JP2002363703A - テンションマスク用鋼板およびその製造方法、テンションマスク、陰極線管、ならびにテンションマスク用鋼板の磁気特性を向上させる方法 - Google Patents
テンションマスク用鋼板およびその製造方法、テンションマスク、陰極線管、ならびにテンションマスク用鋼板の磁気特性を向上させる方法Info
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- JP2002363703A JP2002363703A JP2002055219A JP2002055219A JP2002363703A JP 2002363703 A JP2002363703 A JP 2002363703A JP 2002055219 A JP2002055219 A JP 2002055219A JP 2002055219 A JP2002055219 A JP 2002055219A JP 2002363703 A JP2002363703 A JP 2002363703A
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Abstract
スク用鋼板およびその製造方法を提供すること。 【解決手段】 重量%で、C:0.1%未満、Si:
0.2%未満、Mn:0.4〜2%、P:0.1%以
下、S:0.03%以下、sol.Al:0.01%以
下、N:0.003〜0.02%を含み、残部が実質的
にFeからなり、非履歴透磁率が5000以上である。
Description
テレビ、カラーディスプレイ等の陰極線管の架張式の色
選別電極に使用されるテンションマスク用鋼板およびそ
の製造方法、テンションマスク、陰極線管、ならびにテ
ンションマスク用鋼板の磁気特性を向上させる方法に関
する。
陰極線管には色選別機構としてアパーチャグリル等の架
張式の色選別電極(以下、テンションマスクと称す
る。)が使用されている。このテンションマスクは、例
えば、低炭素、極低炭素アルミキルド鋼を熱間圧延、冷
間圧延、連続焼鈍、二次冷間圧延し、必要に応じて残留
応力を除去するために焼鈍を行った後、フォトエッチン
グ法により穿孔し、フレームに例えば200〜400N
/mm2の張力で一方向あるいは二方向に架張し、黒化
処理を施して製造される。この黒化処理はテンションマ
スクを例えば450〜500℃に加熱し、表面にマグネ
タイトの酸化膜を形成する処理であり、錆の防止や熱輻
射の低減等の目的をもっている。この熱処理時にテンシ
ョンマスクがクリープして張力が低下すると、マスクの
孔位置がずれたり、スピーカー音によって共振しやすく
なったり、電子ビームが蛍光面の所定の位置に着弾せず
に「色ズレ」が生じたりする場合がある。
術として、特開昭62−249339号公報、特開平5
−311327号公報、特開平5−311330号公
報、特開平5−311331号公報、特開平5−311
332号公報、特開平6−73503号公報、特開平8
−27541号公報、特開平9−296255号公報、
特開平11−222628号公報には、鋼板成分として
Mn,Cr,Mo等の元素を添加する、または/およ
び、多量のNを鋼中に固溶させることで転位の上昇運動
を抑制する、という技術が開示されている。
プレイの大型化、高精細化、フラット化にともなって、
上述したテンションマスクのクリープによる「色ズレ」
の他に、地磁気等の外部磁界の影響による電子ビームの
軌道のズレも「色ズレ」の原因として改善が望まれてい
る。
対策すなわち磁気シールド性向上を目的として、特開昭
63−145744号公報、特開平8−269569号
公報、特開平9−256061号公報では、鋼板にSi
を添加する技術が開示され、特開平10−219396
号公報では鋼板にCuを添加する技術が開示され、特開
平10−219401号公報では鋼板にNiを添加する
技術が開示されている。
62−249339号公報、特開平5−311327号
公報、特開平5−311330号公報、特開平5−31
1331号公報、特開平5−311332号公報、特開
平6−73503号公報、特開平8−27541号公
報、特開平9−296255号公報、特開平11−22
2628号公報に記載の技術では、磁気シールド性の向
上について配慮されていない。
特開平8−269569号公報、特開平9−25606
1号公報、特開平10−219396号公報に記載の技
術では、磁気特性は向上するものの、SiあるいはCu
を含有させるため鋼板の熱間圧延や再結晶焼鈍時に表面
欠陥が発生しやすく、厳しい表面性状を要求されるテン
ションマスク用鋼板には適用できない。
に記載された技術ではNiの添加によりコストが増加
し、かつエッチング性が劣化するため好ましくない。
ッチング性等の他の特性を満足しつつ、優れた磁気シー
ルド性を有するものはなく、特に優れた磁気シールド性
および優れた耐高温クリープ性を兼備したものは得られ
ていない。
あって、表面性状やエッチング性等の他の特性を劣化さ
せることなく、優れた磁気シールド性を有するテンショ
ンマスク用鋼板およびその製造方法を提供することを目
的とする。また、表面性状やエッチング性等を劣化させ
ることなく、優れた耐高温クリープ性と優れた磁気シー
ルド性とを兼備したテンションマスク用鋼板およびその
製造方法を提供することを目的とする。さらに、色ズレ
を改善したテンションマスクおよびそれを用いた陰極線
管を提供することを目的とする。さらにまた、テンショ
ンマスク用鋼板の磁気特性を高める方法を提供すること
を目的とする。
はその材料の透磁率で評価される。透磁率はMn,M
o,Cr,N等の元素を低減することで向上されるが、
耐高温クリープ性が劣化することになる。つまり透磁率
向上と耐高温クリープ性向上とは相反する傾向にある。
そこで、本発明者らは陰極線管の磁気シールド性に現実
に寄与している因子について再検討した。
コイルに電流を流し、陰極線管内の材料を消磁する機構
を有している。ところが、この消磁は外部磁界中、例え
ば地磁気中で行われるため、テンションマスクは完全に
消磁された状態とはならず、内部に残留磁化を生じた状
態となる。この残留磁化を外部磁界で除した値が非履歴
透磁率と呼ばれている。テンションマスクの非履歴透磁
率が高いほど、外部磁場、例えば地磁気の磁束をテンシ
ョンマスク内に通しやすく、電子銃とテンションマスク
との間の磁気シールド性は良好となる。
して好適な鋼板について、鋼板の色ズレ発生との関係を
中心に検討した結果、「重量%で、C:0.1%未満、
Si:0.05%以下、Mn:0.4〜2%、P:0.
03%以下、S:0.03%以下、sol.Al:0.
01%以下、N:0.010%以上、残部が実質的にF
eからなる鋼を熱間圧延し、引き続いて冷間圧延、焼鈍
し、次いで、得られた鋼板に圧延率35%以上の二次冷
間圧延を施すことを特徴とする耐高温クリープ性と磁気
シールド性に優れたテンションマスク用鋼板の製造方
法、および、この方法により製造された、直流バイアス
磁界27.9A/m(0.35Oe)における非履歴透
磁率が3400以上である耐高温クリープ性と磁気シー
ルド性に優れたテンションマスク用鋼板」を要旨とする
発明をなし、先に出願した(特願平11−360697
号)。
えた結果、 最終冷間圧延後の鋼板を再結晶温度以下で焼鈍する
と、黒化処理後の状態での直流バイアス磁界27.9A
/m(0.35Oe)における非履歴透磁率が向上する
こと の知見に加え、黒化処理後の状態での、直流バイ
アス磁界27.9A/m(0.35Oe)における非履
歴透磁率をさらに向上させるためには、N含有量を0.
01%未満とすることが好ましいこと N含有量を0.01%未満とするとN量が0.01
%以上の場合に比べて耐高温クリープ性が劣化する傾向
にあるものの、N量を0.006%以上とし、かつ、M
n量を0.6%超とすれば磁気シールド性を劣化させる
ことなく良好な耐高温クリープ性が得られること に記載の成分系において、再結晶温度以下の温度
域にて焼鈍すれば、良好な耐高温クリープ性を確保する
ことができ、同時に優れた磁気シールド性が得られるこ
とを見出した。
されたものであり、以下の(1)〜(17)を提供す
る。 (1) 重量%で、C:0.1%未満、Si:0.2%
未満、Mn:0.4〜2%、P:0.1%以下、S:
0.03%以下、sol.Al:0.01%以下、N:
0.003〜0.02%を含み、残部が実質的にFeか
らなり、非履歴透磁率が5000以上であることを特徴
とする地磁気シールド性に優れたテンションマスク用鋼
板。
5200以上であることを特徴とする地磁気シールド性
に優れたテンションマスク用鋼板。
6000以上であることを特徴とする地磁気シールド性
に優れたテンションマスク用鋼板。
i:0.2%未満、Mn:0.4〜2%、P:0.1%
以下、S:0.03%以下、sol.Al:0.01%
以下、N:0.003〜0.02%を含み、残部が実質
的にFeからなる鋼片を得る工程と、前記鋼片に熱間圧
延を施す工程と、熱間圧延後の鋼板に対し中間焼鈍を経
ずにもしくは中間焼鈍をはさんで、1回あるいは2回以
上の冷間圧延を施して所定の板厚の鋼板にする工程と、
その後、再結晶温度以下の温度域にて焼鈍して非履歴透
磁率を上昇させる工程とを具備することを特徴とする地
磁気シールド性に優れたテンションマスク用鋼板の製造
方法。
は、再結晶温度以下510℃以上の温度域にて行うこと
を特徴とする地磁気シールド性に優れたテンションマス
ク用鋼板の製造方法。
は、再結晶温度以下560℃以上の温度域にて行うこと
を特徴とする地磁気シールド性に優れたテンションマス
ク用鋼板の製造方法。
載の方法により製造されたことを特徴とする磁気シール
ド性に優れたテンションマスク用鋼板。
i:0.2%未満、Mn:0.6%超2%以下、P:
0.1%以下、S:0.03%以下、sol.Al:
0.01%以下、N:0.006%以上0.01%未満
を含み、残部が実質的にFeからなり、非履歴透磁率が
5000以上である地磁気シールド性および耐高温クリ
ープ性に優れたテンションマスク用鋼板。
5200以上であることを特徴とする地磁気シールド性
および耐高温クリープ性に優れたテンションマスク用鋼
板。
が6000以上であることを特徴とする地磁気シールド
性および耐高温クリープ性に優れたテンションマスク用
鋼板。
Si:0.2%未満、Mn:0.6%超2%以下、P:
0.1%以下、S:0.03%以下、sol.Al:
0.01%以下、N:0.006%以上0.01%未満
を含み、残部が実質的にFeからなる鋼片を得る工程
と、前記鋼片に熱間圧延を施す工程と、熱間圧延後の鋼
板に対し中間焼鈍を経ずにもしくは中間焼鈍をはさん
で、1回あるいは2回以上の冷間圧延を施して所定の板
厚の鋼板にする工程と、その後、再結晶温度以下の温度
域にて焼鈍して非履歴透磁率を上昇させる工程とを具備
することを特徴とする地磁気シールド性および耐高温ク
リープ性に優れたテンションマスク用鋼板の製造方法。
程は、再結晶温度以下510℃以上の温度域にて行うこ
とを特徴とする地磁気シールド性および耐高温クリープ
性に優れたテンションマスク用鋼板の製造方法。
程は、再結晶温度以下560℃以上の温度域にて行うこ
とを特徴とする地磁気シールド性および耐高温クリープ
性に優れたテンションマスク用鋼板の製造方法。
かに記載の方法により製造されたことを特徴とする地磁
気シールド性および耐高温クリープ性に優れたテンショ
ンマスク用鋼板。
(8)から(10)、および(14)のいずれかに記載
の鋼板で構成されていることを特徴とするテンションマ
スク。
スクを具備することを特徴とする陰極線管。
と、この冷間圧延鋼板に対して再結晶温度以下の温度域
にて焼鈍することにより非履歴透磁率を上昇させる工程
とを有することを特徴とするテンションマスク用鋼板の
磁気特性を向上させる方法。
て説明する。本発明の第1の実施形態に係るテンション
マスク用鋼板は、重量%で、C:0.1%未満、Si:
0.2%未満、Mn:0.4〜2%、P:0.1%以
下、S:0.03%以下、sol.Al:0.01%以
下、N:0.003〜0.02%を含み、残部が実質的
にFeからなり、非履歴透磁率が5000以上である。
これにより表面性状やエッチング性等の他の特性を劣化
させることなく、優れた磁気シールド性を有するテンシ
ョンマスク用鋼板が実現される。
明する。 C:Cは、耐高温クリープ性を向上させる元素である
が、0.1%以上添加すると粗大なセメンタイトが析出
し、エッチング性を劣化させるため0.1%未満とす
る。好ましくは0.06%以下、さらに好ましくは0.
03%以下である。
ッチング性を劣化させるため0.2%未満とした。好ま
しくは0.05%以下、さらに好ましくは0.03%以
下である。
リープ性を向上させる元素である。その効果は0.4%
以上で有効に発揮され、2%を超えて添加しても効果が
飽和してコスト増加を招き、また、過度のMn添加は中
央偏析を招いてエッチング不良の原因となるおそれがあ
る。したがって、Mn量は0.4〜2%とする。好まし
くは0.4〜1.4%である。
るエッチングむらを発生しやすい元素であるため、0.
1%以下とする。エッチングむらを一層抑制する観点か
らは0.03%以下が好ましい。さらに好ましくは0.
02%以下である。
素であり、0.03%を超えて含有された場合には熱間
脆性の原因となるとともに、Sの偏析に起因するエッチ
ングむらが発生することから、0.03%以下が好まし
い。さらに好ましくは0.02%以下である。
磁気特性が極度に劣化する。一方、Nは、固溶Nとして
鋼中に存在させることにより耐高温クリープ性を向上さ
せる元素であるが、0.003%未満ではそのような効
果が有効に発揮されない。このため、N含有量を0.0
03〜0.02%とする。N量を0.01%未満にする
と磁気特性がより優れたものとなるため、好ましくは
0.003%以上0.01%未満である。
AlNとして固定するため、sol.Alが多いと耐高
温クリープ性に効果を発揮する固溶Nが減少する。した
がって、sol.Alは少ない方がよく、0.01%以
下とした。
として知られているCr,Mo,W等を必要に応じて添
加してもよい。その場合には、エッチング性および磁気
特性の観点から、含有量の合計を1%以下とすることが
好ましい。
この範囲において良好な磁気シールド性が得られるから
である。より良好な磁気シールド性を得る観点からは5
200以上が好ましく、6000以上が一層好ましい。
非履歴透磁率は、後述するように、冷間圧延後に再結晶
温度以下の温度で焼鈍することにより、5000以上と
することができ、これに加えて鋼の不純物レベルを低下
させることにより6000以上とすることが可能とな
る。
マスク用鋼板は、重量%で、C:0.1%未満、Si:
0.2%未満、Mn:0.6%超2%以下、P:0.1
%以下、S:0.03%以下、sol.Al:0.01
%以下、N:0.006%以上0.01%未満を含み、
残部が実質的にFeからなり、非履歴透磁率が5000
以上である。これにより、優れた磁気シールド性と優れ
た耐高温クリープ性とを兼備したテンションマスク用鋼
板が実現される。
明する。 Si:Siは、第1の実施形態と同様に、エッチング性
を劣化させるため0.2%未満とした。好ましくは0.
05%以下、さらに好ましくは0.03%以下である。
0.01%未満にすることにより優れた磁気特性が得ら
れる。また、上述したように、Nは、固溶Nとして鋼中
に存在させることにより耐高温クリープ性を向上させる
元素であり、0.006%以上とすることにより特に優
れた耐高温クリープ性を得ることができる。そして、N
量を0.006%以上0.01%未満として後述するM
n量を0.6%超2%以下とすることにより、優れた磁
気シールド性と優れた耐高温クリープ性とを両立するこ
とができる。したがって、本実施形態ではN量を0.0
06%以上0.01%未満とした。耐高温クリープ性と
磁気特性とのバランスの観点から、0.0070%以上
0.0100%未満とすることがより好ましく、0.0
080%以上0.0100%未満がさらに一層好まし
い。
リープ性を向上させる元素である。前述のようにN量を
0.006%以上0.01%未満とした場合、Mn量を
0.6%超とすることにより、優れた耐高温クリープ性
と優れた磁気シールド性とを両立することができる。一
方、2%を超えて添加しても効果が飽和してコスト増加
を招き、また、過度のMn添加は中央偏析を招いてエッ
チング不良の原因となるおそれがある。したがって、M
n量を0.6%超2%以下とした。より好ましくは0.
6%超1.4%以下である。Mnを0.7%以上添加す
ると耐高温クリープ性が著しく向上するため0.7%〜
2.0%がより好ましく、さらに好ましくは0.7%〜
1.4%である。
AlNとして固定するため、sol.Alが多いと耐高
温クリープ性に効果を発揮する固溶Nが減少する。した
がって、優れた磁気シールド性と優れた耐高温クリープ
性とを兼備した鋼板を得るためには、sol.Alは少
ない方がよく、0.01%以下とした。
下、S:0.03%以下とした理由については第1の実
施形態と同様である。また、第1の実施形態と同様、C
r,Mo,W等の耐高温クリープ性を改善する元素と知
られている元素を必要に応じて添加してもよく、添加す
る場合には含有量の合計を1%以下とすることが好まし
い。非履歴透磁率を5000以上とした理由も第1の実
施形態と同様である。
ンションマスク用鋼板の製造方法について説明する。ま
ず、上記成分組成を有する鋼を、常法に従って、溶製、
鋳造、熱間圧延、酸洗の後、冷間圧延により所定板厚の
鋼板を得る。冷間圧延は1回のみでもよく、また、中間
焼鈍をはさんだ複数回の冷間圧延を施してもよい。中間
焼鈍として再結晶焼鈍をはさんだ2回以上の冷間圧延を
施す場合には、テンションマスクとして必要な鋼板強度
を確保する観点から、最終冷間圧延は25%以上である
ことが好ましい。さらに好ましくは35%以上、さらに
一層好ましくは40%以上とする。また、過度の冷圧率
増大は圧延ミル負荷が増すため、冷圧率は80%を上限
とすることが好ましい。より好ましくは70%を上限と
する。なお、ここで最終冷間圧延の冷圧率とは、後述の
スキンパス圧延を実施する場合には、その直前の冷間圧
延の冷圧率を指すものとする。
キンパス圧延を実施したり、テンションレベラやローラ
レベラ等の形状矯正ラインを通過させてもよい。
は、冷間圧延後さらに形状矯正された鋼板に、再結晶化
しない温度域で焼鈍することにより、磁気特性を改善す
る。従来技術では鋼板内部の残留応力低減を目的として
冷間圧延後に焼鈍を実施することもあったが、本発明に
おいては、内部応力の有無に関わらず、磁気特性向上の
目的で冷間圧延後の焼鈍を実施する。この焼鈍は再結晶
温度以下の温度域で行うが、焼鈍温度としては、450
℃未満では磁気特性改善の効果が得難いため、450℃
以上が好ましく、より大きな磁気特性改善効果を得るた
めには480℃以上が好ましい。特に焼鈍温度を510
℃以上とすることにより非履歴透磁率を安定して500
0以上とすることができ、560℃以上とすることによ
り非履歴透磁率を5200以上とすることができるの
で、焼鈍温度を510℃以上、さらには560℃とする
ことが一層好ましい。ただし、焼鈍温度が600℃超で
は鋼板内部で再結晶が始まって耐高温クリープ性が急激
に劣化する可能性があるため、600℃以下とすること
が好ましい。また、耐高温クリープ性の急激な劣化を防
ぐ上で製造安定性確保の観点から、焼鈍温度は590℃
以下、さらには580℃以下とすることが好ましい。
係るテンションマスク用鋼板を、エッチングにより穿孔
し、フレームに架張し、黒化処理することにより、テン
ションマスクを得ることができる。このようなテンショ
ンマスクは、素材鋼板が、他の特性を劣化させることな
く優れた磁気シールド性を有しているか、または、優れ
た磁気シールド性と優れた耐高温クリープ性とを兼備し
ているので、「色ズレ」が生じ難い。したがって、この
ようなテンションマスクが適用された陰極線管は「色ズ
レ」が少ない高性能なものとなる。
する陰極線管を示す断面図である。図1に示すように、
陰極線管10は、画像が表示されるパネル部2と、ファ
ンネル部3とを備えている。これらは溶着されており、
陰極線管10の内部は高真空に維持されている。パネル
部2の内面には赤、緑、青の3色の蛍光体が塗布された
蛍光面4が設けられ、この蛍光面4と対応するようにテ
ンションマスク1が配されている。このテンションマス
ク1はフレーム5により張着され、これらテンションマ
スク1とフレーム5とで色選別電極を構成している。フ
レーム5の背面側には内部磁気シールド6が設けられて
いる。なお、参照符号7は電子銃、参照符号8はヒート
シュリンクバンドをそれぞれ示す。
供試鋼を溶製後、熱間圧延し、酸洗した後、冷間圧延を
行い、次いで再結晶焼鈍後、冷圧率60%で二次冷間圧
延を施し、板厚0.1mmの鋼板を得た。この板厚0.
1mmの鋼板に510〜580℃、50秒の焼鈍を施し
て表2に示すNo.2〜4,6〜15の供試材を得た。
また、二次冷間圧延後の鋼板に焼鈍を施さずにNo.
1,5の供試材を得た。
の供試材について、エッチング性を評価した。エッチン
グ性は、実際にアパーチャグリルの簾状にエッチングし
て、エッチングの状況(欠陥の有無)を目視で評価し
た。
14の供試材について、耐高温クリープ性を評価し、N
o.9を除いて磁気特性を測定した。
造した鋼板に対して、300N/mm2の張力を付与し
た状態で、450℃で20分間保持し、クリープ伸び量
を測定することにより評価した。
黒化処理相当の熱処理を施した材料から外径45mm、
内径33mmのリング試験片を採取し、励磁コイル、検
出コイルおよび直流バイアス磁界用のコイルを巻いて、
非履歴透磁率を測定した。
細に説明する。 i)励磁コイルに減衰する交流電流を流して試験片を完
全消磁する。 ii)直流バイアス磁界用コイルに直流電流を流して2
7.9A/m(0.35Oe)の直流バイアス磁界を発
生させた状態で、再度励磁コイルに減衰する交流電流を
流して試験片を消磁する。 iii)励磁コイルに直流電流を流して試験片を励磁し、発
生した磁束を検出コイルで検出してB−H曲線を測定す
る。 iv)B−H曲線より非履歴透磁率を算出する。
びにエッチング性、耐高温クリープ性の評価結果および
磁気特性の測定結果を表2に示す。
欠陥のない場合を良好、欠陥がある場合を不良とし、表
2にはそれぞれ○および×として示した。また、クリー
プ性の評価基準は、クリープ伸び量が0.30%以下の
場合に耐高温クリープ性が特に良好、0.30%を超え
て0.50%以下の場合に使用に耐え得るレベル、0.
50%を超える場合に使用に耐えない材料とし、表2中
にそれぞれ◎、○、×で示した。なお、この評価では、
圧延方向および圧延直角方向の両方向について試験を実
施し、その平均値で評価を行った。
の範囲内であり、最終冷間圧延後に再結晶温度以下で焼
鈍を行ったNo.2〜4,6〜8,10,11,13,
14の供試材においては、エッチング性が良好であり、
非履歴透磁率が5000以上と高いため磁気シールド性
に優れていることが確認された。また、耐高温クリープ
性もクリープ伸び量が0.50%以下と比較的良好であ
った。
6%超2%以下かつN:0.006%以上0.01未満
と第2の実施形態を満たすNo.4,6〜8,10,1
1,13,14の供試材においては、クリープ伸び量が
0.30%以下と極めて良好になり、また非履歴透磁率
もより高い値となっており、優れた耐高温クリープ性お
よび優れた地磁気シールド性が高位に両立されていた。
冷間圧延後の焼鈍を行わなかったので非履歴透磁率が5
000未満となった。No.9の供試材においては焼鈍
温度が高かったため耐高温クリープ性が劣っていた。ま
た、No.12の供試材はN量が多いため非履歴透磁率
が低かった。No.15の供試材においてはC量が高い
ためにエッチング性が不良であった。
る供試鋼を溶製後、熱間圧延し、酸洗した後、冷間圧延
を行い、次いで再結晶焼鈍後、冷圧率60%で二次冷間
圧延を施し、板厚0.1mmの鋼板を得た。この板厚
0.1mmの鋼板に510〜580℃、50秒の焼鈍を
施して表4に示すNo.21,22,24〜27,29
〜35の供試材を得た。また、二次冷間圧延後の鋼板に
焼鈍を施さずにNo.23,28の供試材を得た。な
お、これら鋼K〜Qは溶製時に不純物レベルが実施例1
の鋼A〜Jよりも低くなるようにした。
5の供試材について、エッチング性を評価した。エッチ
ング性は、実施例1と同様の評価方法および評価基準で
評価した。その結果、いずれも良好なエッチング性を示
した。
て、耐高温クリープ性を評価し、No.32を除いて磁
気特性を測定した。
方法および評価基準で評価し、磁気特性としては、実施
例1と同じ試験片を用い、同じ方法で非履歴透磁率を測
定した。
らびにエッチング性、耐高温クリープ性の評価結果およ
び磁気特性の測定結果を表4に示す。
の範囲内であり、最終冷間圧延後に再結晶温度以下で焼
鈍を行ったNo.21,22,24〜27,29〜3
1,33〜35の供試材においては、エッチング性が良
好であり、非履歴透磁率が高いため磁気シールド性に優
れていることが確認された。また、耐高温クリープ性も
クリープ伸び量が0.50%以下と比較的良好であっ
た。これらNo.21,22,24〜27,29〜3
1,33〜35の非履歴透磁率の値は、実施例1よりも
高く6000以上の値を示した。
6%超2%以下かつN:0.006%以上0.01未満
と第2の実施形態を満たすNo.24〜27,29〜3
1,33,34の供試材においては、クリープ伸び量が
0.30%以下と極めて良好になり、また非履歴透磁率
もより高い値となっており、優れた耐高温クリープ性お
よび優れた地磁気シールド性が高位に両立されていた。
最終冷間圧延後の焼鈍を行わなかったので非履歴透磁率
が5000未満となった。No.32の供試材において
は焼鈍温度が高かったため耐高温クリープ性が劣ってい
た。
面性状やエッチング性等の他の特性を劣化させることな
く、優れた磁気シールド性を有するテンションマスク用
鋼板を得ることができ、また、さらに組成を制御するこ
とにより、優れた磁気シールド性および優れた耐高温ク
リープ性を兼備したテンションマスク用鋼板を得ること
ができる。さらに、本発明によれば、低コストで色ズレ
等が改善されたテンションマスク、および、そのような
テンションマスクを具備した陰極線管を得ることができ
る。
図。
Claims (17)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.1%未満、Si:
0.2%未満、Mn:0.4〜2%、P:0.1%以
下、S:0.03%以下、sol.Al:0.01%以
下、N:0.003〜0.02%を含み、残部が実質的
にFeからなり、非履歴透磁率が5000以上であるこ
とを特徴とする地磁気シールド性に優れたテンションマ
スク用鋼板。 - 【請求項2】 非履歴透磁率が5200以上であること
を特徴とする請求項1に記載のテンションマスク用鋼
板。 - 【請求項3】 非履歴透磁率が6000以上であること
を特徴とする請求項1に記載のテンションマスク用鋼
板。 - 【請求項4】 重量%で、C:0.1%未満、Si:
0.2%未満、Mn:0.4〜2%、P:0.1%以
下、S:0.03%以下、sol.Al:0.01%以
下、N:0.003〜0.02%を含み、残部が実質的
にFeからなる鋼片を得る工程と、 前記鋼片に熱間圧延を施す工程と、 熱間圧延後の鋼板に対し中間焼鈍を経ずにもしくは中間
焼鈍をはさんで、1回あるいは2回以上の冷間圧延を施
して所定の板厚の鋼板にする工程と、 その後、再結晶温度以下の温度域にて焼鈍して非履歴透
磁率を上昇させる工程とを具備することを特徴とする地
磁気シールド性に優れたテンションマスク用鋼板の製造
方法。 - 【請求項5】 前記焼鈍工程は、再結晶温度以下510
℃以上の温度域にて行うことを特徴とする請求項4に記
載の地磁気シールド性に優れたテンションマスク用鋼板
の製造方法。 - 【請求項6】 前記焼鈍工程は、再結晶温度以下560
℃以上の温度域にて行うことを特徴とする請求項4に記
載の地磁気シールド性に優れたテンションマスク用鋼板
の製造方法。 - 【請求項7】 請求項4から請求項6のいずれかに記載
の方法により製造されたことを特徴とする磁気シールド
性に優れたテンションマスク用鋼板。 - 【請求項8】 重量%で、C:0.1%未満、Si:
0.2%未満、Mn:0.6%超2%以下、P:0.1
%以下、S:0.03%以下、sol.Al:0.01
%以下、N:0.006%以上0.01%未満を含み、
残部が実質的にFeからなり、非履歴透磁率が5000
以上である地磁気シールド性および耐高温クリープ性に
優れたテンションマスク用鋼板。 - 【請求項9】 非履歴透磁率が5200以上であること
を特徴とする請求項8に記載の地磁気シールド性および
耐高温クリープ性に優れたテンションマスク用鋼板。 - 【請求項10】 非履歴透磁率が6000以上であるこ
とを特徴とする請求項8に記載の地磁気シールド性およ
び耐高温クリープ性に優れたテンションマスク用鋼板。 - 【請求項11】 重量%で、C:0.1%未満、Si:
0.2%未満、Mn:0.6%超2%以下、P:0.1
%以下、S:0.03%以下、sol.Al:0.01
%以下、N:0.006%以上0.01%未満を含み、
残部が実質的にFeからなる鋼片を得る工程と、 前記鋼片に熱間圧延を施す工程と、 熱間圧延後の鋼板に対し中間焼鈍を経ずにもしくは中間
焼鈍をはさんで、1回あるいは2回以上の冷間圧延を施
して所定の板厚の鋼板にする工程と、 その後、再結晶温度以下の温度域にて焼鈍して非履歴透
磁率を上昇させる工程とを具備することを特徴とする地
磁気シールド性および耐高温クリープ性に優れたテンシ
ョンマスク用鋼板の製造方法。 - 【請求項12】 前記焼鈍工程は、再結晶温度以下51
0℃以上の温度域にて行うことを特徴とする請求項11
に記載の地磁気シールド性および耐高温クリープ性に優
れたテンションマスク用鋼板の製造方法。 - 【請求項13】 前記焼鈍工程は、再結晶温度以下56
0℃以上の温度域にて行うことを特徴とする請求項11
に記載の地磁気シールド性および耐高温クリープ性に優
れたテンションマスク用鋼板の製造方法。 - 【請求項14】 請求項11から請求項13のいずれか
に記載の方法により製造されたことを特徴とする地磁気
シールド性および耐高温クリープ性に優れたテンション
マスク用鋼板。 - 【請求項15】 請求項1から請求項3、請求項7、請
求項8から請求項10、および請求項14のいずれかに
記載の鋼板で構成されていることを特徴とするテンショ
ンマスク。 - 【請求項16】 請求項15に記載のテンションマスク
を具備することを特徴とする陰極線管。 - 【請求項17】 冷間圧延鋼板を準備する工程と、この
冷間圧延鋼板に対して再結晶温度以下の温度域にて焼鈍
することにより非履歴透磁率を上昇させる工程とを有す
ることを特徴とするテンションマスク用鋼板の磁気特性
を向上させる方法。
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---|---|---|---|
JP2002055219A JP3764396B2 (ja) | 2001-03-05 | 2002-03-01 | テンションマスク用鋼板およびその製造方法、テンションマスク、陰極線管、ならびにテンションマスク用鋼板の磁気特性を向上させる方法 |
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JP2001-59917 | 2001-03-05 | ||
JP2001059917 | 2001-03-05 | ||
JP2002055219A JP3764396B2 (ja) | 2001-03-05 | 2002-03-01 | テンションマスク用鋼板およびその製造方法、テンションマスク、陰極線管、ならびにテンションマスク用鋼板の磁気特性を向上させる方法 |
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---|---|
JP2002363703A true JP2002363703A (ja) | 2002-12-18 |
JP3764396B2 JP3764396B2 (ja) | 2006-04-05 |
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Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3764396B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2005019486A1 (ja) * | 2003-08-20 | 2005-03-03 | Toyo Kohan Co., Ltd. | カラー受像管用アパーチャーグリル用素材、アパーチャーグリルおよびカラー受像管 |
-
2002
- 2002-03-01 JP JP2002055219A patent/JP3764396B2/ja not_active Expired - Fee Related
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WO2005019486A1 (ja) * | 2003-08-20 | 2005-03-03 | Toyo Kohan Co., Ltd. | カラー受像管用アパーチャーグリル用素材、アパーチャーグリルおよびカラー受像管 |
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