JP2002323904A - プラントの制御装置及び内燃機関の空燃比制御装置 - Google Patents

プラントの制御装置及び内燃機関の空燃比制御装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】触媒装置の下流に配置した排ガスセンサの出力
状態によらずに、排ガスセンサの出力を所定の目標値に
収束させる制御を高い速応性で良好に行うことができる
内燃機関の空燃比制御装置を提供する。 【解決手段】触媒装置3の下流の酸素濃度センサ5の出
力を所定の目標値に収束させるように目標空燃比KCMDを
生成する操作量生成手段7は、排気系Eの無駄時間後、
あるいはこの無駄時間と機関制御手段8及びエンジン1
から成る系の無駄時間とを合わせた合計無駄時間後の酸
素濃度センサ5の出力の推定値を示すデータを互いに異
なるアルゴリズムで生成する複数の推定手段を具備して
いる。操作量生成手段7は、それらの推定値から選択し
た値又はそれらの推定値を合成した値を用いて適応スラ
イディングモード制御の処理により目標空燃比KCMDを生
成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラントの制御装
置及び内燃機関の空燃比制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、本願出願人は、内燃機関の排気通
路に設けた触媒装置による排ガスの所要の浄化性能を確
保するために、触媒装置を通過した排ガス中の特定成分
の濃度、例えば酸素濃度を検出する排ガスセンサ(酸素
濃度センサ)を触媒装置の下流側に配置し、この酸素濃
度センサの出力を所定の目標値(一定値)に収束させる
ように内燃機関で燃焼させる混合気の空燃比、ひいて
は、触媒装置に進入する排ガスの空燃比(以下、ここで
は触媒上流空燃比という)を制御する技術を特開平11
−93740号公報等に提案している。ここで、上記触
媒上流空燃比は、詳しくは、触媒装置に進入する排ガス
となった燃焼混合気の空燃比で、該排ガス中の酸素濃度
から把握される空燃比である。
【0003】この技術では、触媒装置の上流側から下流
側の酸素濃度センサにかけての排気系を制御対象とし、
この排気系の出力量としての酸素濃度センサの出力を前
記目標値に収束させるように、該排気系の入力量として
の触媒上流空燃比を規定する操作量、例えば該排ガスの
目標空燃比を逐次生成する。そして、その目標空燃比に
応じて内燃機関で燃焼させる混合気の空燃比を操作する
ことで、前記触媒上流空燃比を目標空燃比に操作し、ひ
いては、酸素濃度センサの出力を前記目標値に収束制御
する。
【0004】この場合、前記排気系は、これに含まれる
触媒装置に起因して一般に比較的長い無駄時間を有す
る。また、内燃機関の低速回転数域での運転時(例えば
アイドリング運転時)等では、前記目標空燃比から触媒
上流空燃比を生成する系(この系には内燃機関が含まれ
る。以下、ここではこの系を空燃比操作系という)が有
する無駄時間も比較的長いものとなることがある。そし
て、このような無駄時間は、酸素濃度センサの出力を前
記目標値を安定に収束させる上で悪影響を及ぼしやす
い。このため、前記技術では、前記排気系のあらかじめ
定めたモデル等に基づいて構築したアルゴリズムによっ
て、前記排気系の無駄時間後、あるいは、その無駄時間
と前記空燃比操作系の無駄時間とを合わせた無駄時間後
の酸素濃度センサの出力の推定値を表すデータを逐次生
成する。そして、その推定値を用いて前記目標空燃比を
生成する。また、この場合、目標空燃比の生成は、例え
ばフィードバック制御の一手法であるスライディングモ
ード制御(詳しくは適応スライディングモード制御)の
処理により行われる。
【0005】尚、酸素濃度センサの出力が前記目標値に
収束している状態での排ガスの空燃比は、理論空燃比近
傍の空燃比である。
【0006】このような技術によれば、前記排気系や空
燃比操作系の無駄時間の影響を補償しつつ、酸素濃度セ
ンサの出力の目標値への収束制御を安定して行うことが
でき、ひいては、触媒装置の良好な浄化性能を該触媒装
置の劣化状態等によらずに確保することが可能となる。
【0007】尚、上記の技術において、前記排気系をプ
ラントとみなしたとき、前記内燃機関はこのプラントへ
の入力としての触媒上流空燃比を生成するアクチュエー
タ、前記酸素濃度センサはプラントの出力としての酸素
濃度を検出する検出手段とみなすことができる。
【0008】ところで、自動車等に搭載される内燃機関
では、一般に、常に理論空燃比近傍の空燃比での内燃機
関の運転(以下、ストイキ運転という)を行うわけでは
なく、運転状況によっては、内燃機関のフュエルカット
を行ったり、空燃比のリーン領域での内燃機関の運転
(以下、リーン運転という)を行う場合もある。そし
て、前記酸素濃度センサの出力をその目標値に収束させ
る制御は、上記ストイキ運転の際に行われるものであ
る。
【0009】一方、前記酸素濃度センサの出力は、前記
目標値の近傍領域(理論空燃比近傍の空燃比域)では酸
素濃度に対してほぼ線形な特性を示すが、その近傍領域
をはずれた領域では、非線形なものとなる(図2の実線
aを参照)。このため、内燃機関のフュエルカットやリ
ーン運転の直後のストイキ運転では、酸素濃度センサの
出力が非線形な領域の出力となる。
【0010】ところが、このように酸素濃度センサの出
力が非線形な領域で変化するときには、前記の技術で
は、推定値の精度が低下しやすく、該出力が線形な領域
にあるときと同等の精度を確保することが困難である。
また、加えて、触媒の化学反応に基づく還元作用を呈す
る場合(リーンからリッチへの変化の場合)と、酸化作
用を呈する場合(リッチからリーンへの変化の場合)と
では、触媒の応答が異なり、これによっても非線形性は
増す。この場合、前記目標空燃比を生成するために制御
の安定性が高いスライディングモード制御(特に適応ス
ライディングモード制御)の処理を用いることで、酸素
濃度センサの出力の制御の安定性が損なわれることは回
避できるが、前記推定値の精度の低下に起因して、酸素
濃度センサの出力の収束制御の速応性が損なわれること
がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる背景に
鑑みてなされたものであり、プラントの出力を検出する
検出手段の出力が非線形性を呈するような場合であって
も、該検出手段の出力状態によらずに、該検出手段の出
力を所定の目標値に収束させるような制御を高い速応性
で良好に行うことができるプラントの制御装置を提供す
ることを目的とする。
【0012】また、特に、内燃機関の排気通路の触媒装
置の下流に配置した排ガスセンサの出力が非線形性を呈
するような場合であっても、該排ガスセンサの出力状態
によらずに、該排ガスセンサの出力を所定の目標値に収
束させる制御を高い速応性で良好に行うことができ、触
媒装置による排ガスの浄化性能を高めることができる内
燃機関の空燃比制御装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明のプラントの制御
装置は、前記の目的を達成するために、第1の態様と第
2の態様とがあり、その第1の態様は、所定の入力から
所定の出力を生成するプラントと、該プラントへの入力
を生成するアクチュエータと、前記プラントの出力を検
出する検出手段と、該検出手段の出力を所定の目標値に
収束させるように前記プラントへの入力を操作するため
の操作量を逐次生成する操作量生成手段とを基本構成と
して備えたプラントの制御装置に関するものである。ま
た、第2の態様は、さらに、上記基本構成に加えて、前
記操作量に応じて前記アクチュエータの動作を制御して
前記プラントへの入力を操作するアクチュエータ制御手
段を備えたプラントの制御装置に関するものである。
【0014】そして、本発明のプラントの制御装置の第
1の態様は、前記プラントが有する無駄時間の影響を補
償して、前記検出手段の出力を前記所定の目標値に収束
させる制御を行うものであり、前記プラントが有する無
駄時間後の前記検出手段の出力の推定値を表すデータ
を、少なくとも該検出手段の出力のデータを用いて互い
に異なるアルゴリズムにより逐次生成する複数の推定手
段を備え、前記操作量生成手段は、前記複数の推定手段
がそれぞれ生成したデータのうちのいずれか一つのデー
タが表す推定値を所定の条件に応じて選択的に用いて、
又は該複数の推定手段のデータがそれぞれ表す推定値を
所定の条件に応じた形態で合成してなる推定値を用いて
前記操作量を生成することを特徴とするものである。
【0015】また、第2の態様は、前記プラントが有す
る無駄時間と前記アクチュエータ制御手段及びアクチュ
エータからなる入力操作系(前記操作量からプラントへ
の入力を生成する系)が有する無駄時間とを合わせた合
計無駄時間の影響を補償して、前記検出手段の出力を前
記所定の目標値に収束させる制御を行うものであり、前
記合計無駄時間後の前記検出手段の出力の推定値を表す
データを、少なくとも該検出手段の出力のデータを用い
て互いに異なるアルゴリズムにより逐次生成する複数の
推定手段を備え、前記操作量生成手段は、前記複数の推
定手段がそれぞれ生成したデータのうちのいずれか一つ
のデータが表す推定値を所定の条件に応じて選択的に用
いて、又は該複数の推定手段のデータがそれぞれ表す推
定値を所定の条件に応じた形態で合成してなる推定値を
用いて前記操作量を生成することを特徴とするものであ
る。
【0016】かかる本発明のプラントの制御装置の第1
及び第2の態様によれば、前記複数の推定手段が、それ
ぞれ互いに異なるアルゴリズムにより、前記無駄時間後
の前記検出手段の出力の推定値を表すデータを生成する
ので、前記検出手段の複数種類の出力状態(これはプラ
ントの出力状態に応じたものとなる)にそれぞれ適合す
るような複数の推定値を表すデータを生成することが可
能となる。従って、該検出手段の出力が非線形性を呈す
る場合であっても、前記複数の推定手段がそれぞれ生成
したデータのうちのいずれか一つのデータが表す推定値
を所定の条件(例えば検出手段の出力状態やこれと相関
性を有するものに係わる条件)に応じて選択し、あるい
は、それらの推定値を上記所定の条件に応じた形態で合
成してなる推定値を求めたとき、前記第1の態様では、
その選択した推定値あるいは合成してなる推定値を、前
記プラントの無駄時間後の推定値として精度の良い適正
なものとすることができる。同様に、前記第2の態様で
は、選択した推定値あるいは合成してなる推定値を、前
記プラントの無駄時間と前記入力操作系の無駄時間とを
合わせた前記合計無駄時間後の推定値として精度の良い
適正なものとすることができる。
【0017】このため、このように選択した推定値ある
いは合成してなる推定値を用いて前記操作量を生成する
ことで、その操作量は、前記検出手段の出力状態あるい
はプラントの出力状態によらずに前記プラントの無駄時
間や、前記合計無駄時間の影響を補償して、前記検出手
段の出力を前記目標値に収束させる上で適正なものとな
る。この結果、前記検出手段の出力状態によらずに、該
検出手段の出力を所定の目標値に収束させる制御の速応
性を高めることができる。
【0018】尚、本発明のプラントの制御装置におい
て、前記操作量としては、例えばプラントへの目標入力
やアクチュエータの動作量の補正量等が挙げられる。そ
して、前記操作量を例えばプラントへの目標入力とした
場合には、プラントへの入力を検出する検出手段を設
け、この検出手段の出力(プラントへの入力の検出値)
を上記目標入力に収束させるようにフィードバック制御
の処理によりプラントへの入力を操作することが好適で
ある。また、前記推定値を用いて前記操作量を生成する
前記操作量生成手段は、例えば、該推定値を前記検出手
段の出力の目標値に収束させるようにフィードバック制
御の処理により前記操作量を生成することで、前記プラ
ントの無駄時間や前記合計無駄時間の影響を適正に補償
し得る操作量を生成することが可能である。
【0019】かかる第1および第2の態様の本発明のプ
ラントの制御装置では、前記操作量生成手段は、前記複
数の推定手段がそれぞれ生成したデータが表す推定値を
重み付けして合成してなる合成推定値を求める手段を有
し、各推定手段の表す推定値に係る重み係数を、前記所
定の条件に応じて可変的に設定することにより、前記各
推定手段の推定値を含む前記合成推定値を求め、その求
めた合成推定値を用いて前記操作量を生成することが好
ましい。
【0020】これによれば、前記重み係数を前記所定の
条件に応じて可変的に設定することで、前記複数の推定
手段がそれぞれ生成したデータが表す推定値のいずれか
一つを前記合成推定値として得ることができる(例えば
当該一つの推定値に係る重み係数を「1」とし、他の推
定値に係る重み係数を「0」とする)と共に、それらの
推定値を複合的に合成した推定値を前記合成推定値とし
て得ることもできる。従って、前記操作量の生成に用い
る推定値の選択や合成を前記重み係数の設定によって一
括的に行うことができ、その選択や合成のためのアルゴ
リズムの構築が容易になる。
【0021】また、本発明のプラントの制御装置では、
前記操作量生成手段は、種々様々のフィードバック制御
処理により前記操作量を生成することが可能であるが、
適応制御の処理により前記操作量を生成したり、あるい
はスライディングモード制御の処理により前記操作量を
生成することが好適である。
【0022】すなわち、適応制御の処理により前記操作
量を生成することで、プラントの挙動状態に則して前記
操作量を生成することが可能となって、検出手段の出力
の目標値への収束制御の速応性を高めることが可能とな
る。また、スライディングモード制御は、一般に、外乱
や制御対象のモデル化誤差等に対する制御の安定性が高
いという特性を有している。従って、このようなスライ
ディングモード制御の処理により、前記操作量を生成す
るようにすることで、その処理に使用する前記推定値の
誤差が外乱等の影響で予想以上に大きくなったとして
も、その影響で前記検出手段の出力が不安定となるよう
な状況を最小限に抑えることが可能となり、該検出手段
の出力の前記目標値への制御の安定性を高めることがで
きる。
【0023】尚、スライディングモード制御の処理で用
いる制御対象のモデルのパラメータを例えば制御対象の
挙動状態に則して逐次同定するようにすれば、適応制御
の処理とスライディングモード制御の処理とを複合させ
ることも可能である。
【0024】また、前記スライディングモード制御は、
外乱等の影響を極力排除するために、通常のスライディ
ングモード制御に対して、所謂、適応則(適応アルゴリ
ズム)という制御則を加味した適応スライディングモー
ド制御であることが特に好適である。ここで、この適応
スライディングモード制御について補足説明をしておく
と、スライディングモード制御では、一般に制御量とそ
の目標値の偏差等を用いて構成される切換関数といわれ
る関数が用いられ、この切換関数の値を「0」に収束さ
せることが重要となる。この場合、通常のスライディン
グモード制御では、切換関数の値を「0」に収束させる
ために所謂、到達則という制御則が用いられる。しかる
に、外乱等の影響が受けると、この到達則だけでは切換
関数の値の収束のの安定性や速応性を十分に確保するこ
とが困難となる場合もある。これに対して、適応スライ
ディングモード制御は、外乱等の影響を極力排除して切
換関数の値を「0」に収束させるために上記到達則に加
えて、適応則(適応アルゴリズム)という制御則をも用
いるようにしたものである。
【0025】また、本発明のプラントの制御装置では、
前記操作量の生成に使用する前記推定値を規定する前記
所定の条件、換言すれば、操作量の生成するために用い
る推定値の選択の仕方や合成の仕方を規定する前記所定
の条件は、例えば前記検出手段の出力のデータ値に基づ
く条件であることが好適である。すなわち、該検出手段
の出力のデータ値は、該検出手段の出力状態を直接的に
表す。このため、前記所定の条件を該検出手段の出力の
データ値に基づき定めることにより、その条件設定が容
易になると共に、検出手段の出力状態に適合した推定値
を選択し、あるいは該検出手段の出力状態に適合した合
成の推定値を得ることが可能となる。
【0026】そして特に、前記操作量をスライディング
モード制御(適応スライディングモード制御を含む)の
処理により生成する場合には、前記所定の条件は、前記
検出手段の出力の時系列データを変数成分とすると共に
前記スライディングモード制御の処理に用いる切換関数
に応じて定められた所定の線形関数の値と、前記検出手
段の出力のデータ値との組み合わせの条件であることが
好適である。
【0027】すなわち、前記操作量の生成にスライディ
ングモード制御の処理を用いた場合、そのスライディン
グモード制御用の切換関数に対応して定まるある線形関
数で、前記検出手段の出力の時系列データを変数成分と
する線形関数の値と、前記検出手段の出力のデータ値と
の組み合わせが、該検出手段の出力状態と高い相関性を
有する。従って、この組み合わせの条件を前記所定の条
件とすることで、検出手段の出力状態に適合した推定値
を選択し、あるいは該検出手段の出力状態に適合した合
成の推定値を得ることが可能となる。ひいては、検出手
段の出力状態に適した前記操作量を的確に生成すること
が可能となり、前記検出手段の出力の前記目標値への収
束制御の速応性を高めることができる。
【0028】この場合、前記切換関数が、例えば前記検
出手段の出力と前記目標値との偏差の時系列データを変
数成分とする線形な関数である場合には、前記所定の線
形関数は、その変数成分に係る係数値を前記切換関数の
変数成分に係る係数値と同一とした線形関数であること
が好適である。
【0029】このような線形関数を用いることで、前記
操作量を生成するために用いる前記推定値の選択の仕方
や合成の仕方を規定する前記組み合わせの条件を適正に
設定することができる。尚、この場合、上記所定の線形
関数は、切換関数と同じ形の関数であってもよい。
【0030】また、前記組み合わせの条件は、前記線形
関数の値及び前記検出手段の出力のデータ値の組み合わ
せが、その両値を座標成分とする座標平面上にあらかじ
め定めた所定の領域に存するか否かの条件を含むことが
好適である。
【0031】これによれば、前記線形関数の値及び前記
検出手段の出力のデータ値の組み合わせの分類、区別が
容易となり、該組み合わせの条件の設定を容易に適正に
行うことが可能となる。
【0032】また、本発明のプラントの制御装置におけ
る各推定手段のアルゴリズムは、前記検出手段の出力特
性やプラントの出力の挙動特性等に合わせて構築すれば
よく、種々様々なアルゴリズムの選択が可能である。
【0033】本発明のプラントの制御装置における推定
手段の形態としては、例えば次のような形態が好適であ
る。すなわち、本発明の第1の態様のプラントの制御装
置では、前記複数の推定手段は、例えば、前記プラント
が前記入力から応答遅れ要素及び無駄時間要素を介して
前記検出手段の出力を生成する系であるとして該プラン
トの挙動を表現すべくあらかじめ定めた該プラントのモ
デルに基づいて構築されたアルゴリズムにより前記推定
値を表すデータを生成する第1推定手段と、ファジー推
論のアルゴリズムより前記推定値を表すデータを生成す
る第2推定手段とからなることが好適である。
【0034】また、本発明の第2の態様のプラントの制
御装置では、前記複数の推定手段は、例えば、前記プラ
ントが前記入力から応答遅れ要素及び無駄時間要素を介
して前記検出手段の出力を生成する系であるとして該プ
ラントの挙動を表現すべくあらかじめ定めた該プラント
のモデルと前記入力操作系が前記操作量から無駄時間要
素を介して前記プラントへの入力を生成する系であると
して該入力操作系の挙動を表現すべくあらかじめ定めた
該入力操作系のモデルとに基づいて構築されたアルゴリ
ズムにより前記推定値を表すデータを生成する第1推定
手段と、ファジー推論のアルゴリズムより前記推定値を
表すデータを生成する第2推定手段とからなることが好
適である。
【0035】これらの第1推定手段及び第2推定手段に
より、検出手段の出力状態やプラントの出力状態に適合
した推定値を得ることが可能となる。
【0036】次に、本発明の内燃機関の空燃比制御装置
は、前記プラントの制御装置と同様に前記の目的を達成
するために二つの態様があり、その第1の態様は、内燃
機関の排気通路に設けた触媒装置の下流側に該触媒装置
を通過した排ガス中の特定成分の濃度を検出すべく配置
した排ガスセンサと、該排ガスセンサの出力を所定の目
標値に収束させるように前記触媒装置に進入する排ガス
の空燃比を規定する操作量を逐次生成する操作量生成手
段とを基本構成として備えた内燃機関の空燃比制御装置
に関するものである。また、第2の態様は、上記の基本
構成に加えて、前記操作量に応じて前記内燃機関で燃焼
させる混合気の空燃比を操作する機関制御手段を備えた
内燃機関の空燃比制御装置に関するものである。
【0037】そして、本発明の内燃機関の空燃比制御装
置の第1の態様は、前記触媒装置の上流側から下流側の
前記排ガスセンサにかけての該触媒装置を含む排気系が
有する無駄時間後の該排ガスセンサの出力の推定値を表
すデータを、少なくとも該排ガスセンサの出力のデータ
を用いて互いに異なるアルゴリズムにより逐次生成する
複数の推定手段を備え、前記操作量生成手段は、前記複
数の推定手段がそれぞれ生成したデータのうちのいずれ
か一つのデータが表す推定値を所定の条件に応じて選択
的に用いて、又は該複数の推定手段のデータがそれぞれ
表す推定値を所定の条件に応じた形態で合成してなる推
定値を用いて前記操作量を生成することを特徴とするも
のである。
【0038】また、本発明の内燃機関の空燃比制御装置
の第2の態様は、前記触媒装置の上流側から下流側の前
記排ガスセンサにかけての該触媒装置を含む排気系が有
する無駄時間と前記機関制御手段及び内燃機関から成る
空燃比操作系が有する無駄時間とを合わせた合計無駄時
間後の該排ガスセンサの出力の推定値を表すデータを、
少なくとも該排ガスセンサの出力のデータを用いて互い
に異なるアルゴリズムにより逐次生成する複数の推定手
段を備え、前記操作量生成手段は、前記複数の推定手段
がそれぞれ生成したデータのうちのいずれか一つのデー
タが表す推定値を所定の条件に応じて選択的に用いて、
又は該複数の推定手段のデータがそれぞれ表す推定値を
所定の条件に応じた形態で合成してなる推定値を用いて
前記操作量を生成することを特徴とするものである。
【0039】尚、本発明の内燃機関の空燃比制御装置
(第1及び第2の態様の両者)は、基本的には、本発明
のプラントの制御装置の一形態とみなせるものであり、
前記プラントの制御装置に対応づけると、該空燃比制御
装置における前記排気系、内燃機関、排ガスセンサ、機
関制御手段、操作量生成手段がそれぞれ前記プラントの
制御装置における前記プラント、アクチュエータ、検出
手段、アクチュエータ制御手段、操作量生成手段に相当
するものとなる。また、前記触媒装置に進入する排ガス
の空燃比が、プラントしての前記排気系への入力に相当
するものとなり、前記排ガスセンサが検出する前記特定
成分の濃度が、プラントしての排気系の出力に相当する
ものとなる。
【0040】かかる本発明の内燃機関の空燃比制御装置
の第1及び第2の態様によれば、前記複数の推定手段
が、それぞれ互いに異なるアルゴリズムにより、前記無
駄時間後の前記排ガスセンサの出力の推定値を表すデー
タを生成するので、前記排ガスセンサの複数種類の出力
状態(これは前記排気系の下流端の排ガス状態に応じた
ものとなる)にそれぞれ適合するような複数の推定値を
表すデータを生成することが可能となる。従って、該排
ガスセンサの出力が非線形性を呈する場合であっても、
前記複数の推定手段がそれぞれ生成したデータのうちの
いずれか一つのデータが表す推定値を所定の条件(例え
ば排ガスセンサの出力状態やこれと相関性を有するもの
に係わる条件)に応じて選択し、あるいは、それらの推
定値を上記所定の条件に応じた形態で合成してなる推定
値を求めたとき、その選択した推定値あるいは合成して
なる推定値を、前記排気系の無駄時間後の推定値(第1
の態様の場合)、あるいは、前記排気系の無駄時間と前
記空燃比操作系の無駄時間とを合わせた合計無駄時間後
の推定値(第2の態様の場合)として精度の良い適正な
ものとすることができる。
【0041】このため、このように選択した推定値ある
いは合成してなる推定値を用いて前記操作量を生成する
ことで、その操作量は、前記排ガスセンサの出力状態あ
るいは前記排気系を通過した排ガスの成分状態によらず
に前記排気系の無駄時間や、前記合計無駄時間の影響を
補償して、前記排ガスセンサの出力を前記目標値に収束
させる上で適正なものとなる。この結果、前記排ガスセ
ンサの出力状態によらずに、該排ガスセンサの出力を所
定の目標値に収束させる制御の速応性を高めることがで
き、ひいては、触媒装置の所要の浄化性能を好適に確保
することができる。
【0042】尚、本発明の内燃機関の空燃比制御装置に
おいて、前記操作量としては、例えば触媒装置に進入す
る排ガスの目標空燃比や内燃機関の燃料供給量の補正量
等が挙げられる。そして、前記操作量を例えば目標空燃
比とした場合には、触媒装置に進入する排ガスの空燃比
を検出する空燃比センサを触媒装置の上流側に設け、こ
の空燃比センサの出力(排ガスの空燃比の検出値)を上
記目標空燃比に収束させるようにフィードバック制御の
処理により、内燃機関で燃焼させる混合気の空燃比を操
作することが好適である。この場合におけるフィードバ
ック制御の処理は、適応制御器等の漸化式形式の制御器
により行うことが好適である。また、前記推定値を用い
て前記操作量を生成する前記操作量生成手段は、前記プ
ラントの制御装置の場合と同様、例えば、該推定値を前
記排ガスセンサの出力の目標値に収束させるようにフィ
ードバック制御の処理により前記操作量を生成すること
で、前記排気系の無駄時間や前記合計無駄時間の影響を
適正に補償し得る操作量を生成することが可能である。
【0043】かかる第1及び第2の態様の本発明の内燃
機関の空燃比制御装置では、前記プラントの制御装置の
場合と同様、前記操作量生成手段は、前記複数の推定手
段がそれぞれ生成したデータが表す推定値を重み付けし
て合成してなる合成推定値を求める手段を有し、各推定
手段の表す推定値に係る重み係数を、前記所定の条件に
応じて可変的に設定することにより、前記各推定手段の
推定値を含む前記合成推定値を求め、その求めた合成推
定値を用いて前記操作量を生成することが好ましい。
【0044】これによれば、前記重み係数を前記所定の
条件に応じて可変的に設定することで、前記複数の推定
手段がそれぞれ生成したデータが表す推定値のいずれか
一つを前記合成推定値として得ることができると共に、
それらの推定値を複合的に合成した推定値を前記合成推
定値として得ることもできるため、前記操作量の生成に
用いる推定値の選択や合成を前記重み係数の設定によっ
て一括的に行うことができ、その選択や合成のためのア
ルゴリズムの構築が容易になる。
【0045】さらに、本発明の内燃機関の空燃比制御装
置では、前記プラントの制御装置の場合と同様、前記操
作量生成手段は、適応制御の処理により前記操作量を生
成したり、あるいは、スライディングモード制御(好ま
しくは、適応スライディングモード制御)の処理により
前記操作量を生成することが好適である。
【0046】このように適応制御の処理により前記操作
量を生成することで、前記排気系の挙動状態に則して前
記操作量を生成することが可能となって、排ガスセンサ
の出力の前記目標値への収束制御の速応性を高めること
が可能となる。また、スライディングモード制御の処理
により前記操作量を生成することで、排ガスセンサの出
力の前記目標値への収束制御の安定性を高めることがで
きる。
【0047】尚、前記プラントの制御装置で説明したよ
うに、適応制御の処理とスライディングモード制御の処
理(適応スライディングモード制御を含む)を複合させ
ることも可能である。
【0048】また、本発明の内燃機関の空燃比制御装置
では、前記プラントの制御装置の場合と同様、前記操作
量の生成に使用する前記推定値を規定する前記所定の条
件(操作量を生成するために用いる推定値の選択の仕方
や合成の仕方を規定する所定の条件)は、例えば前記排
ガスセンサの出力のデータ値に基づく条件であることが
好適である。特に、スライディングモード制御の処理に
より前記操作量を生成する場合、前記所定の条件は、前
記排ガスセンサの出力の時系列データを変数成分とする
と共に前記スライディングモード制御の処理に用いる切
換関数に応じて定められた所定の線形関数の値と、前記
排ガスセンサの出力のデータ値との組み合わせの条件で
あることが好適である。
【0049】これにより、前記排ガスセンサの出力状態
に適合した推定値を選択し、あるいは該排ガスセンサの
出力状態に適合した合成の推定値を得ることが可能とな
り、排ガスセンサの出力状態に適した前記操作量を的確
に生成することが可能となる。この結果、前記排ガスセ
ンサの出力の前記目標値への収束制御の速応性を高め、
ひいては前記触媒装置の浄化性能を好適に確保すること
ができる。
【0050】さらにこの場合、前記切換関数が、例えば
前記排ガスセンサの出力と前記目標値との偏差の時系列
データを変数成分とする線形な関数である場合には、前
記所定の線形関数は、その変数成分に係る係数値を前記
切換関数の変数成分に係る係数値と同一とした線形関数
(切換関数と同じ形の関数であってもよい)であること
が好適である。
【0051】このような線形関数を用いることで、前記
操作量を生成するために用いる前記推定値の選択の仕方
や合成の仕方を規定する前記組み合わせの条件を適正に
設定することができる。
【0052】また、前記組み合わせの条件は、前記線形
関数の値及び前記検出手段の出力のデータ値の組み合わ
せが、その両値を座標成分とする座標平面上にあらかじ
め定めた所定の領域に存するか否かの条件を含むことが
好適である。
【0053】これによれば、前記線形関数の値及び前記
排ガスセンサの出力のデータ値の組み合わせの分類、区
別が容易となり、該組み合わせの条件の設定を容易に適
正に行うことが可能となる。
【0054】ところで、本発明の内燃機関の空燃比制御
装置では、前記触媒装置の最適な浄化性能を確保する上
では、前記排ガスセンサとして酸素濃度センサを用い、
その目標値を所定の一定値とすることが好適である。
【0055】そして、このように前記排ガスセンサが酸
素濃度センサである場合、本発明の第1の態様の内燃機
関の空燃比制御装置では、前記複数の推定手段は、例え
ば前記排気系が前記触媒装置に進入する排ガスの空燃比
から応答遅れ要素及び無駄時間要素を介して前記酸素濃
度センサの出力を生成する系であるとして該排気系の挙
動を表現すべくあらかじめ定めた該排気系のモデルに基
づいて構築されたアルゴリズムにより前記推定値を表す
データを生成する第1推定手段と、ファジー推論のアル
ゴリズムより前記推定値を表すデータを生成する第2推
定手段とから構成することが好ましい。
【0056】また、本発明の第2の態様の内燃機関の空
燃比制御装置では、前記複数の推定手段は、前記排気系
が前記触媒装置に進入する排ガスの空燃比から応答遅れ
要素及び無駄時間要素を介して前記酸素濃度センサの出
力を生成する系であるとして該排気系の挙動を表現すべ
くあらかじめ定めた該排気系のモデルと前記空燃比操作
系が前記操作量から無駄時間要素を介して前記触媒装置
に進入する排ガスの空燃比を生成する系であるとして該
空燃比操作系の挙動を表現すべくあらかじめ定めた該空
燃比操作系のモデルとに基づいて構築されたアルゴリズ
ムにより前記推定値を表すデータを生成する第1推定手
段と、ファジー推論のアルゴリズムより前記推定値を表
すデータを生成する第2推定手段とから構成することが
好ましい。
【0057】すなわち、前記第1の態様の内燃機関の空
燃比制御装置では、基本的には、前記排気系のモデルに
基づいて構築したアルゴリズムにより、酸素濃度センサ
の出力が、排ガス中の酸素濃度に対してほぼ線形な変化
を呈するような領域(前記目標値の近傍領域)で変化す
るような状態における該排気系の無駄時間後における前
記推定値を表すデータを適正に生成することが可能であ
る。
【0058】また、前記第2の態様の内燃機関の空燃比
制御装置では、基本的には、前記排気系のモデルと前記
空燃比操作系のモデル(前記空燃比操作系を単なる無駄
時間要素とみなしたモデル)とに基づいて構築したアル
ゴリズムにより、前記酸素濃度センサの出力が、排ガス
中の酸素濃度に対してほぼ線形な変化を呈するような領
域(前記目標値の近傍領域)で変化するような状態にお
ける前記合計無駄時間後における前記推定値を表すデー
タを比較的精度よく生成することが可能である。
【0059】一方、本願発明者等の知見によれば、第1
及び第2の態様の内燃機関の空燃比制御装置のいずれに
おいても、酸素濃度センサの出力が、排ガス中の酸素濃
度に対して非線形な変化を呈するような領域で変化する
ような状態における前記排気系の無駄時間後、あるい
は、前記合計無駄時間後における前記推定値を表すデー
タは、例えばファジー推論のアルゴリズムによって比較
的精度よく生成することが可能である。
【0060】そこで、本発明の内燃機関の空燃比制御装
置では、前記推定値のデータを生成するために前記排気
系のモデルに基づくアルゴリズム(第1の態様の場
合)、あるいは、該排気系のモデル及び前記空燃比操作
系のモデルに基づくアルゴリズム(第2の態様の場合)
を用いる前記第1推定手段と、ファジー推論のアルゴリ
ズムにより前記推定値のデータを生成する前記第2推定
手段とにより前記複数の推定手段を構成する。
【0061】このようにすることにより、第1及び第2
推定手段により酸素濃度センサの互いに異なる出力状態
における前記推定値のデータを適正に生成することが可
能となるため、それらの推定値を選択的に用い、あるい
は、それらの推定値を合成したものを用いることで、酸
素濃度センサの出力状態によらずに、該酸素濃度センサ
の出力を前記目標値に収束させる上で適正な前記操作量
を生成することが可能となる。
【0062】このように排ガスセンサを酸素濃度センサ
として、前記複数の推定手段を前記第1及び第2推定手
段により構成した場合において、特に、前記操作量を前
記スライディングモード制御の処理により生成する場合
には、前記第2推定手段のファジー推論のアルゴリズム
は、前記酸素濃度センサの出力の時系列データを変数成
分とすると共に前記スライディングモード制御の処理に
用いる切換関数に応じて定められた所定の線形関数の値
と、前記酸素濃度センサの出力のデータ値とを前記ファ
ジー推論の前件部のパラメータとし、前記推定値を表す
データを該ファジー推論の後件部のパラメータとして生
成するアルゴリズムであることが好ましい。
【0063】すなわち、前記操作量の生成にスライディ
ングモード制御の処理を用いた場合、本願発明者等の知
見によれば、上記のようにファジー推論の前件部のパラ
メータと、後件部のパラメータとを設定することで、特
に、前記酸素濃度センサの出力が非線形領域で変化する
状態における前記推定値を表すデータを比較的精度よく
好適に得ることが可能となる。この結果、酸素濃度セン
サの出力が非線形領域に存するような状態からでも、該
酸素濃度センサの出力の前記目標値への収束制御の速応
性を高めることができる。
【0064】尚、この場合、前述のように、前記所定の
条件(操作量を生成するために用いる推定値の選択の仕
方や合成の仕方を規定する所定の条件)を、前記スライ
ディングモード制御の処理に用いる切換関数に応じて定
められた所定の線形関数の値と、前記検出手段の出力の
データ値との組み合わせの条件としたときには、前記フ
ァジー推論の前件部に係わる線形関数は、この組み合わ
せ条件に係わる線形関数と同一であることが好適であ
る。
【0065】これによれば、排ガスセンサ(酸素濃度セ
ンサ)の出力状態が、前記第2推定手段による推定値を
選択してもしくは重視して前記操作量を生成した方が良
い状態(ファジー推論による推定値がより良好な精度を
有するような状態)であるのか、前記第1推定手段によ
る推定値を選択してもしくは重視して前記操作量を生成
した方が良い状態(排気系のモデル等に基づく推定値が
より良好な精度を有するような状態)であるのかを、上
記組み合わせ条件によって適正に区別化することができ
る。このため、第1及び第2推定手段による推定値の選
択あるいは合成を、それぞれの推定値の精度状態に適合
させて行うことができ、ひいては、前記操作量の生成を
より適正に行うことが可能となる。
【0066】また、前記ファジー推論のアルゴリズム
は、前記後件部のパラメータに係わるメンバーシップ関
数として複数の棒状関数を用いて、min−max−重
心法に基づき構築されたアルゴリズムであることが好ま
しい。ここで、前記棒状関数は、その変数(パラメー
タ)の一つの値においてのみ、関数値を持つような関数
である。また、min−max−重心法は、ファジー推
論において一般的に用いられている公知の手法である。
【0067】これによれば、ファジー推論のアルゴリズ
ムの構築が容易なものとなると共に、前記推定値を表す
データを生成するための演算負荷を軽減することができ
る。
【0068】また、上述のように、排ガスセンサとして
酸素濃度センサを用いると共に第1及び第2推定手段を
備えた本発明の内燃機関の空燃比制御装置では、前記第
1推定手段に関しては、前記触媒装置に進入する排ガス
の空燃比を検出する空燃比センサと、該空燃比センサ及
び前記酸素濃度センサの出力のデータを用いて前記排気
系のモデルの設定すべきパラメータの値を逐次同定する
同定手段とを備え、前記第1推定手段のアルゴリズム
は、少なくとも前記酸素濃度センサ及び空燃比センサの
それぞれの出力のデータと前記同定手段により同定され
た前記排気系のモデルのパラメータとを用いて前記推定
値を表すデータを生成するアルゴリズムであることが好
ましい。
【0069】すなわち、前記排気系の入力としての排ガ
スの空燃比(触媒装置に進入する排ガスの空燃比)を前
記空燃比センサにより検出し、この空燃比センサの出力
のデータと、前記排気系の出力としての排ガス中の酸素
濃度を検出する酸素濃度センサの出力のデータとを用い
て前記同定手段により前記排気系のモデルのパラメータ
を逐次同定することで、該モデルのパラメータが、排気
系の時々刻々の実際の挙動状態に則してリアルタイムで
同定されることとなる。このため、実際の排気系の挙動
に対する該排気系のモデルの誤差を極力低減することが
できる。この結果、酸素濃度センサの出力がほぼ線形な
領域で変化する状態における前記第1推定手段による前
記推定値のデータの精度を高めることが可能となり、ひ
いては、酸素濃度センサの出力の前記目標値への収束制
御の速応性を高めることができる。
【0070】尚、第1推定手段のアルゴリズムに関して
は、前記第1の態様及び第2の態様のいずれの場合であ
っても、前記空燃比センサの出力のデータと前記操作量
のデータとの両者もしくはいずれか一方と、前記酸素濃
度センサの出力のデータと、前記排気系のモデルのパラ
メータとを用いて前記推定値を表すデータを生成するこ
とが可能である。
【0071】また、前記第1推定手段のアルゴリズムの
基礎となる前記排気系のモデルは、基本的には離散時間
系で構築しておくことが好ましい。そして、この場合に
は、該排気系のモデルは、例えば、所定の制御サイクル
毎の酸素濃度センサの出力のデータを、その制御サイク
ルよりも過去の制御サイクルにおける該酸素濃度センサ
の出力のデータと、前記排気系の無駄時間以前の制御サ
イクルにおいて前記触媒装置に進入する排ガスの空燃比
を表すデータ(前記空燃比センサの出力のデータ、前記
操作量のデータ等)とにより表現するモデルであること
が好ましい。
【0072】
【発明の実施の形態】本発明の第1実施形態を図1〜図
18を参照して説明する。尚、本実施形態は、本発明の
内燃機関の空燃比制御装置の第2の態様の実施形態であ
ると同時に、本発明のプラントの制御装置の第2の態様
の実施形態でもある。
【0073】図1は本実施形態における内燃機関の排ガ
スの空燃比制御装置の全体的システム構成を示すブロッ
ク図であり、図中、1は例えば自動車あるいはハイブリ
ッド車に車両の推進源(図示しない駆動輪の駆動源)と
して搭載された4気筒のエンジン(内燃機関)である。
このエンジン1が各気筒毎に燃料及び空気の混合気の燃
焼により生成する排ガスは、エンジン1の近傍で共通の
排気管2(排気通路)に集合され、該排気管2を介して
大気中に放出される。そして、排気管2には、排ガスを
浄化するために、図示しない三元触媒やNOx吸収材
(窒素酸化物吸収材)を用いて構成された触媒装置3が
介装されている。
【0074】尚、触媒装置3に含まれるNOx吸収材
は、酸化バリウム(BaO)等から構成される吸蔵式の
ものと、ナトリウム(Na)、チタン(Ti)、ストロ
ンチウム(Sr)等から構成される吸着式のものとがあ
るが、そのいずれのタイプのものであってもよい。ま
た、本発明のプラントの制御装置に対応させると、エン
ジン1はアクチュエータに相当するものである。
【0075】また、排気管2における触媒装置3の上流
側の箇所(詳しくはエンジン1の各気筒毎の排ガスの集
合箇所)と触媒装置3の下流側の箇所とにはそれぞれ空
燃比センサ4と排ガスセンサとしてのO2センサ5(酸
素濃度センサ)が設けられている。ここで、本発明のプ
ラントの制御装置に対応させると、触媒装置3の上流側
の空燃比センサ4から触媒装置3の下流側のO2センサ
5にかけての該触媒装置3を含む排気系(図1で参照符
号Eを付した部分)はプラントに相当し、O2センサ5
はこの排気系Eの出力を検出する検出手段に相当するも
のである。
【0076】O2センサ5は、触媒装置3を通過した排
ガス中の酸素濃度に応じたレベルの出力VO2/OUT(酸素
濃度の検出値を示す出力)を生成する通常的なO2セン
サである。ここで、排ガス中の酸素濃度は、燃焼により
その排ガスとなった混合気の空燃比に応じたものとな
る。そして、このO2センサ5の出力VO2/OUTは、図2に
実線aで示す如く、排ガス中の酸素濃度に対応する空燃
比が理論空燃比近傍の比較的狭い範囲Δに存するような
状態で、該排ガス中の酸素濃度に対してほぼ線形に高感
度な変化を生じるものとなる。また、その範囲Δを逸脱
した空燃比に対応する酸素濃度では、O2センサ5の出
力VO2/OUTは、酸素濃度の変化に対して非線形なものと
なり、ほぼ一定のレベルで飽和する。
【0077】空燃比センサ4は、触媒装置3に進入する
排ガスの酸素濃度により把握される空燃比の検出値を表
す出力KACTを生成するものである。この空燃比センサ4
は、例えば本願出願人が特開平4−369471号公報
にて詳細に説明した広域空燃比センサにより構成された
ものであり、図2に実線bで示す如く、O2センサ5よ
りも排ガス中の酸素濃度の広範囲にわたってそれに比例
したレベルの出力を生成するものである。換言すれば、
該空燃比センサ4(以下、LAFセンサ4という)は、
排ガス中の酸素濃度に対応した空燃比の広範囲にわたっ
て線形な出力特性を示すものである。
【0078】本実施形態のシステムでは、エンジン1で
燃焼させる混合気の空燃比を制御するために、マイクロ
コンピュータを用いて構成された制御ユニット6を備え
ている。この制御ユニット6には、その制御処理を行う
ために、LAFセンサ4の出力KACTやO2センサ5の出
力V O2/OUTが与えられる他、エンジン1の回転数、吸気
圧、冷却水温、スロットル弁の開度等、エンジン1の運
転状態を検出するための図示しない各種のセンサの出力
が与えられる。
【0079】この制御ユニット6は、その処理機能を大
別すると、触媒装置3の最適な浄化性能を確保するよう
に、触媒装置に進入する排ガスの空燃比(以下、触媒上
流空燃比という)の目標値である目標空燃比KCMDを触媒
上流空燃比を規定する操作量として求める処理を逐次実
行する操作量生成手段7と、この目標空燃比KCMD等に応
じてエンジン1の燃料供給量を調整することによって触
媒上流空燃比を操作する処理を逐次実行する機関制御手
段8とを具備している。
【0080】この場合、操作量生成手段7及び機関制御
手段8は、それぞれの制御処理を各別の制御サイクルで
実行するようにしている。すなわち、操作量生成手段7
は、その演算負荷や前記排気系Eが有する比較的長い無
駄時間を等を考慮し、あらかじめ定めた周期の制御サイ
クル(例えば30〜100ms)としている。また、機関
制御手段8の処理を実行する制御サイクルは、エンジン
1の燃料供給量の調整処理をエンジン1の燃焼サイクル
に同期させて行う必要があることから、エンジン1のク
ランク角周期(所謂TDC)に同期した制御サイクルと
している。そして、操作量生成手段7の制御サイクルの
周期は、エンジン1のクランク角周期(TDC)よりも
長いものとされている。
【0081】尚、本実施形態では、エンジン1の運転モ
ードとして、エンジン1で燃焼させる混合気の空燃比、
ひいては触媒上流空燃比を理論空燃比近傍の空燃比とし
てエンジン1の運転を行うストイキ運転モードや、該混
合気の空燃比をリーン状態(理論空燃比よりも燃料が少
ない状態)の空燃比としてエンジン1の運転を行うリー
ン運転モード等がある。そして、前記操作量生成手段7
が生成する目標空燃比KCMDは、エンジン1の運転モード
がストイキ運転モードであるときに、触媒上流空燃比の
目標値として前記機関制御手段8が使用するものであ
る。
【0082】前記操作量生成手段7及び機関制御手段8
をさらに説明する。
【0083】まず、操作量生成手段7に関し、触媒装置
3の浄化性能(具体的には排ガス中のNOx、HC、C
O等の浄化率)は、該触媒装置3を流れる排ガスの空燃
比が理論空燃比近傍の空燃比状態であって、前記O2
ンサ5の出力VO2/OUTがある一定値VO2/TARGET(図2参
照)に整定するような空燃比状態であるときに触媒装置
3が含む三元触媒等の劣化状態によらずに最適な浄化性
能が得られる。このため、操作量生成手段7は、上記一
定値VO2/TARGETをO2センサ5の出力VO2/OUTの目標値と
し、その目標値VO2/TARGETにO2センサ5の出力VO2/OUT
を収束させるように触媒上流空燃比の目標値である前記
目標空燃比KCMDを逐次生成する。
【0084】そして、この目標空燃比KCMDの生成に際し
ては、触媒装置3を含む前記排気系Eが有する無駄時間
や、前記エンジン1及び機関制御手段8からなる系が有
する無駄時間、排気系Eの挙動変化等を考慮しつつ、フ
ィードバック制御の一手法であるスライディングモード
制御(詳しくは適応スライディングモード制御)を用い
て目標空燃比KCMDを操作量生成手段7の制御サイクル
(所定の周期)で逐次生成する。
【0085】このような操作量生成手段7の処理を行う
ために、本実施形態では、前記排気系Eが、LAFセン
サ4の出力KACT(LAFセンサ4が検出する触媒上流空
燃比)から、無駄時間要素及び応答遅れ要素を介してO
2センサ5の出力VO2/OUTを生成する系であるとして、該
排気系Eの挙動があらかじめ離散時間系でモデル化され
ている。さらに、前記エンジン1及び機関側制御手段8
からなる系(以下、この系を空燃比操作系という)が、
前記目標空燃比KCMDから無駄時間要素を介してLAFセ
ンサ4の出力KACT(LAFセンサ4が検出する触媒上流
空燃比)を生成する系であるとして、該空燃比操作系の
挙動がモデル化されている。
【0086】この場合、排気系Eのモデルに関しては、
LAFセンサ4の出力KACTとそれに対する所定の基準値
FLAF/BASEとの偏差(=KACT−FLAF/BASE。以下、LAF
センサ4の偏差出力kactという)を排気系Eに対する入
力量、O2センサ5の出力VO2/OUTと前記目標値VO2/TARG
ETとの偏差(=VO2/OUT−VO2/TARGET。以下、O2センサ
5の偏差出力VO2という)を排気系Eの出力量とし、次
式(1)の自己回帰モデル(詳しくは、排気系Eの入力
量としてのLAFセンサ4の偏差出力kactに無駄時間を
有する自己回帰モデル)により排気系Eの挙動が表現さ
れている。尚、LAFセンサ4の偏差出力kactに係わる
前記基準値FLAF/BASE(以下、空燃比基準値FLAF/BASEと
いう)は本実施形態では「理論空燃比」に設定されてい
る。
【0087】
【数1】
【0088】ここで、上式(1)において、「k」は前
記操作量生成手段7の離散時間的な制御サイクルの番数
を示し(以下、同様)、「d1」は排気系Eに存する無駄
時間(詳しくはLAFセンサ4が検出する各時点の触媒
上流空燃比がO2センサ5の出力VO2/OUTに反映されるよ
うになるまでに要する無駄時間)を操作量生成手段7の
制御サイクル数で表したものである。この場合、排気系
Eの無駄時間は、操作量生成手段7の制御サイクルの周
期を30〜100msとしたとき、一般的には、3〜1
0制御サイクル分の時間(d1=3〜10)である。そし
て、本実施形態では、式(1)により表した排気系Eの
モデル(以下、排気系モデルという)における無駄時間
d1の値として、排気系Eの実際の無駄時間と等しいか、
もしくはそれよりも若干長いものにあらかじめ設定した
所定の一定値(本実施形態では例えばd1=7)が設定さ
れている。
【0089】また、式(1)の右辺第1項及び第2項は
それぞれ排気系Eの応答遅れ要素に対応するもので、第
1項は1次目の自己回帰項、第2項は2次目の自己回帰
項である。そして、「a1」、「a2」はそれぞれ1次目の
自己回帰項のゲイン係数、2次目の自己回帰項のゲイン
係数である。これらのゲイン係数a1,a2は別の言い方を
すれば、排気系Eの出力量としてのO2センサ5の偏差
出力VO2に係る係数である。
【0090】さらに、式(1)の右辺第3項は排気系E
の入力量としてのLAFセンサ4の偏差出力kactに排気
系Eの無駄時間d1を含めて表現したものであり、「b1」
はその入力量に係るゲイン係数である。これらのゲイン
係数a1,a2,b1は排気系モデルの挙動を規定する上であ
る値に設定すべきパラメータであり、本実施形態では後
述の同定器によって逐次同定するものである。
【0091】このように式(1)により定めた排気系モ
デルは、それを言葉で表現すれば、操作量生成手段7の
制御サイクル毎のO2センサ5の偏差出力VO2(k+1)を、
その制御サイクルよりも過去の制御サイクルにおけるO
2センサ5の偏差出力VO2(k),VO2(k-1)と、排気系Eの
無駄時間d以前の制御サイクルにおけるLAFセンサ4
の偏差出力kact(k-d1)とにより表現するものである。
【0092】この場合、排気系モデルは、式(1)から
明らかなように線形なモデルであるため、基本的には、
2センサ5の出力VO2/OUTが、排ガス中の酸素濃度に対
してほぼ線形な変化を呈するような領域で変化するよう
な状態、すなわち、排ガスの空燃比が理論空燃比近傍の
範囲Δ(図2参照)で変化するような状態での排気系E
の挙動をより良く近似するものとなる。
【0093】一方、前記空燃比操作系のモデルに関して
は、前記目標空燃比KCMDと前記空燃比基準値FLAF/BASE
との偏差kcmd(=KCMD−FLAF/BASE。以下、目標偏差空
燃比kcmdという)を空燃比操作系の入力量、LAFセン
サ5の前記偏差出力kactを空燃比操作系の出力量とし、
次式(2)のモデル(以下、空燃比操作系モデルとい
う)により空燃比操作系の挙動が表現されている。
【0094】
【数2】
【0095】ここで、式(2)において、「d2」は空燃
比操作系が有する無駄時間(詳しくは各時点の目標空燃
比KCMDがLAFセンサ5の出力KACTに反映されるように
なるまでに要する無駄時間)を操作量生成手段7の制御
サイクル数で表したものである。従って、この式(2)
により表現した空燃比操作系モデルは、空燃比操作系
を、その出力量としてのLAFセンサ5の偏差出力kact
が、該空燃比操作系の無駄時間d2前の時点における該空
燃比操作系への入力量としての目標偏差空燃比kcmdに一
致するような系として該空燃比操作系を離散時間系で表
現したものである。
【0096】この場合、空燃比操作系の無駄時間は、該
空燃比操作系が含むエンジン1の回転数によって変化
し、エンジン1の回転数が低くなる程、長くなる。そし
て、本実施形態では、式(2)により表した空燃比操作
系モデルにおける無駄時間d2の値としては、上記のよう
な空燃比操作系の無駄時間の特性を考慮し、例えばエン
ジン1の低速回転域の回転数であるアイドリング回転数
において実際の空燃比操作系が有する無駄時間(これ
は、エンジン1の任意の回転数において空燃比操作系が
採り得る最大側の無駄時間である)と等しいか、もしく
はそれよりも若干長いものにあらかじめ設定した所定の
一定値(本実施形態では例えばd2=3)を用いる。
【0097】尚、前記空燃比操作系には、実際には、無
駄時間要素の他、エンジン1に起因した応答遅れ要素も
含まれる。しかるに、目標空燃比KCMDに対する触媒上流
空燃比の応答遅れは、基本的には詳細を後述する機関制
御手段8のフィードバック制御処理(特に後述する適応
制御器24の処理)によって補償されるため、操作量生
成手段7から見た空燃比操作系では、エンジン1に起因
する応答遅れ要素を考慮せずとも支障はない。
【0098】操作量生成手段7は、式(1),(2)に
よりそれぞれ表現した排気系モデルや空燃比操作系モデ
ル等に基づいて目標空燃比KCMDの生成処理を行うため
に、図3に示すような機能的構成を具備している。
【0099】すなわち、操作量生成手段7は、前記LA
Fセンサ4の出力KACTから前記空燃比基準値FLAF/BASE
を減算することによりLAFセンサ4の偏差出力kactを
制御サイクル毎に逐次求める減算処理部9と、O2セン
サ5の出力VO2/OUTから前記目標値VO2/TARGETを減算す
ることによりO2センサ5の偏差出力VO2を制御サイクル
毎に逐次求める減算処理部10とを具備する。
【0100】さらに操作量生成手段7は、前記排気系モ
デル(式(1))の設定すべきパラメータである前記ゲ
イン係数a1,a2,b1の同定値a1ハット,a2ハット,b1ハ
ット(以下、同定ゲイン係数a1ハット,a2ハット,b1ハ
ットという)を制御サイクル毎に逐次求める同定器11
(同定手段)と、排気系Eの無駄時間d1及び空燃比操作
系の無駄時間d2を合わせた合計無駄時間d(=d1+d2)
後のO2センサ5の偏差出力VO2の2種類の推定値(予測
値)VO2Lバー、VO2Fバー(以下、推定偏差出力VO2Lバ
ー、VO2Fバーという)をそれぞれ互いに異なるアルゴリ
ズムにより制御サイクル毎に逐次求める第1推定器12
(第1推定手段)及び第2推定器13(第2推定手段)
と、これらの両推定器12,13がそれぞれ求めた推定
偏差出力VO2Lバー、VO2Fバーを合成してなる合成推定偏
差出力VO2バーを制御サイクル毎に逐次求める合成器1
4と、適応スライディングモード制御の処理により前記
目標空燃比KCMDを制御サイクル毎に逐次算出するスライ
ディングモード制御器15とを具備する。
【0101】前記同定器11、第1推定器12、第2推
定器13、合成器14、及びスライディングモード制御
器15による演算処理のアルゴリズムは以下のように構
築されている。
【0102】まず、同定器11は、前記式(1)により
表現した排気系モデルの実際の対象排気系Eに対するモ
デル化誤差を極力小さくするように前記ゲイン係数a1,
a2,b1の値をリアルタイムで逐次同定するものであり、
その同定処理を次のように行う。
【0103】すなわち、同定器11は、操作量生成手段
7の制御サイクル毎に、まず、今現在設定されている排
気系モデルの同定ゲイン係数a1ハット,a2ハット,b1ハ
ット、すなわち前回の制御サイクルで決定した同定ゲイ
ン係数a1(k-1)ハット,a2(k-1)ハット,b1(k-1)ハット
の値と、LAFセンサ4の偏差出力kact及びO2センサ
5の偏差出力VO2の過去値のデータkact(k-d1-1),VO2(k
-1),VO2(k-2)とを用いて、次式(3)により排気系モ
デル上でのO2センサ5の偏差出力VO2(排気系モデルの
出力)の値VO2(k)ハット(以下、同定偏差出力VO2(k)ハ
ットという)を求める。
【0104】
【数3】
【0105】この式(3)は、排気系モデルを表す前記
式(1)を1制御サイクル分、過去側にシフトし、ゲイ
ン係数a1,a2,b1として同定ゲイン係数a1(k-1)ハッ
ト,a2(k-1)ハット,b1(k-1)ハットを用いたものであ
る。また、式(3)の第3項で用いる排気系Eの無駄時
間d1の値は、前述の如く設定した一定値(本実施形態で
はd1=7)を用いる。
【0106】尚、式(3)中の「Θ」、「ξ」は同式但
し書きで定義した通りのベクトルである。また、式
(3)で用いている添え時「T」は転置を意味する(以
下同様)。
【0107】さらに同定器11は、前記式(3)により
求められるO2センサ5の同定偏差出力VO2(k)ハットと
今現在のO2センサ5の偏差出力VO2(k)との偏差id/e(k)
を排気系モデルの実際の排気系Eに対するモデル化誤差
を表すものとして次式(4)により求める(以下、偏差
id/eを同定誤差id/eという)。
【0108】
【数4】
【0109】そして、同定器11は、上記同定誤差id/e
を最小にするように新たな同定ゲイン係数a1(k)ハッ
ト,a2(k)ハット,b1(k)ハット、換言すれば、これらの
同定ゲイン係数を要素とする新たな前記ベクトルΘ(k)
(以下、このベクトルを同定ゲイン係数ベクトルΘとい
う)を求めるもので、その算出を、次式(5)により行
う。すなわち、同定器11は、前回の制御サイクルで決
定した同定ゲイン係数a1(k-1)ハット,a2(k-1)ハット,
b1(k-1)ハットを、同定誤差id/e(k)に比例させた量だけ
変化させることで新たな同定ゲイン係数a1(k)ハット,a
2(k)ハット,b1(k)ハットを求める。
【0110】
【数5】
【0111】ここで、式(5)中の「Kθ」は次式
(6)により決定される三次のベクトル(各同定ゲイン
係数a1ハット,a2ハット,b1ハットの同定誤差id/eに応
じた変化度合いを規定するゲイン係数ベクトル)であ
る。
【0112】
【数6】
【0113】また、上式(6)中の「P」は次式(7)
の漸化式により決定される三次の正方行列である。
【0114】
【数7】
【0115】尚、式(7)中の「λ1」、「λ2」は0<
λ1≦1及び0≦λ2<2の条件を満たすように設定さ
れ、また、「P」の初期値P(0)は、その各対角成分を
正の数とする対角行列である。
【0116】この場合、式(7)中の「λ1」、「λ2」
の設定の仕方によって、固定ゲイン法、漸減ゲイン法、
重み付き最小二乗法、最小二乗法、固定トレース法等、
各種の具体的な同定アルゴリズムが構成され、本実施形
態では、例えば最小二乗法(この場合、λ1=λ2=1)
を採用している。
【0117】本実施形態における同定器25は基本的に
は前述のようなアルゴリズム(演算処理)によって、前
記同定誤差id/eを最小化するように排気系モデルの前記
同定ゲイン係数a1ハット,a2ハット,b1ハットを制御サ
イクル毎に逐次求めるものである。このような処理によ
って、実際の排気系Eに適合した同定ゲイン係数a1ハッ
ト,a2ハット,b1ハットが逐次、リアルタイムで得られ
る。
【0118】以上説明したアルゴリズムが同定器11が
実行する基本的なアルゴリズムである。
【0119】次に、前記第1推定器12は、後に詳細を
説明するスライディングモード制御器15による目標空
燃比KCMDの算出処理に際しての排気系Eの無駄時間d1及
び空燃比操作系の無駄時間d2の影響を補償するために、
前記合計無駄時間d(=d1+d2)後のO2センサ5の偏
差出力VO2の推定値である前記推定偏差出力VO2Lバーを
制御サイクル毎に逐次求めるものである。その推定処理
のアルゴリズムは次のように構築されている。
【0120】まず、排気系モデルを表す前記式(1)
に、空燃比操作系モデルを表す式(2)を適用すると、
次式(8)が得られる。
【0121】
【数8】
【0122】この式(8)は、排気系E及び空燃比操作
系を合わせた系を、目標偏差空燃比kcmdから排気系E及
び空燃比操作系の両者の無駄時間要素と排気系Eの応答
遅れ要素とを介してO2センサ5の偏差出力VO2を生成す
る系であるとして、該系の挙動を離散時間系のモデルで
表現したものである。
【0123】そして、この式(8)を用いることで、各
制御サイクルにおける前記合計無駄時間d後のO2セン
サ5の偏差出力VO2(k+d)の推定値である前記推定偏差出
力VO2L(k+d)バーは、O2センサ5の偏差出力VO2の現在
値及び過去値の時系列データVO2(k)及びVO2(k-1)と、ス
ライディングモード制御器15が後述のように求める目
標偏差空燃比kcmd(=KCMD−FLAF/BASE)の過去値の時
系列データkcmd(k-j)(j=1,2,…,d)とを用いて次
式(9)により表される。
【0124】
【数9】
【0125】ここで、式(9)において、α1,α2は、
それぞれ同式(9)中のただし書きで定義した行列Aの
巾乗Ad(d:合計無駄時間)の第1行第1列成分、第
1行第2列成分である。また、βj(j=1,2,…,d)
は、それぞれ行列Aの巾乗A j-1と同式(9)中のただ
し書きで定義したベクトルBとの積Aj-1・Bの第1行
成分である。
【0126】さらに、式(9)中の目標偏差空燃比kcmd
の過去値の時系列データkcmd(k-j)(j=1,2,…,d)
のうち、空燃比操作系の無駄時間d2以前の目標偏差空燃
比kcmdの過去値の時系列データkcmd(k-d2),kcmd(k-d2-
1),…,kcmd(k-d)は前記式(2)によって、それぞ
れ、LAFセンサ4の偏差出力kactの現在以前に得られ
るデータkact(k),kact(k-1),…,kact(k-d+d2)に置き
換えることができる。そして、この置き換えを行うこと
で、次式(10)が得られる。
【0127】
【数10】
【0128】この式(10)が本実施形態において、第
1推定器12が前記推定偏差出力VO2L(k+d)バーを制御
サイクル毎に算出するための基本式である。つまり、第
1推定器12は、制御サイクル毎に、O2センサ5の偏
差出力VO2の現在値及び過去値の時系列データVO2(k)及
びVO2(k-1)と、スライディングモード制御器15が過去
に求めた目標偏差空燃比kcmdの過去値の時系列データkc
md(k-j)(j=1,2,…,d2-1)と、LAFセンサ4の
偏差出力kactの現在値及び過去値の時系列データkact(k
-i)(i=0,1,…,d1)とを用いて式(10)の演
算を行うことによって、O2センサ5の推定偏差出力VO2
L(k+d)バーを求める。
【0129】この場合、本実施形態では、式(10)に
より推定偏差出力VO2Lバーを算出するために必要となる
係数α1,α2及びβj(j=1,2,…,d)の値は、基本
的には、前記ゲイン係数a1,a2,b1(これらは式(9)
のただし書きで定義した行列A及びベクトルBの成分で
ある)の同定値である前記同定ゲイン係数a1ハット,a2
ハット,b1ハットを用いて算出する。また、式(10)
の演算で必要となる無駄時間d1,d2の値は、前述の如く
あらかじめ設定した値を用いる。
【0130】このようにして式(10)により求められ
る推定偏差出力VO2L(k+d)バーは、該式(10)や、こ
れの基礎となる排気系モデル等が線形なものであるた
め、基本的には、O2センサ5の出力VO2/OUTが、排ガス
中の酸素濃度に対してほぼ線形な変化を呈するような領
域で変化するような状態(排ガスの空燃比が理論空燃比
近傍で変化するような状態)において、比較的精度よく
前記合計無駄時間d後のO2センサ5の偏差出力VO2(k+
d)に合致するものとなる。
【0131】尚、推定偏差出力V O2L(k+d)バーは、LA
Fセンサ4の偏差出力kactのデータを使用せずに、式
(9)の演算により求めるようにしてもよいが、推定偏
差出力VO2L(k+d)バーの信頼性を高める上では、エンジ
ン1等の実際の挙動が反映されるLAFセンサ4の偏差
出力kactのデータを用いた式(10)の演算により推定
偏差出力VO2L(k+d)バーを求めることが好ましい。ま
た、空燃比操作系の無駄時間d2を「1」に設定できるよ
うな場合には、式(9)中の目標偏差空燃比kcmdの過去
値の時系列データkcmd(k-j)(j=1,2,…,d)の全て
をそれぞれ、LAFセンサ4の偏差出力kactの現在以前
に得られる時系列データkact(k),kact(k-1),…,kact
(k-d+d2)に置き換えることができる。このため、この場
合には、制御サイクル毎の推定偏差出力VO2L(k+d)バー
は、目標偏差空燃比kcmdのデータを含まない次式(1
1)により求めることができる。
【0132】
【数11】
【0133】次に、説明の便宜上、前記第2推定器13
や合成器14を説明する前に、前記スライディングモー
ド制御器15の処理について説明する。
【0134】本実施形態のスライディングモード制御器
15は、通常的なスライディングモード制御に、外乱等
の影響を極力排除するための適応則を加味した適応スラ
イディングモード制御によりO2センサ5の出力VO2/OUT
をその目標値VO2/TARGETに収束させるように(O2セン
サ5の偏差出力VO2を「0」に収束させるように)、制
御対象である前記排気系Eに与えるべき入力量(詳しく
は、触媒上流空燃比と前記空燃比基準値FLAF/BASEとの
偏差の目標値で、これは前記目標偏差空燃比kcmdに等し
い。以下、この入力量をSLD操作入力Uslと称する)
を決定し、その決定したSLD操作入力Uslから前記目
標空燃比KCMDを決定するものである。そして、その処理
のためのアルゴリズムは次のように構築されている。
【0135】まず、スライディングモード制御器15が
実行する適応スライディングモード制御のアルゴリズム
に必要な切換関数と、この切換関数により定義される超
平面(これはすべり面等とも言われる)とについて説明
する。
【0136】本実施形態におけるスライディングモード
制御の基本的な考え方としては、制御すべき状態量(制
御量)として、例えば各制御サイクルで得られたO2
ンサ5の偏差出力VO2(k)と、その1制御サイクル前に得
られた偏差出力VO2(k-1)とを用い、スライディングモー
ド制御用の切換関数σを、次式(12)のように、これ
らの偏差出力VO2(k),VO2(k-1)を変数成分とする線形な
関数として定義する。尚、前記偏差出力VO2(k),VO2(k-
1)を成分とするベクトルとして式(12)中の但し書き
で定義したベクトルXを以下、状態量Xという。
【0137】
【数12】
【0138】この場合、切換関数σの係数s1,s2は、次
式(13)の条件を満たすように設定される。
【0139】
【数13】
【0140】尚、本実施形態では、簡略化のために係数
s1=1とし(この場合、s2/s1=s2である)、−1<s2
<1の条件を満たすように係数s2の値を設定している。
【0141】このような切換関数σに対して、スライデ
ィングモード制御用の超平面はσ=0なる式によって定
義されるものである。この場合、状態量Xは二次系であ
るので超平面σ=0は図4に示すように直線となる。該
超平面は、位相空間の次数によって、切換線又は切換面
とも言われる。
【0142】尚、本実施形態では、スライディングモー
ド制御用の切換関数の変数成分である状態量として、実
際には詳細を後述する合成器14により求められる合成
推定偏差出力VO2バーの時系列データを用いるのである
が、これについては後述する。
【0143】本実施形態で用いる適応スライディングモ
ード制御は、状態量X=(VO2(k),VO2(k-1))を上記の
如く設定した超平面σ=0に収束させるための制御則で
ある到達則と、その超平面σ=0への収束に際して外乱
等の影響を補償するための制御則である適応則(適応ア
ルゴリズム)とにより該状態量Xを超平面σ=0に収束
させる(図4のモード1)。そして、該状態量Xを所
謂、等価制御入力によって超平面σ=0に拘束しつつ、
該状態量Xを超平面σ=0上の平衡点であるVO2(k)=VO
2(k-1)=0となる点、すなわち、O2センサ6の出力VO2
/OUTの時系列データVO2/OUT(k),VO2/OUT(k-1)が目標値
VO2/TARGETに一致するような点に収束させる(図4のモ
ード2)。
【0144】上記のように状態量Xを超平面σ=0の平
衡点に収束させるためにスライディングモード制御器1
5が生成する前記SLD操作入力Usl(=目標偏差空燃
比kcmd)は、状態量Xを超平面σ=0上に拘束するため
の制御則に従って排気系Eに与えるべき入力成分である
等価制御入力Ueqと、前記到達則に従って排気系Eに与
えるべき入力成分Urch(以下、到達則入力Urchという)
と、前記適応則に従って排気系Eに与えるべき入力成分
Uadp(以下、適応則入力Uadpという)との総和として与
えられる(次式(14))。
【0145】
【数14】
【0146】そして、これらの等価制御入力Ueq、到達
則入力Urch及び適応則入力Uadpは、本実施形態では、前
記式(8)により表される離散時間系のモデル(排気系
モデルと空燃比操作系のモデルとを合成したモデル)に
基づいて、次のように決定する。
【0147】まず、状態量Xを超平面σ=0に拘束する
ために排気系Eに与えるべき入力成分である前記等価制
御入力Ueqは、σ(k+1)=σ(k)=0なる条件を満たす目
標偏差空燃比kcmdである。そして、このような条件を満
たす等価制御入力Ueqは、式(8)と式(12)とを用
いて次式(15)により与えられる。
【0148】
【数15】
【0149】この式(15)が本実施形態において、制
御サイクル毎に等価制御入力Ueq(k)を求めるための基本
式である。
【0150】次に、前記到達則入力Urchは、本実施形態
では、基本的には次式(16)により決定するものとす
る。
【0151】
【数16】
【0152】すなわち、到達則入力Urchは、前記合計無
駄時間dを考慮し、合計無駄時間d後の切換関数σの値
σ(k+d)に比例させるように決定する。
【0153】この場合、式(16)中の係数F(これは
到達則のゲインを規定する)は、次式(17)の条件を
満たすように設定する。
【0154】
【数17】
【0155】尚、式(17)に括弧書きで示した条件
は、切換関数σの値が超平面σ=0に対して振動的な変
化(所謂チャタリング)を生じるのを抑制する上で好適
な係数Fの条件である。
【0156】次に、前記適応則入力Uadpは、本実施形態
では、基本的には次式(18)により決定するものとす
る(式(18)中のΔTは操作量生成手段7の制御サイ
クルの周期である)。
【0157】
【数18】
【0158】すなわち、適応則入力Uadpは、合計無駄時
間dを考慮し、該合計無駄時間d後までの切換関数σの
値と操作量生成手段7の制御サイクルの周期ΔTとの積
の制御サイクル毎の積算値(これは切換関数σの値の積
分値に相当する)に比例させるように決定する。
【0159】この場合、式(18)中の係数G(これは
適応則のゲインを規定する)は、次式(19)の条件を
満たすように設定する。
【0160】
【数19】
【0161】尚、前記式(13)、(17)、(19)
の設定条件のより具体的な導出の仕方については、本願
出願人が既に特開平11−93741号公報等にて詳細
に説明しているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0162】本実施形態におけるスライディングモード
制御器15は、基本的には前記式(15)、(16)、
(18)により決定される等価制御入力Ueq、到達則入
力Urch及び適応則入力Uadpの総和(Ueq+Urch+Uadp)
を排気系Eに与えるべきSLD操作入力Uslとして決定
するのであるが、前記式(15)、(17)、(19)
で使用するO2センサ5の偏差出力VO2(k+d),VO2(k+d-
1)や、切換関数σの値σ(k+d)等は未来値であるので直
接的には得られない。
【0163】そこで、本実施形態では、スライディング
モード制御器15は、実際には、前記式(15)により
前記等価制御入力Ueqを決定するためのO2センサ5の偏
差出力VO2(k+d),VO2(k+d-1)の代わりに、詳細を後述す
る合成器14により前記合計無駄時間d後のO2センサ
5の偏差出力VO2の推定値に相当するものとし制御サイ
クル毎に求められる合成推定偏差出力VO2バーの今回値V
O2(k+d)バー及び前回値VO2(k+d-1)バーを用い、次式
(20)により制御サイクル毎の等価制御入力Ueq(k)を
算出する。
【0164】
【数20】
【0165】また、本実施形態では、実際には、前記合
成器14により後述のように求められる合成推定値VO2
バーの時系列データを制御すべき状態量とし、前記式
(12)の切換関数σに代えて、次式(21)によりス
ライディングモード制御用の切換関数σバーを定義する
(この切換関数σバーは、前記式(12)の偏差出力VO
2の時系列データを合成推定偏差出力VO2バーの時系列デ
ータで置き換えたものに相当する)。
【0166】
【数21】
【0167】そして、スライディングモード制御器15
は、前記式(16)により前記到達則入力Urchを決定す
るための切換関数σの値の代わりに、前記式(21)に
より表される切換関数σバーの値を用いて次式(22)
により制御サイクル毎の到達則入力Urchを算出する。
【0168】
【数22】
【0169】同様に、スライディングモード制御器15
は、前記式(18)により前記適応則入力Uadpを決定す
るための切換関数σの値の代わりに、前記式(21)に
より表される切換関数σバーの値を用いて次式(23)
により制御サイクル毎の適応則入力Uadpを算出する。
【0170】
【数23】
【0171】尚、前記式(20),(22),(23)
により等価制御入力Ueq、到達則入力Urch及び適応則入
力Uadpを算出する際に必要となる前記ゲイン係数a1,a
2,b1としては、本実施形態では基本的には前記同定器
25により求められた最新の同定ゲイン係数a1(k)ハッ
ト,a2(k)ハット,b1(k)ハットを用いる。
【0172】そして、スライディングモード制御器15
は、前記式(20),(22),(23)によりそれぞ
れ求められる等価制御入力Ueq、到達則入力Urch及び適
応則入力Uadpの総和を排気系Eに与えるべき前記SLD
操作入力Uslとして求める(前記式(14)を参照)。
尚、この場合において、前記式(20)、(22)、
(23)中で用いる前記係数s1,s2,F,Gの設定条件
は前述の通りである。
【0173】これが、本実施形態において、スライディ
ングモード制御器15により、排気系Eに与えるべきS
LD操作入力Usl(=目標偏差空燃比kcmd)を制御サイ
クル毎に決定するための基本的な演算処理(アルゴリズ
ム)である。このようにしてSLD操作入力Uslを決定
することで、該SLD操作入力Uslは、O2センサ5の合
成推定偏差出力VO2バーを「0」に収束させるように
(結果的にはO2センサ5の出力VO2/OUTを目標値VO2/TA
RGETに収束させるように)決定される。
【0174】ところで、本実施形態におけるスライディ
ングモード制御器15は最終的には前記目標空燃比KCMD
を制御サイクル毎に逐次求めるものあるが、前述のよう
に求められるSLD操作入力Uslは、LAFセンサ4で
検出される触媒上流空燃比と前記空燃比基準値FLAF/BAS
Eとの偏差の目標値、すなわち前記目標偏差空燃比kcmd
である。このため、スライディングモード制御器15
は、最終的には、次式(24)に示すように、制御サイ
クル毎に、前述の如く求めたSLD操作入力Uslに前記
空燃比基準値FLAF/BASEを加算することで、目標空燃比K
CMDを決定する。
【0175】
【数24】
【0176】以上が本実施形態でスライディングモード
制御器15により目標空燃比KCMDを決定するための基本
的アルゴリズムである。
【0177】尚、本実施形態では、スライディングモー
ド制御器15は、その処理において前記同定器11によ
り求められる同定ゲイン係数a1ハット、a2ハット、b1ハ
ットを用いるため、このスライディングモード制御器1
5と同定器11とを合わせたものの処理は、適応制御の
処理の一形態となる。従って、本実施形態では、前記S
LD操作入力Usl、ひいては操作量としての目標空燃比K
CMDは、適応制御の処理によって生成されるというよう
に言い換えることもできる。
【0178】次に、前記第2推定器13を説明する。該
第2推定器13は、O2センサ5の出力VO2/OUTが非線形
領域で変化するような状態における前記第1推定器12
の推定偏差出力VO2Lバーの精度の低下を補完するため
に、第1推定器12とは別のアルゴリズムによって、前
記合計無駄時間d(=d1+d2)後のO2センサ5の偏差
出力VO2の推定値である前記推定偏差出力VO2Fバーを制
御サイクル毎に逐次求めるものである。そして、この推
定処理のアルゴリズムは次のように構築されている。
【0179】前記スライディングモード制御器15によ
り目標空燃比KCMDを生成し、この目標空燃比KCMDにLA
Fセンサ4の出力KACTを収束させるように詳細を後述す
る機関制御手段8によりエンジン1で燃焼させる混合気
の空燃比を操作しているときに、触媒装置3を通過した
排ガスの空燃比がリーン側からリッチ側に、あるいはリ
ッチ側からリーン側に比較的大きく変化した場合におい
ては(この変化は、O 2センサ5の出力VO2/OUTの非線形
領域を含む変化である)、O2センサ5の偏差出力VO2の
現在値VO2(k)及び過去値VO2(k-1)の時系列データから成
る前記状態量X=(VO2(k),VO2(k-1))は、前記式(1
2)の切換関数σに係わる超平面σ=0に対してある特
徴的な変化を呈する。
【0180】すなわち、図5に示すように、O2センサ
5の箇所の排ガスの空燃比がリーン側からリッチ側に大
きく変化すると、状態量X=(VO2(k),VO2(k-1))は、
実線eで示す如く、超平面σ=0からその上側(σ>0
となる領域)に離間するような軌跡を描いて変化する。
また、排ガスの空燃比がリッチ側からリーン側に大きく
変化すると、状態量X=(VO2(k),VO2(k-1))は、実線
fで示す如く、超平面σ=0からその下側(σ<0とな
る領域)に離間するような軌跡を描いて変化する。そし
て、このような状態量Xの変化の仕方は、エンジン1の
運転状態等によらずに概ね一定となる。
【0181】O2センサ5の出力VO2/OUTの非線形領域で
の挙動に係わる上記のような特性に着目し、本実施形態
の第2推定器13では、O2センサ5の偏差出力VO2の前
記合計無駄時間d後の推定値である前記推定偏差出力VO
2Fバーをファジー推論により求めることとし、このファ
ジー推論の前件部のパラメータ(入力パラメータ)を、
制御サイクル毎の前記式(12)の切換関数σの値σ
(k)とO2センサ5の偏差出力VO2の現在値VO2(k)との二
つとすると共に、ファジー推論の後件部のパラメータ
(出力パラメータ)を制御サイクル毎の推定偏差出力VO
2F(k+d)バーとしている。
【0182】尚、本実施形態でスライディングモード制
御器15が実際に用いる切換関数は、前記式(21)で
定義した切換関数σバーであるので、前記式(12)の
切換関数σは、正確にはスライディングモード制御用の
切換関数ではない。そこで、以下の説明では、式(1
2)の関数σをファジー用線形関数σと称する。このフ
ァジー用線形関数σは前述したことから明らかなよう
に、スライディングモード制御用の切換関数σバーと同
じ形で、その変数成分のみが相違するものである。
【0183】そして、本実施形態における第2推定器1
3のファジー推論では、前件部のパラメータであるファ
ジー用線形関数σの値σ(k)に関しては、図6(a)に
示すように、N(負),Z(ゼロ),P(正)の三つの
メンバーシップ関数が設定されている。この場合、メン
バーシップ関数N(負)、P(正)は台形状の関数であ
り、メンバーシップ関数Z(ゼロ)は、三角形状の関数
である。
【0184】同様に、前件部の他のパラメータである偏
差出力VO2の値VO2(k)に関しては、図6(b)に示すよ
うに、N(負),Z(ゼロ),P(正)の三つのメンバ
ーシップ関数が設定され、それぞれ形状は、台形状、三
角形状、台形状である。
【0185】また、ファジー推論の後件部のパラメータ
である推定偏差出力VO2Fバーの値VO2F(k+d)に関して
は、図6(c)に示すように、N(負),Z(ゼロ),
P(正)の三つのメンバーシップ関数が設定されてい
る。この場合、各メンバーシップ関数N(負),Z(ゼ
ロ),P(正)は、それぞれ、推定偏差出力VO2Fバーの
単一の特定値VO2FN(<0)、「0」、VO2FP(>0)に
おいてのみ適合度(メンバーシップ関数の関数値)が最
大(=1)となるような棒状関数(所謂、シングルトン
の棒状関数)である。ここで、メンバーシップ関数N
(負)、P(正)に係わる上記特定値VO2FN,VO2FPは、
それぞれO2センサ5の出力VO2/OUTが飽和した状態(図
2参照)での該出力VO2/OUT(一定値)に対応する値で
ある。
【0186】さらに、これらの図6(a)〜(c)のメ
ンバーシップ関数に対して、ファジー推論のファジール
ールは、本実施形態では、図7に示すように9種類のル
ールが設定されている。このファジールールでは、前件
部のファジー用線形関数σの値σ(k)が負、ゼロ、正の
いずれであるかによって、それぞれ後件部の推定偏差出
力VO2F(k+d)が負、ゼロ、正に定まるようになってい
る。
【0187】上述のようにメンバーシップ関数及びファ
ジールールが設定された本実施形態では、第2推定器1
3は、ファジー推論技術で公知のmin−max−重心法のア
ルゴリズムにより、制御サイクル毎に得られるファジー
用線形関数σの値σ(k)及びO2センサ5の偏差出力VO2
の値VO2(k)から前記推定偏差出力VO2F(k+d)バーを求め
る。
【0188】すなわち、第2推定器13は、まず、各ル
ールナンバーi(i=1,2,…,9)のファジールー
ルにおいて、前件部のパラメータσ(k),VO2(k)のそれ
ぞれに対する適合度(以下、それぞれの適合度に参照符
号Wσ(i)、Wv(i)を付する)を、各パラメータσ(k),
VO2(k)の値と、各ファジールールの前件部の対応するメ
ンバーシップ関数とから求める。例えば、図7のルール
ナンバー1において、パラメータσ(k)に対する適合度
Wσ(1)はそのパラメータσ(k)の値における図6(a)
のメンバーシップ関数N(負)の関数値として求めら
れ、パラメータVO2(k)に対する適合度Wv(1)はそのパラ
メータVO2(k)の値における図6(b)のメンバーシップ
関数N(負)の関数値として求められる。他のファジー
ルールについても同様である。
【0189】さらに、第2推定器13は、各ルールナン
バーi(i=1,2,…,9)のファジールールにおい
て、前件部の各パラメータσ(k),VO2(k)のそれぞれに
対する適合度Wσ(i)、Wv(i)のうちの小さい方、すな
わち、min(Wσ(i),Wv(i))を該ファジールールにお
ける前件部の総合的な適合度Wpre(i)として求める。
【0190】そして、第2推定器13は、各ファジール
ール毎の上記適合度Wpre(i)(i=1,2,…,9)を
用いて、次式(25)により、O2センサ5の偏差出力V
O2の前記合計無駄時間d後の推定値としての推定偏差出
力VO2F(k+d)を算出する。
【0191】
【数25】
【0192】ここで、上式(25)において、Wwpre
(i)は、各ルールナンバーi(i=1,2,…,9)の
ファジールールにおける後件部に対応する図6(c)の
メンバーシップ関数(棒状関数)の関数値であり、Wpp
re(i)は、そのメンバーシップ関数に係わる前記特定値V
O2FN又は「0」又はVO2FPである。この場合、本実施形
態では、後件部のメンバーシップ関数N(負)、Z(ゼ
ロ)、P(正)の関数値はいずれも「1」であり、従っ
て、Wwpre(i)=1(i=1,2,…,9)である。ま
た、図7のファジールールと図6(c)のメンバーシッ
プ関数とから明らかなように、ルールナンバー1〜3の
各ファジールールに対してはWppre(i)=VO2FNであり、
ルールナンバー4〜6の各ファジールールに対しては、
Wppre(i)=0であり、ルールナンバー7〜9の各ファ
ジールールに対しては、Wppre(i)=VO2FPである。
【0193】以上説明したアルゴリズムが、第2推定器
13が制御サイクル毎に、推定偏差出力VO2F(k+d)をフ
ァジー推論により求めるアルゴリズムである。このよう
にして第2推定器13が求める推定偏差出力VO2F(k+d)
は、特にO2センサ5の出力VO2/OUTが非線形な領域で変
動するような場合において、前記合計無駄時間d後のO
2センサ5の偏差出力VO2(k+d)の推定値として比較的精
度の良いものとなる。
【0194】次に、前記合成器14について説明する。
【0195】まず、本願発明者等の知見によれば、O2
センサ5の出力状態が、第1推定器12が比較的精度の
よい推定偏差出力VO2L(k+d)バーを算出することができ
る出力状態(前記目標値VO2/TARGETの近傍の線形領域で
の変動状態)にあるか、第2推定器13が比較的精度の
よい推定偏差出力VO2L(k+d)バーを算出することができ
る出力状態(前記目標値VO2/TARGETの近傍の線形領域で
の変動状態)にあるかは、スライディングモード制御用
の切換関数(本実施形態では式(21)のσバー)と密
接に関連する。そして、例えば該切換関数σバーと同種
の線形関数である前記ファジー用線形関数σ(式(1
2)参照)に着目したとき、前記状態量X=(VO2(k),
VO2(k-1))が、該線形関数σに係わる超平面σ=0に対
して、前記図5に斜線を付して示した楕円形状の領域A
に存するときに、第1推定器12の推定偏差出力VO2L(k
+d)バーの精度が良好となるようなO2センサ5の出力状
態であり、状態量X=(VO2(k),VO2(k-1))が、上記領
域Aの外に存するときに、第2推定器13の推定偏差出
力VO2F(k+d)バーの精度が良好となるようなO2センサ5
の出力状態となる(以下、領域Aを線形的挙動領域Aと
いう)。
【0196】従って、基本的には、状態量X=(VO2
(k),VO2(k-1))が上記線形的挙動領域Aに存するか否
かによって、スライディングモード制御器15で使用す
べき推定偏差出力VO2L(k+d)バー又はVO2F(k+d)バーを選
択するようにすればよい。但し、線形的挙動領域Aの境
界近傍で状態量Xが動くような状態では、両推定器1
2,13の推定偏差出力VO2Lバー、VO2Fバーを二者択一
的にスライディングモード制御器15の演算処理に用い
るようにすると、使用する推定偏差出力の値が不連続的
に変動する虞れがある。
【0197】また、図8に示すように、ファジー用線形
関数σの値σ(k)とO2センサ5の偏差出力VO2(k)とを座
標成分とする直交座標軸を設定したとき、前記図5の線
形的挙動領域Aは、図8の座標平面上では単純な楕円形
状の領域Bに変換され、前記状態量Xが図5の線形的挙
動領域A内に存するということは、図8の座標平面上で
は、ファジー用線形関数σの値σ(k)とO2センサ5の偏
差出力VO2(k)との組により定まる該座標平面上の点が領
域B内に存することと等価である。
【0198】そこで、本実施形態では前記合成器14
は、次式(26)に示すように、制御サイクル毎に各推
定器12,13が求める推定偏差出力VO2L(k+d)バー,V
O2F(k+d)バーにそれぞれ重み係数Cw、(1−Cw)を付し
て合成する(加算する)ことで、スライディングモード
制御器15で使用する合成推定偏差出力VO2(k+d)バーを
制御サイクル毎に逐次算出する。
【0199】
【数26】
【0200】そして、このとき、合成器14は、上記重
み係数Cwの値を、次式(27)により定義される楕円関
数OVAL(k)の値に応じて、図9のデータテーブルにより
設定し、その重み係数Cwの値を用いて式(26)の演算
を行う。
【0201】
【数27】
【0202】尚、式(27)中のa,bは、図8に示す
ように楕円領域Bの境界と各座標軸σ(k),VO2(k)との
交点における正の値である。
【0203】この場合、図9のデータテーブルでは、OV
AL(k)≦1であるときには(これは、前記状態量Xが図
5の線形的挙動領域A(境界を含む)に存することを意
味する)、前記重み係数Cwが「1」に設定され、1<OV
AL(k)<1+δ(但し、δは小さい正の値)であるとき
には(これは状態量Xが図5の線形的挙動領域A外で該
領域Aの近傍に存することを意味する)、楕円関数OVAL
(k)の値が大きくなるに伴って重み係数Cwの値が「1」
から「0」に向かって漸減するように該重み係数Cwが設
定される。そして、1+δ≦OVAL(k)であるときには
(これは、状態量Xが完全に図5の線形的挙動領域Aの
外に存することを意味する)、重み係数Cwが「0」に設
定される。
【0204】従って、状態量Xが線形的挙動領域A内に
存するときには、前記式(26)によって、VO2(k+d)バ
ー=VO2L(k+d)バーとなり、合成器14は、第1推定器
12による推定偏差出力Cがスライディングモード制御
器15の演算処理で用いる合成推定偏差出力VO2バーと
して選択的に出力することとなる。また、状態量Xが安
全に線形的挙動領域Aの外に存するときには、VO2(k+d)
バー=VO2F(k+d)バーとなり、合成器14は、第2推定
器13による推定偏差出力VO2F(k+d)バーがスライディ
ングモード制御器15の演算処理で用いる合成推定偏差
出力VO2バーとして選択的に出力することとなる。さら
に、状態量Xが線形的挙動領域Aの外で該領域Aの近傍
に存するときには、合成器14は、両推定器12,13
による推定偏差出力VO2L(k+d)バー,VO2F(k+d)バーの重
み付き平均値を合成推定偏差出力VO2バーとして出力す
ることとなる。
【0205】以上説明した処理が、合成器14の処理で
ある。
【0206】次に、前記機関制御手段8についてさらに
図10及び図11を参照して説明する。
【0207】図10のブロック図を参照して、機関制御
手段8は、その機能的構成として、エンジン1で燃焼さ
せる混合気の空燃比を操作するために実際に使用する触
媒上流空燃比の目標値としての実使用目標空燃比RKCMD
を決定する目標空燃比選択設定部16を具備する。
【0208】この目標空燃比選択設定部16は、前記ス
トイキ運転モードでは、前記操作量生成手段7のスライ
ディングモード制御器15が前述のように生成する目標
空燃比KCMDを実使用目標空燃比RKCMDとして決定する。
そして、ストイキ運転モード以外の運転モード、例えば
リーン運転モードでは、エンジン1の回転数NEや吸気圧
PB等から、マップやデータテーブルを用いて求められる
リーン側の空燃比を実使用目標空燃比RKCMDとして決定
する。
【0209】さらに、機関制御手段8は、エンジン1へ
の基本燃料噴射量Timを求める基本燃料噴射量算出部1
7と、基本燃料噴射量Timを補正するための第1補正係
数KTOTAL及び第2補正係数KCMDMをそれぞれ求める第1
補正係数算出部18及び第2補正係数算出部19とを具
備する。
【0210】前記基本燃料噴射量算出部17は、エンジ
ン1の回転数NEと吸気圧PBとから、それらにより規定さ
れるエンジン1の基準の燃料噴射量(燃料供給量)をあ
らかじめ設定されたマップを用いて求め、その基準の燃
料噴射量をエンジン1の図示しないスロットル弁の有効
開口面積に応じて補正することで基本燃料噴射量Timを
算出する。この基本燃料噴射量Timは、基本的には、エ
ンジン1で燃焼させる混合気の空燃比が理論空燃比とな
るような燃料噴射量である。
【0211】また、第1補正係数算出部18が求める第
1補正係数KTOTALは、エンジン1の排気還流率(エンジ
ン1の吸入空気中に含まれる排ガスの割合)や、エンジ
ン1の図示しないキャニスタのパージ時にエンジン1に
供給される燃料のパージ量、エンジン1の冷却水温、吸
気温等を考慮して前記基本燃料噴射量Timを補正するた
めのものである。
【0212】また、第2補正係数算出部19が求める第
2補正係数KCMDMは、前記目標空燃比選択設定部16が
決定した実使用目標空燃比R KCMDに対応してエンジン1
へ流入する燃料の冷却効果による吸入空気の充填効率を
考慮して基本燃料噴射量Timを補正するためのものであ
る。
【0213】これらの第1補正係数KTOTAL及び第2補正
係数KCMDMによる基本燃料噴射量Timの補正は、第1補
正係数KTOTAL及び第2補正係数KCMDMを基本燃料噴射量
Timに乗算することで行われ、この補正によりエンジン
1の要求燃料噴射量Tcylが得られる。
【0214】尚、前記基本燃料噴射量Timや、第1補正
係数KTOTAL、第2補正係数KCMDMのより具体的な算出手
法は、特開平5−79374号公報等に本願出願人が開
示しているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0215】機関制御手段8は、上記の機能的構成の
他、さらに、前記実使用目標空燃比RKCMDにLAFセン
サ4の出力KACT(触媒上流空燃比の検出値)を収束させ
るようにフィードバック制御によりエンジン1の燃料噴
射量を調整することでエンジン1で燃焼させる混合気の
空燃比を操作するフィードバック制御部20を備えてい
る。
【0216】このフィードバック制御部20は、本実施
形態では、エンジン1の各気筒の全体的な空燃比をフィ
ードバック制御する大局的フィードバック制御部21
と、エンジン1の各気筒毎の空燃比をフィードバック制
御する局所的フィードバック制御部22とに分別され
る。
【0217】前記大局的フィードバック制御部21は、
LAFセンサ4の出力KACTが前記実使用目標空燃比KCMD
に収束するように、前記要求燃料噴射量Tcylを補正す
る(要求燃料噴射量Tcylに乗算する)フィードバック
補正係数KFBを逐次求めるものである。
【0218】この大局的フィードバック制御部21は、
LAFセンサ4の出力KACTと実使用目標空燃比RKCMDと
の偏差に応じて周知のPID制御を用いて前記フィード
バック補正係数KFBとしてのフィードバック操作量KLAF
を生成するPID制御器23と、LAFセンサ4の出力
KACTと実使用目標空燃比RKCMDとからエンジン1の運転
状態の変化や特性変化等を考慮して前記フィードバック
補正係数KFBを規定するフィードバック操作量KSTRを適
応的に求める適応制御器24(図ではSTRと称してい
る)とをそれぞれ独立的に具備している。
【0219】ここで、本実施形態では、前記PID制御
器23が生成するフィードバック操作量KLAFは、LAF
センサ4の出力KACT(空燃比の検出値)が実使用目標空
燃比RKCMDに一致している状態で「1」となり、該操作
量KLAFをそのまま前記フィードバック補正係数KFBとし
て使用できるようになっている。一方、適応制御器24
が生成するフィードバック操作量KSTRはLAFセンサ4
の出力KACTが実使用目標空燃比RKCMDに一致する状態で
「実使用目標空燃比RKCMD」となるものである。このた
め、該フィードバック操作量KSTRを除算処理部25で実
使用目標空燃比RKCMDにより除算してなるフィードバッ
ク操作量kstr(=KSTR/RKCMD)が前記フィードバック
補正係数KFBとして使用できるようになっている。
【0220】大局的フィードバック制御部21は、PI
D制御器23により生成されるフィードバック操作量KL
AFと、適応制御器24が生成するフィードバック操作量
KSTRを実使用目標空燃比RKCMDにより除算してなるフィ
ードバック操作量kstrとを切換部26で適宜、択一的に
選択する。そして、いずれか一方のフィードバック操作
量KLAF又はkstrを前記フィードバック補正係数KFBとし
て使用し、該補正係数KFBを前記要求燃料噴射量Tcylに
乗算することにより該要求燃料噴射量Tcylを補正す
る。尚、かかる大局的フィードバック制御部21(特に
適応制御器24)については後にさらに詳細に説明す
る。
【0221】前記局所的フィードバック制御部22は、
LAFセンサ4の出力KACTから各気筒毎の実空燃比#nA/
F(n=1,2,3,4)を推定するオブザーバ27と、
このオブザーバ27により推定された各気筒毎の実空燃
比#nA/Fから各気筒毎の空燃比のばらつきを解消するよ
う、PID制御を用いて各気筒毎の燃料噴射量のフィー
ドバック補正係数#nKLAFをそれぞれ求める複数(気筒数
個)のPID制御器28とを具備する。
【0222】ここで、オブザーバ27は、それを簡単に
説明すると、各気筒毎の実空燃比#nA/Fの推定を次のよ
うに行うものである。すなわち、エンジン1からLAF
センサ4の箇所(各気筒毎の排ガスの集合部)にかけて
の系を、エンジン1の各気筒毎の実空燃比#nA/FからL
AFセンサ4で検出される触媒上流空燃比を生成する系
と考える。そして、この系を、LAFセンサ4の検出応
答遅れ(例えば一次遅れ)や、LAFセンサ4で検出さ
れる触媒上流空燃比に対するエンジン1の各気筒毎の空
燃比の時間的寄与度を考慮してモデル化する。そして、
そのモデルの基で、LAFセンサ4の出力KACTから、逆
算的に各気筒毎の実空燃比#nA/Fを推定する。
【0223】尚、このようなオブザーバ27は、本願出
願人が例えば特開平7−83094号公報に詳細に開示
しているので、ここでは、さらなる説明を省略する。
【0224】また、局所的フィードバック制御部22の
各PID制御器28は、LAFセンサ4の出力KACTを、
前回の制御サイクルで各PID制御器28により求めら
れたフィードバック補正係数#nKLAFの全気筒についての
平均値により除算してなる値を各気筒の空燃比の目標値
とする。さらに、その目標値とオブザーバ27により求
められた各気筒毎の実空燃比#nA/Fの推定値との偏差が
解消するように、今回の制御サイクルにおける、各気筒
毎のフィードバック補正係数#nKLAFを求める。
【0225】そして、局所的フィードバック制御部22
は、前記要求燃料噴射量Tcylに大局的フィードバック
制御部21のフィードバック補正係数KFBを乗算してな
る値に、各気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAFを乗
算することで、各気筒の出力燃料噴射量#nTout(n=
1,2,3,4)を求める。
【0226】このようにして求められる各気筒の出力燃
料噴射量#nToutは、機関制御手段8に備えた各気筒毎
の付着補正部29により吸気管の壁面付着を考慮した補
正が各気筒毎になされた後、エンジン1の図示しない燃
料噴射装置に与えられる。そして、その付着補正がなさ
れた出力燃料噴射量#nToutに従って、エンジン1の各
気筒への燃料噴射が行われるようになっている。
【0227】尚、上記付着補正については、本願出願人
が例えば特開平8−21273号公報に詳細に開示して
いるので、ここではさらなる説明を省略する。
【0228】前記大局的フィードバック制御部21、特
に前記適応制御器24をさらに説明する。
【0229】大局的フィードバック制御部21は、前述
のようにLAFセンサ4の出力KACT(触媒上流空燃比の
検出値)を実使用目標空燃比RKCMDに収束させるように
フィードバック制御を行うものであるが、このとき、こ
のようなフィードバック制御を周知のPID制御だけで
行うようにすると、エンジン1の運転状態の変化や経年
的特性変化等、動的な挙動変化に対して、安定した制御
性を確保することが困難である。
【0230】前記適応制御器24は、上記のようなエン
ジン1の動的な挙動変化を補償したフィードバック制御
を可能とする漸化式形式の制御手段であり、I.D.ラ
ンダウ等により提唱されているパラメータ調整則を用い
て、図11に示すように、複数の適応パラメータを設定
するパラメータ調整部30と、設定された適応パラメー
タを用いて前記フィードバック操作量KSTRを算出する操
作量算出部31とにより構成されている。
【0231】ここで、パラメータ調整部30について説
明すると、ランダウ等の調整則では、離散系の制御対象
の伝達関数B(Z-1)/A(Z-1)の分母分子の多項式
を一般的に下記の式(28),(29)のようにおいた
とき、パラメータ調整部30が設定する適応パラメータ
θハット(j)(jは制御サイクルの番数を示す)は、式
(30)のようにベクトル(転置ベクトル)で表され
る。また、パラメータ調整部30への入力ζ(j)は、式
(31)のように表される。この場合、本実施形態で
は、大局的フィードバック制御部21の制御対象である
エンジン1が一次系で3制御サイクル分の無駄時間dp
(エンジン1の燃焼サイクルの3サイクル分の時間)を
持つプラントと考え、式(28)〜式(31)でm=n
=1,dp=3とし、設定する適応パラメータはs0,r
1,r2,r3,b0の5個とした(図11参照)。尚、式
(31)の上段式及び中段式におけるus,ysは、それ
ぞれ、制御対象への入力(操作量)及び制御対象の出力
(制御量)を一般的に表したものであるが、本実施形態
では、上記入力をフィードバック操作量KSTR、制御対象
(エンジン1)の出力を前記LAFセンサ4の出力KACT
(触媒上流空燃比の検出値)とし、パラメータ調整部3
9への入力ζ(j)を、式(31)の下段式により表す
(図11参照)。
【0232】
【数28】
【0233】
【数29】
【0234】
【数30】
【0235】
【数31】
【0236】ここで、前記式(30)に示される適応パ
ラメータθハットは、適応制御器24のゲインを決定す
るスカラ量要素b0ハット-1(j)、操作量を用いて表
現される制御要素BRハット(Z-1,j)、及び制御量
を用いて表現される制御要素S(Z-1,j)からなり、
それぞれ、次式(32)〜(34)により表現される
(図11の操作量算出部31のブロック図を参照)。
【0237】
【数32】
【0238】
【数33】
【0239】
【数34】
【0240】パラメータ調整部30は、これらのスカラ
量要素や制御要素の各係数を設定して、それを式(3
0)に示す適応パラメータθハットとして操作量算出部
31に与えるもので、現在から過去に渡るフィードバッ
ク操作量KSTRの時系列データとLAFセンサ4の出力KA
CTとを用いて、該出力KACTが前記実使用目標空燃比KCMD
に一致するように、適応パラメータθハットを算出す
る。
【0241】この場合、具体的には、適応パラメータθ
ハットは、次式(35)により算出する。
【0242】
【数35】
【0243】同式(35)において、Γ(j)は、適応パ
ラメータθハットの設定速度を決定するゲイン行列(こ
の行列の次数はm+n+dp)、e*(j)は、適応パラメ
ータθハットの推定誤差を示すもので、それぞれ式(3
6),(37)のような漸化式で表される。
【0244】
【数36】
【0245】
【数37】
【0246】ここで、式(37)中の「D(Z-1)」
は、収束性を調整するための、漸近安定な多項式であ
り、本実施形態ではD(Z-1)=1としている。
【0247】尚、式(36)のλ1(j),λ2(j)の選び方
により、漸減ゲインアルゴリズム、可変ゲインアルゴリ
ズム、固定トレースアルゴリズム、固定ゲインアルゴリ
ズム等の種々の具体的なアルゴリズムが得られる。エン
ジン1の燃料噴射あるいは空燃比等の時変プラントで
は、漸減ゲインアルゴリズム、可変ゲインアルゴリズ
ム、固定ゲインアルゴリズム、および固定トレースアル
ゴリズムのいずれもが適している。
【0248】前述のようにパラメータ調整部30により
設定される適応パラメータθハット(s0,r1,r2,
r3,b0)と、前記目標空燃比選択設定部16により決
定される実使用目標空燃比RKCMDとを用いて、操作量算
出部31は、次式(38)の漸化式により、フィードバ
ック操作量KSTRを求める。図11の操作量算出部31
は、同式(38)の演算をブロック図で表したものであ
る。
【0249】
【数38】
【0250】尚、式(38)により求められるフィード
バック操作量KSTRは、LAFセンサ4の出力KACTが実使
用目標空燃比RKCMDに一致する状態において、「実使用
目標空燃比RKCMD」となる。このために、前述の如く、
フィードバック操作量K STRを除算処理部25によって
実使用目標空燃比RKCMDで除算することで、前記フィー
ドバック補正係数KFBとして使用できるフィードバック
操作量kstrを求めるようにしている。
【0251】このように構築された適応制御器24は、
前述したことから明らかなように、制御対象であるエン
ジン1の動的な挙動変化を考慮した漸化式形式の制御器
であり、換言すれば、エンジン1の動的な挙動変化を補
償するために、漸化式形式で記述された制御器である。
そして、より詳しくは、漸化式形式の適応パラメータ調
整機構を備えた制御器と定義することができる。
【0252】尚、この種の漸化式形式の制御器は、所
謂、最適レギュレータを用いて構築する場合もあるが、
この場合には、一般にはパラメータ調整機構は備えられ
ておらず、エンジン1の動的な挙動変化を補償する上で
は、前述のように構成された適応制御器31が好適であ
る。
【0253】以上が、本実施形態で採用した適応制御器
24の詳細である。
【0254】尚、適応制御器24と共に、大局的フィー
ドバック制御部21に具備したPID制御器23は、一
般のPID制御と同様に、LAFセンサ4の出力KACT
と、実使用目標空燃比RKCMDとの偏差から、比例項(P
項)、積分項(I項)及び微分項(D項)を算出し、そ
れらの各項の総和をフィードバック操作量KLAFとして算
出する。この場合、本実施形態では、積分項(I項)の
初期値を「1」とすることで、LAFセンサ4の出力KA
CTが実使用目標空燃比RKCMDに一致する状態において、
フィードバック操作量KLAFが“1”になるようにし、該
フィードバック操作量KLAFをそのまま燃料噴射量を補正
するための前記フィードバック補正係数KFBとして使用
することができるようしている。また、比例項、積分項
及び微分項のゲインは、エンジン1の回転数NEと吸気圧
PBとから、あらかじめ定められたマップを用いて決定さ
れる。
【0255】また、大局的フィードバック制御部21の
前記切換部26は、エンジン1の冷却水温の低温時や、
高速回転運転時、吸気圧の低圧時等、エンジン1の燃焼
が不安定なものとなりやすい場合、空燃比のフィードバ
ック制御の開始直後等、これに応じたLAFセンサ4の
出力KACTが、そのLAFセンサ4の応答遅れ等によっ
て、信頼性に欠ける場合には、PID制御器23により
求められるフィードバック操作量KLAFを燃料噴射量を補
正するためのフィードバック補正係数KFBとして出力す
る。そして、上記のような場合以外の状態で、適応制御
器24により求められるフィードバック操作量KSTRを実
使用目標空燃比RKCMDで除算してなるフィードバック操
作量kstrを燃料噴射量を補正するためのフィードバック
補正係数KFBとして出力する。これは、適応制御器24
が、高ゲイン制御で、LAFセンサ4の出力KACTを急速
に実使用目標空燃比RKCMDに収束させるように機能する
ため、上記のようにエンジン1の燃焼が不安定となった
り、LAFセンサ4の出力KACTの信頼性に欠ける等の場
合に、適応制御器24のフィードバック操作量KSTRを用
いると、かえって空燃比の制御が不安定なものとなる虞
れがあるからである。
【0256】このような切換部26の作動は、例えば特
開平8−105345号公報に本願出願人が詳細に開示
しているので、ここでは、さらなる説明を省略する。
【0257】次に本実施形態の装置の作動の詳細を説明
する。
【0258】まず、図12のフローチャートを参照し
て、前記制御ユニット6の機関制御手段8によるエンジ
ン1の空燃比の制御のためのエンジン1の各気筒毎の出
力燃料噴射量#nTout(n=1,2,3,4)の算出処理に
ついて説明する。機関制御手段8は、各気筒毎の出力燃
料噴射量#nToutの算出処理をエンジン1のクランク角
周期(TDC)と同期した制御サイクルで次のように行
う。
【0259】機関制御手段8は、まず、前記LAFセン
サ4及びO2センサ5を含む各種センサの出力を読み込
む(STEPa)。この場合、LAFセンサ4の出力KA
CT及びO2センサ5の出力VO2/OUTはそれぞれ過去に得ら
れたものを含めて時系列的に図示しないメモリに記憶保
持される。
【0260】次いで、基本燃料噴射量算出部17によっ
て、前述の如くエンジン1の回転数NE及び吸気圧PBに対
応する燃料噴射量をスロットル弁の有効開口面積に応じ
て補正してなる基本燃料噴射量Timが求められる(ST
EPb)。さらに、第1補正係数算出部18によって、
エンジン1の冷却水温やキャニスタのパージ量等に応じ
た第1補正係数KTOTALが算出される(STEPc)。
【0261】次いで、機関制御手段8は、エンジン1の
運転モードが前記操作量生成手段7が生成する目標空燃
比KCMDを使用して燃料噴射量の調整を行うストイキ運転
モードであるか否かの判別処理を行って、該運転モード
がストイキ運転モードであるか否かをそれぞれ値
「1」,「0」で表すフラグf/prism/onの値を設定する
(STEPd)。
【0262】上記の判別処理では、図13に示すよう
に、O2センサ5及びLAFセンサ4が活性化している
か否かの判別が行われる(STEPd−1,d−2)。
このとき、いずれかが活性化していない場合には、操作
量生成手段7の処理に使用するO2センサ5やLAFセ
ンサ4の検出データを精度よく得ることができない。従
って、エンジン1の運転モードはストイキ運転モードで
はなく、フラグf/prism/onの値を「0」にセットする
(STEPd−10)。
【0263】また、エンジン1のリーン運転中(希薄燃
焼運転中)であるか否か(STEPd−3)、エンジン
1の始動直後の触媒装置3の早期活性化を図るためにエ
ンジン1の点火時期が遅角側に制御されているか否か
(STEPd−4)、エンジン1のスロットル弁が略全
開であるか否か(STEPd−5)、及びエンジン1へ
の燃料供給の停止中(フュエルカット中)であるか否か
(STEPd−6)の判別が行われる。これらのいずれ
かの条件が成立している場合には、エンジン1の運転モ
ードはストイキ運転モードではなく、フラグf/prism/on
の値を「0」にセットする(STEPd−10)。
【0264】さらに、エンジン1の回転数NE及び吸気圧
PBがそれぞれ所定範囲内(正常な範囲内)にあるか否か
の判別が行われる(STEPd−7,d−8)。このと
き、いずれかが所定範囲内にない場合には、エンジン1
の運転モードはストイキ運転モードではなく、フラグf/
prism/onの値を「0」にセットする(STEPd−1
0)。
【0265】そして、STEPd−1,d−2,d−
7,d−8の条件が満たされ、且つ、STEPd−3,
d−4,d−5,d−6の条件が成立していない場合
に、エンジン1の運転モードがストイキ運転モードであ
るとして、フラグf/prism/onの値を「1」にセットする
(STEPd−9)。
【0266】図12の説明に戻って、上記のようにフラ
グf/prism/onの値を設定した後、機関制御手段8は、目
標空燃比選択設定部16によりフラグf/prism/onの値を
判断し(STEPe)、このフラグf/prism/onの値に応
じて前記実使用目標空燃比RKCMDを設定する。すなわ
ち、機関制御手段8の目標空燃比選択設定部16は、f/
prism/on=1である場合(エンジン1の運転モードがス
トイキ運転モードである場合)には、操作量生成手段7
で生成された最新の目標空燃比KCMDを読み込み、それを
実使用目標空燃比RKCMDとして設定する(STEP
f)。また、エンジン1の運転モードがリーン運転モー
ドである場合等、f/prism/on=0である場合には、実使
用目標空燃比RKCMDを所定値に設定する(STEP
g)。この場合、実使用目標空燃比RKCMDとして設定す
る所定値は、例えばエンジン1の回転数NEや吸気圧PBか
らあらかじめ定めたマップ等を用いて決定する。
【0267】次いで、機関制御手段8は、前記局所的フ
ィードバック制御部22において、前述の如くオブザー
バ27によりLAFセンサ4の出力KACTから推定した各
気筒毎の実空燃比#nA/F(n=1,2,3,4)に基づき、
PID制御器28により、各気筒毎のばらつきを解消す
るようにフィードバック補正係数#nKLAFを算出する(S
TEPh)。さらに、大局的フィードバック制御部21
により、フィードバック補正係数KFBを算出する(ST
EPi)。
【0268】この場合、大局的フィードバック制御部2
1は、前述の如く、PID制御器23により求められる
フィードバック操作量KLAFと、適応制御器24により求
められるフィードバック操作量KSTRを目標空燃比KCMDで
除算してなるフィードバック操作量kstrとから、切換部
26によってエンジン1の運転状態等に応じていずれか
一方のフィードバック操作量KLAF又はkstrを選択する
(通常的には適応制御器24側のフィードバック操作量
kstrを選択する)。そして、選択したフィードバック操
作量KLAF又はkstrを燃料噴射量を補正するためのフィー
ドバック補正量数KFBとして出力する。
【0269】尚、フィードバック補正係数KFBを、PI
D制御器23側のフィードバック操作量KLAFから適応制
御器24側のフィードバック操作量kstrに切り換える際
には、該補正係数KFBの急変を回避するために、適応制
御器24は、その切換えの際の制御サイクルに限り、補
正係数KFBを前回の補正係数KFB(=KLAF)に保持するよ
うに、フィードバック操作量KSTRを求める。同様に、補
正係数KFBを、適応制御器24側のフィードバック操作
量kstrからPID制御器23側のフィードバック操作量
KLAFに切り換える際には、PID制御器23は、自身が
前回の制御サイクルで求めたフィードバック操作量KLAF
が、前回の補正係数KFB(=kstr)であったものとし
て、今回の補正係数KLAFを算出する。
【0270】上記のようにしてフィードバック補正係数
KFBが算出された後、さらに、前記STEPfあるいは
STEPgで決定された実使用目標空燃比RKCMDに応じ
た第2補正係数KCMDMが第2補正係数算出部19により
算出される(STEPj)。
【0271】次いで、機関制御手段8は、前述のように
求められた基本燃料噴射量Timに、第1補正係数KTOTA
L、第2補正係数KCMDM、フィードバック補正係数KFB、
及び各気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAFを乗算す
ることで、各気筒毎の出力燃料噴射量#nToutを求める
(STEPk)。そして、この各気筒毎の出力燃料噴射
量#nToutが、付着補正部29によって、エンジン1の
吸気管における燃料の壁面付着を考慮した補正を施され
た後(STEPm)、エンジン1の図示しない燃料噴射
装置に出力される(STEPn)。
【0272】そして、エンジン1にあっては、各気筒毎
の出力燃料噴射量#nToutに従って、各気筒への燃料噴
射が行われる。
【0273】以上のような各気筒毎の出力燃料噴射量#n
Toutの算出及びそれに応じたエンジン1への燃料噴射
がエンジン1のクランク角周期に同期したサイクルタイ
ムで逐次行われ、これによりLAFセンサ4の出力KACT
(空燃比の検出値)が、目標空燃比KCMDに収束するよう
に、エンジン1の空燃比が制御される。この場合、特
に、フィードバック補正係数KFBとして、適応制御器2
4側のフィードバック操作量kstrを使用している状態で
は、エンジン1の運転状態の変化や特性変化等の挙動変
化に対して、高い安定性を有して、LAFセンサ4の出
力KACTが迅速に目標空燃比KCMDに収束制御される。ま
た、エンジン1が有する応答遅れの影響も適正に補償さ
れる。
【0274】一方、前述のようなエンジン1の燃料供給
の制御と並行して、制御ユニット6の操作量生成手段7
は、一定周期の制御サイクルで図14のフローチャート
に示すメインルーチン処理を実行する。
【0275】すなわち、図14を参照して、操作量生成
手段7は、まず、自身の演算処理(目標空燃比KCMDを生
成する処理)を実行するか否かの判別処理を行って、そ
の実行の可否を規定するフラグf/prism/calの値を設定
する(STEP1)。尚、フラグf/prism/calの値は、
それが「0」のとき、操作量生成手段7の演算処理を行
わないことを意味し、「1」のとき、操作量生成手段7
の演算処理を行うことを意味する。
【0276】上記の判別処理は、図15のフローチャー
トに示すように行われる。
【0277】すなわち、O2センサ5及びLAFセンサ
4が活性化しているか否かの判別が行われる(STEP
1−1,1−2)。このとき、いずれかが活性化してい
ない場合には、操作量生成手段7の処理に使用するO2
センサ5及びLAFセンサ4の検出データを精度よく得
ることができないため、フラグf/prism/calの値を
「0」にセットする(STEP1−6)。さらにこのと
き、前記同定器11の後述する初期化を行うために、そ
の初期化を行うか否かを規定するフラグf/id/resetの値
を「1」にセットする(STEP1−7)。ここで、フ
ラグf/id/resetの値は、それが「1」であるとき、同定
器11の初期化を行うことを意味し、「0」であると
き、初期化を行わないことを意味する。
【0278】また、エンジン1のリーン運転中であるか
否か(STEP1−3)、及びエンジン1の始動直後の
触媒装置3の早期活性化を図るためにエンジン1の点火
時期が遅角側に制御されているか否か(STEP1−
4)の判別が行われる。これらのいずれかの条件が成立
している場合には、O2センサ5の出力VO2/OUTを目標値
VO2/TARGETに収束させる制御は行わないので、フラグf/
prism/calの値を「0」にセットする(STEP1−
6)。さらにこのとき、同定器11の初期化を行うため
に、フラグf/id/resetの値を「1」にセットする(ST
EP1−7)。
【0279】そして、操作量生成手段7は、STEP1
−1,1−2の条件が満たされ、且つ、STEP1−
3,1−4の条件が成立しない場合にのみ、フラグf/pr
ism/calの値を「1」にセットする。
【0280】図14の説明に戻って、上記のような判別
処理を行った後、操作量生成手段7は、さらに、同定器
11による前記ゲイン係数a1,a 2,b1の同定(更新)
処理を実行するか否かの判別処理を行って、その実行の
可否を規定するフラグf/id/calの値を設定する(STE
P2)。尚、フラグf/id/calの値は、それが「0」のと
き、同定器11による前記ゲイン係数a1,a2,b1の同定
(更新)処理を行わないことを意味し、「1」のとき、
同定(更新)処理を行うことを意味する。
【0281】このSTEP2の判別処理では、エンジン
1のスロットル弁が略全開であるか否か、及びエンジン
1への燃料供給の停止中(フュエルカット中)であるか
否かの判別が行われる。これらのいずれかの条件が成立
している場合には、前記ゲイン係数a1,a2,b1を適正に
同定することが困難であるため、フラグf/id/calの値を
「0」にセットする。そして、上記のいずれの条件も成
立していない場合には、同定器11による前記ゲイン係
数a1,a2,b1の同定(更新)処理を実行すべくフラグf/
id/calの値を「1」にセットする。
【0282】次いで、操作量生成手段7は、前記減算処
理部9,10によりそれぞれ最新の前記偏差出力kact
(k)(=KACT(k)−FLAF/BASE)及びVO2(k)(=VO2/OUT
(k)−VO2/TARGET)を算出する(STEP3)。この場
合、減算処理部9,10は、前記図12のSTEPaに
おいて取り込まれて図示しないメモリに記憶されたLA
Fセンサ4の出力KACT及びO2センサ5の出力VO2/OUTの
時系列データの中から、最新のものを選択して前記偏差
出力kact(k)及びVO2(k)を算出する。そしてこの偏差出
力kact(k)及びVO2(k)は、過去に算出したものを含めて
時系列的に図示しないメモリに記憶保持される。
【0283】次いで、操作量生成手段7は、前記STE
P1で設定されたフラグf/prism/calの値を判断する
(STEP4)。このとき、f/prism/cal=0である場
合、すなわち、自身の演算処理を行わない場合には、ス
ライディングモード制御器15で求めるべき前記SLD
操作入力Usl(=目標偏差空燃比kcmd)を強制的に所定
値に設定する(STEP12)。この場合、該所定値
は、例えばあらかじめ定めた固定値(例えば「0」)あ
るいは前回の制御サイクルで決定したSLD操作入力Us
lの値である。
【0284】尚、このようにSLD操作入力Uslを所定
値とした場合において、操作量生成手段7は、その所定
値のSLD操作入力Uslに前記空燃比基準値FLAF/BASEを
加算することで、今回の制御サイクルにおける目標空燃
比KCMDを決定し(STEP13)、今回の制御サイクル
の処理を終了する。
【0285】一方、STEP4の判断で、f/prism/cal
=1である場合、すなわち、操作量生成手段7の演算処
理を行う場合には、操作量生成手段7は、まず、前記同
定器11による演算処理を行う(STEP5)。
【0286】この同定器11による演算処理は図16の
フローチャートに示すように行われる。
【0287】すなわち、同定器11は、まず、前記ST
EP2で設定されたフラグf/id/calの値を判断する(S
TEP5−1)。このときf/id/cal=0であれば、同定
器11によるゲイン係数a1,a2,b1の同定処理を行わな
いので、直ちに図14のメインルーチンに復帰する。
【0288】一方、f/id/cal=1であれば、同定器11
は、さらに該同定器11の初期化に係わる前記フラグf/
id/resetの値(これは、前記STEP1でその値が設定
される)を判断し(STEP5−2)、f/id/reset=1
である場合には、同定器11の初期化を行う(STEP
5−3)。この初期化では、前記同定ゲイン係数a1ハッ
ト,a 2ハット,b1ハットの各値があらかじめ定めた初
期値に設定され(式(3)中の同定ゲイン係数ベクトル
Θの初期化)、また、前記式(6)で用いる行列P(対
角行列)の各成分があらかじめ定めた初期値に設定され
る。さらに、フラグf/id/resetの値は「0」にリセット
される。
【0289】次いで、同定器11は、現在の同定ゲイン
係数a1(k-1)ハット,a2(k-1)ハット,b1(k-1)ハットの
値と、前記STEP3で制御サイクル毎に算出される偏
差出力VO2及びkactの過去値のデータVO2(k-1),VO2(k-
2),kact(k-d-1)とを用いて、前記式(3)により前記
同定偏差出力VO2(k)ハットを算出する(STEP5−
4)。
【0290】さらに同定器11は、新たな同定ゲイン係
数a1ハット,a2ハット,b1ハットを決定する際に使用す
る前記ベクトルKθ(k)を式(6)により算出した後
(STEP5−5)、前記同定誤差id/e(k)(前記同定
偏差出力VO2ハットと、実際の偏差出力VO2との偏差。式
(4)参照)を算出する(STEP5−6)。
【0291】ここで、前記同定誤差id/e(k)は、基本的
には、前記式(4)に従って算出すればよいのである
が、本実施形態では、前記図14のSTEP3で制御サ
イクル毎に算出する偏差出力VO2と、前記STEP5−
4で制御サイクル毎に算出する同定偏差出力VO2ハット
とから式(4)の演算により得られた値(=VO2(k)−VO
2(k)ハット)に、さらにローパス特性のフィルタリング
を施すことで同定誤差id/e(k)を求める。
【0292】これは、触媒装置3を含む排気系Eの挙動
は一般にローパス特性を有するため、前記排気系モデル
のゲイン係数a1,a2,b1を適正に同定する上では、排気
系Eの低周波数側の挙動を重視することが好ましいから
である。
【0293】尚、このようなフィルタリングは、結果的
に、偏差出力VO2及び同定偏差出力VO2ハットの両者に同
じローパス特性のフィルタリングが施されていればよ
く、例えば偏差出力VO2及び同定偏差出力VO2ハットにそ
れぞれ各別にフィルタリングを施した後に式(4)の演
算を行って同定誤差id/e(k)を求めるようにしてもよ
い。また、前記のフィルタリングは、例えばディジタル
フィルタの一手法である移動平均処理によって行われ
る。
【0294】次いで、同定器11は、STEP5−6で
求めた同定誤差id/e(k)と、前記STEP5−5で算出
したKθ( k)とを用いて前記式(5)により新たな同定
ゲイン係数ベクトルΘ(k)、すなわち、新たな同定ゲイ
ン係数a1(k)ハット,a2(k)ハット,b1(k)ハットを算出
する(STEP5−7)。
【0295】このようにして新たな同定ゲイン係数a1
(k)ハット,a2(k)ハット,b1(k)ハットを算出した後、
同定器11は、該同定ゲイン係数a1ハット,a2ハット,
b1ハット(同定ゲイン係数ベクトルΘの要素)の値を、
所定の条件を満たすように制限する処理を行う(STE
P5−8)。そして、同定器11は次回の制御サイクル
の処理のために前記行列P(k)を前記式(7)により更
新した後(STEP5−9)、図14のメインルーチン
の処理に復帰する。
【0296】この場合、上記STEP5−8において同
定ゲイン係数a1ハット,a2ハット,b1ハットの値を制限
する処理は、同定ゲイン係数a1ハット,a2ハットの値の
組み合わせを所定の組み合わせに制限する処理(同定ゲ
イン係数a1ハット,a2ハットを成分とする座標平面上の
所定の領域内に点(a1ハット,a2ハット)を制限する処
理)と、同定ゲイン係数b1ハットの値を所定の範囲内に
制限する処理とからなる。前者の処理では、STEP5
−7で算出した同定ゲイン係数a1(k)ハット,a2(k)ハッ
トにより定まる上記座標平面上の点(a1(k)ハット,a2
(k)ハット)が該座標平面上にあらかじめ定めた所定の
領域から逸脱している場合に同定ゲイン係数a1(k)ハッ
ト,a2(k)ハットの値を強制的に上記所定の領域内の点
の値に制限する。また、後者の処理では、前記STEP
5−7で算出した同定ゲイン係数b1(k)ハットの値が所
定の範囲の上限値あるいは下限値を超えている場合に、
該同定ゲイン係数b1(k)ハットの値を強制的にその上限
値あるいは下限値に制限する。
【0297】このような同定ゲイン係数a1ハット,a2ハ
ット,b1ハットの制限処理は、スライディングモード制
御器15が算出するSLD操作入力Usl(目標偏差空燃
比kcmd)、ひいては目標空燃比KCMDの安定性を確保する
ためのものである。
【0298】尚、このような同定ゲイン係数a1ハット,
a2ハット,b1ハットの制限処理のより具体的な手法につ
いては、本願出願人が例えば特開平11−153051
号公報にて詳細に説明しているので、ここでは詳細な説
明を省略する。
【0299】また、図16のSTEP5−7で新たな同
定ゲイン係数a1(k)ハット,a 2(k)ハット,b1(k)ハット
を求めるために使用する同定ゲイン係数の前回値a1(k-
1)ハット,a2(k-1)ハット,b1(k-1)ハットは、前回の制
御サイクルにおけるSTEP5−8の制限処理を行った
後の同定ゲイン係数の値である。
【0300】以上が図14のSTEP5における同定器
11の演算処理の詳細である。
【0301】図14の説明に戻って、上記のように同定
器11の演算処理を行った後、操作量生成手段7は、ゲ
イン係数a1,a2,b1の値を決定する(STEP6)。こ
の処理では、前記STEP2で設定されたフラグf/id/c
alの値が「1」である場合、すなわち、同定器11によ
るゲイン係数a1,a2,b1の同定処理を行った場合には、
ゲイン係数a1,a2,b1の値として、それぞれ前記STE
P5で前述の通り同定器11により求められた最新の同
定ゲイン係数a1(k)ハット,a2(k)ハット,b1(k)ハット
を設定する。また、f/id/cal=0である場合、すなわ
ち、同定器11によるゲイン係数a1,a2,b1の同定処理
を行わなかった場合には、ゲイン係数a1,a2,b1の値を
それぞれあらかじめ定めた所定値(例えば前回の制御サ
イクルで決定された値等)とする。
【0302】次いで、操作量生成手段7は、前記第1及
び第2推定器12,13、並びに合成器14による演算
処理(前記合成推定偏差出力VO2バーを算出する処理)
を行う(STEP7)。この処理は、図17のフローチ
ャートに示すように行われる。
【0303】すなわち、操作量生成手段7は、まず、O
2センサ5の偏差出力VO2の今回値VO2(k)及び前回値VO2
(k-1)を用いて前記式(12)のファジー用線形関数σ
の値σ(k)を算出する(STEP7−1)。
【0304】さらに操作量生成手段7は、この算出した
ファジー用線形関数σの値σ(k)と、偏差出力VO2の今回
値VO2(k)とを用いて前記式(27)の楕円関数の値OVAL
(k)を算出する(STEP7−2)。
【0305】次いで、操作量生成手段7は、前記第1推
定器12により、O2センサ5の推定偏差出力VO2L(k+d)
バーを算出する(STEP7−3)。このとき、第1推
定器12は、まず、前記STEP6で決定されたゲイン
係数a1,a2,b1(これらの値は基本的には、前記同定ゲ
イン係数a1ハット,a2ハット,b1ハットである)を用い
て、前記式(9)で使用する係数値α1,α2,βj(j
=1,…,d)を、同式(9)の但し書きの定義に従っ
て算出する。
【0306】次いで、第1推定器12は、O2センサ5
の偏差出力VO2の現在の制御サイクル以前の時系列デー
タVO2(k),VO2(k-1)、並びにLAFセンサ4の偏差出力
kactの現在の制御サイクル以前の時系列データkact(k-
j)(j=0,…,d1)と、スライディングモード制御器
15から制御サイクル毎に与えられる前記目標偏差空燃
比kcmd(=SLD操作入力Usl)の前回の制御サイクル
以前の時系列データkcmd(k-j)(=Usl(k-j)。j=1,
…,d2−1)と、上記の如く算出した係数値α1,α2,
βjとを用いて前記式(9)により、今回の制御サイク
ルの時点から前記合計無駄時間d後の偏差出力VO2の推
定値としての推定偏差出力VO2L(k+d)バー前記を算出す
る。
【0307】このように第1推定器12の演算処理を行
った後、さらに、操作量生成手段7は、前記第2推定器
13により、O2センサ5の推定偏差出力VO2F(k+d)を算
出する(STEP7−4)。このとき、第2推定器13
は、O2センサ5の偏差出力VO2の今回値VO2(k)と、前記
STEP7−1で算出したファジー用線形関数σの今回
値σ(k)とを用いて、前述の如く、各ファジールールに
前件部に係わる適合度Wpre(i)(i=1,2,…,9)
を求め、さらに、前記式(25)により、今回の制御サ
イクルの時点から前記合計無駄時間d後の偏差出力VO2
の推定値としての推定偏差出力VO2F(k+d)バー前記を算
出する。
【0308】次いで、操作量生成手段7は、前記STE
P7−2で求めた楕円関数の値OVAL(k)から前記図9の
データテーブルにより前記重み係数Cwを求めた後(ST
EP7−5)、この重み係数Cwを用いた前記式(26)
により、第1及び第2推定器12,13がそれぞれST
EP7−3,7−4で求めた推定偏差出力VO2L(k+d)バ
ー,VO2F(k+d)バーを合成してなる合成推定偏差出力VO2
(k+d)バーを算出する(STEP7−6)。
【0309】そして、操作量生成手段7は、この合成推
定偏差出力VO2(k+d)バーの値にリミット処理(STEP
7−7)を施した後、図14のメインルーチンの処理に
復帰する。ここで、STEP7−7のリミット処理は、
合成推定偏差出力VO2(k+d)バーの値があらかじめ定めた
上限値を超え、あるいは下限値を下回っていた場合に、
該合成推定偏差出力VO2(k+d)バーの値を強制的にそれぞ
れ該上限値、下限値に制限する処理である。
【0310】以上説明したSTEP7の処理により、制
御サイクル毎に、前記合計無駄時間d後の偏差出力VO2
の推定値としての合成推定偏差出力VO2(k)バーが算出さ
れる。
【0311】図14の説明に戻って、操作量生成手段7
は、次に、スライディングモード制御器15によって、
前記SLD操作入力Usl(=目標偏差空燃比kcmd)を算
出する(STEP8)。
【0312】すなわち、スライディングモード制御器1
5は、まず、前記STEP7で合成器14により求めら
れた合成推定偏差出力VO2バーの今回値及び前回値の時
系列データVO2(k+d)バー,VO2(k+d-1)バーを用いて、前
記式(21)により定義された切換関数σバーの前記合
計無駄時間d後の値σ(k+d)バー(これは、式(12)
で定義された線形関数σの合計無駄時間d後の推定値に
相当する)を算出する。
【0313】さらに、スライディングモード制御器15
は、上記切換関数σバーの値σ(k+d)バーに、操作量生
成手段7の制御サイクルの周期ΔT(一定周期)を乗算
したものσ(k+d)バー・ΔTを累積的に加算していく、
すなわち、前回の制御サイクルで求められた加算結果に
今回の制御サイクルで算出されたσ(k+d)バーと周期Δ
Tとの積σ(k+d)バー・ΔTを加算することで、前記式
(23)のΣ(σバー・ΔT)の項の演算結果であるσ
バーの積算値(以下、この積算値をΣσバーにより表
す)を算出する。
【0314】次いで、スライディングモード制御器15
は、前記STEP7で合成器14により求められた合成
推定偏差出力VO2バーの今回値VO2(k+d)バー及び前回値V
O2(k+d-1)バーと、上記の如く求めた切換関数σバーの
値σ(k+d)バー及びその積算値Σσバーと、STEP6
で決定したゲイン係数a1,a2,b1(これらの値は基本的
には、最新の同定ゲイン係数a1(k)ハット,a2(k)ハッ
ト,b1(k)ハットである)とを用いて、前記式(2
0),(22),(23)に従って、それぞれ等価制御
入力Ueq、到達則入力Urch及び適応則入力Uadpを算出す
る。
【0315】そして、スライディングモード制御器15
は、この等価制御入力Ueq、到達則入力Urch及び適応則
入力Uadpを加算することで、前記SLD操作入力Usl、
すなわち、O2センサ5の出力VO2/OUTを目標値VO2/TARG
ETに収束させるために必要な排気系Eへの入力量(=目
標偏差空燃比kcmd)を算出する。
【0316】上記のようにSLD操作入力Uslを算出し
た後、スライディングモード制御器15は、適応スライ
ディングモード制御の安定性(より詳しくは、適応スラ
イディングモード制御に基づくO2センサ5の出力VO2/O
UTの制御状態(以下、SLD制御状態という)の安定
性)を判別する処理を行って、該SLD制御状態が安定
であるか否かをそれぞれ値「1」、「0」で表すフラグ
f/sld/stbの値を設定する(STEP9)。
【0317】この安定性の判別処理は図18のフローチ
ャートに示すように行われる。
【0318】すなわち、スライディングモード制御器1
5は、まず、前記STEP8で算出した切換関数σバー
の今回値σ(k+d)バーと前回値σ(k+d-1)バーとの偏差Δ
σバー(これは切換関数σバーの変化速度に相当する)
を算出する(STEP9−1)。
【0319】次いで、スライディングモード制御器15
は、上記偏差Δσバーと切換関数σバーの今回値σ(k+
d)バーとの積Δσバー・σ(k+d)バー(これはσバーに
関するリアプノフ関数σバー2/2の時間微分関数に相
当する)があらかじめ定めた所定値ε(≧0)以下であ
るか否かを判断する(STEP9−2)。
【0320】ここで、上記積Δσバー・σ(k+d)バー
(以下、これを安定判別パラメータPstbという)につ
いて説明すると、この安定判別パラメータPstbの値が
Pstb>0となる状態は、基本的には、切換関数σバー
の値が「0」から離間しつつある状態である。また、安
定判別パラメータPstbの値がPstb≦0となる状態は、
基本的には、切換関数σバーの値が「0」に収束してい
るか、もしくは収束しつつある状態である。そして、一
般に、スライディングモード制御ではその制御量を目標
値に安定に収束させるためには、切換関数の値が安定に
「0」に収束する必要がある。従って、基本的には、前
記安定判別パラメータPstbの値が「0」以下であるか
否かによって、それぞれ前記SLD制御状態が安定、不
安定であると判断することができる。
【0321】但し、安定判別パラメータPstbの値を
「0」と比較することでSLD制御状態の安定性を判断
すると、切換関数σバーの値に僅かなノイズが含まれた
だけで、安定性の判別結果に影響を及ぼしてしまう。こ
のため、本実施形態では、前記STEP9−2で安定判
別パラメータPstbと比較する所定値εは、「0」より
も若干大きな正の値としている。
【0322】そして、STEP9−2の判断で、Pstb
>εである場合には、SLD制御状態が不安定であると
し、前記STEP8で算出したSLD操作入力Uslを用
いた目標空燃比KCMDの決定を所定時間禁止するためにタ
イマカウンタtm(カウントダウンタイマ)の値を所定
の初期値TMにセットする(タイマカウンタtmの起動。
STEP9−4)。さらに、前記フラグf/sld/stbの値
を「0」に設定した後(STEP9−5)、図14のメ
インルーチンの処理に復帰する。
【0323】一方、前記STEP9−2の判断で、Pst
b≦εである場合には、スライディングモード制御器1
5は、切換関数σバーの今回値σ(k+d)バーがあらかじ
め定めた所定範囲内にあるか否かを判断する(STEP
9−3)。
【0324】この場合、切換関数σバーの今回値σ(k+
d)バーが、所定範囲内に無い状態は、該今回値σ(k+d)
バーが「0」から大きく離間している状態であるので、
SLD制御状態が不安定であると考えられる。このた
め、STEP9−3の判断で、切換関数σバーの今回値
σ(k+d)バーが、所定範囲内に無い場合には、SLD制
御状態が不安定であるとして、前述の場合と同様に、S
TEP9−4及び9−5の処理を行って、タイマカウン
タtmを起動すると共に、フラグf/sld/stbの値を「0」
に設定する。
【0325】また、STEP9−3の判断で、切換関数
σバーの今回値σ(k+d)バーが、所定範囲内にある場合
には、スライディングモード制御器15は、前記タイマ
カウンタtmを所定時間Δtm分、カウントダウンする
(STEP9−6)。そして、このタイマカウンタtm
の値が「0」以下であるか否か、すなわち、タイマカウ
ンタtmを起動してから前記初期値TM分の所定時間が経
過したか否かを判断する(STEP9−7)。
【0326】このとき、tm>0である場合、すなわ
ち、タイマカウンタtmが計時動作中でまだタイムアッ
プしていない場合は、STEP9−2あるいはSTEP
9−3の判断でSLD制御状態が不安定であると判断さ
れてから、さほど時間を経過していないので、SLD制
御状態が不安定なものとなりやすい。このため、STE
P9−7でtm>0である場合には、前記STEP9−
5の処理を行って前記フラグf/sld/stbの値を「0」に
設定する。
【0327】そして、STEP9−7の判断でtm≦0
である場合、すなわち、タイマカウンタtmがタイムア
ップしている場合には、SLD制御状態が安定であると
して、フラグf/sld/stbの値を「1」に設定する(ST
EP9−8)。
【0328】以上のような処理によって、SLD制御状
態の安定性が判断され、不安定であると判断した場合に
は、フラグf/sld/stbの値が「0」に設定され、安定で
あると判断した場合には、フラグf/sld/stbの値が
「1」に設定される。
【0329】尚、以上説明したSLD制御状態の安定性
の判断の手法は例示的なもので、この他の手法によって
安定性の判断を行うようにすることも可能である。例え
ば制御サイクルよりも長い所定期間毎に、各所定期間内
における前記安定判別パラメータPstbの値が前記所定
値εよりも大きくなる頻度を計数する。そして、その頻
度があらかじめ定めた所定値を超えるような場合にSL
D制御状態が不安定であると判断し、逆の場合に、SL
D制御状態が安定であると判断するようにしてもよい。
【0330】図14の説明に戻って、上記のようにSL
D制御状態の安定性を示すフラグf/sld/stbの値を設定
した後、スライディングモード制御器15は、フラグf/
sld/stbの値を判断する(STEP10)。このとき、f
/sld/stb=1である場合、すなわち、SLD制御状態が
安定であると判断された場合には、前記STEP8で算
出したSLD操作入力Uslのリミット処理を行う(ST
EP11)。このリミット処理では、STEP8で算出
されたSLD操作入力Uslの今回値Usl(k)が所定の許容
範囲内にあるか否かが判断され、該今回値Uslがその許
容範囲の上限値又は下限値を超えている場合には、それ
ぞれ、SLD操作入力Uslの今回値Usl(k)が強制的に該
上限値又は下限値に制限される。
【0331】尚、STEP11のリミット処理を経たS
LD操作入力Usl(=目標偏差空燃比kcmd)は、図示し
ないメモリに時系列的に記憶保持され、それが、前記第
1推定器12の前述の演算処理のために使用される。
【0332】次いで、スライディングモード制御器15
は、STEP11のリミット処理を経たSLD操作入力
Uslに前記空燃比基準値FLAF/BASEを加算することで、前
記目標空燃比KCMDを算出し(STEP13)、今回の制
御サイクルの処理を終了する。
【0333】また、前記STEP10の判断でf/sld/st
b=0である場合、すなわち、SLD制御状態が不安定
であると判断された場合には、スライディングモード制
御器15は、今回の制御サイクルにおけるSLD操作入
力Uslの値を強制的に所定値(固定値あるいはSLD操
作入力Uslの前回値)に設定した後(STEP12)、
前記式(24)に従って前記目標空燃比KCMDを算出し
(STEP13)、今回の制御サイクルの処理終了す
る。
【0334】尚、STEP14で最終的に決定される目
標空燃比KCMDは、制御サイクル毎に図示しないメモリに
時系列的に記憶保持される。そして、前記大局的フィー
ドバック制御器21等が、スライディングモード制御器
15で求められた目標空燃比KCMDを用いるに際しては
(図12のSTEPfを参照)、上記のように時系列的
に記憶保持された目標空燃比KCMDの中から最新のものが
選択される。
【0335】以上説明した本実施形態の装置によれば、
制御ユニット6のエンジン1のストイキ運転モードでは
操作量生成手段7によって、触媒装置3の下流側のO2
センサ5の出力VO2/OUTを目標値VO2/TARGETに収束(整
定)させるように、適応スライディングモード制御の処
理を用いてエンジン1の目標空燃比KCMD(触媒上流空燃
比の目標値)が逐次決定される。さらに、制御ユニット
6の機関制御手段8が、この目標空燃比KCMDにLAFセ
ンサ4の出力KACTを収束させるようにエンジン1の燃料
噴射量を調整することによって、触媒上流空燃比が目標
空燃比KCMDにフィードバック制御される。これにより、
2センサ5の出力VO2/OUTが目標値VO2/TARGETに収束制
御され、ひいては触媒装置3の経時劣化等によらずに、
触媒装置3の最適な排ガス浄化性能を確保することがで
きる。
【0336】この場合、スライディングモード制御器1
5が目標空燃比KCMDを算出するために用いるO2センサ
5の合成推定偏差出力VO2バーは、O2センサ5の偏差VO
2の状態量X=(VO2(k),VO2(k-1))が前記図5の線形
的挙動領域Aに存するとき、すなわち、O2センサ5の
出力VO2/OUTが酸素濃度もしくは排ガスの空燃比に対し
てほぼ線形に変化するような状態では、前記第1推定器
12が排気系モデル等に基づくアルゴリズムによって算
出した推定偏差出力VO2Lである。また、状態量X=(VO
2(k),VO2(k-1))が前記線形的挙動領域Aの外に存する
とき、すなわち、O 2センサ5の出力VO2/OUTが酸素濃度
もしくは排ガスの空燃比に対して非線形な変化を呈する
状態では、基本的には、合成推定偏差出力VO2バーは、
前記第2推定器12がファジー推論のアルゴリズムによ
って算出した推定偏差出力VO2Fである。
【0337】このため、O2センサ5の出力状態あるい
は排ガスの空燃比状態によらずに、制御サイクル毎の前
記合計無駄時間d後のO2センサ5の偏差出力VO2の推定
値としての前記合成推定偏差出力VO2バーの精度を良好
に確保することができる。従って、エンジン1のストイ
キ運転モードでは、常時、排気系Eの無駄時間d1や前記
空燃比操作系の無駄時間d2の影響を適正に補償して、O
2センサ5の出力VO2/OUTの目標値VO2/TARGETへの収束制
御を高い速応性で且つ安定に行うことができる。例え
ば、リーン運転モードからストイキ運転モードへの移行
の直後や、フュエルカット直後の状態等、O2センサ5
の出力VO2/OUTが目標値VO2/TARGETから大きくずれてい
るような場合であっても、目標値VO2/TARGETへの収束制
御を安定且つ迅速に行うことができる。
【0338】また、両推定器12,13の推定偏差出力
VO2Lバー,VO2Fバーの合成推定偏差出力VO2バーとして
の選択の形態、あるいは、両推定偏差出力VO2L,VO2Fの
合成値しての合成推定偏差出力VO2バーの生成の形態を
規定する条件は、スライディングモード制御器15の処
理に用いる切換関数σバーに対応するファジー用線形関
数σに関連して定められた前記線形的挙動領域A(図5
参照)に状態量X=(VO2(k),VO2(k-1))が存するか否
か(これは、前記楕円関数の値OVALが「1」以下である
か否かと等価である)によって定められている。このた
め、各推定器12,13の推定偏差出力VO2Lバー,VO2F
バーを、それぞれの精度の特性に適合した最適な条件下
で、合成推定偏差出力VO2としてスライディングモード
制御器15の処理(目標空燃比KCMDの算出処理)に使用
することができる。この結果、該スライディングモード
制御器15が生成する目標空燃比KCMDがO2センサ5の
出力VO2/OUTを目標値VO2/TARGETに収束させる上で最適
なものとなる。
【0339】さらに、前記合成器14が求める合成推定
偏差出力VO2バーは、基本的には、両推定器12,13
の推定偏差出力VO2Lバー,VO2Fバーのいずれかの値であ
るが、前記状態量Xが線形的挙動領域Aの境界近傍に存
するときには、前記重み係数Cwを楕円関数の値OVALに応
じて可変的に設定しつつ、両推定偏差出力VO2Lバー,VO
2Fバーを合成してなる合成値である。このため、状態量
Xが線形的挙動領域Aの境界近傍で変化するような場合
における合成推定偏差出力VO2バーの値が急変するよう
なことがなく、ひいては、O2センサ5の出力VO2/OUTの
制御の安定性を高めることができる。
【0340】また、前記第2推定器13のファジー推論
では、min−max−重心法を用いると共に、後件部のパラ
メータVO2Fバーに係わるメンバーシップ関数を棒状関数
により設定しているため、簡単なファジー推論アルゴリ
ズムにより推定偏差出力VO2Fバーを求めることができ
る。
【0341】さらに、第1推定器12のアルゴリズムに
関しては、排気系モデルのパラメータであるゲイン係数
a1,a2,b1を排気系Eの挙動状態に則して同定器11に
よりリアルタイムで同定し、その同定ゲイン係数a1ハッ
ト、a2ハット、b1ハットを用いて推定偏差出力VO2Lバー
を算出するため、特に、O2センサ5の線形領域におけ
る推定偏差出力VO2Lバーの精度が高まる。この結果、O
2センサ5の出力VO2/OUTの目標値VO2/TARGETへの収束制
御の安定性を高めることができる。
【0342】次に本発明の第2実施形態を説明する。
尚、本実施形態は、前記第1実施形態のものとその構成
は同一で、前記第1推定器12の演算処理等の一部の演
算処理のみが前記第1実施形態のものと相違するので、
前記第1実施形態と同一の参照符号を用いて説明すると
共に、同一部分については詳細な説明を省略する。
【0343】前記第1実施形態では、排気系Eの無駄時
間d1と空燃比操作系(エンジン1及び機関制御手段8か
ら成る系)の無駄時間d2とを合わせた合計無駄時間dの
影響を補償するために、該合計無駄時間d後のO2セン
サ5の推定偏差出力VOLバー,VO2Fバーをそれぞれ第1
推定器12及び第2推定器13により算出するようにし
ている。
【0344】しかるに、排気系Eの無駄時間d1に比して
空燃比操作系の無駄時間d2が十分に小さい場合には、排
気系Eの無駄時間d1のみを考慮して、この無駄時間d1後
のO 2センサ5の偏差出力VO2の推定値VO2L(k+d1)バー,
VO2F(k+d1)バーを第1及び第2推定器12,13により
それぞれ制御サイクル毎に逐次求め、それらの推定値
(以下、第2推定偏差出力という)VO2L(k+d1)バー,VO
2F(k+d1)バーを前記第1実施形態と同様に合成器14に
より合成してなる合成推定偏差出力VO2(k+d1)バーを用
いてスライディングモード制御器15により目標空燃比
KCMDを算出するようにしてもよい。本実施形態は、この
ような第2推定偏差出力VO2L(k+d1)バー,VO2F(k+d1)バ
ーを求めて、O2センサ5の出力VO2/OUTの目標値VO2/TA
RGETへの収束制御を行うものである。
【0345】この場合、前記第1推定器12は、前記式
(9)の「kcmd」及び「d」をそれぞれ「kact」及び
「d1」に置き換えた次式(39)を用いて、前記実施形
態と同様にO2センサ5の偏差出力VO2の無駄時間d1後の
推定値としての第2推定偏差出力VO2L(k+d1)バーを制御
サイクル毎に逐次求める。
【0346】
【数39】
【0347】尚、この式(39)は、排気系モデルの式
(1)から得ることができる式である。また、この式
(39)の演算に必要なゲイン係数a1,a2,b1として
は、前記第1実施形態と同様、前記同定器11により求
めた同定ゲイン係数a1ハット、a2ハット、b1ハットを用
いる。
【0348】また、前記第2推定器13に関しては、そ
のファジー推論のアルゴリズム(min−max−重心法のア
ルゴリズム)、ファジールール(図7参照)、並びに後
件部に係わるメンバーシップ関数(図6(c)参照)
は、前記第1実施形態の場合と同一でよい。但し、この
場合、前件部のパラメータσ(k),VO2(k)にそれぞれ係
わるメンバーシップ関数(N(負)、Z(ゼロ)、P
(正)の三つの関数)については、図示は省略するが、
その形状(具体的には、各メンバーシップ関数の位置
や、その台形状、三角形状の傾斜部分の傾き)を前記第
1実施形態の場合と若干異なるものとしておく。この場
合、これらのメンバーシップ関数の具体的な設定は、フ
ァジー推論による第2推定偏差出力VO2F(k+d1)バーが、
2センサ5の非線形領域での挙動時における無駄時間d
1後の実際の偏差出力VO2(k+d1)に精度良く合致するよう
に、実験やシミュレーションに基づいて行うようにすれ
ばよい。
【0349】そして、本実施形態では、前記合成器14
は、上述のようなアルゴリズムによって第1及び第2推
定器12,13がそれぞれ求める第2推定偏差出力VO2L
(k+d1)バー、VO2F(k+d1)バーから前記第1実施形態と全
く同様に、合成推定偏差出力VO2(k+d1)を算出する。す
なわち、合成器14は、前記式(26)の「d」を「d
1」に置き換えた式により合成推定偏差出力VO2(k+d1)を
算出する。
【0350】また、前記スライディングモード制御器1
5は、前記式(20)〜(23)で「d」を「d1」に置
き換えた式によって、等価制御入力Usl、到達則入力Urc
h及び適応則入力Uadpを制御サイクル毎に求め、それら
を加算してなる目標偏差空燃比kcmd(=SLD操作入力
Usl)に前記空燃比基準値FLAF/BASEを加算することで、
目標空燃比KCMDを求める。これにより、排気系Eの無駄
時間d1の影響を補償した目標空燃比KCMDを求めることが
できる。
【0351】以上説明した以外の処理については、前記
第1実施形態と全く同一でよい。かかる本実施形態の装
置においても、前記第1実施形態と同様の効果を奏する
ことができる。
【0352】尚、本発明は、以上説明した第1及び第2
実施形態に限定されるものではなく、各種の変形態様が
可能である。
【0353】例えば、前記合計無駄時間d後のO2センサ
5の出力もしくは偏差出力の推定値、あるいは排気系E
の無駄時間d1後のO2センサ5の出力もしくは偏差出力
の推定値をそれぞれ求める第1及び第2推定器12,1
3は、それぞれ、前記第1及び第2実施形態と異なるア
ルゴリズムを用いて前記推定値を求めるようにしてもよ
い。各推定器12,13のアルゴリズムは、基本的に
は、それぞれO2センサ5の互いに異なる特定の出力状
態において比較的精度の良い推定値を求めることができ
るものであればよい。
【0354】さらに、前記合計無駄時間dあるいは無駄
時間d1後の推定値を、さらに多くの推定器(例えば3
個、4個等の推定器)を用いて算出し、それらから択一
的に選択したもの、あるいはそれらを合成したものを用
いて目標空燃比KCMDを求めるようにしてもよい。
【0355】また、合計無駄時間dあるいは無駄時間d1
後の推定値を用いた目標空燃比KCMDの算出処理は、適応
則(適応アルゴリズム)を含まない通常的なスライディ
ングモード制御により行うようにしてもよく、さらに
は、スライディングモード制御以外のフィードバック制
御処理を用いてもよい。
【0356】また、触媒装置3の下流の排ガスセンサ
は、O2センサ以外の排ガスセンサ(例えばNOxセン
サ、HCセンサ、COセンサ)であってもよい。この場
合、前記合計無駄時間dあるいは無駄時間d1後の排ガス
センサの出力の推定値データを求める各推定器のアルゴ
リズムや、その個数は、該排ガスセンサの出力特性を考
慮して選択、設定するようにすればよい。
【0357】また、本発明のプラントの制御装置に関
し、前記第1及び第2実施形態では、内燃機関の空燃比
制御装置を例にとって説明したが、本発明のプラントの
制御装置は、前記実施形態に限定されるものではない。
【0358】以下に本発明のプラントの制御装置の他の
実施形態を図19を参照して説明する。
【0359】図19において、32はプラントであり、
このプラント32には、流量制御弁33(アクチュエー
タ)により流量を調整可能なアルカリ液が入力される。
そして、該プラント32は、与えられたアルカリ液に酸
性液を合流させ、それを攪拌器34により攪拌してなる
混合液を出力するものである。
【0360】本実施形態の制御装置は、このようなプラ
ント32が出力する混合液(アルカリ液と酸性液との混
合液)のpHが所望のpH(例えば中性に相当するpH
値)になるようにプラント32に入力されるアルカリ液
の流量を制御するもので、その制御のために次のような
構成を備えている。
【0361】すなわち、本実施形態の制御装置は、プラ
ント32の出力側に該プラント32の出力である前記混
合液のpHを検出すべく設けられた検出手段としてのp
Hセンサ35と、プラント32の入力側に該プラントの
入力であるアルカリ液の流量を検出すべく設けられた流
量センサ36と、これらのpHセンサ35及び流量セン
サ36のそれぞれの出力V1/OUT,V2/OUTに基づき後述の
演算処理を行う制御ユニット37とを具備する。
【0362】尚、本実施形態におけるpHセンサ35
は、例えば前述の第1及び第2実施形態における酸素濃
度センサと同様、その出力特性は、目標値とするpH値
を含む比較的狭い範囲のpH値に対してほぼ線形に出力
V1/OUTが変化し、その狭い範囲を逸脱したpH値では、
飽和してほぼ一定の出力となるようなものである。
【0363】制御ユニット37は、マイクロコンピュー
タ等により構成されたもので、pHセンサ35の出力V1
/OUTとその目標値V1/TARGET(これは前記混合液の目標
pHに相当する)との偏差V1(=V1/OUT−V1/TARGET)
をpHセンサ35の出力を示すデータとして算出する減
算処理部38と(以下、偏差V1をpHセンサ35の偏差
出力V1という)、流量センサ36の出力V2/OUTと所定の
基準値V2/REF(これは任意に設定してよい)との偏差V2
(=V2/OUT−V2/REF)を流量センサ36の出力を示すデ
ータとして算出する減算処理部39と(以下、偏差V2を
流量センサ36の偏差出力V2という)、上記偏差出力V
1,V2に基づいて、pHセンサ35の出力V1/OUTをその
目標値V1/TARGETに収束させるためにプラント32に与
えるべきアルカリ液の目標流量V2CMDをプラント32へ
の入力を規定する操作量として決定する操作量生成手段
40と、流量センサ36の出力V2/OUT(検出流量)を目
標流量V2CMDに一致させるように前記流量制御弁33の
動作量をフィードバック制御する弁制御手段41(アク
チュエータ制御手段)とを機能的構成として具備してい
る。
【0364】尚、以下の説明において、前記目標流量V2
CMDの前記基準値V2/ REFに対する偏差(=V2CMD−V2/RE
F)を目標偏差流量v2cmd(これは前述の実施形態におけ
る目標偏差空燃比kcmdに対応する)と称する。また、流
量制御弁33及び弁制御手段41を合わせた系、すなわ
ち、目標流量V2CMDから流量センサ36が検出する流量
のアルカリ液を生成するシステムを流量操作系(これは
前述の実施形態における空燃比操作系に対応する)と称
する。
【0365】前記操作量生成手段40は、前述の第1実
施形態の操作量生成手段7と同様にその機能的構成とし
て図示を省略する同定器、第1及び第2推定器、合成
器、及びスライディングモード制御器を備えている。そ
して、本実施形態における操作量生成手段40の同定
器、第1推定器は、例えば前記式(1)のVO2,kactを
それぞれ前記偏差出力V1,V2で置き換えて成るプラント
32のモデルと、前記式(2)のkact,kcmdをそれぞれ
前記偏差出力V2、目標偏差流量v2cmdで置き換えて成る
前記流量操作系のモデルとを用い、前述の第1実施形態
における操作量生成手段7の同定器11及び推定器12
と同様の演算処理を行う。
【0366】すなわち、本実施形態における操作量生成
手段40は、プラント32のモデルのパラメータの同定
値(これは前述の実施形態における同定ゲイン係数a1ハ
ット、a2ハット、b1ハットに対応する)の算出や、プラ
ント32に存する無駄時間と流量操作系に存する無駄時
間とを合わせた合計無駄時間後のpHセンサ35の偏差
出力V1の推定値(これは前述の実施形態における推定偏
差出力VO2Lバーに対応する)の算出を行う。この場合、
プラント32のモデルにおける無駄時間の設定値は、プ
ラント32の実際の無駄時間以上となるような時間(例
えば一定値)に実験等を通じて定めておけばよい。ま
た、流量操作系のモデルにおける無駄時間の設定値は、
流量制御弁33の動作特性を考慮し、流量操作系の実際
の無駄時間以上となるような時間(例えば一定値)に実
験等を通じて定めておけばよい。
【0367】また、操作量生成手段40の第2推定器
は、前述の実施形態における第2推定器13と同様に構
築されたファジー推論のアルゴリズム(min−max−重心
法のアルゴリズム)により、上記合計無駄時間後のpH
センサ35の偏差出力V1の推定値(これは前述の第1実
施形態における推定偏差出力VO2Fバーに対応する)の算
出を行う。この場合、ファジー推論のファジールール
は、例えば前述の実施形態のものと同一でよく、また、
後件部のパラメータ(pHセンサ35の偏差出力V1の推
定値)に係わるメンバーシップ関数は、前述の実施形態
と同様にN(負)、Z(ゼロ)、P(正)の三種類の棒
状関数により設定することができる。また、前件部のパ
ラメータ(前述の第1実施形態におけるファジー用線形
関数σに相当する線形関数の値と、該偏差出力V1の値)
に係わるメンバーシップ関数も、基本的には、N
(負)、Z(ゼロ)、P(正)の三種類の三角形状、あ
るいは台形状の関数により設定することができる。これ
らのメンバーシップ関数の具体的な形状は、pHセンサ
35の出力特性を考慮して、実験等を通じて設定すれば
よい。
【0368】また、操作量生成手段40の合成器は、前
述の実施形態と全く同様に、両推定器による推定値の重
み付き合成により該推定値の合成値(これは、前述の実
施形態における合成推定偏差出力VO2バーに相当する)
を生成する。
【0369】そして、操作量生成手段40のスライディ
ングモード制御器は、上記合成値を用いて、前述の第1
実施形態と全く同様の演算処理(適応スライディングモ
ード制御の処理)を行うことにより、前記目標流量V2CM
D(これは前述の実施形態における目標空燃比KCMDに対
応する)の算出を行う。
【0370】尚、前記弁制御手段41は、例えば前述の
第1実施形態の大局的フィードバック制御部21と同様
に、図示しないPID制御器あるいは適応制御器等によ
り、流量センサ36の出力V2/OUT(検出流量)が前記目
標流量V2CMDに一致するように流量制御弁33の動作を
フィードバック制御する。
【0371】このような本実施形態の装置によれば、プ
ラント32に与えられるアルカリ液のpHや、該アルカ
リ液にプラント32内で混合する酸性液のpH、該酸性
液の流量を把握せずとも、外乱の影響やプラント32の
無駄時間、流量操作系の無駄時間の影響、さらには、p
Hセンサ35の出力状態によらずに、高い速応性で安定
にpHセンサ35の出力V1/OUT、すなわちプラント32
が生成する混合液のpHを所望のpHに制御することが
できる。
【0372】尚、本実施形態のプラントの制御装置で
は、プラント32の無駄時間と流量操作系の無駄時間と
の両者の無駄時間の影響を補償するようにしたが、後者
の無駄時間が前者の無駄時間に比して十分に小さい場合
には、前記第2実施形態の場合と同様に、プラント32
の無駄時間後のpHセンサ35の偏差出力V1の推定値を
二つの推定器により求めるようにし、それを合成器で合
成してなる合成値を用いて前記目標流量V2CMDをスライ
ディングモード制御器により生成するようにしてもよ
い。
【0373】また、本実施形態のプラントの制御装置で
は、前記空燃比制御装置の実施形態について説明した変
形態様と同様の各種の変形態様が可能である。
【0374】また、本実施形態のプラントの制御装置に
関しては、例えばプラント32と流量制御弁33とを合
わせた系を改めてプラントとみなして、制御システムを
構築するようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の装置のシステム構成図。
【図2】図1の装置に備えたセンサの出力特性を示す線
図。
【図3】図1の装置の操作量生成手段の構成を示すブロ
ック図。
【図4】図3のスライディングモード制御器が実行する
スライディングモード制御を説明するための線図。
【図5】図3の第2推定器の処理を説明するための線
図。
【図6】図3の第2推定器の処理(ファジー推論処理)
に用いるメンバーシップ関数を示す線図。
【図7】図3の第2推定器の処理(ファジー推論処理)
に用いるファジールールの説明図。
【図8】図3の合成器の処理を説明するための線図。
【図9】図3の合成器の処理を説明するための線図。
【図10】図1の機関制御手段の構成を示すブロック
図。
【図11】図10の要部の構成を示すブロック図。
【図12】図1の機関制御手段の処理を示すフローチャ
ート。
【図13】図12のフローチャートのサブルーチン処理
を示すフローチャート。
【図14】図1の操作量生成手段の処理を示すフローチ
ャート。
【図15】図14のフローチャートのサブルーチン処理
を示すフローチャート。
【図16】図14のフローチャートのサブルーチン処理
を示すフローチャート。
【図17】図14のフローチャートのサブルーチン処理
を示すフローチャート。
【図18】図14のフローチャートのサブルーチン処理
を示すフローチャート。
【図19】本発明のプラントの制御装置の他の実施形態
の装置のシステム構成図。
【符号の説明】
1…エンジン(内燃機関、アクチュエータ)、2…排気
管(排気通路)、3…触媒装置、4…空燃比センサ、5
…酸素濃度センサ(排ガスセンサ、検出手段)、7…操
作量生成手段、8…機関制御手段(アクチュエータ制御
手段)、11…同定器(同定手段)、12…第1推定器
(第1推定手段)、13…第2推定器(第2推定手
段)、14…合成器、15…スライディングモード制御
器、E…排気系(プラント)、32…プラント、33…
流量制御弁(アクチュエータ)、35…pHセンサ(検
出手段)、40…操作量生成手段、41…弁制御手段
(アクチュエータ制御手段)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G05B 11/36 503 G05B 11/36 503A 13/02 13/02 N 13/04 13/04 (72)発明者 田上 裕 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内 (72)発明者 森下 邦裕 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内 Fターム(参考) 3G084 AA00 BA09 DA05 DA10 EA07 EB08 EB11 EB13 EC04 FA10 FA11 FA20 FA29 FA33 3G301 HA00 JA11 JA21 NC02 ND05 ND18 ND43 ND45 PA07Z PA11Z PD04A PD04Z PE01Z PE08Z 5H004 GA10 GB01 GB12 HA04 HA13 HB04 JB08 JB16 JB17 JB29 KA66 KA74 KB02 KB04 KB06 KC22 KC28 KC38 KC39 KC42 KC46 KC54 KD07 KD26 LA02 LA03 LA08 LB06

Claims (37)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】所定の入力から所定の出力を生成するプラ
    ントと、前記プラントの出力を検出する検出手段と、該
    検出手段の出力を所定の目標値に収束させるように前記
    プラントへの入力を操作するための操作量を逐次生成す
    る操作量生成手段とを備えたプラントの制御装置におい
    て、 前記プラントが有する無駄時間後の前記検出手段の出力
    の推定値を表すデータを、少なくとも該検出手段の出力
    のデータを用いて互いに異なるアルゴリズムにより逐次
    生成する複数の推定手段を備え、 前記操作量生成手段は、前記複数の推定手段がそれぞれ
    生成したデータのうちのいずれか一つのデータが表す推
    定値を所定の条件に応じて選択的に用いて、又は該複数
    の推定手段のデータがそれぞれ表す推定値を所定の条件
    に応じた形態で合成してなる推定値を用いて前記操作量
    を生成することを特徴とするプラントの制御装置。
  2. 【請求項2】所定の入力から所定の出力を生成するプラ
    ントと、該プラントへの入力を生成するアクチュエータ
    と、前記プラントの出力を検出する検出手段と、該検出
    手段の出力を所定の目標値に収束させるように前記プラ
    ントへの入力を操作するための操作量を逐次生成する操
    作量生成手段と、該操作量に応じて前記アクチュエータ
    の動作を制御して前記プラントへの入力を操作するアク
    チュエータ制御手段とを備えたプラントの制御装置にお
    いて、 前記プラントが有する無駄時間後と前記アクチュエータ
    制御手段及びアクチュエータから成る入力操作系の無駄
    時間とを合わせた合計無駄時間後の前記検出手段の出力
    の推定値を表すデータを、少なくとも該検出手段の出力
    のデータを用いて互いに異なるアルゴリズムにより逐次
    生成する複数の推定手段を備え、 前記操作量生成手段は、前記複数の推定手段がそれぞれ
    生成したデータのうちのいずれか一つのデータが表す推
    定値を所定の条件に応じて選択的に用いて、又は該複数
    の推定手段のデータがそれぞれ表す推定値を所定の条件
    に応じた形態で合成してなる推定値を用いて前記操作量
    を生成することを特徴とするプラントの制御装置。
  3. 【請求項3】前記複数の推定手段は、前記プラントが前
    記入力から応答遅れ要素及び無駄時間要素を介して前記
    検出手段の出力を生成する系であるとして該プラントの
    挙動を表現すべくあらかじめ定めた該プラントのモデル
    に基づいて構築されたアルゴリズムにより前記推定値を
    表すデータを生成する第1推定手段と、ファジー推論の
    アルゴリズムより前記推定値を表すデータを生成する第
    2推定手段とからなることを特徴とする請求項1記載の
    プラントの制御装置。
  4. 【請求項4】前記複数の推定手段は、前記プラントが前
    記入力から応答遅れ要素及び無駄時間要素を介して前記
    検出手段の出力を生成する系であるとして該プラントの
    挙動を表現すべくあらかじめ定めた該プラントのモデル
    と前記入力操作系が前記操作量から無駄時間要素を介し
    て前記プラントへの入力を生成する系であるとして該入
    力操作系の挙動を表現すべくあらかじめ定めた該入力操
    作系のモデルとに基づいて構築されたアルゴリズムによ
    り前記推定値を表すデータを生成する第1推定手段と、
    ファジー推論のアルゴリズムより前記推定値を表すデー
    タを生成する第2推定手段とからなることを特徴とする
    請求項2記載のプラントの制御装置。
  5. 【請求項5】前記操作量生成手段は、前記複数の推定手
    段がそれぞれ生成したデータが表す推定値を重み付けし
    て合成してなる合成推定値を求める手段を有し、各推定
    手段の表す推定値に係る重み係数を、前記所定の条件に
    応じて可変的に設定することにより、前記各推定手段の
    推定値を含む前記合成推定値を求め、その求めた合成推
    定値を用いて前記操作量を生成することを特徴とする請
    求項1〜4のいずれか1項に記載のプラントの制御装
    置。
  6. 【請求項6】前記操作量生成手段は、適応制御の処理に
    より前記操作量を生成することを特徴とする請求項1〜
    5のいずれか1項に記載のプラントの制御装置。
  7. 【請求項7】前記操作量生成手段は、スライディングモ
    ード制御の処理により前記操作量を生成することを特徴
    とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のプラントの
    制御装置。
  8. 【請求項8】前記所定の条件は、前記検出手段の出力の
    データ値に基づく条件であることを特徴とする請求項1
    〜7のいずれか1項に記載のプラントの制御装置。
  9. 【請求項9】前記所定の条件は、前記検出手段の出力の
    時系列データを変数成分とすると共に前記スライディン
    グモード制御の処理に用いる切換関数に応じて定められ
    た所定の線形関数の値と、前記検出手段の出力のデータ
    値との組み合わせの条件であることを特徴とする請求項
    7記載のプラントの制御装置。
  10. 【請求項10】前記切換関数は、前記検出手段の出力と
    前記目標値との偏差の時系列データを変数成分とする線
    形な関数であり、前記所定の線形関数は、その変数成分
    に係る係数値を前記切換関数の変数成分に係る係数値と
    同一とした線形関数であることを特徴とする請求項9記
    載のプラントの制御装置。
  11. 【請求項11】前記組み合わせの条件は、前記線形関数
    の値及び前記検出手段の出力のデータ値の組み合わせ
    が、その両値を座標成分とする座標平面上にあらかじめ
    定めた所定の領域に存するか否かの条件を含むことを特
    徴とする請求項9又は10記載のプラントの制御装置。
  12. 【請求項12】内燃機関の排気通路に設けた触媒装置の
    下流側に該触媒装置を通過した排ガス中の特定成分の濃
    度を検出すべく配置した排ガスセンサと、該排ガスセン
    サの出力を所定の目標値に収束させるように前記触媒装
    置に進入する排ガスの空燃比を規定する操作量を逐次生
    成する操作量生成手段とを備えた内燃機関の空燃比制御
    装置において、 前記触媒装置の上流側から下流側の前記排ガスセンサに
    かけての該触媒装置を含む排気系が有する無駄時間後の
    該排ガスセンサの出力の推定値を表すデータを、少なく
    とも該排ガスセンサの出力のデータを用いて互いに異な
    るアルゴリズムにより逐次生成する複数の推定手段を備
    え、 前記操作量生成手段は、前記複数の推定手段がそれぞれ
    生成したデータのうちのいずれか一つのデータが表す推
    定値を所定の条件に応じて選択的に用いて、又は該複数
    の推定手段のデータがそれぞれ表す推定値を所定の条件
    に応じた形態で合成してなる推定値を用いて前記操作量
    を生成することを特徴とする内燃機関の空燃比制御装
    置。
  13. 【請求項13】前記操作量生成手段は、前記複数の推定
    手段がそれぞれ生成したデータが表す推定値を重み付け
    して合成してなる合成推定値を求める手段を有し、各推
    定手段の推定値に係る重み係数を、前記所定の条件に応
    じて可変的に設定することにより、前記各推定手段の推
    定値を含めた前記合成推定値を求め、その求めた合成推
    定値を用いて前記操作量を生成することを特徴とする請
    求項12記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  14. 【請求項14】前記操作量生成手段は、適応制御の処理
    により前記操作量を生成することを特徴とする請求項1
    2又は13記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  15. 【請求項15】前記操作量生成手段は、スライディング
    モード制御の処理により前記操作量を生成することを特
    徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の内燃
    機関の空燃比制御装置。
  16. 【請求項16】前記所定の条件は、前記排ガスセンサの
    出力のデータ値に基づく条件であることを特徴とする請
    求項12〜15のいずれか1項に記載の内燃機関の空燃
    比制御装置。
  17. 【請求項17】前記所定の条件は、前記排ガスセンサの
    出力の時系列データを変数成分として、前記スライディ
    ングモード制御の処理に用いる切換関数に応じて定めら
    れた所定の線形関数の値と、前記排ガスセンサの出力の
    データ値との組み合わせの条件であることを特徴とする
    請求項15記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  18. 【請求項18】前記切換関数は、前記排ガスセンサの出
    力と前記目標値との偏差の時系列データを変数成分とす
    る線形な関数であり、前記所定の線形関数は、その変数
    成分に係る係数値を前記切換関数の変数成分に係る係数
    値と同一とした線形関数であることを特徴とする請求項
    17記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  19. 【請求項19】前記組み合わせの条件は、前記線形関数
    の値及び前記排ガスセンサの出力のデータ値の組み合わ
    せが、その両値を座標成分とする座標平面上にあらかじ
    め定めた所定の領域に存するか否かの条件を含むことを
    特徴とする請求項17又は18記載の内燃機関の空燃比
    制御装置。
  20. 【請求項20】前記排ガスセンサは酸素濃度センサであ
    り、前記複数の推定手段は、前記排気系が前記触媒装置
    に進入する排ガスの空燃比から応答遅れ要素及び無駄時
    間要素を介して前記酸素濃度センサの出力を生成する系
    であるとして該排気系の挙動を表現すべくあらかじめ定
    めた該排気系のモデルに基づいて構築されたアルゴリズ
    ムにより前記推定値を表すデータを生成する第1推定手
    段と、ファジー推論のアルゴリズムより前記推定値を表
    すデータを生成する第2推定手段とからなることを特徴
    とする請求項12〜19のいずれか1項に記載の内燃機
    関の空燃比制御装置。
  21. 【請求項21】前記排ガスセンサは酸素濃度センサであ
    り、前記複数の推定手段は、前記排気系が前記触媒装置
    に進入する排ガスの空燃比から応答遅れ要素及び無駄時
    間要素を介して前記酸素濃度センサの出力を生成する系
    であるとして該排気系の挙動を表現すべくあらかじめ定
    めた該排気系のモデルに基づいて構築されたアルゴリズ
    ムにより前記推定値を表すデータを生成する第1推定手
    段と、ファジー推論のアルゴリズムより前記推定値を表
    すデータを生成する第2推定手段とからなり、前記第2
    推定手段のファジー推論のアルゴリズムは、前記酸素濃
    度センサの出力の時系列データを変数成分とすると共に
    前記スライディングモード制御の処理に用いる切換関数
    に応じて定められた所定の線形関数の値と、前記酸素濃
    度センサの出力のデータ値とを前記ファジー推論の前件
    部のパラメータとし、前記推定値を表すデータを該ファ
    ジー推論の後件部のパラメータとして生成するアルゴリ
    ズムであることを特徴とする請求項15記載の内燃機関
    の空燃比制御装置。
  22. 【請求項22】前記排ガスセンサは酸素濃度センサであ
    り、前記複数の推定手段は、前記排気系が前記触媒装置
    に進入する排ガスの空燃比から応答遅れ要素及び無駄時
    間要素を介して前記酸素濃度センサの出力を生成する系
    であるとして該排気系の挙動を表現すべくあらかじめ定
    めた該排気系のモデルに基づいて構築されたアルゴリズ
    ムにより前記推定値を表すデータを生成する第1推定手
    段と、ファジー推論のアルゴリズムより前記推定値を表
    すデータを生成する第2推定手段とからなり、前記第2
    推定手段のファジー推論のアルゴリズムは、前記所定の
    線形関数の値と、前記酸素濃度センサの出力のデータ値
    とを前記ファジー推論の前件部のパラメータとし、前記
    推定値を表すデータを該ファジー推論の後件部のパラメ
    ータとして生成するアルゴリズムであることを特徴とす
    る請求項17〜19のいずれか1項に記載の内燃機関の
    空燃比制御装置。
  23. 【請求項23】前記ファジー推論のアルゴリズムは、前
    記後件部のパラメータに係わるメンバーシップ関数とし
    て複数の棒状関数を用いて、min−max−重心法に
    基づき構築されたアルゴリズムであることを特徴とする
    請求項21又は22記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  24. 【請求項24】前記触媒装置に進入する排ガスの空燃比
    を検出する空燃比センサと、該空燃比センサ及び前記酸
    素濃度センサの出力のデータを用いて前記排気系のモデ
    ルの設定すべきパラメータの値を逐次同定する同定手段
    とを備え、前記第1推定手段のアルゴリズムは、少なく
    とも前記酸素濃度センサ及び空燃比センサのそれぞれの
    出力のデータと前記同定手段により同定された前記排気
    系のモデルのパラメータとを用いて前記推定値を表すデ
    ータを生成するアルゴリズムであることを特徴とする請
    求項20〜23のいずれか1項に記載の内燃機関の空燃
    比制御装置。
  25. 【請求項25】内燃機関の排気通路に設けた触媒装置の
    下流側に該触媒装置を通過した排ガス中の特定成分の濃
    度を検出すべく配置した排ガスセンサと、該排ガスセン
    サの出力を所定の目標値に収束させるように前記触媒装
    置に進入する排ガスの空燃比を規定する操作量を逐次生
    成する操作量生成手段と、該操作量に応じて前記内燃機
    関で燃焼させる混合気の空燃比を操作する機関制御手段
    とを備えた内燃機関の空燃比制御装置において、 前記触媒装置の上流側から下流側の前記排ガスセンサに
    かけての該触媒装置を含む排気系が有する無駄時間と前
    記機関制御手段及び内燃機関から成る空燃比操作系が有
    する無駄時間とを合わせた合計無駄時間後の該排ガスセ
    ンサの出力の推定値を表すデータを、少なくとも該排ガ
    スセンサの出力のデータを用いて互いに異なるアルゴリ
    ズムにより逐次生成する複数の推定手段を備え、 前記操作量生成手段は、前記複数の推定手段がそれぞれ
    生成したデータのうちのいずれか一つのデータが表す推
    定値を所定の条件に応じて選択的に用いて、又は該複数
    の推定手段のデータがそれぞれ表す推定値を所定の条件
    に応じた形態で合成してなる推定値を用いて前記操作量
    を生成することを特徴とする内燃機関の空燃比制御装
    置。
  26. 【請求項26】前記操作量生成手段は、前記複数の推定
    手段がそれぞれ生成したデータが表す推定値を重み付け
    して合成してなる合成推定値を求める手段を有し、各推
    定手段の推定値に係る重み係数を、前記所定の条件に応
    じて可変的に設定することにより、前記各推定手段の推
    定値を含めた前記合成推定値を求め、その求めた合成推
    定値を用いて前記操作量を生成することを特徴とする請
    求項25記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  27. 【請求項27】前記操作量生成手段は、適応制御の処理
    により前記操作量を生成することを特徴とする請求項2
    5又は26記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  28. 【請求項28】前記操作量生成手段は、スライディング
    モード制御の処理により前記操作量を生成することを特
    徴とする請求項25〜27のいずれか1項に記載の内燃
    機関の空燃比制御装置。
  29. 【請求項29】前記所定の条件は、前記排ガスセンサの
    出力のデータ値に基づく条件であることを特徴とする請
    求項25〜28のいずれか1項に記載の内燃機関の空燃
    比制御装置。
  30. 【請求項30】前記所定の条件は、前記排ガスセンサの
    出力の時系列データを変数成分として、前記スライディ
    ングモード制御の処理に用いる切換関数に応じて定めら
    れた所定の線形関数の値と、前記排ガスセンサの出力の
    データ値との組み合わせの条件であることを特徴とする
    請求項28記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  31. 【請求項31】前記切換関数は、前記排ガスセンサの出
    力と前記目標値との偏差の時系列データを変数成分とす
    る線形な関数であり、前記所定の線形関数は、その変数
    成分に係る係数値を前記切換関数の変数成分に係る係数
    値と同一とした線形関数であることを特徴とする請求項
    30記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  32. 【請求項32】前記組み合わせの条件は、前記線形関数
    の値及び前記排ガスセンサの出力のデータ値の組み合わ
    せが、その両値を座標成分とする座標平面上にあらかじ
    め定めた所定の領域に存するか否かの条件を含むことを
    特徴とする請求項30又は31記載の内燃機関の空燃比
    制御装置。
  33. 【請求項33】前記排ガスセンサは、酸素濃度センサで
    あり、 前記複数の推定手段は、前記排気系が前記触媒装置に進
    入する排ガスの空燃比から応答遅れ要素及び無駄時間要
    素を介して前記酸素濃度センサの出力を生成する系であ
    るとして該排気系の挙動を表現すべくあらかじめ定めた
    該排気系のモデルと前記空燃比操作系が前記操作量から
    無駄時間要素を介して前記触媒装置に進入する排ガスの
    空燃比を生成する系であるとして該空燃比操作系の挙動
    を表現すべくあらかじめ定めた該空燃比操作系のモデル
    とに基づいて構築されたアルゴリズムにより前記推定値
    を表すデータを生成する第1推定手段と、ファジー推論
    のアルゴリズムより前記推定値を表すデータを生成する
    第2推定手段とからなることを特徴とする請求項25〜
    32のいずれか1項に記載の内燃機関の空燃比制御装
    置。
  34. 【請求項34】前記排ガスセンサは、酸素濃度センサで
    あり、 前記複数の推定手段は、前記排気系が前記触媒装置に進
    入する排ガスの空燃比から応答遅れ要素及び無駄時間要
    素を介して前記酸素濃度センサの出力を生成する系であ
    るとして該排気系の挙動を表現すべくあらかじめ定めた
    該排気系のモデルと前記空燃比操作系が前記操作量から
    無駄時間要素を介して前記触媒装置に進入する排ガスの
    空燃比を生成する系であるとして該空燃比操作系の挙動
    を表現すべくあらかじめ定めた該空燃比操作系のモデル
    とに基づいて構築されたアルゴリズムにより前記推定値
    を表すデータを生成する第1推定手段と、ファジー推論
    のアルゴリズムより前記推定値を表すデータを生成する
    第2推定手段とからなり、 前記第2推定手段のファジー推論のアルゴリズムは、前
    記酸素濃度センサの出力の時系列データを変数成分とす
    ると共に前記スライディングモード制御の処理に用いる
    切換関数に応じて定められた所定の線形関数の値と、前
    記酸素濃度センサの出力のデータ値とを前記ファジー推
    論の前件部のパラメータとし、前記推定値を表すデータ
    を該ファジー推論の後件部のパラメータとして生成する
    アルゴリズムであることを特徴とする請求項28記載の
    内燃機関の空燃比制御装置。
  35. 【請求項35】前記排ガスセンサは、酸素濃度センサで
    あり、 前記複数の推定手段は、前記排気系が前記触媒装置に進
    入する排ガスの空燃比から応答遅れ要素及び無駄時間要
    素を介して前記酸素濃度センサの出力を生成する系であ
    るとして該排気系の挙動を表現すべくあらかじめ定めた
    該排気系のモデルと前記空燃比操作系が前記操作量から
    無駄時間要素を介して前記触媒装置に進入する排ガスの
    空燃比を生成する系であるとして該空燃比操作系の挙動
    を表現すべくあらかじめ定めた該空燃比操作系のモデル
    とに基づいて構築されたアルゴリズムにより前記推定値
    を表すデータを生成する第1推定手段と、ファジー推論
    のアルゴリズムより前記推定値を表すデータを生成する
    第2推定手段とからなり、 前記第2推定手段のファジー推論のアルゴリズムは、前
    記所定の線形関数の値と、前記酸素濃度センサの出力の
    データ値とを前記ファジー推論の前件部のパラメータと
    し、前記推定値を表すデータを該ファジー推論の後件部
    のパラメータとして生成するアルゴリズムであることを
    特徴とする請求項30〜32のいずれか1項に記載の内
    燃機関の空燃比制御装置。
  36. 【請求項36】前記ファジー推論のアルゴリズムは、前
    記後件部のパラメータに係わるメンバーシップ関数とし
    て複数の棒状関数を用いて、min−max−重心法に
    基づき構築されたアルゴリズムであることを特徴とする
    請求項34又は35記載の内燃機関の空燃比制御装置。
  37. 【請求項37】前記触媒装置に進入する排ガスの空燃比
    を検出する空燃比センサと、該空燃比センサ及び前記酸
    素濃度センサの出力のデータを用いて前記排気系のモデ
    ルの設定すべきパラメータの値を逐次同定する同定手段
    とを備え、前記第1推定手段のアルゴリズムは、少なく
    とも前記酸素濃度センサ及び空燃比センサのそれぞれの
    出力のデータと前記同定手段により同定された前記排気
    系のモデルのパラメータとを用いて前記推定値を表すデ
    ータを生成するアルゴリズムであることを特徴とする請
    求項33〜36のいずれか1項に記載の内燃機関の空燃
    比制御装置。
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