JP2002331466A - レジンボンドワイヤソーおよびその製造方法 - Google Patents
レジンボンドワイヤソーおよびその製造方法Info
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Abstract
の接着力を高めて、切断加工中における砥粒の脱落を防
止する。 【解決手段】 ピアノ線1aにCu−Zn合金をメッキ
した芯線のメッキ層1bに螺旋状の多条の溝を形成し、
この溝に砥粒2bの一部を埋設させている。これによ
り、切断加工時のボンド層2aの磨耗や振動などによっ
ても砥粒2bが脱落しないようになる。また、大きい砥
粒が螺旋状に配設されていることから、切粉の排出が良
好となる。さらに、メッキ層1bの表面積が大きくなっ
ていることからメッキ層1bに対するボンド層2aの付
着力が増大し、ボンド層2aの剥離が防止される。
Description
る固定砥粒タイプのワイヤソーに係り、特に切断加工中
における砥粒の脱落防止機能を高めたレジンボンドワイ
ヤソーおよびその製造方法に関する。
配線パターンの微細化による性能向上が図られてきた
が、配線パターンの微細化だけでは多機能化に追いつけ
ず、近来ではチップ自身を大型化することで対応してい
る。このようなチップの大型化に伴い、歩留り向上の点
からシリコンウエハも大口径のものが使用されるように
なり、その前工程であるシリコンインゴットからの切り
出し法も従来の内周刃切断法から大口径化に対応しやす
いワイヤソーカット法へ移行されつつある。
われていたものの一つとして、スラリーを用いた遊離砥
粒方式がある。この遊離砥粒方式は、ピアノ線や超高強
度合金線をシリコンインゴットに強く接触させた状態で
走行させ、ピアノ線や超高強度合金線が接触している部
分にWAやGCなどの遊離砥粒を含有した潤滑油を注入
しながら切断するというものである。しかしながら、潤
滑油の飛散による作業環境の劣化やワークの汚染を伴う
ほか、被加工材への砥粒の食い込み深さを一様に保てる
ように制御できないことから切断効率に限界があるとさ
れている。
WAやGCまたはダイヤモンド、CBNなどの砥粒を固
着させたワイヤソーを使用する固定砥粒方式が提案され
た。この固定砥粒方式に用いるワイヤソーとしては、電
着により砥粒を固着させる電着ワイヤソーや樹脂(レジ
ン)を結合剤として砥粒を固着させるレジンボンドワイ
ヤソーが知られている。これらの電着ワイヤソーやレジ
ンボンドワイヤソーでも、遊離砥粒方式と同様に被加工
材に強く接触させながら走行させることで砥粒による切
断が可能である。
るメッキ処理の工程に時間を費やすため、数十〜数百k
mの芯線に砥粒を電着させることが事実上不可能である
という製造上の問題と、破断ねじり強度や曲げ強度が低
いため加工時に断線しやすいという使用上の問題が以前
から指摘されていた。そこで、このような電着ワイヤソ
ーの欠点を改善したものとして、レジンボンドワイヤソ
ーが開発されたという経緯がある。
は、たとえば特開平10−138114号公報に記載さ
れたものがある。この公報に記載のレジンボンドワイヤ
ソーは、高抗張力金属線を芯線として用い、ポリアミド
イミド樹脂を結合剤としてこれに砥粒を分散含有させた
もので芯線を被覆するという構成としたものである。こ
のようなレジンボンドワイヤソーによれば、電着ワイヤ
ソーでは困難であった長距離のワイヤソーを製造するこ
とができる。
を使用してシリコンインゴットなどの切断加工を行う際
に、被加工物との接触による樹脂層の磨耗や振動などに
より砥粒が脱落しやすいという問題がある。この問題に
対して、芯線の表面に細かい凹みを形成し砥粒をこの凹
みに入り込ませて芯線に固着させたワイヤソーが特開平
10−328932号公報にて提案されている。
ラストあるいはショットピーニングなどの機械的処理や
化学研磨あるいは電解研磨などの電気化学的処理によっ
て芯線表面に無数の梨地状の凹みを形成し、砥粒と結合
剤の混合物を芯線の表面に塗布し、これをダイスで絞っ
て砥粒を凹みに入り込ませて外径を均一化し、焼き付け
により砥粒と結合剤を芯線に固着する方法によって製造
されるものである。このようなワイヤソーとすることに
より、切断加工時における被加工物の反作用力が砥粒に
作用してもこの反作用力に充分耐えることができるとさ
れている。
においては、凹み形成により芯線の表面積が増大するこ
とによる芯線と樹脂層の接着力増加は期待できるもの
の、砥粒はたんに凹みに入り込んでいるだけであるの
で、砥粒そのもの脱落を防止する効果はあまり期待でき
ない。また、機械的処理による凹みの形成では、芯線に
損傷を与え、切断加工中にワイヤソーが断線するおそれ
がある。電気化学的処理では芯線に損傷を与えることは
少ないが、砥粒の脱落を防止できるほどの十分な凹みを
形成することは難しい。
表面に砥石の下地層に相当する接着用の特殊層を形成す
る、もしくはカップリング処理など表面改質剤を使用し
て芯線と樹脂層との間に接着層を挟み込む方法も考えら
れる。しかしこの方法でも、芯線材質と樹脂の材質の相
性によりその効果がまちまちで、かつ効果自体もわずか
である。
ワイヤソーにおいて、芯線に対する砥粒の接着力を高め
て、切断加工中における砥粒の脱落を防止することにあ
る。
樹脂を結合剤として砥粒を固着させたレジンボンドワイ
ヤソーであって、芯線に施した軟質金属メッキ層に螺旋
状の多条の溝が形成され、前記多条の溝に砥粒の一部が
埋設されたワイヤソーである。
高抗張力金属線が使用されるが、本発明においては、高
抗張力金属の表面に銅や銅合金などの軟質金属によるメ
ッキを施し、この軟質金属メッキ層に螺旋状の多条の溝
を形成する。螺旋状の多条の溝が形成された表面に液状
樹脂と砥粒の混合物を被覆した後、所定の内径のダイス
を通過させて引き抜くことにより、液状樹脂と砥粒の混
合物中の粒度の大きい砥粒の一部が螺旋状の多条の溝に
はまり込み、この後樹脂層を硬化させることによって、
多条の溝に沿って粒度の大きい砥粒が螺旋状に配設され
たワイヤソーとなる。
りやすい砥粒層中の比較的大きい砥粒である。本発明の
ワイヤソーにおいては、大きい砥粒が芯線の軟質金属メ
ッキ層に形成した多条の溝に一部がはまり込んだかたち
となり、切断加工時の樹脂層の磨耗や振動などによって
も砥粒が脱落しないようになる。また、大きい砥粒が螺
旋状に配設されていることから、切粉の排出が良好とな
る。
材である高抗張力金属線の線径の1/40〜1/10の
範囲とするのが望ましい。軟質金属メッキ層の厚さが上
記範囲より小さいと砥粒の埋設深さが小さすぎて脱落防
止効果が期待できない。また軟質金属メッキ層の厚さが
上記範囲より大きいと外径寸法を従来品と同じくした場
合、金属メッキされた芯線径に対し芯材の高抗張力金属
線が細くなりすぎ、芯線に必要な強度を下回る結果とな
るので、前記範囲が好適である。
層の厚さの2/5〜4/5の深さの多条の溝を形成し、
この溝深さの4倍以下の粒径の砥粒を用いる。溝の深さ
が軟質金属メッキ層の厚さの2/5より小さいと砥粒の
埋設深さが小さすぎて脱落防止効果が期待できず、4/
5より大きいと螺旋状の多状の溝を形成する工程におい
て高抗張力金属線に損傷を与えるおそれがあるので、前
記範囲が好適である。この軟質金属メッキ層のみに螺旋
状の多条の溝を形成して砥粒の一部を埋設することで、
芯材である高抗張力金属線には何ら損傷を与えることが
なく、ワイヤソーの断線のおそれもない。
張力金属線に軟質金属メッキを施した芯線を一定の速度
で送りながら、軟質金属メッキ層に螺旋状の多条の溝を
形成する工程と、前記螺旋状の多条の溝を形成した芯線
を砥粒と液状樹脂の混合物を収容した容器を通過させて
芯線に砥粒と液状樹脂の混合物を被覆する工程と、前記
混合物を被覆した状態の芯線を所定の内径のダイスを通
過させる工程と、前記ダイスを通過した後の液状樹脂を
硬化させて芯線に砥粒層を固着させる工程とを含む製造
方法により製造することができる。
の多条の溝を形成する方法として、一定速度で送られる
芯線を研削工具で挟み付けて芯線と研削工具とを相対的
に回転させる方法を採用することができる。研削工具と
しては、たとえば、粒度#30−400の砥粒を一定ピ
ッチに並べた砥石、砥粒付き研磨布(または研磨板)、
櫛刃形切削工具などを用いることができる。
ワイヤソー製造工程において線径調節のために用いられ
ているダイスを用いて行うことができる。ダイスの内径
を適宜に選択することにより、ダイス通過時に粒度の大
きい砥粒から順に多条の溝に埋設されることになり、ダ
イス通過後は芯線の長さ方向に一定のピッチで大きい砥
粒が螺旋状に配設されたかたちとなる。
高抗張力金属線に金属メッキを施すことにより形成す
る。メッキ金属としては銅や銅合金以外に金、錫、亜鉛
やその合金などを用いることができる。また、前記液状
樹脂として光硬化型樹脂を用いるのが望ましい。光硬化
型樹脂を用いることにより、液状樹脂の硬化時間を短縮
して生産能率を高めることができる。
ワイヤソーの部分正面図、図2は図1のA−A線矢視に
よる縦断面図である。
層2を固着させたもので、芯線1は、線径200μmの
ピアノ線1aにCu−Zn合金をメッキしたものであ
り、メッキ層1bは厚さ5μmの軟質金属層である。砥
粒層2は、ボンド層2aにより砥粒2bを固着させたも
のである。ボンド層2aは光ラジカル発生剤を添加した
アクリレート樹脂にフィラー材を混合した樹脂ボンドで
あり、砥粒2bは平均粒径が15μmのダイヤモンド砥
粒である。
多条の溝を示す図であり、図4は砥粒層の外観を示す図
である。本実施形態のワイヤソーにおいては、芯線1の
メッキ層1bに螺旋状の多条の溝3を形成し、この溝3
に砥粒2bの一部を埋設させている。多条の溝3は、芯
線1を一定速度で送りながら研削工具13a(図5の
(a)参照)で芯線1を挟み付けた状態で溝形成工具1
3を回転させることにより溝3を形成する。
砥粒2bとともにボンド層2aを被覆した後にダイス1
4a(図5の(c)参照)で被覆ワイヤの外径を調整す
る際に、余分な被覆層の除去とともに行われる。ダイス
14aを通過した後に液状樹脂を硬化させた砥粒層2
は、図4に示すように、粒径の大きい砥粒Dが優先的に
溝3にはまり込み、大きい砥粒Dが多条の螺旋状に配設
された状態になり、その間に小さい砥粒dが配設された
状態になる。これにより、切断加工時のボンド層2aの
磨耗や振動などによっても砥粒2bが脱落しないように
なる。また、大きい砥粒Dが螺旋状に配設されているこ
とから、切粉の排出が良好となる。さらに、メッキ層1
bの表面積が大きくなっていることからメッキ層1bに
対するボンド層2aの付着力が増大し、ボンド層2aの
剥離が防止される。
を示す図で、(a)は全体装置の概略図、(b)は溝形
成工具の概略構成図、(c)は被覆層形成装置の出側に
おける状態を示す図である。製造方法の主要工程は以下
の通りである。リール11から捲き戻した芯線12を一
定の速度で送り出しながら溝形成工具13を通過させて
芯線12の表面に多条の溝3を形成する。溝形成工具1
3は、粒度#270のA系砥粒を一定ピッチに並べた2
枚1組の研削工具13aを回転枠13bの内部に設けた
もので、研削工具13aを図2(b)の矢印B方向に押
し付けて研削工具13aで芯線12を挟み付け、回転枠
13bを図2(a)の矢印C方向に回転させることによ
り、芯線12に一定ピッチの多条の溝3を形成する。
液状樹脂の混合物を収容した容器14bとダイス14a
を組み合わせた被覆層形成装置14を通過させて、芯線
12に砥粒と液状樹脂の混合物の被覆層を形成する。図
2(c)に示すように、被覆層形成装置14内の砥粒と
液状樹脂の混合物を収容した容器14bを通過した後の
芯線表面には、大きい砥粒Dと小さい砥粒dがランダム
に配設されているが、ダイス14aを通過する際に、大
きい砥粒Dが優先的に多条の溝3にはまり込み、大きい
砥粒Dが多条の螺旋状に配設された状態になり、その間
に小さい砥粒dが配設された状態になる。本実施形態の
場合、ダイス14a通過後の仕上がり外径は210μm
±10μmである。
層の厚さが均一化された被覆ワイヤ15を紫外線照射装
置16に送り込み、紫外線を照射して被覆層中の液状樹
脂を硬化させ砥粒層2を形成させてワイヤソー17と
し、リール18に巻き取って製品とする。
に、上記実施形態のワイヤソー(発明品1)と、芯線の
メッキ層厚さを20μm、溝厚さを16μm、砥粒平均
粒径を40μmとして多条の溝に砥粒の一部を埋設させ
たワイヤソー(発明品2)、およびメッキ層表面に溝を
形成しないワイヤソー(従来品)を使用して、以下の試
験条件で切断試験を行った。 切断装置:単線切断装置 ワイヤ速度:平均400m/min ワイヤテンション:19.6N 被加工物:シリコンインゴット
ヤソーの砥粒の脱落状況と所定の加工精度で切り出しが
可能であった総切り出し枚数を示す。
ヤソー1mm長さにおける砥粒脱落個数である。
来品に比して砥粒の脱落が少なく、総切り出し枚数は従
来品の2〜3倍であった。メッキ層厚さの影響は、メッ
キ層厚さが厚いほど砥粒の埋設量が大きくなって砥粒保
持力が高くなるので、砥粒の脱落が少なくなることが確
認された。
キを施した芯線の軟質金属層に螺旋状の多条の溝を形成
し、この多条の溝に砥粒の一部を埋設させることによ
り、砥粒はその一部が軟質金属層表面の溝にはまり込ん
だかたちとなって、切断加工時の樹脂層の磨耗や振動な
どによっても砥粒が脱落しないようになり、ワイヤソー
の長寿命化が図れる。また、大きい砥粒が螺旋状に配設
されていることから、切粉の排出が良好となる。
正面図である。
を示す図である。
で、(a)は全体装置の概略図、(b)は溝形成工具の
概略構成図,(c)は被覆層形成装置の出側における状
態を示す図である。
Claims (6)
- 【請求項1】 芯線の表面に樹脂を結合剤として砥粒を
固着させたレジンボンドワイヤソーであって、芯線に施
した軟質金属メッキ層に螺旋状の多条の溝が形成され、
前記多条の溝に砥粒の一部が埋設されたレジンボンドワ
イヤソー。 - 【請求項2】 前記軟質金属メッキ層の厚さが芯線の芯
材である高抗張力金属線の線径の1/40〜1/10で
あり、前記多条の溝の深さが前記軟質金属メッキ層の厚
さの2/5〜4/5である請求項1記載のレジンボンド
ワイヤソー。 - 【請求項3】 高抗張力金属線に軟質金属メッキを施し
た芯線を一定の速度で送りながら、軟質金属メッキ層に
螺旋状の多条の溝を形成する工程と、前記螺旋状の多条
の溝を形成した芯線を砥粒と液状樹脂の混合物を収容し
た容器を通過させて芯線に砥粒と液状樹脂の混合物を被
覆する工程と、前記混合物を被覆した状態の芯線を所定
の内径のダイスを通過させる工程と、前記ダイスを通過
した後の液状樹脂を硬化させて芯線に砥粒層を固着させ
る工程とを含むことを特徴とするレジンボンドワイヤソ
ーの製造方法。 - 【請求項4】 厚さが前記高抗張力金属線の線径の1/
40〜1/10の軟質金属メッキ層に前記軟質金属メッ
キ層厚さの2/5〜4/5の深さの多条の溝を形成し、
この溝深さの4倍以下の粒径の砥粒を用いる請求項3記
載のレジンボンドワイヤソーの製造方法。 - 【請求項5】 一定速度で送られる芯線を研削工具で挟
み付けて芯線と研削工具とを相対的に回転させることに
より芯線の軟質金属メッキ層に螺旋状の多条の溝を形成
する請求項3記載のレジンボンドワイヤソーの製造方
法。 - 【請求項6】 前記液状樹脂として光硬化型樹脂を用い
る請求項3記載のレジンボンドワイヤソーの製造方法。
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