JP2002362915A - 炭素材及びその製造方法並びにその用途 - Google Patents

炭素材及びその製造方法並びにその用途

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JP2002362915A
JP2002362915A JP2001175165A JP2001175165A JP2002362915A JP 2002362915 A JP2002362915 A JP 2002362915A JP 2001175165 A JP2001175165 A JP 2001175165A JP 2001175165 A JP2001175165 A JP 2001175165A JP 2002362915 A JP2002362915 A JP 2002362915A
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activated carbon
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alkali metal
metal compound
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JP2001175165A
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Yasuo Saito
康夫 斉藤
Masako Tanaka
昌子 田中
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Showa Denko KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡単かつ量産化に適した炭素材の賦活方法、
装置、賦活時に生成する金属アルカリの安全な処理方法
の提供。容器の容積当たりの賦活化された炭素材収得量
の増加及び得られた活性炭等を電極材に用いた電気二重
層コンデンサの提供。 【解決手段】 炭素質原料をアルカリ金属化合物で賦活
して高比表面積を有する活性炭または活性炭素繊維を得
るに当たり、反応系(炭素質原料及びアルカリ金属化合
物を含む組成物)を炭素系粉末層で包囲し、さらに必要
に応じて無機化合物層を炭素系粉末層に含み賦活するこ
とを特徴とする炭素材の製造方法。また、賦活時の昇温
速度を20℃/hr以下にすることで容器当たりの炭素
材収得量を増やす炭素材の製造方法。該製造方法により
得られた活性炭あるいは活性炭素繊維を電極材料として
用いる電気二重層キャパシター。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、上水、排水処理、
触媒担体、電気二重層キャパシタ用電極材料等に利用さ
れる活性炭または活性炭素繊維である炭素材及びその製
造方法並びにその用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】炭素材、特に活性炭、活性炭素繊維には
水処理、触媒担体、電気二重層キャパシタ電極等の多種
多様の用途がある。中でも電気二重層キャパシタは各種
携帯機器のバックアップ電源や補助電源をはじめ、近年
では太陽電池と組み合わせた蓄電デバイス、ハイブリッ
ド自動車におけるモーター駆動や回生エネルギーデバイ
スとしての用途が期待されている。
【0003】電気二重層キャパシタの1つの構成である
電極では、活性炭を主成分とする電極が用いられ、この
活性炭の主要性能の一つとして質量当たり、体積当たり
の電気容量が高いことが求められている。活性炭の一般
的な製造方法としては、椰子殻、ピッチ、フェノール樹
脂等の有機物を熱分解し炭化物を得た後、これを賦活す
る方法が知られている。
【0004】賦活方法は、主に水蒸気、炭酸ガス等を利
用するガス賦活と硫化カリウム、塩化亜鉛、アルカリ水
酸化物等を利用する薬品賦活がある。中でも水酸化カリ
ウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ水酸化物を利用し
た賦活は比表面積が大きい活性炭または活性炭素繊維を
得るのに効果的である。
【0005】アルカリ水酸化物を利用した賦活(アルカ
リ賦活ともいう。)においては、賦活中に水素ガス、金
属アルカリ等の可燃性物質が発生するため賦活中の発
火、爆発及び賦活後の金属アルカリの処理に対策を要す
る。このため賦活は不活性ガスを導入しながら行われた
り、また賦活装置に関しては、外部から空気等が入らな
いように密閉性の良いものが使用されている。特開平2
−97414号公報、特開平7−215711号公報、
特開平8−34605号公報では窒素ガス導入管を備
え、窒素置換可能な縦型反応炉が使用されている。特開
平5−306109号公報では外部から空気が入らない
ように装置内を微加圧に保ち、水封手段、入口、出口側
置換室等が設置されている。
【0006】一方、賦活後の活性な、浸食作用の大きな
金属アルカリの処理に関しては、例えば、特開平5−3
06109号公報では不活性雰囲気下で水と反応させ水
酸化物にして処理している。また、特開2000−12
8518号公報では賦活反応後に炭酸ガスを流すことに
より金属アルカリを炭酸塩に変換する方法が開示されて
いる。特開2001−19415号公報では金属アルカ
リを炭素材に捕捉後、水蒸気を吹き付け水和することに
より水酸化物にしてアルカリのリサイクルを行うことが
開示されている。これはあくまで金属アルカリのリサイ
クルが目的であり、アルカリを補足した炭素材の安定
性、処理については記載されていない。
【0007】また、アルカリ賦活における問題点とし
て、アルカリ融液の発泡現象がある。アルカリ賦活、特
にアルカリ水酸化物を使用した場合は加熱によりアルカ
リ金属化合物が溶融し、炭素材に含浸し反応することで
多孔質構造を生成し炭素材の賦活が行われる。原料炭素
材が粉末または粒状で、これを入れる容器としてルツボ
等を使用し、静置させて賦活を行う場合、賦活反応中に
水分、水素ガス等の発生により融液が発泡し、容器から
の吹きこぼれが起きることがある。特に賦活時の昇温速
度を速くした場合は単位時間当たりのガス発生量が大き
いため吹きこぼれが発生しやすい。特開平8−5104
5号公報、特開平2−97414号公報には賦活時の最
終温度及び保持時間の記載はあるが、昇温速度に関して
は記載がない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】密閉性が良好で、不活
性ガス置換が十分に可能であり、装置内加圧が可能な賦
活装置は、立地上、操作上、経済性での問題がある。ま
た賦活反応中に不活性ガスを流通させるため製造原価に
も影響する。量産化する時はこれらの問題が顕著になる
ため、上記のような装置を用いることがなく、簡単かつ
量産化に適した賦活方法、装置が望まれる。また、賦活
時に生成する金属アルカリの処理に関しても簡単かつ安
全な処理方法が望まれる。
【0009】炭素材とアルカリ金属化合物を含む融液の
発泡現象によって、容器から吹きこぼれる炭素材を損失
するため容器当たりの炭素材収得量が少なくなり、さら
に炭素材の品質管理から装置の清掃も必要となる。容器
の容積当たりの炭素材製造量を増やすには、アルカリ賦
活剤と炭素質原料の吹きこぼれを少なくして出来るだけ
詰められることが望ましい。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
鋭意検討した結果、以下に述べる製法で賦活を行い、問
題を解決できるに至った。
【0011】炭素質原料をアルカリ金属化合物で賦活し
て活性炭または活性炭素繊維を得るに当たり、反応系
(炭素質原料及びアルカリ金属化合物を含む組成物)を
炭素系粉末層で包囲し、さらに必要に応じて無機化合物
層を炭素系粉末層に含み賦活を行う。賦活して得られる
活性炭または活性炭素繊維は高比表面積を有する。
【0012】「高比表面積」とは、多孔質構造を有する
ものと他の物質例えば吸着分子との相互作用可能な表面
の指標、つまり表面現象を決める重要な指標となる比表
面積が、特定の条件下で決定された有効表面積が高いこ
とを示す。比表面積の測定方法は吸着法、浸せき熱法、
透過法、電子顕微鏡法などが知られているが、よく用い
られる方法として吸着法(気相吸着法、液相吸着法があ
り、算出方法としてBET法、t法などがある。)、浸
せき熱法である。
【0013】「包囲する」とは、平面、立体的なものを
囲むことであり、必ずしも全体を包み込まなくともよ
く、上部にかぶさるように装着して被装させたり、また
余地なく全体を包み込んだ状態である被包状態も含め
る。
【0014】炭素系粉末層と無機化合物層は層をなすよ
うに積み重ねる積層状態が少なくとも一部存在していれ
ばよく、必ずしも全体が2層になっていなくてもよい、
また、炭素系粉末と無機化合物が全体で層状に形成され
ていてもよい。反応系周囲に設置された炭素系粉末層ま
たは/及び無機化合物層が酸素の遮蔽体として働き、ま
た賦活反応中に発生する金属アルカリ、アルカリ金属類
は炭素系粉末または/及び無機化合物に捕捉される。こ
れにより賦活中に不活性ガスを流通させる必要もなく、
密閉性のよい等の大掛かりな装置も必要でなくなる。さ
らに活性な金属アルカリは炭素系粉末、無機化合物に吸
収され安定化するので安全に処理できる。
【0015】また賦活時の昇温速度を20℃/hr以下
にすることで容器からの融液の吹きこぼれが抑えられ容
器当たりの活性炭収得量が増える。
【0016】すなわち本発明は、 1)炭素質原料をアルカリ金属化合物で賦活して活性炭
または活性炭素繊維を得る製造方法において、炭素質原
料及びアルカリ金属化合物を含む組成物を炭素系粉末層
で包囲することを特徴とする炭素材の製造方法、 2)炭素質原料をアルカリ金属化合物で賦活して活性炭
または活性炭素繊維を得る製造方法において、炭素質原
料及びアルカリ金属化合物を含む組成物を炭素系粉末層
及び無機化合物層で包囲することを特徴とする炭素材の
製造方法、 3)炭素質原料をアルカリ金属化合物で賦活して活性炭
または活性炭素繊維を得る製造方法において、炭素質原
料及びアルカリ金属化合物を含む組成物を炭素系粉末層
で包囲して、該炭素系粉末層上の少なくとも一部に無機
化合物層を設けることを特徴とする炭素材の製造方法、 4)無機化合物層が、アルミナ−シリカ系、マグネシア
−カルシア系、マグネシア−アルミナ系、クロム−マグ
ネシア系、ジルコニア系、カーボン系耐火物からなる群
から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上
記2)または3)に記載の炭素材の製造方法、 5)炭素系粉末層が、平均粒径100μm以上3cm以
下の粒子からなる炭素材粉末を含むことを特徴とする上
記1)〜4)のいずれかひとつに記載の炭素材の製造方
法、 6)炭素系粉末層が、炭素質原料及びアルカリ金属化合
物を含む組成物の厚みに対して、0.1〜10倍の厚み
を有することを特徴とする上記1)〜5)のいずれかひ
とつに記載の炭素材の製造方法、 7)炭素質原料をアルカリ金属化合物で賦活して活性炭
または活性炭素繊維を得る製造方法において、炭素質原
料の賦活温度が250〜1000℃の温度範囲にあるこ
とを特徴とする上記1)〜6)のいずれかひとつに記載
の炭素材の製造方法、 8)賦活温度において、250〜650℃の温度範囲で
の昇温速度が20℃/hr以下であることを特徴とする
上記7)に記載の炭素材の製造方法、 9)炭素質原料及びアルカリ金属化合物を含む組成物
が、炭素質原料の質量に対して、アルカリ金属化合物の
質量を0.5〜7倍含むことを特徴とする上記1)〜
8)のいずれかひとつに記載の炭素材の製造方法、 10)アルカリ金属化合物が、ナトリウム、カリウムあ
るいはカルシウムの水酸化物、炭酸塩、硫化物または硫
酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種であること
を特徴とする上記1)〜9)のいずれかひとつに記載の
炭素材の製造方法、 11)上記1)〜10のいずれかひとつに記載の製造方
法により得られた炭素材、 12)炭素材が、BETにより測定した比表面積120
0m2/g以上を有する活性炭であることを特徴とする
上記11)に記載の炭素材、及び 13)上記11)または12)に記載の炭素材を用いた
電気二重層キャパシター用電極、 である。
【0017】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。
【0018】アルカリ金属化合物による賦活方法(アル
カリ賦活法)では、原料として炭素質原料(炭化物等)
にアルカリ金属化合物を均等に含浸させて、加熱(焼
成)し、強力に炭素質原料を浸食し、複雑に発達した多
孔質構造の炭材を生成する方法である。
【0019】炭素質原料としては、本発明の製造方法に
おいては特に限定されるものではなく、椰子殻、コーヒ
ー豆、リグニン、おがくず、ポリ塩化ビニリデン、フェ
ノール樹脂、石炭、石炭タール、石炭コークス、石油コ
ークス等を炭化したものやPAN系、ピッチ系炭素繊維
等が使用できる。炭化は通常400〜1000℃の範囲
で行われるが、炭化を行わずにそのままアルカリ金属化
合物と混合してもよい。炭化温度が1000℃を越える
と賦活速度が遅くなり、賦活に長時間を要するため好ま
しくない。炭素質原料の粒度は10メッシュ篩(ASTM規
格;ふるい目の開きが2.0mm)上のものを用いるこ
ともできるが、実質的には10メッシュ以下、より好ま
しくは50メッシュ(ふるい目の開きが0.297m
m)以下、さらに好ましくは100メッシュ(ふるい目
の開きが0.149mm)以下を用いることが望まし
い。
【0020】例えば、活性炭はその形状から粉末活性
炭、粒状活性炭、繊維状活性炭(活性炭素繊維)などに
分類され、粒状活性炭は破砕炭と球状、円柱状などの成
形炭に区別されているがどのような形状のものでも用い
ることができる。
【0021】アルカリ賦活剤としてはアルカリ金属を含
む化合物であれば特に限定されないが、中でもカリウ
ム、ナトリウム、カルシウムの水酸化物、炭酸塩、硫化
物、硫酸塩が好ましい。例えば、水酸化カリウム、水酸
化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸
ナトリウム、炭酸カルシウム、硫化カリウム、硫化ナト
リウム、チオシアン酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸ナ
トリウムが使用でき、好ましくは炭酸カリウム、炭酸ナ
トリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、さらに
好ましくは水酸化カリウム、水酸化ナトリウムである。
これらの1種類あるいは2種類以上混合して使用しても
よい。
【0022】炭素質原料に対するアルカリ金属化合物の
混合量は炭素質原料の結晶性、表面官能基量、得られる
炭素材の用途に合うように決めることができる。炭素質
原料の結晶性が高い、表面官能基が少ない場合は必要な
アルカリ金属化合物の量は増える傾向にある。例えば、
水酸化カリウムを使用した場合は、炭素質原料1に対し
水酸化カリウム質量比は0.5〜7程度、より好ましく
は1〜5程度、さらに好ましくは2〜4程度である。水
酸化カリウム質量比が0.5未満では細孔の発達が悪
く、7以上では過賦活となり細孔壁の破壊が進行するな
どして細孔(ミクロポアー)が減少するため比表面積が
減る傾向にある。
【0023】炭素質原料及びアルカリ金属化合物を含む
組成物としては、炭素質原料、アルカリ金属化合物を各
々の形状のまま組成物を形成していても、一部溶融等で
液体状になっていてもよい。炭素質原料及びアルカリ金
属化合物は固体、液体、気体の状態に関係なく組成物と
して存在していればよい。
【0024】賦活温度は原料の種類及び形状、活性化反
応速度(賦活化反応速度)によって異なるが、好ましく
は250〜1000℃で行われる。賦活温度は、より好
ましくは500℃〜900℃、さらに好ましくは600
℃〜800℃で行われる。賦活温度が400℃以下では
賦活の進行が不充分で、1000℃以上では装置への腐
食等の問題が起こってくる。
【0025】賦活時の昇温速度は20℃/hr以下、よ
り好ましくは10℃/hr以下、さらに好ましくは5℃
/hr以下がよい。ここでの昇温速度とは炉の温度では
なく、賦活時の反応系(アルカリ金属化合物と炭素質原
料)の温度を意味する。昇温速度が速くなる程、単位時
間当たりのアルカリ金属化合物からの水分の脱離、水素
ガス等の発生量が大きくなるため容器からの拭きこぼれ
が起こりやすくなる。
【0026】例えば、アルカリ金属化合物として水酸化
カリウムを使用した場合、特に250〜650℃におい
て昇温速度は重要である。250℃以下では水素ガスの
発生はほとんどなく、650℃以上では固体状態で反応
しているため問題にはならない。容器を使用して賦活を
行う場合、以上の条件で賦活を行えば、容器からの吹き
こぼれを抑えられ、容器当たりの炭素材収得量を増やす
ことができる。図2は、本発明の好ましい実施の形態を
示すものであって、例えば製造装置において炭素質原料
の賦活状態を示す概念図である。
【0027】すなわち、容器(ルツボ)9の内部に被賦
活材料である炭素質原料とアルカリ金属化合物(例えば
水酸化カリウム)10を入れ、容器9を包囲するように
炭素系粉末11を設ける。つまり容器9をステンレス製
容器12の中に入れ、容器9とステンレス製容器12の
間に炭素系粉末を充填することにより、炭素系粉末の中
に容器9が埋め込まれた状態になる。ステンレス製容器
12をヒーター13で加熱することで賦活反応を行う。
賦活反応系周囲では、昇温中にアルカリ金属化合物と炭
素質原料から発生する水分が容器内や炭素系粉末間の空
間から空気を追い出し、また外部から入ってくる酸素は
炭素系粉末に消費されるため、賦活反応は不活性ガスを
流通させなくても酸素がないところで行われるようにな
る。
【0028】また、密封性が良い等の装置を使用する必
要性もなくなり、装置を大型化する時に有利である。
【0029】炭素系粉末層の厚みは、原料が酸化されな
いような厚みとすれば特に限定されるものではないが、
通常、炭素質原料とアルカリ金属化合物の仕込み時の厚
みに対して0.1倍以上、より好ましくは0.5倍以
上、さらに好ましくは2倍以上である。このようにして
発生した水素ガスは燃焼処理して燃料にすることも可能
である。さらに炭素系粉末は賦活反応中に発生する金属
アルカリやアルカリ金属化合物及びそれらの蒸気、反応
ガス等を捕獲する役割も持つ。
【0030】このような炭素系粉末は特に限定はされ
ず、炭素質原料と同じものを使用することもできるが、
活性炭、石油、石炭コークス、その他廃材の炭化物を利
用することが好ましい。粒度は発生ガスの通気性、操作
性、酸素の捕獲能を考慮して決めればよいが、粒径が3
0μm以上3cm以下のものが利用され、好ましくは20
0μm以上2cm以下、さらに好ましくは300μm以
上1cm以下である。
【0031】賦活中に発生する金属アルカリ、金属アル
カリ化合物が反応系周囲の炭素系粉末で捕獲しきれない
時は、さらに無機化合物の吸収材を設置しても良い。炭
素系粉末あるいは無機化合物で金属アルカリを捕捉する
ことで金属アルカリは安定化し、賦活後に水をかける等
の処理をする必要はなくなる。この吸収材は耐熱性に優
れ、金属アルカリ、金属アルカリ化合物を吸収、あるい
は反応する材料なら特に限定されるものではないが、経
済性、安全面を考えると耐火物が好ましい。耐火物には
アルミナーシリカ系、マグネシアーカルシア系、マグネ
シアーアルミナ系、クロムーマグネシア系、ジルコニア
系、カーボン系レンガが挙げられ、より好ましくはアル
ミナーシリカ系、マグネシアーカルシア系、マグネシア
ーアルミナ系がよい。これらのうち1種類あるいは2種
類以上を組み合わせても良い。使用形態は粉末状、ブロ
ック状、成形体の何れでもよく、装置形状、作業性、吸
収効率、通気性に応じて選択すればよい。好ましくは、
粉末状が吸収効率の観点から望ましい。粉末状の場合の
粒度は30μm以上2cm以下、好ましくは50μm以上
1cm以下、さらに好ましくは70μm以上500μm
以下である。これらの無機化合物の吸収材は炭素系粉末
層の上に設置しても、下に設置してもよい。また炭素系
粉末層と混ぜても良いし、無機化合物層の分布は炭素系
粉末層の一部でも全体を覆うようにしてもよい。このよ
うにして賦活された炭素材(活性炭)のBET比表面積
(窒素ガス、多点法)は1000m2/g以上であり、
比表面積としては1200m2/g以上のものが得られ
る。BET比表面積の範囲としては、好ましくは約10
00〜約3000m2/gのものである。
【0032】賦活された結果、細孔に関しては、数層の
炭素層で仕切られた2〜5nm(20〜50Å)のカゴ
状の空隙を多数形成し、吸着等に適切な細孔である細孔
半径1〜2nm(10〜20Å)付近の細孔が多く、炭
素材の吸着容積の増加等が現れる。
【0033】本発明の方法で得られた高比表面積を有す
る炭素材(活性炭または活性炭素繊維)は、知られてい
る電極の製造方法を用いて電気二重層キャパシター用電
極とすることができる。活性炭または活性炭素繊維に、
必要に応じて所定量の導電性物質(カーボンブラック、
黒鉛粉末等)を添加し、ポリエチレンやポリテトラフル
オロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(P
VDF)等のバインダーを溶媒に溶解したものを添加
し、プラネタリーミキサー等で機械的に混練し、スラリ
ーを形成し、ペースト化する。得られたペーストをアル
ミニウム、炭素被覆アルミニウム、ステンレス、チタン
等の箔、板状物の金属集電材(導電性基材)(厚み10
μm〜0.5mmが好ましい)に、所定厚みに塗布し、
溶媒を室温または加熱して蒸発後、またその後必要によ
り、ロールプレス等で加圧処理して電極シートとする。
【0034】使用される電解液としては、公知のもので
よく、水系のものとしては、硫酸水溶液、硫酸ナトリウ
ム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水
溶液、水酸化アンモニウム水溶液、塩化カリウム水溶
液、炭酸カリウム水溶液等が挙げられる。
【0035】また、非水系のものとしては、R123
4+またはR1234+で表されるカチオン
(R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に炭素数1〜1
0のアルキル基またはアリル基である。)と、BF4 -
PF6 -、ClO4 -等のアニオンとからなる4級アンモニ
ウム塩または4級ホスホニウム塩を電解質として、ジエ
チルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコール
モノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエ
ーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエ
チレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリ
コールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ
ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテ
ル、エチレングリコールフェニルエーテル等のエーテ
ル;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−
ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,
N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、
N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミ
ド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチル
プロピオンアミド、ヘキサメチルホスホリルアミド等の
アミド;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄
化合物;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン
等のジアルキルケトン;エチレンオキシド、プロピレン
オキシド、テトラヒドロフラン、2−メトキシテトラヒ
ドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオ
キソラン等の環状エーテル;エチレンカーボネート、プ
ロピレンカーボネート等のカーボネート;γ−ブチロラ
クトン;N−メチルピロリドン;アセトニトリル、ニト
ロメタン等の有機溶媒の溶液が好ましい。さらに、好ま
しくはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート
等のカーボネート系非水溶媒を用いることができる。電
解質または溶媒は、それぞれ二種以上用いることもでき
る。
【0036】電極間に必要に応じて介在させるセパレー
タとしては、イオンを透過する多孔質セパレータであれ
ばよく、微孔性ポリエチレンフィルム、微孔性ポリプロ
ピレンフィルム、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン
不織布、ガラス繊維混抄不織布、ガラスマットフィルタ
等が好ましく使用できる。
【0037】作製された電極は所定の大きさ、形状に切
断したセパレーターを両極の間に介在させ、容器に挿入
した後、電解液を注入し、封口板、ガスケットを用いて
封口をかしめて単極セルとすることができる。
【0038】
【実施例】以下に本発明について代表的な例を示し、さ
らに具体的に説明する。なお、これらは説明のための単
なる例示であって、本発明はこれらに何等制限されるも
のではない。
【0039】(静電容量の測定)平均粒径30μmの活
性炭80質量部にPTFE(ポリテトラフルオロエチレ
ン)10質量部、カーボンブラック10質量部を添加
し、メノウ乳鉢で混練して圧延ローラーで厚さ0.5m
mのシート状に圧延した。このシートを直径13mmの
円板に打ち抜き、200℃で12hr真空乾燥して分極
性電極として使用した。前記の電極を、高純度アルゴン
を循環させているグローブボックス内において、図1の
ようなセルを組み立て評価用に使用した。図1におい
て、1はアルミニウム製の上蓋、2はフッ素ゴム製リン
グ、3はアルミニウムからなる集電体、4はテフロン
(登録商標)からなる絶縁体、5はアルミニウム製容
器、6はアルミニウム製板バネ、7は分極性電極、8は
ガラス繊維からなる厚さ1mmのセパレータである。電
解液にはPC(プロピレンカーボネート)を溶媒とし、
(C254NBF4を電解質とする富山薬品工業(株)
製の商品名LIPASTE−P/EAFINを使用し
た。
【0040】充放電測定は北斗電工(株)製充放電試験
装置HJ−101SM6を使用し、1.59mA/cm
2の電流密度で0〜2.5Vで充放電を行い、2回目の
定電流放電によって得られた放電曲線から、電気二重層
キャパシタの両極活性炭の質量当たりの静電容量(F/
g)と体積当たりの静電容量(F/ml)を算出した。
【0041】(BET比表面積)Quantachro
me社製、NOVA1200を使用し、液体窒素温度で
の窒素の吸着量を測定した。相対圧力P/P0=0.0
1〜0.1における窒素吸着量を使用し、BET法によ
る比表面積を算出した。
【0042】(実施例1)フェノール樹脂(昭和高分子
製、商品名BRP522Z)を200℃で硬化させ、その後窒
素雰囲気下で700℃、4hr炭化を行った。該炭化物
を200メッシュ篩下まで粉砕後、これを600gと水
酸化カリウムペレット1800gをインコネルルツボ
(185mmφ×225mm)に仕込んだ。これをステ
ンレス製角形容器内(270mm×270mm×400
mm)に設置後、ルツボ周囲に3.5メッシュ篩下の石
炭コークス系炭素粉7000gを入れた。このステンレ
ス製角形容器全体を電気炉に入れて5℃/hrの昇温速度
で750℃まで昇温し、750℃で1hr保持して賦活
を行った。賦活中に不活性ガスは流通させなかった。賦
活後にルツボを取り出し観察したところ、仕込み時の水
酸化カリウムと原料炭素粉の高さから最大1.4倍のと
ころまでアルカリ融液の上昇があった。また、賦活終了
後にルツボ上面から深さ1cm〜5cmの炭素粉を数点
採取し、カリウム(K)含有量を炎光分光分析で測定し
たところ0.15〜5.5質量%であった。(炭素粉の
賦活前のカリウム(K)含有量は0.02質量%) 賦活後の活性炭を水洗し、1N−HClで洗浄、乾燥
後、BET比表面積、静電容量を測定した。BET比表
面積は2335m2/g、静電容量は39.9F/g、
26.7F/mlであった。
【0043】(実施例2)石炭系ピッチ(川崎製鉄製)
を窒素雰囲気中で560℃、4hr炭化した原料を20
0メッシュ篩い下まで粉砕した。これを900gと水酸
化カリウムペレット2700gをインコネルルツボ(1
85mmφ×225mm長さ)に仕込んだ。これをステ
ンレス製角形容器内(270mm×270mm×400
mm)に設置後、ルツボ周囲に3.5メッシュ篩下の石
炭コークス系炭素粉7000gを入れた。さらに炭素粉
の上に耐火物( Al2O3(54〜57%) 、SiO2(34〜
37%)、CaO(2〜3%)、MgO(2〜3%)、キャスタブル
耐火物、フレキサイトTMS-CG)を1000g敷き詰めた
(厚さ約1cm)。このステンレス製角形容器ごと電気
炉に入れ、250℃までは150℃/hrの昇温速度で
温度を上げて、250℃から650℃までは1℃/hr
の昇温速度で、650〜750℃までは150℃/hr
で昇温し、750℃で1hr保持して賦活を行った。賦
活中に不活性ガスは流通させなかった。
【0044】賦活後にルツボを取り出し観察したとこ
ろ、賦活時のアルカリ融液の最大液面は仕込み時の水酸
化カリウムと原料炭素粉の高さよりも低いことが分かっ
た。また、賦活終了後にルツボ上面から深さ1〜5cm
の炭素粉を数点採取し、カリウム(K)含有量を炎光分
光分析で分析したところ0.12〜6.0質量%であっ
た。(炭素粉の賦活前のカリウム(K)含有量は0.0
2質量%)耐火物レンガのカリウム(K)含有量は0.
17〜0.07質量%であった。(耐火物の賦活前のカ
リウム(K)含有量は0.074質量%) 賦活後の活性炭を水洗し、1N−HClで洗浄、乾燥
後、BET比表面積、静電容量を測定した。BET比表
面積は1634m2/g、静電容量は38.6F/g、
26.2F/mlとなった。なお、活性炭の洗浄、BE
T比表面積、電気容量の測定は実施例1と同じように行
った。
【0045】(比較例1)水酸化カリウム、フェノール
樹脂炭化物(700℃炭化物)をそれぞれ260g、8
7gをルツボに仕込み、賦活時の昇温速度を200℃/
hrとした以外は実施例1と同様にして活性炭を製造
し、電極材料とした。賦活後にルツボを取り出し観察し
たところ、仕込み時の水酸化カリウムと原料炭素粉の高
さから最大6倍のところまでアルカリ融液の上昇がある
ことが分かった。
【0046】(比較例2)水酸化カリウム、石炭系ピッ
チ(川崎製鉄製)炭化物(560℃炭化物)をそれぞれ
270g、90gをルツボに仕込み、賦活時の昇温速度
を150℃/hrとした以外は実施例2と同様にして活
性炭を製造し、電極材料とした。賦活後にルツボを取り
出し観察したところ、仕込み時の水酸化カリウムと原料
炭素粉の高さから最大8倍のところまでアルカリ融液の
上昇があることが分かった。
【0047】
【発明の効果】以上のように、本発明において、炭素質
原料をアルカリ金属化合物で賦活して高比表面積を有す
る活性炭または活性炭素繊維を得るに当たり、反応系
(炭素質原料及びアルカリ金属化合物を含む組成物)を
炭素系粉末層で包囲し、さらに必要に応じて無機化合物
層を炭素系粉末層に含み賦活することで、不活性ガスを
流通させたり、密閉性の良い装置を使用する必要もなく
なるため量産化に適した製造が可能となった。
【0048】また、賦活時の昇温速度を20℃/hr以
下にすることで容器当たりの炭素材収得量が増えた。
【0049】該製造方法により得られた活性炭あるいは
活性炭素繊維を電極材料として用いる高容量の電気二重
層キャパシターが得られた。
【0050】
【図面の簡単な説明】
【図1】電気二重層キャパシタの性能を評価するための
セルの断面図
【図2】本発明の製造装置において、炭素質原料の賦活
状態を示す説明図
【符号の説明】
1 上蓋 2 ゴムリング 3 集電体 4 絶縁体 5 容器 6 板バネ 7 分極性電極 8 セパレーター 9 容器(ルツボ) 10 炭素質原料+アルカリ金属化合物 11 炭素系粉末 12 ステンレス製容器 13 ヒーター
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01G 9/058 H01G 9/00 301B Fターム(参考) 4G046 HA01 HA03 HA07 HA08 HB03 HC03 HC06 4G066 AA04D AA05B AA13D AA16D AA17D AA20D AA22D AA23D AA38D AA43D AA46D AA47D BA26 DA07 DA08 FA18 FA33 FA34 FA37 4L037 AT05 AT13 AT17 CS06 FA12 PA46 PP02 UA04 UA20

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭素質原料をアルカリ金属化合物で賦活し
    て活性炭または活性炭素繊維を得る製造方法において、
    炭素質原料及びアルカリ金属化合物を含む組成物を炭素
    系粉末層で包囲することを特徴とする炭素材の製造方
    法。
  2. 【請求項2】炭素質原料をアルカリ金属化合物で賦活し
    て活性炭または活性炭素繊維を得る製造方法において、
    炭素質原料及びアルカリ金属化合物を含む組成物を炭素
    系粉末層及び無機化合物層で包囲することを特徴とする
    炭素材の製造方法。
  3. 【請求項3】炭素質原料をアルカリ金属化合物で賦活し
    て活性炭または活性炭素繊維を得る製造方法において、
    炭素質原料及びアルカリ金属化合物を含む組成物を炭素
    系粉末層で包囲して、該炭素系粉末層上の少なくとも一
    部に無機化合物層を設けることを特徴とする炭素材の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 無機化合物層が、アルミナ−シリカ系、
    マグネシア−カルシア系、マグネシア−アルミナ系、ク
    ロム−マグネシア系、ジルコニア系、カーボン系耐火物
    からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特
    徴とする請求項2または3に記載の炭素材の製造方法。
  5. 【請求項5】 炭素系粉末層が、平均粒径100μm以
    上3cm以下の粒子からなる炭素材粉末を含むことを特
    徴とする請求項1〜4のいずれかひとつに記載の炭素材
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 炭素系粉末層が、炭素質原料及びアルカ
    リ金属化合物を含む組成物の厚みに対して、0.1〜1
    0倍の厚みを有することを特徴とする請求項1〜5のい
    ずれかひとつに記載の炭素材の製造方法。
  7. 【請求項7】 炭素質原料をアルカリ金属化合物で賦活
    して活性炭または活性炭素繊維を得る製造方法におい
    て、炭素質原料の賦活温度が250〜1000℃の温度
    範囲にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかひ
    とつに記載の炭素材の製造方法。
  8. 【請求項8】 賦活温度において、250〜650℃の
    温度範囲での昇温速度が20℃/hr以下であることを
    特徴とする請求項7に記載の炭素材の製造方法。
  9. 【請求項9】 炭素質原料及びアルカリ金属化合物を含
    む組成物が、炭素質原料の質量に対して、アルカリ金属
    化合物の質量を0.5〜7倍含むことを特徴とする請求
    項1〜8のいずれかひとつに記載の炭素材の製造方法。
  10. 【請求項10】 アルカリ金属化合物が、ナトリウム、
    カリウムあるいはカルシウムの水酸化物、炭酸塩、硫化
    物または硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種
    であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかひとつ
    に記載の炭素材の製造方法。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10のいずれかひとつに記
    載の製造方法により得られた炭素材。
  12. 【請求項12】 炭素材が、BET法により測定した比
    表面積1200m2/g以上を有する活性炭であること
    を特徴とする請求項11に記載の炭素材。
  13. 【請求項13】 請求項11または12に記載の炭素材
    を用いた電気二重層キャパシター用電極。
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