JP2002348637A - 高強度ねじ用鋼、高強度ねじおよび高強度ねじの製造方法 - Google Patents
高強度ねじ用鋼、高強度ねじおよび高強度ねじの製造方法Info
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Abstract
影響を改善でき、しかもボルトとしての所望の強度(8
00N/mm2以上)とタッピング性を兼備した高強度
ねじ用鋼を提供する。 【解決手段】 C:0.05〜0.20%、Si:0.
20%以下、Mn:0.5〜2.0%、P:0.015
超〜0.040%、S:0.040%以下、Al:0.
010〜0.080%、N:0.010%以下、Cr:
2.0%以下、B:0.0005〜0.0050%(以
上、wt.%)、残部:鉄および不可避的不純物からな
る。ねじに成形後、浸炭処理を施す。
Description
および高強度ねじの製造方法、特に、下穴を開けた部材
に雌ねじを成形しながら締結するタッピング性を兼備し
た800N/mm 2以上の強度を有する、高強度ねじ用
鋼および高強度ねじの製造方法に関するものである。
るだけで雌ねじを成形しながら締結するので、普通のボ
ルト・ナットによる締結よりも雌ねじの成形の点で大幅
に作業を軽減できる利点がある。この性能からタッピン
ねじは、相手部材に雌ねじを成形する必要が有るため相
手部材よりも十分硬くなければならず、また、締結手段
としての機械的性質も満足することが重要である。
122の十字穴付きタッピンねじの材質には、JISG
3539の冷間圧造用炭素鋼線のSWRCH12A〜2
2A(アルミキルド鋼)またはSWRCH12K〜22
K(キルド鋼)が用いられ、転造加工等によってネジ成
形し、浸炭(浸炭窒化)焼入れ、焼戻しの調質処理によ
って製造されてきた。
は、焼入れ後の靭性の確保で、この点から結晶粒の細か
いアルミキルドタイプが利用されている。しかし、一方
で靭性とは相反する傾向にある硬さや強さなどの特性も
同時に満足しなければならない。
は、Mnを高め、炭素含有量を低め、且つ不純物元素で
あるP、Sを低めた素材を用いて浸炭焼入れ焼戻しを行
ったタッピンねじが開示されている。以下、従来技術1
という。
も、低炭素高Mn鋼で不純物元素であるP、Sを低めた
素材のねじが開示されている。以下、従来技術2とい
う。
クラップの増加によって鋼中不純物元素量が高くなるこ
とが予想され、その場合、PやSなどが高くなる可能性
があり、これら不純物元素を低減するために、製鋼・精
練段階で莫大なエネルギーを掛けて処理しなければなら
ず、コスト増加を招くことが考えられる。
ボルトの靭性を低下させたり、あるいは浸炭処理によっ
て高強度化されたねじは、低い応力によって遅れ破壊が
生じ易くなることが知られていることから、一般的には
P、S低減が有効であるとされているが、製鋼段階での
処理コストを考慮すると、P、Sの悪影響を緩和する技
術が必要になると考える。しかもより高強度な部材を締
結し、ボルトとしての所望の強度を有しながらタッピン
ねじとして相手部材に雌ねじを成形する機能を備えたね
じに関しては、その素材成分や製造方法に関して十分確
立していないのが現状である。
不純物元素が増加してもその悪影響を改善でき、しかも
ボルトとしての所望の強度(800N/mm2以上)と
タッピング性を兼備した高強度ねじ用鋼および高強度ね
じの製造方法を提供するものである。
を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、以下の
知見を得た。
ること、 浸炭焼き入れ後の焼戻し温度を適正に制御すること によってP、Sなどの不純物元素が高くなってもそれに
よる悪影響が改善され、また浸炭による硬さのバランス
を制御でき所望の強度と高い靭性が得られることを知見
した。
もので、下記を特徴とするものである。
0.20%、Si:0.20%以下、Mn:0.5〜
2.0%、P:0.015超〜0.040%、S:0.
040%以下、Al:0.010〜0.080%、N:
0.010%以下、Cr:2.0%以下、B:0.00
05〜0.0050%(以上、wt.%)、残部:鉄お
よび不可避的不純物からなることに特徴を有するもので
ある。
下、Cu:1.0%以下、Mo:0.30%以下の内の
少なくとも1種、および/または、Ti:0.005〜
0.050%、Nb:0.005〜0.050%(以
上、wt.%)の内の少なくとも1種を更に含有するこ
とに特徴を有するものである。
0.20%、Si:0.20%以下、Mn:0.5〜
2.0%、P:0.015超〜0.040%、S:0.
040%以下、Al:0.010〜0.080%、N:
0.010%以下、Cr:2.0%以下、B:0.00
05〜0.0050%(以上、wt.%)、残部:鉄お
よび不可避的不純物からなり、表面硬さHvで550〜
700、内部硬さHvで200〜400、引張強度で8
00N/mm2以上、有効硬化層深さ0.05〜1.0
0mmを有することに特徴を有するものである。
下、Cu:1.0%以下、Mo:0.30%以下の内の
少なくとも1種、および/または、Ti:0.005〜
0.050%、Nb:0.005〜0.050%(以
上、wt.%)の内の少なくとも1種を更に含有するこ
とに特徴を有するものである。
0.20%、Si:0.20%以下、Mn:0.5〜
2.0%、P:0.015超〜0.040%、S:0.
040%以下、Al:0.010〜0.080%、N:
0.010%以下、Cr:2.0%以下、B:0.00
05〜0.0050%(以上、wt.%)、残部:鉄お
よび不可避的不純物からなる鋼を用いて、熱間圧延、冷
間鍛造さらにねじ成形後、浸炭処理を施し、浸炭処理後
の焼戻し温度を200〜400℃の温度範囲内で調整す
ることを特徴とする、表面硬さHvで550〜700、
内部硬さHvで200〜400、引張強度で800N/
mm2以上、有効硬化層深さ0.05〜1.00mmを
有することに特徴を有するものである。
3.5%以下、Cu:1.0%以下、Mo:0.30%
以下の内の少なくとも1種、および/または、Ti:
0.005〜0.050%、Nb:0.005〜0.0
50%(以上、wt.%)の内の少なくとも1種を更に
含有することに特徴を有するものである。
について説明する。
0.05wt.%未満では所望の強度を得ることができ
ず、浸炭硬化性も低下する。一方、0.20wt.%を
超えると、ねじ内部の硬度が高くなりすぎて鋼の靱性が
低下する。従って、C含有量を0.05〜0.20w
t.%の範囲内とする。
含まない) Siは、脱酸材として重要な作用をするので、製鋼段階
においては必ず添加する。また、焼戻し軟化抵抗性およ
び焼入性を向上させ強度を高くする元素である。しか
し、変形抵抗を増大させ、冷間鍛造性を低下させるので
上限を0.20wt.%とする。
が、焼入れ性を高める元素でもある。従って、所望の強
度を確保するために0.5wt.%以上の添加を必要と
するが、P、Sと同様にMnも鋼の結晶粒界に偏析し
て、粒界脆化を助長するので上限を2.0wt.%とす
る。
t.% Pは、この発明において不純物元素であるが、安価な原
料(低級鉄スクラップ等)で低コストで製造すれば、0.
015wt.%超の含有は避けられず、粒界に偏析しボ
ルト靭性を低下させる。この悪影響をBの添加によって
緩和するわけであるが、0.040wt.%を超える
と、B添加の効果が無くなる。従って、上限を0.04
0wt.%とする。
料(低級鉄スクラップ等)で低コストで製造すれば、含有
量が高くなる可能性があり、粒界に偏析した場合ボルト
靭性を低下させることが考えられる。この悪影響をBの
添加によって緩和するわけであるが、0.040wt.
%を超えると、B添加の効果が無くなり、また鋼中のM
nとでMnSを形成して、亀裂の起点となる可能性が高
くなるので上限を0.040wt.%とする。
80wt.% Alは、脱酸材として必要な元素であるばかりでなく、
粒界に偏析するNをAlNとして固定して粒界強度を高
める作用を有する。Alによるこのような効果を発揮さ
せるためには、sol.Al(酸可溶Al)として、0.
010wt.%以上の量が必要である。しかしながら、
sol.Alが0.080wt.%を超えると、鋳片の
連続鋳造時にAl2O3の凝集体を形成して、ノズル詰ま
りの原因となり鋳造作業を困難にする。従って、so
l.Al含有量を0.010〜0.080wt.%の範
囲内とする。
造性を低下させ、工具の寿命も低下させる。このよう
に、Nは、この発明において不純物元素であるので、そ
の含有量を0.010wt.%以下とする。
である。しかし、焼戻し軟化抵抗性を高める元素でもあ
り、多量に添加し過ぎると硬くなりすぎて靭性に悪影響
を与えるので上限は2.0wt.%とする。
t.% Bは、適量添加すれば、粒界に偏析することでP、Sな
どの不純物元素の粒界への偏析を防止し、これによる遅
れ破壊特性の劣化を防止する効果がある。また微量の添
加で焼入れ性を向上させる作用を有し、MnやCr、M
o含有量を低減することができ、鋼の冷間鍛造性を更に
向上させることができる。Bによるこのような効果を発
揮させるためには、0.0005wt.%以上添加する
必要がある。しかしながら、0.0050wt.%を超
えて添加するとボロンセメンタイトを析出して粒界強度
を弱める。従って、B含有量を0.0005〜0.00
50wt.%の範囲内とする。
るのに有効な元素である。しかも靭性を向上させる効果
も有するので、焼き入れ性と靭性を確保するためには有
効な元素である。しかし、多量に添加してもその効果が
飽和し、且つ非常に高価な元素なので上限を3.5w
t.%とする。
に有効な元素である。適正量添加することは機械的性質
向上には有効であるが、添加しすぎると熱間圧延時に表
面疵は発生しやすくなり、冷問鍛造不良が起きるので上
限を1.0wt.%とする。
粒界強度を高め、焼入性を向上させる有用な元素であ
る。しかし、多量に添加するとCrと同様に冷間鍛造性
を阻害する。また、Moは、高価な元素なので上限を
0.30wt.%とする。
t.% Tiは、結晶粒の微細化効果を有する。しかしながら、
0.005wt.%未満ではその効果が小さく、またN
をTiNとして固定する効果も小さい。ところが、0.
050wt.%を超えて添加しても、これらの効果は飽
和するのみならず、Ti含有量が高すぎると、硬質のT
iN、TiCが多数形成し、鍛造性が低下する他、合金
コストもかかる。従って、Ti含有量を0.005〜
0.050wt.%の範囲内とする。
t.% Nbは、Tiと同様、結晶粒の微細化効果を有し、0.
005wt.%未満ではその効果が小さいので、下限を
0.005wt.%とした。しかし、Tiと同様にNb
は、C、Nとの親和力が強いので炭化物や窒化物を形成
しやすく、多量に添加されると粒界析出して脆化を促進
する他、合金コストもかかる。従って、上限を0.05
0wt.%とする。
0〜700 所望のボルト強度および相手部材に雌ネジを成形する上
で、ビッカース硬さHvで550未満では先端が欠けた
り、折れたりして雌ネジ成形が不可能になる。一方、H
vで700を超えると切り欠き効果が高まり亀裂発生を
促進させる、従って、ねじ表面の硬さHvは、550〜
700の範囲内とする。
0〜400 表面硬さ同様、所望のボルト強度を得るため必要とす
る。Hv:200未満では所望のボルト強度が得られな
い。一方、Hvで400を超えると靭性が低下し亀裂進
展しやすくなる。従って、内部のビッカース硬さHv
は、200〜400の範囲内とする。
部硬さ)と密接に関係していて、200℃未満では硬く
なり過ぎ、一方、400℃を超えると所望の強度が得ら
れない。従って、焼戻し温度は、200〜400℃の範
囲内とする。
00mm 相手部材に雌ネジを成形する上で表面に所望の硬さを必
要するが、その硬化深さが0.05mm未満であると浅
すぎて雌ネジ成形性に劣り、一方、1.00mmを超え
ると深すぎて、内部の靭性が低下し亀裂進展が促進され
る。従って、有効硬化層深さは、0.05〜1.00m
mの範囲とする。
する。
50kg/ch、真空溶解炉にて溶製し、116角のビ
レットに鍛伸後、熱間圧延によりφ8mmの線材にし、
冷間鍛造・ねじ転造後、浸炭焼入れ焼き戻しして、M8
のタッピンボルトを製造した。このボルトの形状は、ね
じの呼び径:8mm、呼び長さ:30mmの十字穴付六
角ツバ付きボルトであった。このボルトを各種試験に供
した。引張試験は、JISB1051のくさび引張試験
で、くさびの角度は10°で実施し、頭部靭性試験は、
JISB1055に準じて実施した。
2mm位置、内部硬さはD/4位置を測定した。有効硬
化層深さは表層からHv550までの硬さの位置として
評価した。なお、硬さはすべてビッカース硬度計で測定
した。
に一定トルクでボルトを締める試験を行い、破断の有
無、ねじ山の破損状況、ねじ谷部の亀裂有無の状況で評
価した(n=10)。表中、タッピング性の○印は、破
断や破損、亀裂が発生しなかったボルトの数が8個以上
の場合であり、×印は、7個以下の場合を表している。
あるNo.1〜12は、本発明の条件を満足する鋼を用
いて造られているので、何れも、冷間鍛造性に優れ、所
望の強度、靭性を有するタッピング性に優れたボルトで
あった。
が本発明より多いので、表面硬さおよび芯部硬さが高く
なり過ぎ、引張試験時および頭部靭性試験にて頭抜けが
生じ、靭性に乏しかった。
ないので、所望の強度および表面硬さ、内部硬さが得ら
れておらず雌ネジ成形ができずタッピング性能不良であ
った。
多いので、フェライト地の硬さ上昇により変形抵抗が高
くなり内部硬さも上昇し靭性が乏しかった。
限を超えて多いので、焼き入れ性が高すぎて硬化層深さ
が増加し、表面・内部硬度が上昇し、靭性が不足してい
た。
限を外れて少ないので、所望の強度が得られておらず、
比較例No.15と同様にタッピング性能不良であっ
た。
いので、粒界強度の低下による引張り時および頭部靭性
試験時に頭抜けが生じた。
低いので、結晶粒の粗大化によって焼きが入りすぎて内
部靭性が不足して頭抜けが生じた。
ので、内部の靭性が不足し頭抜けが生じた。
いので、ボロンを含むセメンタイトが粒界に析出し粒界
強度を弱めているために亀裂が発生した。また、Ti量
も本発明より多いので、硬質なTiC、TiNが多数存
在して冷間鍛造性が悪く靭性も乏しかった。
多いので、NbC、Nb(CN)等の金属間化合物が多
数存在し、このために粒界が弱くなり亀裂の発生が起き
ていた。
多く、比較例No.24は、Mo量が本発明より多いの
で、頭部靭性試験時に頭飛びが発生し、靭性が不足して
いた。
を超えて異常に多いので、Bの添加効果が無くなって粒
界強度の低下による引張り時および頭部靭性試験時に頭
抜けが生じた。
を超えて多いので、頭部靭性試験時に首下に亀裂が生じ
た。
より低いので、靭性の不足により頭抜けが生じた。
より高いので、所望の強度が得られなかった。
が得られていないので、強度不足およびタッピング性が
不良であった。
ば、安価な原料を使用し低コストで製造することによっ
てP、Sの不純物元素が高くなっても、Bを適量添加す
ることにより優れたタッピング性、即ち、優れた雌ねじ
成形性および内部靭性を有し、且つ所定のボルト強度を
有する高強度ねじを製造することができるといった有用
な効果がもたらされる。
Claims (6)
- 【請求項1】C :0.05〜0.20%、 Si:0.20%以下、 Mn:0.5〜2.0%、 P :0.015超〜0.040%、 S :0.040%以下、 Al:0.010〜0.080%、 N :0.010%以下、 Cr:2.0%以下、 B :0.0005〜0.0050%(以上、wt.
%)、 残部:鉄および不可避的不純物からなることを特徴とす
る高強度ねじ用鋼。 - 【請求項2】Ni:3.5%以下、 Cu:1.0%以下、 Mo:0.30%以下 の内の少なくとも1種、および/または、 Ti:0.005〜0.050%、 Nb:0.005〜0.050%(以上、wt.%) の内の少なくとも1種を更に含有することを特徴とす
る、請求項1記載の高強度ねじ用鋼。 - 【請求項3】C :0.05〜0.20%、 Si:0.20%以下、 Mn:0.5〜2.0%、 P :0.015超〜0.040%、 S :0.040%以下、 Al:0.010〜0.080%、 N :0.010%以下、 Cr:2.0%以下、 B :0.0005〜0.0050%(以上、wt.
%)、 残部:鉄および不可避的不純物 からなり、表面硬さHvで550〜700、内部硬さH
vで200〜400、引張強度で800N/mm2以
上、有効硬化層深さ0.05〜1.00mmを有するこ
とを特徴とする高強度ねじ。 - 【請求項4】Ni:3.5%以下、 Cu:1.0%以下、 Mo:0.30%以下 の内の少なくとも1種、および/または、 Ti:0.005〜0.050%、 Nb:0.005〜0.050%(以上、wt.%) の内の少なくとも1種を更に含有することを特徴とす
る、請求項3記載の高強度ねじ。 - 【請求項5】C :0.05〜0.20%、 Si:0.20%以下、 Mn:0.5〜2.0%、 P :0.015超〜0.040%、 S :0.040%以下、 Al:0.010〜0.080%、 N :0.010%以下、 Cr:2.0%以下、 B :0.0005〜0.0050%(以上、wt.
%)、 残部:鉄および不可避的不純物 からなる鋼を用いて、熱間圧延、冷間鍛造さらにねじ成
形後、浸炭処理を施し、浸炭処理後の焼戻し温度を20
0〜400℃の温度範囲内で調整することを特徴とす
る、表面硬さHvで550〜700、内部硬さHvで2
00〜400、引張強度で800N/mm2以上、有効
硬化層深さ0.05〜1.00mmを有する高強度ねじ
の製造方法。 - 【請求項6】前記鋼は、 Ni:3.5%以下、 Cu:1.0%以下、 Mo:0.30%以下 の内の少なくとも1種、および/または、 Ti:0.005〜0.050%、 Nb:0.005〜0.050%(以上、wt.%) の内の少なくとも1種を更に含有することを特徴とす
る、請求項5記載の高強度ねじの製造方法。
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