JP2002329607A - フェライト焼結体及びその製造方法とその成形用顆粒 - Google Patents

フェライト焼結体及びその製造方法とその成形用顆粒

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Hiroshi Harada
浩 原田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明の第一の課題は、金型からの離型性が
良く、スプリングバックによるヒビなどの成形不良がな
く、かつ均質で高密度で高い成形体強度を有するフェラ
イト成形体を焼成してなるフェライト焼結体を提供する
ことである。 【解決手段】 本発明はフェライト原料粉末と、エチレ
ン変性量が4〜10モル%、平均重合度が500〜17
00、平均鹸化度が90.0〜99.5モル%のエチレ
ン変性ポリビニルアルコールとが少なくとも混合され造
粒されたフェライト成形用顆粒の表面の少なくとも一部
が親水性親油性比(HLB)14以下の高級脂肪酸のヘ
キシタンエステルにより被覆されたフェライト成形用顆
粒の型成形体を焼成してなることを特徴とするフェライ
ト焼結体を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フェライト成形用
顆粒を用いて成形、焼成することにより得られるフェラ
イト焼結体とその製造方法とフェライト成形用顆粒にか
かわり、特に低圧でのつぶれ性に優れ、金型からの離型
性が良好で、スプリングバックによるヒビなどの成形不
良がなく、かつ均質で高密度なフェライト成形体が得ら
れるフェライト成形用顆粒、フェライト成形体、及びフ
ェライト焼結体に関する。
【0002】
【従来の技術】フェライトは、電子部品をはじめとして
種々の分野において幅広く用いられている。このフェラ
イトは、フェライト原料となる粉末をバインダーととも
に造粒してフェライト顆粒とし、このフェライト顆粒を
成形して、フェライト成形体とし、このフェライト成形
体を焼成することにより得られる。
【0003】従来、フェライト成形体を製造する方法と
しては、種々の方法が採用されているが、中でも乾式の
加圧成形法が一般的に広く行われている。たとえば、フ
ェライト原料粉末とバインダーと水とによりフェライト
スラリーを調整し、これをスプレードライヤー(噴霧造
粒機)で噴霧乾燥してフェライト成形用顆粒を造粒す
る。またはフェライト原料粉末とバインダー溶液とを攪
拌混合し、乾燥とオシレーティング押し出しを繰り返し
てフェライト成形用顆粒を造粒する。
【0004】このようにして得られたフェライト成形用
顆粒を加圧成形することにより、フェライト成形体が製
造される。そして、このフェライト成形体を焼成するこ
とによりフェライト焼結体が得られる。なお、オシレー
ティング押し出しとは、たとえば数mm程度の粒径に造
粒された粒子を網上で押し潰して細かくした粒子を落下
させる作業を、編み目を順次細かくした数段の工程で行
うことにより、所定の粒径以下の粒子を得る方法であ
る。
【0005】このようなフェライト成形用顆粒(以下、
「フェライト顆粒」ともいう)は、フェライト成形体を
製造するために以下のような性質が要求されている。 (1)流動性が適度な範囲内にあり、所定分量のフェラ
イト顆粒を均一に金型に流し込む際の充填性が良好であ
る。 (2)金型成形する際に低圧(代表的には29〜147
MPa)で均一につぶれること(以下、「低圧つぶれ
性」という) (3)金型等にフェライト顆粒中の微粒子等の成分が付
着しないこと(以下、「耐スティッキング性」とい
う)。 (4)貯蔵時や運搬時あるいは金型への充填時に転動や
相互衝突によってフェライト顆粒が崩壊しないこと(以
下、「耐崩壊性」という)。 (5)適度な嵩密度を有しており、金型への充填時や成
形時に金型外にフェライト顆粒が流出しないこと(以
下、「金型への充填性」という)。
【0006】これらの要求を満足させるために種々のフ
ェライト顆粒の造粒方法が提案されている。たとえば特
開平5−159918号公報には、分散剤を用いてスラ
リーを調整して、これを造粒することでフェライト顆粒
を得る方法が開示されている。また、特公平3−316
60号公報には、バインダー成分の偏析を抑制して造粒
することでフェライト顆粒を得る方法が開示されてい
る。
【0007】また、特開2000−272970号公報
には、炭素数4以下のα−オレフィンまたはビニルエー
テルを含有するビニルアルコール系重合体をバインダー
成分として用いる方法が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の技術は、以下のような欠点を有している。 (1)これらの技術はフェライトスラリーの改善にかか
わるものであり、対象となる造粒方法はスプレードライ
ヤー(噴霧造粒機)を用いた噴霧乾燥による造粒に制限
されており、汎用性が低い。 (2)フェライト顆粒の流動性及び低圧つぶれ性はある
程度改善されるが十分ではなく、またこれらのフェライ
ト顆粒を用いて成形されたフェライト成形体は寸法精度
も十分なものでなく、また比較的複雑な形状の成形には
適用できない。 (3)貯蔵時や輸送時にあるいは金型への充填時にフェ
ライト顆粒が崩壊してしまう場合もある。 (4)金型成形する際に金型へフェライト微粒子が張り
付いてスティッキングを生じてしまい、連続的にフェラ
イト成形体を成形することができない場合もある。 (5)フェライト成形体の機械的強度が低く、欠けや折
れ等の破損が発生しやすい。 (6)金型からの離型性が悪く、スプリングバックによ
りフェライト成形体内部にヒビが発生しやすい。
【0009】ここで「スプリングバック(成形体膨
張)」とは、金型よりフェライト成形体を抜き出す際
に、フェライト成形体が体積膨張して、金型寸法よりも
大きくなる現象を言う。
【0010】このような問題点に鑑み、本発明の第一の
課題は、金型からの離型性が良く、スプリングバックに
よるヒビなどの成形不良がなく、かつ均質で高密度で高
い成形体強度を有するフェライト成形体を焼成してなる
フェライト焼結体及びこのフェライト焼結体の製造方法
を提供することである。
【0011】また、本発明の第二の課題は、流動性、金
型への充填性及び耐スティッキング性が良好で、なおか
つ低圧つぶれ性が優れたフェライト成形用顆粒を提供す
ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者は、このような
実情を鑑み鋭意検討した結果、顆粒造粒の際に用いるバ
インダー成分として、エチレン変性量が4〜10モル
%、平均重合度が500〜1700、平均鹸化度が9
0.0〜99.5モル%のエチレン変性ポリビニルアル
コールを用い、さらに親水性親油性比(以下「HLB」
と略記する)14以下の高級脂肪酸のヘキシタンエステ
ルを用いて、フェライト顆粒表面の少なくとも一部を被
覆したフェライト成形用顆粒を用いることにより、前記
課題が解決することができることを見出して、本発明を
創作するに至った。
【0013】すなわち、請求項1のフェライト焼結体
は、フェライト原料粉末と、エチレン変性量が4〜10
モル%、平均重合度が500〜1700、平均鹸化度が
90.0〜99.5モル%のエチレン変性ポリビニルア
ルコールとが少なくとも混合され造粒されたフェライト
成形用顆粒の表面の少なくとも一部が親水性親油性比1
4以下の高級脂肪酸のヘキシタンエステルにより被覆さ
れたフェライト成形用顆粒の型成形体を焼成してなるこ
とを特徴とする。
【0014】このように、エチレン変性量が4〜10モ
ル%、平均重合度が500〜1700、平均鹸化度が9
0.0〜99.5モル%のエチレン変性ポリビニルアル
コールとフェライト原料粉末とを少なくとも混合したフ
ェライト成形用顆粒を用いて得られたフェライト成形体
は、ヒビの発生・粒界欠損が少なく、高い成形体密度を
有する高密度フェライト成形体となる。さらに、これを
焼成して得られる本発明のフェライト焼結体は、高い強
度を有している。
【0015】また、このフェライト成形用顆粒の少なく
とも表面の一部分を親水性親油性比14以下の高級脂肪
酸のヘキシタンエステルにより被覆することにより、金
型からの離型性が優れ、スプリングバックが小さく、そ
れゆえフェライト成形体のヒビ、欠け等の成形体不良の
少ないフェライト成形体が得られる。
【0016】ここで、「型成形体」とは、フェライト成
形用顆粒を金型等の型に充填、加圧して得られるフェラ
イト成形体のことを示す。
【0017】請求項2のフェライト焼結体の製造方法
は、フェライト原料粉末と、エチレン変性量が4〜10
モル%、平均重合度が500〜1700、平均鹸化度が
90.0〜99.5モル%のエチレン変性ポリビニルア
ルコールとを少なくとも混合して造粒しフェライト成形
用顆粒とし、このフェライト成形用顆粒を親水性親油性
比14以下の高級脂肪酸ヘキシタンエステルにより表面
の少なくとも一部を被覆し、このフェライト成形用顆粒
を型により成形しフェライト成形体とし、このフェライ
ト成形体を焼成してフェライト焼結体を得ることを特徴
とする。
【0018】請求項3のフェライト成形用顆粒は、請求
項1または請求項2のフェライト成形用顆粒において、
前記エチレン変性ポリビニルアルコールの平均鹸化度が
92〜97モル%であることを特徴とする。
【0019】本発明はこのように構成し、エチレン変性
ポリビニルアルコールの平均鹸化度を92〜97質量%
としたので、エチレン変性ポリビニルアルコールの水溶
性を維持しつつフェライト成形用顆粒の耐崩壊性を良好
に保つことが可能となる。
【0020】請求項4のフェライト成形用顆粒は、請求
項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のフェライト
成形用顆粒において、前記エチレン変性ポリビニルアル
コールの添加量が、前記フェライト原料粉末100質量
部に対して0.4〜4質量部であることを特徴とする。
【0021】本発明はこのように構成したので、良好な
低圧つぶれ性を有するフェライト顆粒を確実に造粒する
ことが可能となる。
【0022】請求項5のフェライト成形用顆粒は、請求
項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の高級脂肪酸
のヘキシタンエステルが前記フェライト成形用顆粒10
0質量部に対して0.1〜3質量部添加されていること
を特徴とする。
【0023】本発明はこのように構成したので、金型に
よる成形時に低圧つぶれ性に優れ、滑り性、流動性、圧
力伝達性が向上し、金型への充填性が良好なフェライト
成形用顆粒を得ることが可能となる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。本発明のフェライト成形用顆粒は、フェライト原
料粉末及びバインダー成分から主として構成されるが、
本発明におけるフェライト原料粉末としては、最終的に
焼成されるフェライト焼結体の用途に応じて適宜選択さ
れ、特に限定されるものではないが、たとえば、Fe2
3、NiO、MnO、MgO、CuO、ZnOを主成
分とし、必要に応じて、さらに副成分もしくは不可避的
不純物として、Co、W、Bi、Si、B、Zr等の金
属酸化物が含まれても良い。
【0025】また、これらフェライト原料粉末の粒径に
ついても、最終製品であるフェライト焼結体の原料とし
て従来使用されてきた範囲であることができ、一般には
0.5〜5μm、好ましくは、0.7〜3μmの範囲で
ある。フェライト原料粉末の平均粒径をこのような好ま
しい範囲にするためには、従来公知の方法、たとえば、
ボールミル、攪拌ミル、アトライター等によりフェライ
ト原料を粉砕することによって達成でき、またこの際に
湿式粉砕方式、乾式粉砕方式のいずれの粉砕方法で粉砕
しても良い。
【0026】また、本発明のフェライト顆粒は、バイン
ダー成分として特定のポリビニルアルコールの鹸化物を
含むが、一般にバインダー成分は、一次粒子の結合剤、
すなわちフェライト原料粉末同士の結合剤として機能
し、フェライト顆粒の低圧つぶれ性、耐崩壊性及びフェ
ライト成形体の機械的強度に影響を及ぼす。
【0027】すなわち、本発明におけるポリビニルアル
コールはエチレン変性ポリビニルアルコールであり、平
均重合度が500〜1700、平均鹸化度が90.0〜
99.5モル%であることが好ましい。平均重合度が5
00以上の場合、フェライト顆粒の低圧つぶれ性を良好
に維持しつつ、耐崩壊性及び耐スティッキング性を実用
上充分な程度に保つことができる。平均重合度が170
0以下であれば、フェライト顆粒の耐崩壊性を良好に維
持しつつ、フェライト顆粒を柔らかくできるため実用上
充分な低圧つぶれ性を得ることができる。
【0028】また、平均鹸化度のより好ましい範囲は9
2〜97モル%であり、平均鹸化度が高いほど、耐崩壊
性は良好であるが、造粒したフェライト顆粒が硬くなる
傾向が見られる。また、平均鹸化度が92モル%以上の
エチレン変性ポリビニルアルコールは実用上充分な水溶
性を有している。また、平均鹸化度が97モル%以下で
あれば得られるフェライト顆粒の柔らかさは実用上充分
な程度であり、フェライト成形体を金型から抜き出す際
のスプリングバックを小さくすることができる。
【0029】また、エチレン変性ポリビニルアルコール
のエチレン変性量は20モル%以下であれば実用上許容
できる程度の水溶性を有するが、より好ましくは4〜1
0モル%である。エチレン変性量が4〜10モル%であ
れば、エチレン変性ポリビニルアルコールを含むバイン
ダー溶液の安定性が優れており、このバインダー溶液が
フェライト原料粉末を被覆する皮膜となった際に強度に
優れている。
【0030】本発明においてバインダー成分として用い
るエチレン変性ポリビニルアルコールの添加量は、フェ
ライト原料粉末100質量部に対して0.4〜4質量部
が好ましく、特に0.6〜2質量部の範囲がより好まし
い。このエチレン変性ポリビニルアルコールの添加量が
0.4質量部以上であれば、フェライト粒子を確実に造
粒することができる。また、4質量部以下であれば、フ
ェライト顆粒が硬くなりすぎることはなく、良好な低圧
つぶれ性を維持できるので、フェライト成形体を成形し
た際に、顆粒粒界が少なく成形不良の発生を防ぐことが
できる。また、同様に容量欠陥を低減することができ
る。また、添加量が0.6質量部以上であれば、フェラ
イト顆粒表面において微小な穴、隙間の発生を抑制し、
密度の高いフェライト顆粒を造粒することが可能とな
る。また、添加量が2質量部以下であれば、フェライト
顆粒の柔らかさと機械的強度とのバランスに優れたフェ
ライト顆粒を造粒することが可能となる。ここで、顆粒
粒界とはフェライト成形体内部においてフェライト顆粒
同士の接触面に発生する隙間のことである。フェライト
成形体内部でフェライト顆粒同士が充分に密着していれ
ば、顆粒粒界は小さくなり、フェライト顆粒同士の密着
性が悪いと顆粒粒界は大きくなる。
【0031】本発明において、フェライト顆粒を造粒す
る際に、所望に応じて本発明の目的・効果が損なわれな
い範囲で公知の各種添加剤を添加することができる。こ
のような添加剤の例として、ポリカルボン酸塩、縮合ナ
フタレンスルホン酸等の分散剤、グリセリン、グリコー
ル類、トリオール等の可塑剤、ワックス、ステアリン酸
(塩)等の滑剤、ポリエーテル系、ウレタン変性ポリエ
ーテル系、ポリアクリル酸系、変性アクリル酸系有機高
分子等の有機系高分子凝集剤、硫酸アルミニウム、塩化
アルミニウム、硝酸アルミニウム等の無機系凝集剤等が
挙げられる。
【0032】特に可塑剤としてはポリエチレングリコー
ルが好ましい。ポリエチレングリコールはフェライト成
形用顆粒において、低圧つぶれ性と圧力伝達性を改善
し、顆粒粒界を低減するものである。ポリエチレングリ
コールの分子量は1000〜6000が好ましく、より
好ましくは2000〜4000である。分子量が100
0以上であれば、実用上充分な低圧つぶれ性を維持した
まま、吸湿性を抑えることが可能であるために、顆粒の
流動性が良好であり金型への充填性に優れ、均一に充填
が可能である。また、分子量が6000以下であれば、
添加により低圧つぶれ性が改善し、かつフェライト成形
体の機械的強度が低下することによるクラックの発生を
抑制することができる。ポリエチレングリコールの分子
量が2000〜4000であれば、低い吸湿性と低圧つ
ぶれ性をより高いレベルで両立することが可能である。
【0033】また、滑剤としては特に水分散性ワックス
が好ましい。水分散性ワックスはフェライト成形用顆粒
において、フェライト成形用顆粒及び成形用金型との摩
擦を低減し、低圧つぶれ性及びスプリングバック(成形
体膨張)に影響を及ぼすものである。水分散性ワックス
の好ましい平均粒径は1μm以下であり、好ましい添加
量はフェライト原料粉末100質量部に対して0.1〜
1.0質量部である。水分散性ワックスの添加量が0.
1質量部以上であれば、実用上許容できる程度の摩擦低
減効果が得られる。また、添加量が1質量部以下であれ
ば、フェライト焼結体を焼成する際に、水分散性ワック
スの蒸発による微細な空隙の発生を抑制することができ
る。また、水分散性ワックスの平均粒子径が1μm以下
であれば、水分散性ワックスの粒子とフェライト原料粉
末との大きさがほぼ同程度であるので、水分散性ワック
ス粒子とフェライト原料粉末とを均一に混合することが
可能となる。さらに、水分散性ワックスの平均粒子径が
1μm以下であれば、フェライト成形体を焼成する際
に、水分散性ワックスの蒸発痕が空隙としてフェライト
焼結体中に残留することを抑制できる。
【0034】水分散性ワックスとしては、マイクロクリ
スタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレン
ワックス、酸化ポリエチレンワックス、グリコール変性
酸化ポリエチレン等を用いることができるが、特にマイ
クロクリスタリンワックスが好ましい。このマイクロク
リスタリンワックスとは、炭素数30〜60のイソパラ
フィンやシクロパラフィンを主体とした分子量500〜
800程度の微結晶パラフィンのことである。前記の水
分散性ワックスは単独で用いても良いし、2種以上の混
合物として用いても良い。
【0035】また、本発明においては、フェライト顆粒
の粒径を、平均粒径30〜400μm、好ましくは、5
0〜200μm、より好ましくは70〜150μmの球
形とすることが好ましい。
【0036】フェライト顆粒の平均粒径が30μm以上
であれば、流動性及び金型への充填性が優れており、成
形体の寸法及び質量のばらつきを小さく抑えることが可
能となる。また、金型への微粉付着(スティッキング)
を抑制することが可能となる。また、平均粒径が400
μm以下であれば、このフェライト顆粒からフェライト
成形体を成形した際に顆粒粒界が少なく、成形不良の発
生率を低く抑えることが可能となる。さらに、フェライ
ト成形体の寸法及び質量のばらつきを小さくすることが
可能となる。フェライト顆粒の粒径を50〜200μ
m、より好ましくは70〜150μmとすることで、前
記の効果がより一層高まる。
【0037】なお、本発明によるフェライト成形用顆粒
は「フェライト成形体用の金型に充填するのに十分な流
動性を維持する範囲」、すなわち、フェライト顆粒を金
型に充填する際にフェライト顆粒が充填手段に付着した
り凝集したりせず、均一に金型に充填できる範囲の流動
性を有している。
【0038】フェライト顆粒の流動性は、フェライト顆
粒の造粒方法、したがってフェライト顆粒の形状により
異なり一概には特定できないが、流動性の基準となる尺
度として、本発明においてはJIS Z2502に規定
されている漏斗よりフェライト顆粒50gを流下させる
時間(秒/50g)を用いて表す。本発明における良好
な流動性とは、フェライト顆粒を噴霧乾燥により造粒し
た場合には18〜24秒/50gの範囲であり、またオ
シレーティング押し出しで造粒した場合には20〜34
秒/50gの範囲である。本発明によるフェライト成形
用顆粒は、これらの範囲を満足する良好な流動性を有す
る。
【0039】本発明において用いる高級脂肪酸のヘキシ
タンエステルの添加量はフェライト成形用顆粒100質
量部に対して0.1〜3.0質量部であることが好まし
い。また、高級脂肪酸のヘキシタンエステルは、炭素数
12〜18の高級脂肪酸のエステルであることが好まし
く、特に高級脂肪酸が、オレイン酸、ステアリン酸又は
パルミチン酸であることが好ましい。さらに、ヘキシタ
ンは、ソルビタン及びマンニタンであることが好まし
い。
【0040】高級脂肪酸のヘキシタンエステルの添加量
がフェライト成形用顆粒100質量部に対して0.1質
量部以上であれば、型成形において低圧つぶれ性に優
れ、滑り性、流動性、圧力伝達性が向上し、金型への充
填が良好となる。また、成形体強度の低減が少ないた
め、ヒビ、欠けなどの成形不良の発生を抑制することが
可能となる。その結果、低い圧力でばらつきの少ないフ
ェライト成形体を与え得るフェライト成形用顆粒が得ら
れる。
【0041】また、3.0質量部を超えるとその量を増
加しても効果の向上が認められず、むしろフェライト成
形体の強度が大幅に低下するという不具合が発生し、ま
た経済的にも不利となる。効果及び経済性を考慮する
と、この高級脂肪酸のヘキシタンエステルの添加量は
0.2〜2.0質量部の範囲が好ましく、特に0.3〜
1.5質量部の範囲が好適である。高級脂肪酸のヘキシ
タンエステルの添加量をこれらの範囲に限定することに
より、滑り性とフェライト成形体の機械的強度とのバラ
ンスに優れたフェライト成形用顆粒が得られる。
【0042】このヘキシタンとは、へキシトールすなわ
ちヘキソースの糖アルコールから1分子脱水して得られ
る分子内エーテルであり、その高級脂肪酸のエステルと
は、ヘキシタン中の4個の水酸基の一部又は全部が高級
脂肪酸エステルを成形したものである。
【0043】本発明者が種々の高級脂肪酸のヘキシタン
エステルについて評価を行ったところ、高級脂肪酸とし
ては、炭素数12〜18の脂肪酸が好ましく、飽和、不
飽和のいずれであってもよいし、直鎖状、分岐状のいず
れであってもよいことが明らかとなった。このような高
級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミ
チン酸、ステアリン酸、オレイン酸などを本発明に用い
ることができるが、特に、パルミチン酸、ステアリン酸
及びオレイン酸が好適であることが明らかとなった。
【0044】また、ヘキシタンとしては、ソルビタン、
マンニタン、ズルシタンなどを用いることができるが、
これらの中でソルビタン及びマンニタンが好ましく、特
にソルビタンが好ましいことが明らかとなった。
【0045】また、本発明においては、この高級脂肪酸
のヘキシタンエステルは部分エステル及び完全エステル
のいずれであっても良く、これらのエステルを単独で用
いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても本発明
の効果が得られることが明らかとなった。
【0046】さらに、本発明において用いる高級脂肪酸
のヘキシタンエステルは、HLBが14以下であること
が好ましい。HLBが14以下であれば、金型からの離
型性及び低圧でのつぶれ性を良好に保ったまま、実用上
十分なフェライト成形体強度を得ることができる。
【0047】次に、高級脂肪酸のヘキシタンエステルに
より表面の少なくとも一部が被覆されたフェライト成形
用顆粒を製造するには、フェライト原料粉末よりフェラ
イト顆粒を造粒した後に、HLB14以下の高級脂肪酸
のヘキシタンエステルを接触させることが好ましい。
【0048】造粒前のフェライト原料粉末に高級脂肪酸
のヘキシタンエステルを配合すると、フェライト成形体
の金型からの離型性が十分に改善されず、スプリングバ
ックによる成形不良が発生するとともに、高密度のフェ
ライト成形体を得ることが難しい。
【0049】フェライト成形用顆粒を高級脂肪酸のヘキ
シタンエステルで被覆するには、たとえば高級脂肪酸の
ヘキシタンエステルを必要に応じて溶剤、たとえばエチ
ルアルコールで1.5〜3倍に希釈し、これをフェライ
ト成形用顆粒に添加してドラムミキサーのような混合装
置を用いて混合するか、あるいは転動流動層を利用して
フェライト成形用顆粒を転動させながら、高級脂肪酸の
ヘキシタンエステルと接触させた後、溶媒を除去するこ
とによって行われる。その他、高級脂肪酸のヘキシタン
エステル溶液を霧化して添加する方法、また、高級脂肪
酸のヘキシタンエステルを固形状のまま又は溶融状態で
フェライト成形用顆粒に添加し、機械的に混合する方法
なども用いることができる。
【0050】次に、本発明の好適な実施態様の一例を説
明する。先ず、フェライト原料粉末とバインダー成分と
して添加され、エチレン変性量が4〜10モル%、平均
重合度が500〜1700及び平均鹸化度が90.0〜
99.5モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールと
を少なくとも混合して、例えば、スプレードライヤー
(噴霧造粒機)を用いて噴霧乾燥又はオシレーティング
押し出しにより造粒して平均粒子径30〜300μmの
フェライト成形用顆粒を作製する。
【0051】次いでこのフェライト成形用顆粒にHLB
14以下の高級脂肪酸のソルビタンエステルを所定の割
合で加え、前記の方法により十分に接触させることによ
って、フェライト成形用顆粒表面の少なくとも一部をこ
れによって被覆する。この際、フェライト成形用顆粒の
表面全体が均質に被覆されることが好ましいが、その一
部、例えばフェライト成形用顆粒の表面積の10%以上
が覆われていれば実用上十分である。また、この時、高
級脂肪酸のソルビタンエステルの一部がフェライト成形
用顆粒の表面部に浸透することがあるが、特に支障はな
い。
【0052】このようにして、フェライト原料粉末とエ
チレン変性量が4〜10モル%、平均重合度が500〜
1700、平均鹸化度が90.0〜99.5モル%のエ
チレン変性ポリビニルアルコールとを混合して造粒して
得たフェライト成形用顆粒の少なくとも一部をHLB1
4以下の高級脂肪酸のソルビタンエステルにより被覆す
ることにより、型成形における低圧つぶれ性に優れ、滑
り性、流動性、圧力伝達性が向上するとともに金型への
充填性が良好なフェライト成形用顆粒を得ることができ
る。
【0053】次に、このようにして得た表面の少なくと
も一部がHLB14以下の高級脂肪酸のソルビタンエス
テルで被覆されたエチレン変性ポリビニルアルコール含
有フェライト成形用顆粒を成形してフェライト成形体を
成形するには、前記のようにして被覆されたフェライト
成形用顆粒を通常の型成形法により所望の形状に型成形
する。この型成形は、特にフェライト成形用顆粒を金型
により乾式加圧成形を行うことが好ましい。この際の成
形圧力は、通常40〜500MPa、好ましくは80〜
400MPaの範囲で選ばれる。
【0054】このようにして得られたフェライト成形体
では、成形体強度の低下が抑制され、ヒビ、欠けなどの
成形不良の発生が抑えられる。その結果、従来よりも低
い圧力でフェライト成形体を成形することが可能となる
とともに、フェライト成形体のばらつきが少ない。
【0055】また、この際使用されるフェライト成形用
顆粒は、良好な離型性を有するため、金型からのフェラ
イト成形体排出時の抜き圧が低く、金型の摩耗や損傷を
抑制しうるという利点がある。さらに、これらの効果に
より、金型からのフェライト成形体取出し時のスプリン
グバックを低減することが可能となる。
【0056】
【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて
さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によ
ってなんら限定されるものではない。
【0057】〔造粒材料の調整〕表1に実施例及び比較
例でフェライト焼結体を製造するために用いたフェライ
ト原料粉末の添加量、水の添加量、バインダー成分の添
加量並びにその他の諸元及び分散剤の添加量を示した。
【0058】〔造粒1(実施例1〜5、比較例1〜
4)〕実施例1〜5については表1に示した原料番号1
〜4の原料を用い、比較例1〜4については、原料番号
7,8の原料を用いた(詳細は表2参照)。なお、表1
に示してはいないが、実施例1〜5、比較例1〜4で用
いたフェライト原料粉末は、Ni−Cu−Zn系のフェ
ライトである。
【0059】これらのフェライト原料粉末、水、バイン
ダー成分及び分散剤を湿式混合してフェライトスラリー
を調整した。このフェライトスラリーをスプレードライ
ヤー(噴霧造粒機)にて噴霧乾燥し、平均粒径100μ
m、含有水分0.2質量%の球形造粒物を得た。このと
き、直径100mmのディスク式アトマイザを用いて、
アトマイザの回転速度は6000rpmで造粒を行っ
た。
【0060】〔造粒2(実施例6〜7、比較例5〜
6)〕実施例6,7については、表1に示した原料番号
5,6の原料を用い、比較例5,6については、原料番
号9,10の原料を用いた。なお、表1に示してはいな
いが、実施例6,7、比較例5,6で用いたフェライト
原料粉末は、Ni−Cu−Zn系のフェライトである。
【0061】これらのフェライト原料粉末とバインダー
成分とを混合し攪拌造粒機TMミキサー(三井鉱山社
製)で混合攪拌造粒を行い、造粒粉を調整した。この造
粒粉をベルト式乾燥機で乾燥処理し、オシレーティング
造粒解砕機(日本精機社製)で押し出し造粒を行い、シ
フターにて整粒し、平均粒径200μm、含有水分1.
2質量%のフェライト顆粒を得た。
【0062】〔高級脂肪酸のヘキシタンエステルの添
加〕表2に示す条件の高級脂肪酸のヘキシタンエステル
を、前記フェライト顆粒に対して添加し、ドラムミキサ
ーで回転混合し、凝集粉のないフェライト成形用顆粒を
作製した。
【0063】
【表1】
【0064】〔流動度の測定〕得られたフェライト成形
用顆粒の流動度をJIS Z2502に規定されている
漏斗より、フェライト顆粒50gを流下させる時間(秒
/50g)を測定することで評価した。測定結果を表3
に示す。
【0065】〔フェライト顆粒の成形1〕次いで、得ら
れたフェライト顆粒をそれぞれ98MPaの圧力で乾式
加圧成形し、長さ55mm、幅12mm、高さ5mmの
直方体状のブロック状フェライト成形体を得た。このブ
ロック状フェライト成形体の抗折強度を加重試験機(ア
イコーエンジニアリング社製)を用いてJIS R16
01に規定されている方法に従い測定した。測定結果を
表3に抗折強度1として示す。
【0066】抗折強度1は、フェライト成形体の機械的
強度の尺度であり、この値が高いほど、フェライト成形
体の機械的強度が高いことを示している。実施例1〜7
で得られたブロック状フェライト成形体の抗折強度は良
好な値を示した。それに対し、比較例では、ブロック状
フェライト成形体の抗折強度が明らかに劣っていた。抗
折強度は、フェライト成形体内部の顆粒粒界の量と関係
しており、顆粒粒界が充分に解消されない場合、抗折強
度は低くなる。このことより、比較例においては、フェ
ライト成形体の成形時に顆粒粒界が充分には解消されな
かったことが示唆される。
【0067】〔成形体の焼結1〕さらに、得られたフェ
ライト顆粒をそれぞれ98MPaの圧力で乾式加圧成形
し、長さ55mm、幅12mm、高さ5mmの直方体状
のブロック状フェライト成形体を得た。このブロック状
フェライト成形体を1050℃の温度にて2時間焼成
し、ブロック状フェライト焼結体を得た。このブロック
状フェライト焼結体の抗折強度を同様に、加重試験機
(アイコーエンジニアリング社製)を用いてJIS R
1601に規定されている方法に従い測定した。測定結
果を表3に抗折強度2として示す。
【0068】抗折強度2は、フェライト焼結体の機械的
強度の尺度となる。この値が高いほど、フェライト焼結
体の機械的強度が高いことを示している。実施例1〜7
より得られたブロック状フェライト焼結体は、平均して
良好な抗折強度を示した。対して、比較例より得られた
ブロック状フェライト焼結体は、抗折強度が劣ってい
た。
【0069】
【表2】
【0070】〔フェライト顆粒の成形2〕次に、得られ
たフェライト顆粒1.5gを直径6mmの金型に充填
し、成形圧力49〜294MPaの間で変化させ、乾式
加圧成形することにより、直径6mm、長さ16〜19
mmの円柱状フェライト成形体を作製し、このサンプル
について、成形圧力と成形体密度との関係を求めた。成
形圧力98MPaでのフェライト成形体密度の結果を表
3に示す。
【0071】表3によれば、実施例1〜7より得られた
円柱状フェライト成形体は、平均して高い成形体密度を
示した。対して、比較例1〜6より得られた円柱状フェ
ライト成形体は成形体密度が小さい。
【0072】また、実施例1、実施例6、比較例1、比
較例2、比較例5の成形圧力と成形体密度との関係を図
1に示した。図1によれば、実施例、比較例の区別な
く、成形圧力が100MPa付近までは、成形圧力の増
加とともに比較的急峻にフェライト成形体密度が増加す
る。成形圧力が100MPaを超えると、成形圧力の増
加に対するフェライト成形体密度の増加は緩やかにな
る。また、5本のグラフはほぼ平行に推移していること
から、フェライト成形体密度は成形圧力を増加させたと
しても逆転することはないことが推測される。
【0073】また、成形体密度と金型からの抜き圧の関
係を図2に示した。金型からの抜き圧は、小さければ小
さいほど、金型からフェライト成形体が取り出し易いこ
とを示す。図2によれば、高級脂肪酸のヘキシタンエス
テルを添加していない比較例2では、金型からの抜き圧
が飛びぬけて高く、比較例2より得られたフェライト成
形体は金型からの離型性が悪いことがわかる。
【0074】さらに、フェライト成形体の密度と成形体
膨張率との関係(スプリングバックの変化)を図3に示
す。図3によれば、同じ成形体密度で比較した場合、実
施例1、実施例6に比べて比較例では、成形体膨張率が
大きいことが判る。特に、高級脂肪酸のヘキシタンエス
テルを添加していない比較例2では、成形体膨張率が飛
びぬけて高い。また、高級脂肪酸のヘキシタンエステル
を添加してはいるが、バインダー成分として未変性のポ
リビニルアルコールを用いている比較例1と比較例5
は、実施例1、実施例6に比べて、成形体膨張率が大き
いことが判る。
【0075】〔側面の写真〕また、実施例1、比較例1
より得られたフェライト顆粒1.5gを直径6mmの金
型に充填し、成形圧力147MPaで直径6mm長さ1
6〜19mmの円柱状フェライト成形体を作製した。続
いて、成形したフェライト成形体側面のフェライト顆粒
のつぶれ状態を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した
結果を図4に示す。図4(a)、(b)、(c)は実施
例1の条件で作製したフェライト顆粒を成形したフェラ
イト成形体の上部、中間部、下部の各側面を示す。ま
た、図4(d)、(e)、(f)は、比較例1の条件で
作製したフェライト顆粒を成形したフェライト成形体の
上部、中間部、下部の各側面を示す。
【0076】ここで、「上部」、「中間部」、「下部」
とは、金型の押圧手段からの相対的な距離を示してお
り、「上部」とは、円柱状フェライト成形体の押圧手段
近傍の側面を示し、「下部」とは、押圧手段から最も離
れた円柱状フェライト成形体の底面近傍の側面を示し、
「中間部」とは、上部と下部の中間付近の側面を示す。
【0077】図4(a),(b),(c)より、実施例
1においては、いずれの観察箇所においてもフェライト
顆粒の顆粒粒界を判別することが難しい程非常に小さい
ことが確認できる。それに対し比較例1(図4(d),
(e),(f))においては、フェライト顆粒の顆粒粒
界が大きく、観察箇所によりその大きさが異なっている
ことが分かる。これは、比較例1では、フェライト顆粒
の低圧つぶれ性が実施例1よりも劣っていることを示し
ているとともに、フェライト顆粒の圧力伝達性が悪く、
金型の押圧手段により加えられた成形圧力が、下部にま
で均一に伝達しなかったことを示している。
【0078】
【表3】
【0079】表3、図1〜4の結果から、本発明の範囲
内のエチレン変性ポリビニルアルコールを用いてフェラ
イト顆粒を作製し、そのフェライト顆粒の表面の一部を
高級脂肪酸のヘキシタンエステルで被覆することによ
り、滑り性、流動性が向上し、成形時の低圧つぶれ性が
改善され、フェライト成形体の顆粒粒界が低減され、そ
のフェライト焼結体の内部欠陥の低減により、強度が大
幅に改善され満足する結果であった。
【0080】これに対して、本発明の範囲外の条件で作
製したフェライト顆粒は、金型からの抜き圧及び成形体
膨張率が大きく、成形時の低圧つぶれ性が悪く、フェラ
イト成形体内に顆粒粒界を多く残し、そのフェライト成
形体強度は低い値を示した。また、その多くの内部欠陥
により、フェライト焼結体の強度は著しく劣っているこ
とがわかる。
【0081】〔連続成形性評価〕実施例1、実施例6及
び比較例1、比較例2、比較例6で得たフェライト顆粒
を直径1.8mm、長さ2.0mmの円柱コア形状に連
続成形し、10000個のフェライト成形体を製造し
た。このようにして得たフェライト成形体をダイヤモン
ドホイルにより芯径0.8mmに切削加工してコイル用
のドラム型コアを作製し、さらに1060℃で焼結を行
い、フェライト焼結体を得た。表4にフェライト成形体
及びフェライト焼結体の評価結果を示す。なお、表5に
スティッキング、欠け、ヒビ、折れの評価基準を示す。
【0082】
【表4】
【0083】
【表5】
【0084】表4の結果から、本発明のエチレン変性ポ
リビニルアルコールを用いて造粒し、その表面の一部を
高級脂肪酸のヘキシタンエステルで被覆したフェライト
顆粒から製造されたフェライト成形体及びフェライト焼
結体は、スティッキング、欠け、ヒビ、折れの発生が非
常に少ない満足する結果が得られた。
【0085】
【発明の効果】本発明によれば、フェライト原料粉末と
バインダー成分として添加されるエチレン変性量が4〜
10モル%、平均重合度が500〜1700、平均鹸化
度が90.0〜99.5モル%のエチレン変性ポリビニ
ルアルコールとを混合して造粒して得たフェライト顆粒
を親水性親油性比(HLB)14以下の高級脂肪酸のヘ
キシタンエステルにより表面の少なくとも一部を被覆し
たフェライト成形用顆粒は、滑り性、流動性が向上し、
低圧つぶれ性と耐崩壊性及び耐スティッキング性のバラ
ンスの良いフェライト顆粒である。また、このフェライ
ト顆粒を成形したフェライト成形体は離型性が向上し、
金型からの成形体排出時の抜き圧が低下し、金型の摩耗
や破損が減少する。
【0086】更に、金型からの成形体排出時のスプリン
グバック(成形体膨張)が減少し、ヒビ等の成形不良の
ないフェライト成形体を得ることができる。本発明で
は、このフェライト成形体を焼成することによりフェラ
イト焼結体を得ているのでフェライト焼結体の内部欠陥
の低減により高密度で強度が改善されたフェライト焼結
体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 成形圧力と成形体密度との関係を示すグラフ
である。
【図2】 抜き圧と成形体密度との関係を示すグラフで
ある。
【図3】 成形体の密度と成形体膨張率との関係を示す
グラフである。
【図4】 円柱状フェライト焼結体の側面部における走
査型電子顕微鏡写真である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェライト原料粉末と、エチレン変性量
    が4〜10モル%、平均重合度が500〜1700、平
    均鹸化度が90.0〜99.5モル%のエチレン変性ポ
    リビニルアルコールとが少なくとも混合され造粒された
    フェライト成形用顆粒の表面の少なくとも一部が親水性
    親油性比14以下の高級脂肪酸のヘキシタンエステルに
    より被覆されたフェライト成形用顆粒の型成形体を焼成
    してなることを特徴とするフェライト焼結体。
  2. 【請求項2】 フェライト原料粉末と、エチレン変性量
    が4〜10モル%、平均重合度が500〜1700、平
    均鹸化度が90.0〜99.5モル%のエチレン変性ポ
    リビニルアルコールとを少なくとも混合して造粒しフェ
    ライト成形用顆粒とし、このフェライト成形用顆粒を親
    水性親油性比14以下の高級脂肪酸ヘキシタンエステル
    により表面の少なくとも一部を被覆し、このフェライト
    成形用顆粒を型により成形しフェライト成形体とし、こ
    のフェライト成形体を焼成してフェライト焼結体を得る
    ことを特徴とするフェライト焼結体の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2のフェライト成
    形用顆粒において、前記エチレン変性ポリビニルアルコ
    ールの平均鹸化度が92〜97モル%であることを特徴
    とするフェライト成形用顆粒。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれか一項
    に記載のフェライト成形用顆粒において、前記エチレン
    変性ポリビニルアルコールの添加量が、前記フェライト
    原料粉末100質量部に対して0.4〜4質量部である
    ことを特徴とするフェライト成形用顆粒。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし請求項4のいずれか一項
    に記載の高級脂肪酸のヘキシタンエステルが前記フェラ
    イト成形用顆粒100質量部に対して0.1〜3質量部
    添加されていることを特徴とするフェライト成形用顆
    粒。
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