JP2002524099A5 - - Google Patents

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Description

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ECRTP/DEP−1受容体活性を調節する物質の有効量を含む、対象における脈管形成を調節するための組成物。
【請求項2】 ECRTP/DEP−1受容体活性を調節する物質の有効量を含む、対象における内皮細胞の移動および増殖を調節するための組成物。
【請求項3】 物質がECRTP/DEP−1受容体と選択的に結合するモノクローナル抗体を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】 モノクローナル抗体が、ECRTP/DEP−1受容体のエクトドメインと選択的に結合する、分子量約150kDaのモノクローナル抗体ECRTPAb−1を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】 モノクローナル抗体のECRTP/DEP−1受容体活性調節量が対象の体重kg当たり約0.1から約300mgまでの範囲である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】 モノクローナル抗体のECRTP/DEP−1受容体活性調節量が対象の体重kg当たり約0.2から約200mgまでの範囲である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】 モノクローナル抗体のECRTP/DEP−1受容体活性調節量が対象の体重kg当たり約0.5から約20mgまでの範囲である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】 モノクローナル抗体が、ATCC受託番号HB12570のハイブリドーマ細胞系統によって産生されるモノクローナル抗体の免疫反応特性をさらに有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】 モノクローナル抗体が、ATCC受託番号HB12570のハイブリドーマ細胞系統によって産生されるモノクローナル抗体である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】 抗体がヒト化されている、請求項3に記載の組成物。
【請求項11】 ヒト化抗体が、ECRTP/DEP−1受容体のエクトドメインと選択的に結合する、分子量約150kDaのモノクローナル抗体ECRTPAb−1を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】 ヒト化抗体が、ATCC受託番号HB12570のハイブリドーマ細胞系統によって産生されるモノクローナル抗体の免疫反応特性をさらに有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】 モノクローナル抗体が、ATCC受託番号HB12570のハイブリドーマ細胞系統によって産生されるモノクローナル抗体である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】 対象が哺乳類である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項15】 哺乳類がヒトである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】 該脈管形成が固形腫瘍における脈管形成を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】 脈管形成が対象の炎症を起こした脈管形成組織における脈管形成を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】 ECRTP/DEP−1受容体と選択的に結合する精製抗体、またはその断片もしくは誘導体。
【請求項19】 ECRTP/DEP−1受容体のエクトドメインと選択的に結合する、請求項18に記載の精製抗体。
【請求項20】 モノクローナル抗体、またはその断片もしくは誘導体である、請求項19に記載の精製抗体。
【請求項21】 ECRTP/DEP−1受容体のエクトドメインと選択的に結合する、分子量約150kDaのモノクローナル抗体ECRTPAb−1である、請求項20に記載の精製抗体。
【請求項22】 ATCC受託番号HB12570のハイブリドーマ細胞系統によって産生されるモノクローナル抗体の免疫反応特性をさらに有する、請求項21に記載の抗体。
【請求項23】 モノクローナル抗体が、ATCC受託番号HB12570のハイブリドーマ細胞系統によって産生されるモノクローナル抗体である、請求項22に記載の抗体。
【請求項24】 抗体がヒト化されている、請求項18に記載の抗体。
【請求項25】 ヒト化抗体が、ECRTP/DEP−1受容体のエクトドメインと選択的に結合する、分子量約150kDaのモノクローナル抗体ECRTPAb−1を含む、請求項24に記載の抗体。
【請求項26】 ヒト化抗体が、ATCC受託番号HB12570のハイブリドーマ細胞系統によって産生されるモノクローナル抗体の免疫反応特性をさらに有する、請求項25に記載の抗体。
【請求項27】 モノクローナル抗体が、ATCC受託番号HB12570のハイブリドーマ細胞系統によって産生されるモノクローナル抗体である、請求項26に記載の抗体。
【請求項28】 医薬上許容される希釈剤または賦形剤中の、請求項18に記載の抗体。
【請求項29】 ECRTP/DEP−1受容体のリガンドを単離する方法であって、
(a)リガンドを有する細胞または細胞溶解物をECRTP/DEP−1受容体と接触させ;さらに
(b)ECRTP/DEP−1受容体と結合するリガンドを単離する;
というステップを含む方法。
【請求項30】 リガンドを有する細胞が、
(a)ECRTP/DEP−1受容体を標識し;
(b)標識されたECRTP/DEP−1受容体を用いて細胞培養物をスクリーニングし;さらに
(c)多量の標識ECRTP/DEP−1受容体と結合する細胞を単離する;
というステップによって同定される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】 細胞を溶解して、細胞溶解物を、カラム内で固相マトリックスと結合したECRTP/DEP−1受容体を含むカラムに通すことによってリガンドが単離される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】 リガンドと結合する細胞由来のcDNAライブラリーを構築し;リガンドの結合を示さない細胞系統にcDNAライブラリーをトランスフェクトし;新たに獲得した特異的結合に関して細胞系統をスクリーニングし;特異的結合を示す細胞からDNAを単離し;さらに、単離したDNAを配列決定してリガンドのDNA配列を決定することによってリガンドが単離される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】 ECRTP/DEP−1受容体がECRTP/DEP−1受容体と免疫グロブリンとを結合させることによって標識される、請求項29に記載の方法。
【請求項34】 ECRTP/DEP−1受容体−リガンド−免疫グロブリン複合体の免疫沈降によってリガンドが単離される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】 ECRTP/DEP−1受容体のリガンドがフローサイトメトリーを用いて単離される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】 精製および単離されたECRTP/DEP−1受容体リガンド。
【請求項37】 ECRTP/DEP−1受容体の活性を調節する化合物を同定するスクリーニングアッセイを行う方法であって、
(a)ECRTP/DEP−1受容体を発現する細胞の試験培養物および対照培養物の複製物を確立し;
(b)試験培養物の細胞には候補化合物を投与するが、対照培養物には投与せず;
(c)試験培養物および対照培養物の細胞のECRTP/DEP−1受容体活性を測定し;さらに
(d)試験培養物について測定されたECRTP/DEP−1受容体活性が対照培養物について測定されたECRTP/DEP−1受容体活性よりも高いまたは低い場合に、該候補化合物が細胞においてECRTP/DEP−1受容体活性を調節するものと決定する;
というステップを含む方法。
【請求項38】 ECRTP/DEP−1受容体活性が内皮細胞の移動および増殖の調節、密度により誘導される増殖停止の調節、脈管形成の調節、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】 請求項37に記載のアッセイで用いるのに好適な組換え細胞系統。
【請求項40】 細胞を含まない系においてECRTP/DEP−1受容体の活性を調節する化合物を同定するスクリーニングアッセイ法であって、
(a)ECRTP/DEP−1受容体とリガンドとを含む対照系を確立し(ここで、該ERTP/DEP−1受容体は該リガンドと結合できる);
(b)ECRTP/DEP−1受容体、リガンドおよび候補化合物を含む試験系を確立し;
(c)対照系および試験系においてECRTP/DEP−1受容体とリガンドの結合親和性を測定し;さらに
(d)試験系について測定された結合親和性が対照系について測定された結合親和性より低いまたは高い場合に、候補化合物が細胞を含まない系においてECRTP/DEP−1受容体活性を調節するものと決定する;
というステップを含む方法。
【請求項41】 ECRTP/DEP−1受容体活性が内皮細胞の移動および増殖の調節、密度により誘導される増殖停止の調節、脈管形成の調節、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】 リガンドがECRTP/DEP−1受容体と選択的に結合する抗体を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】 リガンドがモノクローナル抗体である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】 請求項40に記載のアッセイで用いるのに好適な組換え細胞系統。
【請求項45】 対象の組織、すなわち内皮細胞の望ましくない増殖を有する組織に、
(a)選択された治療薬に機能し得る形で連結された抗体の生物学的に有効な量を導入し、該抗体は内皮細胞の表面のECRTP/DEP−1受容体と選択的に結合し、それにより対象体内のECRTP/DEP−1受容体と抗体とを接触させ;さらに
(b)ECRTP/DEP−1受容体と組成物との接触によって組織に治療組成物を送達する;
というステップを含む方法により送達される、治療組成物。
【請求項46】 組織が腫瘍組織を含み、治療薬が化学療法薬を含む、請求項45に記載の組成物。
VEGF抗体を中和すると出生後のマウス糸球体毛細血管の発達が中断される(Kitamoto et al., J Clin Invest 99:2351-2357 (1997))。マウスのPDGFβ受容体またはPDGFβ遺伝子のいずれかの欠損は糸球体間質細胞前駆体の補充の欠陥を引き起こし、糸球体発達不全となる(Soriano, P., Genes Dev 8:1888-1896 (1994); Leveen et al., Genes Dev 8:1875-1887 (1994))。TGFβ1発現およびII型TGFβ受容体は胚の卵黄嚢の脈管発達(腎臓発達に先立つ)に明らかに重要であり、II型受容体はin vitroにおいてウシ糸球体に由来する内皮細胞の毛細血管の形態形成を媒介する(Choime et al., J Biol Chem 270:21144-21150 (1995))。
本発明のなおさらにもう1つの目的は、細胞表面で形成される密度停止または接触停止シグナルを媒介する受容体−リガンド相互作用を調節する化合物を同定することにある。
図3は、ヒト腎臓脈管構造におけるECRTP/DEP−1受容体およびVEカドヘリンの共焦点局在性を示す。アセトンで固定した腎臓切片を、ECRTPAb−1およびVEカドヘリンに対するポリクローナルヤギ抗体で同時標識した。結合した抗体を、フルオレセイン結合抗マウスIg抗体(パネルA、B、E、F)、またはローダミン結合抗ヤギIg抗体(パネルC、D、E、F)で検出した。ECRTPAb−1(緑色)染色は大動脈および糸球体毛細血管の内皮膜全体に分布し(A、B)、一方、VEカドヘリン標識(赤色)は内皮接合部に限定されていた(C、D)。重複する共焦点画像により、内皮接合部の内側でECRTPがVEカドヘリンと共存することが証明された(倍率600倍)。
図4は、発達中のマウス糸球体におけるECRTP/DEP−1受容体の発現を示す一連の写真である。胎児期14日(A)、16日(B)、出生後6日(C)、および成体マウス(D)のクリオスタット腎臓切片を、実施例1の方法に記載したようにECRTPAb−1で免疫標識した。パネルAとBは、ECRTPAb−1が間充織領域で分散した細胞と結合し(矢印)、コンマ型の糸球体の血管の裂け目ヘ移動する内皮前駆細胞(矢印)と結合し、さらに毛細血管段階の糸球体内皮(G)と結合する。パネルCとDは、成熟した腎臓内でECRTPAb−1が糸球体(G)、動脈(A)、および管周毛細血管(矢印)の内皮を選択的に標識している。(元の倍率;A)400倍;B)200倍;C)200倍;およびD)350倍)。
図6Aは、同一数のヒト腎臓微小血管内皮細胞(HRMEC)を、直径100mm(1倍)、60mm(2.9倍)または35mm(8.1倍)のプラスチック皿の増殖培地で培養し、培養時点の細胞密度に示した倍数の違いを与えたことを示す線グラフである。培地は矢印で示した時点で増殖培地と交換した。細胞はCoulterカウンターで計数し、サンプルは4反復で示している。細胞の増殖は単一細胞の倍加後8.1倍の密度、および培養細胞の約3回の倍加後2.9倍の密度で停止した。
図6Bは、示した時間示した密度で培養した細胞を溶解し、さらにECRTP/DEP−1受容体に起因し得るものを含む受容体チロシンホスファターゼ活性をレクチン親和性クロマトグラフィーにより回収し、実施例2の方法に記載したようにチロシンホスファターゼ阻害剤のオルトバナジンナトリウム(VO、100μM)が存在する場合と存在しない場合でアッセイしたことを示す棒グラフである。
図7は、増加した細胞密度が免疫沈降するECRTP/DEP−1受容体の活性(量ではない)を増加させることを示す放射能写真および棒グラフである。同一数のHRMECを図6のように示された細胞密度で培養した。実施例2の方法に記載したように36時間培養した後、単一特異性アフィニティー精製ラビットポリクローナル抗体を用いて、1mMペルオキシバナジン(+VO)または溶媒(−VO)で10分間処理した細胞から直ちにECRTP/DEP−1受容体を免疫沈降させた。回収したECRTP/DEP−1受容体抗原を単一特異的抗体を用いた免疫ブロットにより定量化し、その内因性ホスホチロシン含量を4G10モノクローナル抗体を用いたホスホチロシン免疫ブロットにより評価した。免疫沈降した試料中のホスファターゼ活性を、pNPPを基質として用いて記載したようにオルトバナジウム酸ナトリウムが存在する場合(+VO)と存在しない場合(−VO)で評価した。データは生成物の光学濃度を3反復のサンプル+/−標準誤差で示している。
図8Aは、ECRTP/DEP−1 cDNAを持つHMRECの一時的感染が低い細胞密度で増殖を阻害させることを示すグラフである。示されたように1.7μg pSRα(ベクター対照)またはHAエピトープタグをつけた(血球凝集素)pSRα−ECRTP/DEP−1(pSRα−ECTRP)、および、実施例2の方法に記載したように感染した細胞のBrdU標識を数えるために、0.4μg pEGFP(Clontech)でおよそ3X10のHRMECを同時感染させた。24時間で感染した細胞は示された数でp35培養皿に再び戻された。36時間後、S期の細胞を実施例2の方法に記載したようにBrdUで30分間標識し、+GFP陽性細胞をBrdUの組み込みについて数えた。示しされたデータは4反復の測定値についての平均値+/−標準誤差を表す。
図8Cは、図8のように0時点で同数のHRMECを培養し、示された濃度で抗体またはFab断片を加えた場合のデータポイントプロットである。反復プレートを1日目に回収して各条件でプレーティング効率が一様かどうかを確認し、6日目に細胞の増殖をそれぞれ評価した。データポイントは5反復の平均値+/−標準誤差値を表す。
図9Aは、HRMEC単層が示されたように一時的にプラスミドpSRαECRTP/DEP−1/HA、またはpSRαEphB1/HAに感染したことを示す一連の写真である。48時間後、密集単層に「創傷」を作り、その後30時間かけて塞いだ。その後単層をモノクローナル血球凝集素抗体12CA5で染色し、高レベルのECRTP/DEP−1/HAまたはEphB1/HAを一時的に発現する細胞の位置をそれぞれ検出した。唯一ECRTP/DEP−1過剰発現細胞だけが稀に移動して「創傷」を塞いだ。
図9Bは、クラス適合IgG対照(IgG、10μg/ml)、ECRTPAb1(10μg/ml)、またはECRTPAb1のFab断片(3μg/ml、モル濃度は同じ)が含む示された抗体または断片の存在下、無添加(NA)またはホルボールミリステートアセテート(20ng/ml)を添加した清培地に交換する0時にHRMEC密集単層に作られた直径300〜420μmの「創傷」の分析を示す線グラフである。3反復の創傷を用いて示された時間に顕微鏡画像をなし、Bioquant画像解析ソフトを用いて自動的取り込み手順により、残りの「創傷」部位を算定してはじめの創傷の分数として表している。各データポイントは3回の測定値の平均値+/−標準誤差を表す。
図9Cは、図9Bと同様のアッセイ手順で得られたデータを解析した線グラフである。同じアッセイ手順を用いて、3の独立した時点でIgG対照、ECRTPAb1、またはECRTPAb1/Fabに曝した細胞において測定した平均値の直線回帰により移動率を計算した。r値はプロットした各データポイントについて0.90以上であった。白抜きの四角(□)は刺激を受けない細胞の閉塞に対する移動率を示す。
発明の詳細な説明
種やcDNA起源にもよるが、DEP−1(密度増強ホスファターゼに関する)、ECRTP、HPTPη、CD148、BYPと呼ばれる哺乳類貫膜タンパク質遺伝子産物は最初に繊維芽細胞からクローン化され、その後赤血球始原細胞、巨核球および血小板、リンパ球、多形核白血球および血小板をはじめとするあらゆる造血系統(de la Fuente-Garcia et al., Blood 91:2800-2809 (1998))で、また極めて著しくは内皮細胞で発現されることが分かっている(以降本明細書では、「ECRTP/DEP−1受容体」と呼ぶ)(Borges et al., Circulation Research 79:570-580 (1996), Schoecklmann et al., J Am Soc Nephrol 5:730 (1994)(abstract))。この遺伝子産物は赤血球始原細胞の分化を促進すること(Kumet et al., J Biol Chem 271:30916-30921 (1996))、他のシグナル伝達タンパク質と架橋された場合にリンパ球機能を調節すること(de la Fuente-Garcia et al., Blood 91:2800-2809 (1998))、さらにタンパク質を過剰発現する乳癌細胞系統のクローン発現を阻害すること(Keane et al., Cancer Research 56:4236-4243 (1996))が分かっている。
本発明によれば、ECRTP/DEP−1受容体のエクトドメインエピトープに特異的な抗体がホルボールミリステートアセテートおよびウシ胎児血清の各々に応答して内皮細胞の移動および増殖を阻害することが証明された。内皮細胞の増殖および移動を阻害する生物学的活性は脈管形成阻害活性の強力な指標となるとの認識がなされている。従って、ECRTP/DEP−1受容体はまた、脈管形成を阻害する阻害シグナルのメディエーターでもある。
長期特許法条約に従い、特許請求の範囲を含む本願では単数形、1個またはそれ以上を意味するものとした。
B.脈管形成の阻害法
本発明は組織の脈管形成を阻害し、それにより脈管形成に依存する組織における事象を調節する方法を提供する。一般に本方法は、脈管形成を調節する量のECRTP/DEP−1受容体モジュレーターを含む組成物を組織に投与することを含む。
さらなる関連の実施態様では、治療される組織は固形腫瘍、転移症、皮膚癌血管腫、または血管繊維腫その他の癌患者の腫瘍組織であり、阻害される脈管形成は腫瘍組織の新血管新生が存在する腫瘍組織の脈管形成である。
本方法はまた特に転移の形成に対して特に有効である。なぜならば(1)転移性癌細胞が原発腫瘍を出ていくためには、転移の形成に原発腫瘍の脈管形成が必要とされるからであり、また(2)二次的な部位におけるその確立には転移の増殖を助長する新血管新生が必要であるからである。
そこに溶解または分散した有効成分を含む薬理組成物の製造は当業者ならば十分理解しており、製剤を基に限定する必要はない。典型的にはかかる組成物は溶液または懸濁液のいずれかとして注射可能なように調製されるが、使用前に液体で溶液または懸濁液とするのに好適な固体状のものを調製することもできる。またこの製剤は乳化させてもよい。
生理学上許容される担体は当技術分野で十分に公知である。液体担体の例としては、有効成分と水の他には物質を含まない、または生理的pH値でリン酸ナトリウムなどのバッファー、生理食塩水、またはリン酸緩衝生理食塩水のような双方を含む滅菌水溶液がある。またさらに、水性担体は1を超える緩衝塩、ならびに塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどの塩、デキストロース、ポリエチレングリコールその他の溶質を含んでもよい。
治療組成物は脈管形成を調節する量の本発明のECRTP/DEP−1受容体モジュレーターを含み、典型的にはモジュレーターが治療組成物総重量の少なくとも0.1重量%の量を含むように製剤される。重量%とは組成物全体に対するモジュレーターの重量比である。従って、例えば、0.1重量%は全組成物100gにつき阻害剤0.1gとなる。
D.ECRTP/DEP−1受容体モジュレーター
ECRTP/DEP−1受容体モジュレーターは、組織における脈管形成の調節をはじめ、組織におけるECRTP/DEP−1受容体活性を調節するために本方法で使用される。このように本明細書において「調節する」および「モジュレーター」は組織においてECRTP/DEP−1受容体活性を阻害する、遮断する、促進する、刺激する、作動させる、拮抗させる、またはそうでなければ影響を及ぼすことを包含すると解釈することを意味する。
「類似体」には、ECRTP/DEP−1受容体天然リガンドの配列と実質的に同一のアミノ酸残基配列を有するポリペプチドのいずれもが含まれ、そこでは1以上の残基が機能的に同等な残基で保存的に置換されており、本明細書に記載のECRTP/DEP−1受容体モジュレーター活性を示す。保存的置換の例としてはイソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなどの非極性(疎水性)残基あるものから別のものへの置換;アルギニンとイソロイシン間、グルタミンとアスパラギン間、グリシンとセリン間などの極性(親水性)残基のあるものから別のものへの置換;リジン、アルギニンまたはヒスチジンなどの塩基性残基のあるものから別のものへの置換;またはアスパラギン酸またはグルタミン酸などの酸性残基のあるものから別のものへの置換が挙げられる。
「抗体または抗体分子」とは、本明細書では種々の文法形態で、免疫グロブリン分子および/または免疫グロブリン分子の免疫学的に有効部分、すなわち抗体結合部位またはパラトープを含む分子の集団をさす集合名詞として用いられる。「抗体結合部位」とは、抗原と特異的に結合する重鎖および軽鎖可変領域および超可変領域からなる抗体分子の構造部分である。
ハイブリドーマを調製するために使用されるミエローマ細胞系統はリンパ球と同じ種に由来するものであることが好ましい。典型的には129GIX+系統のマウスが好ましい哺乳類である。本発明で用いられる好適なマウスミエローマとしては、ATCC, Manassas, VirginiaからそれぞれCRL1580およびCRL1581として入手できる、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン感受性(HAT)細胞系統P3X63−Ag8.653、およびSp2/0−Ag14が挙げられる。
ヒト化されたモノクローナル抗体は、特に治療上ヒトに使用できる限りは、マウスモノクローナル抗体を超える特定の利点をもたらす。具体的には、ヒト抗体は循環から「外来」抗原ほどすぐには除去されず、外来抗原および外来抗体と同じ様式では免疫系を活性化しない。「ヒト」化抗体を調製する方法は一般に当技術分野で公知であり、本発明の抗体に容易に適用できる。従って、本発明は1つの実施態様において、抗原と結合する抗体の能力を実質的に妨げることなくヒト免疫系の成分導入するためにつぎ足すことによってヒト化される本発明のモノクローナル抗体を意図する。
例としてのアッセイは、ニワトリ奬尿膜(CAM)における脈管形成を測定するものであり、CAMアッセイとも呼ばれている。CAMアッセイは他でも詳細に記載されており、さらに腫瘍組織の脈管形成および新血管新生の双方を測定するのにも用いられている。Ausprunk et al., Am J Pathol 79:597-618 (1975)およびOssonski et al., Cancer Res 40:2300-2309 (1980)参照。
CAMアッセイは、組織全体で新血管新生が起こっており、実際のニワトリ胚の血管がCAMへ、またはCAM上で形成される組織へと生育するので、in vivo脈管形成のアッセイモデルとして十分に認識されている。CAMアッセイは新しい血管の成長の量および程度の双方に基づく新血管新生の阻害を示す。さらに、腫瘍組織など、CAM上に移植されたいずれの組織の成長も容易にモニターできる。最後に、このアッセイは、アッセイ系に毒性に関する内部標準が存在するので特に有用である。ニワトリ胚は何らかの試験試薬に曝されるので、その胚の健康状態は毒性の指標となる。
イムノトキシンの調製は一般に当技術分野で十分公知であるが(例えば、それぞれ出典明示により本明細書の一部とされる米国特許第4,340,535号および同第5,776,427号、ならびに欧州特許EP44167参照)、一定の利点はイムノトキシンの調製およびその次の臨床投与のための精製の双方において一定の好ましい技術を適用することにより達成できる。例えば、毒素部分をターゲッティング・エージェントと結合させるのに首尾よく使用できる多種のジスルフィド結合含有リンカーが知られているが、一般に薬理学的特性および能力の違いに基づき、あるリンカーが他のリンカーよりも好ましい。例えば、in vivoにおける安定性がより高いためにジスルフィド結合を含む、すなわち立体的に「障害にある」リンカーが好ましく、このようにして作用部位における結合に先立ち毒素部分の遊離が妨げられる。
抗内皮細胞抗体と結合し得る広範な細胞傷害剤が知られている。例としては多種の有用な植物、真菌由来の毒素または細菌由来の毒素でさえも含まれ、例示すれば種々のA鎖毒素、特にリシンA鎖、サポリンまたはゲロニンなどのリボゾーム不活性化タンパク質、サルシン、アスペルギリン、レスオリクトシン、胎盤リボヌクレアーゼなどのリボヌクレアーゼ、血管形成分子、ジフテリア毒、および数種だけを命名したシュードモナス外毒素が挙げられる。
あるいは、毒素部分に対する組換えDNA技術の適用は本発明によればさらに重要な利点をもたらすことがわかる。例えば、生物学的に有効な毒素候補のクローニングおよび発現はこれまでに他の刊行物に記載されており(O'Hare et al., FEBS Lett 210:731 (1987); Lamb et al., Eur Jrnl Biochem 148:265-270 (1985); Hailing et al., Nucl Acids Res 13:8019-8033 (1985))、今ややはり適当な毒素活性を示すより短い、またはその他の点での変異ペプチドを同定および調製することができる。さらに、クローン化した毒素候補の使用により位置指定突然変異誘発の適用が可能となり、これにより変異型ペプチドの調製およびスクリーニングが容易にできるようになり、さらに本発明に関する使用に有用な部分が得られる。
これらいずれかの架橋剤の2つの反応性基間のスペーサー・アームは様々な長さと化学組成を有し得る。長いスペーサーは複合化合物をより柔軟にし、架橋におけるいくつかの特定の成分(例えば、ベンゼン基)は反応性基に外部安定性を与えるか、または種々の状況の作用に対する化学結合の耐性を高め得る(例えば、還元剤に対するジスルフィド結合の耐性)。
上記のものなど、標準的な技術を用いて、上記の核酸および適当な転写/翻訳制御配列を含む発現ベクターを構築してもよい。種々の宿主−発現ベクター系が使用できる。これらには、限定されるものではないが、ターゲッティング・エージェント/毒素コード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDN発現ベクターで形質転換した細菌(例えば、大腸菌(E. coli)、枯草菌(B. subtilis))などの微生物;ターゲッティング・エージェント/毒素コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換した酵母(例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピチア(Pichia));ターゲッティング・エージェント/毒素コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュウロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;ターゲッティング・エージェント/毒素コード配列を含む、組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)を感染させた、または組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系;または哺乳類細胞ゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)、もしくは哺乳類ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、レンチウイルスベクター)を含む組換え発現構築体を有する哺乳類細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3)が含まれる。
昆虫系では、オートグラフ・カリフォルニア核多汗症ウイルス(AcNPV)をベクターとして用いて外来遺伝子を発現させる。このウイルスはスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞で増殖する。ターゲッティング・エージェント/毒素コード配列はこのウイルス非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)にクローン化し、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置く。ターゲッティング・エージェント/毒素コード配列の挿入が上手くいけば、ポリヘドリン遺伝子が不活性化されて、非閉塞性組換えウイルス(すなわち、ポリヘドリン遺伝子によりコードされているタンパク質性の外被を欠いたウイルス)が生産される。次ぎにこれらの組換えウイルスを用いてスポドプテラ・フルギペルダ細胞を感染させ、挿入した遺伝子を発現させる(例えば、Smith et al., J Virol 46:584 (1983);米国特許第4,215,051号参照)。
哺乳類宿主細胞では、いくつかのウイルスに基づく発現系を使用できる。発現ベクターとしてアデノウイルスを用いる場合には、ターゲッティング・エージェント/毒素コード配列をアデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよび3部リーダー配列に連結すればよい。次ぎにこのキメラ遺伝子in vitroまたはin vivo組換えによってアデノウイルスゲノム中に挿入し得る。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1からE3)に挿入すると、生存能力があり、かつ、感染した宿主内でターゲッティング・エージェント/毒素タンパク質を発現できる組換えウイルスが得られる(例えば、Logan et al., Proc Natl Acad Sci USA 81:3655-3659 (1984)参照)。また、挿入したターゲッティング・エージェント/毒素コード配列の有効な転写のためには特異的開始シグナルも必要とされる。これらのシグナルとして、ATG開始コドンおよび隣接配列がある。ATG開始コドンをはじめ外因性の翻訳制御シグナルをさらに提供する必要がある。当業者ならばこれを容易に決定し、必要なシグナルを提供することができる。さらに、全挿入配列が確実に翻訳されるには、この開始コドンを所望のコード配列のリーディングフレームと同調させなければならない。これらの外因性の翻訳制御シグナルおよび開始コドンは多様な起源のものであってよく、天然のものでも合成のものであってもよい。発現効率は適当な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーターなどの包含によって高められる(例えば、Bittner et al., Methods in Enzymol 153:516-544 (1987)参照)。
本発明の好適な医薬組成物は一般に所望のコンジュゲート約10ないし約100mgを、滅菌水溶液などの許容される医薬希釈剤または賦形剤と混合して、最終濃度約0.25ないし約2.5mg/mlとしたものである。かかる製剤は典型的にはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などのバッファー、または医薬賦形剤などの付加添加剤、BSAもしくはHSAなどの安定剤、または塩化ナトリウムなどの塩を含む。非経口投与のためには、一般にそれらの安定性、非免疫原性および非発熱性を保証することによりさらに医薬上許容される組成物とするのが望ましい。かかる技術は、出典明示により本明細書の一部とされるRemington's Pharmaceutical Sciences, 16th Ed. Mack Publishing Company (1980)で例示されるように、一般に当技術分野で十分公知である。外毒素の混入は最低限安全なレベルに、例えば、0.5g/タンパク質mgのレベルに維持されるべきであると考えられる。さらにヒトへの投与のためには、製剤は無菌性、発熱性、全般的な安全性および生物学的基準のFDA局により要求される純度基準を満たさなければならない。
G.ターゲッティング・エージェントへのその他の薬剤の結合
本発明の大部分の治療適用は内皮、特に腫瘍内皮への毒素のターゲッティングを含むものと考えられる。これは他の可能性のある薬剤に比べ細胞死滅作用を送達するほとんどの毒素の能力がずっと高いことによるものである。しかしながら、ターゲット抗原が、ターゲッティング・エージェント/イムノトキシンなどの毒素化合物による有効な中毒と一致する経路によっては取り込まれないが、抗腫瘍薬、その他のサイトカイン、代謝拮抗物質、アルキル化剤、ホルモンなどのような化学療法薬をターゲッティングすることが望まれるといった状況があり得る。これらの薬剤の、それらの非ターゲッティング・エージェント共役対応物に優る利点は抗体などのターゲッティング・エージェントによって付加選択的に与えられる。薬剤の例としては、限定されるものではないが、ステロイド、シトシン、アラビノシド、メトトレキセート、アミノプテリン、アントラシクリン、マイトマイシンC、ビンカアルカロイド、デメコルシン、エトポシド、ミトラマイシンなどが挙げられる。このリストはもちろん、単に、組織への特異的送達のための抗体などのターゲッティング・エージェントに医薬剤を結合する技術が十分に確立されているという例である。
特定の利点は腫瘍の画像形成への本発明の適用によって達成され得ると考えられる。腫瘍脈管構造の画像形成は、現行の画像形成技術と比べた場合、細胞が容易に利用できるという点で主な利点をもたらすと考えられる。さらに、抗体などのターゲッティング・エージェントに常磁性で、放射性で、かつ蛍光性でさえあるイオンを結合させる技術は十分確立されている。これらの方法の多くは、例えば、抗体と結合したDTPAなどの有機キレート剤を用いる金属キレート錯体使用を含む。例えば、米国特許第4,472,509号参照。本発明に関して、選択されたイオンはこのように、抗体などのターゲッティング・エージェントによる腫瘍内皮へターゲッティングされ、結合したイオンにより画像処理が可能となる。
種々の化学療法薬およびその他の薬理剤はこれまでに首尾よく抗体と共役できており、薬理学的機能することが示されている(例えば、Vaickus et al., Cancer Invest 9:195-209 (1991)参照)。検討されている抗腫瘍薬の例としては、ドキソルビシン、ダウノマイシン、メトトレキセート、ビンブラスチン、およびの種々のものが挙げられる(Dillman et al., Antibody Immunocon Radiopharm 1:65-77 (1988); Pietersz et al., Antibody Immunoconj Radiopharm 1:79-103 (1988))。さらに、ネオカルジノスタチン(Kimura et al., Immunogenetics 11:373-381 (1980))、マクロマイシン、トレニモン(Ghose et al., Meth. Enxymonogy 93:280-333 (1983))およびα−アマニチンなどのその他の薬剤の結合も記載されている。
化学療法薬の他、本発明はその他の多様な薬剤の、腫瘍脈管構造への特異的送達へ適用できると考えれる。例えば、ある状況下では、ラッセルクサリヘビ蛇毒、活性型因子IX、活性型因子Xまたはトロンビンなどの凝血薬の送達が望まれるかも知れない。これにより腫瘍の血液供給が凝血する。また、ホスホリパーゼC(Flickinger & Trost, Eu. J. Cancer 12(2):159-60 (1976))またはコブラ蛇毒因子(CVF)(Vogel & Muller-Eberhard, Anal. Biochem 118(2):262-268 (1981))など、腫瘍内皮細胞を直接溶解するはずの細胞表面溶解剤をターゲッティングすることも考えられる。かかる構造の、抗体などのターゲッティング・エージェントへの機能的に作用する結合は、例えば、SMPTなどのタンパク質間結合剤によって容易に達成され得る。さらに、例えば、サイトカイン放出の調節を達成するためには、増殖因子、その他のサイトカイン、または細菌の外毒素もしくは細菌外毒素の脂質A部分を選択された細胞種へターゲッティングするこが望まれるかも知れない。Ghose et al., CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 3:262-356 (1987)によって例示されるように、かかる物質の結合も十分当技術分野の範囲内である。
実施例1
発達中および成熟腎臓脈管構造における受容体チロシンホスファターゼ、ECRTP/DEP−1の内皮局在性
腎臓微小血管系の発達構成は、隣接した上皮および糸球体間質細胞に関連した内皮細胞の空間的かつ時間的に調整された移動、構成、分化および成熟を必要とする規則的なプロセスである。構成の分子決定因子はたいてい確定されていないが、それでも関連する適当な内皮応答を指示する細胞表面受容体の必要条件は予想される。受容体チロシンホスファターゼ、ECRTP/DEP−1の内皮発現および分布を腎臓微小血管系発達構成中に評価した。ECRTP/DEP−1エクトドメインエピトープに対して作製したモノクローナル抗体のその発現は、ヒトおよびマウス成熟腎臓の糸球体、管周毛細血管および腎動脈循環系における内皮細胞の膜表面に局在する。腎臓発達中、後腎間葉細胞の副次群においておよび発達中の糸球体への補充時初期の糸球体毛細血管内皮細胞の推定前駆細胞においてECRTP/DEP−1受容体免疫染色が明瞭である。ECRTP/DEP−1受容体は管腔膜表面に顕著に表れ、内皮間接触において斑点状に集積し、VEカドヘリンとは部分的に重複するが同時には存在しない。in vitro研究ではECRTP/DEP−1受容体はその分布が部分的に重複するが、またVEカドヘリンとは同時には存在しない密集培養ヒト腎臓および皮膚微小血管内皮細胞における内皮間接触の位置に補充されることが示されている。内皮接合部複合体からのVEカドヘリンの試験的解離により内皮間接触からECRTP/DEP−1受容体は再分配されない。これらの発見によりECRTP/DEP−1エクトドメインが内皮細胞の表面で発現されるタンパク質、および細胞間接触により誘導されるタンパク質と相互に作用し合い、細胞認識、または移動もしくは増殖の停止に関するシグナルを伝達することが示される。
方法
細胞系統および細胞培養物−ヒト一次腎臓微小血管内皮細胞(HRMEC)を単離、培養し、記載のように解凍した後に三次または四次継代に使用した(Martin et al., In Vitro Cell Dev Biol 33: 261-269 (1997))。ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMEC−1細胞、CDC)は、15%胎児ウシ血清(Hyclone Laboratories, Logan UT, USA)、10ng/ml上皮細胞増殖因子(Collaborative Biomedical Products; Becton Dickinson, Bedford, MA)および1mg/mlヒドロコルチゾン(Sigma)を含有するMCDB131培地(Sigma)で増殖させた(Ades et al., J Invest Dermatol. 99: 683-690 (1992))。Madin Darby Canine Kidney(MDCK)細胞(L. Limbird, Vanderbilt Pharmacologyの厚意による提供)は、4.5%D−グルコースを含有し、10%胎児ウシ血清を添加したダルベッコの最少必須培地(DMEM、GIBCO BRL)で増殖させた。すべての増殖培地に1mM L−グルタミン(GIBCO BRL)、100単位/mlペニシリンおよび100mg/ml ストレプトマイシン(GIBCO BRL)を添加した。
外因性発現したECRTP/DEP−1受容体の免疫検出−100mmプラスチック皿(Falcon)で増殖させたMDCK細胞を、製造業者のプロトコールに従い、陽イオン脂質(LIPOFECTAMINE(商標)、GIBCO BRL)を用いて血球凝集素ペプチド(HA)の3反復配列をカルボキシ末端に加えて改変したヒトECRTP/DEP−1受容体の高レベルの発現を行う発現プラスミドpSRa DEP−1/3xHAでトランスフェクトした。トランスフェクション48時間後、細胞を氷上に置き、氷冷PBS(−)で2回洗浄し、直ちに0.5ml溶解バッファー(50mM HEPES pH7.5、50mM NaCl、5mM EDTA、2μg/mlアプロチニン、1μg/mlロイペプチン、1mM PMSF)で溶解した。溶解物を遠心分離により清澄化し、膜受容体を4℃で4時間のWGA−アガロース(Sigma)へのバッチ吸着により回収した。得られた沈降物を還元条件下で7%SDS−PAGEにより分解し、イモビロン−Pトランスファーメンブラン(Millipore)に移し、0.2%Tween20(TBST)を含有するTris緩衝生理食塩水(50mM Tris HCl pH7.5、137mM NaCl)中の5%脱脂粉乳で4℃で一晩ブロッキングした。ブロットをマウスモノクローナルECRTPAbs1または2(10μg/ml)もしくは抗HA(2.5μg/ml)抗体とともにインキュベートし、次いでセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ウサギ抗マウスIgG抗体(Boehringer Mannheim)とインキュベートした。メンブランをTBSTで洗浄した後、製造業者の指示に従い、化学ルミネセンス基質(ECL、Amersham Crop.)を用いて顕出させた。
安定的にトランスフェクトしたMDCK細胞の作出および細胞染色−MDCK細胞を、製造業者のプロトコールに従い、陽イオン脂質(Lipofectamine(商標)、GIBCO BRL)を用いて発現プラスミドpCDNA3 DEP−1/3xHA(Invitrogen)でトランスフェクトした。安定的にトランスフェクトした細胞を、G418(GIBCO BRL)を培地に最終濃度800μg/mlで加えて選択し、制限希釈クローニングにより単一コロニーを得た。この細胞をカバーグラス(Fisher)で増殖させ、100%メタノールにより−20℃で10分間固定した。カバーグラスをリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、5%ヤギ血清により室温で30分間ブロッキングし、ECRTPAb−2(10μg/ml)とともに60分間インキュベートし、洗浄した後、FITC結合ヤギ抗マウスIgG(Jackson Immunoresearch Laboratory Inc.)とともに60分間インキュベートした。カバーグラスを固定して共焦顕微鏡(Zeiss LSM410)により解析した。ECRTP/DEP−1−Abの免疫反応性を予め吸着させるため、50μgのECRTP/DEP−1タンパク質(EcまたはCy)をECRTPAb−2とともに4℃で4時間予備インキュベートし、15,000rpmで20分間マイクロ遠心分離にかけ、得られた上清を用いて細胞を染色した。
組織免疫局在性−ヒト腎臓組織をドライアイス−アセトン浴で急速凍結した。クリオスタット切片(4mm)をアセトン中−20℃で10分間固定し、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、製造業者の指示に従い、アビジン−ビオチンブロッキング試薬(Vector Laboratories)で予め吸着した。切片をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、5%ヤギ血清によりブロッキングし、モノクローナルECRTP/DEP−1受容体抗体(ECRTP−Ab1、10μg/ml、10分)とともにインキュベートし、洗浄し、ビオチン化ヤギ抗マウスIgG(Vector Laboratories、7.5μg/ml、60分)とともにインキュベートし、洗浄し、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合ストレプトアビジン(Pierce、 4μg/ml、30分)とともにインキュベートし、最後にリン酸緩衝生理食塩水で洗浄した。カバーグラスを固定して(Vectashield, Vector)、共焦顕微鏡(Zeiss LSM410)により解析した。同時位置決定試験(colocalization)ではアセトンで固定した凍結切片を5%ロバ血清によりブロッキングし、ECRTP/DEP−1受容体抗体(10μg/ml)およびヤギVEカドヘリン抗体(5μg/ml、 Santa Cruz Biotechnology Inc.)の混合物とともに室温で60分間インキュベートした。特異的な抗体をFITC結合ロバ抗マウスおよびローダミン結合ロバ抗ヤギ抗体の混合物(Jackson Immunoresearch Laboratories)を用いて室温で60分間検出した。同一切片についての波長488nmおよび568nmそれぞれにおけるZeiss LSM410共焦顕微鏡による解析で得られた重複画像において各抗原の特異的免疫染色を同定した。
免疫標識したマウス腎臓切片は高いバックグラウンドを示し、別の手法を必要とした。抗ECRTP/DEP−1受容体 mAb、ECRTP−Ab1とFITCとを直接結合した。便宜には、ECRTP−Ab1(0.1M 炭酸ナトリウムバッファー、pH9.0中0.94mg IgG/ml、0.55ml)と0.03mlFITC溶液(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO, DMSO中1.0mg/ml)とを4℃で一晩結合した。塩化アンモニウムを最終濃度50mMまで加えて反応を停止させた。4℃で2時間のインキュベーションの後、混合物をリン酸緩衝生理食塩水で徹底的に透析し、結合していないFITCを除去した。同じプロトコールを用いてFITCと結合したラット糸球体基底膜に対するマウスモノクローナルIgGを対照として用いた(Hyink et al., Am J Physiol 270: F886-F899 (1996))。アセトンで固定した切片を0.5M塩化アンモニウムによりブロッキングし、MoAb−FITCコンジュゲートとともに30分間インキュベートし、洗浄し、エピ蛍光顕微鏡観察により調べた。さらなるいくつかの対照実験では切片とのインキュベーションの前に、抗DEP−FITCコンジュゲートと1モル過剰の免疫化ペプチドとを混合した。
結果−モノクローナル抗体は組換えおよび発現されたECRTP/DEP−1受容体を認識する。エクトドメイン(Ec)または細胞質ドメイン(Cy)いずれかのECRTP/DEP−1受容体配列を提示する組換え融合タンパク質を細菌で発現させ、ウサギおよび/またはマウスの免疫化に使用した。図1Aに示されるように、モノクローナル抗体、ECRTPAb−1およびECRTPAb−2はエクトドメインを特異的に同定するが、細胞質ドメイン組換えタンパク質は同定しない。これらの抗体が哺乳類細胞で発現される全長タンパク質を認識するかどうかを確かめるため、MDCK細胞をエンプティ発現プラスミド(SRa)またはカルボキシ末端に血球凝集素エピトープタグを付けた全長ECRTP/DEP−1受容体の発現を駆動するもの(SRa DEP−1/HA)のいずれかで一時的にトランスフェクトした。トランスフェクト細胞の細胞溶解物をエピトープ特異的モノクローナル抗HA抗体を用いて免疫沈降させた後、ECRTPAb−1およびECRTPAb−2(図1B)をはじめとする示された抗体でプロービングした。両者とも220kDa HAタグ付きECRTP/DEP−1を認識した。
成熟腎臓の血管内皮における顕著なECRTP/DEP−1受容体発現に基づき、この受容体のマウス胎児の腎臓血管発達中の時間的かつ空間的発現を調べた。図4に示されるように、ECRTP−Ab1は、その類似した染色パターンがマウスおよびヒト成熟腎臓であることから、さらにマウス組織の染色をブロッキングする組換えヒト免疫原(Ec)の作用から抗原、そのマウスECRTP/DEP−1受容体として結合する。E14、E16および生後6日における発達中のマウス腎臓のECRTP−Ab1−FITCの結合体(図4A〜C)は、VEGF受容体、flk−1およびEphB1/ephrin−B1受容体−リガンドに対する抗体を用いて前記で見られたパターンと極めて類似した免疫反応性パターンを示した(Daniel et al,. Kidney Int 50: S-73-S-81 (1996))。特に、ECRTP−Ab1−FITCは胎児腎臓皮質の発達中の糸球体および微細血管内皮細胞と結合した。小さいが強い結合した抗体のフォーカスは血管芽細胞と考えられる単離皮質間葉細胞で見られた(図4Aおよび4B)。発達中のコンマおよびS形糸球体の血管裂内で糸球体内皮前駆細胞と一致する細胞の副次群が標識された(図4Aおよび4B)。
新生児腎臓切片におけるECRTP/DEP−1受容体の免疫標識では、はっきりと識別できる血管標識パターンが得られた(図4C)。細動脈、糸球体および管周毛細血管内皮はすべて強く標識された(図3C)。成人マウス腎臓では、ヒト腎臓切片と同様に糸球体内皮細胞もまた明らかに標識された。未成熟および成熟腎臓内の他の細胞はECRTP−Ab1−FITCと結合せず、切片を対照モノクローナルIgG−FITC結合体、またはECRTP−Ab1−FITCの混合物で標識したが、免疫化ペプチド(Ec)は染色されないことがわかった。
図5ではヒト腎臓微小血管内皮細胞、HRMEC(パネルA)、およびヒト皮膚微小血管内皮細胞、HMEC(パネルB)におけるECRTP/DEP−1局在性パターンが示されている。HRMEC密集培養物では内皮間接触地点でECRTP−Ab2による顕著な染色が示された。さらに、基底膜表面ではなく、頂部表面(パネルA)を捕らえる共焦面において頂部膜染色の斑点状の集積があった。互いの接触を絶つのに十分な低い密度で培養された内皮細胞は接触細胞に見られる細胞境界の顕著な染色パターンを示さなかった。ECRTP−Ab1ではECRTP−Ab2で見られる内皮間の局在性は示されなかったが、頂部表面において受容体の副次群だけがはっきりと染色されたことは注意すべきである。
ECRTP/DEP−1受容体の内皮細胞間接触部位におけるこの明白な集積は無傷な成熟脈管に見られる染色の斑点状集積と一致しており、受容体の副次群が内皮間接触の地点に分布していることが示唆される。よって、ECRTP/DEP−1受容体の分布をVEカドヘリンと比較した。HMEC密集培養物の二重標識試験におけるECRTP/DEP−1受容体およびVEカドヘリン免疫反応性の共焦位置決定ではまた、内皮間接合部に存するVEカドヘリンによるECRTP/DEP−1受容体染色ではわずかな重複が示された。ヒト腎臓組織の二重標識切片において同時限局化の類似パターンが見られた(図3)。最後に、ECRTP/DEP−1受容体免疫反応性の細胞間集積にVEカドヘリン相互作用の完全性が必要であるかを確かめるため、試験を行った。図5Bに示されるように、HMEC−1細胞のEGTA処理により内皮間接合部複合体からVEカドヘリンが解離するが、20〜30分間にわたる試験ではECRTP/DEP−1受容体の局在性への明白な影響はない。この結果はECRTP/DEP−1受容体を保有するいずれの内皮間接合部ではカドヘリンの完全性が必要でないことを示している。さらに、これらのデータはECRTP/DEP−1受容体およびVEカドヘリンは部分的に重複するが、正確には無傷な脈管内皮細胞において同時には存在しないという観察に一致している(図3)。
動脈における、および明らかに毛細血管内皮におけるECRTP/DEP−1受容体の頂部膜分布、特に血小板およびすべての造血系統がECRTP/DEP−1受容体を発現することを示すデータについては興味がそそられる(Palou et al., Immunol Lett 57: 101-103 (1997))。無傷の脈管の管腔膜においてそれらを出合わせる内皮細胞循環細胞のECRTP/DEP−1受容体間の同種親和性相互作用により、それぞれの連動している細胞の調節因子または補助受容体がいずれの下流応答の調節にも重要でありそうなことが示唆されている。
方法
細胞培養物−ヒト腎臓微小血管内皮一次細胞HRMECを、Martin et al., In Vitro Cell Dev Biol 33: 261-269 (1997)に記載されるように、単離し、培養し、解凍した後に第3または第4継代に使用した。ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMEC−1細胞、CDC)を15%胎児ウシ血清(Hyclone Laboratories, Logan UT, USA)、10ng/ml上皮細胞増殖因子(Collaborative Biomedical Products; Becton Dickinson, Bedford, MA)および1μg/mlヒドロコルチゾン(Sigma)を含有するMCDB131培地(Sigma)で増殖させた(Ades et al., J Invest Dermatol. 99: 683-690 (1992))。すべての増殖培地に1mM L−グルタミン(GIBCO BRL)、100単位/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(GIBCO BRL)を添加した。
ECRTP/DEP−1受容体存在量およびチロシンホスファターゼ活性のアッセイ−図面の説明で示された密度で培養し、図面の説明で示された時間に回収した細胞を氷冷リン酸緩衝生理食塩水で反復洗浄した後、in situにおいて50mM Hepes(pH7.5)、50mM NaCl、5mM EDTA、1mM PMSF、1mM β−メルカプトエタノール、1%Triton X−100を含有するバッファー2mlを加えた。洗浄剤で溶解した細胞を4℃で15分間インキュベートし、13,000×g、4℃で10分間のマイクロ遠心分離を繰り返して(2回)不溶性物質を除去した。溶解画分のタンパク質を改良BCAアッセイ(Pierce)を用いて定量した。いくつかの試験では、アガロース(Sigma)に結合した小麦胚(triticum vulgaris)レクチン(WGA)からのバッチ吸着および溶出については、Stein et al., J Biol Chem 271; 23588-23593 (1996)に記載されるように行った。 ホスファターゼアッセイに付した画分の最終溶出物を25mMイミダゾール(pH7.2)、0.1mg/mlウシアルブミン、10mMジチオトレイトール(ホスファターゼアッセイバッファー)、および3mM N,N’,N’’トリアセチルキトトリオース(Sigma)を含有するバッファー中に入れた。
32P−標識したリン酸化基質(Raytide)は、記載される製造業者(Oncogene Sciences)の推奨により調製し、(dpm/fmol)の比活性を達成した。レクチン精製画分のホスファターゼ活性を、記載されるようにNaVOの存在または不在下において300ng/ml基質を用いて200μl容量のホスファターゼバッファー中、30℃で図面の説明で示された時間に3反復でアッセイした。放出されたホスフェートをシンチレーション計数により定量し、データを平均cpm+/−標準誤差として示した。アッセイは1〜10分間にわたり線形であった。
平面内皮移動アッセイ−平面内皮移動アッセイを開発し、300〜500μ径の円形「傷」の内皮閉鎖速度を調べた。ドリルプレスに備わる回転シリコンビットを用いてマルチウェルプレートの各ウェル内の密集内皮単層に3〜5の「傷」を創った。「創傷」の際、各ウェルの培地に図面の説明で指示された濃度の薬剤を添加した。指示された時間(4および8時間)に取り込んだ顕微鏡写真画像の各傷の残存面積をNikon Diaphot顕微鏡に対応させたBioquant(Nashville, TN)ソフトウェアパッケージを用いて定量した。この方法で表すと、傷の閉鎖速度は著しく線形であり、直線線形回帰r>=0.985である。本明細書に示された各データポイントは、同一ウェルの各3回以上の測定の平均±標準誤差を表している。記載した各試験は3回以上の独立した観察による典型的な研究結果である。
図7に示されるように、異なる密度で33時間培養した細胞との比較では免疫沈降したECRTP/DEP−1受容体抗原量の差は検出できなかった。さらなる試験では、これらの密度におけるTriton X−100溶性対不溶性画分の割合の変化を示すことができなかった(示さず)。しかしながら、最低(1×)細胞密度に対し、最高(8.1×)細胞密度で培養した細胞の免疫沈降では、バナジウム酸塩感受性ECRTP/DEP−1受容体結合チロシンホスファターゼ活性の1.8倍の増強が得られた。免疫ブロットパネル下段に示されるように(図7)、免疫沈降したECRTP/DEP−1受容体はそれ自身がバナジウム酸塩と予備処理した細胞のチロシンリンタンパク質である。さらに、高密度で培養した細胞から回収した免疫沈降ECRTP/DEP−1受容体の内在ホスホチロシンレベルは下がり、その画分のチロシンホスファターゼ活性の増強と相関している。これらの知見により、高密度で培養した内皮細胞ではECRTP/DEP−1受容体存在量の急激な変化はないが、ECRTP/DEP−1結合ホスファターゼ活性が増強することが示される。ゲルザイモグラフィーホスファターゼアッセイによる、増強した活性がECRTP/DEP−1受容体に内在すること証明する試みは上手くいかなかった。
参照文献
以下に挙げた参照文献ならびに本明細書に記載のすべての参照文献は、れらが本明細書で用いられる方法論、技術および/または組成物に関する背景を補足、説明、提示する、または教示する範囲で出典明示により本明細書の一部とされる。
【図3】 図3は、ヒト腎臓脈管構造におけるECRTP/DEP−1受容体およびVEカドヘリンの共焦点局在性を示す。アセトンで固定した腎臓切片を、ECRTPAb−1およびVEカドヘリンに対するポリクローナルヤギ抗体で同時標識した。結合した抗体を、フルオレセイン結合抗マウスIg抗体(パネルA、B、E、F)、またはローダミン結合抗ヤギIg抗体(パネルC、D、E、F)で検出した。ECRTPAb−1(緑色)染色は大動脈および糸球体毛細血管の内皮膜全体に分布し(A、B)、一方、VEカドヘリン標識(赤色)は内皮接合部に限定されていた(C、D)。重複する共焦点画像により、内皮接合部の内側でECRTPがVEカドヘリンと共存することが証明された(倍率600倍)。
【図4】 図4は、発達中のマウス糸球体におけるECRTP/DEP−1受容体の発現を示す一連の写真である。胎児期14日(A)、16日(B)、出生後6日(C)、および成体マウス(D)のクリオスタット腎臓切片を、実施例1の方法に記載したようにECRTPAb−1で免疫標識した。パネルAとBは、ECRTPAb−1が間充織領域で分散した細胞と結合し(矢印)、コンマ型の糸球体の血管の裂け目ヘ移動する内皮前駆細胞(矢印)と結合し、さらに毛細血管段階の糸球体内皮(G)と結合する。パネルCとDは、成熟した腎臓内でECRTPAb−1が糸球体(G)、動脈(A)、および管周毛細血管(矢印)の内皮を選択的に標識している。(元の倍率;A)400倍;B)200倍;C)200倍;およびD)350倍)。
【図6A】 図6Aは、同一数のヒト腎臓微小血管内皮細胞(HRMEC)を、直径100mm(1倍)、60mm(2.9倍)または35mm(8.1倍)のプラスチック皿の増殖培地で培養し、培養時点の細胞密度に示した倍数の違いを与えたことを示す線グラフである。培地は矢印で示した時点で増殖培地と交換した。細胞はCoulterカウンターで計数し、サンプルは4反復で示している。細胞の増殖は単一細胞の倍加後8.1倍の密度、および培養細胞の約3回の倍加後2.9倍の密度で停止した。
【図7】 図7は、増加した細胞密度が免疫沈降するECRTP/DEP−1受容体の活性(量ではない)を増加させることを示す放射能写真および棒グラフである。同一数のHRMECを図6のように示された細胞密度で培養した。実施例2の方法に記載したように36時間培養した後、単一特異性アフィニティー精製ラビットポリクローナル抗体を用いて、1mMペルオキシバナジン(+VO)または溶媒(−VO)で10分間処理した細胞から直ちにECRTP/DEP−1受容体を免疫沈降させた。回収したECRTP/DEP−1受容体抗原を単一特異的抗体を用いた免疫ブロットにより定量化し、その内因性ホスホチロシン含量を4G10モノクローナル抗体を用いたホスホチロシン免疫ブロットにより評価した。免疫沈降した試料中のホスファターゼ活性を、pNPPを基質として用いて記載したようにオルトバナジウム酸ナトリウムが存在する場合(+VO)と存在しない場合(−VO)で評価した。データは生成物の光学濃度を3反復のサンプル+/−標準誤差で示している。
【図8A】 図8Aは、ECRTP/DEP−1 cDNAを持つHMRECの一時的感染が低い細胞密度で増殖を阻害させることを示すグラフである。示されたように1.7μg pSRα(ベクター対照)またはHAエピトープタグをつけた(血球凝集素)pSRα−ECRTP/DEP−1(pSRα−ECTRP)、および、実施例2の方法に記載したように感染した細胞のBrdU標識を数えるために、0.4μg pEGEFP(Clontech)でおよそ3X10のHRMECを同時感染させた。24時間で感染した細胞は示された数でp35培養皿に再び戻された。36時間後、S期の細胞を実施例2の方法に記載したようにBrdUで30分間標識し、+GFP陽性細胞をBrdUの組み込みについて数えた。示しされたデータは4反復の測定値についての平均値+/−標準誤差を表す。
【図8C】 図8Cは、図8のように0時点で同数のHRMECを培養し、示された濃度で抗体またはFab断片を加えた場合のデータポイントプロットである。反復プレートを1日目に回収して各条件でプレーティング効率が一様かどうかを確認し、6日目に細胞の増殖をそれぞれ評価した。データポイントは5反復の平均値+/−標準誤差値を表す。
【図9A】 図9Aは、HRMEC単層が示されたように一時的にプラスミドpSRαECRTP/DEP−1/HA、またはpSRαEphB1/HAに感染したことを示す一連の写真である。48時間後、密集単層に「創傷」を作り、その後30時間かけて塞いだ。その後単層をモノクローナル血球凝集素抗体12CA5で染色し、高レベルのECRTP/DEP−1/HAまたはEphB1/HAを一時的に発現する細胞の位置をそれぞれ検出した。唯一ECRTP/DEP−1過剰発現細胞だけが稀に移動して「創傷」を塞いだ。
【図9B】 図9Bは、クラス適合IgG対照(IgG、10μg/ml)、ECRTPAb1(10μg/ml)、またはECRTPAb1のFab断片(3μg/ml、モル濃度は同じ)が含む示された抗体または断片の存在下、無添加(NA)またはホルボールミリステートアセテート(20ng/ml)を添加した清培地に交換する0時にHRMEC密集単層に作られた直径300〜420μmの「創傷」の分析を示す線グラフである。3反復の創傷を用いて示された時間に顕微鏡画像をなし、Bioquant画像解析ソフトを用いて自動的取り込み手順により、残りの「創傷」部位を算定してはじめの創傷の分数として表している。各データポイントは3回の測定値の平均値+/−標準誤差を表す。
【図9C】 図9Cは、図9Bと同様のアッセイ手順で得られたデータを解析した線グラフである。同じアッセイ手順を用いて、3の独立した時点でIgG対照、ECRTPAb1、またはECRTPAb1/Fabに曝した細胞において測定した平均値の直線回帰により移動率を計算した。r値はプロットした各データポイントについて0.90以上であった。白抜きの四角(□)は刺激を受けない細胞の閉塞に対する移動率を示す。
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