【発明の詳細な説明】
3−アルキルテトラヒドロフランの製造方法
本発明は、3−アルキルテトラヒドロフランの製造方法に関する。さらに詳し
くは、本発明は、2,3−ジヒドロフランを3−アルキルテトラヒドロフランに
転化する2段法に関する。本発明に従って製造される3−アルキルテトラヒドロ
フランは、工業溶剤として及びエラストマーのようなポリマーの製造におけるモ
ノマーとして有用である。
アルキルテトラヒドロフラン、または環化してアルキルテトラヒドロフランを
形成できる前駆体は、多数の方法によって製造できる。例えば、Zenkら(Synthe
sis,695(1984年))は、γ−ブチロラクトンをハロゲン化アルキルでアルキル
化して、3−アルキルテトラヒドロフランに水添分解可能なβ−アルキル−γ−
ブチロラクトンを製造する方法を記載している。Botteghiら(J.Org.Chem.,37
,1835(1972年))は、アリルアルコール及びアクロレイン誘導体をヒドロホル
ミル化し、そして中間体を脱水または脱アルコール化して、4−アルキル−2,
3−ジヒドロフランを製造する、4−アルキル−2,3−ジヒドロフランの製造
方法を記載している。このような3−アルキルテトラヒドロフラン前駆体を製造
するためのより有効な別の方法が、Talipovら(Zh.Org.Khim.,29,1024(199
3年))によって記載されている。この方法は、トリフルオロ酢酸中においてPri
ns反応によってホルムアルデヒドと1−アルケンとを反応させることを含んでな
り、3−及び4−アルキルジヒドロフランが低めの収率で製造される。この方法
においては、1−アルケンからの2個の炭素原子がジヒドロフラン環に組み込ま
れて、出発
1−アルケンよりも炭素数が2小さいアルキル置換基が3−または4−位に残さ
れる。しかし、Talipovらは、少なくとも1−ヘキセンほどの大きさの1−アル
ケンの場合についてのみ成功することを報告している。すなわち、アルキルジヒ
ドロフランのアルキル置換基は少なくとも4個の炭素原子を含む。さらに、Tail
povらの反応が進む方向は多数あるようである。例えば、Shrinerら(Org.Synth
.Coll.Vol.IV,786(1963年))は、ホルムアルデヒド及び他の1−アルケン
(スチレン)を出発原料として1,3−ジオキサンが好収率で得られることを報
告している。
先行技術はまた、本発明の方法からは得られない化合物である3−メチルテト
ラヒドロフランの多数の製造方法を開示している。これらの方法は全てではない
が、その一部は、アルキル基が2個またはそれ以上の炭素原子を含む他の3−ア
ルキルテトラヒドロフランの製造方法にも適用できる。Abeらは、特開平8−291
,158号公報中において、プロピレンを2−メチルコハク酸エステルに酸化ジカル
ボキシル化し、次いでそれを対応するブタンジオールに還元し、それを環化して
3−メチルテトラヒドロフランを形成することを含む方法を記載している。プロ
ピレンより大きい1−アルケンを原料とすれば、アルキル基がメチルより大きい
3−アルキルテトラヒドロフランが得られるであろう。
Ernstは米国特許第4,879,420号中において、3−メチルテトラヒドロフランの
製造方法を開示している。この方法では、4−ヒドロキシブチルアルデヒドがホ
ルムアルデヒドによって還元的アルキル化されて2−メチル−1,4−ブタンジ
オールが生成され、それが3−メチルテトラヒドロフランに環化される。炭素数
2またはそれ以上のアルデヒドの置換によれば、アルキル置換基の炭素数が2ま
たはそれ以上の3−アルキルテトラヒドロフランが得られるであ
ろう。しかし、α−炭素原子上に水素を有するアルデヒドを使用した場合には、
交叉アルドール縮合が起こり、それによって、目的とする3−アルキルテトラヒ
ドロフランの収率が低下するであろう。この不利な副反応を起こさないのは、α
−炭素原子上に水素原子を有さないベンズアルデヒドまたはピバルアルデヒドの
ようなアルデヒドのみであろう。
ビニルエーテル(また、エノールエーテル)がルイス酸触媒作用下で多数の化
合物と反応することは知られている。例えば、Comprehensive Organic Synthesi
s,B.M.Trost,Ed.,Pergamon Press,New York Vol.2,612(1991年)を参照
されたい。
本発明は、
(1)酸性触媒の存在下において、2,3−ジヒドロフランを式:を有するアセタールと接触させて、式:
を有する中間体を生成せしめ(式中、R1は脂肪族、脂環式、芳香族または複素
環式基であり、各R2はアルキル基である)、そして
(2)工程(1)からの中間体を触媒量の第VIII族貴金属またはレニウム、水
及び強酸の存在下において水素と接触させる
工程を含んでなる、式:
を有する3−アルキルテトラヒドロフランの製造方法を提供する。
この方法の第1工程を触媒するのに有用な酸性物質は、種々のブレンステッド
酸またはルイス酸から選ばれることができる。このようなルイス酸の例としては
、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三フッ化アルミニウム、三ヨウ化
アルミニウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素
、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、フッ化鉄(III)、ヨウ化鉄(III)、塩化錫(IV)、
臭化錫(IV)、フッ化錫(IV)、ヨウ化錫(IV)、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化
亜鉛、ヨウ化亜鉛、フッ化チタン(IV)、塩化チタン(IV)、臭化チタン(IV)
、ヨウ化チタン(IV)、四塩化ジルコニウム、四臭化ジルコニウム、四フッ化ジ
ルコニウム及び四ヨウ化ジルコニウムが挙げられる。このようなブレンステッド
酸の例としては、硫酸、硝酸、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、フッ化水素、
燐酸、トリフルオロ酢酸またはトルエンスルホン酸が挙げられる。高い活性及び
溶解度のため、最も好ましい触媒は、ジエチルエーテル錯化合物として導入され
る三フッ化ホウ素である。
本方法に使用する酸性触媒の濃度は、通常は低濃度しか必要としないが、例え
ば、使用する触媒によってかなり変動する。反応条件を調節することによって工
程(1)の反応混合物の重量に基づき0.1ppm〜99重量%の任意の濃度を、液体ま
たは固体触媒の飽和に関して使用できる。好ましい濃度範囲は1ppm〜10重量%
の範囲である(同一基準)。好ましい触媒、三フッ化ホウ素は好ましくは10〜30
00ppmの範囲内、最も好ましくは500〜1500ppmの範囲内の濃度で使用する。
本方法の工程(1)は、広い温度範囲にわたって、例えば、−50〜200℃にお
いて実施できるが、−20〜50℃の範囲の温度の使用が通常好ましい。最も好まし
い温度範囲は−10〜20℃である。好ましい温度範囲より低い温度を使用すると、
反応速度が遅くなり、極端に長い反応時間が必要である。好ましい温度範囲より
高い温度を使用すると、アセタール(II)の接触分解が起こり、その結果、とて
つもなく多量の副生物が形成される。
副生物の生成を最小にするためには、アセタール対2,3−ジヒドロフランの
モル比を1:1〜100:1の範囲にすべきである。再使用するアセタールの分離
及び再循環には材料運搬コスト及びエネルギーが必要であるため、最も実際的な
アセタール:2,3−ジヒドロフランのモル比は3:1〜10:1である。本方法
の第1工程は、実質的に無水の条件下で実施する。必須ではないが、第1工程に
は、不活性(非反応性)溶剤、例えば、脂肪族及び芳香族炭化水素、エーテル及
びハロゲン化炭化水素を使用できる。
工程(1)の目的生成物、化合物(III)は2,3−ジヒドロフランとアセター
ル(II)との1:1付加物である。化合物(III)自体がアセタールであるので、
それはさらに2,3−ジヒドロフランを付加して、2:1付加物(いくつかの異
性体があり、そのいずれもアセタールである)を形成し得る。追加の2,3−ジ
ヒドロフランとのこの縮合は繰り返されて、ついには生成物混合物が2,3−ジ
ヒドロフランとアセタール(II)との1:1、2:1、3:1、4:1等の付加
物を全て含むことになる場合もある。1:1付加物の段階より先の追加の縮合は
いずれも、目的生成物である1:1付加物の収率を低下させることは明らかであ
る。他の要因も、2,3−ジヒドロフラン供給量に基づく1:1付加物の収率を
低下させる可能性があるが、この方法は重要なものである。従って、反応条件は
、2,3−ジヒドロフランとアセタールとの1:1付加物の製造を最適化し且つ
全ての他の付加物/副生物の形成を最小化するように選ぶ。
化合物(III)、すなわち、2,3−ジヒドロフランとアセタール(II)との1
:1付加物の収率の1つの重要な決定因子は触媒濃度である。2,3−ジヒドロ
フランを添加する前に、本質的に全ての触媒が触媒/アセタール(II)複合体と
して存在する。2,3−ジヒドロフランの最初の増分を添加すると、反応はまず
、触媒/1:1付加物複合体を形成する。この複合体は、アセタール(II)と反
応して、触媒/アセタール(II)複合体及び遊離1:1付加物を再形成する(重
合用語では連鎖移動工程)か、あるいは追加の2,3−ジヒドロフランと反応し
て触媒/2,1−付加物複合体を形成する(重合用語では連鎖生長工程)。本発
明の方法において重合度が常に低いままであっても、この反応は実際に重合の第
1段階であり、連鎖移動工程と連鎖生長工程との競合がより高級な付加物の形成
量及び逆に1:1付加物の収率を決定する。
好ましい触媒濃度範囲より低い触媒濃度を使用する場合には、触媒が制限試薬
となり、未反応の2,3−ジヒドロフランを集積させる。触媒/1:1付加物複
合体(触媒/アセタール複合体と2,3−ジヒドロフランとの反応による)は未
反応2,3−ジヒドロフランと接触すると、若干の触媒/2:1付加物複合体を
形成し、そのため、1:1付加物の収率が低下する。好ましい触媒濃度範囲内で
操作する場合には、2,3−ジヒドロフランが制限試薬となるので、触媒/1:
1付加物複合体(触媒/アセタール複合体と2,3−ジヒドロフランとの反応に
よる)は未反応2,3−ジヒドロフランとは本質的に接触しない。従って、触媒
/2:1付加物複合体はほとんど形成されず、1:1付加物が高収率で得られる
。触媒/1:
1複合体のほとんど全てが、アセタール(II)との交換によって新しい触媒/ア
セタール(II)複合体及び遊離1:1付加物を形成するにはまだ時間がかかる。
2,3−ジヒドロフランの次の増分が添加されると、それはほとんど触媒/アセ
タール(II)複合体とだけ接触するので、それが接触し得る全てがアセタール(
II)とさらに多量の1:1付加物を生成する。
好ましい触媒濃度範囲より高い触媒濃度を使用する場合には、別のメカニズム
により、1:1付加物の収率がより低くなる。このようなより高い触媒濃度を使
用すると、アセタール(II)のアルコール及びビニルエーテルへの分解が促進さ
れる。2,3−ジヒドロフラン自体がビニルエーテル誘導体であるので、アセタ
ール(II)の分解によって生じたビニルエーテルは2,3−ジヒドロフランと同
じ反応を受ける。さらに、アセタール分解によって得られるアルコールはまた、
2,3−ジヒドロフランに付加して、2−アルコキシテトラヒドロフラン副生物
を形成し得る。その結果、アセタール(II)及び2,3−ジヒドロフラン反応体
はいずれもそれらの1:1付加物以外の生成物を形成するので、目的生成物の収
率は低下する。
本発明の第2工程においては、テトラヒドロフラン環に悪影響を及ぼすことな
く、アルコキシ基全てを水添分解することによって式(III)の中間体を3−アル
キルテトラヒドロフランに転化する。水添分解は、触媒量の第VIII族貴金属、水
及び強酸の存在下に、水添分解条件の温度及び水素圧下で中間体(III)を水素と
接触させることによって実施する。
本発明者らの新規方法の第2工程に使用できる触媒金属の例としては、パラジ
ウム、白金、ロジウム、レニウム、ルテニウム、イリジウムなどが挙げられる。
第VIII族貴金属触媒は好ましくはロジウ
ム、イリジウム、または特にパラジウムである。第VIII族貴金属またはレニウム
金属触媒の形態は重要ではないが、高価な金属の最も効率のよい利用は、適当な
担体に担持された微粉の形態である。通常、担持触媒は、適当な触媒担体材料、
例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、硫酸バリウム、及
び硫酸カルシウム上に0.1〜10重量%の第VIII族貴金属またはレニウム金属を付
着させたものからなる。あるいは、触媒金属は微粉の非担持金属としても使用で
きる(例えば、パラジウムブラック)が、この触媒利用形式は高価な第VIII族貴
金属の最も有効な利用とは言えない。また、第VIII族貴金属またはレニウムの化
合物、例えば、塩、例えば、塩化物、フッ化物、臭化物、硝酸塩及びカルボン酸
塩、例えば、酢酸塩もしくは安息香酸塩;酸化物;または水酸化物も使用できる
。第VIII族貴金属及びレニウムの可溶性塩の他に、燐酸塩、硫酸塩またはヨウ化
物のような不溶性塩も使用できる。
触媒として有効な第VIII族貴金属またはレニウム金属の濃度は、使用金属、金
属の使用形態、及び他の作業変数、例えば、温度、圧力及び滞留時間によってか
なり異なる。例えば、存在する触媒金属の量は、存在する中間体(III)のg−モ
ル当たりの第VIII族貴金属またはレニウム金属のグラム原子に基づき0.000001%
から100%超であることができる。存在する第VIII族貴金属またはレニウム金属
の量は、好ましくは、存在する中間体(III)のモル当たり第VIII族貴金属または
レニウム0.00001〜0.2グラム原子、最も好ましくは0.001〜0.1グラム原子である
。
本方法の第2工程に使用できる強酸の例としては、硫酸、燐酸、硝酸、フッ化
水素酸、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、トリフルオロ酢酸またはスル
ホン酸、例えば、アルカンスルホン酸、アリールスルホン酸、例えば、トルエン
スルホン酸、及びポリマー
スルホン酸、例えば、スルホ基を有するスチレン/ジビニルベンゼンポリマーか
らなる酸性イオン交換樹脂が挙げられる。強酸の濃度は、0.000001モル〜15モル
濃度の範囲であることができるが、0.001モル〜5モル濃度の濃度が好ましく、0
.01〜1モル濃度の濃度が最も好ましい。好ましい量のパラジウム及び強酸を用
いる場合には、パラジウム対強酸のモル比は1:10〜1:100の範囲である。
いくつかの操作様式では、強酸は少なくとも1種の不揮発性(または低揮発性
)強酸、例えば、硫酸及び燐酸を含浸させた触媒担体材料の形態で使用できる。
担持触媒の総重量に基づき0.0001〜50重量%の硫酸または燐酸を含むアルミナ、
チタニア、ジルコニア、硫酸バリウム、硫酸カルシウム及びシリカは、このよう
な担持強酸の例である。あるいは、強酸は、スルホン酸基を有するポリマーを含
んでなる酸性イオン交換樹脂であることもできる。また、化合物(III)は完全に
は気体(反応温度において)化合物(I)に転化されないことが多いので、触媒
活性を保持するためには、追加の不揮発性酸を触媒担体上に定期的に再投入しな
ければならない。
本方法の第2工程は、ヨウ素またはヨウ化物塩のようなヨウ素化合物の存在下
に実施できる。本方法の工程(2)において促進剤としてヨウ素または/及びヨ
ウ素化合物を使用することによって、比較的低い反応温度が使用できるようにな
る。任意のヨウ素促進剤の濃度によっては、水添分解温度は、ヨウ素促進剤を用
いない場合の温度より最高で60℃低くすることができる。しかし、ヨウ素は水添
分解触媒阻害剤であるので、この阻害作用を打ち消すためには、金属触媒の必要
量を通常は200〜1000%まで増加させなければならない。ヨウ素促進剤の使用は
、比較的低い温度に対して生成物収率が感受性であるか否かに左右される。ヨウ
素またはヨウ素化合物の使用が妥当と認められる場合には、工程(2)の反応混
合物中に存在
するヨウ素またはヨウ素化合物の量は、0.000001モル〜10モル濃度の範囲である
ことができる。しかし、0.0001〜1モル濃度の範囲のヨウ素濃度が好ましく、0.
001〜0.1モル濃度の範囲の濃度が最も好ましい。
本発明の方法の第2工程は、少なくとも3つの基本操作様式を用いて行うこと
ができる:(1)全てのアルコキシ側基を同時に除去する単一の簡便な水添分解
反応(前記);(2)一方の容易に水添分解されるアルコキシ基を他方より前に
除去する逐次水添分解;及び(3)全てのアルコキシド基をそれらの対応するア
ルコールとして除去するデアルコーリシスとそれに続く水素添加。これらの3つ
の操作様式の各々(または第2の工程の実施態様)において、式(III)の中間体
、すなわち、1:1付加物は、テトラヒドロフラン環に悪影響を及ぼすことなく
、アルコキシ基の全てを水素で置換することによって化合物(I)の3−アルキ
ルテトラヒドロフランに転化される。3つの操作様式全てにおいて同一触媒系を
使用して、条件の苛酷さ及び水添分解ポテンシャルを変化させる成分の比を調節
できる。第2及び第3の操作様式は、第1の操作様式の段階的または逐次的実施
態様または変形であり、前述の工程(2)の定義に包含される。
第1の操作様式においては、触媒量の第VIII族貴金属を含む水添触媒、強酸、
水及び場合によってはヨウ素促進剤の存在下、水添分解条件の温度及び圧力下で
中間体(III)を水素と接触させることによって、全てのアルコキシ側基を同時水
添分解によって除去する。この処理によって、テトラヒドロフラン環がほとんど
無傷のまま、アルコキシ側基が優先的に除去される。この同時水添分解の間にお
いて、反応をその進行の種々の時点で減速するかまたは中断することによって、
反応の種々の段階を、付随する中間体と共に観察でき
る。あるいは、水添分解条件の苛酷さを次第に増すことによって反応をこれらの
段階に区分けして、いずれの段階で生成する生成物(I)も全て回収し且つ第2
の場合の理論を与えることによって、生成物(I)の全収率を増大することがで
きる。
第2の操作様式[工程(2)の第2の実施態様]においては、各アルコキシ基
は選択的水添分解によって除去する。例えば、触媒量の第VIII族貴金属、水及び
強鉱酸(任意のヨウ素促進剤が存在しないことを除いて、第1の操作様式の触媒
系と同様)の存在下において中温で化合物(III)を水素で処理すると、2−アル
コキシ基が選択的に除去されると共に、化合物(I)が中等度の収率で生成する
。この選択的水添分解は化合物(III)アセタール基の加水分解によって起こり、
4−ヒドロキシ−2−(1−アルコキシアルキル)−ブタナールが生成し、それ
が水素添加または水添分解を受けて、化合物(I)及び3−(1−アルコキシア
ルキル)テトラヒドロフランが生成すると考えられる。他の生成物は、式:
を有する3−(1−アルコキシアルキル)テトラヒドロフランの2つの異性体で
あり、これらの3種の生成物の総合収量はほとんど定量的である。化合物(IV)
からアルコキシ側基を除去するには、より苛酷な水添分解条件の温度、酸度及び
圧力が必要であるが、水の有益な効果はもはや存在しないので、反応は、水によ
って悪影響を受ける水添分解触媒の多量の存在下において起こることができる。
従って、化合物(III)の最初の処理よりも高い温度で、触媒量の第VIII族貴金属
触媒、強鉱酸及び任意のヨウ素またはヨウ素化合物促
進剤(水が存在しないことを除けば、第1の操作様式の場合の触媒系と同様)の
存在下において化合物(IV)の水添分解を行うことによって、アルコキシ側基が
除去されて、化合物(I)が中〜高収率で形成されるであろう。あるいは、水は
もはや反応混合物に必要な要素ではないので、触媒量の第VIII族貴金属触媒の存
在下における化合物(IV)の水添分解は、化合物(VIII)の第1の処理よりも高
い温度において、酸素が高く感水性の固体酸、例えば、アルミナまたはチタニア
上で起こり(水が存在せず、且つ固体酸が鉱酸及びヨウ素の代わりをする以外は
第1の操作様式の触媒系と同様)、化合物(IV)からアルコキシ側基が除去され
て、化合物(I)が高〜中収率で形成され得る。この簡便でない側基の逐次除去
の第1の利点は、攻撃を受けやすいテトラヒドロフラン環を不要に苛酷な水添分
解条件に供することなく、化合物(I)の総収率を改善できる点にある。
第3の操作様式においては、化合物(III)を酸性触媒上に通して、それを式:
を有する3−アルキルフラン及び1種またはそれ以上のアルコールに開裂するこ
とによって、全てのアルコキシ側基の除去が水素添加とは別個に行われる。3−
アルキルフランは、公知の方法で、例えば、Starrら(Org.Synth.Coll.Vol.
II,566(1943))によって記載された方法によって水素添加して、高収率で対
応する3−アルキルテトラヒドロフランを形成できる。フラン環の活性は高いた
め、この操作様式では多数/多量の副生物が生成し、従って、化合物(I)の最
大収率は得られない。
工程(2)を実施する温度は、使用する操作様式に左右される。工程(2)を
実施するための第1の操作様式(全てのアルコキシ側基の同時水添分解)の温度
範囲は、50〜450℃であり、150〜350℃が好ましく、200〜300℃が最も好ましい
。ヨウ素が任意の促進剤として存在する場合には、最も好ましい温度範囲は140
〜240℃に低下する。第2の操作様式(アルコキシ側基の逐次水添分解)を用い
る場合には、第1のアルコキシ側基を除去するための温度範囲は0〜250℃であ
り、50〜200℃が好ましく、70〜180℃が最も好ましい。第2のアルキコシ基の除
去に関しては、温度範囲は150〜400℃であり、200〜350℃が好ましく、220〜330
℃が最も好ましい。第3の操作様式(デアルコーリシス/水素添加)を用いる場
合には、デアルコーリシスの温度範囲は20℃〜400℃であり、50〜350℃が好まし
く、80〜300℃が最も好ましい。得られたフラン(V)の水素添加に関しては、
温度範囲は0〜200℃であり、50〜150℃が好ましく、60〜140℃が最も好ましい
。
本方法の工程(2)に使用する水素圧(操作様式に無関係)は重要ではないが
、例えば、0.1〜1000バール(絶対)の範囲であることができ、2〜500バール(
絶対)、特に10〜100バール(絶対)の範囲の水素圧が好ましい。第2工程では
、不活性溶剤、例えば、水、アルカン及びハロゲン化炭化水素の使用は任意であ
って、必須ではない。
R1が表すことができる脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式基及び各R2が
表すことができるアルキル基は重要ではなく、炭素数12以下であることができる
。このような基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル
、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、ベンジル、フ
ェネチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロ
ヘプチル、フェニル、及び低級アルキル、低級アルコキシまたはハロゲンで置換
されたフェニルが挙げられる。R1及び各R2は好ましくは独立して、アルキル、
例えば、炭素数8以下のアルキル、最も好ましくは低級アルキル、すなわち、炭
素数4以下のアルキルから選ばれる。
本発明の方法をさらに、以下の実施例によって説明する。例1
この例において使用した装置は、上部撹拌機、添加漏斗、温度計の入ったサー
モウェル、隔壁キャップ(septum cap)で被覆されたサイドアーム、ならびに反
応の間じゅう、乾燥窒素ブランケットを装入するための窒素入り口を上部に有す
る還流冷却器を装着した500mL丸底フラスコである。装置全体をフレーム(flame)
乾燥後、この丸底フラスコに、無水アセタール250mL(アセトアルデヒドジエチ
ルアセタール、d=0.8314,208g、1.759モル、水素化カルシウムからの蒸留に
よって乾燥)を装入した。添加漏斗には、無水アセタール80mL(67g、0.563モ
ル)及び無水2,3−ジヒドロフラン55mL(d=0.927,51g、0.727モル、水素
化カルシウムからの蒸留によって乾燥)を装入した。使用した総アセタール対2
,3−ジヒドロフランのモル比は3.19であった。
丸底フラスコの内容物を撹拌し且つ5℃に冷却後、三フッ化ホウ素エーテル錯
化合物0.14mL(d=1.154,0.12g、0.81ミリモル)を隔壁キャップを通して添
加して、反応ポット中三フッ化ホウ素濃度を237ppmとした。丸底フラスコの撹拌
内容物への添加漏斗内容物の添加には160分間を要し、添加の間じゅう温度を5
〜15℃に保った。添加完了後さらに15分間撹拌することによって、2,3−ジヒ
ドロフランが完全に消費されるようにした。この時点におけるフラスコ内容物の
ガスクロマトグラフィー(GC)分析から、2,3−ジ
ヒドロフランの転化率が99.8%であることがわかった。1,1−付加物である2
−エトキシ−3−(1−エトキシエチル)テトラヒドロフラン(異性体4個)の
収率は84.4%であった。ここで報告する収率は全て、実験の終了時に反応混合物
のGC分析によって求められた収率(面積%)である。生成物はさらに、2:1付
加物である2−(2−エトキシテトラヒドロフラン−3−イル)−3−(1−エ
トキシエチル)テトラヒドロフラン(異性体16個)を収率13.2%で及び3:1付
加物である2−(2−エトキシテトラヒドロフラン−3−イル)−3−(3−(
1−エトキシエチル)−テトラヒドロフラン−2−イル)テトラヒドロフラン(
異性体64個)を収率0.9%で含んでいた。単離された1:1付加物の沸点は91〜9
4℃/18mmHgであった。例2
アセタール対2,3−ジヒドロフランのモル比を3.24とし、添加時間を130分
間とし、三フッ化ホウ素触媒濃度を223ppmとし及び反応温度を40〜55℃して、例
1を繰り返した。1:1付加物2−エトキシ−3−(1−エトキシエチル)−テ
トラヒドロフランの収率は80.0%であった。2:1付加物の収率は10.3%であり
、3:1付加物の収率は1.6%であった。物質収支の残りは、アセタールのオリ
ゴマーが5.0%及び2−エトキシテトラヒドロフランが3.1%であった。例3
アセタール対2,3−ジヒドロフランのモル比を3.35とし、上部撹拌機の代わ
りに磁気撹拌バーを用い、触媒濃度を三フッ化ホウ素103ppmとし、反応温度を3
〜7℃とし且つ添加時間を60分間とする以外は、例1を繰り返した。1:1付加
物の収率は67.9%であり、2:1付加物の収率は22.5%であり、且つ3:1付加
物の収率は4
.0%であった。例4
アセタール対2,3−ジヒドロフランのモル比を3.62とし、触媒濃度を106ppm
とし、反応温度を−2〜5℃とし且つ添加時間を245分間として、例1を繰り返
した。1:1付加物の収率は68.7%であり、2:1付加物の収率は24.0%であり
、且つ3:1付加物の収率は5.2%であった。さらに、2,3−ジヒドロフラン
とアセタールとの4:1付加物である2−((2−エトキシテトラヒドロフラン
−3−イル)−テトラヒドロフラン−3−イル)−3−(3−(1−エトキシエ
チル)テトラヒドロフラン−2−イル)−テトラヒドロフランが0.1%の収率で
検出された。
例2で得られた結果を比較して、この例で得られた結果は、撹拌効率の改良及
び試薬添加時間の延長の効果はごくわずかであることを示している。例5
反応ポットを5000mL丸底フラスコとする以外は、例1を繰り返した。アセター
ル対2,3−ジヒドロフランのモル比は3.52であり、三フッ化ホウ素触媒濃度は
43ppmであり、試薬添加時間は200分間であった。1:1付加物の収率は66.5%;
2:1付加物の収率は25.9%;3:1付加物の収率は5.8%;及び4:1付加物
の収率は0.5%であった。例6
アセタール試薬として再循環したアセタールを用い且つ装置及び試薬を脱水す
るために異なる手段を用いて、例4を繰り返した。この場合には、塩基化(basi
fied)蒸留ポットからフラッシュ蒸留された、アセタールとそれより沸点がわず
かに低い不純物を含む、前の実験からのアセタールを、蒸留ヘッドの温度が101
℃に達するま
で分別蒸留した。この時点で、蒸留が終わり、還流が始まり、還流ヘッド中に凝
縮している全ての水をディーンスタークトラップによって分離する。最後の水の
除去後6時間以内に、還流を中止し、フラスコの内容物を室温まで冷却させた。
この時点で、フラスコ内容物の分析は10ppm未満の水分量を示した。
これ以降、反応温度8〜13℃、アセタール対2,3−ジヒドロフランモル比3.6
2、三フッ化ホウ素濃度35ppm及び試薬添加時間145分間を用いて、反応を通常通
りに続けた。後処理(work up)を変更して、三フッ化ホウ素触媒を除去すること
によって、この触媒がアセタール/2,3−ジヒドロフラン付加物を損なわない
ようにした。この変更においては、全ての縮合試薬の追加を完了し、そして全て
の試薬が反応するための時間をさらに30分間とった後、三フッ化ホウ素触媒3モ
ル当量に匹敵する充分な量の水酸化ナトリウムの20%メタノール溶液を徐々に添
加した。未反応のアセタール及び他の低沸点成分を、底部温度が120℃に達する
まで150mmHgにおいて分別蒸留によって除去した。アセタール、メタノール及び
他の低沸点成分を含む留出物を他の製造に再循環するために収集した。基礎原料
を室温に冷却し、圧縮グラスウールフィルターを通して吸引濾過して、沈澱した
塩を除去した。濾液を蒸留フラスコに戻して、引き続き分別蒸留を行い、濾過ケ
ークを廃棄した。再循環のためのバッチと合する、より多くのアセタールを含む
初留の後に、74〜78℃/7mmHgにおいて1:1付加生成物が蒸留された。さらに
、125〜138℃/7mmHgにおいて2:1付加生成物が蒸留された。これらの各フラ
クションのガスクロマトグラフィー分析は、1:1付加物の4個の立体異性体及
び2:1付加物の考えられる16個の立体異性体の混合物のうち12個に対して95%
以上の純度を示した。
ガスクロマトグラフィーによって測定された生成物の収率は、単
離収率61.3%に比較して1:1付加物63.2%であった。2:1付加物の収率は、
22.9%の単離収率に比較してガスクロマトグラフィーによって25.8%であった。
この実験は、再循環アセタール及び触媒除去操作の使用の実現可能性を示してお
り、これらはいずれも商業的方法で使用できる。例7
アセタール対2,3−ジヒドロフランモル比3.21、反応温度−6〜−2℃、触
媒濃度1018ppm及び試薬添加時間175分間を用いて、例5を繰り返した。反応混合
物のガスクロマトグラフィー分析から、1:1付加物の収率が91.2%、2:1付
加物の収率が7.1%及び3:1付加物の収率が0.2%であることがわかった。例8
アセタール対2,3−ジヒドロフランモル比3.48、反応温度−9〜−6℃、触
媒濃度2125ppm及び試薬添加時間165分間を用いて、例5を繰り返した。反応生成
物のガスクロマトグラフィー分析から、1:1付加物の収率が84.3%、2:1付
加物の収率が5.0%、3:1付加物の収率が0.1%、1,1,3−トリエトキシブ
タンの収率が6.5%、1,1,3,5−テトラエトキシヘキサンの収率が0.1%、
及び2−エトキシテトラヒドロフランの収率が3.8%であることがわかった。例9〜13
前記例に使用した操作を繰り返して例9〜13を構成する実験を行った。種々の
アセタール:DHFモル比、温度、添加時間及び三フッ化ホウ素触媒の濃度を用い
てアセタールを2,3−ジヒドロフラン(DHF)と反応させた。使用条件及び得
られた結果を表I及びIIに示す。表中、「温度」は各反応の実施温度(℃)、「
添加時間」は添加漏斗からのアセタール添加時間(時間)及び「触媒濃度」は各
反
応の最初に反応混合物中に存在する三フッ化ホウ素の量である。表IIには、各実
験で得られた生成物の量を報告し、「Adct」は付加物を意味し、TEBは1,1,
3−トリエトキシブタンであり、TEHは1,1,3,5−テトラエトキシヘキサ
ンであり、ETHFは2−エトキシテトラヒドロフランである。
例14〜17
これらの実験では、内径が9.5mm(3/8インチ)である304ステンレス鋼管の
30.5cm(12インチ)の断面材からなる管状反応器を使用した。この反応器は、グ
ラスウールによって所定の位置に保持された、12重量%の燐酸が含浸された3〜
10メッシュ(粒子約1〜2mm)の珪藻土10.0gを含んでいた。反応温度を記録す
るために、
触媒層の中央に熱電灯を配置した。ガス流を55mL/分として、反応器をオーブン
中で必要な反応温度±3℃に加熱し、反応の間じゅう、温度調節器によってこの
温度を保持した。反応は、予熱器を通して10mL/時の速度で2−エトキシ−3−
(1−エトキシエチル)テトラヒドロフラン(EEETHF)を反応器にポンプ輸送し
てサンプルを気化することによって反応を開始した。次いで、気化した材料を指
定温度で触媒上に通した。反応器からの流出液を、無水炭酸カリウムを含む50mL
の丸底フラスコに流し入れて、触媒担体から溶出した酸を全て中和し、フラスコ
の上部にドライアイス冷却トラップを装着して、反応器から出た揮発性液体を全
て捕捉した。
これらの脱アルコール化反応の過程で、次の2つのことが明らかになった:
(1)担体から溶離された触媒の酸成分は、供給原料の一部として再装入する必
要がある;(2)反応の進行に連れて、触媒はフラン分解生成物で徐々に膨張し
て、最終的には反応器を完全にふさぐ。
これらの実験の結果を以下の表IIIに要約する。これらの実験の目的は、これ
らの例中において、フランの水素添加による、3−アルキルテトラヒドロフラン
への他の経路を調べることにある。表III中において、「温度」は、触媒層の中
心で測定された温度±3℃、「接触時間」は、気化した反応体が燐酸触媒と接触
している接触時間(秒)であり、「転化率」は反応体EEETHFの転化率モル%であ
る:
各反応生成物に関する生成物選択率は次の通りである:
EtFuranは3−エチルフランであり、MEEDHFはモノエトキシエチルジヒドロフラ
ンを意味し、VDHFはビニルジヒドロフランを意味し、Heaviesはより高分子量の
化合物を意味する。 例18
窒素フラッシした、Hastelloy B合金製の300mLオートクレーブに次の材料を装
填した:2−エトキシ−3−(1−エトキシエチル)テトラヒドロフラン20mL(
d=0.9204,18g、93ミリモル)、ヨウ素1.0g(3.94ミリモル)、濃硫酸0.50m
L(d=1.84,0.92g、9.2ミリモル)、5重量%パラジウム担持活性炭5g及び
蒸留水100mL。オートクレーブをシールし、その内容物を、220℃において水素圧
35.5バール(絶対)(500psig)下で60分間撹拌しながら加熱した。この間に、圧
力降下は13.4バール(絶対)(180psig)に達した。この時間の最後に、ガスクロ
マトグラフィー分析は、出発原料の転化率が99.8%であることを示した。3−エ
チルテトラヒドロフラン〜の収率は59.6%であった。物質収支の残りは、多数の
化合物から構成されたが、形成されたいずれの化合物も選択率が0.6%以下であ
った。例19
ヨウ素を省き且つ水添分解を300℃において60分間にわたって実施した以外は
、例18に記載した操作を繰り返した。ガスクロマトグラフィー分析から、出発原
料の転化率が100%であり、3−エチル
テトラヒドロフランへの選択率が38.7%であることがわかった。例20
触媒を5重量%ロジウム担持活性炭に代え且つ水添分解を220℃及び水素圧35.
5バールにおいて1時間実施した以外は、例18を繰り返した。反応混合物のガス
クロマトグラフィー分析から、EEETHF出発原料の転化率が100%であり、3−エ
チルテトラヒドロフランの収率が61.2%であることがわかった。例21
触媒を5重量%ロジウム担持アルミナに代え、ヨウ素を省き且つ水添分解を12
0℃及び水素圧35.5バールにおいて1時間実施した以外は、例18を繰り返した。
反応混合物のガスクロマトグラフィー分析から、出発原料の転化率が100%であ
り、3−エチルテトラヒドロフランの収率が45.1%であることがわかった。例22
触媒を5重量%イリジウム担持活性炭に代え、ヨウ素を省き且つ水添分解を18
8℃及び水素圧35.5バールにおいて1時間実施した以外は、例18を繰り返した。
反応混合物のガスクロマトグラフィー分析から、出発原料の転化率が100%であ
り、3−エチルテトラヒドロフランの収率が31.2%であることがわかった。例23
窒素でフラッシした2リットルのParrオートクレーブに以下の材料を装入した
:2−エトキシ−3−(1−エトキシエチル)テトラヒドロフラン100mL(d=0
.9402,94g、0.49モル)、蒸留水900mL、85重量%燐酸6.5mL(d=1.685,9.3
g、95ミリモル)及び5重量%パラジウム担持活性炭7.22g。オートクレーブヘ
ッドをシール後、内容物を急速に撹拌し且つ水素を水素圧35.5バール(絶対)ま
で供給することによって実験を開始した。反応の間じゅう、追加
の水素ガスを定期的に添加することによって、圧力を保持した。急速な撹拌を周
囲温度で30分間、次いで120℃で2時間、次いで160℃で2時間続けた。この間に
、総圧力消費は15.6バールに達した。反応混合物のガスクロマトグラフィー分析
から、3−エチルテトラヒドロフランの収率が65.3%;中間水添分解生成物であ
る3−(1−エトキシエチル)テトラヒドロフラン(異性体2個)の収率が32.2
%であり、有用な材料の総合収率が97.5%であることがわかった。
生成物の後処理において、ブフナー漏斗を通して反応混合物を減圧濾過するこ
とによって固体触媒を除去し、留出物500mLが収集されるまで濾液を水蒸気蒸留
した。この留出物は、生成された3−エチルテトラヒドロフラン及び3−(1−
エトキシエチル)−テトラヒドロフランの98%以上を含んでいた。まだ燐酸触媒
を含む水性蒸留残渣は、別の水添分解への再循環に適当であった。水蒸気蒸留か
らの留出物は2相に分離した。下方の水相はまだ、相当量の有機有価物を含んで
おり、これらは別の水蒸気蒸留に戻すことによって回収可能なものであった。上
方の有機相を分離し、乾燥させ、慎重に分別蒸留した。沸点114〜116℃の留分は
純度98%の3−エチルテトラヒドロフランから構成されていた。ポット残渣は、
純度96%の3−(1−エトキシエチル)テトラヒドロフランから構成されており
、これは3−エチルテトラヒドロフランへの転化に適当であった。例24
窒素フラッシした300mLハステロイB合金オートクレーブに以下の材料を装入
した:例23において回収した、純水でない3−(1−エトキシエチル)テトラヒ
ドロフラン20mL、ヘプタン100mL及び5重量%パラジウム担持アルミナ1.03g。
オートクレーブヘッドを取
り付け後、オートクレーブ内容物を水素圧35.5バールにおいて1時間撹拌しなが
ら290℃に加熱することによって、実験を開始した。この時間の最後に、ガスク
ロマトグラフィー分析は、出発原料の転化率が22.8%、3−エチルテトラヒドロ
フランへの選択率が51.7%であることを示した。例23において得られた3−エチ
ルテトラヒドロフランが65.3%である場合には、この2段水添分解による3−エ
チルテトラヒドロフランの総収率は81.9%である。例25
5重量%パラジウム担持炭素7.52g、ヨウ素1.50g、85重量%燐酸1.69g、3−
(1−エトキシエチル)テトラヒドロフラン50mL、水50mL及びメタノール50mLを
用い、且つ水素添加温度、圧力及び時間を各々、230℃、35.5バール(絶対)及
び1時間とすることによって、例24の操作を繰り返した。ガスクロマトグラフィ
ー分析は、出発原料の転化率が78.2%及び3−エチルテトラヒドロフランへの選
択率が65.4%であることを示した。例26〜35
3−エチルテトラヒドロフラン(ETHF)及び3−(1−エトキシエチル)テト
ラヒドロフラン(EETHF)を共に生成する種々の条件及び触媒を用いて、例18及び2
3に記載した操作を繰り返した。使用した触媒系は次の通りであった:
例26:5重量%Pd担持炭素13.04g、濃硫酸1.0mL。
例27:1重量%Pd担持炭素5.02g、濃硫酸1.0mL。
例28:1重量%Pd担持炭素5.01g、85重量%燐酸1.0mL。
例29〜35:1重量%Pd担持炭素5.01g、85重量%燐酸1.0mL。
例26にのみヨウ素(1.0g)を用いた。
水添分解反応に使用した2−エトキシ−3−(1−エトキシエチル)テトラヒ
ドロフラン(EEETHF)と水との混合物は以下の通りで
ある:
例26:EEETHF 20mL、水100mL。
例27〜28:EEETHF 100mL、水900mL。
例29:EEETHF 150mL、水850mL。
例30〜35:EEETHF 200mL、水800mL。
例26〜35の水添分解反応は、水素圧35.5バール(絶対)において、以下の温度
及び反応時間で行った:
例26:180℃で1時間。
例27〜30:120℃で2時間、160℃で2時間。
例31:111℃で2時間、150℃で2時間。
例32:100℃で2時間、140℃で2時間。
例33〜35:90℃で4時間、130℃で2時間。
例26〜35において得られた結果を表IVに報告する。表中において、示した値は
3−(1−エトキシエチル)テトラヒドロフラン(EETHF)、3−エチルテトラ
ヒドロフラン(ETHF)及びHeavues(高分子量化合物)への選択率である。EEETH
F反応体への転化率は例26においては99.9%、例27〜35においては100%であった
。