JP2002339956A - 動圧軸受装置およびその製造方法 - Google Patents

動圧軸受装置およびその製造方法

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JP2002339956A
JP2002339956A JP2001148153A JP2001148153A JP2002339956A JP 2002339956 A JP2002339956 A JP 2002339956A JP 2001148153 A JP2001148153 A JP 2001148153A JP 2001148153 A JP2001148153 A JP 2001148153A JP 2002339956 A JP2002339956 A JP 2002339956A
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Kimio Sato
公男 佐藤
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RIRAIARU KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 小型化、高精度化、低廉化、あるいは動圧軸
受部の作動油の外部への流出防止を図ることができる動
圧軸受装置およびその製造方法を提供すること。 【解決手段】 動圧軸受装置20を製造するにあたり、
回転軸部材31の外周面に第一および第二環状部材3
2,33を嵌合固定して回転部30を構成し、これらの
部材32,33間に中間部材42を配置して固定部40
を構成し、第一および第二環状部材32,33と中間部
材42との隙間54,55にスラスト軸受部51を形成
し、回転部30である回転軸部材31と中間部材42と
の隙間56にジャーナル軸受部52を形成し、第一およ
び第二環状部材32,33の固定は、回転軸部材31と
の嵌合面に塗布された接着剤のみにより行うようにし
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固定部と、この固
定部に動圧軸受部を介して回転自在に支持された回転部
とを有する動圧軸受装置およびその製造方法に係り、例
えば、ハードディスク・ドライブ(HDD)やデジタル
・バーサタイル・ディスク(DVD)の駆動装置のよう
なディスク回転型記憶装置の他、ポリゴンミラー等の回
転部の軸受に利用できる。
【0002】
【背景技術】一般に、動圧軸受装置は、回転軸を含む回
転部と固定部との隙間に充填された作動油に、回転軸の
回転力を利用して動圧を与え、この動圧によって回転部
を固定部に対して浮かせるような状態とすることによ
り、回転軸を回転自在に支持するものである。
【0003】この動圧軸受装置において、動圧を発生さ
せて回転軸を支持する動圧軸受部は、通常、回転軸に直
交する方向(径方向)に作用する力を受けるジャーナル
軸受部と、回転軸に沿う方向に作用する力を受けるスラ
スト軸受部とを備えて構成されている(例えば、特開平
10−96421号等参照)。
【0004】そして、HDD用のスピンドルモータ等の
小型モータにおける動圧軸受装置では、ジャーナル軸受
部およびスラスト軸受部のいずれについても、回転軸の
回転に伴って発生する動圧により固定部に対して回転部
が浮上支持される際に回転部と固定部との間に形成され
る隙間の幅寸法は、その対抗面積、負荷容量、流体の粘
度等を勘案し、2〜3μm程度になるように設定される
のが一般的である。
【0005】一方、この隙間の幅寸法は、浮上力、損失
トルクあるいは軸受剛性を左右する重要な要素であり、
この隙間の幅寸法のばらつきが動圧軸受の性能に大きな
ばらつきをもたらす。従って、実際に回転部が浮上支持
された際に形成される隙間の幅寸法を、設定値に対し±
0.5μm以内のばらつきに抑える必要があり、従来、
その寸法管理は、装置の構成部品を高精度にすること、
あるいは、部品の選別組み合わせを行うことにより実現
されてきた。
【0006】また、一般に、HDD用のスピンドルモー
タ等の小型モータにおける動圧軸受装置では、その構成
部品の固定を行う際には、ねじ等の締結具を使用するス
ペースがないため、接着剤を用いている。
【0007】さらに、動圧軸受装置では、動圧軸受部を
構成する作動油として流体を充填するが、その流体には
潤滑油または磁性流体が用いられている。ここで、作動
油として用いる流体は、経年変化が少なく、粘度の低い
液体とすることが、消費電力の低減や動圧軸受の長寿命
化等の観点から好ましい。
【0008】そして、磁性流体を使用する目的として
は、軸受内部に適宜な磁気回路を形成することによって
作動油の外部飛散を防止することが挙げられる。また、
その他に、HDD等では、作動油として通常の潤滑油を
用いた場合には、潤滑油に導電性がないことから、ディ
スク回転中に生ずるディスク上の静電気を回転部から固
定部に伝えることができないのに対し、作動油として磁
性流体を用いた場合には、導電性のある磁性流体を介し
て静電気を回転部から固定部に伝えてアースに落とすこ
とができるので、これにより、読み書きヘッドの静電気
放電による破壊を防止するという目的もある。
【0009】さらに、作動油として磁性流体を使用する
場合には、磁性流体と外部空間との境界面近傍に強磁場
を形成し、その強磁場により磁性流体を保持して作動油
である磁性流体の外部流出を防止することが行われる
が、この際、強磁場を形成するためのマグネットには、
通常、ナイロンをベースとしたネオジウムマグネット、
サマリウムコバルトマグネット、あるいはフェライトマ
グネット等が用いられている。
【0010】また、作動油として潤滑油あるいは磁性流
体のいずれを用いる場合においても、流体と外部空間と
の境界面近傍に配置される部材表面に撥油剤を塗布して
滲み出しを防止することにより、流体の外部流出防止を
図っている。すなわち、液体は、金属表面では撥油剤を
用いないと、滲み出し現象を生じ、滲み出した部分が流
体の外部漏出の通路となり、更に遠心力等によってその
通路から作動油が外部に飛散する結果となるからであ
る。従って、作動油の滲み出しを防止することは、液体
を作動油として使用した動圧軸受装置の重要な技術であ
り、塗布する撥油剤は、金属表面と良く密着し、経年変
化が少なく、安定かつ継続的にその機能を発揮するもの
である必要がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の動圧
軸受装置では、次のような問題があった。すなわち、前
述したように、HDDのスピンドルモータ等の小型モー
タに用いられる従来の動圧軸受装置では、動圧軸受部に
より回転軸を浮上支持した際における回転部と固定部と
の隙間は、2〜3μm程度に設定されるのが通常である
が、この際、回転軸の精度、浮上力、あるいは消費電力
等のばらつきを減少させるためには、その隙間のばらつ
きを±0.5μm以下に抑える必要がある。従って、動
圧軸受装置の各構成部材に±0.25μm以下という、
かなり高い寸法精度を求める必要があり、構成部材の製
造が困難であるという問題があった。
【0012】特に、ジャーナル軸受部の構成部材の場合
には、内外径の精度を高くすればよいので、製造は比較
的容易であるが、スラスト軸受部の構成部材の場合に
は、高さのばらつきを抑える必要があるので、一般的な
金属の機械加工から得られる部品の精度から見て、構成
部材について必要な寸法精度を確保することは困難なも
のとなる。そして、このことは動圧軸受装置を高価なも
のにする要因となり、動圧軸受装置の普及を阻害する要
因になるという問題があった。
【0013】また、前述したように、HDD用のスピン
ドルモータ等の小型モータに用いられる従来の動圧軸受
装置では、その構成部品の固定を行う際には、スペース
の都合上、接着剤を用いているが、その接着剤が固化し
た後の厚さのばらつきを小さく抑えることは困難である
ため、動圧軸受部の隙間、特にスラスト軸受部の隙間の
ばらつきを抑えることは困難であるという問題がある。
【0014】さらに、前述したように、従来の動圧軸受
装置では、動圧軸受部の隙間に充填された流体の外部空
間への流出飛散を防止するため、作動油として磁性流体
が用いられているが、潤滑油に界面活性剤を用いて金属
微粒子をコロイド状に分散させた磁性流体は、一般的に
潤滑油に比べて粘度が高くなる。従って、回転軸を回転
させるための消費電力の増大に繋がり、また、動圧軸受
部において回転軸の回転に伴って磁性流体が受けるせん
断により、磁性流体が自己発熱し、流体の酸化あるいは
蒸発が促進されるため、潤滑油に比較して磁性流体を用
いた動圧軸受装置は寿命が短くなるという欠点があっ
た。
【0015】また、前述したように、動圧軸受装置の作
動油に磁性流体を使用する場合には、磁性流体と外部空
間との境界面近傍に強磁場を形成するためのマグネット
として、従来は、ナイロンをベースとしたネオジウムマ
グネット、サマリウムコバルトマグネット、あるいはフ
ェライトマグネット等が用いられていたが、これらのマ
グネットは、いずれも粒子径が0.8mm以上あり、厚
さや内外半径差を0.5mm以下にすることが不可能で
あった。従って、例えば外径1.5インチ以下のディス
クを使用したディスク回転型記憶装置用スピンドルモー
タの動圧軸受装置には、これらのマグネットを配置する
スペースをとることができないため、超小型のスピンド
ルモータをも構成することができる動圧軸受装置を製造
することは困難であった。
【0016】そして、前述したように、作動油に潤滑油
あるいは磁性流体を使用した従来の動圧軸受装置では、
動圧軸受部の隙間に充填されている作動油と外部空間と
の境界面近傍に配置される装置構成部材に、撥油剤を塗
布することにより、作動油の外部への滲み出しを防止し
ているが、この撥油剤を塗布する部材は、金属製であ
り、機械加工面に撥油剤を塗布する必要が生じる。とこ
ろで、金属を機械加工する際には、一般に切削油を使用
するが、この際、切削工具で加工されて新たに表面に現
れた金属面は活性であるため、その金属面は切削油と直
ちに結合する。そして、このように金属面と結合した切
削油は、分子レベルの厚さで金属表面に残存し、化学的
な洗浄等では、除去しあるいは剥離することが困難であ
る。このため、切削油が結合した金属面に撥油剤を塗布
した場合には、撥油剤と金属表面との密着性が悪く、撥
油剤が剥離し易いので、撥油性が著しく低下するという
問題が生じていた。
【0017】本発明の目的は、小型化が可能かつ高精度
であるとともに、安価に製造することができる動圧軸受
装置およびその製造方法、あるいは動圧軸受部の隙間に
充填された作動油の外部への流出防止を図ることができ
る動圧軸受装置およびその製造方法を提供するところに
ある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明は、固定部と、こ
の固定部に動圧軸受部を介して回転自在に支持された回
転部とを有する動圧軸受装置において、回転部は、回転
中心に配置される回転軸部材と、この回転軸部材の外周
面に嵌合固定される第一および第二環状部材とを含み構
成され、固定部は、第一環状部材と第二環状部材との間
に配置される中間部材を含み構成され、動圧軸受部は、
第一環状部材と中間部材との各対向面およびこれらの対
向面間に形成された第一の隙間に充填された動圧発生用
の作動油並びに第二環状部材と中間部材との各対向面お
よびこれらの対向面間に形成された第二の隙間に充填さ
れた動圧発生用の作動油を備えてなるスラスト軸受部
と、回転部の外周面と中間部材の内周面との各対向面お
よびこれらの対向面間に形成された第三の隙間に充填さ
れた動圧発生用の作動油を備えてなるジャーナル軸受部
とを有し、第一および第二環状部材は、回転軸部材との
嵌合面に塗布された接着剤のみにより回転軸部材に固定
されていることを特徴とするものである。
【0019】ここで、ジャーナル軸受部を構成する「回
転部の外周面」には、回転軸部材の外周面(例えば、後
述する図2の場合等)の他、回転軸部材に嵌合されて第
一環状部材と第二環状部材との間に挟まれる状態で回転
軸部材とともに回転するスペーサや金属箔の外周面(例
えば、後述する図8の場合等)も含まれる。但し、前者
のように回転軸部材の外周面とすることが、回転軸部材
の軸径を大きくとることができる、あるいは装置の小型
化を図ることができるという点で好ましい。
【0020】このような本発明においては、スラスト軸
受部を構成する二層の隙間の幅寸法の合計値は、第一環
状部材と第二環状部材との配置間隔に基づいて定まる。
すなわち、第一環状部材と第二環状部材との対向面間の
距離から中間部材の厚さ寸法を差し引いた値となる。こ
の際、第一および第二環状部材は、いずれも回転軸部材
との嵌合面に塗布された接着剤のみにより回転軸部材に
固定され、これにより両部材の配置間隔が定まる。従っ
て、回転部の構造上、第一環状部材と第二環状部材との
間には、部材同士を接着するために塗布される接着剤が
固化してできる接着剤の層(回転軸部材の軸芯に直交す
る面に沿って拡がる層)は形成されない。
【0021】このため、第一環状部材と第二環状部材と
の配置間隔は、接着剤の層の厚さに無関係となり、接着
剤の層の厚さのばらつきの影響で第一環状部材と第二環
状部材との配置間隔を所定の間隔に設定することができ
ないという事態は回避できるので、スラスト軸受部の隙
間を所望の値に設定することが可能となり、小型で、か
つ、高精度な動圧軸受装置を実現できるようになる。
【0022】また、動圧軸受装置を組み立てるのに使用
される接着剤としては、通常、強度、固化条件等で適し
ている嫌気性接着剤が使用されるが、この接着剤は固化
すると体積膨張を伴うので、部材の端面(回転軸部材の
軸芯に直交する面)に塗布する場合に比べ、部材同士の
嵌合面(互いに嵌合する一方の部材の外周面および他方
の部材の内周面)に塗布する場合の方が、より強い接着
強度が得られる。このため、外部から与えられる衝撃や
振動に対して強い動圧軸受装置を実現できるようにな
る。
【0023】さらに、スラスト軸受部に所望の幅寸法の
隙間を形成するために、高精度な段差加工や高精度な厚
さ加工を行う必要はなく、第一環状部材と第二環状部材
との配置間隔を所定の間隔に設定して固定すればよいの
で、困難な機械加工を伴わずに、安価に動圧軸受装置を
製造することができるようになり、これらにより前記目
的が達成される。
【0024】また、前述した動圧軸受装置において、第
一環状部材と第二環状部材との対向面間の距離は、中間
部材の厚さ寸法と組立治具としての金属箔の厚さ寸法と
の合計値となっていることが望ましい。
【0025】ここで、組立治具としての金属箔は、一枚
であっても、複数枚重ねた状態のものであってもよい。
但し、製造工程の簡易化や製品精度向上の観点からは、
金属箔は一枚の状態のものであることが好ましい。金属
箔には、例えば、4〜8μm程度の厚さのものを好適に
用いることができる。
【0026】このように第一環状部材と第二環状部材と
の対向面間の距離を、組立治具としての金属箔を用いて
規定するようにした場合(例えば、後述する図4、図5
の場合等)には、金属箔の厚さを利用してスラスト軸受
部に所望の幅寸法の隙間を容易に形成することができる
ようになる。
【0027】また、本発明は、固定部と、この固定部に
動圧軸受部を介して回転自在に支持された回転部とを有
する動圧軸受装置において、回転部は、回転中心に配置
される回転軸部材と、この回転軸部材の外周面に嵌合固
定される環状部材とを含み構成され、固定部は、環状部
材の厚さ方向についての一方の端面側に配置される第一
部材と、他方の端面側に配置される第二部材とを含み構
成され、動圧軸受部は、環状部材と第一部材との各対向
面およびこれらの対向面間に形成された第一の隙間に充
填された動圧発生用の作動油並びに環状部材と第二部材
との各対向面およびこれらの対向面間に形成された第二
の隙間に充填された動圧発生用の作動油を備えてなるス
ラスト軸受部と、第一および/または第二部材と回転軸
部材との各対向面およびこれらの対向面間に形成された
第三の隙間に充填された動圧発生用の作動油を備えてな
るジャーナル軸受部とを有し、第一部材と第二部材との
間であって環状部材の外周側には、環状部材と同一の厚
さを有するスペーサと、第一および第二の隙間の幅寸法
の合計値に相当する厚さを有する金属箔とが挟み込ま
れ、これらの挟み込まれたスペーサおよび金属箔の各表
裏面には、接着剤が塗布されていないことを特徴とする
ものである。
【0028】ここで、金属箔は、一枚であってもよく、
あるいは複数枚重ねた状態としてもよい。但し、製造工
程の簡易化や製品精度向上の観点からは、金属箔は一枚
であることが好ましい。なお、ここでいう金属箔は、組
立治具としての金属箔ではなく、動圧軸受装置の構成部
材としての金属箔である。金属箔には、例えば、4〜8
μm程度の厚さのものを好適に用いることができる。
【0029】また、環状部材と同一の厚さを有するスペ
ーサは、環状部材と同じロット(同じ加工過程)で形成
されたものであることが望ましい。
【0030】このような本発明においては、第一部材と
第二部材との間に挟み込まれたスペーサおよび金属箔の
各表裏面には、接着剤が塗布されていないので、固定部
の構造上、第一部材と第二部材との間に、固化した接着
剤の層(回転軸部材の軸芯に直交する面に沿って拡がる
層)が形成されることはない。従って、第一部材と第二
部材との対向面間の距離は、スペーサの厚さ寸法と金属
箔の厚さ寸法との合計値となる。
【0031】このため、スラスト軸受部を構成する二層
の隙間の幅寸法の合計値は、金属箔の厚さ寸法に基づい
て得られる。そして、金属箔の厚さは、通常、±0.5
μm以下のばらつきに管理されており、所望の幅寸法の
隙間を形成するのに十分な精度を備えている。従って、
小型で、かつ、高精度な動圧軸受装置を実現できるよう
になる。
【0032】また、金属箔を構成部材として用いること
により所望の幅寸法の隙間を形成できるので、高精度な
段差加工や高精度な厚さ加工を行う必要がないことか
ら、困難な機械加工を伴わずに、安価に動圧軸受装置を
製造することができるようになる。
【0033】さらに、スペーサが、環状部材と同一の厚
さであれば、スラスト軸受部を構成する二層の隙間の幅
寸法の合計値は、金属箔の厚さ寸法により確保されるの
で、たとえスペーサおよび環状部材のスラスト方向の寸
法精度を低くしたとしても、それらの部材が例えば同じ
ロットで生産されること等により同じ厚さを有していれ
ば、高精度の隙間のスラスト軸受部を形成可能となる。
従って、この点でも、安価に動圧軸受装置を製造するこ
とができるようになり、これらにより前記目的が達成さ
れる。
【0034】また、本発明は、固定部と、この固定部に
動圧軸受部を介して回転自在に支持された回転部とを有
し、動圧軸受部が、固定部と回転部との各対向面および
これらの対向面間に形成された隙間に充填された動圧発
生用の作動油を備えて構成された動圧軸受装置におい
て、動圧軸受部を構成する作動油と外部空間との境界面
近傍には強磁場が形成され、境界面近傍には、強磁場に
より保持可能な第一磁性流体が作動油として配置され、
境界面近傍以外の部分には、第一磁性流体の濃度よりも
低い濃度を有する第二磁性流体が作動油として配置され
ていることを特徴とするものである。
【0035】ここで、第一磁性流体としては、例えば、
強磁場で保持されるに十分な100〜200ガウス程度
の磁性流体を好適に用いることができる。また、第二磁
性流体としては、例えば、限りなく一般の潤滑油に近い
飽和磁化10〜30ガウス程度の濃度の低い磁性流体
(飽和磁化200ガウスの磁性流体に比較し、金属微粒
子の含有量は約1/4程度)を好適に用いることができ
る。
【0036】このような本発明においては、動圧軸受部
を構成する作動油と外部空間との境界面近傍以外の部分
には、第一磁性流体の濃度よりも低い濃度を有する第二
磁性流体が配置されるので、作動油の全体を第一磁性流
体とする場合に比べ、動圧軸受装置の寿命を長くするこ
とが可能となる。つまり、磁性流体は潤滑油と比較して
粘度が高いため、これを例えば2〜3μmという極小の
隙間に充填して作動油として用いると、動圧軸受装置の
寿命が短くなるという欠点があるが、このような欠点が
解消若しくは緩和される。
【0037】さらに、動圧軸受部を構成する作動油と外
部空間との境界面近傍に第一磁性流体が配置されるの
で、これにより作動油の外部への流出防止が図られる。
この際、境界面近傍は、一般に比較的大きな隙間が形成
され、例えば30μm以上あるので、回転によるせん断
の影響は少ない。このため、境界面近傍に配置した第一
磁性流体の影響により、動圧軸受装置の寿命が短くなる
という不都合は生じない。
【0038】また、仮に、動圧軸受部を構成する作動油
と外部空間との境界面近傍以外の部分に、一般の潤滑油
を使用し、境界面近傍のみに磁性流体を使用した場合に
は、磁性流体の金属微粒子が回転中に一般の潤滑油に拡
散し、作動油の保持に必要な磁性流体としての濃度が保
たれなくなる。これに対し、本発明のように、境界面近
傍以外の部分に低濃度の第二磁性流体を使用すると、境
界面近傍の第一磁性流体は拡散しないので、これにより
作動油の外部への流出防止が図られる。
【0039】さらに、境界面近傍に第一磁性流体が配置
されるので、この第一磁性流体を介してディスク回転中
に生じるディスク上の静電気をアースに落とすことがで
きるようになる。すなわち、静電気によるヘッドの破壊
を防止するに十分な導電性を維持できるようになり、こ
れらにより前記目的が達成される。
【0040】また、前述した動圧軸受装置において、強
磁場の形成には、サマリウムと鉄と窒素とを配合して形
成された磁石部材が用いられていることが望ましい。こ
こで、サマリウムと鉄と窒素とを配合して形成された磁
石部材(Sm−Fe−Nマグネット)とは、薄く小さい
マグネットを作るため、最近開発されたボンド磁石であ
り、その粒子径は、例えば5μm程度のものである。そ
して、例えば、磁石部材の大きさを、外径6.5mm、
内径5mm、厚さ0.4mm程度としても、十分に使用
に耐え得るものである。
【0041】このように強磁場の形成にSm−Fe−N
マグネットを用いた場合には、マグネットの小型化を図
ることが可能となり、これに伴って動圧軸受装置の小型
化を図ることも可能となる。
【0042】さらに、本発明は、前述した第一および第
二環状部材や中間部材を含み構成された動圧軸受装置を
製造する動圧軸受装置の製造方法であって、組立作業を
行うための平坦面と、第一および第二の隙間の幅寸法の
合計値に相当する厚さを有する金属箔とを用意してお
き、先ず、平坦面と回転軸部材の下端面とを当接させる
状態で平坦面上に回転軸部材を載置するとともに、回転
軸部材の周囲に、金属箔、第二環状部材、中間部材、第
一環状部材をこの順で積み重ねて配置し、この状態で第
一環状部材を回転軸部材との嵌合面に塗布した接着剤に
より回転軸部材に固定し、次に、回転軸部材を平坦面か
ら離隔させて金属箔を取り除いた後、再び平坦面と回転
軸部材の下端面とを当接させる状態で平坦面上に回転軸
部材を載置するとともに、第二環状部材および中間部材
を回転軸部材の軸芯方向に沿って移動させて第二環状部
材を平坦面に当接させ、この状態で第二環状部材を回転
軸部材との嵌合面に塗布した接着剤により回転軸部材に
固定することを特徴とするものである。なお、ここでい
う金属箔は、組立治具としての金属箔であり、動圧軸受
装置の構成部材としての金属箔ではない。
【0043】このような本発明においては、組立治具と
しての金属箔を用いて第一環状部材と第二環状部材との
配置間隔を規定することができるので、金属箔の厚さを
利用してスラスト軸受部に所望の幅寸法の隙間を容易に
形成することができるようになり、これにより前記目的
が達成される。
【0044】そして、本発明は、固定部と、この固定部
に動圧軸受部を介して回転自在に支持された回転部とを
有し、動圧軸受部が、固定部と回転部との各対向面およ
びこれらの対向面間に形成された隙間に充填された動圧
発生用の作動油を備えて構成された動圧軸受装置を製造
する動圧軸受装置の製造方法において、動圧軸受装置を
構成する各部材のうち、少なくとも動圧軸受部を構成す
る作動油と外部空間との境界面近傍に配置される部材を
機械加工する際には、撥油剤を機械加工用の切削剤の代
わりに用いることを特徴とするものである。
【0045】このような本発明においては、撥油剤を機
械加工用の切削剤の代わりに用いるので、機械加工時に
金属面と切削剤が結合し、その後に塗布する撥油剤の性
能を劣化させるという不都合を解消することができるよ
うになるため、作動油の滲み出しによる外部空間への流
出の防止が図られる。
【0046】そして、撥油剤を機械加工用の切削剤の代
わりに用いると、機械加工中に新たに表面に現れた活性
な金属面は撥油剤と直ちに結合するが、このように金属
面と結合した撥油剤は洗浄でも除去することが難しく、
さらに撥油剤を塗布することによってその効果は増大す
る。
【0047】また、金属加工時の切削剤の役割は、加工
時の発熱を除去すること、切削工具と被加工物である金
属との癒着を防止すること等を主な目的としており、撥
油剤を切削油の代わりに用いると、通常の切削油を用い
る場合に比べ、これらの目的の達成度が低下するため、
切削性は若干落ちるが、撥油剤の効果が持続するために
後工程での効果は非常に大きく、これらにより前記目的
が達成される。
【0048】また、本発明は、固定部と、この固定部に
動圧軸受部を介して回転自在に支持された回転部とを有
し、動圧軸受部が、固定部と回転部との各対向面および
これらの対向面間に形成された隙間に充填された動圧発
生用の作動油を備えて構成された動圧軸受装置を製造す
る動圧軸受装置の製造方法において、動圧軸受装置を構
成する各部材のうち、少なくとも動圧軸受部を構成する
作動油と外部空間との境界面近傍に配置される部材を加
工して仕上げる際には、機械加工用の切削剤を用いて機
械加工した後、切削剤を用いない乾式機械加工を行うこ
とにより、部材表面に残留する切削剤を除去し、その
後、撥油剤を塗布することを特徴とするものである。
【0049】ここで、切削剤を用いない乾式機械加工と
しては、例えば、紙ヤスリ(サンドペーパ)や砥石を用
いて行う加工、あるいは切削剤を用いずに行うバイトに
よる加工等が挙げられる。
【0050】このような本発明においては、機械加工時
に金属面と結合した切削剤を、乾式機械加工を行うこと
により除去した後に、撥油剤を塗布するので、金属表面
と撥油剤との密着性を高めることができ、作動油の滲み
出しによる外部空間への流出の防止を図ることが可能と
なり、これにより前記目的が達成される。
【0051】さらに、本発明は、固定部と、この固定部
に動圧軸受部を介して回転自在に支持された回転部とを
有し、動圧軸受部が、固定部と回転部との各対向面およ
びこれらの対向面間に形成された隙間に充填された動圧
発生用の作動油を備えて構成された動圧軸受装置を製造
する動圧軸受装置の製造方法において、動圧軸受装置を
構成する各部材のうち、少なくとも動圧軸受部を構成す
る作動油と外部空間との境界面近傍に配置される部材を
加工して仕上げる際には、機械加工用の切削剤を用いて
機械加工した後、金属製部材の表面を研磨または切削可
能で、かつ、撥油剤を豊潤保持可能な表面処理材を用い
ることにより、部材表面に残留する切削剤を除去しつ
つ、撥油剤を塗布することを特徴とするものである。
【0052】ここで、金属製部材の表面を研磨または切
削可能で、かつ、撥油剤を豊潤保持可能な表面処理材と
しては、例えば、スポンジ研磨材、パッド研磨材、不織
布表面処理材等を好適に用いることができる。
【0053】このような本発明においては、金属製部材
の表面を研磨または切削可能で、かつ、撥油剤を豊潤保
持可能な表面処理材を用いるので、部材表面に残留する
切削剤の除去と、撥油剤の塗布とを同時に行うことがで
きるようになる。このため、金属表面と撥油剤との密着
性を高めることができ、作動油の滲み出しによる外部空
間への流出の防止を図ることが可能となり、これにより
前記目的が達成される。
【0054】そして、本発明は、固定部と、この固定部
に動圧軸受部を介して回転自在に支持された回転部とを
有し、動圧軸受部が、固定部と回転部との各対向面およ
びこれらの対向面間に形成された隙間に充填された動圧
発生用の作動油を備えて構成された動圧軸受装置を製造
する動圧軸受装置の製造方法において、動圧軸受装置を
構成する各部材のうち、少なくとも動圧軸受部を構成す
る作動油と外部空間との境界面近傍に配置される部材を
加工して仕上げる際には、機械加工用の切削剤を用いて
機械加工した後、オゾンガスを吹き付けることにより、
部材表面に残留する切削剤を除去し、その後、撥油剤を
塗布することを特徴とするものである。
【0055】このような本発明においては、オゾンガス
を吹き付けることにより部材表面に残留する切削剤を除
去するので、除去が円滑に行われる。そして、その後、
撥油剤を塗布するので、金属表面と撥油剤との密着性を
高めることができ、作動油の滲み出しによる外部空間へ
の流出の防止を図ることが可能となり、これにより前記
目的が達成される。
【0056】
【発明の実施の形態】以下に本発明の各実施形態を図面
に基づいて説明する。
【0057】[第一実施形態]図1は、本発明の第一実
施形態の動圧軸受装置20をHDD回転駆動部10に組
み込んだ例を示す断面図であり、図2には、動圧軸受装
置20の拡大断面図が示されている。また、図3には、
動圧軸受装置20の要部の拡大断面図が示され、図4お
よび図5には、動圧軸受装置20の製造方法の説明図が
示されている。
【0058】図1において、HDD回転駆動部10の中
心部には、動圧軸受装置20が配置されている。この動
圧軸受装置20の回転中心に配置された回転軸部材31
の上部には、図示されない記憶用ディスクを搭載するハ
ブ11が嵌合固定され、回転軸部材31とともに回転す
るようになっている。また、ハブ11の内周面には、モ
ータ駆動用磁石部材12が嵌合固着され、このモータ駆
動用磁石部材12の内側には、ステータ支持部材14に
固定されたモータステータ部13が設けられている。モ
ータ駆動用磁石部材12は、モータステータ部13に与
えられた交番電流により発生する交番磁界により回転駆
動され、これによりハブ11とともに記憶用ディスクが
回転するようになっている。
【0059】HDD回転駆動部10の大きさは、例え
ば、ハブ11の外径(直径)が20mm程度、動圧軸受
装置20の全体の厚さ(高さ寸法)がモータステータ部
13の構造等にもよるが1.5〜5.8mm程度、回転
軸部材31の軸径(直径)が2mm程度のものである。
【0060】図2において、動圧軸受装置20は、回転
部30と固定部40とを備えている。また、回転部30
と固定部40との間には、動圧軸受部50が形成され、
回転部30は、この動圧軸受部50を介して固定部40
により回転自在に支持されている。
【0061】回転部30は、円柱状の回転軸部材31
と、この回転軸部材31の外周面に嵌合固定された円環
状の第一環状部材32および第二環状部材33とを備え
て構成されている。これらの第一環状部材32および第
二環状部材33は、回転軸部材31の外周面31Aとの
嵌合面である内周面32A,33Aのみに接着剤が塗布
され、上下の各端面には、接着剤は塗布されていない。
【0062】固定部40は、回転軸部材31の下端側に
配置される受け皿状の下部支持部材41と、この下部支
持部材41の上部に嵌合固着されて第一環状部材32と
第二環状部材33との間に配置された円環状の中間部材
42と、この中間部材42の外周側に配置された円環状
の磁石部材43と、この磁石部材43の上側に配置され
て中間部材42の外周面に嵌合固着された略フランジ状
の上部ヨーク44とを備えて構成されている。なお、下
部支持部材41の底板は、何の荷重もかからず、液体を
封入できればよいので、例えば0.05mm程度の厚さ
があればよく、高さ方向には殆どスペースをとらない。
【0063】動圧軸受部50は、回転部30に作用する
スラスト方向の荷重を受けるスラスト軸受部51と、回
転部30に作用するラジアル方向の荷重を受けるジャー
ナル軸受部52とにより構成されている。また、スラス
ト軸受部51は、上側スラスト軸受部51Aと、下側ス
ラスト軸受部51Bとの二層により形成されている。
【0064】上側スラスト軸受部51Aは、第一環状部
材32の下端面32Bと、この下端面32Bに対向する
中間部材42の上端面42Aと、これらの対向面32
B,42A間に形成された第一の隙間54に充填された
動圧発生用の作動油53とにより構成されている。
【0065】下側スラスト軸受部51Bは、第二環状部
材33の上端面33Bと、この上端面33Bに対向する
中間部材42の下端面42Bと、これらの対向面33
B,42B間に形成された第二の隙間55に充填された
動圧発生用の作動油53とにより構成されている。
【0066】ジャーナル軸受部52は、回転軸部材31
の外周面31Aと、この外周面31Aに対向する中間部
材42の内周面42Cと、これらの対向面31A,42
C間に形成された第三の隙間56に充填された動圧発生
用の作動油53とにより構成されている。
【0067】上側スラスト軸受部51Aを構成する各対
向面32B,42Aのいずれか一方の面、および下側ス
ラスト軸受部51Bを構成する各対向面33B,42B
のいずれか一方の面には、図示されない動圧発生用の凹
凸パターンがそれぞれ形成されている。これらの凹凸パ
ターンの形状や深さは任意であり、動圧発生に適した一
般的なものとすればよい。また、ジャーナル軸受部52
を構成する回転軸部材31の外周面31Aにも、この外
周面31Aを一周する帯状領域に動圧発生用の凹凸パタ
ーン31Bが形成されている。但し、凹凸パターン31
Bの形状や深さは任意であり、動圧発生に適した一般的
なものとすればよく、図示の形状に限定されるものでは
ない。
【0068】また、第一の隙間54、第二の隙間55、
第三の隙間56、および回転軸部材31および第二環状
部材33の下端面と下部支持部材41の底面との間に形
成された隙間57は、全て連通されている。
【0069】図3において、作動油53と外部空間60
との境界面53Aの近傍に配置される構成部材である第
一環状部材32および上部ヨーク44の表面のうち、少
なくとも図中一点鎖線で示された部分には、作動油53
の滲み出し防止用の撥油剤が塗布されている。なお、撥
油剤は、図中一点鎖線で示された部分以外の部分に塗布
されていてもよい。例えば、後述するように、第一環状
部材32および上部ヨーク44の機械加工を行う際に、
撥油剤を切削剤の代わりに用いる場合には、これらの部
材32,44の全体が撥油剤で覆われることになるが、
膜厚が微少であるため問題にはならない。また、第一環
状部材32の表面のうち、図中一点鎖線で示された部分
は、テーパ面32Cとなっている。
【0070】作動油53には磁性流体が用いられ、この
うち境界面53Aの近傍部分には、第一磁性流体53B
が配置され、境界面53Aの近傍部分以外の部分、すな
わち、隙間54〜57(図2参照)には、第一磁性流体
53Bの濃度よりも低い濃度を有する第二磁性流体53
Cが配置されている。ここで、第一磁性流体53Bとし
ては、例えば、強磁場で保持されるに十分な100〜2
00ガウス程度の磁性流体を好適に用いることができ、
第二磁性流体53Cとしては、例えば、限りなく一般の
潤滑油に近い飽和磁化10〜30ガウス程度の濃度の低
い磁性流体(飽和磁化200ガウスの磁性流体に比較
し、金属微粒子の含有量は約1/4程度)を好適に用い
ることができる。
【0071】図2および図3において、磁石部材43
は、回転軸部材31の軸芯に沿う方向(図中上下方向)
に着磁され、これにより磁石部材43−上部ヨーク44
−第一環状部材32−回転軸部材31−第二環状部材3
3−下部支持部材41−磁石部材43という経路による
磁気閉回路が形成されている。従って、境界面53Aの
近傍部分、すなわち第一環状部材32の外周面とこれに
対向する上部ヨーク44の内周面との間には、強磁場が
形成され、これにより第一磁性流体53Bが保持されて
いる。磁石部材43には、例えばサマリウムと鉄と窒素
とを配合して形成された磁石部材(Sm−Fe−Nマグ
ネット)を好適に用いることができる。これは、粒子径
が例えば5μm程度のボンド磁石である。
【0072】このような第一実施形態においては、以下
のようにして動圧軸受装置20を組み立てて製造する。
【0073】先ず、図4に示すように、組立作業を行う
ための作業台70を用意する。この作業台70の上面
は、平坦面71となっている。また、第一の隙間54の
幅寸法T1(図2参照)と、第二の隙間55の幅寸法T
2(図2参照)との合計値(T1+T2)に相当する厚
さSを有する組立治具としての金属箔72を用意する。
金属箔72の厚さSは、例えば、4〜8μm程度であ
る。
【0074】次に、図4に示すように、平坦面71と回
転軸部材31の下端面とを当接させる状態で平坦面71
上に回転軸部材31を載置するとともに、回転軸部材3
1の周囲に、金属箔72、第二環状部材33、中間部材
42、第一環状部材32をこの順で積み重ねて配置す
る。そして、回転軸部材31および第一環状部材32を
図中の矢印方向に押さえ付け、この状態で第一環状部材
32を回転軸部材31との嵌合面に塗布した接着剤によ
り回転軸部材31に固定する。
【0075】続いて、図5に示すように、回転軸部材3
1を平坦面71から離隔させて金属箔72を取り除いた
後、再び平坦面71と回転軸部材31の下端面とを当接
させる状態で平坦面71上に回転軸部材31を載置する
とともに、第二環状部材33および中間部材42を回転
軸部材31の軸芯方向に沿って移動させて第二環状部材
33を平坦面71に当接させる。そして、回転軸部材3
1および中間部材42を図中の矢印方向に押さえ付け、
この状態で第二環状部材33を回転軸部材31との嵌合
面に塗布した接着剤により回転軸部材31に固定する。
以上により、第一環状部材32の下端面32Bとこれに
対向する第二環状部材33の上端面33Bとの間の距離
D(図2参照)は、中間部材42の厚さ寸法H(図2参
照)と組立治具としての金属箔72の厚さ寸法S(図4
参照)との合計値(H+S)になる。
【0076】その後、中間部材42に、下部支持部材4
1、磁石部材43、上部ヨーク44を取り付けた後、テ
ーパ面32C(図3参照)の近傍から、第二磁性流体5
3Cを注入し、隙間54〜57に充填する。そして、さ
らにテーパ面32Cの近傍から、第一磁性流体53Bを
注入する。これらの各磁性流体53B,53Cの注入作
業には、真空注入法(特願平11−350470号参
照)等の手段を好適に用いることができ、これにより、
気泡を混入することなく各磁性流体53B,53Cを充
填することができる。
【0077】また、第一環状部材32および上部ヨーク
44を製造する際には、以下のような方法を採用するこ
とができる。すなわち、第一の方法として、第一環状部
材32および上部ヨーク44を機械加工する際に、撥油
剤を機械加工用の切削剤の代わりに用いる方法が挙げら
れる。
【0078】第二の方法として、先ず、第一環状部材3
2および上部ヨーク44を機械加工用の通常の切削剤を
用いて機械加工した後、切削剤を用いない乾式機械加工
を行うことにより、これらの部材32,44の表面に残
留する切削剤を除去し、その後、これらの部材32,4
4の表面に撥油剤を塗布する方法が挙げられる。乾式機
械加工としては、例えば、紙ヤスリ(サンドペーパ)や
砥石を用いて行う加工、あるいは切削剤を用いずに行う
バイトによる加工等が挙げられる。
【0079】第三の方法として、先ず、第一環状部材3
2および上部ヨーク44を機械加工用の通常の切削剤を
用いて機械加工した後、研磨または切削可能で、かつ、
撥油剤を豊潤保持可能な表面処理材を用いることによ
り、これらの部材32,44の表面に残留する切削剤を
除去しつつ、これらの部材32,44の表面に撥油剤を
塗布する方法が挙げられる。研磨または切削可能で、か
つ、撥油剤を豊潤保持可能な表面処理材としては、例え
ば、スポンジ研磨材、パッド研磨材、不織布表面処理材
等を好適に用いることができる。
【0080】第四の方法として、先ず、第一環状部材3
2および上部ヨーク44を機械加工用の通常の切削剤を
用いて機械加工した後、オゾンガスを吹き付けることに
より、これらの部材32,44の表面に残留する切削剤
を除去し、その後、これらの部材32,44の表面に撥
油剤を塗布する方法が挙げられる。
【0081】このような第一実施形態によれば、次のよ
うな効果がある。すなわち、第一環状部材32および第
二環状部材33は、いずれも回転軸部材31との嵌合面
に塗布された接着剤のみにより回転軸部材31に固定さ
れるので、回転部30の構造を、第一環状部材32と第
二環状部材33との間に接着剤の層(回転軸部材31の
軸芯に直交する面に沿って拡がる層)が形成されない構
造にすることができる。このため、第一環状部材32と
第二環状部材33との配置間隔を、接着剤の層の厚さに
無関係なものとすることができるので、接着剤の層の厚
さのばらつきの影響で第一環状部材32と第二環状部材
33との配置間隔を所定の間隔に設定することができな
いという事態を回避できる。従って、スラスト軸受部5
1の隙間54,55を所望の値に設定することができ、
小型で、かつ、高精度な動圧軸受装置20を実現でき
る。
【0082】また、第一環状部材32および第二環状部
材33と回転軸部材31との嵌合面に接着剤を塗布する
ので、嫌気性接着剤を使用する場合には、部材の端面
(回転軸部材31の軸芯に直交する面)に塗布する場合
に比べ、より強い接着強度を得ることができる。このた
め、外部から与えられる衝撃や振動に対して強い動圧軸
受装置20を実現できる。
【0083】さらに、スラスト軸受部に所望の幅寸法の
隙間を形成するために、高精度な段差加工や高精度な厚
さ加工を行う必要はなくなるので、困難な機械加工を伴
わずに、安価に動圧軸受装置20を製造することができ
る。そして、動圧軸受装置20の全体で見ても、各構成
部材は簡易な構造を有し、回転部30には、高さ方向の
位置決めのための段付き部材あるいは固定のための段付
き部材はなく、固定部40では、下部支持部材41およ
び上部ヨーク44が段付き部材となっているが、高精度
な段差を形成する必要はないので、加工は容易であり、
安価に製造できる。
【0084】図4および図5のように、第一環状部材3
2と第二環状部材33との対向面32B,33B間の距
離D(図2参照)を、組立治具としての金属箔72を用
いて規定するようにしたので、金属箔72の厚さSを利
用してスラスト軸受部51に所望の幅寸法T1,T2
(図2参照)の隙間54,55を容易に形成することが
できる。
【0085】また、作動油53と外部空間60との境界
面53A(図3参照)の近傍以外の部分には、第一磁性
流体53Bの濃度よりも低い濃度を有する第二磁性流体
53Cを配置するので、作動油53の全体を第一磁性流
体53Bとする場合に比べ、動圧軸受装置20の寿命を
長くすることができる。つまり、磁性流体を用いること
による消費電力の増大や軸受寿命の減少という不都合を
回避することができる。
【0086】さらに、境界面53Aの近傍に第一磁性流
体53Bを配置するので、これにより作動油53の外部
空間60への流出防止を図ることができる。そして、境
界面53Aの近傍に形成されている隙間は、それ以外の
部分の隙間54〜57に比べて大きく、回転によるせん
断の影響が少ないので、境界面53Aの近傍に配置した
第一磁性流体53Bの影響により、動圧軸受装置20の
寿命が短くなるという不都合を回避できる。
【0087】また、境界面53Aの近傍以外の部分であ
る隙間54〜57に、一般の潤滑油ではなく、第二磁性
流体53Cを充填したので、第一磁性流体53Bの拡散
を防止することができる。このため、第一磁性流体53
Bに所定の機能を発揮させることができ、作動油53の
外部空間60への流出防止を図ることができる。なお、
厳密に言えば、第一磁性流体53Bと第二磁性流体53
Cとの境界部分では、双方の磁性流体が混合するが、磁
気勾配の範囲内で拡散するだけなので、その拡散する範
囲は無視し得る程の範囲である。
【0088】さらに、境界面53Aの近傍に第一磁性流
体53Bを配置するので、この第一磁性流体53Bを介
してディスク回転中に生じるディスク上の静電気をアー
スに落とすことができ、静電気によるヘッドの破壊を防
止することができる。
【0089】そして、磁石部材43として、サマリウム
と鉄と窒素とを配合して形成された磁石部材(Sm−F
e−Nマグネット)を用いれば、磁石部材43の小型化
を図ることができ、これに伴って動圧軸受装置20の小
型化を図ることもできる。例えば、磁石部材43の大き
さを、外径6.5mm、内径5mm、厚さ0.4mm程
度としても、十分に使用に耐え得るものである。これに
より、例えば、外径が1.5インチ以下のディスクを使
用したディスク回転型記憶装置用の超小型のスピンドル
モータをも構成することができる。
【0090】また、磁石部材43としてSm−Fe−N
マグネットを用いれば、磁石部材43の小型化を図り、
磁石部材43の断面積を小さくすることができるので、
固定部40の強度を高めることができる。つまり、回転
ディスクを支持するHDD回転駆動部10の強度を高め
る必要があるが、磁石部材43としてSm−Fe−Nマ
グネットを用いた場合には、ボンド磁石であるから、固
定部40の強度を高める部材とはならないため、磁石部
材43以外の金属部品同士の接着面積を大きくとる必要
があり、そのためには磁石部材43の断面積を小さくす
ればよいからである。
【0091】さらに、磁石部材43としてSm−Fe−
Nマグネットを用いれば、磁石部材43を小型化できる
ので、ハードディスクにもたらされる悪影響を回避する
ことができる。つまり、HDDで磁気回路を構成する場
合は、磁石の大きさが漏洩磁場を形成し、磁気的に記録
するハードディスクに悪影響をもたらすため、それを回
避するためには磁石部材43を小型にしなければならな
いからである。
【0092】また、図3に示すように、作動油53と外
部空間60との境界面53Aの近傍に配置される構成部
材である第一環状部材32および上部ヨーク44の表面
のうち、少なくとも図中一点鎖線で示された部分には、
作動油53の滲み出し防止用の撥油剤が塗布されている
ので、作動油53の外部空間60への流出防止を図るこ
とができる。
【0093】さらに、第一環状部材32および上部ヨー
ク44の表面に撥油剤を塗布する際に、前述した各方法
(第一から第四の方法)を用いれば、金属表面と撥油剤
との密着性を高めて撥油剤の剥離を防ぎ、撥油剤の効果
を持続させることができるので、作動油53の滲み出し
による外部空間60への流出の防止の確実化を図ること
ができる。
【0094】[第二実施形態]図6は、本発明の第二実
施形態の動圧軸受装置220をHDD回転駆動部210
に組み込んだ例を示す断面図であり、図7には、動圧軸
受装置220の拡大断面図が示されている。
【0095】図6において、HDD回転駆動部210の
中心部には、動圧軸受装置220が配置されている。こ
の動圧軸受装置220の回転中心に配置された回転軸部
材231の上部には、図示されない記憶用ディスクを搭
載するハブ211が嵌合固定され、回転軸部材231と
ともに回転するようになっている。また、ハブ211の
内周面には、モータ駆動用磁石部材212が嵌合固着さ
れ、このモータ駆動用磁石部材212の内側には、ステ
ータ支持部材214に固定されたモータステータ部21
3が設けられている。モータ駆動用磁石部材212は、
モータステータ部213に与えられた交番電流により発
生する交番磁界により回転駆動され、これによりハブ2
11とともに記憶用ディスクが回転するようになってい
る。
【0096】本第二実施形態のHDD回転駆動部210
や動圧軸受装置220の大きさは、前記第一実施形態の
HDD回転駆動部10や動圧軸受装置10の大きさと同
程度である。
【0097】図7において、動圧軸受装置220は、回
転部230と固定部240とを備えている。また、回転
部230と固定部240との間には、動圧軸受部250
が形成され、回転部230は、この動圧軸受部250を
介して固定部240により回転自在に支持されている。
【0098】回転部230は、円柱状の回転軸部材23
1と、この回転軸部材231の外周面に嵌合固定された
円環状の環状部材232とを備えて構成されている。環
状部材232の内周面232Aと回転軸部材231の外
周面231Aとは接着剤により固定されている。
【0099】固定部240は、環状部材232の上側に
配置される円環状の第一部材241と、環状部材232
の下側に配置される略円盤状の第二部材242と、これ
らの第一部材241と第二部材242との間に挟み込ま
れるようにして環状部材232の外周側に配置された円
環状のスペーサ243および円環状の金属箔244とを
備えている。スペーサ243は、厚さ方向(回転軸部材
231の軸芯に沿う方向)の加工を環状部材232と同
じロットで行ったものであり、環状部材232と同一の
厚さを有している。本第二実施形態の金属箔244は、
前記第一実施形態の図4の金属箔72とは異なり、組立
治具としての金属箔ではなく、動圧軸受装置220の構
成部材としての金属箔である。金属箔244には、例え
ば、4〜8μm程度の厚さのものを好適に用いることが
できる。
【0100】また、固定部240は、第一部材241の
外周側に配置された円環状の磁石部材245と、この磁
石部材245の上側に配置された略フランジ状の上部ヨ
ーク246と、磁石部材245の下側に配置された円筒
状の下部ヨーク247とを備えている。
【0101】スペーサ243は、下部ヨーク247の内
周面に嵌合固着されている。そして、スペーサ243の
外周面には接着剤が塗布されるが、上下の端面には接着
剤は塗布されない。また、金属箔244は、挟み込むだ
けであり、接着固定しない。
【0102】動圧軸受部250は、回転部230に作用
するスラスト方向の荷重を受けるスラスト軸受部251
と、回転部230に作用するラジアル方向の荷重を受け
るジャーナル軸受部252とにより構成されている。ま
た、スラスト軸受部251は、上側スラスト軸受部25
1Aと、下側スラスト軸受部251Bとの二層により形
成されている。
【0103】上側スラスト軸受部251Aは、第一部材
241の下端面241Aと、この下端面241Aに対向
する環状部材232の上端面232Bと、これらの対向
面241A,232B間に形成された第一の隙間254
に充填された動圧発生用の作動油253とにより構成さ
れている。
【0104】下側スラスト軸受部251Bは、第二部材
242の上端面242Aと、この上端面242Aに対向
する環状部材232の下端面232Cと、これらの対向
面242A,232C間に形成された第二の隙間255
に充填された動圧発生用の作動油253とにより構成さ
れている。
【0105】ジャーナル軸受部252は、回転軸部材2
31の外周面231Aと、この外周面231Aに対向す
る第一部材241の内周面241Bと、これらの対向面
231A,241B間に形成された第三の隙間256に
充填された動圧発生用の作動油253とにより構成され
ている。
【0106】上側スラスト軸受部251Aを構成する各
対向面241A,232Bのいずれか一方の面、および
下側スラスト軸受部251Bを構成する各対向面242
A,232Cのいずれか一方の面には、図示されない動
圧発生用の凹凸パターンがそれぞれ形成されている。こ
れらの凹凸パターンの形状や深さは任意であり、動圧発
生に適した一般的なものとすればよい。また、ジャーナ
ル軸受部252を構成する回転軸部材231の外周面2
31Aにも、この外周面231Aを一周する帯状領域に
動圧発生用の凹凸パターン231Bが形成されている。
但し、凹凸パターン231Bの形状や深さは任意であ
り、動圧発生に適した一般的なものとすればよく、図示
の形状に限定されるものではない。
【0107】また、第一の隙間254、第二の隙間25
5、第三の隙間256、回転軸部材231の下端面と第
二部材242の上端面との間に形成された隙間257、
および環状部材232の外周面とスペーサ243の内周
面との間に形成された隙間258は、全て連通されてい
る。
【0108】また、作動油253と外部空間260との
境界面253Aの近傍に配置される構成部材である回転
軸部材231および上部ヨーク246の表面に、作動油
253の滲み出し防止用の撥油剤が塗布されているの
は、前記第一実施形態の場合と同様である。さらに、上
部ヨーク246の表面には、テーパ面246Aが形成さ
れている。
【0109】作動油253として、境界面253Aの近
傍で第一磁性流体が用いられ、境界面253Aの近傍以
外の部分で第一磁性流体よりも低い濃度を有する第二磁
性流体が用いられている点も、前記第一実施形態の場合
と同様である。
【0110】そして、磁石部材245の材質も前記第一
実施形態の場合と同様であり、この磁石部材245によ
り磁気閉回路が形成され、形成された強磁場により第一
磁性流体が保持されている点も、前記第一実施形態の場
合と同様である。
【0111】このような第二実施形態によれば、次のよ
うな効果がある。すなわち、第一部材241と第二部材
242との間に挟み込まれたスペーサ243および金属
箔244の各表裏面には、接着剤を塗布しないので、固
定部240の構造を、第一部材241と第二部材242
との間に接着剤の層(回転軸部材の軸芯に直交する面に
沿って拡がる層)が形成されない構造とすることができ
る。従って、第一部材241と第二部材242との対向
面間の距離を、スペーサ243の厚さ寸法と金属箔24
4の厚さ寸法との合計値に設定することができる。
【0112】そして、環状部材232とスペーサ243
とは、回転軸部材231の軸芯方向についての厚さ加工
を同一ロットで行い、同時加工を施すので、同じ厚さの
部材を容易に形成することができる。なお、一般的に
は、環状部材232やスペーサ243の厚さ加工を行う
際には、例えば200個以上の部材を同時加工する。
【0113】このため、スラスト軸受部251を構成す
る二層の隙間254,255の幅寸法の合計値は、金属
箔244の厚さ寸法により設定することができる。そし
て、金属箔244の厚さは、通常、±0.5μm以下の
ばらつきに管理されており、所望の幅寸法の隙間25
4,255を形成するのに十分な精度を備えている。従
って、小型で、かつ、高精度な動圧軸受装置220を実
現できる。
【0114】また、金属箔244を構成部材として用い
ることにより所望の幅寸法の隙間254,255を形成
できるので、高精度な段差加工や高精度な厚さ加工を行
う必要がないことから、困難な機械加工を伴わずに、安
価に動圧軸受装置220を製造することができる。
【0115】その他の各効果、例えば、作動油253と
して第一および第二磁性流体を用いた場合の効果、磁石
部材245としてSm−Fe−Nマグネットを用いた場
合の効果、作動油253の滲み出し防止用の撥油剤を塗
布した場合の効果等は、前記第一実施形態の場合と同様
に得ることができる。
【0116】[変形の形態]なお、本発明は前記各実施
形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成で
きる範囲内での変形等は本発明に含まれるものである。
【0117】すなわち、前記各実施形態では、スラスト
軸受部51,251は、二層の隙間により構成されてい
たが、スペース上問題が生じない限りにおいて、本発明
の構成を軸方向に繰り返して採用することにより、スラ
スト軸受部を、四層、六層等の隙間により構成されるも
のとしてもよい。
【0118】また、前記各実施形態では、作動油53,
253として第一および第二磁性流体を用いていたが、
本発明では、作動油として潤滑油を用いてもよい。な
お、前記各実施形態において、上部ヨーク44,246
は、作動油53,253として磁性流体を使用したとき
に磁気回路を構成するうえで磁気的に必要であるが、作
動油として潤滑油を用いる場合であっても、作動油と外
部空間との境界面近傍に毛細管現象を利用したキャピラ
リーシールが必要になるので、上部ヨーク44,246
は必要であり、作動油の種類によって高さ方向の構成部
品が変わることはない。また、作動油と外部空間との境
界面近傍に配置される構成部材の表面への撥油剤の塗布
は、作動油として潤滑油を用いる場合、磁性流体を用い
る場合のいずれの場合であっても必要である。
【0119】さらに、前記第一実施形態では、第一環状
部材32と第二環状部材33との対向面32B,33B
間の距離を定めるに際し、図4および図5に示すような
方法をとり、組立治具としての金属箔72を用いていた
が、このような方法に限定されるものではなく、例え
ば、図8の動圧軸受装置320に示すような構成として
もよい。図8において、回転軸部材331の外周面に
は、第一環状部材332および第二環状部材333が嵌
合固定されている。第一環状部材332および第二環状
部材333は、回転軸部材331との嵌合面に塗布され
た接着剤のみにより回転軸部材331に固定されてい
る。第一環状部材332と第二環状部材333との間に
は、中間部材342と同じ厚さを有するスペーサ343
および金属箔344が挟み込まれ、これらにより第一環
状部材332と第二環状部材333との対向面間の距離
が定まっている。つまり、スペーサ343および金属箔
344の各表裏面(上下の各端面)には、接着剤が塗布
されていない。この際、中間部材342とスペーサ34
3とは、厚さ加工を同じロットで行い、同時加工するこ
とが好ましい。また、金属箔344は組立治具ではな
く、構成部材である。このようにすれば、第一環状部材
332と第二環状部材333との間に接着剤の層が形成
されないので、スラスト軸受部の二層の隙間354,3
55の幅寸法の合計値を、金属箔344の厚さ寸法によ
り設定することができ、高精度な動圧軸受装置320を
実現できる。なお、この場合、ジャーナル軸受部352
は、回転部330を構成するスペーサ343の外周面3
43Aと、この外周面343Aに対向する中間部材34
2の内周面342Aと、これらの対向面343A,34
2A間に形成された第三の隙間356に充填された動圧
発生用の作動油353とにより構成される。
【0120】
【発明の効果】以上に述べたように本発明によれば、ス
ラスト軸受部の隙間の幅寸法を、固化した接着剤の層の
厚さのばらつきに影響されずに、しかも簡易な構造によ
り定めることができるので、動圧軸受装置の小型化、高
精度化、低廉化を図ることができるという効果がある。
あるいは、本発明によれば、作動油として濃度の異なる
第一および第二磁性流体を用い、または撥油剤の効果を
維持若しくは発揮させることができるので、動圧軸受部
の隙間に充填された作動油の外部への流出防止を図るこ
とができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態の動圧軸受装置をHDD
回転駆動部に組み込んだ例を示す断面図。
【図2】第一実施形態の動圧軸受装置の拡大断面図。
【図3】第一実施形態の動圧軸受装置の要部の拡大断面
図。
【図4】第一実施形態の動圧軸受装置の製造方法の説明
図。
【図5】第一実施形態の動圧軸受装置の製造方法の別の
説明図。
【図6】本発明の第二実施形態の動圧軸受装置をHDD
回転駆動部に組み込んだ例を示す断面図。
【図7】第二実施形態の動圧軸受装置の拡大断面図。
【図8】本発明の変形の形態を示す断面図。
【符号の説明】
20,220,320 動圧軸受装置 30,230,330 回転部 31,231,331 回転軸部材 31A,42C,343A,342A 回転部の外周面
と中間部材の内周面との各対向面 32,332 第一環状部材 32A,33A 回転軸部材との嵌合面(接着剤が塗布
される部分) 32B,42A 第一環状部材と中間部材との各対向面 33,333 第二環状部材 33B,42B 第二環状部材と中間部材との各対向面 40,240 固定部 42,342 中間部材 43,245 磁石部材 50,250 動圧軸受部 51,251 スラスト軸受部 52,252,352 ジャーナル軸受部 53,253,353 作動油 53A,253A 作動油と外部空間との境界面 53B 第一磁性流体 53C 第二磁性流体 54,254,354 第一の隙間 55,255,355 第二の隙間 56,256,356 第三の隙間 71 平坦面 72 組立治具としての金属箔 232 環状部材 232B,241A 環状部材と第一部材との各対向面 232C,242A 環状部材と第二部材との各対向面 241 第一部材 241B,231A 第一部材と回転軸部材との各対向
面 242 第二部材 243 スペーサ 244 金属箔 D 第一環状部材と第二環状部材との対向面間の距離 H 中間部材の厚さ寸法 S 組立治具としての金属箔の厚さ寸法

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 固定部と、この固定部に動圧軸受部を介
    して回転自在に支持された回転部とを有する動圧軸受装
    置において、 前記回転部は、回転中心に配置される回転軸部材と、こ
    の回転軸部材の外周面に嵌合固定される第一および第二
    環状部材とを含み構成され、 前記固定部は、前記第一環状部材と前記第二環状部材と
    の間に配置される中間部材を含み構成され、 前記動圧軸受部は、前記第一環状部材と前記中間部材と
    の各対向面およびこれらの対向面間に形成された第一の
    隙間に充填された動圧発生用の作動油並びに前記第二環
    状部材と前記中間部材との各対向面およびこれらの対向
    面間に形成された第二の隙間に充填された動圧発生用の
    作動油を備えてなるスラスト軸受部と、前記回転部の外
    周面と前記中間部材の内周面との各対向面およびこれら
    の対向面間に形成された第三の隙間に充填された動圧発
    生用の作動油を備えてなるジャーナル軸受部とを有し、 前記第一および第二環状部材は、前記回転軸部材との嵌
    合面に塗布された接着剤のみにより前記回転軸部材に固
    定されていることを特徴とする動圧軸受装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の動圧軸受装置におい
    て、前記第一環状部材と前記第二環状部材との対向面間
    の距離は、前記中間部材の厚さ寸法と組立治具としての
    金属箔の厚さ寸法との合計値となっていることを特徴と
    する動圧軸受装置。
  3. 【請求項3】 固定部と、この固定部に動圧軸受部を介
    して回転自在に支持された回転部とを有する動圧軸受装
    置において、 前記回転部は、回転中心に配置される回転軸部材と、こ
    の回転軸部材の外周面に嵌合固定される環状部材とを含
    み構成され、 前記固定部は、前記環状部材の厚さ方向についての一方
    の端面側に配置される第一部材と、他方の端面側に配置
    される第二部材とを含み構成され、 前記動圧軸受部は、前記環状部材と前記第一部材との各
    対向面およびこれらの対向面間に形成された第一の隙間
    に充填された動圧発生用の作動油並びに前記環状部材と
    前記第二部材との各対向面およびこれらの対向面間に形
    成された第二の隙間に充填された動圧発生用の作動油を
    備えてなるスラスト軸受部と、前記第一および/または
    第二部材と前記回転軸部材との各対向面およびこれらの
    対向面間に形成された第三の隙間に充填された動圧発生
    用の作動油を備えてなるジャーナル軸受部とを有し、 前記第一部材と前記第二部材との間であって前記環状部
    材の外周側には、前記環状部材と同一の厚さを有するス
    ペーサと、前記第一および第二の隙間の幅寸法の合計値
    に相当する厚さを有する金属箔とが挟み込まれ、これら
    の挟み込まれたスペーサおよび金属箔の各表裏面には、
    接着剤が塗布されていないことを特徴とする動圧軸受装
    置。
  4. 【請求項4】 固定部と、この固定部に動圧軸受部を介
    して回転自在に支持された回転部とを有し、前記動圧軸
    受部が、前記固定部と前記回転部との各対向面およびこ
    れらの対向面間に形成された隙間に充填された動圧発生
    用の作動油を備えて構成された動圧軸受装置において、 前記動圧軸受部を構成する前記作動油と外部空間との境
    界面近傍には強磁場が形成され、 前記境界面近傍には、前記強磁場により保持可能な第一
    磁性流体が前記作動油として配置され、前記境界面近傍
    以外の部分には、前記第一磁性流体の濃度よりも低い濃
    度を有する第二磁性流体が前記作動油として配置されて
    いることを特徴とする動圧軸受装置。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の動圧軸受装置におい
    て、前記強磁場の形成には、サマリウムと鉄と窒素とを
    配合して形成された磁石部材が用いられていることを特
    徴とする動圧軸受装置。
  6. 【請求項6】 請求項1または2に記載の動圧軸受装置
    を製造する動圧軸受装置の製造方法であって、 組立作業を行うための平坦面と、前記第一および第二の
    隙間の幅寸法の合計値に相当する厚さを有する組立治具
    としての金属箔とを用意しておき、 先ず、前記平坦面と前記回転軸部材の下端面とを当接さ
    せる状態で前記平坦面上に前記回転軸部材を載置すると
    ともに、前記回転軸部材の周囲に、前記金属箔、前記第
    二環状部材、前記中間部材、前記第一環状部材をこの順
    で積み重ねて配置し、この状態で前記第一環状部材を前
    記回転軸部材との嵌合面に塗布した接着剤により前記回
    転軸部材に固定し、 次に、前記回転軸部材を前記平坦面から離隔させて前記
    金属箔を取り除いた後、再び前記平坦面と前記回転軸部
    材の下端面とを当接させる状態で前記平坦面上に前記回
    転軸部材を載置するとともに、前記第二環状部材および
    前記中間部材を前記回転軸部材の軸芯方向に沿って移動
    させて前記第二環状部材を前記平坦面に当接させ、この
    状態で前記第二環状部材を前記回転軸部材との嵌合面に
    塗布した接着剤により前記回転軸部材に固定することを
    特徴とする動圧軸受装置の製造方法。
  7. 【請求項7】 固定部と、この固定部に動圧軸受部を介
    して回転自在に支持された回転部とを有し、前記動圧軸
    受部が、前記固定部と前記回転部との各対向面およびこ
    れらの対向面間に形成された隙間に充填された動圧発生
    用の作動油を備えて構成された動圧軸受装置を製造する
    動圧軸受装置の製造方法において、 前記動圧軸受装置を構成する各部材のうち、少なくとも
    前記動圧軸受部を構成する前記作動油と外部空間との境
    界面近傍に配置される部材を機械加工する際には、撥油
    剤を機械加工用の切削剤の代わりに用いることを特徴と
    する動圧軸受装置の製造方法。
  8. 【請求項8】 固定部と、この固定部に動圧軸受部を介
    して回転自在に支持された回転部とを有し、前記動圧軸
    受部が、前記固定部と前記回転部との各対向面およびこ
    れらの対向面間に形成された隙間に充填された動圧発生
    用の作動油を備えて構成された動圧軸受装置を製造する
    動圧軸受装置の製造方法において、 前記動圧軸受装置を構成する各部材のうち、少なくとも
    前記動圧軸受部を構成する前記作動油と外部空間との境
    界面近傍に配置される部材を加工して仕上げる際には、
    機械加工用の切削剤を用いて機械加工した後、前記切削
    剤を用いない乾式機械加工を行うことにより、部材表面
    に残留する前記切削剤を除去し、その後、撥油剤を塗布
    することを特徴とする動圧軸受装置の製造方法。
  9. 【請求項9】 固定部と、この固定部に動圧軸受部を介
    して回転自在に支持された回転部とを有し、前記動圧軸
    受部が、前記固定部と前記回転部との各対向面およびこ
    れらの対向面間に形成された隙間に充填された動圧発生
    用の作動油を備えて構成された動圧軸受装置を製造する
    動圧軸受装置の製造方法において、 前記動圧軸受装置を構成する各部材のうち、少なくとも
    前記動圧軸受部を構成する前記作動油と外部空間との境
    界面近傍に配置される部材を加工して仕上げる際には、
    機械加工用の切削剤を用いて機械加工した後、金属製部
    材の表面を研磨または切削可能で、かつ、撥油剤を豊潤
    保持可能な表面処理材を用いることにより、部材表面に
    残留する前記切削剤を除去しつつ、撥油剤を塗布するこ
    とを特徴とする動圧軸受装置の製造方法。
  10. 【請求項10】 固定部と、この固定部に動圧軸受部を
    介して回転自在に支持された回転部とを有し、前記動圧
    軸受部が、前記固定部と前記回転部との各対向面および
    これらの対向面間に形成された隙間に充填された動圧発
    生用の作動油を備えて構成された動圧軸受装置を製造す
    る動圧軸受装置の製造方法において、前記動圧軸受装置
    を構成する各部材のうち、少なくとも前記動圧軸受部を
    構成する前記作動油と外部空間との境界面近傍に配置さ
    れる部材を加工して仕上げる際には、機械加工用の切削
    剤を用いて機械加工した後、オゾンガスを吹き付けるこ
    とにより、部材表面に残留する前記切削剤を除去し、そ
    の後、撥油剤を塗布することを特徴とする動圧軸受装置
    の製造方法。
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