JP2002339265A - 繊維の染色方法および繊維染色物 - Google Patents

繊維の染色方法および繊維染色物

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隆 金子
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 植物天然色素による染色は、色は薄いものが
多く、また何回も繰り返し染色しても堅牢な染色が達成
されにくく、また染着時間が非常に長かったり、染液が
常に均質なものではなく、品質の安定性も悪く、安定し
た染液を得る工程は簡単ではない。特に、黄色系統の代
表的な色であるミカン色や橙色を天然の蜜柑、ダイダイ
等の柑橘類を用いて、従来の方法で染色しようとする
と、柑橘類の爽やかで明るい色調を再現するのは不可能
であった。 【解決手段】 柑橘類の果皮の乾燥物を微粉砕して得た
柑橘類果皮微粉末を用いて繊維を染色する。また、柑橘
類果皮の乾燥物の微粉末を用いて染色する。さらには、
この染色を、柑橘類果皮微粉末から染料を抽出した染液
にて行うか、または染料を抽出しながら同時に染色を行
う。さらにはまた、この染色において、柑橘類果皮微粉
末が140〜50メッシュ通過物である染色方法であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、柑橘類を用いた繊
維の染色方法および繊維染色物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、糸や布等の繊維製品を染める
のに、天然植物から抽出した色素を用いることは広く知
られている。これらの代表例は草木染めと称されるもの
で、種々の天然植物の根、幹、樹皮、葉、花、実等を煎
じて抽出された煎汁を、染液として使用する。
【0003】例えば、紫に染めるには、紫草の根から煎
じた抽出液を用いて媒染により、赤色に染めるには、茜
草の根から熱水で抽出した染液で媒染するか、或いは、
紅花の花びらからアルカリで抽出した染液を用いて直接
染法で、また、藍色に染めるには、藍の葉を発酵させた
スクモによる還元染法で染色される。
【0004】黄色系統の色に染めるには、きはだ、くち
なし、うこん、刈安、やまもも、サフラン、こぶなぐ
さ、ふくぎ等が用いられている。きはだは落葉喬木でこ
の樹皮の内側の鮮黄色の部分の抽出液が使われ、この色
素成分はベルベリンという天然染料のなかでは唯一の塩
基性染料である。くちなしは実から熱水抽出して直接染
法で染色する。
【0005】植物天然染料を用いた染色物は、微妙な深
みや味わいの色調を呈する素晴らしいものであるが、上
記のように染料の種類は少なく、染法も微妙であるが故
に複雑で、安定して絶えず所望の色相を得るのが困難で
ある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このような植物天然色
素による染色は、色は薄いものが多く、また何回も繰り
返し染色しても堅牢な染色が達成されにくく、また染着
時間が非常に長かったり、染液が常に均質なものではな
く、品質の安定性も悪く、安定した染液を得る工程は簡
単ではない。
【0007】特に、黄色系統の代表的な色であるミカン
色や橙色を天然の蜜柑、ダイダイ等の柑橘類を用いて、
従来の方法で染色しようとすると、柑橘類の爽やかで明
るい色調を再現するのは不可能であった。
【0008】本発明は上記問題点を解決するもので、鮮
やかに柑橘類本来の明るい爽やかな色調の染色ができ、
しかも、量産性にも優れた染色方法とその染色物を提供
することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、柑橘類の果皮
の乾燥物を微粉砕して得た柑橘類果皮微粉末を用いて繊
維を染色することを特徴とする繊維の染色方法である。
また、柑橘類果皮の乾燥物の微粉末を用いて染色されて
なることを特徴とする繊維染色物である。
【0010】さらには、この染色を、柑橘類果皮微粉末
から染料を抽出した染液にて行うか、または染料を抽出
しながら同時に染色を行う染色方法であり、さらにはま
た、この染色において、柑橘類果皮微粉末が140〜5
0メッシュ通過物である染色方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明で染色の原料として用いる
柑橘類とは、ミカン科に属する果物の総称であり、ミカ
ン類、ダイダイ類、文旦類、キンカン類、ユズ類、レモ
ン類等をいう。具体的には、ミカン科植物のうち温州蜜
柑、紀州みかん、鳴門みかん等とその近縁種、夏みか
ん、ダイダイ、八朔、ポンカン、サンポウカン、ネーブ
ル、オレンジ、文旦、ザボン、グレープフルーツ、キン
カン、ユズ、スダチ、レモン等が好ましく例示される。
特に好ましいのは、温州みかん等のミカン類と夏みか
ん、ダイダイ等のダイダイ類である。
【0012】本発明においては、これら柑橘類の果皮を
乾燥したものを微粉砕して柑橘類果皮微粉末を得て、こ
れを染色剤として染色を行う。柑橘類から中身の果肉を
取った後の果皮は、十分乾燥してから微粉砕処理に供さ
れる。乾燥は天然乾燥でも良いし、熱風乾燥等人為的乾
燥でも構わないが、十分乾燥させて果皮が出来るだけ堅
くなる方が好ましく、水分含有量が30重量%以下、特
に15〜25重量%にするのが、染色効率の良い微粉末
を得る上でも、また保存性の上からも、また染料として
混合沈殿法に使える点からも、好ましい。
【0013】柑橘類の果皮には、黄色系色素化合物のフ
ラボノイドの一つであるヘスペリジンが含まれ、これが
黄色染料として働き染色するが、色素としての機能は弱
いので強化しなくては染料としては使えず、これが今ま
で草木染めにおいてもあまり適用されなかった理由の一
つである。特に、反応性のカルボキシル基やアミノ基等
の反応性基を有さないセルロース繊維である木綿や麻は
染着しにくい。草木染めは、かかる反応性基を有する蛋
白からなる絹繊維を染める歴史でもあって、木綿への適
用は難しい場合が多いが、特に、ヘスペリジンは木綿へ
の染着性はよくなく、今まで十分な鮮明度で染色するこ
とは困難であった。
【0014】本発明は、柑橘類果皮を乾燥し、これを微
粉砕して微粉末とすることにより、染料抽出工程におい
て染料の抽出効果は極めて大きく、極めて良好な染着性
を発現させる。また、染料抽出工程を省略して、抽出し
ながら染着を行う方法でも、十分な染着性能を発揮さす
ことができる。
【0015】果皮微粉末はその粒径が、篩い標準で14
0メッシュから50メッシュとするのが好ましい。特
に、微粉砕後、篩いを通過させて粒径の大きさを均一に
したものが好ましい。篩いメッシュは140メッシュ
(粒径0.104mmに相当)から50メッシュ(0.
295mm)の範囲からのものが好ましく選ばれ、特に
は、120メッシュ(0.124mm)〜80メッシュ
(0.175mm)を通過させたものが好ましい。
【0016】乾燥果皮を微粉砕する方法は、特に限定さ
れるわけではないが、乾式粉砕が好ましく、高速回転粉
砕機、ボールミル、撹拌ミル、ジェット粉砕機等が挙げ
られる。柑橘類乾燥果皮は乾式粉砕して微粉末とされ
る。かかる微粉末を得るのに特に好適な装置は、上臼と
下臼からなり両者を相対的に反転するように回転させ且
つ好ましくは下臼を上下動させながら、上臼と下臼との
間に乾燥果皮を供給して粉砕する形式の粉砕機である。
いわば石臼の原理によって微細な粉末を均一な粒度のも
のを得ることができ、前述の好ましい粒径メッシュのも
のが容易に達成されるので好ましい。この形式の粉砕機
は、有限会社西鉄工所よりミクロパウダーG−007の
製品名で市販されている。
【0017】染色は、この柑橘類果皮微粉末から染料を
抽出した染液に繊維を浸漬して染着させる方法でもよい
し、染料を抽出する工程と染着する工程を同時に行う方
法でもよい。染液を作るには、柑橘類果皮微粉末を水に
入れ沸騰させて20分程度熱煎して煎汁をとる。同じよ
うにこの熱煎工程を数回繰り返してもよい。またこの
際、灰汁を薄めた水か炭酸カルシウムの例えば5グラム
/10リットル程度の水溶液を用いてもよい。このよう
にして作った染液を熱して、繊維を浸漬して10分間程
度煮染する。この染液を得る工程で繊維を浸漬しても染
着される。染色時の温度は常温でも良いが、40〜80
℃程度に温度で行うのが好ましい。温度が低いと染色に
時間が長くかかり過ぎ、80℃を超えると染色操作が難
しくなり、また、後述する柑橘類の匂いが残存し難くな
る。煮染した糸または布等の繊維は、冷えるまで静置
し、水洗乾燥して染色が完了する。煮煎後には必要によ
り媒染をしてもよい。媒染するには、アルミ、スズ、ク
ロム、酸、銅、鉄化合物を数%含有する水の媒染液等が
使用でき、通常30分程度媒染する。媒染後は水洗し、
再度加熱した染液に煮染してもよい。また、特に媒染剤
を用いなくとも染色は定着し、その堅牢度も高い。
【0018】染色を適用する繊維の種類は天然繊維、合
成繊維いずれでもよいが、好ましくは木綿等のセルロー
ス繊維、絹繊維、羊毛繊維、ポリアミド繊維、特には綿
繊維あるいはその混紡繊維である。繊維の形状は、糸、
織物、編み物、不織布、生地、縫製品等が挙げられる。
【0019】得られる染色物は、天然の柑橘類が有する
固有の爽やかな黄色で染まり、さらには、抗菌効果もあ
り、しかも天然の柑橘類の匂いが持続するので、今まで
にない趣を持つ衣料品としての価値が高い。
【0020】従来の草木染め方式にて柑橘類から染料を
抽出して染液にして染める場合は、柑橘類中で染料と共
にある糖分が失われるので、染めに入る際、別の助剤を
添加しなければ元の本来の色が発現しない。
【0021】一方、本発明の微粉砕方式は、柑橘類果皮
をそのまま乾燥して粉にするので糖分がそのまま存在す
るため、助剤を添加するための余分な工程が不要であ
る。また、色成分が分離しやすいため、出現率も上がり
媒染との結合が合理的で、イオン吸着になり加算法によ
る繊維物の吸着固着のスピードが上がる。
【0022】
【実施例】本発明の具体的な実施例について説明する。
温州みかんの皮を乾燥した乾燥物(水分含有量約20重
量%)約100グラムを回転する上臼と下臼を有する製
粉機ミクロパウダーG−107(有限会社西鉄工所社
製)を用いて約5分運転して微粉砕して、白色の細かい
パウダー状のみかん果皮微粉末を得た。このものを10
0メッシュのフィルターを通して粒度の揃った微粉末を
得た。
【0023】上記微粉末100グラムを500ミリリッ
トルの水に入れ沸騰させて20分間熱煎して染液を得
た。これを冷却して温度70℃に保ちながら木綿布を1
0分間浸漬した。冷やして水洗して染色物を得た。
【0024】染色物の染色堅牢度の測定結果は以下の通
りで、優れた堅牢度を示した。特に洗濯堅牢度は以下の
通り5級の最高ランクのものが多数であった。 耐光堅牢度(JIS L0842カーボンアーク灯光) 3級 洗濯堅牢度(JIS L0844) 変退色 4〜5級、汚染 4〜5級 汗堅牢度(JIS L0848) 酸・アルカリ/変退色・汚染とも 全て 4〜5級 摩擦堅牢度(JIS L0849) 乾式 5級 湿式 4〜5 級 ドライクリーニング堅牢度(JIS L0860) 変退色 5級、汚染 5級 水堅牢度(JIS L0860) 変退色 5級、汚染 4〜 5級
【0025】また、黄色ブドウ状球菌(スタフィロコッ
カス オーレウスATCC6538P)を用い、原品
と、JIS L0217による10回の洗濯後の生菌数
の比較による抗菌性の試験結果は、静菌活性を十分有し
ていた。またさらに、対光堅牢度測定に供した後も、染
色物からは温州みかん固有の匂いがした。
【0026】
【発明の効果】本発明の微粉砕物による染色は、今まで
十分な染色が達成されなかった柑橘類による染色は容易
に可能とし、その染色堅牢度も十分なものである。また
柑橘類の匂いも保持し、さらには、抗菌効果と防臭効果
も有するので、新規な衣料品として高い価値を有するも
のである。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】柑橘類の果皮の乾燥物を微粉砕して得た柑
    橘類果皮微粉末を用いて繊維を染色することを特徴とす
    る繊維の染色方法。
  2. 【請求項2】染色を柑橘類果皮微粉末から染料を抽出し
    た染液にて行うか、または染料を抽出しながら同時に染
    色を行うことを特徴とする請求項1記載の繊維の染色方
    法。
  3. 【請求項3】柑橘類果皮微粉末が140〜50メッシュ
    通過物である請求項1または2のいずれかに記載の繊維
    の染色方法。
  4. 【請求項4】柑橘類果皮の乾燥物の微粉末を用いて染色
    されてなることを特徴とする繊維染色物。
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