JP2002367800A - 高周波加速装置及び円形加速器 - Google Patents

高周波加速装置及び円形加速器

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JP2002367800A
JP2002367800A JP2001169455A JP2001169455A JP2002367800A JP 2002367800 A JP2002367800 A JP 2002367800A JP 2001169455 A JP2001169455 A JP 2001169455A JP 2001169455 A JP2001169455 A JP 2001169455A JP 2002367800 A JP2002367800 A JP 2002367800A
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signal
phase
fundamental wave
acceleration
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JP2001169455A
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Hideaki Nishiuchi
秀晶 西内
Kazuyoshi Saito
一義 齋藤
Masatsugu Kametani
雅嗣 亀谷
Katsuhisa Ike
勝久 池
Kazuhiro Umekita
和弘 梅北
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の目的は、偏向磁場強度の変化に追従し
た周波数設定値の更新制御と基本波信号の周波数フィー
ドバック制御のリアルタイム性を確保しかつ、基本波信
号の整数倍の高調波信号における振幅と位相のフィード
バック制御をディジタル信号処理で実現する高周波加速
装置及び、それを用いた円形加速器を提供することにあ
る。 【解決手段】本発明は、基本波信号とその整数倍の高調
波信号の周波数をフィードバック制御する第1のディジ
タル演算手段34a、基本波信号とその整数倍の高調波信
号の少なくとも位相をフィードバック制御する第2のデ
ィジタル演算手段34bとを独立して設け、第1と第2の
ディジタル演算手段34a、34bから出力される、基本波
信号とその整数倍の高調波信号の周波数指令値と位相指
令値および振幅指令値によって加速空胴2に加える加速
電圧を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する利用分野】本発明は、イオンビームなど
の荷電粒子を高周波電圧で加速する高周波加速装置及び
それを用いたシンクロトロンや蓄積リング等の円形加速
器に係わり、特に加速器内を周回するビームが低エネル
ギー領域の場合に生ずる空間電荷効果によるビーム損失
を抑制可能な高周波加速装置とそれを用いたシンクロト
ロンや蓄積リング等の円形加速器に関する。
【0002】
【従来の技術】イオンビームなどの荷電粒子を所望のエ
ネルギーまで加速するシンクロトロンは、前段加速器か
ら輸送されたビームをシンクロトロンに入射する入射装
置、シンクロトロンに入射したビームが一定軌道上を安
定に周回させるために必要な偏向磁場や四極磁場等を発
生する電磁石、周回ビームに高周波電圧を印加し、所望
のエネルギーまでビームを加速する高周波加速空胴(以
下、加速空胴)、周回ビームの強度や位置を計測するビ
ームモニタ、加速空胴に発生している高周波電圧の振幅
を計測する空胴電圧モニタから構成される。
【0003】前段加速器からシンクロトロンに入射され
た一様連続なビームは、加速空胴に印加した一定周波数
の高周波電圧で周回ビームが安定に加速可能な領域(以
下、高周波バケット)を形成し、周回ビームを集群化
(バンチ)する。この高周波電圧でビームを集群化する
制御を高周波捕獲といい、集群化したビームをバンチビ
ームという。
【0004】高周波捕獲でバンチしたビームを加速する
ため、偏向電磁石の磁場強度を強め、加速空胴に印加す
る高周波電圧の周波数を偏向磁場強度の変化に同期して
変化させる。従来は、特開平11-126700号公報や、T.Kas
uga, "B-CLOCK System for the KEK Main Ring" (IEEE,
NS-24, No.3, 1977, p1742)に記載されているように、
シンクロトロンを構成する偏向電磁石若しくは、シンク
ロトロンを構成する偏向電磁石と直列接続されている同
型の電磁石にサーチコイルなどの磁場検出素子を設置
し、磁場検出素子からの出力電圧からV-F(電圧-周波数
変換)回路などを用いて磁場強度の所定量変化毎にパル
ス信号(以下、Bクロック信号)を出力する機構(以
下、Bクロック発生装置)を設けている。このBクロッ
ク信号に基づき周波数設定値を更新することで、偏向磁
場強度の変化に同期した周波数制御を行うようにしてい
る。
【0005】また、周回ビームを構成する粒子は、シン
クロトロン内を設計軌道(設定軌道)の水平及び垂直方
向に振動しながら周回している。これらのビームの振動
をベータトロン振動といい、リング一周あたりの振動数
を水平チューン及び垂直チューンという。
【0006】ベータトロン振動によるビーム損失を抑
え、周回ビームを安定に加速するため、偏向磁場ととも
に四極磁場の強度を強め、ビームに集束力を与える。こ
の偏向磁場に対する四極磁場の磁場強度を調整すること
で、水平及び垂直チューンを制御することが可能であ
る。
【0007】なお、蓄積リングの場合は、高周波電圧で
周回ビームを集群化するが、偏向磁場や四極磁場及び高
周波電圧の周波数は変化させないため、実効的に周回ビ
ームの加速はせず、所望のビーム強度に達するまで蓄積
する。
【0008】シンクロトロンや蓄積リングにおいて、高
周波バケット内に集群化したビームのピーク電荷密度が
高くなると、空間電荷効果による発散力によりビーム損
失を生じやすくなる。このような損失は、入射ビームが
低エネルギーの場合や、周回ビームの強度が大きい場合
に生じやすく、特に高周波捕獲から加速初期の段階でピ
ーク電荷密度が高くなりやすい場合に問題となる。
【0009】また、空間電荷効果により周回ビームに発
散力が働くとチューンが低下する。このチューンの低下
によりベータトロン振動が不安定となり、ビーム損失が
生じやすくなる。特に、チューンの低下が0.25程度に達
すると、空間電荷効果による発散力に起因する不安定性
で、周回ビームを加速することができなくなると考えら
れている。
【0010】このような空間電荷効果によるビーム損失
を抑制するため、加速空胴に印加する高周波電圧の波形
を制御し、バンチ形状を平坦化することでピーク電荷密
度を低減することが行われている。高周波電圧の波形制
御には、周回ビームの周回周波数を基本波とする高周波
電圧に、基本波の整数倍の高調波を加える方法が用いら
れている。
【0011】例えば、A.Hofmann, "Bunches with Local
Elliptic Energy Distribution"(IEEE, NS-26, No.3,
1979, p.3526)に記載されているように、ビームを加
速する高周波電圧として、基本波信号とその二倍及び三
倍高調波信号を加速空胴に印加する。加速空胴、発振器
及び電力増幅器は、それらの高周波信号毎に独立に設け
るようにしている。
【0012】このような高周波加速装置は、それぞれの
高周波電圧毎に独立した制御が可能なため、高周波電圧
の周波数、位相、振幅のフィードバック制御が容易に実
現できる。しかし、高周波加速装置を構成するために必
要な加速空胴や発振器及び電力増幅器の台数が多くなる
ため、円形加速器の大型化及びコストの増大が問題とな
る。
【0013】また、特開平9-219300号公報に記載されて
いるように、広い周波数範囲で動作可能な加速空胴を用
い、一台の加速空胴に基本波信号とその整数倍の高調波
信号を同時に印加する方法がある。この方法を実現可能
な加速空胴として、特開平9-167699号公報に記載される
ように、装架磁性体に新素材を用いた加速空胴を用いる
ことで対応できる。
【0014】しかし、このような加速空胴を採用する場
合、印加する高周波電圧の周波数成分毎にフィードバッ
ク制御を実現するためには、加速空胴と同様に広い周波
数範囲での信号処理が必要となり、従来ではこのような
広い周波数範囲での信号処理が実現できないと考えら
れ、高調波信号の位相、振幅制御についてはプレプログ
ラミングによる調整が提案されている。
【0015】発振器の出力信号の位相と振幅を振幅変調
器及び位相調整器をプレプログラミング制御により調整
し、基本波信号とその整数倍の高調波信号の合成信号を
電力増幅器で増幅した後、広帯域動作の加速空胴に印加
する。この際、電力増幅器での利得と遅延の周波数特
性、加速空胴のインピーダンスの周波数特性、さらには
制御装置に使用される回路素子の周波数特性を考慮した
上で、振幅と位相の設定値をプレプログラミングする必
要があり、非常に多くの時間を要する作業になる。
【0016】特に、基本波信号に対して複数の高調波信
号を重畳した高周波電圧を印加する場合、振幅と位相の
調整要素が増えるため、プレプログラミングでの調整に
限界がある。その上、一度最適な値に設定したにもかか
わらず、周囲温度の変化による電力増幅器の利得や遅延
の特性変化により、加速空胴に印加すべき最適な電圧波
形を維持できなくなる。
【0017】近年、このようなプレプログラミングでは
加速電圧の波形制御に限界があることを解決するため
に、高周波加速装置にプロセッサなどのディジタル演算
装置を採用することが考えられている。
【0018】周回ビームの空間電荷効果を緩和するため
に最適な高周波電圧波形を図5に示す。高周波電圧波形
に平坦部を生成することで、バンチビームに作用する集
束力を弱め、バンチビームを進行方向に引き伸ばすこと
で電荷密度を平坦化する。一台の加速空胴に基本波と基
本波の整数倍の高調波信号を同時に印加する場合、図6
に示すような高周波電圧波形を一台の加速空胴に発生さ
せる必要がある。そのためには、高周波電圧の基本波信
号とその整数倍の高調波信号の振幅を2%以内、位相を
2度以内の精度で設定する必要がある。設定誤差が大き
いと高周波電圧に平坦部を形成できなくなるため、バン
チ形状の適切な制御ができない。その結果、ピーク電荷
密度を低減できず、空間電荷効果を緩和できなくなる。
【0019】高周波信号のディジタル信号処理システム
を採用することで周囲環境に依存しない高純度の高周波
信号を得られ、高周波加速制御装置およびそれを用いた
円形加速器システムの信頼性の向上につながる。さらに
基本波信号に対する複数の高調波信号の振幅と位相を調
整する際、それぞれの補正量をディジタル値に変換し、
数値演算による信号処理が可能となるため、各高調波信
号の振幅と位相設定値の系統立てた調整が容易となり、
調整効率も向上できる。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】しかし、基本波信号の
周波数フィードバック制御と、基本波信号に対する高調
波信号の振幅と位相のフィードバック制御を同時に実現
するためには、フィードバック制御に用いる各補正量の
入力点数と演算量が非常に多くかつ、これらのフィード
バック制御を処理しながらディジタル信号処理システム
の制御クロックと非同期で入力されるBクロック信号に
基づいた周波数設定値制御を処理しなければならず、デ
ィジタル信号処理システムを用いた高調波信号を含む高
周波信号の制御において、周波数フィードバック制御の
リアルタイム性を確保することが困難であるという問題
点を有する。
【0021】本発明の目的は、偏向磁場強度の変化に追
従した周波数設定値の更新制御と基本波信号の周波数フ
ィードバック制御のリアルタイム性を確保しかつ、基本
波信号の整数倍の高調波信号における振幅と位相のフィ
ードバック制御をディジタル信号処理で実現する高周波
加速装置及び、それを用いた円形加速器を提供すること
にある。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明の特徴とするとこ
ろは、基本波信号とその整数倍の高調波信号の周波数を
フィードバック制御する第1のディジタル演算手段と、
前記基本波信号とその整数倍の高調波信号の少なくとも
位相をフィードバック制御する第2のディジタル演算手
段とを独立して設け、第1と第2のディジタル演算手段
から出力される、基本波信号とその整数倍の高調波信号
の周波数指令値と位相指令値および振幅指令値によって
加速空胴に加える加速電圧を制御するようにしたことに
ある。
【0023】換言すると、本発明は高周波電圧の出力制
御を実施するディジタル信号処理系統を、高速な信号処
理が要求される周波数制御系統と位相と振幅の信号処理
系統を独立して構成するようにしたことにある。
【0024】高周波電圧のフィードバック制御に必要な
補正量は、高周波電圧の基本波信号に関する周波数補正
量と、基本波信号とその高調波信号の位相補正量の二種
類がある。これらの補正量に基づいた高周波電圧のフィ
ードバック制御において、周波数と位相の信号処理系統
に要求されるリアルタイム性は異なる。
【0025】本発明のように、高速な信号処理が要求さ
れる周波数信号処理系統を他の信号処理系統から独立し
た構成とすることで、高周波電圧の周波数および位相制
御に要求されるリアルタイム性を確保することが可能と
なる。したがって、低エネルギー領域の周回ビームの加
速制御時に生ずる空間電荷効果によるビーム損失を抑制
可能な高周波加速装置を提供できる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を説明
する。 (実施例1)図1に本発明の第1実施例である高周波加
速装置の構成を示す。本実施例では、基本波信号に第二
高調波および第三高調波を重畳した高周波信号を印加す
る例を示す。
【0027】図1において、高周波加速装置は、偏向磁
場強度の変化を検出する磁場検出手段51と、磁場検出手
段51で検出した信号より周波数設定値を更新するための
Bクロック信号52を出力するBクロック発生装置50、シ
ンクロトロンに設置された加速空胴2、ビームモニタ4
1、加速空胴2に発生している電圧を検出する空胴電圧モ
ニタ42、ビームモニタ41及び空胴電圧モニタ42による検
出信号より、高周波電圧を構成する基本波信号の周波数
と振幅及び、高調波信号の振幅と位相の補正量を出力す
るビーム監視処理手段としてのモニタ信号処理部40、こ
れらの補正量に基づき高周波電圧のフィードバック制御
を実施し、高周波電圧の基本波信号とその整数倍の高調
波信号を出力する高周波加速制御装置30、高周波電圧の
周波数、振幅、位相の各制御データを生成し、生成した
データを高周波加速制御装置30のメモリ36に転送するコ
ンソール計算機8、高周波加速制御装置30から出力され
た基本波信号及びその整数倍の高調波信号を所望の振幅
値に調整し、基本波信号に高調波信号を合成した高周波
信号を生成する電圧制御部6、生成された高周波信号を
増幅する電力増幅器7から構成される。
【0028】高周波加速制御装置30は、Bクロック信号
52及び上位制御装置90からシンクロトロンの制御基準信
号として出力される制御タイミング信号91を入力するデ
ィジタル入力部(DI)31、モニタ信号処理部(補正量演
算部)40から出力される各補正量を入力するアナログ入
力部(ADC)32a、32b、電圧制御部6に基本波及びその
整数倍の高調波の振幅設定値を出力するアナログ出力部
(DAC)33、周波数の制御系統の処理と振幅と位相の制
御系統に独立に演算処理を実施するディジタル演算装置
としての2台の制御プロセッサ(CPU)34(34a、34
b)、制御プロセッサ34a、34bから指令される周波
数、振幅及び位相設定値(指令値)に基づき基本波及び
その整数倍の高調波を発生するディジタル発振部350、
ディジタル発振部350に設定するデータを基本波及びそ
の整数倍の高調波の周波数、振幅及び位相の初期設定デ
ータ(パターンデータ)を保存するメモリ(MEM)36
a、36b、フィードバック演算を実施する制御プロセッ
サ34にメモリ36(36a、36b)に保存されている設定デ
ータを更新制御するメモリアドレスコントローラ37a、
37b、各制御系統の制御同期を取るためのマスタクロッ
ク発振器(CLK)38から構成される。
【0029】図1の実施例では、高周波電圧を制御する
高周波加速制御装置30内のディジタル信号処理系統を、
周波数信号処理系統と振幅・位相信号処理系の二つに分
け、それぞれの信号処理系に独立に用意した制御プロセ
ッサ34a,34bによって独立に制御している。
【0030】高周波加速制御装置30は、シンクロトロン
の制御基準信号となる制御タイミング信号91に基づき、
高周波捕獲、ビーム加速などの制御を実施する。以下
に、高周波電圧の制御方法について説明する。
【0031】まず、基本波信号の周波数制御について説
明する。シンクロトロンは、ビーム加速開始の制御タイ
ミング信号91に基づき、偏向電磁石12の磁場強度を増加
させる。加速制御時における偏向電磁石12の偏向磁場強
度は図2(a)に示すように、加速初期、加速中期、加速
後期の三つの区間に分けられ、それぞれの区間において
偏向磁場強度の時間変化率を図2(b)に示すように変化
させることで、偏向磁場強度を滑らかに変化させる。
【0032】高周波電圧の周波数(f)は、偏向磁場強
度(B)と次式に示す式1に示す関係にある。
【0033】
【式1】
【0034】そのため、高周波電圧の周波数は図2(c)
に示したように、偏向磁場強度が変化する区間において
周波数設定値の更新制御を実行する。このような周波数
制御により、シンクロトロンに入射したビームを安定に
捕獲し、偏向磁場強度の変化に追従して所望のエネルギ
ーまで加速した後、ビームを安定に出射することができ
る。
【0035】シンクロトロンにおいてこのような周波数
制御を実行するため、所定量の偏向磁場強度の変化があ
る度に高周波電圧の設定周波数を更新するために、偏向
電磁石12に磁場検出手段51を設け、磁場検出手段51が検
出した信号よりBクロック信号と呼ばれる周波数の更新
制御クロック信号を発生するBクロック発生装置50を設
けている。
【0036】磁場検出手段51にはサーチコイルが用いら
れており、サーチコイルの出力電圧は図2(b)に示した
偏向磁場強度の時間変化率に比例した出力となる。Bク
ロック発生装置50は、磁場検出手段51の検出信号をV-F
変換することで偏向磁場強度の時間変化を積分し、所定
量の偏向磁場強度の変化がある度にBクロック信号52を
1パルス出力する。
【0037】Bクロック信号52には、偏向磁場強度の増
加を意味するB+信号と、減少を意味するB-信号の二種類
がある。Bクロック信号52は、偏向磁場強度の時間変化
に同期して出力されるため、加速初期などの偏向磁場強
度が滑らかに変化する制御区間では、Bクロック信号52
の出力周期は時間的に一定ではない。そのため、加速制
御時におけるBクロック信号52の出力周期は、制御区間
ごとに変化する。
【0038】加速初期における偏向磁場強度の変化と周
波数の更新制御の関係を図3に示す。Bクロック信号52
は図3(b)に示すように、図3(a)に示した偏向磁場強度
(B)の一定の変化量の変化(ΔB)毎に出力される。B
クロック信号52に基づき更新される周波数データ(Fd)
は、図3(c)に示すように理想的な周波数(F)の変化に
対して離散的に変化となる。周波数の離散的な変化は、
加速制御時のビーム損失の要因となるため、極力滑らか
に変化させる必要がある。そのため、Bクロック信号52
の1パルスあたりの偏向磁場強度の検出分解能は、1ガ
ウス以下とするのが望ましい。
【0039】このような設定周波数の更新処理を実行す
るため、図5に示すような高周波加速制御装置30のメモ
リ36内に、Bクロック信号52の1パルスあたりの偏向磁
場強度の検出分解能を刻み幅とし、入射エネルギーから
最大加速エネルギーに対応する偏向磁場強度の変化幅の
範囲で生成した周波数データが格納されている。
【0040】このような周波数データをメモリ内に保存
し、メモリアドレスをBクロック信号52に基づいて更新
することで、高周波電圧の偏向磁場強度に同期した周波
数制御が実行できる。
【0041】なお、周波数データのアドレスは、Bクロ
ック信号52に基づき更新されるため、万一、Bクロック
信号52のパルス数が周波数データ数よりも多くなった場
合、他のデータが保存されているメモリ領域にアクセス
する可能性がある。そのため周波数データを生成する偏
向磁場強度の範囲は、実際の変化幅の上下限値よりも余
裕を持って生成されている。
【0042】次に周波数フィードバック制御について説
明する。図3(c)に示したように、周波数補正量(Ffb)
は、周波数の理想値(F)に対するBクロック信号52によ
り更新された設定周波数(Fds)とのずれを一定周期で
演算する。
【0043】周波数フィードバック制御には、次に示す
二種類がある。まず、シンクロトロン内を周回するビー
ムが所定の軌道上を周回するよう、ビームモニタ41での
検出信号より周回ビームの位置を演算し、設計軌道(設
定軌道)との変位を高周波電圧の周波数で補正するビー
ム位置フィードバック(以下、ΔRフィードバック)
と、バンチビーム重心の設計位相(設定位相)からのず
れの補正するため、ビームモニタ41と空胴電圧モニタ42
の検出信号から加速電圧に対するビーム位相を演算し、
ビーム位相の振動振幅抑制を高周波電圧の周波数で補正
するビーム位相フィードバック(以下、Δφフィードバ
ック)がある。これらのフィードバックのうち、ΔRフ
ィードバックは約5-10Hz程度、Δφフィードバックは約
5-10kHz程度の応答性が要求される。
【0044】これら二種類のフィードバック制御を実施
する際、ビームモニタ41と空胴電圧モニタ42から出力さ
れる信号は高周波信号である。そのため、これらの信号
を高周波加速制御装置30のアナログ入力部32で直接サン
プリングし、上述の二種類の周波数補正量を演算した後
にフィードバック演算を実行すると高周波加速制御装置
30のリアルタイム性を損ねかねず、コスト的にも大きな
負担となる。そのため、モニタ信号に基づいた周波数補
正量の演算処理は、モニタ信号処理部(ビーム監視処理
部)40で実行している。
【0045】モニタ信号処理部40で演算処理された二種
類の周波数補正量は、高周波加速制御装置30の周波数信
号処理系統に設けられているアナログ入力部32aでサン
プリングし、次式の式2に示した周波数演算を行い基本
波信号の周波数フィードバック制御を実行する。
【0046】
【式2】
【0047】図4に周波数信号処理系統の制御タイミン
グチャート(部分)を示す。高周波加速制御装置30は、
加速制御開始タイミング信号91(図4(a))をディジタ
ル入力部31で読み込み後、Bクロック発生装置50から出
力されたBクロック信号52(図4(c))をディジタル入
力部31から読み込みを開始する。
【0048】Bクロック信号52に基づいた設定周波数デ
ータの更新処理は、高周波加速制御装置30の制御クロッ
ク信号と非同期の処理となる。一般にディジタル信号処
理における非同期処理は、制御装置にとって負荷とな
り、所望のレイテンシを実現する際の妨げとなる。その
ため、本実施例では、Bクロック信号52の最短周期より
も十分に高速なサンプリングが可能なディジタル入力部
を採用し、Bクロック信号52をディジタル入力部31のサ
ンプリング周期に時折入力してくる信号として取り扱う
ことが可能となる。
【0049】メモリアドレスコントローラ37aは、入力
されたBクロック信号52に基づき、メモリ36aにあらか
じめ用意されている周波数設定データのアドレスを更新
する(図4(d))。この際、周波数設定データ(Fd0)の
初期アドレスは加速制御開始時の偏向磁場強度に合わせ
てあらかじめ設定されている。
【0050】周波数補正量(dF)(図4(e)に記載)
は、システムクロック信号に基づきアナログ入力部32a
でサンプリングする。サンプリングされた周波数補正量
(dF)とBクロック信号52により更新された周波数デー
タ(Fd)より、制御プロセッサ34aで式2に示した(f)発
振器設定周波数(Fds)を演算し、ディジタル発振部350
に設定する。
【0051】また、基本波信号の整数倍の高調波信号に
関する周波数制御は、基本波信号の周波数フィードバッ
ク演算結果をディジタル発振部350内の逓倍処理回路351
で逓倍処理をすることで、周波数フィードバック制御を
反映した所望の高調波信号の周波数を得ることができ
る。本実施例では、逓倍処理回路351で二倍高調波信号
と三倍高調波信号を生成する。
【0052】なお、高調波信号は基本波信号に対して逓
倍演算処理を実施するため、基本波信号と高調波信号の
出力に位相遅れを生じる。その遅れを補正するために
は、逓倍処理回路351内に基本波信号を1倍する演算処
理装置を設けるか、ディジタル発信部350の基本波信号
の入力系統に遅延回路を設けるのが望ましい。このよう
な基本波信号に対する高調波信号の位相遅れを補正する
ことで、ビームを安定に加速可能な高周波電圧波形を得
ることができる。
【0053】以上のような演算処理された周波数データ
は、基本波信号と二倍および三倍高調波信号の周波数設
定値として、ディジタル発振部350に設定される。ディ
ジタル発振部350は、先に示した基本波信号の周波数よ
り所定の高調波信号の周波数を演算する逓倍処理回路35
1と、出力する高周波信号分のディジタル発振器352で構
成される。本実施例では、基本波信号と二倍および三倍
高調波信号を出力するため、三つの発振器を設けてい
る。
【0054】ディジタル発振器352は、上述したような
周波数フィードバック演算処理および逓倍処理された設
定周波数に基づいた正弦波信号を出力する。ディジタル
発振部350から出力される高周波信号は、加速空胴2に印
加するための振幅値制御を実行する電圧制御部6と、モ
ニタ信号処理部40に入力される。
【0055】次に、基本波信号の振幅と位相の制御につ
いて説明する。基本波信号の振幅は、上位制御装置90か
ら設定される高周波捕獲開始制御タイミング信号91に基
づき、図2(d)に示すように、周回ビームの高周波捕獲
開始と同時に0Vから徐々に振幅値を増加し、一様連続状
態の周回ビームを断熱的に集群化する。シンクロトロン
はバンチ形成が終了後、加速制御開始制御タイミング信
号91に基づき偏向電磁石12の磁場強度を強め、ビーム加
速制御を開始する。
【0056】加速制御時の基本波信号の振幅は、次式の
式3に示すように、偏向磁場強度の時間変化率(dB/dt)
とビーム重心に対する高周波電圧の位相(φs;以下、
同期位相)から求められる。
【0057】
【式3】
【0058】この式3において、偏向磁場強度の時間変
化率(dB/dt)は図2(b)に示したように、加速初期(Ta
s)と加速後期(Tae)に滑らかに変化させ、加速中期
(Taf)は一定とし、各区間ともに連続的に変化する。
そのため、高周波電圧の基本波の振幅も加速制御中はこ
の三つの区間に分けて制御する。
【0059】しかし電圧振幅値は、式3からも分かると
おり、周回ビームのエネルギー変化、つまり偏向磁場強
度の変化に同期して制御する必要はないため、周波数制
御のようにBクロック信号52に同期して制御する必要は
ない。そのため高周波加速制御装置30のシステム制御ク
ロック信号を分周した制御クロック信号(以下、Tクロ
ック信号と称する)に基づいた設定値の更新処理を実施
する。
【0060】このTクロック信号は、高周波加速制御装
置30にハードウェアとして用意するか、制御プロセッサ
34bのソフトウェア上で用意する。これにより、非同期
で入力されるBクロック信号による演算処理による高周
波加速制御装置30の負荷を軽減し、メモリ容量を抑える
ことができる。
【0061】また、式3は振幅値と同期位相のいずれか
一方が定まらない限り成立しない。そこで先に示した三
つの制御区間に分けて、振幅値のパターンを設定する。
振幅データはTクロック信号に合わせてコンソール計算
機8で生成し、あらかじめ高周波加速制御装置30のメモ
リ36bに格納される。振幅データは、制御開始とともに
高周波加速制御装置30のTクロック信号に同期して設定
値を更新する。
【0062】基本波信号の位相は、高調波信号の周波数
に対応した位相設定値の基準とするため、高周波電圧の
出力周波数範囲で0度にする。ただし、発振器350から加
速空胴2までの高周波信号の伝送線路において、運転周
波数範囲で位相のずれが同期位相の変化に比べて大きい
場合、位相ずれを補正するデータをあらかじめ用意して
おく必要がある。
【0063】次に基本波信号の整数倍の高調波信号にお
ける振幅と位相の制御について説明する。
【0064】基本波信号に重畳する高調波信号の振幅
は、重畳した結果生成される合成波の平坦部の幅を制御
し、同様に位相は、合成波の平坦部の勾配を制御する。
空間電荷効果を緩和可能な所望の合成波信号を形成に
は、まず基本波信号と二倍および三倍高調波を重畳する
場合、それぞれの高周波信号の振幅比を1:1:0.4程度
とし、高調波信号の位相はシンクロトロン内を周回する
バンチビームを正味加速も減速もしないように設定す
る。
【0065】また、高調波信号が重畳可能な周波数範囲
は、加速空胴2や電力増幅器7などの動作可能な周波数範
囲により制限がある。例えば、動作可能な周波数範囲が
1MHzから10MHzの帯域を持つ加速空胴2の場合、二倍高調
波が印加可能な基本波周波数の上限は5MHz、同様に三倍
高調波が印加可能な基本波周波数の上限は3.3MHzとな
る。そのため、図2(d)に示すように基本波信号に重畳
する高調波信号の振幅値は、高周波捕獲制御開始ととも
に基本波信号の振幅値と同期して増加させ、印加可能な
基本波周波数を超える前に徐々に減少させるようにす
る。
【0066】このような振幅制御を実行するため、空胴
電圧モニタ42で高周波電圧の基本波信号及び高調波信号
の振幅検出値と、高周波加速制御装置30から出力される
基本波信号とその整数倍の高調波信号の振幅設定値を電
圧制御部6に入力し、電圧制御部6で周波数成分毎に設定
値に対する検出値のずれより、一般にAVC(Automatic V
oltage Control)と呼ばれる振幅値に対するフィードバ
ック処理を実行する。
【0067】また、高調波信号の位相は、高周波電圧の
伝送線路における各周波数設定値での位相遅れを補正す
る位相遅れ補正データと、シンクロトロン内を周回する
バンチビームの同期位相の変化に同期した同期位相設定
データの二種類から構成される。
【0068】このうち位相遅れ補正データは、高周波電
圧の出力周波数に合わせたデータである必要があるた
め、あらかじめ高周波電圧の伝送路における発振器出力
信号に対する加速空胴2に発生する高周波電圧の位相遅
れを高周波電圧の出力周波数範囲で測定し、周波数に対
する位相遅れの近似式を求める。
【0069】この近似式に、別途用意した基本波信号の
周波数データを二倍および三倍した高調波電圧の周波数
を代入し、所定の高調波信号の位相補正データを生成す
る。一方、バンチビームの同期位相の変化に追従した高
調波信号の同期位相設定データは、式3において、基本
波信号の振幅設定値から同期位相(φs)を求め、この
位相データを二倍ないし三倍することで、二倍高調波信
号および三倍高調波信号の位相設定値を得ることができ
る。
【0070】このような位相制御を実行するため、空胴
電圧モニタ42及びビームモニタ41で検出した高周波電圧
の基本波信号及び高調波信号の検出信号をモニタ信号処
理部40に入力し、基本波信号及び高調波信号の周波数成
分に分波した後、周波数成分毎の位相補正量を演算す
る。
【0071】一方、あらかじめ高周波加速制御装置30の
メモリ36bに格納しておいた位相遅れ補正データと高調
波信号の同期位相設定データは、メモリアドレスコント
ローラ37bにより、位相遅れ補正データはBクロック信
号52で、同期位相設定データはTクロック信号でメモリ
アドレスを更新し、制御プロセッサ34b内のレジスタに
設定する。これとともに、位相および振幅信号処理系統
に設けたアナログ入力部32bから入力した位相補正量と
フィードバック演算処理を実行し、演算結果をディジタ
ル発振部350に設定する。
【0072】このようにして加速空胴2に印加する加速
電圧を制御するのであるが、基本波信号とその整数倍の
高調波信号の周波数をフィードバック制御する第1のデ
ィジタル演算手段と、前記基本波信号とその整数倍の高
調波信号の少なくとも位相をフィードバック制御する第
2のディジタル演算手段とを独立して設け、つまり高速
な信号処理が要求される周波数制御系統と位相と振幅の
信号処理系統を独立して構成するようにして加速空胴に
加える加速電圧を制御するようにしている。
【0073】このように、高速な信号処理が要求される
周波数信号処理系統を他の信号処理系統から独立した構
成とすることで、高周波電圧の周波数および位相制御に
要求されるリアルタイム性を確保することが可能とな
る。したがって、低エネルギー領域の周回ビームの加速
制御時に生ずる空間電荷効果によるビーム損失を抑制可
能にできる。
【0074】(実施例2)図7に本実施例の第2実施例
の構成を示す。図7の実施例の基本的な構成は図1の第
1実施例と同様であるが、本実施例では、基本波信号と
その整数倍の高調波信号を出力する各ディジタル発振部
350のディジタル発振器352に、周波数は同一でかつ、位
相がお互いに90度ずれた二つの正弦波信号が出力可能な
直角位相出力型ディジタル発振器352を使用し、基本波
信号およびその整数倍の高調波信号の発生および、モニ
タ信号処理部40での検波信号処理を実行している。
【0075】(実施例3)図8に本発明の第3実施例で
ある高周波加速装置の構成を示す。図8の実施例の基本
構成は第1実施例とほぼ同一であるが、高周波加速制御
装置30の信号処理系統を偏向磁場強度の変化に伴い出力
されるBクロック信号52に基づく信号処理系(以下、B
クロック信号処理系)と、高周波加速制御装置30のシス
テム制御クロックを分周したTクロック信号に基づく設
定値更新処理を実施する信号処理系(以下、Tクロック
信号処理系)に分割する。Bクロック信号処理系統とし
て、周波数制御系統と、第1実施例に示した基本波信号
及び高調波信号の位相信号処理系統の位相遅れを補正す
る系統で構成する。また、Tクロック信号処理系は、振
幅信号処理系統と位相信号処理系統の同期位相を制御す
る系統で構成する。
【0076】図8の実施例において、ディジタル発振部
35に設定する位相設定データは、Bクロック信号52に同
期して更新される位相遅れ補正データと、高周波加速制
御装置30のTクロック信号に同期して更新される同期位
相設定データの異なる二つの制御クロック信号で更新さ
れたデータの加算演算処理が必要なため、これらの二つ
のデータを非同期で加算演算処理を実行する位相設定信
号処理部を設けている。
【0077】図9に位相設定信号処理部390の構成、図1
0に位相設定信号処理部390の制御タイミングチャート
(部分)を示す。なお、位相設定信号処理部390はそれ
ぞれ独立に設ける必要があるが、基本波信号および高調
波信号とも処理内容は同一なため、高調波信号用につい
て説明する。
【0078】位相設定信号処理部390は、Bクロック信
号入力部391、システムクロック信号入力部392、Tクロ
ック信号生成部393、位相遅れ補正データと同期位相設
定データの二つのデータをそれぞれ設定するレジスタ39
4、レジスタ設定値の加算演算回路395及び加算演算結果
出力部で構成される。位相設定信号処理部390は基本波
信号とその整数倍の高調波信号毎に用意し、高周波加速
制御装置30のシステム制御クロック(以下、システムク
ロック)に同期して制御する。
【0079】Tクロック信号処理系から出力される同期
位相設定データ(φs)(図10(f))を設定するレジスタ
394には、Tクロック信号(図10(c))が入力される度に
設定値が更新される。
【0080】一方、Bクロック信号処理系から出力され
る位相遅れ補正データ(φd)(図10(e))は、Bクロッ
ク信号52(図10(d))の入力および、Tクロック信号生
成部393でシステムクロック(図10(b))を分周して生成
したTクロック信号とともに、設定値がレジスタ394に
更新される。
【0081】位相設定信号処理部390は、システムクロ
ック信号が設定された時点でレジスタ394内に格納され
ているデータを加算演算回路395で加算処理し、加算演
算結果出力部396より基本波信号及び高調波信号の位相
設定値としてディジタル発振部35に設定する。このよう
な位相信号処理を実施することで、周波数の変化に同期
した位相制御を精度良く実施することが可能となる。
【0082】(実施例4)図11に本発明を用いた円形加
速器の一例構成を示す。図11の円形加速器は、荷電粒子
ビームを発生する前段加速器11と、前段加速器11から発
生した荷電粒子ビームを入射する入射器14と、荷電粒子
ビームを周回させる真空ダクト15と、周回する荷電粒子
ビームを偏向する偏向電磁石12と、周回する荷電粒子ビ
ームを収束させる四極電磁石13と、周回する荷電粒子ビ
ームに高周波電圧を印加する加速空胴2と、加速空胴2に
印加する高周波電圧を制御する高周波加速制御装置30
と、加速した荷電粒子ビームを出射する出射器16から構
成される。
【0083】図11において、高周波加速装置として実
施例1乃至2乃至3に示した高周波加速装置を採用し、
高周波電圧の基本波信号とその高調波信号を加速空胴2
に印加することで、円形加速器10内を周回する荷電粒子
ビームの空間電荷効果によるビーム損失を抑制すること
ができる。
【0084】以上のようにして加速空胴に印加する加速
電圧を制御するのであるが、基本波信号とその整数倍の
高調波信号の周波数をフィードバック制御する第1のデ
ィジタル演算手段と、前記基本波信号とその整数倍の高
調波信号の少なくとも位相をフィードバック制御する第
2のディジタル演算手段とを独立して設け、つまり高速
な信号処理が要求される周波数制御系統と位相と振幅の
信号処理系統を独立して構成するようにして加速空胴に
加える加速電圧を制御するようにしている。
【0085】このように、高速な信号処理が要求される
周波数信号処理系統を他の信号処理系統から独立した構
成とすることで、高周波電圧の周波数および位相制御に
要求されるリアルタイム性を確保することが可能とな
る。したがって、低エネルギー領域の周回ビームの加速
制御時に生ずる空間電荷効果によるビーム損失を抑制可
能にできる。
【0086】また、上述の実施例は高周波電圧のフィー
ドバック制御に必要な補正量をビームモニタ及び空胴電
圧モニタからの検出信号より、モニタ信号処理部で演算
し出力している。モニタ信号処理部から出力される補正
量には、高周波電圧の基本波信号に関する周波数補正量
と、基本波信号とその高調波信号の位相補正量の二種類
があるが、高速な信号処理が要求される周波数信号処理
系統を他の信号処理系統から独立した構成とすること
で、高周波電圧の周波数および位相制御に要求されるリ
アルタイム性を確保することが可能となる。
【0087】これらのフィードバック制御結果に基づい
た高周波信号を出力するディジタル発振器は、基本波信
号の発振器と逓倍処理回路に設定される。基本波信号と
その整数倍の高調波信号の周波数の関係は常に一定であ
る必要があるため、この逓倍処理回路で基本波信号の整
数倍の周波数を演算することにより、基本波信号ととも
に高調波信号の周波数フィードバック制御を実現するこ
とが可能となる。
【0088】
【発明の効果】本発明は基本波信号とその整数倍の高調
波信号の周波数をフィードバック制御する第1のディジ
タル演算手段と、前記基本波信号とその整数倍の高調波
信号の少なくとも位相をフィードバック制御する第2の
ディジタル演算手段とを独立して設け、つまり高速な信
号処理が要求される周波数制御系統と位相と振幅の信号
処理系統を独立して構成するようにして加速空胴に加え
る加速電圧を制御するようにしている。
【0089】したがって、高速な信号処理が要求される
周波数信号処理系統を他の信号処理系統から独立した構
成とすることで、高周波電圧の周波数および位相制御に
要求されるリアルタイム性を確保することが可能とな
る。その結果、低エネルギー領域の周回ビームの加速制
御時に生ずる空間電荷効果によるビーム損失を抑制可能
にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例である高周波加速装置の構
成を示す。
【図2】加速制御時の偏向磁場強度の変化と高調波信号
の振幅値の変化を示す。
【図3】加速初期における偏向磁場強度の変化と周波数
の更新制御の関係を示す。
【図4】周波数信号処理系統の制御タイミングチャート
を示す。
【図5】基本波信号と高調波信号の合成波形を示す。
【図6】周波数設定データのメモリ内配置を示す。
【図7】本発明の第2実施例である高周波加速装置の構
成を示す。周波数信号処理系統の制御タイミングチャー
トを示す。
【図8】本発明の第3実施例である高周波加速装置の構
成を示す。
【図9】位相設定信号処理部の構成を示す。
【図10】位相設定信号処理部の制御タイミングチャート
を示す。
【図11】本発明の第4実施例である円形加速器の構成を
示す。
【符号の説明】
10…円形加速器、11…前段加速器、12…偏向電磁石、13
…四極電磁石、14…入射器、15…真空ダクト、16…出射
器、2…加速空胴、30…高周波加速制御装置、31…ディ
ジタル入力部、32…アナログ入力部、33…アナログ出力
部、34…制御プロセッサ、350…ディジタル発振部、351
…逓倍処理回路、352…ディジタル発振器、36…メモ
リ、37…メモリアドレスコントローラ、38…マスタクロ
ック発振器、390…位相設定信号処理部、391…Bクロッ
ク信号入力部、392…システムクロック信号入力部、393
…Tクロック信号生成部、394…レジスタ、395…加算演
算回路、396…加算演算結果出力部、40…モニタ信号処
理部(補正量演算部)、41…ビームモニタ、42…空胴電
圧モニタ、50…Bクロック発生装置、51…磁場検出手
段、52…Bクロック信号、6…電圧制御部、7…電力増
幅器、8…コンソール計算機、90…上位制御装置、91…
制御タイミング信号
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 亀谷 雅嗣 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社日 立製作所機械研究所内 (72)発明者 池 勝久 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社日 立製作所機械研究所内 (72)発明者 梅北 和弘 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社日 立製作所機械研究所内 Fターム(参考) 2G085 AA13 BA05 CA03 CA17 CA26

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基本波信号とその整数倍の高調波信号の周
    波数、振幅および位相を調整した加速電圧を加速空胴に
    加え荷電粒子ビームを加速する高周波加速装置におい
    て、前記基本波信号とその整数倍の高調波信号の周波数
    をフィードバック制御する第1のディジタル演算手段
    と、前記基本波信号とその整数倍の高調波信号の少なく
    とも位相をフィードバック制御する第2のディジタル演
    算手段と、前記第1と第2のディジタル演算手段から出
    力される、前記基本波信号とその整数倍の高調波信号の
    周波数指令値と位相指令値および振幅指令値を入力して
    前記加速空胴に加える加速電圧を制御する電圧制御手段
    とを具備することを特徴とする高周波加速装置。
  2. 【請求項2】基本波信号とその整数倍の高調波信号の周
    波数、振幅および位相を調整した加速電圧を加速空胴に
    加え荷電粒子ビームを加速する高周波加速装置におい
    て、前記基本波信号とその整数倍の高調波信号の周波数
    設定値を前記荷電粒子ビームのビーム位置検出信号とビ
    ーム位相振動検出信号で補正した周波数指令値を出力す
    る第1のディジタル演算手段と、前記基本波信号とその
    整数倍の高調波信号の少なくとも位相設定値を前記荷電
    粒子ビームのビーム位相検出信号と前記空胴電圧の位相
    検出信号に基づき補正した位相指令値を出力する第2の
    ディジタル演算手段と、前記第1と第2のディジタル演
    算手段から出力される周波数指令値、位相指令値および
    振幅指令値を入力して前記加速空胴に加える加速電圧を
    制御する電圧制御手段とを具備することを特徴とする高
    周波加速装置。
  3. 【請求項3】基本波信号とその整数倍の高調波信号の周
    波数、振幅および位相を調整した加速電圧を加速空胴に
    加え荷電粒子ビームを加速する高周波加速装置におい
    て、前記荷電粒子ビームのビーム位置とビーム位相に基
    づき周波数補正値と位相補正値を求めるモニタ信号処理
    手段と、偏向電磁石の磁場強度によって選択された前記
    基本波信号とその整数倍の高調波信号の周波数設定値を
    前記周波数補正値で補正した周波数指令値を出力する第
    1のディジタル演算手段と、偏向電磁石の磁場強度によ
    って選択された前記基本波信号とその整数倍の高調波信
    号の位相設定値を前記位相補正値で補正した位相指令値
    を出力する第2のディジタル演算手段と、前記周波数指
    令値と前記位相指令値を入力し前記基本波信号とその整
    数倍の高調波信号の周波数で発振する発振手段と、前記
    第2のディジタル演算手段から出力される振幅指令値と
    前記発振手段の発振信号を入力して前記加速空胴に加え
    る加速電圧を制御する電圧制御手段とを具備することを
    特徴とする高周波加速装置。
  4. 【請求項4】基本波信号とその整数倍の高調波信号の周
    波数、振幅および位相を調整した加速電圧を加速空胴に
    加え荷電粒子ビームを加速する高周波加速装置におい
    て、前記荷電粒子ビームのビーム位置とビーム位相に基
    づき周波数補正値と位相補正値を求めるモニタ信号処理
    手段と、偏向電磁石の磁場強度によって選択された前記
    基本波信号の周波数設定値を前記周波数補正値で補正し
    た周波数指令値を出力する第1のディジタル演算手段
    と、偏向電磁石の磁場強度によって選択された前記基本
    波信号とその整数倍の高調波信号の位相設定値を前記位
    相補正値で補正した位相指令値を出力する第2のディジ
    タル演算手段と、前記基本波信号の前記周波数指令値と
    前記位相指令値を入力し、前記基本波信号とその整数倍
    に逓倍した高調波信号の周波数で発振する発振手段と、
    前記第2のディジタル演算手段から出力される振幅指令
    値と前記発振手段の発振信号を入力して前記加速空胴に
    加える加速電圧を制御する電圧制御手段とを具備するこ
    とを特徴とする高周波加速装置。
  5. 【請求項5】基本波信号とその整数倍の高調波信号の周
    波数、振幅および位相を調整した加速電圧を加速空胴に
    加え荷電粒子ビームを加速する高周波加速装置におい
    て、前記荷電粒子ビームを検出するビームモニタと、前
    記加速空胴に発生している空胴電圧を検出する空胴電圧
    モニタと、前記ビームモニタと空胴電圧モニタからのモ
    ニタ信号に基づきビーム位置変位と加速電圧に対するビ
    ーム位相に基づき周波数補正値と位相補正値を求める補
    正量演算手段と、偏向電磁石の磁場強度によって選択さ
    れた前記基本波信号の周波数設定値を前記周波数補正値
    で補正した周波数指令値を出力する第1のディジタル演
    算手段と、偏向電磁石の磁場強度によって選択された前
    記基本波信号とその整数倍の高調波信号の位相設定値を
    前記位相補正値で補正した位相指令値を出力する第2の
    ディジタル演算手段と、前記基本波信号の前記周波数指
    令値と前記位相指令値を入力し、前記基本波信号とその
    整数倍に逓倍した高調波信号の周波数で発振する発振手
    段と、前記第2のディジタル演算手段から出力される振
    幅指令値と前記発振手段の発振信号を入力して前記加速
    空胴に加える加速電圧を制御する電圧制御手段とを具備
    することを特徴とする高周波加速装置。
  6. 【請求項6】荷電粒子ビームを発生する前段加速器と、
    前記前段加速器から発生した荷電粒子ビームを入射する
    入射器と、前記荷電粒子ビームを周回させる真空ダクト
    と、周回する荷電粒子ビームを偏向する偏向電磁石と、
    周回する荷電粒子ビームを収束させる四極電磁石と、周
    回する荷電粒子ビームを集群し加速する高周波加速装置
    と、加速した荷電粒子ビームを出射する出射器から構成
    される円形加速器において、前記高周波加速装置は請求
    項1から5のいずれか1項に記載の高周波加速装置であ
    ることを特徴とする円形加速器。
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Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7439528B2 (en) 2003-11-07 2008-10-21 Hitachi, Ltd. Particle therapy system and method
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