JP2002337026A - 放電加工装置および放電加工方法 - Google Patents

放電加工装置および放電加工方法

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JP2002337026A JP2001141050A JP2001141050A JP2002337026A JP 2002337026 A JP2002337026 A JP 2002337026A JP 2001141050 A JP2001141050 A JP 2001141050A JP 2001141050 A JP2001141050 A JP 2001141050A JP 2002337026 A JP2002337026 A JP 2002337026A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 放電加工で微細加工を行う際の加工精度およ
び加工速度の向上を図る。 【解決手段】 放電加工装置は、絶縁性の加工液10
と、加工液を蓄える加工槽11と、加工槽の加工液中で
加工対象物13に放電加工を行う移動可能な加工電極1
5と、加工電極の近傍に接近させて付近の加工液を振動
させ波動を生じさせる超音波振動子16を備える。絶縁
性の加工液を蓄える加工槽に加工対象物を配置し、加工
対象物に加工電極15を接近させる。加工電極により放
電加工を行う際に発生する加工屑を加工対象物の加工部
位と電極の間から除去するように、超音波振動子によっ
て加工部位の加工液に超音波振動を与え流動を発生させ
る。加工液に波動を生じさせることで、加工電極への加
工屑の付着を防止すると共に、加工電極の周囲に浮遊す
る加工屑を波動で排出する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、放電加工装置およ
び放電加工方法に関し、特にスラッジの除去を行う放電
加工装置および放電加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、放電現象を利用して加工対象物を
加工する放電加工が知られている。放電加工は、絶縁破
壊の際に生じる電気火花(スパーク)によって金属から
導電性物質を除去する方法である。この方法を利用した
放電加工装置は、放電を行う加工電極の形状に応じた加
工が可能となるため、一般の機械加工が困難な材質や複
雑な形状の加工に使用されている。
【0003】図1に基づいて放電加工の原理を説明す
る。放電加工は、工具となる加工電極15と加工対象物
13との間に電荷を付加して放電させ、放電による熱的
作用(蒸発、溶融)と力学的作用(放電衝撃圧力)によ
って、除去加工により形状を創成する方法である。通常
は、加工電極15と加工対象物13とを極めて小さい間
隙で対向させ、この間隙に絶縁性の加工液10を介在さ
せて、短時間のパルス性アーク放電を繰り返すことによ
って除去加工を行う。加工電極15と加工対象物13が
離間しすぎると放電が開始されず、逆に加工電極15と
加工対象物13が接触すると電流が流れるだけで放電が
生じない。加工電極15と加工対象物13との隙間はサ
ーボ機構により制御される。
【0004】放電加工の利点としては、焼入れ鋼や超硬
合金などの高硬度、強靱な金属材料が容易に加工できる
こと、複雑な形状の加工が容易であること、加工精度が
高いこと、加工時に働く力が小さいこと、自動化が容易
で経済的であることなどが挙げられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、放電加
工においては加工の際に生じる加工屑(スラッジ)が加
工対象物の加工精度に対して悪影響を起こしてしまうと
いう問題があった。加工中に発生するスラッジが浮遊し
て電極と加工対象物の間に位置すると、スラッジと電極
の間で二次放電が生じるため、放電が一部に偏在してし
まい所望の形状に加工することができない。また、この
現象が更に進むと異常放電が発生してしまうこともあ
る。このため、加工対象物の加工面粗度が劣化したり、
加工速度が低下してしまうという問題点があった。した
がって、放電加工においては電極と加工対象物との間の
スラッジを確実に除去することが重要となる。このた
め、従来は加工電極と加工対象物の間の放電加工微小隙
間部分に加工液の噴流を供給したり、あるいは加工電極
の主軸のジャンプ機能、揺動機能、または加工台の揺動
機能などを併用して、発生したスラッジを排出してい
た。
【0006】しかしながら、加工が微細になるに従って
加工間隙が小さくなり、上記の方法では流動の効果が期
待できなくなるため、スラッジ排出が困難となる。この
ため、上記の方法で対応できる穿孔加工は、アスペクト
比の小さな比較的単純な形状の加工に限定されていた。
【0007】また一方でスラッジを除去する技術とし
て、例えば特開平5−69238号公報に記載されるよ
うに、超音波振動を利用して加工液10を揺動させ、波
動によってスラッジを除去する方法が知られている。こ
の公報に記載される方法では、図2および図3に示すよ
うに、加工対象物13を浸漬するための加工液10の加
工槽11内に超音波振動子16を配設している。この超
音波振動子16によって加工液10に振動を与え、加工
電極15と加工対象物13間のスラッジ排出作用によっ
て加工を行う。これによって、加工面へのスラッジの付
着や加工電極15と加工対象物13間へのスラッジの滞
留によって放電の偏在や異常放電の発生を防止するもの
である。
【0008】しかしながら、この方法でも加工液10の
波動が不十分であり、加工対象物13によってはスラッ
ジの除去が十分でないことがある。特に、加工形状が微
小径の深穴加工や細深溝加工といったアスペクト比の高
い加工においては、スラッジの除去がより困難となる。
アスペクト比の高い微小寸法、微細形状の細穴加工やス
リット加工の場合は、細穴や深溝にスラッジが溜まりや
すくなる。しかしこのような凹部によって囲まれた部分
には、上記の方法では加工液10の振動が十分に伝わら
ないため、加工液10が澱んでしまう傾向にある。この
ため、特に加工が進むにつれて電極付近のスラッジを完
全に除去することが困難となる。
【0009】このように、従来の方法では加工液を全体
的に揺動させる構成のため、波動が真に必要な部位であ
る電極近傍の加工液にまで十分な波動のエネルギーが伝
達できないという欠点があった。スラッジの排出が十分
でないと、加工速度の低下や加工対象物の形状不良、加
工面粗さの品質低下などの問題を引き起こす。したがっ
て、これらの方法は加工形状が比較的単純な一般加工に
は利用できたとしても、微細な形状の加工には利用でき
なかった。
【0010】本発明は、この問題を解決するために開発
されたものである。本発明の主な目的は、微細な形状の
放電加工にも対処できる十分なスラッジ除去能力を備え
る放電加工装置および放電加工方法を提供するものであ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を実現するため
に、本発明の請求項1に記載される放電加工装置は、絶
縁性の加工液を蓄える加工槽と、前記加工槽の加工液中
で加工対象物に放電加工を行う移動可能な加工電極と、
前記加工電極の近傍に接近させて付近の前記加工液を振
動させ波動を生じさせる超音波振動子と、前記加工電極
と前記超音波振動子を制御する制御部とを備えることを
特徴とする。
【0012】また、本発明の請求項2に記載される放電
加工装置は、加工対象物に放電加工を行う移動可能な加
工電極と、前記加工電極の近傍に接近させて、加工部位
に超音波加振した加工液を供給する超音波振動子と、前
記加工電極と前記超音波振動子を制御する制御部とを備
えることを特徴とする。
【0013】さらに、本発明の請求項3に記載される放
電加工装置は、前記請求項1または2に記載される特徴
に加えて、前記加工電極が長手方向に平行な回転軸を中
心に回転可能であることを特徴とする。
【0014】この回転運動は、同一方向への回転、およ
び逆転、一定の角速度での回転、または角速度を変化さ
せる回転、さらに所定の角度での部分的な回転の繰り返
しを含む。
【0015】さらにまた、本発明の請求項4に記載され
る放電加工方法は、絶縁性の加工液を蓄える加工槽に加
工対象物を配置する段階と、加工対象物に加工電極を接
近させる段階と、前記加工電極により放電させ、溶融に
より加工対象物を溶融する段階と、放電加工により発生
する加工屑を前記加工対象物の加工部位と電極の間から
除去するように、放電加工の行われる部位に接近させた
超音波振動子によって、加工部位の加工液に超音波振動
を与え流動を発生させる段階とを有することを特徴とす
る。
【0016】本発明の放電加工装置および放電加工方法
は、振動子を用いて加工液に局部的な流動を生じさせ
て、電極の周囲のスラッジを除去するものである。加工
液全体を揺動するものでないため、除去する必要のある
スラッジのみを効率的に除去して加工スピードや生産性
を向上することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態
は、本発明の技術思想を具体化するための放電加工装置
および放電加工方法を例示するものであって、本発明は
放電加工装置および放電加工方法を以下のものに特定し
ない。
【0018】さらに、この明細書は、特許請求の範囲を
理解し易いように、実施の形態に示される部材に対応す
る番号を「課題を解決するための手段の欄」に示される
部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される
部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してな
い。また各図面が示す部材の大きさや位置関係などは、
説明を明確にするため誇張していることがある。 [実施例1]
【0019】図4に、本発明の実施例に係る放電加工装
置の概略を示す。この図に示す放電加工装置は、絶縁性
の加工液10を蓄える加工槽11と、加工槽11中で加
工対象物13を支持する加工台12と、加工対象物13
に放電加工を行う加工電極15と、加工電極15を駆動
する主軸14と、超音波振動子16と、これらを制御す
る制御部18を備える。本実施例では、型彫りタイプの
微細放電加工を行っている。
【0020】加工台12は、上面に加工対象を載置す
る。この実施例では、加工台12を揺動していないが、
加工台12を揺動する機構を付加して、加工液10の波
動を生じさせても良い。
【0021】制御部18は、主軸14と超音波振動子1
6と加工台12に接続されており、これらを制御する。
制御部18はマイクロコンピュータやIC、CPUなど
で構成され、単一の制御部18でこれらを連動させて動
作させる。ただ、複数の制御部を各部材に設けて、連動
させて制御することもできる。
【0022】加工電極15は、型彫り放電加工を行うた
めに適切な形状のものを使用する。加工電極15は主軸
14の端部に連結されて、主軸14によって駆動され
る。主軸14は、加工電極15を上下に移動させ、回転
させる。スラッジを排除するために加工電極15を上方
に引き上げ、あるいは上下方向に往復運動させる動作
は、一般にジャンプ動作と呼ばれる。主軸14は加工電
極15の送り出しを行うためにサーボ機構を使用してい
る。
【0023】また主軸14によって加工電極15を回転
させる運動を単独もしくは併用することで、さらにスラ
ッジの排除、撹拌効果を高める。この回転運動は、同一
方向に回転させるのみに限られず、一定周期での反転も
加えることができる。さらに、角速度を状況に応じて変
化させてもよい。例えばジャンプ運動が頻発する場合に
は、反転周期を短くしたり角速度を上げるなどの制御を
加える。さらにまた、所定の角度で反転させて往復運動
させてもよい。
【0024】加工電極15と加工対象物13との隙間は
制御部18が主軸14の送りを調整して制御する。加工
電極15と加工対象物13との隙間は、放電が最適に発
生するよう調整される。型彫り放電加工においては、一
般に数μm〜十数μm程度に制御される。例えば5〜1
0μmに保たれる。
【0025】この構成の放電加工装置は、加工台12に
加工対象物13を載置して加工液10中に含浸させ、制
御部18が主軸14を操作して加工電極15を加工対象
物13に対して送出する。加工電極15は、図示しない
電源から電力の供給を受けて放電を発生させて、加工対
象物13を放電加工する。一方、放電加工で発生する加
工屑であるスラッジを加工部位から排除すべく、制御部
18は超音波振動子16を駆動して加工部位の加工液1
0を加振して波動を生じさせる。
【0026】放電加工は、加工電極15に高電圧を印加
することによって絶縁性の加工液10に絶縁破壊を生じ
させ、この部位に電気放電を発生させるものである。こ
の際に生じるスパークによって加工対象物13を溶融
し、電極の形状に応じた加工を行う。放電加工の際に
は、加工屑であるスラッジやタール、ガスなどが発生す
る。これらは、加工電極15と加工対象物13との隙間
で発生し、この付近で滞留して加工電極15や加工対象
物13に付着する。これらは放電加工に悪影響を及ぼす
ため、通常は加工液10を噴流させて流したり、加工電
極15を上下方向に運動させるジャンプ動作によって排
出させていた。
【0027】しかしながら、微小寸法形状の加工電極1
5による微細加工においては、微弱電気条件で加工する
ため、スラッジの大きさも小さくなる。さらに加工電極
15と加工対象物13間の間隙も小さいので、上記の方
法ではスラッジやタールの排出が困難になると予想され
る。そこで、本実施例では確実に加工電極15と加工対
象物13間に生じたスラッジなどの付着、滞留を防止す
るために、超音波で加振した加工液10を加工電極15
と加工対象物13間に送出すると共に、加工電極15を
回転させる回転電極を採用した。
【0028】加工部位近辺の加工液10は、超音波で加
振されて波動を生じる。超音波を加振する超音波振動子
16は、振動子16aと超音波振動ホーン16bからな
り、発振器17に接続されて発振を生じさせる。回転電
極と加工対象物13の隙間で加工液10を適切に加振で
きるように、超音波振動ホーン16bは隙間近傍で上方
から側面にかけて位置するよう配設され、好ましくは斜
め上方から超音波振動ホーン16bの先端を加工部位に
対して突出させる。これによって、超音波振動ホーン1
6b先端から発せられる超音波振動が所望の部位に伝わ
りやすくする。また図示しないが、放電加工がスムーズ
に行われているかどうかをモニターできるようセンサー
を設けて、センサーからのフィードバックを受けて制御
部18が超音波振動子16を制御することもできる。さ
らに超音波振動子16は、上記構成の他、あるいは上記
構成に追加して加工電極15の主軸14に組み込んだ
り、加工対象物13を載置する加工台12に組み込むこ
とも可能である。
【0029】放電加工の放電回数は、一般に1秒間あた
り数十〜数百万回である。本実施例で対象とする超音波
振動の周波数も、十数kHzからメガヘルツの領域の、
ほぼ同レベルの周波数である。
【0030】超音波振動を加工液10に印加すると、液
中においてキャビテーションが発生する。キャビテーシ
ョンによって、放電加工の加工対象物13の表面や加工
電極15の表面、電極と加工対象物13との間の狭い隙
間に滞留するスラッジに対し、局所的に衝撃的な撹拌作
用が働く。その結果、加工によって生じるスラッジやそ
の他の燃焼生成物が加工対象物13の表面や加工電極1
5に付着することが防止され、さらにスラッジが隙間か
ら排出されるのを容易にする。このように、超音波振動
による疎密の繰り返しの波動エネルギーが加工液10を
流動させることに加えて、キャビテーションの効果によ
ってさらにスラッジの付着防止、スムーズな排出が促進
される。
【0031】またこの実施例では、加工電極15を回転
させている。加工電極15に回転を与えることによっ
て、加工液10と加工電極15および加工対象物13と
の間に粘性摩擦による相対流動が起こる。相対流動と、
超音波により発生する上記のキャビテーション作用との
相乗効果により、電極表面や加工対象物13表面のクリ
ーニング効果が得られて、スラッジの滞留が防止され
る。
【0032】実施例に用いた加工条件は以下の通りであ
る。放電加工装置は三菱電機製ED−SCAN8E、加
工液10としてEDF−K、加工対象として板厚0.5
mmおよび1mmの炭素工具鋼(SK5)を使用し、電
極には直径50μm、長さ1mmのAgWを使用して、
これを1000rpmで回転させる。使用した放電加工
装置にはワイヤ放電研削加工(WEDG)が装備されて
おり、これにより無垢電極を所要の電極径(φ50μ
m)に仕上げた。放電加工はRC回路で微弱電気条件に
て行った。使用したコンデンサの容量は510pF、無
負荷電圧は60Vとした。さらに超音波振動子16は、
本多電子製の超音波ウェルダーを使用し、その発信周波
数は28kHz、出力は150Wである。この放電加工
装置を使用して、超音波振動の有無、超音波振動子16
と加工部位との位置関係による加工能率の変化について
測定した。
【0033】図6、図7に超音波振動の有無における加
工時間と電極送り量との関係を示す。各図のプロット
は、各時間における加工深さの最大値を、電極送り量と
して示している。加工は下方向に進むため、変位はマイ
ナスで表示した。加工速度の勾配が緩くなってきた場合
には、加工電極15の細かなジャンプ動作が生じてい
た。また加工が不安定な状態では、大きなジャンプ動作
も確認された。
【0034】図6は、板厚0.5mmの加工対象物13
に対しての加工結果を示すグラフである。図中において
Lとは、図5に示すように、加工電極15と加工対象と
の間隙部から超音波振動子16の先端までの距離を示
す。図6はLを1mm、3mm、5mmと変化させた場
合の加工能率の変化を示している。
【0035】図6に示すように、超音波振動を使用しな
い通常加工では、電極送り量0.4mmを超えた付近か
ら加工状態が不安定となり、大きなジャンプ動作が頻繁
に行われる状態となって、これ以降加工の進行は見られ
なかった。これに対し、超音波振動を加えた加工では、
特に加工開始直後に大幅な速度アップが確認された。加
工速度が鈍くなる−0.3〜0.5mm付近では、細か
なジャンプ動作が確認されたが、比較的安定した加工が
行われた。
【0036】また、加工部位から超音波振動子16まで
の距離を変化させた結果、遠ざけるにつれ加工速度は減
少することが確認された。さらに、超音波振動子16の
角度を変化させて同様に調査を行ったが、顕著な差は見
られなかった。よって、超音波振動子16は加工部位に
近づけるほど加工能率を向上させることができるといえ
る。
【0037】次に、板厚1.0mmの加工対象物13に
対して、最も効果の顕著であったL=1mmの条件下で
超音波振動の有無による加工能率を調査した。この結果
を図7に示す。
【0038】通常加工では図6と同様、加工深さ0.4
mm程度で加工が進行しなかった。しかし、超音波振動
を加えた加工では、加工深さ0.6mm程度まで非常に
大きな加工速度の向上が見られた。本実施例では加工時
間15分で、電極送り量として0.83mmが得られ
た。また、電極消耗は0.088mmであったため、実
加工深さは0.742mm(アスペクト比約15)の加
工である。
【0039】図8は、超音波振動を付加した放電加工に
おいて、任意の設定加工深さに対する電極消耗量を示す
グラフである。加工深さが深くなるに従い、電極消耗量
が増加している。特に加工深さ0.8mmの場合におい
て、電極消耗量が多い。これは図7と対比させてみる
と、加工速度が緩やかになってくる時期に対応する。つ
まり、加工速度が速い状態では電極消耗量も少ないと考
えられる。
【0040】図9は、超音波振動の有無、および加工部
位から超音波振動子16までの距離を変化させて加工を
行った加工穴を、加工入り口側、すなわち加工対象物1
3の上面からとらえたSEM写真による拡大映像で示
す。図9において上段が通常加工、下段が超音波振動を
付加した放電加工である。また、下段右からL=1、
3、5mmの順に加工した。
【0041】電極に1000rpmの回転を加えている
ため、極めて真円度は良いと思われる。また、穴径もほ
とんど差はなく、65μm前後であった。直径50μm
の電極を用いているため、側面の放電ギャップ量は7μ
m程度である。
【0042】また、図10、11は、通常の放電加工に
よる加工穴近傍の拡大像を、図12、13は超音波振動
を付加した放電加工による加工穴近傍の拡大像をそれぞ
れ示す。図11、13は加工穴側面の拡大映像を示して
いる。
【0043】図10より、通常の放電加工においては加
工穴入り口付近に縞模様が見られるが、払拭すると消失
したため加工屑が堆積したものと思われる。また、図1
1より加工側面を観察すると、超音波振動を付加した放
電加工の方が加工面粗さが幾分粗いように思われる。
【0044】以上のように超音波振動を加工液10に作
用させて放電加工を行うことによって、顕著な加工速度
の向上が見られた。この理由として、超音波振動を加工
液10に作用させることによって加工屑の排出効果が促
進されたものと考えられる。
【0045】通常の放電加工においては、加工中、加工
部周辺に加工屑の堆積が確認できるが、超音波振動を付
加した放電加工では、液中にキャビテーションによる無
数の気泡が発生するため、図12に示すように加工屑の
堆積が見られない。また、加工液10の超音波振動によ
る波動エネルギーが加工屑に流動性を与えるため、加工
屑の滞留の防止とともに、電極や被加工物への付着を防
止する作用として働いているものと考えられる。
【0046】また、図11および図13の加工穴側面の
SEM像によると、通常の加工の方が加工面が若干滑ら
かであった。これは加工屑を介して電極側面とワークと
の間での二次放電により、加工面が均されたのではない
かと思われる。
【0047】以上の超音波振動を付加した放電加工を用
いて実際に加工を行った結果を、SEM写真で図14〜
16に示す。図14は入り口側である加工対象物13の
上面を、図15は出口側である加工対象物13の下面
を、図16は放電加工後の電極の側面図を、それぞれ示
している。この例では、加工対象物13として板厚0.
2mmの炭素工具鋼(SK5)を使用した。また電極は
φ50μm、長さ1mmのAgWを用いて、加工対象物
13に0.1mmピッチで貫通穴あけ加工を行った。図
において、右上から加工を開始し、48穴まで貫通加工
が可能であった。また、総加工数56穴に要した時間は
49分であり、1穴あたり52秒である。
【0048】以上の結果から、微細放電加工において、
加工液10に超音波振動を付加して加工を行う場合は、
以下のような効果が得られる。すなわち、加工液10に
超音波振動を付加することによって極めて顕著な加工速
度の向上が得られる。また、超音波振動の効果が十分作
用している状態では、電極の消耗量も少ない。さらに、
電極径0.1mm以下の微細放電加工において、アスペ
クト比15の加工が実現される。 [実施例2]
【0049】また、本発明の他の実施例として、加工液
10に含浸させて放電加工を行うのでなく、超音波加振
した加工液10を加工部位に供給する方法を、図17に
基づいて説明する。
【0050】この図に示す放電加工装置は、図4に示す
ものとほぼ同様のものであり、加工槽11と、加工槽1
1中で加工対象物13を支持する加工台12と、加工対
象物13に放電加工を行う加工電極15と、加工電極1
5を駆動する主軸14と、超音波振動子16と、これら
を制御する制御部18を備えている。
【0051】図17の装置では、図4と異なり、加工槽
11に予め加工液10を蓄えておくのでなく、放電加工
の際に加工液10を放出する方式を採用している。この
ため、超音波振動子16は加振した加工液10を加工部
位に放出できる機構を備えている。加工部位に加工液1
0を的確に供給できるよう、超音波振動子16は回転電
極と加工対象物13の隙間に指向して配置される。加工
液10の供給口が加工部位に対向するように、加工電極
15と加工対象物13との隙間近傍で上方から側面にか
けて位置するよう配設され、好ましくは斜め上方から超
音波振動ホーン16bを加工部位に対して突出させる。
また図示しないが、放電加工がスムーズに行われている
かどうかをモニターできるようセンサーを設けて、セン
サーからのフィードバックを受けて制御部18が超音波
振動子16を制御することもできる。
【0052】この方式は既に加振された加工液10を噴
出するため、加工液10を無駄なく利用でき、また加工
液10の供給と超音波による加振を同時に行えるため、
これらの機構を別々に設ける必要がなく装置をコンパク
トにできるメリットがある。
【0053】なお、以上の実施例では微細加工に利用す
る場合を説明したが、本発明の装置および方法をアスペ
クト比の低い一般加工にも利用できることはいうまでも
ない。
【0054】
【発明の効果】本発明の放電加工装置および放電加工方
法は、微細放電加工を精度良くしかも高速に行うことが
できる。それは、本発明の放電加工装置および放電加工
方法が、高周波振動を利用することによりスラッジなど
の加工屑を確実に除去しているからである。放電加工で
発生するスラッジは、電極に付着して加工精度を劣化さ
せ、さらにスラッジ除去のために放電加工を一旦停止し
て電極のジャンプ動作を行うために加工が妨げられ、加
工時間が長くなるなどの弊害をもたらす。本発明はこれ
に対し、高周波振動でスラッジが発生する部位で加工液
の波動を生じさせ、スラッジの加工電極への付着を防止
すると共にこれを除去する。高周波振動は必要な部位の
みに印加されるため、効果的にスラッジを除去すること
ができる。また超音波振動により気泡が生じて流体のキ
ャビテーションの効果が得られるため、スラッジの攪拌
が促進されて上記の効果が高められる。
【0055】さらにまた加工電極に回転電極を利用する
ことにより、電極に回転運動を加えて、上記のキャビテ
ーションが相乗効果によりさらに促進され、より確実に
加工電極への付着の防止および除去を得ることができ
る。
【0056】このように本発明は、スラッジの除去を確
実に行って加工精度および加工速度の向上という優れた
効果を得ることができ、従来スラッジの除去が困難であ
った高アスペクト比の複雑な加工を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の放電加工装置を示す概略図
【図2】従来の他の放電加工装置を示す斜視図
【図3】図2の放電加工装置の概略を示すブロック図
【図4】本発明の一実施例に係る放電加工装置を示す概
略図
【図5】図4の放電加工装置の要部を示す概略図
【図6】板厚0.5mmでの加工時間と電極送り量との
関係を示すグラフ
【図7】板厚1.0mmでの加工時間と電極送り量との
関係を示すグラフ
【図8】超音波振動を付加した放電加工における加工深
さと電極消耗量の関係を示すグラフ
【図9】超音波振動の条件を変化させて得られた加工穴
を加工対象物の上面から見た拡大像を示すSEM写真の
イメージ
【図10】通常の放電加工による加工穴近傍の拡大像を
示すSEM写真のイメージ
【図11】通常の放電加工による加工穴側面の拡大像を
示すSEM写真のイメージ
【図12】超音波振動を付加した放電加工による加工穴
近傍の拡大像を示すSEM写真のイメージ
【図13】超音波振動を付加した放電加工による加工穴
側面の拡大像を示すSEM写真のイメージ
【図14】超音波振動を付加した放電加工による加工例
を加工対象物の上面から見た拡大像を示すSEM写真の
イメージ
【図15】超音波振動を付加した放電加工による加工例
を加工対象物の下面から見た拡大像を示すSEM写真の
イメージ
【図16】超音波振動を付加した放電加工後の電極を側
面から見た拡大像を示すSEM写真のイメージ図
【図17】本発明の他の実施例に係る放電加工装置を示
す概略図
【符号の説明】
10・・・加工液 11・・・加工槽 12・・・加工台 13・・・加工対象物 14・・・主軸 15・・・加工電極 16・・・超音波振動子 16a・・・振動子 16b・・・超音波振動ホーン 17・・・発振器 18・・・制御部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小川 仁 徳島県徳島市雑賀町西開11−2 徳島県立 工業技術センター内 Fターム(参考) 3C059 AA01 AB01 EC09

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 放電加工装置において、 絶縁性の加工液を蓄える加工槽と、 前記加工槽の加工液中で加工対象物に放電加工を行う移
    動可能な加工電極と、 前記加工電極の近傍に接近させて付近の前記加工液を振
    動させ波動を生じさせる超音波振動子と、 前記加工電極と前記超音波振動子を制御する制御部と、
    を備えることを特徴とする放電加工装置。
  2. 【請求項2】 放電加工装置において、 加工対象物に放電加工を行う移動可能な加工電極と、 前記加工電極の近傍に接近させて、加工部位に超音波加
    振した加工液を供給する超音波振動子と、 前記加工電極と前記超音波振動子を制御する制御部と、
    を備えることを特徴とする放電加工装置。
  3. 【請求項3】 前記加工電極が長手方向に平行な回転軸
    を中心に回転可能であることを特徴とする請求項1また
    は2記載の放電加工装置。
  4. 【請求項4】 放電加工方法において、 絶縁性の加工液を蓄える加工槽に加工対象物を配置する
    段階と、 加工対象物に加工電極を接近させる段階と、 前記加工電極により放電させ、溶融により加工対象物を
    溶融する段階と、 放電加工により発生する加工屑を前記加工対象物の加工
    部位と電極の間から除去するように、放電加工の行われ
    る部位に接近させた超音波振動子によって、加工部位の
    加工液に超音波振動を与え流動を発生させる段階と、を
    有することを特徴とする放電加工方法。
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