JP2002356715A - 2周波による高周波加熱方法とその装置 - Google Patents

2周波による高周波加熱方法とその装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ひとつの高周波加熱コイルに、周波数の異な
る2周波の加熱電力を、任意の時間同時に供給し、被加
熱体に、最適な焼入れパターン、硬度及び低歪みが得ら
れように高周波誘導加熱する。 【解決手段】 本発明の2周波による高周波加熱方法
は、被加熱体100を、ひとつの高周波加熱コイル2を
使用して、周波数の異なる2周波により高周波誘導加熱
する方法であって、前記2周波のうち、低い周波数の加
熱電力と高い周波数の加熱電力との、いずれか一方の周
波数の加熱電力により前記被加熱体100を高周波加熱
中、任意の時間、他方の周波数の加熱電力を前記一方の
周波数の加熱電力に同時に供給、又は重畳して、前記被
加熱体100を高周波加熱する方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、2周波による高周
波加熱方法とその装置に関し、特に、被加熱体、例えば
歯車等のような、被加熱面に凹凸を有ずる被加熱体の表
面を均一に高周波誘導加熱するため、ひとつの高周波加
熱コイルを使用して、周波数の異なる2周波により高周
波誘導加熱する方法とその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の高周波誘導加熱方法で
は、次のような2つの方法がある。1つの方法として、
例えば、図9に示すように、被加熱体100を、周波数
の異なる2周波により高周波誘導加熱する場合、該被加
熱体100を、前記2周波のうち、低い周波数の加熱電
力を出力する第1の高周波電源101からの前記加熱電
力を、整合器102を介して、一方の高周波加熱コイル
103により加熱し、次いで、前記被加熱体100(又
は前記高周波加熱コイル103)を機械的に移動させ
て、前記2周波のうち、高い周波数の加熱電力を出力す
る第2の高周波電源201からの前記加熱電力を、整合
器202を介し、他方の高周波加熱コイル203により
高周波加熱していた。
【0003】また、他の方法として、例えば、図10に
示すように、高周波電源301内の共振コンデンサC30
1、C302をスイッチS301により機械的に切り替え、そ
の静電容量を替えて、該高周波電源301から、周波数
の異なる2周波の加熱電力を出力させ、それぞれの周波
数の加熱電力を、整合器302を介して、高周波加熱コ
イル303により、被加熱体100を高周波加熱してい
た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図9に
示す方法では、例えば被加熱体100が歯車の場合、該
歯車又は前記高周波加熱コイル103,203を機械的
に移動するのに時間を要するため、移動の間に加熱温度
が低下して、最適な焼入れパターン、硬度、低歪みを得
ることが困難であった。また、移動させるための大がか
りな機構部分が必要であり、かつ複雑であるという問題
点があった。
【0005】また、図10に示す方法では、前記高周波
電源301の発振周波数の変化幅が限られていた。これ
は、発振回路、出力変成器の周波数特性が広帯域にでき
ないためである。また、前記共振コンデンサC301に、
C302を機械的に追加又は削除するため、周波数切り替
えに1秒以上の時間を要するため、被加熱体100の加
熱後の熱の拡散があり、良好な焼入れバターンの形成に
対し、障害になるという問題点があった。
【0006】さらに、図9及び図10に示す方法では、
大がかりな機構部分を必要としているため、形状が大型
になり、また保守、点検が必要であった。また、周波数
切り替えに、前述のように時間がかかるので、折角、加
熱した被加熱体の温度を下げてしまうという問題点があ
った。高周波焼入れでは、加熱温度とともに、温度が上
昇する速度(昇温速度)が重要なファクタであるので、
切り替え時間は、極力短い方が焼入れ品質の向上に必要
であった。
【0007】本発明はかかる点を鑑みなされたもので,
その目的は前記問題点を解消し、ひとつの高周波加熱コ
イルに、周波数の異なる2周波の加熱電力を、同時に供
給して、被加熱体に、最適な焼入れパターン、硬度及び
低歪みが得られように高周波誘導加熱する2周波による
高周波加熱方法を提案することにある。
【0008】本発明の他の目的は、ひとつの高周波加熱
コイルに、周波数の異なる2周波の加熱電力を、同時に
供給して、被加熱体に、最適な焼入れパターン、硬度及
び低歪みが得られように高周波誘導加熱する2周波によ
る高周波加熱装置を提供することにある。
【0009】本発明のさらに他の目的は、従来の2周波
による高周波加熱装置に比べて、機構部分が簡素化され
るとともに、全体の構成が単純化された2周波による高
周波加熱装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
の本発明の構成は、被加熱体を、ひとつの高周波加熱コ
イルを使用して、周波数の異なる2周波により高周波誘
導加熱する方法において、次のとおりである。
【0011】前記2周波のうち、低い周波数の加熱電力
と高い周波数の加熱電力との、いずれか一方の周波数の
加熱電力により前記被加熱体を高周波加熱中、任意の時
間、他方の周波数の加熱電力を前記一方の周波数の加熱
電力に同時に供給、又は重畳して、前記被加熱体を高周
波加熱する方法である。
【0012】前記2周波のうち、低い周波数の加熱電力
と高い周波数の加熱電力との、いずれか一方の周波数の
加熱電力により前記被加熱体を高周波加熱中、任意の時
間ごとに間欠的に、他方の周波数の加熱電力を前記一方
の周波数の加熱電力に重畳して、前記被加熱体を高周波
加熱する方法である。
【0013】前記2周波のうち、前記低い周波数の加熱
電力を出力する高周波電源としては、電流型発振機が使
用され、前記高い周波数の加熱電力を出力する高周波電
源としては、電圧型発振機が使用される方法である。
【0014】前記2周波のうち、前記低い周波数が1〜
50kHz未満であり、前記高い周波数が50〜200
kHzである方法である。
【0015】また、前記目的を達成するための本発明の
構成は、被加熱体を、ひとつの高周波加熱コイルを使用
して、周波数の異なる2周波により高周波誘導加熱する
装置において、次のとおりである。
【0016】前記2周波のうち、低い周波数の加熱電力
を出力する第1の高周波電源と、該第1の高周波電源か
らの出力を、前記高周波加熱コイルに供給する第1の変
成器と、高い周波数の加熱電力を出力する第2の高周波
電源と、該第2の高周波電源からの出力を、前記高周波
加熱コイルに供給する第2の変成器と、前記第1、及び
第2の高周波電源の出力をそれぞれオンオフする、それ
ぞれの制御装置とからなり、前記第1の変成器と前記高
周波加熱コイルとの間に、前記第2の変成器の2次巻線
が直列に接続され、前記第1、又は第2の高周波電源の
うち、いずれか一方の前記高周波電源からの加熱電力に
より、前記高周波加熱コイルを介して、前記被加熱体を
高周波加熱中、任意の時間、他方の前記高周波電源から
の加熱電力が、他方の前記制御装置により、前記一方の
高周波電源から出力される加熱電力に同時に供給、又は
重畳し、該高周波加熱コイルを介して、前記被加熱体を
高周波加熱する装置である。
【0017】前記2周波のうち、低い周波数の加熱電力
を出力する第1の高周波電源と、該第1の高周波電源か
らの出力を、前記高周波加熱コイルに供給する第1の変
成器と、高い周波数の加熱電力を出力する第2の高周波
電源と、該第2の高周波電源からの出力を、前記高周波
加熱コイルに供給する第2の変成器と、前記第1、及び
第2の高周波電源の出力をそれぞれオンオフするそれぞ
れの制御装置とからなり、前記第1の変成器と前記高周
波加熱コイルとの間に、前記第2の変成器の2次巻線が
直列に接続され、前記第1、又は第2の高周波電源のう
ち、いずれか一方の前記高周波電源からの加熱電力によ
り、前記高周波加熱コイルを介して、前記被加熱体を高
周波加熱中、任意の時間ごとに間欠的に、他方の前記高
周波電源からの加熱電力が、他方の前記制御装置によ
り、前記一方の高周波電源から出力される加熱電力に重
畳し、該高周波加熱コイルを介して、前記被加熱体を高
周波加熱する装置である。
【0018】前記第1の高周波電源が電流型発振機であ
り、前記第2の高周波電源が電圧型発振機である装置で
ある。
【0019】前記第1の高周波電源の出力側には、並列
に接続された第1の共振コンデンサと、前記第1の出力
変成器とが接続され、かつ前記第2の高周波電源の出力
側には、直列に接続された第2の共振コンデンサと、前
記第2の出力変成器とが接続されるとともに、前記第1
の出力変成器の2次側に、並列に高周波バイパスコンデ
ンサが接続される装置である。
【0020】前記高周波バイパスコンデンサを除去し
て、前記第1の共振コンデンサに、前記高い周波数をバ
イパスする機能を兼ねさせる装置である。
【0021】本発明の高周波加熱方法とその装置は、以
上のように構成されるので、高周波誘導加熱を利用する
広範な分野にて採用が可能で、応用の範囲が広い。特
に、前記被加熱体が、例えば歯車等の歯部の強度を理想
的に得るためには、該歯車の輪郭に沿って均一な焼入れ
がなされなければならない。高周波電源として、加熱電
力が低い周波数の場合は、浸透深さが深い部分の加熱に
適するので、歯車の場合、歯底が加熱されやすい。ま
た、加熱電力が高い周波数の場合は、近接効果と浸透深
さが浅い部分の加熱に適するので、歯先が加熱されやす
い。このため、低い周波数の加熱電力と高い周波数の加
熱電力とが、互いに干渉し合うことなく自由に、ひとつ
の高周波加熱コイルに供給できることにより、前記被加
熱体が歯車の場合、その歯底から歯先まできめ細かな加
熱ができる。
【0022】また、異なる形状の被加熱体物に対して、
低い周波数の加熱電力と高い周波数の加熱電力とを、同
時に供給するタイミングと前記加熱電力の比率を調整す
ることにより、適宜、対応できるので設備費の節約にな
り、スペースが低減され、さらに、サイクルタイムを短
縮することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の好
適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。図1は、本
発明の2周波による高周波加熱方法とその装置の一実施
例を示す、該装置の回路図を含む構成図で、図2は、図
1の低い周波数の高周波加熱電力を出力する第1の高周
波電源により、被加熱体を高周波誘導動加熱する場合を
示す回路図、図3は、図1の高い周波数の高周波加熱電
力を出力する第2の高周波電源により、被加熱体を高周
波誘導動加熱する場合を示す回路図である。
【0024】図1において、前記高周波加熱装置1は、
被加熱体100を、ひとつの高周波加熱コイル2を使用
して、周波数の異なる2周波、例えば、20kHzと2
00kHzにより高周波誘導加熱する装置である。前記
高周波加熱装置1は、前記2周波のうち、前記20kH
zの低い周波数の加熱電力を出力する第1の高周波電源
装置11と、該第1の高周波電源装置11の出力端子間
に並列に接続される共振コンデンサC1と、前記第1の
高周波電源装置11からの出力を、前記高周波加熱コイ
ル2に供給するための第1の変成器T1と、前記200
kHzの高い周波数の加熱電力を出力する第2の高周波
電源装置21と、該第2の高周波電源装置21からの出
力を、直列に接続される共振コンデンサC2を介して、
前記高周波加熱コイル2に供給するための第2の変成器
T2と、前記第1、及び第2の高周波電源装置11,2
1内にそれぞれ設けられ、前記電源装置11,21の出
力をそれぞれオンオフする制御装置12,22とからな
る。
【0025】また、前記第1の変成器T1と前記高周波
加熱コイル2との間に、前記第2の変成器T2の2次巻
線が直列に接続されるように、接続されるとともに、該
第1の変成器T1の2次側には、前記第2の高周波電源
装置21からの高周波成分をバイパスするための高周波
バイパスコンデンサC3が、並列に接続されている。
【0026】図1の回路の主たる機能は、低い周波数の
前記第1の高周波電源装置11からの電力を、高い周波
数の前記第2の高周波電源装置21へ漏洩するのを防ぎ
ながら、前記高周波加熱コイル2に加熱電力を供給する
とともに、高い周波数の前記第2の高周波電源装置21
がらの電力を、低い周波数の前記第1の高周波電源装置
11へ漏洩するのを防ぎながら、前記高周波加熱コイル
2に加熱電力を供給することにある。
【0027】低い周波数の前記第1の高周波電源装置1
1は、図2に示す電流型インバータ(電流型発振機)を
使用する。この電流型インバータは、整流回路13によ
り商用周波の3相交流電源を直流に整流し、該整流回路
13からの出力を、電流制限用リアクタ14を介して、
4個の電力スイッチング素子であるIGBT15a,1
5b,15c,15dからなるブリッジ回路15によ
り、電流の極性を切り替えて高周波電力を発生させてい
る。なお、前記ブリッジ回路15を構成する4個の電力
スイッチング素子であるIGBT15a,15b,15
c,15dには、それぞれ直列に、かつ順方向にダイオ
ード16a,16b,16c,16dが接続されてい
る。
【0028】前記共振コンデンサC1は、前記第1の高
周波電源装置11の出力端子間に並列に接続され、前記
第1の変成器T1、前記高周波加熱コイル2及び被加熱
体100を含めたインダクタンス成分と共振する静電容
量値が選ぱれる。前記第1の高周波電源装置11は、そ
の出力端子から電源側をみると電流源になる。
【0029】次いで、高い周波数の前記第2の高周波電
源装置21は、図3に示す電圧型インバータ(電圧型発
振機)を使用する。この電圧型インバータは、整流回路
23により商用周波の3相交流電源を直流に整流し、平
滑コンデンサC11を介して、前記整流回路23からの出
力を、4個の電力スイッチング素子であるIGBT又は
FET25a,25b,25c,25dからなるブリッ
ジ回路25により、電圧の極性を切り替えて高周波電力
を発生させている。なお、前記ブリッジ回路25を構成
する4個の電力用スイッチング素子であるIGBT又は
FET25a,25b,25c,25dには、それぞれ
のコレクタ・エミッタ又はドレイン・ソース間に並列
に、かつ逆方向に保護用ダイオード26a,26b,2
6c,26dが接続されている。
【0030】前記共振コンデンサC2は、前記第2の高
周波電源装置21の出力側から直列に接続され、前記第
2の変成器T2、前記高周波加熱コイル2及び被加熱体
100を含めたインダクタンス成分と共振する静電容量
値が選ぱれる。前記第2の高周波電源装置21は、その
出力端子から電源側をみると電圧源になる。
【0031】前記高周波バイパスコンデンサC3は、高
い周波数の前記第2の高周波電源装置21からの高周波
電流成分を、低い周波数の前記第1の高周波電源装置1
1の前記共振コンデンサC1に流さないようにバイパス
させるもので、該共振コンデンサC1の周波数特性が、
高い周波数で損失が大きい場合に取り付ける。しかし、
前記共振コンデンサC1がマイカコンデンサ又はフィル
ムコンデンサのように、高い周波数でも低損失であれ
ば、図4に示すように、前記高周波バイパスコンデンサ
C3を除去することができる。
【0032】次に前記高周波加熱装置1の作用を説明す
る。前記第1、又は第2の高周波電源装置11,21の
うち、いずれか一方の前記高周波電源装置11(又は2
1、以下、この段落番号中の記載は、括弧内同順)から
の加熱電力により、前記高周波加熱コイル2を介して、
前記被加熱体100を高周波加熱中、任意の時間、他方
の前記高周波電源21(又は11)からの加熱電力が、
他方の前記制御装置22(又は12)により、前記一方
の高周波電源装置11(又は21)から出力される加熱
電力に同時に供給、又は重畳し、該高周波加熱コイル2
を介して、前記被加熱体100を高周波加熱する。
【0033】同様に、前記第1、又は第2の高周波電源
装置11,21のうち、いずれか一方の前記高周波電源
装置11(又は21、以下、この段落番号中の記載は、
括弧内同順)からの加熱電力により、前記高周波加熱コ
イル2を介して、前記被加熱体100を高周波加熱中、
任意の時間ごとに間欠的に、他方の前記高周波電源21
(又は11)からの加熱電力が、他方の前記制御装置2
2(又は12)により、前記一方の高周波電源装置11
(又は21)から出力される加熱電力に同時に供給、又
は重畳し、該高周波加熱コイル2を介して、前記被加熱
体100を高周波加熱することができる。
【0034】ところで、前記高周波加熱装置1の、前記
2周波の加熱電力の伝送と漏洩電流について、検討す
る。
【0035】[加熱電力の伝送] (1)低い周波数の前記第1の高周波電源装置11から
の加熱電力の伝送経路図を図5に示す。ここで、以下、
図1で、同一部材については、同一符号を付してその説
明を省略する。前記高周波バイパスコンデンサC3に流
れる電流i3は、前記共振コンデンサC1を流れる電流
i1と同じ並列回路を流れるから、前記高周波バイパス
コンデンサC3は該共振コンデンサC1の一部として機
能する。前記変成器T1の二次電流i4は、高い周波数
の前記変成器T2の2次巻線を経由して、前記高周波加
熱コイル2に流れる。
【0036】高い周波数の前記変成器T2の影響につい
ては、該変成器T2の2次巻線は、1次巻線の周囲を1
回巻き(ワンターン)の幅広の銅板で巻回した空心変成
器にしているため、低損失になり電力の損失は少ない。
前記変成器T2の1次側電流i5は、空心変成器の誘導
結合インダクタンスが低い周波数に対しては、非常に小
さい値になり、前記第2の高周波電源装置21側の共振
コンデンサC2が直列に接続されているため、より小さ
な値になる。(周波数の2乗分の1の割合で減少す
る。)
【0037】低い周波数の前記第1の高周波電源装置1
1から、高い周波数の前記高周波電源装置21側をみた
場合、該高い周波数の第2の高周波電源装置21が電圧
型電源になるので短絡されたようにみえる。これは、図
3に示すように、還流用の前記ダイオード26a,26
b,26c,26dとバイパスコンデンサとして機能す
る前記平滑コンデンサC11を通る経路になるからであ
る。また、前記変成器T2を空心変成器にした場合、空
心であるので低い周波数での磁気飽和の心配がない。
【0038】(2)高い周波数の前記第2の高周波電源
装置21からの加熱電力の伝送経路図を図6に示す。高
い周波数の前記第2の高周波電源装置21の出力側から
みると、低い周波数の前記第1の高周波電源装置11
は、電流型電源であるのでインピーダンスが無限大の開
放状態にみえる。これは、前記高周波バイパスコンデン
サC3及び共振コンデンサC1は、周波数に逆比例して
インピーダンスが低くなるので、前記高周波加熱コイル
2の両端の電圧に比べて低い電圧になる。また、該コン
デンサC1,C3を通るので損失は少ない。
【0039】[漏洩電流] (1)高い周波数の前記第2の高周波電源装置21か
ら、低い周波数の前記第1の高周波電源装置11への漏
洩経路図を図7に示す。低い周波数の前記第1の高周波
電源装置11は電流型電源になっており、高インピーダ
ンスであるので、電流は流れない。低い周波数の前記第
1の高周波電源装置11の出力端側の電圧は、前記共振
コンデンサC1の電圧VC1になるが、該共振コンデンサ
C1の容量値は、低い周波数に対してインピーダンスが
大きく、しかも該共振コンデンサC1のインピーダンス
が周波数に逆比例して小さくなるので、発生電圧は微少
である。
【0040】(2)低い周波数の前記第1の高周波電源
装置11から、高い周波数の前記第2の高周波電源装置
21への漏洩経路図を図8に示す。空心の前記第2の変
成器T2は、低い周波数の前記第1の高周波電源装置1
1から見ると非常に小さい相互インダクタンスになる。
該変成器T2の1次側に誘起される電圧は周波数に比例
して小さくなる。また、高い周波数の前記共振コンデン
サC2は、低い周波数の前記電源装置11側からみると
小さい容量値である。該共振コンデンサC2のインピー
ダンスは周波数に逆比例するので、高い周波数の前記共
振コンデンサC2に流れる電流iC2は、周波数の2乗に
逆比例して小さくなるので、該電流は微少である。
【0041】以上、本発明の一実施の形態について述べ
たが、本発明は、この実施の形態に限定されるものでは
なく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変
更が可能である。
【0042】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明の
2周波による高周波加熱方法によれば、2周波のうち、
低い周波数の加熱電力と高い周波数の加熱電力との、い
ずれか一方の周波数の加熱電力により被加熱体を高周波
加熱中、任意の時間、他方の周波数の加熱電力を前記一
方の周波数の加熱電力に同時に供給、又は重畳して、前
記被加熱体を高周波加熱するので、ひとつの高周波加熱
コイルに、周波数の異なる2周波の加熱電力を、任意の
時間、同時又は間欠的に供給して、被加熱体に、最適な
焼入れパターン、硬度及び低歪みが得られる。また、2
周波の相互間のオンオフ作動時間が極めて短時間化さ
れ、前記2周波のそれぞれの加熱電力を、適当な比率に
変えて同時に供給して、被加熱面の細かな焼入れの調整
が可能になるという優れた効果を奏する。
【0043】また、本発明の2周波による高周波加熱装
置によれば、2周波のうち、低い周波数の加熱電力を出
力する第1の高周波電源と、該高周波電源からの出力
を、高周波加熱コイルに供給する第1の変成器と、高い
周波数の加熱電力を出力する第2の高周波電源と、該高
周波電源からの出力を、前記高周波加熱コイルに供給す
る第2の変成器と、前記第1、及び第2の高周波電源の
出力をそれぞれオンオフする、それぞれの制御装置とか
らなり、前記第1の変成器と前記高周波加熱コイルとの
間に、前記第2の変成器の2次巻線が直列に接続され、
前記第1、第2の高周波電源のうち、いずれか一方の前
記高周波電源から、前記被加熱体を高周波加熱中、任意
の時間、他方の前記高周波電源からの加熱電力が、他方
の前記制御装置により、前記一方の高周波電源からの加
熱電力に同時に供給、又は重畳し、該高周波加熱コイル
を介して、高周波加熱するので、ひとつの高周波加熱コ
イルに、周波数の異なる2周波の加熱電力を、同時に供
給して、被加熱体に、最適な焼入れパターン、硬度及び
低歪みが得られるとともに、従来の2周波による高周波
加熱装置に比べて、機構部分を簡素化でき、全体の構成
を単純化することができるという優れた効果を奏する。
【0044】さらに、本発明によれば2周波の加熱電力
が、任意の時間同時に、又は任意の時間ごとに間欠的
に、供給しても、前記2周波の電源が互いに干渉するこ
となく動作させることができる。また、該2周波の電源
が互いに自由にコントロールできるので、より高度の焼
入れが達成できる。またさらに、機械部分がないので消
耗品がなく、保守がし易いという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の2周波による高周波加熱方法とその装
置の一実施例を示す、該装置の回路図を含む構成図であ
る。
【図2】図1の低い周波数の高周波加熱電力を出力する
第1の高周波電源により、被加熱体を高周波誘導動加熱
する場合を示す回路図である。
【図3】図1の高い周波数の高周波加熱電力を出力する
第2の高周波電源により、被加熱体を高周波誘導動加熱
する場合を示す回路図である。
【図4】図1のなかで、高周波バイパスコンデンサが除
去された前記高周波加熱装置の回路図を含む構成図であ
る。
【図5】低い周波数の第1の高周波電源装置からの加熱
電力の伝送経路図である。
【図6】高い周波数の第2の高周波電源装置からの加熱
電力の伝送経路図である。
【図7】高い周波数の第2の高周波電源装置から、低い
周波数の第1の高周波電源装置への漏洩を示す経路図で
ある。
【図8】低い周波数の第1の高周波電源装置から、高い
周波数の第2の高周波電源装置への漏洩を示す経路図で
ある。
【図9】従来の2周波による高周波加熱方法を説明する
図である。
【図10】従来の、他の2周波による高周波加熱方法を
説明する図である。
【符号の説明】
1 高周波加熱装置 2 高周波加熱コイル部 11 第1の高周波電源装置 12,22 制御装置 13,23 整流回路 14 電流制限用リアクタ 15,25 ブリッジ回路 15a,‥‥,15d,25a,‥‥,25d 電力用
スイッチング素子 16a,‥‥,16d,26a,‥‥,26d ダイオ
ード 21 第2の高周波電源装置 100 被加熱物 C1,C2 共振コンデンサ C3 高周波バイパスコンデンサ C11 平滑コンデンサ T1 第1の変成器 T2 第2の変成器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 長谷川 篤司 東京都千代田区丸の内3丁目3番1号 電 気興業株式会社内 Fターム(参考) 3K059 AA07 AC35 AD05 AD37 AD40 CD18

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被加熱体を、ひとつの高周波加熱コイル
    を使用して、周波数の異なる2周波により高周波誘導加
    熱する方法において、 前記2周波のうち、低い周波数の加熱電力と高い周波数
    の加熱電力との、いずれか一方の周波数の加熱電力によ
    り前記被加熱体を高周波加熱中、任意の時間、他方の周
    波数の加熱電力を前記一方の周波数の加熱電力に同時に
    供給、又は重畳して、前記被加熱体を高周波加熱するこ
    とを特徴とする2周波による高周波加熱方法。
  2. 【請求項2】 被加熱体を、ひとつの高周波加熱コイル
    を使用して、周波数の異なる2周波により高周波誘導加
    熱する方法において、 前記2周波のうち、低い周波数の加熱電力と高い周波数
    の加熱電力との、いずれか一方の周波数の加熱電力によ
    り前記被加熱体を高周波加熱中、任意の時間ごとに間欠
    的に、他方の周波数の加熱電力を前記一方の周波数の加
    熱電力に重畳して、前記被加熱体を高周波加熱すること
    を特徴とする2周波による高周波加熱方法。
  3. 【請求項3】 前記2周波のうち、前記低い周波数の加
    熱電力を出力する高周波電源としては、電流型発振機が
    使用され、前記高い周波数の加熱電力を出力する高周波
    電源としては、電圧型発振機が使用されることを特徴と
    する請求項1又は請求項2に記載の2周波による高周波
    加熱方法。
  4. 【請求項4】 前記2周波のうち、前記低い周波数が1
    〜50kHz未満であり、前記高い周波数が50〜20
    0kHzであることを特徴とする請求項3に記載の2周
    波による高周波加熱方法。
  5. 【請求項5】 被加熱体を、ひとつの高周波加熱コイル
    を使用して、周波数の異なる2周波により高周波誘導加
    熱する装置において、 前記2周波のうち、低い周波数の加熱電力を出力する第
    1の高周波電源と、該第1の高周波電源からの出力を、
    前記高周波加熱コイルに供給する第1の変成器と、高い
    周波数の加熱電力を出力する第2の高周波電源と、該第
    2の高周波電源からの出力を、前記高周波加熱コイルに
    供給する第2の変成器と、前記第1、及び第2の高周波
    電源の出力をそれぞれオンオフする、それぞれの制御装
    置とからなり、 前記第1の変成器と前記高周波加熱コイルとの間に、前
    記第2の変成器の2次巻線が直列に接続され、 前記第1、又は第2の高周波電源のうち、いずれか一方
    の前記高周波電源からの加熱電力により、前記高周波加
    熱コイルを介して、前記被加熱体を高周波加熱中、任意
    の時間、他方の前記高周波電源からの加熱電力が、他方
    の前記制御装置により、前記一方の高周波電源から出力
    される加熱電力に同時に供給、又は重畳し、該高周波加
    熱コイルを介して、前記被加熱体を高周波加熱すること
    を特徴とする2周波による高周波加熱装置。
  6. 【請求項6】 被加熱体を、ひとつの高周波加熱コイル
    を使用して、周波数の異なる2周波により高周波誘導加
    熱する装置において、 前記2周波のうち、低い周波数の加熱電力を出力する第
    1の高周波電源と、該第1の高周波電源からの出力を、
    前記高周波加熱コイルに供給する第1の変成器と、高い
    周波数の加熱電力を出力する第2の高周波電源と、該第
    2の高周波電源からの出力を、前記高周波加熱コイルに
    供給する第2の変成器と、前記第1、及び第2の高周波
    電源の出力をそれぞれオンオフするそれぞれの制御装置
    とからなり、 前記第1の変成器と前記高周波加熱コイルとの間に、前
    記第2の変成器の2次巻線が直列に接続され、 前記第1、又は第2の高周波電源のうち、いずれか一方
    の前記高周波電源からの加熱電力により、前記高周波加
    熱コイルを介して、前記被加熱体を高周波加熱中、任意
    の時間ごとに間欠的に、他方の前記高周波電源からの加
    熱電力が、他方の前記制御装置により、前記一方の高周
    波電源から出力される加熱電力に重畳し、該高周波加熱
    コイルを介して、前記被加熱体を高周波加熱することを
    特徴とする2周波による高周波加熱装置。
  7. 【請求項7】 前記第1の高周波電源が電流型発振機で
    あり、前記第2の高周波電源が電圧型発振機であること
    を特徴とする請求項5又は請求項6に記載の2周波によ
    る高周波加熱装置。
  8. 【請求項8】 前記第1の高周波電源の出力側には、並
    列に接続された第1の共振コンデンサと、前記第1の出
    力変成器とが接続され、かつ前記第2の高周波電源の出
    力側には、直列に接続された第2の共振コンデンサと、
    前記第2の出力変成器とが接続されるとともに、前記第
    1の出力変成器の2次側に、並列に高周波バイパスコン
    デンサが接続されることを特徴とする請求項7に記載の
    2周波による高周波加熱装置。
  9. 【請求項9】 前記高周波バイパスコンデンサを除去し
    て、前記第1の共振コンデンサに、前記高い周波数をバ
    イパスする機能を兼ねさせることを特徴とする請求項8
    に記載の2周波による高周波加熱装置。
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