JP2002343655A - 高電圧大電流用磁気結合コネクタ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高電圧（例えば１０ｋＶ）、大電流（例えば
１００ｋＡ以上）、パルス幅（例えば３０μｓｅｃ以
下）のパルス電流を、効率よく伝播でき、かつ脱着が容
易なコネクタを提供する。 【解決手段】 高電圧大電流電源１に接続される一次側
巻線１２と、電磁成形コイル２に接続される二次側巻線
１４と、一次側巻線により発生する磁束を二次側巻線に
導くための導電性コア１６とからなる。導電性コア１６
は、一次側巻線が巻かれた一次側コア１６ａと、二次側
巻線が巻かれた二次側コア１６ｂとからなる。一次側コ
アと二次側コアは、互いに密着または近接して磁気的に
接続し、互いに間隔を隔てて電気的に切断される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、非接触で脱着可能
な高電圧大電流用磁気結合コネクタに関する。

【０００２】

【従来の技術】タンデムプレスやトランスファプレス
は、例えば自動車のボディやドアパネルなど、比較的複
雑な立体成形部品を高速に加工するのに、従来から用い
られている。しかし、従来のタンデムプレスやトランス
ファプレスでは難しいプレス成形があった。例えば、ド
アパネルの把手の部分など、部分的に複雑な形状をプレ
ス成形する場合には、プレスの１工程では縁がきちんと
成形できず、適確な形状にできない等の問題があった。
そのため、特に高品質を要求される場合に、２〜３工程
を必要とし、その結果、上下の金型セットが複数組必要
なばかりか、プレス工程も複数設ける必要があり、生産
性が低下しコストアップとなる問題点があった。また、
車両の軽量化のためにアルミニウム材の成形が要望され
るようになってきているが、鉄板に比較してアルミニウ
ムは、スプリングバックが大きいため、形が適確に仕上
がらない問題点があった。

【０００３】かかる問題点を解決するために、本発明の
出願人は、少ないプレス台数で複雑な形状でも成形で
き、かつスプリングバックなしにアルミニウムを所定の
形状に加工することができる連続プレス設備を創案し、
出願した（特願２０００−６５２６５、未公開）。

【０００４】この連続プレス設備は、複数台のプレスを
備えたタンデムプレス又はトランスファプレスであっ
て、プレス内又はプレス間に設けられた少なくとも１つ
の電磁成形装置を備えるものである。

【０００５】この発明の構成によれば、タンデムプレス
又はトランスファプレスのプレス内又はプレス間に電磁
成形装置を備えるので、通常の機械プレス又は液圧プレ
スと併用して被加工材（パネル）を電磁成形（Ｅｌｅｃ
ｔｒｏｍａｇｎｅｔｉｃ Ｆｏｒｍｉｎｇ：ＥＭＦ）す
ることができる。またこの電磁成形は、成形の高速性な
どにより複雑な形状でも成形でき、かつスプリングバッ
クなしにアルミニウムを成形することができる等、種々
の特徴を有しており、今まで不可能だった成形が可能と
なる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上述した電磁成形装置
は、金型に埋設された電磁成形コイルと、このコイルに
電気的に接続された電源ユニット及びスイッチング回路
等で構成される。この場合、電源ユニット及びスイッチ
ング回路等は、大形でありプレス外の固定部に設置され
るため、電磁成形コイルと電源ユニット等を電気的に接
続する脱着可能なコネクタが不可欠となる。

【０００７】また、電磁成形では、高電圧（例えば１０
ｋＶ）、大電流（例えば１００ｋＡ以上）、高周波数
（例えば３０ｋＨｚ以上）のサイン半波波形パルス電流
を電磁成形コイルに流す必要がある。

【０００８】しかし、従来のコネクタは、導体と導体
（ブスバー等）を機械的トルクもしくは締付トルクによ
って接触させるものであり、ボルトの脱着等に時間と労
力がかかりすぎる問題点があった。また、ボルトの脱着
なしに脱着可能なコネクタでは、大電流を流すため接続
部の接触抵抗によるロスが大きく、上述した高電圧大電
流パルスを効率よく伝播できない問題点があった。

【０００９】さらに物流関係等の給電システム等に利用
されている非接触給電技術は、周波数の適用範囲が低く
（約２０ｋＨｚ程度）、かつ低電圧に限定されるため、
本発明で対象としている高電圧大電流パルスでかつ３０
ｋＨｚ以上のサイン半波波形には適用できなかった。ま
た、磁気的結合により電気エネルギを伝播させる高電圧
大電流用パルストランスは、一次側と二次側が固定され
ているため脱着ができなかった。

【００１０】本発明は、上述した問題点を解決するため
に創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、
高電圧（例えば１０ｋＶ）、大電流（例えば１００ｋＡ
以上）、パルス幅（例えば３０μｓｅｃ以下）のパルス
電流を、効率よく伝播でき、かつ脱着が容易なコネクタ
を提供することにある。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明によれば、高電圧
大電流電源（１）に接続される一次側巻線（１２）と、
電磁成形コイル（２）に接続される二次側巻線（１４）
と、一次側巻線により発生する磁束を二次側巻線に導く
ための導電性コア（１６）とからなり、導電性コア（１
６）は、一次側巻線が巻かれた一次側コア（１６ａ）
と、二次側巻線が巻かれた二次側コア（１６ｂ）とから
なり、該一次側コアと二次側コアは、互いに密着または
近接して磁気的に接続し、互いに間隔を隔てて電気的に
切断される、ことを特徴とする高電圧大電流用磁気結合
コネクタが提供される。

【００１２】本発明の構成によれば、一次側コア（１６
ａ）と二次側コア（１６ｂ）を、互いに密着または近接
することにより磁気的に接続し、高電圧大電流電源
（１）により一次側巻線で発生する磁束を二次側巻線に
導き、二次側巻線（１４）でこの磁束により高電圧大電
流パルスを誘起し、電磁成形コイル（２）に印可して、
電磁成形することができる。また、磁気的に接続するた
め高電圧（例えば１０ｋＶ）、大電流（例えば１００ｋ
Ａ以上）、パルス幅（例えば３０μｓｅｃ以下）のサイ
ン半波波形パルス電流を、効率よく伝播できる。すなわ
ち、一般的には、接続が大掛かりとなる特別高圧で大電
流パルスによる電気エネルギ伝播に対し、従来の直接接
続ではなく、磁気的結合を使用することにより、高耐電
圧、接続抵抗が生じない、容易に脱着可能なコネクタが
構成され、頻繁に脱着を必要とする電源と負荷に使用す
ることが可能となる。これにより、タイムタクトが問題
となる生産ラインに特別高圧で大電流パルスを使用する
装置を容易に組み込むことが可能となる。

【００１３】本発明の好ましい実施形態によれば、前記
導電性コア（１６）は、閉じた矩形形状であり、前記一
次側コア（１６ａ）と二次側コア（１６ｂ）は、該矩形
形状を面で切断したコの字形状である。この構成によ
り、脱着可能な導電性コア（１６）を容易に構成でき、
かつ接続時の漏えい磁束を小さくすることができる。

【００１４】また、前記切断面が、接続時に互いに密着
または近接し、切断時に互いに間隔を隔てるように構成
される。この構成により、切断面の密着（または近接）
と離脱のみで、非接触で高電圧大電流を容易に脱着でき
る。

【００１５】さらに、接続時に一次側巻線（１２）と二
次側巻線（１４）が同心に重なるように、各コアに巻か
れている、ことがこのましい。この構成により、一次側
巻線で発生した磁束を二次側巻線に確実に導くことがで
き、接続時の漏えい磁束を低減し結合効率を向上させる
ことができる。

【００１６】前記導電性コア（１６）は、珪素鋼板、フ
ェライト材、またはアモルファス材からなる、のがよ
い。通常の珪素鋼板だけではなく、フェライト材やアモ
ルファス材を使用することにより、より結合効率を高め
ることができる。

【００１７】前記一次側巻線（１２）と二次側巻線（１
４）は、それぞれプラスチックレジンによりモールドさ
れている。この構成により、巻線の耐電圧を確保しなが
ら、大電流による巻線の振動を抑えることができる。

【００１８】

【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態
を図面を参照して説明する。なお、各図において、共通
する部分には同一の符号を付し，重複した説明を省略す
る。

【００１９】図１は、電磁成形の原理図であり、（Ａ）
は円筒状成形の場合、（Ｂ）はシート成形の場合を示し
ている。電磁成形は、磁場のもつエネルギを利用する金
属加工法であり、十分な加工力を得るために強力な磁場
を必要とする。そのため、大容量・高電圧のコンデンサ
３（キャパシタバンク）からの放電電流を磁成形コイル
２に流すことによって生じる瞬間強磁場が用いられる。
すなわち、図１（Ａ）（Ｂ）に示すように、例えば１０
ＫＶ程度の高電圧で大容量のコンデンサ３にエネルギを
蓄え、放電スイッチ４を閉じることにより、瞬時に大電
流（例えば、１５０ｋＡ、３０μｓ）が磁成形コイル２
に流れ、強い磁場が発生し、被成形材５がその磁場では
じき飛ばされ、金型に沿って高速成形がなされる。かか
る電磁成形は、爆発成形や放電成形のように加工力を伝
達する水等を必要とせず、大気中でも真空中でもでき、
かつ加工速度が速く、ほとんどの加工は１ｍｓ以内で終
了する。また、この電磁成形は、成形の高速性などによ
り複雑な形状でも成形でき、かつスプリングバックなし
にアルミニウムを所定の形状に成形することができる等
の種々の特徴を有している。

【００２０】図２は、本発明の高電圧大電流用磁気結合
コネクタを用いた電磁成形の原理図である。この図に示
すように、本発明の高電圧大電流用磁気結合コネクタ１
０は、高電圧大電流電源１に接続される一次側巻線１２
と、電磁成形コイル２に接続される二次側巻線１４と、
一次側巻線１２により発生する磁束を二次側巻線に導く
ための導電性コア１６とからなる。高電圧大電流電源１
は、この例では、高電圧直流電源１ａ、コンデンサ１
ｂ、及び充電スイッチ１ｃからなる。この構成により、
例えば１０ＫＶ程度の高電圧直流電源１ａで充電スイッ
チ１ｃを介して大容量のコンデンサ３にエネルギを蓄
え、放電スイッチ４を閉じることにより、一次側巻線１
２に例えば、１５０ｋＡ、３０μｓの大電流をパルス状
に流すことができる。

【００２１】図３は、図２に示した本発明の高電圧大電
流用磁気結合コネクタの原理図である。この図に示すよ
うに、導電性コア１６は、一次側巻線１２が巻かれた一
次側コア１６ａと、二次側巻線１４が巻かれた二次側コ
ア１６ｂとからなる。この例で、導電コア１６性は、閉
じたロの字状の矩形形状である。また、一次側コア１６
ａと二次側コア１６ｂは、コア１６の矩形形状を切断面
１７ａ，ｂで切断したコの字形状である。なお、コアの
断面形状はこの例では正方形であるが、本発明はこれに
限定されず、長方形、円形、楕円、その他の任意の断面
形状でもよい。また、一次側コア１６ａと二次側コア１
６ｂの切断面１７ａ，ｂは、コネクタの接続時に漏えい
磁束を小さくするように、互いに密着または近接する。
この切断面１７ａ，ｂは、コネクタの切断時には一次側
コア１６ａで発生した磁束が二次側コア１６ｂに流れな
い間隔に隔てられる。

【００２２】図３に模式的に示すように、一次側巻線１
２と二次側巻線１４は、コネクタの接続時に一次側巻線
１２と二次側巻線１４が同心に重なるように、各コアに
巻かれ、一次側巻線で発生した磁束を二次側巻線に確実
に導き、接続時の漏えい磁束を低減して結合効率を向上
させるようになっている。

【００２３】図４は、本発明の高電圧大電流用磁気結合
コネクタで伝播する高電圧大電流の模式図である。この
例において、本発明の高電圧大電流用磁気結合コネクタ
１０が対象とする高電圧大電流は、パルス幅約３０μｓ
ｅｃのｓｉｎ半波であり、そのピーク電圧は約１０ｋ
Ｖ、そのピーク電流は約１５０ｋＡである。上述した本
発明の構成により、一次側巻線１２と二次側巻線１４の
巻線比を１：１にすることにより、約９０％以上の高い
電力伝達効率で、一次側巻線１２に流した、例えば、１
５０ｋＡ、３０μｓの大電流パルスをそのまま二次側巻
線１４に流すことができる。

【００２４】図５〜図７は、本発明の高電圧大電流用磁
気結合コネクタ１０の具体的な実施形態図である。この
うち、図５は斜視図、図６は断面構造図、図７は図６の
Ａ-Ａ線における断面図である。なお、図６、図７にお
いて、（Ａ）はコネクタの切断状態、（Ｂ）は接続状態
を示している。

【００２５】図５に示すように、この高電圧大電流用磁
気結合コネクタ１０は、電磁ノイズをシールドするため
に、一次側部分と二次側部分を別々の筐体１８ａ，ｂに
収めている。筐体１８ａ，ｂは、ぞれぞれ図示しない接
地ラインで接地されている。また、図６に示すように、
筐体１８ａ，ｂの相互の結合部分は開放され、機械的、
磁気的に結合（接続）されたときに開放部分が互いに重
なって全閉となる。図５において、電磁ノイズをシール
ドするために、入出力ケーブルには同軸ケーブルが用い
られている。また、一次側部分の押し込み、引き抜きを
容易にするために、一次側筐体１８ａにはハンドルが取
り付けられている。さらに、一次側と二次側が完全に結
合されたことが電気信号としてわかるように、近接スイ
ッチ等のセンサを備えている。

【００２６】図６、図７に示すように、この例では、コ
ア１６は縦向き位置であり、一次側と二次側の着脱は水
平方向に行うようになっている。導電性コア１６は、珪
素鋼板、フェライト材、またはアモルファス材からな
る。また、一次側巻線１２と二次側巻線１４は、それぞ
れ支持体１９ａ，ｂ（例えばプラスチックレジン）によ
りモールドされている。

【００２７】また、接続時に一次側巻線１２と二次側巻
線１４が重なるように、巻線が施されている。なお、一
次側と二次側が機械的にスムースに接続できるように、
コアと巻線の間、一次側筐体と二次側筐体の間、一次側
巻線と二次側巻線の間には、１〜２ｍｍ程度のクリアラ
ンスが設けられている。

【００２８】上述した本発明の構成によれば、一次側コ
ア１６ａと二次側コア１６ｂを、互いに密着または近接
することにより磁気的に接続し、高電圧大電流電源１に
より一次側巻線で発生する磁束を二次側巻線に導き、二
次側巻線１４でこの磁束により高電圧大電流パルスを誘
起し、電磁成形コイル２に印可して、電磁成形すること
ができる。また、磁気的に接続するため高電圧（例えば
１０ｋＶ）、大電流（例えば１００ｋＡ以上）、パルス
幅（例えば３０μｓｅｃ以下）のサイン半波波形パルス
電流を、効率よく伝播できる。

【００２９】なお、本発明は上述した実施の形態に限定
されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更でき
ることは勿論である。例えば、本発明の高電圧大電流用
磁気結合コネクタは、電磁成形以外の用途に用いること
もできる。

【００３０】

【発明の効果】上述したように、一般的には、接続が大
掛かりとなる特別高圧で大電流パルスによる電気エネル
ギ伝播に対し、従来の直接接続ではなく、磁気的結合を
使用することにより、高耐電圧、接続抵抗が生じない、
容易に脱着可能なコネクタが構成できる。そのため、頻
繁に脱着を必要とする電源と負荷に使用することが可能
となる。これにより、タイムタクトが問題となる生産ラ
イン上に組み込むことが困難とされてきた、特別高圧で
大電流パルスを使用する装置を容易に組み込むことが可
能となる。

【００３１】従って、本発明の高電圧大電流用磁気結合
コネクタは、高電圧、大電流、高周波数のパルス電流
を、効率よく伝播でき、かつ脱着が容易である、等の優
れた効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】電磁成形の原理図である。

【図２】本発明の高電圧大電流用磁気結合コネクタを用
いた電磁成形の原理図である。

【図３】本発明の高電圧大電流用磁気結合コネクタの原
理図である。

【図４】本発明の高電圧大電流用磁気結合コネクタで伝
播する高電圧大電流の模式図である。

【図５】本発明の高電圧大電流用磁気結合コネクタの斜
視図である。

【図６】本発明の高電圧大電流用磁気結合コネクタの断
面構造図である。

【図７】図６のＡ-Ａ線における断面図である。

【符号の説明】

１ 高電圧大電流電源、２ 電磁成形コイル、３ コン
デンサ、４ スイッチ、５ 被成形材、１０ 高電圧大
電流用磁気結合コネクタ、１２ 一次側巻線、１４ 二
次側巻線、１６ 導電性コア、１６ａ 一次側コア、１
６ｂ 二次側コア、１７ａ，１７ｂ 切断面、１８ａ，
１８ｂ 筐体、１９ａ，１９ｂ 支持体

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐々木 裕司 東京都江東区豊洲３丁目１番15号 石川島 播磨重工業株式会社東京エンジニアリング センター内

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 高電圧大電流電源（１）に接続される一
   次側巻線（１２）と、電磁成形コイル（２）に接続され
   る二次側巻線（１４）と、一次側巻線により発生する磁
   束を二次側巻線に導くための導電性コア（１６）とから
   なり、 導電性コア（１６）は、一次側巻線が巻かれた一次側コ
   ア（１６ａ）と、二次側巻線が巻かれた二次側コア（１
   ６ｂ）とからなり、該一次側コアと二次側コアは、互い
   に密着または近接して磁気的に接続し、互いに間隔を隔
   てて電気的に切断される、ことを特徴とする高電圧大電
   流用磁気結合コネクタ。
2. 【請求項２】 前記導電性コア（１６）は、閉じた矩形
   形状であり、前記一次側コア（１６ａ）と二次側コア
   （１６ｂ）は、該矩形形状を面で切断したコの字形状で
   ある、ことを特徴とする請求項１に記載の高電圧大電流
   用磁気結合コネクタ。
3. 【請求項３】 前記切断面が、接続時に互いに密着また
   は近接し、切断時に互いに間隔を隔てるように構成され
   る、ことを特徴とする請求項２に記載の高電圧大電流用
   磁気結合コネクタ。
4. 【請求項４】 接続時に一次側巻線（１２）と二次側巻
   線（１４）が同心に重なるように、各コアに巻かれてい
   る、ことを特徴とする請求項１に記載の高電圧大電流用
   磁気結合コネクタ。
5. 【請求項５】 前記導電性コア（１６）は、珪素鋼板、
   フェライト材、またはアモルファス材からなる、ことを
   特徴とする請求項１に記載の高電圧大電流用磁気結合コ
   ネクタ。
6. 【請求項６】 前記一次側巻線（１２）と二次側巻線
   （１４）は、それぞれプラスチックレジンによりモール
   ドされている、ことを特徴とする請求項１に記載の高電
   圧大電流用磁気結合コネクタ。