JP2002361079A - 吸水性複合体およびその製造方法 - Google Patents

吸水性複合体およびその製造方法

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JP2002361079A
JP2002361079A JP2002082779A JP2002082779A JP2002361079A JP 2002361079 A JP2002361079 A JP 2002361079A JP 2002082779 A JP2002082779 A JP 2002082779A JP 2002082779 A JP2002082779 A JP 2002082779A JP 2002361079 A JP2002361079 A JP 2002361079A
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Yasunari Sugiyou
保成 須堯
Kiichi Ito
喜一 伊藤
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 保水性能に優れ、吸水速度が速く、吸水性ポ
リマ−の大部分が繊維質基材上に安定性良く固定されて
おり、しかも、吸水した後の膨潤ゲルの安定性にも優れ
ている吸水性複合体の製造方法を提供すること。 【解決手段】 吸水性ポリマーを与える重合性モノマー
を含む溶液を、液滴状で重合させつつ繊維質基材に落下
させることにより重合進行中の吸水性ポリマー粒子を繊
維質基材に付着させ、付着後に重合を完了させ、さらに
含水率10〜70重量%の含水状態で有機アルミニウム
化合物またはアルコキシチタン化合物で処理することを
特徴とする吸水性複合体の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、繊維質基材に吸水
性ポリマ−粒子が固定化された吸水性複合体及びその製
造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、繊維質基材
に吸水性ポリマ−粒子からなる凝集粒状体が安定性良く
固定化され、吸水性が良好で吸水速度が速いうえに、吸
水後の膨潤ゲルの安定性にも優れていて、吸水性ポリマ
ーの高坪量でも保水能が低下しない吸水性複合体及びそ
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から保水剤として生理用ナプキン、
紙おむつ等を始めとする各種の衛生用品および農業用資
材等に吸水性の種々の高分子材料が使用されている。例
えば、澱粉のグラフト重合体(特公昭53−46199
号公報等)、セルロ−ス変性体(特開昭50−8037
6号公報等)、水溶性ポリマーの架橋物(特公昭43−
23462号公報等)、自己架橋型アクリル酸アルカリ
金属塩ポリマ−(特公昭54−30710号公報等)等
が提案されている。
【0003】これらの吸水性ポリマーの吸水性能はかな
り高いレベルに達しているが、その殆どが粉末状である
ために、例えば、生理用ナプキン、紙おむつ等の衛生材
料として使用するためにはティッシュ、不織布、綿等の
基材上に吸水性ポリマ−粉末を均一に分散させる必要が
ある。しかし、公知の方法で分散させた吸水性ポリマ−
粉末は、繊維質基材上に安定性良く固定することが困難
であり、均一に分散させた後でも一部局所に集合化する
ことが多く、また、吸水後の膨潤ゲルも安定性良く繊維
質基材上に固定されずに繊維質基材から容易に移動して
しまうという欠点があった。特に、大人用向け紙おむつ
においては、短時間に多量の尿を吸収させるためには、
吸水性ポリマーの坪量を上げなくてはならない。少しで
も上記の問題点にように一部でも集合化して吸水性ポリ
マーの少ない部分ができるとそこから、尿が漏れること
となる問題点があった。
【0004】これらの問題を解決する方法として、例え
ばバインダ−によりポリマ−粉末を繊維質基材上に固定
する方法、或いはポリアクリル酸金属塩水溶液を基材上
にコ−ティングした後、加熱乾燥工程で架橋を導入する
方法等が知られているが、前者はバインダ−を用いるこ
とによる工程の煩雑さ、後者は吸水性能が十分に発現し
難い等の欠点がある。
【0005】また、成形した繊維質基体にアクリル酸系
モノマ−水溶液を予め決めた模様状に施した複合体を製
造し、これに電磁放射線または微粒子性イオン化放射線
を照射することにより、アクリル酸系モノマ−を水膨潤
性ポリマ−に転化させて吸水性複合体を製造する方法が
報告されている(特公平3−67712号公報)。この
方法によれば、上記の粉体を取り扱う上での均一な分散
化および繊維質基材上への安定した固定化の点ではかな
りの改良が見られるものの、アクリル酸系モノマ−を吸
水性ポリマ−に転化するに当たって、電磁放射線または
微粒子性イオン化放射線を使用するために、吸水性ポリ
マ−の自己架橋化反応が極めて進みやすく、その結果、
吸水体としての性能、特に吸水能が著しく小さくなり、
通常、前記粉末状吸水性ポリマ−を使用した場合に比較
して吸水能が半分以下となってしまうという欠点があ
る。特に、重合性に富むアクリル酸系モノマ−水溶液を
繊維質基材自体が吸収してしまうため、重合後の複合体
は板状の極めて硬いものとなり、実際上の使用に当たっ
て板状物質を破砕して用いなければならなくなる。ま
た、吸水性ポリマーが膨潤する際に繊維質基材の膨潤阻
害効果等が生じて、吸収能、特に吸水能が著しく小さく
なってしまう。
【0006】更に、繊維質基材と吸水性ポリマーからな
り、その吸水性ポリマーの一部が基材を略球状に包み込
み、かつ不連続に付着した吸収物品が提案されている
(特公平5−58030号公報)。この吸収物品は上記
従来品よりも一部の吸水特性は改良されているが、吸水
物品であるにも拘わらず繊維質基材として親水性繊維が
不適当とされ、また吸水性ポリマーの吸水膨潤後の付着
性が弱く脱落し易いという問題点がある。
【0007】本出願人は、アクリル酸系重合性モノマー
水溶液をレドックス系開始剤で重合開始させた混合液か
らなる液滴を繊維質基材に担持させて重合させることに
よって、吸水性および吸水速度に優れ、吸水性ポリマー
粒子が繊維質基材上に安定性良く固定化された吸水性複
合体を製造しうることを見出し(特開平9−67403
号公報)、粒子同士がお互いに結着した凝集粒状体を開
発してきた(特願平11−317105号公報)。しか
し、吸水性ポリマー粒子は吸水性複合体中に50〜30
0g/m2となるように含有させるのが通常であるが、
大人用衛生材は短時間で多量の体液を吸収することが要
求されるため、これよりも更に多い300g/m2以上
の坪量の範囲でも使用できる吸水性複合体を提供するこ
とが望まれていた。
【0008】通常、坪量を大きくして行くと、膨潤した
吸水性ポリマーのゲルブロックなどにより、吸水速度が
低下したり、保水性能が低下する問題がある。通常使用
される架橋剤は重合性モノマーと共重合し得る多官能化
合物やカルボン酸基と反応し得る官能基を複数個有する
化合物であるため、重合開始剤や電子線や加熱により、
架橋を実施しなくてはならず、高坪量になると均一に開
始剤や電子線や加熱を吸水性ポリマーに与えたり、処理
したりすることができず、不均一になりやすい。このた
め、従来は満足のゆく高坪量の吸水性複合体ができなか
った。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、前記
従来技術の欠点を改良し、吸水性ポリマ−の大部分が繊
維質基材上に安定性良く固定されており、しかも、吸水
した後の膨潤ゲルの固定性にも優れ、高坪量でも高吸水
速度であり保水能や吸水能が低下しない吸水性複合体及
びその製造方法を提供することを解決すべき課題とし
た。
【0010】
【課題を解決するための手段】これらの問題点を解決す
るため鋭意研究を重ねた結果、本発明者らは、含水状態
の吸水性ポリマーに有機アルミニウム化合物またはアル
コキシチタン化合物による処理を施すことによって室温
下、数秒で均一に架橋を行うことができることを発見し
た。また、通常の架橋剤に比べ開始剤や電子線や加熱等
の煩雑且つ経済的に不利な工程を経ずに済むことも判明
した。
【0011】すなわち、本発明は、吸水性ポリマーを与
える重合性モノマーを含む溶液を、液滴状で重合させつ
つ繊維質基材に落下させることにより重合進行中の吸水
性ポリマー粒子を繊維質基材に付着させ、付着後に重合
を完了させ、さらに含水率10〜70重量%の含水状態
で有機アルミニウム化合物またはアルコキシチタン化合
物で処理することを特徴とする吸水性複合体の製造方法
を提供する。
【0012】本発明の製造方法の好ましい態様として、
前記有機アルミニウム化合物または前記アルコキシチタ
ン化合物を前記吸水性ポリマーに対し0.01〜5重量
%で用いる態様;前記有機アルミニウム化合物として、
下記式で表されるアルコキシアルミニウム、または、ア
ルミニウムキレート化合物のいずれかの化合物を用いる
態様を挙げることができる。 [Al(OR)3] (上式において、3つのRは各々独立にアルキル基又は
アリール基である。)
【0013】また本発明は、上記の製造方法により製造
される吸水性複合体を提供する。さらに本発明は、繊維
質基材に吸水性ポリマー粒子が固定化された吸水性複合
体であって、前記吸水性ポリマーの一部を繊維質基材が
貫通しており、該吸水性ポリマーの繊維質基材への担持
強度が70〜95%であり、吸水速度が40〜50g/
gであり、アルミニウムまたはチタンを含有することを
特徴とする吸水性複合体も提供する。
【0014】本発明の吸水性複合体の好ましい態様とし
て、前記吸水性ポリマー粒子の少なくとも一部は平均粒
子径50〜1000μmの一次粒子から構成され、該一
次粒子の30重量%以上がほぼその粒子形状を維持しつ
つ粒子同士が互いに結着して凝集粒状体を形成してお
り、該凝集粒状体を構成する一次粒子の一部を繊維質基
材が貫通しており、該凝集粒状体を構成する一次粒子の
一部は繊維質基材に直接には付着していない態様;吸水
性複合体中における前記吸水性ポリマー粒子の含有量が
50〜500g/m2である態様を挙げることができ
る。
【0015】
【発明の実施の態様】以下において、本発明の吸水性複
合体及びその製造方法について好ましい態様を参照しな
がら詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」は
その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大
値として含む範囲を意味する。
【0016】本発明の吸水性複合体の製造方法は、吸水
性ポリマーを与える重合性モノマーを含む溶液を、液滴
状で重合させつつ繊維質基材に落下させることにより重
合進行中の吸水性ポリマー粒子を繊維質基材に付着さ
せ、付着後に重合を完了させる工程を含む。本発明の製
造方法は、さらにその後に、含水率10〜70重量%の
含水状態で有機アルミニウム化合物またはアルコキシチ
タン化合物で処理することを特徴とする。
【0017】本発明で使用する重合性モノマーは、重合
により吸水性ポリマーを与えるものである限り、その種
類は特に制限されない。好ましいのは、レドックス系開
始剤によって重合が開始される重合性モノマーである。
また、本発明で使用する重合性モノマーは水溶性である
ことが特に好ましい。吸水性ポリマーを与えるモノマー
は一般に水溶性であるため、本発明で使用する重合性モ
ノマーはこれらの幅広い水溶性モノマーの中から適宜選
択することができる。
【0018】本発明で好ましく用いられる重合性モノマ
ーは、脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩である。具
体的には、アクリル酸またはその塩、メタクリル酸また
はその塩等の不飽和モノカルボン酸またはその塩、或い
はマレイン酸またはその塩、イタコン酸またはその塩等
の不飽和ジカルボン酸またはその塩を例示することがで
き、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよ
い。この中で好ましいのはアクリル酸またはその塩、お
よびメタクリル酸またはその塩であり、特に好ましいの
はアクリル酸またはその塩である。
【0019】本発明では、重合性モノマーとして脂肪族
不飽和カルボン酸またはその塩を用いることが好ましい
ので、この重合性モノマーの水溶液としては脂肪族不飽
和カルボン酸またはその塩を主成分とする水溶液を用い
ることが好ましい。ここで、「脂肪族不飽和カルボン酸
またはその塩を主成分とする」とは、脂肪族不飽和カル
ボン酸またはその塩が重合性モノマーの全量に対して5
0モル%以上、好ましくは80モル%以上含まれること
を意味する。
【0020】脂肪族不飽和カルボン酸の塩としては、水
溶性の塩、たとえば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金
属塩、アンモニウム塩等が通常用いられる。また、その
中和度は、目的に応じて適宜定められるが、アクリル酸
の場合には、カルボキシル基の20〜90モル%がアル
カリ金属塩またはアンモニウム塩に中和されたものが好
ましい。アクリル酸モノマーの部分中和度が20モル%
未満であると、生成吸水性ポリマーの吸水能が著しく低
下する傾向がある。
【0021】アクリル酸モノマーの中和には、アルカリ
金属の水酸化物や重炭酸塩等または水酸化アンモニウム
等が使用可能であるが、好ましいのはアルカリ金属水酸
化物であり、その具体例としては水酸化ナトリウムおよ
び水酸化カリウムが挙げられる。
【0022】また、本発明においては、前記の脂肪族不
飽和カルボン酸以外にこれらと共重合可能な重合性モノ
マーを、生成吸水性ポリマーの性能を低下させない範囲
の量で共重合させても差し支えない。共重合させる重合
性モノマーとして、例えば、(メタ)アクリルアミド、
(ポリ)エチレングリコ−ル(メタ)アクリレ−ト、2
−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−トを用いること
ができ、さらに低水溶性モノマーではあるが、アクリル
酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエ
ステル類等も用いることができる。なお、本明細書中に
おいて「(メタ)アクリル」という用語は、「アクリ
ル」または「メタクリル」の何れをも意味するものとす
る。
【0023】なお、これらの重合性モノマーのうち吸水
性ポリマーを与えるものは、脂肪族不飽和カルボン酸ま
たはその塩に対する補助成分としてではなく、「吸水性
ポリマーを与える重合性モノマーの水溶液」の主要モノ
マーとして使用することもできる。
【0024】脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩、特
にアクリル酸またはその塩は、それ自身で自己架橋ポリ
マ−を形成することがあるが、本発明では架橋剤を併用
して架橋構造を積極的に形成させることもできる。架橋
剤を併用すると、一般に生成吸水性ポリマ−の吸水性能
が向上する。架橋剤としては、前記重合性モノマ−と共
重合可能なジビニル化合物(例えば、N,N’−メチレ
ンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリ
コ−ル(メタ)アクリレ−ト類等)、ならびにカルボン
酸と反応し得る2個以上の官能基を有する水溶性の化合
物(例えばエチレングリコ−ルジグリシジルエ−テル、
ポリエチレングリコ−ルジグリシジルエ−テル等のポリ
グリシジルエ−テル等)が好適に使用される。この中で
特に好ましいのは、N,N’−メチレンビス(メタ)ア
クリルアミドである。架橋剤の使用量は、モノマ−の仕
込み量に対して0.001〜1重量%、好ましくは、
0.01〜0.5重量%である。
【0025】上述の脂肪族不飽和カルボン酸またはその
塩を主成分として含む重合性モノマ−水溶液の重合性モ
ノマ−の濃度は、好ましくは20重量%以上、より好ま
しくは25重量%以上である。濃度が20重量%より少
ないと適度な粘度を有する液滴の生成が難しく、ひいて
は重合後の吸水性ポリマーの吸水能が十分に得られない
傾向がある。上限は重合反応液の取り扱い上から80重
量%程度とするのが好ましい。
【0026】本発明では、重合性モノマー含む水溶液
を、液滴状で重合させつつ繊維質基材上に落下させるこ
とにより重合進行中の吸水性ポリマー粒子を繊維質基材
に付着させ、付着後に重合を完了させる。その具体的な
方法は、気相中で重合進行中の吸水性ポリマーを生成で
きる方法であれば特に制限されない。例えば、吸水性ポ
リマーを与える重合性モノマーの水溶液、具体的には、
脂肪族不飽和カルボン酸またはその塩を主成分とする重
合性モノマーの水溶液にレドックス系重合開始剤を配し
て当該モノマーの重合を開始させ、反応開始後のモノマ
ーおよび生成ポリマーを含む重合進行中の反応混合物を
気相中で液滴となし、繊維質基材上でその液滴同士を結
着させて凝集粒状体となし、繊維質基材上で重合を完結
させる方法(特開2000−198805号公報)など
を好ましく使用することができる。なお、本明細書中で
「繊維質基材上」とは、成形された繊維質基材の面上、
基材繊維上並びに基材を構成する繊維間の空隙内面上を
も包含するものである。
【0027】このような好ましい重合方法で用いる重合
開始剤は、酸化性を示すラジカル発生剤と還元剤とを組
み合わせてなるレドックス系をなすものであり、ある程
度の水溶性を示すものでなければならない。このような
酸化剤としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウムや過
硫酸カリウム等の過硫酸塩、tert−ブチルハイドロ
パ−オキシドやクメンハイドロパ−オキシド等のハイド
ロパ−オキシド類などの過酸化物、その他、第二セリウ
ム塩、過マンガン酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩等が
挙げられるが、この中でも過酸化水素が特に好ましい。
これら酸化剤の使用量は、重合性モノマーに対して0.
01〜10重量%、好ましくは0.1〜2重量%であ
る。
【0028】還元剤は、前記酸化剤とレドックス系を形
成しうるものであり、具体的には亜硫酸ナトリウム、亜
硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウ
ム、酢酸コバルト、硫酸銅、硫酸第一鉄、L−アスコル
ビン酸またはL−アスコルビン酸アルカリ金属塩等を挙
げることができる。中でも、L−アスコルビン酸または
L−アスコルビン酸アルカリ金属塩が特に好ましい。こ
れらの還元剤の使用量は、重合性モノマーに対して0.
001〜10重量%、好ましくは0.01〜2重量%で
ある。
【0029】上記のレドックス重合方式においては、重
合性モノマ−共存下にレドックス系が形成されると事実
上直ちに重合が開始され、またレドックス系開始剤によ
る重合が連鎖重合であることに相当して所定重合率に達
するまでの時間、つまりモノマ−含有水溶液の粘度が所
定レベルとなるまでの時間が比較的短いことに充分配慮
する必要があり、重合開始後のモノマ−含有水溶液が所
定粘度の液滴を形成するよう運転条件を選ぶ必要があ
る。
【0030】このような配慮の下で好ましい一つの方法
は、レドックス系重合開始剤を構成する酸化剤と還元剤
の一方を含む重合性モノマ−水溶液からなる第1液と、
レドックス系重合開始剤の他方および所望により重合性
モノマ−を含む水溶液からなる第2液を気相中で混合す
ることにより重合を開始させることからなる。
【0031】具体的な手段としては、例えば、第1液お
よび第2液をノズルから流出する液同士の交差角度が1
5度以上の角度で、しかも液柱状態で衝突するようにそ
れぞれ別個のノズルより噴出させる方法がある。このよ
うに両液に交差角度を持たせて互いに衝突させることに
より、ノズルからの流出エネルギ−の一部を混合に利用
するのである。それぞれのノズルから流出する第1液と
第2液の交差角度は、使用する重合性モノマーの性状、
流量比等に応じ適宜選定する。例えば、液の線速度が大
きければ交差角度は小さくすることができる。十分な混
合の効果を得るには一般に15度以上が必要であり、特
に好ましい角度は20度以上である。第1液と第2液の
衝突後に液柱ができる条件であれば(詳細後記)、角度
の上限は特に制限されないが、工業的装置としては好ま
しくは120度以下、特に好ましくは100度以下であ
る。
【0032】この方法では、それぞれのノズルから出る
第1液と第2液の二つの液が合流して液柱が形成される
ように液柱状態で衝突させることが必要である。このよ
うに液柱状態で衝突させることにより、設定した流量比
で液体の混合が可能になり、重合反応が良好に行われ
る。第1液と第2液が粒子状になってから衝突させたの
では混合比率が設定した流量比と異なり、好ましい結果
は得られにくい。また、ノズル先端間の距離は流体が液
柱状態で衝突できる範囲内で自由に設定でき、ノズルの
先端が接触していてもよい。ノズルの内径は、使用する
重合性モノマーの性状、目的とする吸水性複合体の形状
に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは0.05〜
2.0mm、さらに好ましくは0.1〜1.0mmの範
囲である。
【0033】なお、この場合、第1液の温度は通常常温
〜約60℃、好ましくは常温〜約40℃であり、また、
第2液の温度も通常常温〜約60℃、好ましくは、常温
〜約40℃である。このように、ノズルから噴出された
それぞれの水溶液は、液柱状態で衝突させて両液を合体
させる。合体後は液柱を形成していて、その状態がある
時間保持されるが、その後この液柱は解体して液滴とな
る。生成した液滴は基材上に落下し、そこで凝集粒状体
を形成する。
【0034】合体後に液柱を形成、保持する時間、液柱
長さおよび液滴の大きさはノズル内径等の設定条件によ
って異なるが、一般に、保持時間は0.001〜3秒、
液柱長さは3〜50mm、液滴の大きさは直径約5〜3
000μmである。液滴の重合が進行し、互いに結着し
て適当な凝集粒状体を形成するには、液滴の大きさが特
に50〜1000μmの範囲とするのが好ましい。
【0035】このような重合の開始および重合進行中の
液滴の形成を行う場を与える気相のガスとしては、窒
素、ヘリウム、炭酸ガス等の重合に不活性なものが好ま
しいが、空気でもよい。また、水蒸気のみの場合を含
め、ガス中の湿度には特に制限はないが、あまり湿度が
低いと重合が進行する前にモノマ−水溶液中の水分が蒸
発してモノマ−が析出し、その結果、重合速度が著しく
低下、あるいは重合が途中で停止する可能性がある。ガ
スの温度条件は、室温〜150℃、望ましくは室温〜1
00℃である。ガスの流れ方向は液柱および液滴の進行
方向に関して向流、並流のどちらでもよいが、液滴の気
相中滞留時間を長くする必要がある場合、すなわち重合
性モノマ−の重合率を上げ、ひいては液滴の粘度を高め
る必要がある場合には向流(反重力方向)の方がよい。
【0036】重合進行中の液滴は、繊維質基材に付着し
て該基材上で重合を完了させ、該繊維質基材に固定化す
る。好ましくは、繊維質基材上でほぼその形状を維持し
つつ互いに衝突、結着して一体となり凝集粒状体を形成
するが、繊維質基材上の凝集粒状体はそのまま、該基材
上で重合を完了させ、該凝集粒状体が該基材繊維の廻り
を包囲するか該基材繊維に接して該繊維質基材に固定化
する。該繊維質基材に固定化された凝集粒状体を構成す
る一次粒子の少なくとも一部は、ほぼその粒子形状を維
持しつつ互いに接合した凝集粒状体を構成しており、ま
た、凝集粒状体を構成する一次粒子の一部には繊維質基
材が貫通しており、且つ凝集粒状体を構成する一次粒子
の一部は繊維質基材に付着していない構造となってい
る。
【0037】重合進行中の液滴が基材上に接して凝集粒
状体を形成する時点での重合率は、好ましくは70〜9
7%、より好ましくは80〜97%、さらに好ましくは
90〜97%であるように諸条件を設定する。この重合
率が余り低い場合には、凝集粒状体とはならず一体化し
て大粒子となったり、基材上に液滴が落下した時に液が
基材上に広がったり或いは吸収ないし含浸されたりして
凝集粒状体の形状で基材に付着させることが不可能にな
る傾向がある。また、重合率が97%以上の時は、基材
との接着力が発現せず、基材と吸水性ポリマ−との固定
性が悪くなる傾向がある。
【0038】重合率および凝集粒状体形成は、ノズルか
ら流出する第1液と第2液との交差角度、ノズルの径、
重合開始剤の種類および量、ノズルと基材との距離、気
相の温度および湿度、ノズルの本数および配置、ノズル
と基材との相対位置ないし距離により液同士の衝突確率
を上げたり、気相中での重合進行度を調整してコントロ
−ルすることが可能である。2本の対向するノズルを使
用する以外の方法も可能であって、そのような場合の例
として2本のノズルの先端位置を揃えた結束式ノズル、
一方のノズルが他方のノズルに内挿されている二重式ノ
ズル等が挙げられる。
【0039】ノズルから噴出させたそれぞれの液の成分
は液柱状態で衝突混合した後に液滴を形成し、液滴は基
材に落下する間或いは基材上で重合が進行して凝集粒状
体となり、基材上において重合の最終段階が進行する。
【0040】吸水性ポリマーに残存する未反応モノマー
を反応させるために必要に応じて公知の方法によって残
存モノマーを処理してもよい。残存モノマーを処理する
方法としては、1)モノマーの重合を進行させる方法、
2)モノマーを他の誘導体へ導く方法、3)モノマーを
除去する方法が挙げられる。
【0041】1)のモノマーの重合を進行させる方法と
しては、例えば吸水性ポリマーと基材との複合体をさら
に加熱する方法、吸水性ポリマーにモノマーの重合を促
進する触媒ないしは触媒成分を添加した後に加熱する方
法、紫外線を照射する方法、電磁放射線または微粒子性
イオン化放射線を照射する方法などが挙げられる。
【0042】吸水性ポリマーと繊維質基材との複合体を
さらに加熱する方法は、吸水性ポリマーと繊維質基材と
の複合体を100〜250℃で加熱処理し、吸水性ポリ
マーに残存するモノマーを重合させるものである。吸水
性ポリマーにモノマーの重合を促進する触媒ないしは触
媒成分を添加する方法は、例えばレドックス系重合開始
剤を用いて重合を行った場合には、ラジカル発生剤が残
存していることが多いので吸水性ポリマーに還元剤溶液
を付与すればよい。還元剤としては、レドックス系開始
重合剤として用いる亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナト
リウム、L−アスコルビン酸等を用いればよく、通常は
これらを0.5〜5重量%水溶液として吸水性ポリマー
に付与する。還元剤の付与量は吸水性ポリマー(乾燥基
準)に対して0.1〜2重量%でよい。還元剤溶液の付
与は、噴霧器を用いてスプレーしたり、還元剤溶液中に
浸漬するなど、任意の方法で行うことができる。還元剤
を付与した吸水性ポリマーは次いで加熱して重合性モノ
マーを重合させる。加熱は例えば100から150℃で
10〜30分間程度行えばよい。この加熱により吸水性
ポリマーの含水率は低下するが、もし含水率が高い場合
にはさらに乾燥機で乾燥して製品の吸水性複合体とす
る。
【0043】吸水性ポリマーと基材との複合体に紫外線
を照射する方法では、通常の紫外線ランプを用いればよ
く、照射強度、照射時間等は用いる繊維質基体の種類、
残存モノマー含浸量等によって変化するが、一般的には
紫外線ランプ10〜200w/cm、好ましくは30〜
120w/cm、照射時間0.1秒〜30分、ランプ−
複合体間隔2〜30cmである。また、この時の複合体
中の水分量としては、一般的には重合体1重量部に対し
て0.01〜40重量部、好ましくは0.1〜1.0重
量部が採用される。0.01重量部未満または40重量
部超過の水分量は、残存モノマーの低減化に著しい影響
を及ぼすので好ましくない。紫外線を照射する時の雰囲
気としては、真空下または窒素、アルゴン、ヘリウム等
の無機ガス存在下、または空気中のいずれも使用でき
る。また照射温度は特に制限はなく、室温で充分その目
的を達成することができる。用いる紫外線照射装置にも
特に制限はなく、静置状態にて一定時間照射する方法、
あるいはベルトコンベヤーにて連続的に照射する方法
等、任意の方法を用いることができる。
【0044】吸水性ポリマーと基材との複合体に放射線
を照射する方法には、加速電子やガンマー線の様な高エ
ネルギー放射線が用いられる。照射されるべき線量は、
複合体中の残存モノマー量や、水分量等により変化する
が、一般的には0.01〜100メガラド、好ましくは
0.1〜50メガラドである。100メガラド超過の線
量では吸水量が極めて小さくなり、また0.01メガラ
ド未満では本発明で目的とする吸水能や吸水速度が大き
く、残存モノマーが特段に小さいものが得られ難い。ま
た、この時の複合体中の水分量としては、一般的には繊
維質基体1重量部に対して40重量部以下、好ましくは
10重量部以下が採用される。40重量部超過の水分量
では吸水速度改良効果が少なく、特に未重合モノマーの
低減化に著しい影響を及ぼすので好ましくない。本発明
で前記複合体に高エネルギー放射線を照射する時の雰囲
気としては、真空下または窒素、アルゴン、ヘリウム等
の無機ガス存在下、または空気中のいずれも使用でき
る。好ましい雰囲気は空気であって、空気中で照射を行
なうと吸水能や吸水速度が大きくかつ残存モノマーが特
段に小さくなる。また、照射濃度には特に制限は無く室
温で十分にその目的を達成することができる。
【0045】2)のモノマーを他の誘導体へ導く方法と
しては、例えばアミン、アンモニア等を加える方法、亜
硫酸水素塩、亜硫酸塩、ピロ亜硫酸塩等の還元剤を加え
る方法が挙げられる。
【0046】3)のモノマーを除去する方法としては、
例えば有機溶媒による抽出、留去する方法が挙げられ
る。有機溶媒により抽出する方法では、吸水性ポリマー
と基材との複合体を、含水有機溶媒中に浸漬して、残存
モノマーを抽出除去する。含水有機溶媒としてはエタノ
ール、メタノール、アセトン等を用いることができ、そ
の含水率は10〜99重量%、特に30〜60重量%で
あるのが好ましい。一般に含水率が高いほど残存モノマ
ーの除去能が高いが、含水率の高い含水有機溶媒を用い
ると後続する乾燥工程でのエネルギー消費が多くなる。
吸水性ポリマーと基材との複合体を含水有機溶媒に浸漬
する時間は通常5〜30分間程度で十分であり、吸水性
ポリマーと基材との複合体を揺動させるなど残存モノマ
ーの抽出を促進する手段を採用するのも好ましい。浸漬
処理後は通常乾燥機で処理して乾燥する。
【0047】また、モノマーを留去する方法としては、
吸水性ポリマーと基材との複合体を過熱水蒸気または水
蒸気含有ガスで処理する。例えば110℃の飽和水蒸気
を120〜150℃に加熱して過熱水蒸気として吸水性
ポリマーと基材との複合体に接触させることにより、吸
水性ポリマー中の残存モノマーを低減させることができ
る。この方法では、吸水性ポリマー中の水が水蒸気とな
って蒸発する際に、残存モノマーも同時に気化して吸水
性ポリマーから抜け出るものと考えられる。この方法に
よれば、残存モノマーの除去と製品の乾燥とを兼ねるこ
とができる。
【0048】上記の方法により、繊維質基材上に吸水性
ポリマー粒子や該吸水性ポリマー粒子からなる凝集粒状
体が形成された後、本発明では、さらに含水率10〜7
0重量%の含水状態で有機アルミニウム化合物またはア
ルコキシチタン化合物で処理する。
【0049】本発明で使用する有機アルミニウム化合物
として、以下の構造を有するアルコキシアルミニウム化
合物またはアルミニウムキレート化合物を例示すること
ができる。 [Al(OR)3] (上式において、3つのRは各々独立にアルキル基又は
アリール基である。) 上記構造式で表されるトリアルコキシアルミニウム化合
物の具体例として、トリメトキシアルミニウム、トリエ
トキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウ
ム、トリブトキシアルミニウム、トリス(2−エチルヘ
キシルオキシ)アルミニウム、トリステアリルオキシア
ルミニウム、トリスフェノキシアルミニウム、トリスベ
ンジルオキシアルミニウム等が挙げられる。好ましく
は、トリイソプロポキシアルミニウムである。
【0050】アルミニウムキレート化合物の具体例とし
て、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピ
レート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテー
ト)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナト)、ア
ルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルア
セトナトなどが挙げられる。好ましくは、アルミニウム
エチルアセトアセテートジイソプロピレートである。こ
れらの有機アルミニウム化合物は、1種または2種以上
を使用することができる。
【0051】本発明で使用するアルコキシチタン化合物
としては、分子中に反応性のアルコキシ基を含有する有
機チタン化合物であればその種類は特に制限されない。
かかるアルコキシチタン化合物の具体例としては、テト
ラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソ
プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラキス
(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリ
ルオキシチタン、テトライソプロポキシチタンポリマ
ー、テトラブトキシチタンポリマー、ジイソプロポキシ
ビス(アセチルアセトナト)チタン、ジブトキシビス
(トリエタノールアミナト)チタン、トリブトキシチタ
ンステアレート、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタ
ン、ジイソプロポキシチタンジステアレート等が挙げら
れ、それらの1種または2種以上を使用することができ
る。
【0052】本発明に使用される架橋剤の使用量は、重
合に使用するモノマーの種類、すなわち吸水性ポリマー
の種類によって異なるので一概に規定できないが、通常
はポリマー(乾燥基準)に対して0.01〜5重量%、
好ましくは0.1〜3重量%、特に好ましくは0.2〜
1.5重量%となるように用いられる。架橋剤の使用量
が少なすぎると改良効果が得られなくなるし、多すぎる
と経済的に不利となり、時として吸水能が低下する場合
がある。本発明におけるポリマーの含水量は、使用する
ポリマーおよび架橋剤の種類によって異なるので一概に
規定できないが、通常ポリマーに対して10〜70重量
%、好ましくは10〜60重量%である。水の存在量が
少なすぎると、架橋剤との反応が有効に進行しない傾向
がある。一方、多すぎると、吸水速度の向上効果が低減
して、多量の架橋剤を必要とすること後の工程で乾燥を
行うが乾燥に時間がかかるため経済的にも不利となる傾
向がある。
【0053】本発明では、さらに必要に応じて公知の架
橋剤を併用することも可能である。公知の架橋剤として
は、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、
(ポリ)エチレングリコールビス(メタ)アクリレート
等の重合性モノマーと共重合し得る多官能化合物や、
(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル等の
カルボン酸基と反応し得る官能基を複数個有する化合物
が用いられる。これらの架橋剤を併用した場合は、通
常、加熱処理として、加熱温度100℃以上、加熱時間
10分以上架橋反応を行わせなければならない。
【0054】架橋剤の添加方法は特に制限されないが、
通常は、吸水性ポリマーと基材との複合体の吸水性ポリ
マーに表面架橋剤の溶液を付与する。架橋剤溶液の付与
は通常は噴霧器を用いて架橋剤溶液を吸水性ポリマーに
噴霧したり、吸水性ポリマーと基材との複合体を反転さ
せて吸水性ポリマー粒子付着面が下面になるようにして
移動させつつ、これに架橋剤溶液を収容した槽に下部が
浸漬しているロールブラシで架橋剤溶液を塗布する方法
により行うのが好ましい。なお、架橋剤溶液を過剰に付
与した後、圧搾ロールで吸水性ポリマー粒子がつぶれな
い程度に軽く圧搾したり、風を吹き付けたりして、余剰
の架橋剤溶液を除去するようにしてもよい。この架橋剤
溶液の付与は室温で行えば良く、通常室温下でも即座に
架橋反応が終了する。公知の架橋剤に場合は加熱により
架橋反応を行うが、本技術は加熱することなく室温下で
即座に重合が終了する画期的な方法である。
【0055】これらの表面架橋剤は、吸水性ポリマー粒
子の表面全体に均一に付与されるように、架橋剤が溶解
し、且つ吸水性ポリマーが膨潤しない溶剤等で希釈し
て、通常0.1〜50重量%、好ましくは1〜10重量
%、さらに好ましくは1〜5重量%の有機溶媒溶液とし
て用いる。
【0056】架橋剤溶液を付与された吸水性ポリマーと
基材との複合体は、次いで加熱乾燥させる。加熱乾燥温
度は通常は100℃以上の温度で行うことが好ましい。
【0057】本発明の製造方法により製造した吸水性複
合体は、吸水性ポリマ−の大部分が繊維質基材上に安定
性良く固定されており、しかも、吸水した後の膨潤ゲル
の固定性にも優れ、高坪量でも保水能吸水能が低下しな
い。本発明に関連する先行技術である特開平9−239
912号公報には、水溶性エチレン性不飽和モノマー含
浸吸水性ポリマー粒子を、繊維質基材上或いは基材中に
配置した後、該吸水性ポリマー粒子中のエチレン性不飽
和モノマーを重合させることにより、前記繊維質基材上
或いは基材中に吸水性ポリマー粒子を固定化させること
を特徴とする吸水性複合体の製造方法が開示されてい
る。この手法は予め重合が完了した吸水性ポリマー粒子
を用いるため、繊維質基材の繊維との結着は凝集粒状体
を構成する一次粒子表面と点接着となっている。一方本
発明は重合が未完了なうちに繊維質基材の繊維と結着す
るため、繊維質基材の繊維は吸水性ポリマー粒子中を貫
入している。特開平9−239912号公報と本発明の
吸水性複合体の吸水ポリマーを比較すると、接着機構か
ら明らかなように本発明の吸水時の接着強度は大幅に改
善されている。
【0058】上記の重合進行中の反応混合物の液滴ない
しは凝集粒状体を構成する吸水性ポリマーを付着させる
べき繊維質基材としては、成形した繊維質基材が好まし
い。ここでいう成形した繊維質基材とは、具体的には繊
維をゆるく成形したパッド、カ−ディングまたはエア・
レイイングしたウエブ、ティシュペ−パ−、木綿ガ−ゼ
のような織布、メリアス地または不織布であって、特定
の形状を有するものである。成形した繊維質基材とは、
その繊維質基材を用品の中に組み込むために、切断、接
合、造形等が必要になることはあるが、ウエブ形成作業
は更に施す必要がないものを意味する。
【0059】基材を構成する繊維は、木材パルプ、レ−
ヨン、木綿、再生セルロ−スその他のセルロ−ス系繊維
のような親水性繊維が好ましく、また本発明の利益を最
も良く享受するものであって、このような親水性繊維を
主成分とするものが本発明における特に好ましい基材で
ある。その他にも、ポリエステル系繊維を主成分とした
繊維質基材を使用することも好ましく、また他の種類の
非親水性の繊維、例えば、ポリエチレン系、ポリプロピ
レン系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ポリビニルア
ルコ−ル系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビリニデン
系、ポリアクリロニトリル系、ポリ尿素系、ポリウレタ
ン系、ポリフルオロエチレン系、ポリシアン化ビニリデ
ン系繊維を主成分とした繊維質基材を使用することも可
能である。また、繊維質基材として比較的稠密な繊維質
基材も用いることができる。具体的には紙、木材、バッ
クスキン、皮革等を挙げることができる。
【0060】吸水性複合体の実際の製造方法の一例を例
示すると下記のとおりである。すなわち、前記繊維質基
材のシ−トをベルトコンベア−で移送しつつ、上方か
ら、重合性モノマ−水溶液の重合が開始された重合進行
中の反応混合物の液柱を落下させ、生成した液滴同士が
繊維質基材シート上で結着して一体となった吸水性ポリ
マーを、該基材シート上に担持させてから所定時間を経
過させ、重合を完了させる。生成した吸水性ポリマ−は
水分を含んでいるから、水分除去のため乾燥処理をし
て、吸水性複合体の原反を得る。これを所定の形、大き
さに切断し、吸水性複合体として製品化される。
【0061】このようにして得られた吸水性複合体は、
吸水性ポリマー粒子中を繊維質基材が貫通して該ポリマ
ーが繊維質基材にしっかり固定されており、好ましく
は、吸水性ポリマ−が凝集粒状体となり、凝集粒状体の
少なくとも一部が、基材繊維の廻りを包囲するか基材繊
維に接して繊維質基材に固定化され、かつ構成する一次
粒子の一部の粒子中を貫通して基材上に担持されてい
る。従って、吸水前はもとより、吸水してゲル状態とな
った後も該ポリマ−が繊維質基材にしっかりと固定化さ
れており、更には、凝集粒状体は凝集している構成一次
粒子同士の接合面は一体化して接着界面がないため、吸
水して膨潤した後も単粒子に戻りにくく吸収体としての
形態保持性に優れている。
【0062】また、吸水性ポリマ−が凝集粒状体の場
合、その構成一次粒子の一部は基材繊維に付着していな
いため、該ポリマ−が基材繊維から受ける拘束が小さい
のでポリマ−が吸水して膨潤する際に繊維から受ける膨
潤阻害が低減でき吸水能の優れた吸水性複合体が得られ
るという特徴を有する。
【0063】さらに、本発明の吸水性複合体は、一次粒
子が真球状であるポリマー粒子が互いに結着し二次粒子
がぶどう状をなしているため角張ったところがなくソフ
ト感を保持できるという特徴を有する。本発明と同様に
繊維質基材に吸水性ポリマーが固定化された吸水性複合
体として、特開平9−67403号公報に記載されるも
のが開発されていたが、該公報に記載される複合体中の
吸水性ポリマーは角張った不定形単粒子が繊維に付着し
ているものである。このため、皮膚への感触がざらざら
乃至チクチクしておりソフト感に欠けるきらいがある
が、本発明の吸水性複合体は皮膚への感触を大幅に改善
している。
【0064】本発明の製造方法によれば、吸水性ポリマ
ーの繊維質基材への担持強度が70〜95%であり、吸
水速度が40〜50g/gであり、アルミニウムまたは
チタンを含有する好ましい吸水性複合体を提供すること
ができる。ここでいう担持強度と吸水速度は、後述する
試験例に定義されるとおりである。担持強度は75〜9
5%であることがより好ましい。また、吸水速度は42
〜50g/gであることがより好ましい。
【0065】また、吸水性ポリマー粒子の少なくとも一
部は、平均粒子径50〜1000μmの一次粒子から構
成されていることが好ましい。一次粒子の平均粒子径は
100〜900μmがより好ましく、200〜800μ
mがさらに好ましい。
【0066】また、一次粒子の30重量%以上は、ほぼ
その粒子形状を維持しつつ粒子同士が互いに結着して凝
集粒状体を形成していることが好ましい。凝集粒状体を
構成する一次粒子は50重量%以上であることがより好
ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。
【0067】さらに、凝集粒状体の平均粒子短径は、1
00〜3000μmであることが好ましく、200〜2
000μmがより好ましく、250〜2000μmがさ
らに好ましい。平均粒子短径が100μmより小さいと
吸水性能が十分に発現しない傾向がある。また、平均粒
子短径が3000μmより大きいと繊維質基材との接着
力が弱くなる傾向がある。ここで凝集粒状体の平均粒子
短径とは、各凝集粒状体の短径を平均したものをいう。
また、粒子短径とは、粒子の径が最も長くなる様にとっ
た長径に直交する径のうち最大のものをいう。吸水性複
合体中の吸水性ポリマーの含有量、すなわち、坪量は5
0〜500g/m2であることが好ましく、100〜4
00g/m2であることがより好ましく、100〜30
0g/m2であることが特に好ましい。坪量が50g/
2未満だと、吸水性複合体の保水能が不十分になり、
衛生材料として用いる場合に体液が吸収しきれず、漏れ
が生じる傾向がある。また、坪量が500g/m2より
多いと、吸水性複合体中の吸水性ポリマーの重量比が大
きくなるので、衛生材料として用いる場合に風合いが悪
くなる傾向がある。
【0068】本発明による吸水性複合体は、後記実施例
に記載の生理食塩水保水能および吸収速度試験から明ら
かなように、保水能および吸水速度の点においても満足
すべき性能を有している。本発明によれば、保水能は一
般に30g/g以上、通常は35g/g以上であり、4
0g/g以上もしばしばみられる。保水能が30g/g
未満では、用途によっては不十分であり、例えば大人用
の衛生材料としては多量の体液を吸収しきれない場合が
ある。また、吸水速度は、一般に40g/g以上、好ま
しくは42g/g以上である。吸水速度が40g/g未
満では、用途によっては不十分であり、例えば大人用の
衛生材料としては短時間に多量の体液を吸収しきれない
場合がある。なお、本明細書でいう保水能および吸水速
度は、後述する試験例に記載される方法で測定した値で
ある。
【0069】本発明の吸水性複合体は従来吸水性ポリマ
ーが用いられていた用途に用いることができる。「吸水
性ポリマー」81〜111頁(増田房義、共立出版、1
987)、「高吸水性樹脂の開発動向とその用途展開」
(大森英三、テクノフォーラム、1987)、田中健
治、「工業材料」42巻4号18〜25頁、1994、
原田信幸、下村忠生、同26〜30頁には吸水性ポリマ
ーの様々な用途が紹介されており、適宜用いることがで
きる。例えば紙おむつ、生理用品、鮮度保持材、保湿
剤、保冷剤、結露防止剤、土壌改良材等が挙げられる。
【0070】また更に特開昭63−267370号公
報、特開昭63−10667号公報、特開昭63−29
5251号公報、特開昭270801号公報、特開昭6
3−294716号公報、特開昭64−64602号公
報、特開平1−231940号公報、特開平1−243
927号公報、特開平2−30522号公報、特開平2
−153731号公報、特開平3−21385号公報、
特開平4−133728号公報、特開平11−1561
18号公報等に提案されているシート状吸水性複合体の
用途にも用いることができる。
【0071】本発明において、吸水性ポリマーまたは吸
水性複合体には、目的とする用途に応じて所望の機能を
付与するために各種の添加剤を加えることができる。こ
れら添加剤としては、吸収する液体によるポリマー分
解、変質を防止する安定剤、抗菌剤、消臭剤、脱臭剤、
芳香剤、発泡剤等を挙げることができる。
【0072】このうち吸収する液体によるポリマー分
解、変質を防止する安定剤としては排泄物(即ち人尿、
糞便)、体液(人血、経血、分泌液等の体液)による吸
水性ポリマーの分解、変質を防止する安定剤が挙げられ
る。特開昭63−118375号公報にはポリマー中に
含酸素還元性無機塩および/または有機酸化防止剤を含
有させる方法、特開昭63−153060号公報には酸
化剤を含有させる方法、特開昭63−127754号公
報には酸化防止剤を含有させる方法、特開昭63−27
2349号公報には硫黄含有還元剤を含有させる方法、
特開昭63−146964号公報には金属キレート剤を
含有させる方法、特開昭63−15266号公報にはラ
ジカル連鎖禁止剤を含有させる方法、特開平1−275
661号公報にはホスフィン酸基またはホスホン酸基含
有アミン化合物またはその塩を含有させる方法、特開昭
64−29257号公報には多価金属酸化物を含有させ
る方法、特開平2−255804号公報、特開平3−1
79008号公報には重合時水溶性連鎖移動剤を共存さ
せる方法等が提案されている。また、特開平6−306
202号公報、特開平7−53884号公報、特開平7
−62252号公報、特開平7−113048号公報、
特開平7−145326号公報、特開平7−14526
3号公報、特開平7−228788号公報、特開平7−
228790号公報に記載される材料および方法を使用
することもできる。具体的にはたとえばシュウ酸チタン
酸カリウム、タンニン酸、酸化チタン、ホスフィン酸ア
ミン(またはその塩)、ホスホン酸アミン(またはその
塩)、金属キレート等挙げられる。このうち特に人尿、
人血、経血に対する安定剤をそれぞれ人尿安定剤、人血
安定剤、経血安定剤と呼ぶことがある。
【0073】吸収した液による腐敗を防止するためには
抗菌剤が用いられる。抗菌剤として例えば、「殺菌・抗
菌技術の新展開」17〜80頁(東レリサーチセンター
(1994))、「抗菌・抗カビ剤の検査・評価法と製
品設計」128〜344頁(エヌ・ティー・エス(19
97))、特許第2760814号公報、特開昭39−
179114号公報、特開昭56−31425号公報、
特開昭57−25813号公報、特開昭59−1898
54号公報、特開昭59−105448号公報、特開昭
60−158861号公報、特開昭61−181532
号公報、特開昭63−135501号公報、特開昭63
−139556号公報、特開昭63−156540号公
報、特開昭64−5546号公報、特開昭64−554
7号公報、特開平1−153748号公報、特開平1−
221242号公報、特開平2−253847号公報、
特開平3−59075号公報、特開平3−103254
号公報、特開平3−221141号公報、特開平4−1
1948号公報、特開平4−92664号公報、特開平
4−138165号公報、特開平4−266947号公
報、特開平5−9344号公報、特開平5−68694
号公報、特開平5−161671号公報、特開平5−1
79053号公報、特開平5−269164号公報、特
開平7−165981号公報に紹介されているものを適
宜選択できる。
【0074】例えばアルキルピリジニウム塩、塩化ベン
ザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ピリジオ
ン亜鉛、銀系無機粉体等が挙げられる。四級窒素系の抗
細菌試薬の代表的な例としては、メチルベンズエトニウ
ムクロライド(methylbenzethonium
chroride)、ベンズアルコニウムクロライ
ド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、テト
ラデシルトリメチルアンモニウムブロマイドおよびヘキ
サデシルトリメチルアンモニウムブロマイドを挙げるこ
とができる。ヘテロ環四級窒素系の抗細菌試薬として
は、ドデシルピリジニウムクロライド、テトラデシルピ
リジニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド
(CPC)、テトラデシル−4−エチルピリジニウムク
ロライドおよびテトラデシル−4−メチルピリジニウム
クロライドを挙げることができる。
【0075】他の好ましい抗細菌試薬として、ビス−ビ
グアニド類を挙げることができる。このビス−ビグアニ
ド類は、また抗細菌試薬としても知られている。これら
は、例えば、米国特許第2,684,924号明細書、
同2,990,425号明細書、同第2,830,00
6号明細書および同第2,863,019号明細書に詳
細に記載されている。最も好ましいビス−ビグアニドと
しては、1,6−ビス(4−クロロフェニル)ジグアニ
ドヘキサンであり、クロロヘキシジン(chlorhe
xidine)およびその水溶性塩として知られている
ものである。特に好ましいのは、クロロヘキシジンの塩
酸塩、酢酸塩およびグルコン酸塩である。
【0076】他のいくつかのタイプの抗細菌試薬も有用
である。例えば、カルバニリド(carbanilid
e)類、置換フェノール、金属化合物および界面活性剤
の希土類塩を例示することができる。カルバニリドとし
ては、3,4,4’−トリクロロカルバニリド(TC
C,トリクロカルバン)および3−(トリフルオロメチ
ル−4,4’−ジクロロカルバニリド(IRGASA
N)が含まれる。置換フェノールとしては、5−クロロ
−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)フェノール(I
RGASAN DP−300)を挙げることができる。
金属化合物としては、黒鉛およびすずの塩、例えば塩化
亜鉛、硫化亜鉛および塩化すずが含まれる。界面活性剤
の希土類塩は、欧州特許公開第10819号公報に開示
されている。このタイプの希土類塩としては、直鎖のC
10〜18アルキルベンゼンスルホン酸塩のランタン塩
などを例示することができる。
【0077】また、吸収した液の不快な臭気を防止ある
いは緩和するものとして消臭剤、脱臭剤、芳香剤が用い
られる。消臭剤、脱臭剤、芳香剤は例えば「新しい消臭
・脱臭剤と技術と展望」38から20頁(東レリサーチ
センター(1994))、特開昭59−105448号
公報、特開昭60−158861号公報、特開昭61−
181532号公報、特開平1−153748号公報、
特開平1−221242号公報、特開平1−26595
6号公報、特開平2−41155号公報、特開平2−2
53847号公報、特開平3−103254号公報、特
開平5−269164号公報、特開平5−277143
号公報に紹介されているものを適宜選択できる。具体的
には消臭剤、脱臭剤としては鉄錯体、茶抽出成分、活性
炭が挙げられる。芳香剤としては例えば香料系(シトラ
ール、シンナミックアルデヒド、ヘリオトピン、カンフ
ァ、ボルニルアセテート)木酢液、パラジクロルベンゼ
ン、界面活性剤、高級アルコール、テルペン系化合物
(リモネン、ピネン、カンファ、ボルネオール、ユカリ
プトール、オイゲノール)が挙げられる。
【0078】また吸水性ポリマーの吸水性能向上のため
に多孔化、広表面積化のために発泡剤、発泡助剤を併用
できる。発泡剤、発泡助剤としては例えば「ゴム・プラ
スチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社、198
9、259〜267頁)に紹介されているものを適宜選
択できる。例えば重炭酸ナトリウム、ニトロソ化合物、
アゾ化合物、スルフォニル・ヒドラジド等が挙げられ
る。これらの添加剤は吸水性ポリマーまたは吸水性複合
体の製造工程で目的、作用機構に応じ適宜加えられる。
例えば発泡剤は吸水性ポリマーの製造工程では即ち重合
工程前乃至重合工程途中で添加が適当である。人尿安定
剤、人血安定剤、抗菌剤、消臭剤、芳香剤は吸水性ポリ
マー製造工程または吸水性複合体製造工程の各工程で添
加可能である。もちろん予め繊維質基材に施すことも可
能である。
【0079】
【実施例】以下に実施例および比較例を挙げて本発明を
さらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試
薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り
適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲
は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0080】(実施例1)80重量%のアクリル酸水溶
液125重量部に、48.5重量%の水酸化ナトリウム
水溶液57.3重量部、水6.4重量部、架橋剤(N,
N’−メチレンビスアクリルアミド)0.15重量部と
更に酸化剤として30重量%の過酸化水素水溶液5.0
重量部を加えて溶液Aを調製した。溶液Aのモノマ−濃
度は60重量%、中和度は50モル%であった。これと
は別に80重量%のアクリル酸水溶液125重量部に、
48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液57.3重量
部、水9.9重量部、架橋剤(N,N’−メチレンビス
アクリルアミド)0.15重量部と更に還元剤としてL
−アスコルビン酸1.5重量部を加えて溶液Bを調製し
た。溶液Bのモノマ−濃度、中和度は溶液Aと同じであ
った。
【0081】調製した溶液Aと溶液Bを、図1に示した
ノズルを用いて混合した。図1のノズルの内径は0.1
3mmであり、各溶液用のノズルは5本ずつ1cm間隔
で配置されている。ノズルから流出する溶液Aと溶液B
との交差角度は30度、ノズル先端の距離は4mmに調
節した。溶液Aおよび溶液Bはそれぞれ液温を40℃に
加温して、それぞれ流速5m/秒となるようにポンプで
供給した。
【0082】溶液Aおよび溶液Bは、それぞれのノズル
対のノズルを出たところで合流し、それぞれ約10mm
ほど液柱を形成した後、液滴となって重合を進行させな
がら50℃の空気中を落下した。ノズルの先端より下方
3mに設置したポリエステル製不織布基材(目付量30
g/m2)上に落下し、該基材上で重合を完了させた。
また、同時に液滴の一部は該基材上に落下し、基材上で
凝集粒状体を形成後、該基材上で重合を完了させた。こ
のようにして吸水性ポリマ−は該基材上に担持された。
【0083】トリイソプロポキシアルミニウムの5.0
重量%のシクロヘキサン溶液を、基材上に担持されたポ
リマーに対してトリイソプロポキシアルミニウムが0.
5重量%になるようにスプレーで噴霧した。噴霧後、シ
クロヘキサンを自然乾燥で留去させ、110℃の熱風乾
燥機で含水量5重量%になるまで乾燥し、ポリマ−担持
量200g/m2の吸水性複合体を得た。
【0084】(実施例2〜5および比較例1〜3)有機
アルミニウム化合物として表1に記載される化合物を表
1に記載される量用いた点を変更して、実施例2〜4お
よび比較例1〜3の吸水性複合体を得た。なお、比較例
1では有機アルミニウム化合物を用いなかった。また、
比較例3では有機アルミニウム化合物の変わりにエチレ
ングリコールジグリシジルエーテルの0.5重量%エタ
ノール溶液を用いた。
【0085】(試験例)実施例1〜5および比較例1〜
3で得た各吸水性複合体について、以下の方法により測
定と試験を行った。
【0086】(1)1次粒子平均径 吸水性複合体の複数箇所の走査型顕微鏡写真(SEM写
真)を撮影後、任意に100個の一次粒子を選定して、
一次粒子直径を計測し、測定値の平均値を求めた。 (2)凝集体比率 吸水性複合体の複数箇所の走査型顕微鏡写真(SEM写
真)を撮影後、任意に100個の一次粒子を選定して凝
集の有無を判定し、一次粒子が凝集粒状体となっている
比率を計算した。
【0087】(3)凝集粒状体の平均粒子短径 吸水性複合体の複数箇所のSEM写真を撮影後、任意に
100個の凝集粒状体粒子を選定して粒子短径を計測
し、測定値の平均を求めた。尚、粒子短径とは、粒子の
径が最も長くなる様にとった長径に直交する径のうち、
最大のものをいう。
【0088】(4)吸水性ポリマーの繊維質基材への担
持強度 60mm×300mm(厚さ0.5〜20mm)の吸水
性複合体からなるシ−ト状試料を生理食塩水で飽和吸水
させたのち、ストーンテーブル上に置き、この試料上で
直径105mm、幅60mm、重さ4kgのロ−ラ−を
10cm/秒の速さで5往復させたときに、試料から脱
落した吸水性ポリマ−の乾燥後の重量を秤量して、下式
で表した担持率Aで担持強度を評価した。担持率が60
%以上のものは、実用上の担持強度を有するため好まし
く、更に70%以上のものがより好ましい。
【数1】 A(%)=[(W0−w)/W0]×100 式中、W0は試料中の吸水性ポリマ−の乾燥重量、wは
脱落した吸水性ポリマ−の乾燥重量を示す。
【0089】(5)生理食塩水保水能 吸水性ポリマー0.50gになるように吸水性複合体を
切り出し、250メッシュのナイロン袋(20cm×1
0cmの大きさ)に入れ、0.9%の生理食塩水500
mlに30分浸漬した。その後、ナイロン袋を引き上
げ、15分水切りした後、遠心力が90Gかかる遠心脱
水機で90秒間脱水させた。吸水性ポリマーを担持する
前の基材単体のみも同様に吸水させ、重量を測定し、ブ
ランク補正し、下記式に従って保水能を算出した。
【数2】生理食塩水保水能(g/g)=(W1−W2)
/W3 式中、W1は遠心脱水後の吸水性複合体の重量、W2は
遠心脱水後の基材単体の重量、W3は吸水性複合体に担
持されている吸水性ポリマーの重量を示す。
【0090】(6)吸水速度 300mlのビ−カ−に吸水性複合体を約1.0gおよ
び濃度0.9%の生理食塩水約200gをそれぞれ秤量
して入れ、5分間放置して生理食塩水によってポリマ−
を膨潤させた。次いで、100メッシュ篩で水切りをし
た後、下記式に従って吸水速度を算出した。
【数3】 吸水速度(g/g)=(W4−W5)/W6 式中、W4は水切後の吸水性複合体の重量、W5は水切
後の基材単体の重量、W6は吸水性複合体に担持されて
いる吸水性ポリマーの重量を示す。これらの測定および
試験結果をまとめて以下の表に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【発明の効果】本発明によれば、吸水性ポリマ−の大部
分が適度な凝集粒状体となっており、繊維質基材に安定
性よく固定化されている吸水性複合体を提供することが
できる。また、本発明によれば、吸水性が良好で吸水速
度が速いうえに、吸水後の膨潤ゲルの安定性にも優れて
いて、吸水性ポリマーの高坪量でも保水能が低下しない
吸水性複合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法における混合工程を実施す
るために用いるノズル構造の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 第1液用ノズル 2 第2液用ノズル 3 溶液A 4 溶液B
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D06M 13/503 D06M 13/503 Fターム(参考) 4F073 AA05 BA03 BA08 BA13 BA19 BA23 BA28 BA29 BB02 EA01 EA59 EA76 4G066 AB23D AC02C AC17B AE06B BA02 BA05 CA43 DA13 EA05 FA07 4J011 BB01 BB12 CA03 PA53 PA64 PA65 PA66 PA69 PA88 PA95 PA96 PB04 4J026 AA02 AA13 AA16 AA25 AA26 AA30 AA49 AB02 AB07 AB28 BA25 BB01 DA16 DB07 FA02 GA08 4L033 AC07 BA93 BA99

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 吸水性ポリマーを与える重合性モノマー
    を含む溶液を、液滴状で重合させつつ繊維質基材に落下
    させることにより重合進行中の吸水性ポリマー粒子を繊
    維質基材に付着させ、付着後に重合を完了させ、さらに
    含水率10〜70重量%の含水状態で有機アルミニウム
    化合物またはアルコキシチタン化合物で処理することを
    特徴とする吸水性複合体の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記有機アルミニウム化合物または前記
    アルコキシチタン化合物を前記吸水性ポリマーに対し
    0.01〜5重量%で用いる、請求項1に記載の吸水性
    複合体の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記有機アルミニウム化合物として、下
    記式で表されるアルコキシアルミニウム化合物を用いる
    請求項1または2に記載の製造方法。 [Al(OR)3] (上式において、3つのRは各々独立にアルキル基又は
    アリール基である。)
  4. 【請求項4】 前記有機アルミニウム化合物として、ア
    ルミニウムキレート化合物を用いる請求項1または2に
    記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかの製造方法によ
    り製造される吸水性複合体。
  6. 【請求項6】 繊維質基材に吸水性ポリマー粒子が固定
    化された吸水性複合体であって、前記吸水性ポリマーの
    一部を繊維質基材が貫通しており、該吸水性ポリマーの
    繊維質基材への担持強度が70〜95%であり、吸水速
    度が40〜50g/gであり、アルミニウムまたはチタ
    ンを含有することを特徴とする吸水性複合体。
  7. 【請求項7】 前記吸水性ポリマー粒子の少なくとも一
    部は平均粒子径50〜1000μmの一次粒子から構成
    され、該一次粒子の30重量%以上がほぼその粒子形状
    を維持しつつ粒子同士が互いに結着して凝集粒状体を形
    成しており、該凝集粒状体を構成する一次粒子の一部を
    繊維質基材が貫通しており、該凝集粒状体を構成する一
    次粒子の一部は繊維質基材に直接には付着していない、
    請求項6に記載の吸水性複合体。
  8. 【請求項8】 吸水性複合体中における前記吸水性ポリ
    マー粒子の含有量が50〜500g/m2である請求項
    6または7に記載の吸水性複合体。
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