
【0003】リチウム二次電池の正極活物質となるリチ
ウム遷移金属複合酸化物は、4V級の作動電圧が得られ
るものとして、層状岩塩構造のLiCoO2、LiNi
2、スピネル構造のLiMn24がよく知られてい
る。これらの中でも、合成の容易である、最も高い作動
電圧が得られる等の理由から、現在では、LiCoO2
を正極活物質に用いる二次電池が主流を占めている。
【0004】ところで、リチウム二次電池を電気自動車
等に使用する場合に低温での性能低下が問題となる。電
池反応は化学反応であるので低温では反応速度が低下し
出力等の性能が悪化する。この低温での出力低下の程度
は正極活物質の結晶構造・組成の微妙な相違により大幅
に変化する。したがって、電池性能を向上するためには
正極活物質の結晶構造・組成を適正に制御することが有
効である。
【0005】しかしながら正極活物質として用いられる
リチウム遷移金属複合酸化物はその合成条件の微妙な変
動、例えば、原料の組成配合、熱処理温度、雰囲気(酸
素温度や露点やCO2含有量)、時間等で、その結晶構
造・組成は微妙に変動してしまう。その結果、適正な電
池性能の達成は困難となる。
【0006】そこで適正なリチウム二次電池を得るため
に製造したリチウム遷移金属複合酸化物を用いて電池を
構成する前に、各製造ロット毎に、その特性を判定し、
正極活物質として適正な特性を有するものか否かについ
て評価することが必要となってくる。
【0007】リチウムニッケル複合酸化物の特性を判定
する方法として、従来は、粉末X線回折、組成分
析、磁気的性質(有効磁気モーメント、Weiss温
度)の分析(特開平9−180722号公報)、小型
電池による電極性能試験等を用いており、これらを単独
で、あるいは併用することにより、そのリチウムニッケ
ル複合酸化物の正極活物質としての特性を評価してい
た。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、通常の粉末
X線回折では、Liと酸素からの反射・回折強度が弱い
ために、長時間の測定と精密な構造解析が必要である。
粉末X線回折のこれらの欠点は、中性子回折を行うこと
である程度解決される。しかし、中性子源には原子炉が
必要なので、実施できる場所と機会は極めて限定されて
おり、ロット検査のような用途には適さない。さらに試
料内でNi2+等が不均一分布している場合は、組成の見
積りには大きな誤差が伴う。また、組成分析は、試料
中の構成元素の比は求まるが、結晶構造中の構成元素の
位置や、電池反応に関わるLiとそうでないLiを区別
できない。有効磁気モーメント、Weiss温度の分
析では対象がマンガン酸リチウムに限定され、また低温
出力特性の判定ができない。そして、電極性能試験
は、粉末X線回折や組成分析よりは信頼できる検査法で
あるが、小型とはいえ電池を製作するので、かなりの煩
雑さが伴う。つまりロット検査のような用途への適用は
困難が付きまとう。
【0009】そこで、本発明ではリチウム二次電池の低
温出力特性の判定が正極活物質の段階で迅速・簡便に評
価できる方法を提供することを解決すべき課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する目的
で本発明者らは鋭意研究を行った結果、リチウム遷移金
属複合酸化物について、磁場中で降温させる過程での磁
気転移温度における帯磁率と磁場のない状態で降温させ
た後に磁場中で昇温させる過程での磁気転移温度におけ
る帯磁率との差や、所定温度で測定した残留磁化の値
が、詳細は不明であるが、リチウム二次電池の低温出力
特性と関連を有することを見出し、以下の発明を行っ
た。すなわち、本発明のリチウム二次電池の特性評価方
法は、リチウム二次電池の正極活物質に用いられるリチ
ウム遷移金属複合酸化物について、磁場中で降温させる
過程での磁気転移温度における帯磁率と磁場のない状態
で降温させた後に磁場中で昇温させる過程での磁気転移
温度における帯磁率との差又は所定温度で測定した残留
磁化を測定し、その差から該リチウム二次電池の低温出
力特性を判定することを特徴とする。
【0011】つまり、リチウム遷移金属複合酸化物を正
極活物質としてリチウム二次電池に用いた場合の低温出
力特性を、高信頼度で、迅速かつ、簡便に評価するのに
優れた方法となる。
【0012】本発明の特性評価方法では、リチウム遷移
金属複合酸化物の帯磁率の差又は所定温度での残留磁化
を測定することでこれを正極活物質に用いたリチウム二
次電池の低温出力特性を評価する。ここで、帯磁率の差
及び残留磁化の値が変化する原理について、リチウムニ
ッケル複合酸化物を例にとって説明する。
【0013】層状岩塩構造リチウムマンガン複合酸化物
の磁気相互作用を図1に示す。図1(a)は、理想構造
の場合を示す。この構造で磁性を担うのは、Niイオン
のみである。理想構造では、図中にJ1で示したNi面
内のNi3+間の磁気相互作用が、全体の磁性を決める主
要因である。ここでJ1は反強磁性的(J1<0)で、
かつNi面のイオンは3角格子を組んでいる。このため
に生じる大きな磁気フラストレーションの結果、低温で
も明瞭な長距離磁気秩序は出現しない。つまり低温では
局所的な短距離磁気秩序の競合となり、スピングラス相
が出現する。この磁気転移温度をスピングラス転移温度
と呼び、Tgと略す。なおここで、磁気転移温度は、磁
場中において試料を昇温あるいは降温させてその帯磁率
を測定し、帯磁率が極大を示す温度をもって示すことが
できる。
【0014】図1(b)には、Li面へNi2+が位置す
る(Li+ 1-xNi2+ x3b(Ni3+ 1 -xNi2+ x3a2
の結晶構造とその磁気相互作用とを示す。この結晶構造
では、新たにNi面のNi2+とNi3+間の相互作用J
1’と、Li面に存在するNi 2+とNi面のNi3+やN
2+との磁気相互作用J2が出現する。つまり全体の磁
性はJ1のみでは定まらず、J1’とJ2の影響を受け
る。これは磁気的乱雑さの増加を意味し、スピングラス
相は理想構造の場合より高温で出現し易くなる。つまり
g の値が上昇する。
【0015】ここで、この結晶構造内に不純物がNi面
のNi3+等に代わり不均一に侵入する場合を考える。す
ると、不純物の富んだ部分では強磁性的な相互作用が強
くなり、低温では微小な強磁性領域が出現する。この強
磁性分域の分散程度が低い場合、つまり不均一に分散
(言い換えれば偏在すること)する場合、帯磁率の大幅
な上昇、磁場中で降温させる過程での磁気転移温度にお
ける帯磁率と磁場のない状態で降温させた後磁場中で昇
温させる過程での磁気転移温度における帯磁率との差の
拡大、磁化の磁場依存性の不可逆性、いわゆる磁化−磁
場曲線の履歴現象(ヒステリシス)に伴う残留磁化の発
生といった事象が現れてくる。
【0016】例えば、上記の磁気転移温度以下の温度で
の、磁化−磁場曲線の履歴現象に伴う残留磁化Mrを測
定した場合には、このMrがある制限値より小さな試料
を選ぶことにより、不純物等の混入量が少なくかつ均一
性に優れたリチウムニッケル複合酸化物と判定すること
ができる。また磁化の磁場依存性の測定には時間がかか
ることに鑑み、簡便化のために、上記の昇降温過程にお
ける帯磁率差Δχ(Tg)を測定することもできる。そ
の場合には、Δχ(Tg)がある制限値より小さな試料
を選んでも良い。なお、これらのパラメータを組み合わ
せて評価に用いることも可能である。
【0017】以上のような帯磁率の差又は残留磁化を測
定することで低温出力特性に関して信頼度の高い評価が
可能となる。
【0018】なお、本評価方法は、リチウムニッケル複
合酸化物に限らず、一般的にリチウム二次電池に汎用さ
れるリチウム遷移金属複合酸化物、例えば、基本組成を
LiCoO2とするリチウムコバルト複合酸化物、基本
組成をLiMnO2とするリチウムマンガン複合酸化物
等の全般に対しても適用できる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下に、本発明のリチウム二次電
池の特性評価方法についての実施形態について説明す
る。
【0020】本発明のリチウム二次電池の特性評価方法
が適用できるリチウム遷移金属複合酸化物は、一般的に
リチウム二次電池に用いられる正極活物質であれば特に
限定されない。具体的には、コバルト、ニッケル、マン
ガン等の遷移金属とリチウムとの複合酸化物を含む一般
的にリチウム二次電池に用いられる正極活物質(層状岩
塩構造LiCoO2、LiNiO2、スピネル構造LiM
24等)は、ほぼすべて本発明方法の対象となる。ま
た、リチウム遷移金属複合酸化物は単一組成のものばか
りでなく、複数の組成をもつものの混合物であってもよ
い。
【0021】本発明方法により評価できるリチウム遷移
金属複合酸化物を製造する方法は特に限定するものでは
ない、例えば、一般にいう固相反応法若しくは水熱法に
よって製造することが可能である。固相反応法は、例え
ば、水酸化リチウム、過酸化リチウム、炭酸リチウム等
をリチウム源と、酸化ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニ
ッケル等をニッケル源と、コバルトおよびアルミニウム
を置換元素とする場合は、酸化コバルト、炭酸コバル
ト、水酸化アルミニウム、酢酸アルミニウム等をコバル
ト源およびアルミニウム源とし、これらを組成に応じた
所定割合で混合し、所定の酸化雰囲気中で、所定温度
下、所定時間熱処理を施すことによって合成することが
できる。
【0022】これらの、リチウム遷移金属複合酸化物の
中でも、リチウムニッケル複合酸化物は資源量が豊富で
今後期待される材料であるが、リチウム二次電池に用い
た場合に低温特性が若干他の材料よりも低下することが
あり、本方法により迅速・簡便に評価を行うことでより
低温特性の改善された材料を提供できる。
【0023】具体的な本発明方法としては、そのリチウ
ム遷移金属複合酸化物の磁場中で降温させる過程でのT
gにおける帯磁率χFC(Tg)と磁場のない状態で降温さ
せた後磁場中で昇温させる過程でのTgにおける帯磁率
χZFC(Tg)との差Δχ(Tg)、又は所定の温度で測
定した残留磁化Mrを測定する。これに基づきそのリチ
ウム遷移金属複合酸化物をリチウム二次電池に用いた場
合の低温出力特性を評価する。すなわち、測定されたΔ
χ(Tg)及びMrは小さいほど、そのリチウム遷移金属
複合酸化物を正極活物質に用いたリチウム二次電池の低
温出力特性は優れていると評価する。
【0024】なお、上記帯磁率および残留磁化のパラメ
ータは、8000A/m以下の磁場中にて測定したもの
であることが望ましい。これは、8000A/mを超え
る磁場を印加する場合は、スピングラス転移や強磁性分
域の分散程度の検出が困難となるおそれがあるという理
由からである。そして、残留磁化Mrの測定における所
定温度とは、特に限定するものではないが、約200K
より高い温度では、強磁性分域が強磁性を示さなくな
り、測定が困難となることに鑑み、200K以下の温度
とするのが望ましい。より低温であるほうが大きな残留
磁化を示すことから、Tg付近の温度とするのがより望
ましい。
【0025】測定において、その測定装置は特に限定す
るものではない、低温における磁化を測定できる装置を
用いればよく、例えば、超伝導量子干渉素子(SQUI
D)磁束計、磁気天秤、振動試料型磁力計、交磁磁力計
等を用いることができる。
【0026】実際の評価は、製造したリチウム遷移金属
複合酸化物の製造ロットごとに行なえばよく、製造ロッ
トごとに評価する実施形態とすれば、各製造ロットごと
のリチウム遷移金属複合酸化物の微妙な構造の変化を迅
速・簡便に検出でき、逆に所定の制限値内のロットのみ
を製造・出荷・利用することにより、最終製品であるリ
チウム二次電池のサイクル特性、高温保存特性等のバラ
ツキを、電池構成前の段階において効率的に抑えること
ができる。
【0027】なお、これまでに説明した本発明のリチウ
ム二次電池の特性評価方法の実施形態は例示に過ぎず、
これらの実施形態は、上記実施形態を始めとして、当業
者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態とす
ることができる。
【0028】
【実施例】本発明のリチウム二次電池の特性評価方法の
優位性を証明すべく、種々のリチウムニッケル複合酸化
物の試料を作製し、それぞれの試料の帯磁率の差Δχ
(T g)及び残留磁化Mrを測定しそれを正極活物質に用
いたリチウム二次電池としての特性を評価するととも
に、それらの試料を正極活物質として用いたリチウム二
次電池を実際に作製し、その特性を実際に確認した。こ
れらについて、以下に、実施例として説明する。
【0029】〈リチウムニッケル複合酸化物の試料の作
製〉水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)と酸
化ニッケル(NiO)とのそれぞれの粒子粉末をモル比
でLi:Ni=1.1:1の割合になるようによく混合
した。この混合粒子粉末を錠剤状に圧縮成形してから、
第1回熱処理として650℃、4時間、酸素気流中で保
持した。得られた錠剤をよく粉砕してから、再び錠剤状
に圧縮成形し、第2回熱処理として650℃、4時間、
酸素気流中で保持した。さらに粉砕・圧縮成形してか
ら、第3回熱処理として600℃、10時間、酸素気流
中で保持し、その後室温まで1℃/分で炉冷して、組成
式LiNiO2で表されるリチウムニッケル複合酸化物
を得た。
【0030】これらの操作を原料のLi:Niの比を少
しずつ変化させてリチウムニッケル複合酸化物を製造
し、それぞれ試料1〜試料8とした。
【0031】〈X線回折分析による結晶構造の決定〉作
製した上記各試料の結晶構造、特に正規のLi位置であ
る3bサイトのNi占有率xを粉末X線回折パターンの
リートベルト解析により決定した。回折パターンは、2
θ=0.020のステップスキャンで、最強の回折線強
度が20000カウント以上になるような条件で測定し
た。1試料当たりの測定時間は約3時間だった。すべて
の試料が層状岩塩構造の単一相であり、その差は判別で
きなかった。
【0032】〈帯磁率、磁気転移温度等の測定〉各試料
の帯磁率を超伝導量子干渉素子(SQUID)磁束計で
測定した。各試料約100mgを、磁場のない状態で
(ゼロ磁場中で)室温から4Kまで冷却した。次いで、
796A/mの磁場Hを印加して、温度を上昇させなが
ら0.5K毎に20Kまで、2K毎に40Kまで、そし
て10K毎に室温まで磁化Mを測定した。帯磁率χはN
iモル当りの値で、χ=M/(H×試料中のNiモル
数)という式によって求めた。なお、ここで求めた帯磁
率は、磁場のない状態で降温させた後磁場中で昇温させ
る過程での帯磁率であり、以下χZFCと表し、試料1〜
3のχZFCを図2に示す。次に各試料について、磁場中
で降温させる過程での帯磁率χFCを測定した。測定の条
件は、各試料約100mgを、796A/mの磁場Hを
印加して、温度を下降させながら、10K毎に40Kま
で、さらに2K毎に20Kまで、0.5K毎に4Kまで
磁化Mを測定するものとした。帯磁率χは、M/(H×
試料中のNiモル数)により求めた。この測定から求め
られたχをχFCと表し、試料1〜3のχFCを図3に示
す。そして図4に試料1〜3のχZFCとχFCとを温度軸
のスケールを変えて比較できるように示す。これらの図
からわかるように、χFCおよびχZFCのいずれもその極
大を示す温度(Tg)はほぼ一定している。
【0033】次に、残留磁化を測定した。まず、各試料
をゼロ磁場中で室温から5Kまで冷却した。そして温度
を一定に保ちながら、(1)磁場Hを0〜440000
0A/mまで増加させながら磁化Mを測定した。次い
で、(2)Hを4400000〜−4400000A/
mまで減少させながらMを測定した。その後、(3)H
を−4400000〜4400000A/mまで増加さ
せながらMを測定した。その後、(2)と(3)のH=
0で測定したMのそれぞれの値の絶対値M(0)+、M
(0)- の平均を、試料中のNiモル数で割って、つま
り、Mr =(M(0)++M(0)-)/(2×試料中のNi
モル数) という式により求めた。
【0034】ここで、そのTg おけるそれぞれの試料1
〜8の帯磁率χFC(Tg)とχZFC(Tg)との差Δχ
(Tg)と残留磁化Mrの間を比較すると、図5に示すよ
うに直線的な関係が成立する。このことから、Tg おけ
る帯磁率χFC(Tg)、χZFC(Tg)の差の代わりに、
残留磁化Mrを測定することによっても、低温出力を評
価することが可能である。なお、χZFCが極大を示す温
度を磁気転移温度Tg とし、その温度での帯磁率をχ
ZFC(Tg)とした。
【0035】〈リチウム二次電池の製作〉試料3〜8を
正極活物質に用いて、リチウム二次電池を作製した。作
製したリチウム二次電池の構成を図6を参照しつつ説明
する。リチウム二次電池10は電池缶12内に正極シー
トと負極シートをセパレ−タを介して渦巻き状に巻回し
て構成される電極体14を装着したものである。そして
正極シートから引き出された正極集電リード16は、電
池缶12に被着されるキャップ17に接続され、また負
極シートから引き出された負極集電リード18は電池缶
12に接続されている。なお電池缶12の内底面および
電極集合体14の上部にはおのおの絶縁板20が装着さ
れる。
【0036】次にこの電池の作成方法について説明す
る。正極活物質には試料1〜試料xを用いた。これらの
正極活物質90重量部に、導電材としてグラファイト5
重量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデン5重量部を
混合した後、N−メチル−2−ピロリドンを溶剤として
加えて正極合材ペーストを作製した。このペーストをア
ルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布、乾燥、圧延
し正極シートとした。
【0037】負極活物質には球状黒鉛を用いた。この負
極活物質95重量部に、結着剤としてポリフッ化ビニリ
デン5重量部を混合した後、N−メチル−2−ピロリド
ンを溶剤として加えて負極合材ペーストを作製した。こ
のペーストを銅箔からなる集電体の両面に塗布、乾燥、
圧延し負極シートを得た。
【0038】セパレ−タはポリプロピレンからなる多孔
性フィルムを正極板および負極板よりも幅広く裁断した
ものを用いた。正極板と負極板との間にセパレ−タを介
在させ、全体をロール状に捲回して電極体14を構成し
た。電極体14の下に絶縁板20を装着し、電池缶12
に収容して負極リード線18を電池缶12にスポット溶
接した。また電極体の上側にも絶縁板20を装着し、そ
の後、非水系電解液を注入した。
【0039】非水系電解液には、エチレンカーボネート
(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを体積比
で3:7に混合し、これに6フッ化リン酸リチウム(L
iPF6 )を1mol/Lの濃度まで溶解させたものを
用いた。ガスケットを組み込んであるキャップ17と正
極リード線16をスポット溶接した後、キャップ17を
電池缶12に装着し、電池缶12の上部をかしめること
で電池内を密閉し、円筒型リチウム二次電池を完成させ
た。
【0040】〈低温出力特性評価試験〉試料3〜試料8
を正極活物質として用いたそれぞれの上記リチウム二次
電池に対して、まずコンディショニングを行った。コン
ディショニングの条件は、25℃の環境温度下、電流密
度0.25mA/cm2 の定電流で充電終止電圧4.1
Vに到達するまで充電を行いさらに4.1Vの定電圧で
充電する合計充電時間が6時間の定電流定電圧充電と、
電流密度0.2mA/cm2 の定電流で放電終止電圧3
Vに到達するまでの定電流放電とからなる充放電サイク
ルを1サイクル行い、次いで、電流密度1mA/cm2
の定電流で充電終止電圧4.1Vに到達するまで充電を
行いさらに4.1Vの定電圧で充電する合計充電時間が
2時間の定電流定電圧充電と、電流密度1mA/cm2
の定電流で放電終止電圧3Vに到達するまでの定電流放
電とからなる充放電サイクルを4サイクル行うものとし
た。その最終サイクルにおける放電容量を基準容量とし
た。
【0041】コンディショニング終了後、それぞれのリ
チウム二次電池を低温出力特性評価試験に供した。低温
出力特性評価試験は以下のように行った。それぞれのリ
チウム二次電池の基準容量を1時間で放電するために必
要な電流を1時間率(1C)とした。各リチウム二次電
池の基準容量の30%まで充電した状態(SOC30
%)で、雰囲気温度を−30℃とし、0.1Cで10秒
間放電させ、10秒目の電圧を測定した。次いで0.3
Cで10秒間、1Cで10秒間、3Cで10秒間、10
Cで10秒間放電させ、各10秒目の電圧を測定した。
同様の手順で充電も行い、各10秒目の電圧を測定し
た。そして、電圧の電流依存性を求め、電流−電圧直線
の勾配を内部抵抗とした。さらに放電側の電流−電圧直
線と下限電圧(3V)とで囲まれる3角形の面積を出力
(W)、充電側の電流−電圧直線と上限電圧(4.1
V)とで囲まれる3角形の面積を入力(W)とした。
【0042】〈評価〉上記一連の実験の結果について、
下記表1に、それぞれの試料のそれぞれのデータを一覧
表の形式で示す。示すデータは、試料のTgにおける帯
磁率χZFC(T g)とχFC(Tg)との差(10-13 Wb
・m2/A・mol)、5Kにおける残留磁化Mr(10
-10 Wb・m/mol))、試料3〜8についてはさら
に、それらを用いて作製したリチウム二次電池の低温出
力特性である。
【0043】
【表1】
【0044】そして試料3〜8について、帯磁率の差Δ
χ及び残留磁化Mrと低温出力との関係をそれぞれ図
7、8に示す。
【0045】上記表1及び図7から、帯磁率の差Δχが
小さい試料ほど低温出力が向上していることが明らかと
なった。同様に、表1及び図8から、残留磁化Mrも小
さい試料ほど低温出力が向上していることが明らかとな
った。
【0046】
【発明の効果】本発明のリチウム二次電池の特性評価方
法は、上記リチウムニッケル複合酸化物等の特性を評価
するのに適した評価方法であり、そのリチウム遷移金属
複合酸化物の残留磁化、χZFC及びχFC間の帯磁率の差
をパラメータとして測定し、それらの値からそのリチウ
ム遷移金属複合酸化物をリチウム二次電池に用いた場合
の低温出力を判定するものである。このような手法によ
ることで、本発明のリチウム二次電池の特性評価方法
は、リチウム遷移金属複合酸化物を測定することでそれ
を正極活物質として用いたリチウム二次電池の特性を、
高信頼度で、迅速、かつ簡便に評価することのできる評
価方法となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 層状岩塩構造リチウムニッケル複合酸化物の
磁気相互作用を示す。
【図2】 実施例における試料1〜3の磁場のない状態
で降温させた後磁場中で昇温させる過程での帯磁率χ
ZFCを示す。
【図3】 実施例における試料1〜3の磁場のない状態
で降温させた後磁場中で昇温させる過程での帯磁率χFC
を示す。
【図4】 実施例における試料1〜3の磁場のない状態
で降温させた後磁場中で昇温させる過程での帯磁率χ
ZFCと、磁場中で降温させる過程での帯磁率χFCとを温
度軸のスケールを変更して示す。
【図5】 実施例における試料1〜8の磁気転移温度T
gでの帯磁率差Δχ(Tg)と残留磁化Mrとの関係を示
す。
【図6】 実施例において作製したリチウム二次電池の
構成を示す。
【図7】 実施例における試料3〜8の磁気転移温度T
gでの帯磁率差Δχ(Tg)とそれらを用いて作成したリ
チウム二次電池の低温出力との関係を示す。
【図8】 実施例における試料3〜8の残留磁化Mr
それらを用いて作成したリチウム二次電池の低温出力と
の関係を示す。
【符号の説明】
10:リチウム二次電池 12:電池缶 14:電極体 16:正極集電リード 17:キャップ 18:負極集電リード 20:絶縁板
フロントページの続き (72)発明者 則竹 達夫 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 Fターム(参考) 2G053 AB04 BB11 BB16 BB17 CA10 5H029 AJ14 AK03 AL07 AM03 AM05 AM07 BJ02 BJ14 HJ02 5H030 AA10 AS11 AS14 FF21 FF41

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リチウム二次電池の正極活物質に用いら
    れるリチウム遷移金属複合酸化物について、 磁場中で降温させる過程での磁気転移温度における帯磁
    率と磁場のない状態で降温させた後に磁場中で昇温させ
    る過程での磁気転移温度における帯磁率との差、 又は所定温度で測定した残留磁化、を測定し、その値か
    ら該リチウム二次電池の低温出力特性を判定することを
    特徴とするリチウム二次電池の特性評価方法。
  2. 【請求項2】 前記リチウム遷移金属複合酸化物は、基
    本組成をLiNiO2とするリチウムニッケル複合酸化
    物である請求項1に記載のリチウム二次電池の特性評価
    方法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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JP7409464B1 (ja) 2022-11-01 2024-01-09 株式会社プロテリアル 材料データ処理装置及び方法
JP7409472B1 (ja) 2022-12-14 2024-01-09 株式会社プロテリアル 材料データ処理装置及び方法

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