JP2003001758A - 樹脂被覆シームレス缶 - Google Patents

樹脂被覆シームレス缶

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JP2003001758A JP2001187382A JP2001187382A JP2003001758A JP 2003001758 A JP2003001758 A JP 2003001758A JP 2001187382 A JP2001187382 A JP 2001187382A JP 2001187382 A JP2001187382 A JP 2001187382A JP 2003001758 A JP2003001758 A JP 2003001758A
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幸司 山田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】耐腐食性、耐衝撃性に優れた樹脂被覆シームレ
ス缶を提供する。 【解決手段】金属基体2の表面にポリエチレンテレフタ
レートを含有するポリエステル樹脂層3を被覆した樹脂
被覆金属板1から成る樹脂被覆シームレス缶10おい
て、下記式(1)で表される缶胴部12内面側のポリエ
ステル樹脂層3の歪みεが、0.3%以下であることを
特徴とする樹脂被覆シームレス缶。 ε(%)=(ΔL/L0)×100・・・(1) 但し、L0は缶胴部ポリエステル樹脂層の高さ方向の初
期長さであり、ΔLはL0該当部分を金属基材から剥離
した時の収縮量である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂被覆シームレ
ス缶に関するもので、より詳細には優れた耐食性、耐衝
撃性を有する樹脂被覆シームレス缶に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、側面無継目缶(シームレス缶)と
しては、アルミニウム板、ブリキ板或いはティンフリー
スチール板等の金属素材を、絞りダイスとポンチとの間
で少なくとも一段の絞り加工に付して、側面に継ぎ目の
無い胴部と該胴部に継ぎ目無しに一体に接続された底部
から成る円筒状カップに形成し、次いで所望により、前
記胴部に、しごきポンチとダイスとの間でしごき加工を
加えて、胴部を薄肉化した缶体が知られている(絞り・
しごき加工)。また、前記しごき加工の代わりに、再絞
りダイスの曲率コーナ部で曲げ伸ばしによる薄肉化絞り
成形を行って側壁部を薄肉化することも既に知られてい
る(絞り・薄肉化絞り成形)。さらに、前記薄肉化絞り
加工時にしごき加工を加えて側壁部を薄肉化する薄肉化
絞り成形及びしごき加工も既に知られている(絞り・薄
肉化絞り成形及びしごき加工)。
【0003】また、側面無継目缶の有機樹脂被膜法とし
ては、一般的に広く使用されている成形後の缶に有機塗
料を施す方法の他に、成形前の金属素材に予め樹脂フィ
ルムをラミネートする方法が知られており、また、薄肉
化絞り成形による缶体の製造に際し、ポリエステル、ビ
ニルオルガノゾル、エポキシ、フェノール、アクリル等
の被覆金属板を用いることも知られている。
【0004】熱可塑性ポリエステルに代表される熱可塑
性樹脂フィルムの金属基材に対する被覆方式について
も、非常に多くの提案がされており、例えば、二軸延伸
フィルムを直接、或いは接着用プライマー層を介して、
金属基板に熱接着により貼り合わせる方式(例えば特開
平3−101930号公報、特開平5−4229号公
報、特開平6−172556号公報)や、溶融樹脂を金
属基体に押し出しコートする方式(特開平10−863
08号公報)等が採用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】樹脂被覆金属板から、
絞り・しごき加工、絞り・薄肉化絞り成形、又は絞り・
薄肉化絞り成形及びしごき加工(以後これらの加工法を
絞り・薄肉化絞り成形及び/またはしごき加工という)
により成形されたシームレス缶においては、その加工程
度がコストダウンを図るために年々厳しいものとなって
おり、従来から一般に採用されている二軸延伸フィルム
を金属基体に熱接着で積層させた缶用樹脂被覆金属板で
は、厳しくなる苛酷な加工に追随することが難しくなっ
てきている。これに対し、金属基体に溶融樹脂を直接押
し出しコート、或いは、キャストフィルムをラミネート
した缶用樹脂被覆金属板は、前記樹脂が未配向の状態で
維持されるため、前記したような苛酷な加工に対する追
随性の許容度が大きいので、押し出しコート樹脂被覆金
属板が最近用いられるようになってきている。
【0006】これらの押し出しコート或いは、キャスト
フィルムをラミネートした熱可塑性樹脂被覆金属板は、
絞り成形により円筒状カップに成形され、次いで薄肉化
絞り成形及び/又はしごき加工によりハイトが高く、し
かも側壁が薄肉化されたシームレス缶に成形される。こ
のシームレス缶では、被覆樹脂層と金属基体との界面状
態が、缶底部と缶胴部とで大きく相違している。即ち、
缶底部では、加工の程度が厳しくないため、前記接着界
面は実質上加工前の樹脂被覆金属板のままの形で温存さ
れており、一方、缶胴部では加工の程度が厳しく、前記
接着界面における被覆樹脂層に加工歪みが蓄えられるた
め、前記接着界面において剥離や割れ等の発生が認めら
れる場合があり、金属基体表面の表面処理層の有無に係
わらずシームレス缶とした時の耐食性、耐衝撃性を低下
させていた。
【0007】耐食性は、熱可塑性樹脂被覆金属板から成
るシームレス缶においては、一般にアンダー・フィルム
・コロージョン(UFC)と呼ばれる被膜下腐食が進行
し易い。この腐食はフィルムによるカバレッジが見掛け
上安全であるにも係わらず、フィルム層の下の金属基板
に腐食が発生する現象であるが、これを防止することが
要求される。
【0008】耐衝撃性は、実際の缶詰製品とした時の耐
デント性と呼ばれるものが有り、これは、缶詰製品を落
下して、或いは缶詰製品同士が相互に衝突して、缶詰製
品に打痕と呼ばれる凹みが生じた場合でも、被覆の密着
性、カバレッジが完全に保たれることが要求される。
【0009】従って、本発明の課題は、金属基体の表面
に熱可塑性樹脂を被覆した樹脂被覆金属板から成る樹脂
被覆シームレス缶において、耐食性、耐衝撃性に優れた
樹脂被覆シームレス缶を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の樹脂被覆シーム
レス缶は、金属基体の表面にポリエチレンテレフタレー
トを含有するポリエステル樹脂層を被覆した樹脂被覆金
属板から成る樹脂被覆シームレス缶において、下記
(1)式で表される缶胴内面側のポリエステル樹脂層の
歪みεが、0.3%以下であることを特徴とする。 ε(%)=(ΔL/L0)×100・・・(1) 但し、L0は缶胴部ポリエステル樹脂層の高さ方向の初
期長さ、ΔLはL0該当部分を金属基体から剥離した時
の収縮量である。
【0011】前記構成により、被覆樹脂層と金属基体と
の接着界面における密着性を高めることができ、シーム
レス缶の被膜下の腐食(UFC)を抑制し、また、被膜
の耐衝撃性(耐デント性)を高めるという作用が得られ
るという効果を有する。尚、本発明の樹脂被覆シームレ
ス缶においては、樹脂被覆金属板が未配向のポリエステ
ル樹脂層を金属基体に設けたものであることが好まし
い。
【0012】また、本発明の樹脂被覆シームレス缶は、
絞り・曲げ伸ばし及び/またはしごき成形により、缶胴
部の厚みが缶底部の厚みの20乃至85%になるように
薄肉化されていることが好ましい。
【0013】また、本発明の樹脂被覆シームレス缶を形
成するポリエステル樹脂が、固有粘度0.6(dl/
g)以上であることが好ましい。
【0014】さらに、本発明の樹脂被覆シームレス缶を
形成するポリエステル樹脂層が2層から成り、表層
(A)がイソフタル酸含有量15モル%以下のポリエチ
レンテレフタレート/イソフタレートから成り、下層
(B)がイソフタル酸含有量8乃至25モル%で、しか
も表層(A)のイソフタル酸含有量よりも多いポリエチ
レンテレフタレート/イソフタレートから成ることが好
ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】[樹脂被覆シームレス缶]図1
は、本発明の樹脂被覆シームレス缶の一実施態様を示す
概略図である。図2は、本発明に用いる樹脂被覆金属板
の参考断面図である。図3は、本発明に用いる他の樹脂
被覆金属板の参考断面図である。図1〜図3において、
樹脂被覆シームレス缶10は、樹脂被覆金属板1を、絞
り・薄肉化絞り成形及び/又はしごき加工することによ
り形成され、缶底部11と缶胴部12とから成ってい
る。本発明の樹脂被覆シームレス缶10は、金属基体2
の表面にポリエチレンテレフタレートを含有するポリエ
ステル樹脂層3を被覆した樹脂被覆金属板1を、絞り・
薄肉化絞り成形及び/又はしごき加工して形成されたも
のである。
【0016】また、本発明の樹脂被覆シームレス缶10
は、前記のポリエステル樹脂被覆金属板1をポンチとダ
イスの間で、有底カップ状に絞り、続いて曲げ伸ばし成
形による薄肉化絞り成形及び/又はしごき加工して形成
されたものである。前記薄肉化絞り成形及び/又はしご
き加工により、カップ側壁部は薄肉化加工され、成形さ
れた樹脂被覆シームレス缶10の缶胴部12の熱可塑性
樹脂層3は、少なくとも一軸方向に分子配向している。
【0017】缶胴部12の上端には、所望により形成さ
れるネック部13と、ネック部13を介して形成される
フランジ部14とが形成されている。前記のようにして
形成された樹脂被覆シームレス缶10は、缶胴部12に
おけるポリエステル樹脂層3が少なくとも一軸方向に分
子配向された状態に維持されており、一方、缶底部11
におけるポリエステル樹脂層3は無配向の状態に維持さ
れている点に特徴を有する。なお、本発明の樹脂被覆シ
ームレス缶10は、金属基体2の両面にポリエステル樹
脂層3が被覆されているものであってもよい。この場合
は、図2に示すような断面構造の金属基体2の両面にポ
リエステル樹脂層3が被覆されている樹脂被覆金属板1
を、絞り・薄肉化絞り成形及び/又はしごき加工して形
成される。また、図3に示すような断面構造の内面ポリ
エステル樹脂層3上層に、さらに内表面層5が形成され
ているものであっても良い。このような内表面層5は樹
脂被覆シームレス缶10の内面側に設けられており、例
えば、内容物中の香味成分に対して吸着性の少ない樹脂
などが好ましく用いられる。
【0018】[ポリエステル樹脂層]本発明の樹脂被覆
シームレス缶10においては、缶胴部12における内面
側のポリエステル樹脂層3の歪みεが0.3%以下であ
るという特徴を有する。前記残留歪みεは密着性阻害要
因を規定したものであり、残留歪みεが、0.3%より
大きいと、被覆樹脂層と金属基体との接着界面における
剥離や割れ等が発生し、耐食性、耐衝撃性が低下するた
め好ましくない。即ち、この点について説明すると、前
記式(1)で定義される缶胴部内面側のポリエステル樹
脂層の残留歪みεは、缶胴部ポリエステル樹脂層の高さ
方向の初期長さ(L0)と、L0該当部分を金属基体から
剥離した時の収縮量(ΔL)との比を示すものである。
【0019】本発明の樹脂被覆シームレス缶は、缶胴部
内面におけるポリエチレンテレフタレートを含有するポ
リエステル樹脂層が、缶胴内面側部ポリエステル樹脂層
の高さ方向の初期長さ(L0)と、L0該当部分を金属基
体から剥離した時の収縮量(ΔL)との比(ε)を0.3
%以下に維持されている。このことにより、絞り・薄肉
化絞り成形及び/又はしごき加工によって、前記ポリエ
ステル樹脂が一軸方向に分子配向しても、金属基体表面
とポリエステル樹脂層の接着界面における密着性阻害要
因が取り除かれ、耐食性、耐衝撃性等を向上させること
ができる点が顕著な特徴である。即ち、被覆樹脂層と金
属基体表面との接着界面における密着性を高め、シーム
レス缶の被膜下腐食(UFC)を抑制し、また、被膜の
耐衝撃性(耐デント性)を高めることが可能となる。
【0020】前記樹脂被覆シームレス缶の歪みεの特性
の付与は、加工前の被覆ポリエステル樹脂の配向状態、
シームレス缶成形条件、シームレス缶成形後の熱処理等
によって施すことができる。歪み(ε)をコントロール
するには、押し出しコート或いはキャストフィルムをラ
ミネートした実質上未配向のポリエステル樹脂被覆金属
板を用い、薄肉化絞り成形及び/又はしごき加工でシー
ムレスカップとした後、その缶胴部の被覆樹脂層の前記
加工による歪み(残留応力)を緩和させると共に、分子
鎖配向を熱固定する熱処理が必要である。
【0021】この熱処理は、樹脂被覆層のガラス転移点
(Tg)を基準にして、一般にTg+50℃以上、特に
Tg+100乃至融点(Tm)−5℃の温度範囲で行う
のが好ましく、前記温度域よりも低温側では被覆ポリエ
ステル樹脂層の歪みの緩和が不十分となり、後加工性が
低下する傾向があり、一方、前記温度域よりも高温側で
は缶成形時に形成された分子配向が緩和されてしまう傾
向が大きくなり、缶胴部の耐食性、耐衝撃性が低下する
という問題が生ずるからである。尚、樹脂被覆層が2層
以上の多層の場合、最下層の樹脂被覆層が前記温度範囲
となるように熱処理を行うのが好ましい。この熱処理に
より、被覆ポリエステル樹脂層の耐熱性が向上すると共
に、金属基体への密着性も向上し、更にネックイン加工
やフランジ加工等の後加工に対する加工性、或いは耐フ
レーバー性も向上する。
【0022】なお、ポリエステル樹脂の結晶化には、大
別して熱結晶化と配向結晶化があり、本発明の樹脂被覆
シームレス缶のポリエステル樹脂層は、前記の後者の結
晶化特性を主に持つことが特徴である。すなわち、缶胴
部上部のポリエステル樹脂層は、シームレス缶成形時に
高度に配向結晶化されるとともに、その後行う熱処理に
より、粗大なラメラ型結晶を生起することなく、耐熱
性、耐衝撃性及び耐腐食性に優れた特性を付与させるこ
とができる。前記熱処理操作は、シームレス缶の成形時
に生じた缶耳部を切断するトリミング工程の前、或いは
後に行う。
【0023】必要な熱処理時間は、缶成形時において缶
胴部の被覆ポリエステル樹脂層に形成される分子配向の
程度によっても相違するが、一般には短時間で十分であ
り、具体的には1乃至10分間の間で行うことが好まし
い。本発明においては、熱処理後のシームレス缶は徐冷
しても良いし、急冷しても良い。本発明の樹脂被覆シー
ムレス缶の缶内面側の缶胴部12においては、加工によ
り分子配向が生じ、一方、缶底部11では、加工の程度
が厳しくないため、缶底部の被覆樹脂層は未配向の状態
のままであり、金属基体2表面と被覆樹脂層3との接着
界面は、実質上樹脂被覆金属板のままの形で温存されて
いるのである。この結果、被覆樹脂層と金属基体との接
着界面の密着性を維持し、シームレス缶の被膜下腐食
(UFC)を抑制し、また、被膜の耐衝撃性(耐デント
性)を高めるという作用効果が得られる。
【0024】本発明の樹脂被覆シームレス缶10は、絞
り成形し、続く曲げ伸ばしによる薄肉化絞り成形及び/
又はしごき加工により、缶胴部12の厚みが缶底部11
の厚みの20乃至85%、好ましくは40乃至80%の
厚みとなるように薄肉化されていることが好ましい。2
0%未満の厚みである場合は、缶胴部12内面のポリエ
ステル樹脂層に十分な分子配向を付与させることができ
ないと考えられるからであり、85%を超える厚みであ
る場合は実質的に薄肉化が達成できないからである。
【0025】本発明の絞り・薄肉化絞り成形及び/又は
しごき加工で形成される樹脂被覆シームレス缶10の缶
胴部12のポリエステル樹脂層3には、二種類の分子配
向が形成されている。第一のものは、絞り・薄肉化絞り
成形及び/又はしごき加工に際してポリエステル樹脂分
子が塑性流動に伴って缶軸(缶ハイト)方向に配向する
ものであり、これは繊維配向に近いものである。第二の
ものは、しごき加工特有のものであり、特許第2970
459号公報に記載されているように、ポリエステル分
子のベンゼン環面がフィルム面に平行に近い状態で配向
するものである。これらの分子配向は、いずれも樹脂被
覆シームレス缶の諸特性、特にデント性、耐食性の向上
に寄与する。
【0026】本発明において、缶内面側の缶胴部におけ
るポリエチレンテレフタレートを含有するポリエステル
樹脂層の歪みεが0.3%以下になるように熱処理する
ことは既に述べたとおりであるが、熱処理はまた、加工
により残留する内部歪みを抑制する作用効果を有する点
でも行うことが好ましい。
【0027】次に、本発明の樹脂被覆シームレス缶に用
いられるポリエステル樹脂は、金属基体状に薄いフィル
ム層を形成するに足る分子量を有するべきであり、その
固有粘度(IV)は0.6dl/g以上、特に0.65
乃至1.4dl/gの範囲にあるものが望ましい。固有
粘度(IV)が0.6dl/g未満であると、種々の熱
処理に耐える耐熱性、シームレス缶への成形加工、その
後の後加工に耐える加工性とを有していないからであ
り、また、前記数値範囲外のポリエステル樹脂は、十分
な機械的特性を有さず、腐食成分へのバリアー性、耐内
容物性に欠けるためである。なお、前記範囲内のポリエ
ステル樹脂は分子量が大きいため、半結晶化時間(τ)
が長く、後述する熱結晶化防止の点においても有用であ
る。
【0028】本発明において、缶胴部におけるポリエス
テル樹脂層を少なくとも一軸方向に配向した状態に維持
するには、ポリエステル樹脂として分子配向可能な樹脂
を使用し、シームレス缶への加工も缶胴部の樹脂層に少
なくとも一軸方向の配向が残存するように行うのが良
い。
【0029】このため、金属基体の缶内面側に積層され
ているポリエステル樹脂層には、ポリエチレンテレフタ
レートやポリブチレンテレフタレート、更にはポリエチ
レンナフタレート等のホモポリエステルを使用すること
が好ましい。しかし、前記ポリエステル樹脂層の到達し
得る最高結晶化度を下げることが、熱結晶防止、更には
耐衝撃性や加工性の点で望ましい。このため、原料ポリ
エステル中にエチレンテレフタレート以外の共重合エス
テル単位を導入することが好ましい。この共重合エステ
ル単位の導入は、共重合を行うことで可能である。更に
ポリマーブレンド、或いは多層とすることによっても可
能である。共重合ポリエステルでは、ホモポリエステル
に比してシームレス缶への成形時に生じる一軸配向を緩
和させる傾向がある。
【0030】本発明に用いるポリエステル樹脂層は多層
の樹脂層から成っていても良く、表層がイソフタル酸含
有量15モル%以下のポリエチレンテレフタレート/イ
ソフタレートから成り、下層がイソフタル酸含有量8乃
至25モル%で、しかも表層のそれよりも多いポリエチ
レンテレフタレート/イソフタレートであることが望ま
しい。このような2層とすることにより、金属基体との
密着性、高加工性、耐食性、耐衝撃性、耐フレーバー吸
着性等が付与される。
【0031】また、本発明の樹脂被覆シームレス缶は、
缶胴部上部のポリエステル樹脂層の、密度法による結晶
化度が20乃至55%の範囲にあることが好ましい。結
晶化度が20%未満であると、金属基体との密着性、耐
食性、耐衝撃性が劣り、内容物のフレーバー成分の吸着
量が増える傾向にあり、シーレス缶として、好ましくな
い。一方、55%を超えると、金属基体との密着性に劣
り、また加工時にポリエステル樹脂層に割れが入る可能
性が大になるからである。密度法による結晶化度(X
c)は、一般的に下記(2)式で表される。 Xc=[dc(d−da)]/[d(dc−da)]×100…(2) (2)式中、dcは完全結晶層の密度=1.455g/
cmであり、daは完全非晶層の密度=1.335g
/cmであり、dは試料の密度(g/cm)であ
る。
【0032】ポリエステル樹脂層には、それ自体公知の
樹脂用配合剤、例えば立体障害性フェノール類等の酸化
防止剤、非晶質シリカ等のアンチブロック剤、二酸化チ
タン(チタン白)等の顔料、各種帯電防止剤、滑剤等を
公知の処方に従って配合することができる。
【0033】[樹脂被覆金属板]次に、本発明の樹脂被
覆シームレス缶に用いられる樹脂被覆金属板について図
1〜図3を用いて説明する。本発明の樹脂被覆シームレ
ス缶10に用いる樹脂被覆金属板1は、未配向のポリエ
ステル樹脂層3を金属基体2に積層したものである。未
配向のポリエステル樹脂層を用いる理由は、溶融樹脂の
押し出しコート法や未延伸フィルム(キャストフィル
ム)のラミネート法を用いることによって、少ない工程
数で、しかも安価に樹脂被覆金属板を製造できるためで
ある。更に、樹脂被覆金属板1上に形成されたポリエス
テル樹脂層3が未配向状態であるため、絞り・薄肉化絞
り成形及び/またはしごき加工性に優れており、缶胴部
12を高度に薄肉化することができ、また、シームレス
缶10のハイトを大きくすることも容易であるからであ
る。また、従来缶用途に用いられていた二軸延伸フィル
ムを用いないのは、加工が難しくコストアップにつなが
るという理由からである。
【0034】本発明に用いる樹脂被覆金属板1は、金属
基体2に分子配向可能なポリエステル樹脂層3を未延伸
の状態で熱接着させることにより製造される。即ち、シ
ームレス缶10の缶内面側のポリエステル樹脂層3の歪
みεを0.3%以下にするためには、ポリエステル樹脂
層3を実質上未配向の状態でラミネートすることが重要
となる。
【0035】次に、樹脂被覆金属板1を形成する金属基
体2、ポリエステル樹脂層3について説明する。本発明
に用いる樹脂被覆金属板1の断面構造の一例を示す図2
において、樹脂被覆金属板1は、金属基体2と少なくと
も缶内面側に位置するポリエステル樹脂層3とからなっ
ている。また、樹脂被覆金属板1には外面被膜4が形成
されていることも好ましく、この外面被膜4はポリエス
テル樹脂層3と同様のものであっても良いし、また、通
常の缶用塗料や樹脂フィルムであっても良い。
【0036】樹脂被覆金属板1の断面構造の他の例を示
す図3において、缶内面となる側のポリエステル樹脂層
3の上に内表面層5を設けることも好ましい。例えば、
内面表層が、内容物中の香味成分に対して吸着性の少な
い、テレフタル酸成分やイソフタル酸成分から誘導され
たポリエステル乃至コポリエステルであり、下層が、金
属基体に対する接着性に優れたイソフタル酸などの共重
合量の多いコポリエステルであることが好ましい。
【0037】本発明に用いる樹脂被覆金属板1は、前記
ポリエステル樹脂層3を溶融状態で金属基体2上に押し
出しコートして、熱接着させることにより製造すること
ができる。また、別の製造方法としては、予め製膜され
たポリエステル樹脂の未延伸フィルム(キャストフィル
ム)を金属基体2上に熱接着させることによっても製造
することができる。本発明に使用するポリエステル樹脂
層3の厚みは、全体として2乃至60μm、特に3乃至
40μmの範囲にあるのが金属の保護効果、加工性の点
で好ましい。また、必要に応じて、接着剤、接着用プラ
イマーを用いても良い。
【0038】[金属基体]金属基体としては、各種表面
処理鋼板やアルミニウム等の軽金属板を使用することが
できる。表面処理鋼板としては、冷圧延鋼板を焼鈍後二
次冷間圧延し、亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメッ
キ、ニッケル錫メッキ、電解クロム酸処理、クロム酸処
理等の表面処理の一種または二種以上行ったものを用い
ることができる。好適な表面処理鋼板の一例は、電解ク
ロム酸処理鋼板であり、特に10乃至200mg/m
の金属クロム層と、1乃至50mg/m(金属換算)
のクロム酸化物層を備えたものであり、このものは、樹
脂被膜や塗膜などとの密着性に優れており、耐腐食性に
も優れている。表面処理鋼板の他の例は、0.5乃至1
1.2g/mの錫メッキ量を有する硬質ブリキ板であ
る。このブリキ板の上層には、金属クロム換算で、クロ
ム量が1乃至30mg/mとなるようなクロム酸処理
或いはクロム酸/リン酸処理が行われていることが望ま
しい。更に、他の例としては、アルミニウムメッキ、ア
ルミニウム圧接等を施したアルミニウム被覆鋼板も用い
ることができる。
【0039】軽金属板としては、アルミニウム板やアル
ミニウム合金板を使用することができる。耐食性と加工
性との点で優れるアルミニウム合金板は、Mn:0.2
乃至1.5重量%、Mg:0.8乃至5重量%、Zn:
0.25乃至0.3重量%、及びCu:0.15乃至
0.25重量%、残部がAlの組成を有するものが好ま
しい。これらの軽金属板の上層にも、金属クロム換算で
クロム量が20乃至300mg/mとなるようなクロ
ム酸処理或いはクロム酸/リン酸処理が施されているこ
とが望ましい。軽金属板に対する表面処理は、水溶性フ
ェノール樹脂を併用して行うこともできる。
【0040】金属基体の素板厚みは、金属の種類、シー
ムレス缶の用途或いはサイズによっても相違するが、一
般に0.10乃至0.50mmの厚みを有するのが好ま
しく用いられる。中でも、表面処理鋼板の場合は、0.
10乃至0.30mmの厚みのものが好ましく、また、
軽金属板の場合は、0.15乃至0.40mmの厚みを
有するものが好ましい。
【0041】
【実施例】本発明を、次の実施例を用いてさらに詳細に
説明する。 [ポリエステル樹脂被覆シームレス缶の作製]以下に示
すように樹脂被覆シームレス缶を作成した。樹脂の組成
等は表1に示した。
【0042】[実施例1]押出・製膜装置を用いて、融点
(Tm)が220℃のイソフタル酸共重合ポリエチレンテ
レフタレート(PET/IA)樹脂の無延伸フィルムを作
製し、250℃に加熱したアルミ合金板(板厚0.3m
m、A3004材、クロム酸/リン酸表面処理)の両面
に貼り付けて樹脂被覆金属板を作製した。この樹脂被覆
金属板から、常法により円板状のブランクを打ち抜いて
浅絞りのカップを成形し、さらに常法による再絞り及び
しごき加工により缶胴の薄肉化率が60%の樹脂被覆シ
ームレス缶を作製し、前記樹脂融点(Tm)以下の200
℃にて熱処理を行った。
【0043】[実施例2]実施例1において、融点(Tm)
が220℃のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタ
レート(PET/IA)樹脂をベースとし、PBTをブ
レンドした無延伸フィルムを作製した以外は、同様の条
件で樹脂被覆シームレス缶を作製し、熱処理を行った。
【0044】[比較例1]実施例1において、同様の条件
で樹脂被覆シームレス缶を作製し、樹脂融点(Tm)以上
の240℃にて熱処理を行った。
【0045】[比較例2]実施例2において、同様の条件
で樹脂被覆シームレス缶を作製し、樹脂融点(Tm)以上
の240℃にて熱処理を行った。
【0046】[比較例3]実施例1において、融点(Tm)
が220℃のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタ
レート(PET/IA)樹脂の二軸延伸フィルムとし、
同様の条件で樹脂被覆シームレス缶を作製した。しかし
ながら、加工時に缶胴部でデラミネーションの発生が見
られ、缶胴におけるポリエステル樹脂層の密着性、耐デ
ント性、耐腐食性評価にまで至らなかった。
【0047】[比較例4]実施例2において、融点(Tm)
が220℃のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタ
レート(PET/IA)樹脂をベースとし、PBTをブ
レンドした二軸延伸フィルムを用いて同様の条件で樹脂
被覆シームレス缶を作製した。しかしながら、加工時に
缶胴部でデラミネーションの発生が見られ、缶胴におけ
るポリエステル樹脂層の密着性、耐デント性、耐腐食性
評価にまで至らなかった。
【0048】前記実施例及び比較例で作製した樹脂被覆
シームレス缶を、以下のような方法で評価した。
【0049】[収縮量測定]図4に示すように、本発明
の樹脂被覆シームレス缶において、金属基材圧延目に対
し、0°方向(21)、90°方向(22)の缶胴部か
ら、缶高さ方向ストレート部分(TwL)の中間点24が
サンプルの中心点となるように、幅15mm×長さ90
mmのサンプル23を切り出した。次に、図5に示すよ
うに、市販のOHPフィルム30(厚み0.1mm)も
予め幅15mm×長さ90mmに切断し、樹脂被覆金属
板1の評価面である缶内面側に、標点間距離(L0)が
70mmとなるように正確に、市販の両面テープ31に
て貼り合わせた。貼合されたサンプルの缶外面側に相当
する部分にフィルムや印刷インキが載っている場合はそ
れを硫酸にて除去した後、10wt%濃度の塩酸水中で
基材のみを溶かした。基材が完全に溶けたら、単離した
缶内面側のフィルムを静かに水洗し、乾燥させた。図6
に示すように、乾燥後、単離した内面側内面側樹脂フィ
ルム32の収縮が見られると、OHPフィルム30は弛
み、単離した内面側樹脂フィルム32を弦とした弓なり
状となる。この状態のサンプルを引張試験機により引っ
張ると、図7のように、初めは単離した樹脂フィルム3
2のみが引張られ、その後引っ張られた単離樹脂フィル
ムとOHPフィルムの長さが等しくなる点を過ぎると、
単離樹脂フィルムとOHPフィルムとが一緒に引っ張ら
れて荷重曲線が立ち上がる。この単離樹脂フィルム引張
開始点(A)から荷重変曲点(B)までの変位量を単離
樹脂フィルムの収縮量(ΔL)と定義し、標点間距離(L
0)との比で表したものを歪み(ε)とした。なお、引
張速度は、1mm/minとした。結果を、表1に示し
た。
【0050】[傷つきレトルト評価]図8に示すよう
に、缶胴ストレート部長さ(TwL)の中間点24と缶ネ
ック部25の全周にキズ26を入れ、125℃で30分
間のレトルト処理をした。評価方法は、キズ26を付け
た部分のデラミネーションの発生を目視観察した。評価
結果を表1に示した。
【0051】[缶胴モデルデント評価]缶胴ストレート
部長さ(TwL)の中間点に径約16mmの鋼球を置き、
1kgの円柱状錘を高さ20mmから落下させたときの
デントERVを測定した。その結果、デントERVが
1.0mA以下で良好な値を示した。結果を、表1に示
した。
【0052】[クロスカット腐食評価]図9に示すよう
に、缶胴ストレート部長さ(TwL)の中間点24を中心
に、金属基材圧延目に対し、0°方向(21)、90°
方向(22)において、長さ30mmのクロスカット2
7を市販のカッターにて入れた。その後、クエン酸0.
002mol/l、クエン酸三ナトリウム0.002m
ol/l、塩化ナトリウム0.02mol/lのモデル腐
食液中に、50℃で2週間浸漬経時した。評価方法は、
腐食状況を目視確認した。評価結果を表1に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
【発明の効果】本発明の樹脂被覆シームレス缶によれ
ば、缶胴部内面側のポリエステル樹脂層の歪み(ε)を
0.3%以下となるように制御することにより、優れ
た、耐腐食性、耐衝撃性等を有する樹脂被覆シームレス
缶とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の樹脂被覆シームレス缶の参考図であ
る。
【図2】本発明に用いる樹脂被覆金属板の参考断面図で
ある。
【図3】本発明に用いる他の樹脂被覆金属板の参考断面
図である。
【図4】本発明の実施例における評価方法を示す参考図
である。
【図5】本発明の実施例における評価方法を示す参考図
である。
【図6】本発明の実施例における評価方法を示す参考図
である。
【図7】本発明の実施例における評価方法を示す参考図
である。
【図8】本発明の実施例における評価方法を示す参考図
である。
【図9】本発明の実施例における評価方法を示す参考図
である。
【符号の説明】
1: 樹脂被覆金属板 2: 金属基体 3: 熱可塑性樹脂層(ポリエステル樹脂層) 4: 外面被膜 5: 内表面層 10: シームレス缶 11: 缶底部 12: 缶胴部 13: ネック部 14: フランジ部 21: 金属板圧延目に対する0°方向 22: 金属板圧延目に対する90°方向 23: サンプル 24: 中間点 26: キズ 27: クロスカット 30: OHPフィルム 31: 両面テープ 32: 内面側樹脂フィルム
フロントページの続き Fターム(参考) 3E061 AA16 AB13 AC09 BA01 BB14 DA02 3E062 AA04 AB14 AC09 JA07 JB11 JC02 JD03 4F100 AB01A AK41B AK41C AK41J AK41K AK42B AK42C AK42J BA02 BA03 BA10A BA10B BA10C BA13 DA01 GB16 JA06B JB02 JK10 JK20B YY00B YY00C

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属基体の表面にポリエチレンテレフタレ
    ートを含有するポリエステル樹脂層を被覆した樹脂被覆
    金属板から成る樹脂被覆シームレス缶において、下記
    (1)式で表される缶胴内面側のポリエステル樹脂層の
    歪みεが0.3%以下であることを特徴とする樹脂被覆
    シームレス缶。 ε(%)=(ΔL/L0)×100・・・(1) L0:缶胴部ポリエステル樹脂層の高さ方向の初期長さ ΔL:L0該当部分を金属基体から剥離した時の収縮量
  2. 【請求項2】前記樹脂被覆金属板が、未配向のポリエス
    テル樹脂層を金属基体に設けたものであることを特徴と
    する請求項1に記載の樹脂被覆シームレス缶。
  3. 【請求項3】前記樹脂被覆シームレス缶が、絞り・曲げ
    伸ばし及び/またはしごき成形により、缶胴部の厚みが
    缶底部の厚みの20乃至85%になるように薄肉化され
    ていることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂
    被覆シームレス缶。
  4. 【請求項4】前記ポリエステル樹脂層を形成するポリエ
    ステル樹脂が、固有粘度0.6(dl/g)以上である
    ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の樹脂
    被覆シームレス缶。
  5. 【請求項5】前記ポリエステル樹脂層が2層から成り、
    表層(A)がイソフタル酸含有量15モル%以下のポリ
    エチレンテレフタレート/イソフタレートから成り、下
    層(B)がイソフタル酸含有量8乃至25モル%で、し
    かも表層(A)のイソフタル酸含有量よりも多いポリエ
    チレンテレフタレート/イソフタレートから成ることを
    特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の樹脂被覆シ
    ームレス缶。
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