JP2002319359A - 回転陽極x線管及びそれを用いたx線ct装置 - Google Patents

回転陽極x線管及びそれを用いたx線ct装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 X線管自体の焦点移動量を低減し、機械的強
度を向上すると共に、X線CT装置におけるX線管の陽
極の熱的コントロールにより焦点移動の画質への影響を
抑制する。 【解決手段】 回転陽極X線管30の回転陽極31を構成す
るロータ35及び固定部32の構造、材料を変更し、両者の
熱的伸長量を低減する。固定部32については軸受9を支
持する内筒部33とこれを覆う外筒部34で構成し、前者を
高熱伝導性の銅、後者を低熱膨張率のモリブデンで作
り、外筒部34によって熱的伸長量を抑制し、内筒部33に
よって軸受9の温度上昇を抑制する。ロータ35を構成す
るロータ肩部36については、断熱支持体7との結合構造
をねじ締結に変え、材料としてモリブデン(従来ステン
レス鋼)を用いることにより熱的伸長量を抑制し、結合
構造を強化した。この結果、X線管での焦点移動量は従
来品に対し約70%低減されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医療用、産業用の
X線CT装置に係り、特にX線CT装置の画像の画質を
改善するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、X線CT装置の性能向上は著し
く、画像処理技術が進歩しているばかりでなく、画像信
号を読み取るX線検出器も改良が図られ、X線CT装置
の画質向上に大きな寄与をしている。すなわち、X線検
出器としては、X線による気体の電離作用を応用した電
離箱方式の検出器に代り、受光感度の高い半導体を用い
た固体方式の検出器を用いることにより、X線CT装置
の画質は著しく向上している。このような画像の技術の
進歩に対し、X線発生源であるX線管装置に関しては、
以下の問題をかかえている。
【0003】X線CT装置では、X線管装置から放射さ
れた厚さ1〜10mm程度の扇状のX線が被検体を透過し、
被検体によって濃度分布の付けられたX線を、X線検出
器で受光して電気信号に変換し、その信号を処理して断
層像として画像化する。ここで問題となるのは、従来の
X線CT装置用の回転陽極X線管装置ではほぼ全てのも
ので、X線源となる焦点の位置の移動(以下、焦点移動
という)が生じ、断層像の画質の向上に対し妨げとなっ
ていることである。最近では、固体検出器がX線検出器
の主流となり、この高感度特性を十分に発揮させ、更に
最高の画質を提供するためには、X線管装置の焦点移動
の問題を解決することが必要である。
【0004】上記のX線管装置の焦点移動の原因は、内
挿されている回転陽極X線管の回転陽極が熱的に伸長す
ることにある。X線CT装置では断層像の画像処理を行
う際に、予め被検体を置かずに画像データを取り込み、
補正係数を決定するキャリブレーション作業を行う。実
際に被検体の断層像の撮影を開始すると、X線管装置で
はX線曝射が繰り返し行われ、回転陽極のターゲットに
熱が発生する。このX線曝射の繰り返しにより、回転陽
極のターゲットに熱が蓄積され、その温度は最高950℃
から1.000℃に上昇し、回転陽極自体が全体として熱膨
張して陰極方向へ伸長するため、ターゲットの焦点面が
陰極方向へ移動する。現用のX線管装置では、この焦点
移動量は200〜500μm程度である。これに対し、キャリ
ブレーションによる補正係数によって補正可能な焦点移
動の許容範囲は、キャリブレーション位置を基準にして
大略±35μm以内である。この範囲内から焦点位置が外
れた場合には、アーチファクト等の画像劣化が生じる。
【0005】ここで、従来の回転陽極X線管装置の代表
例の構造とその焦点移動の挙動例について図13及び図14
を用いて説明しておくことにする。図13は従来の回転陽
極X線管装置の代表例の構造を示したもの、図14は従来
のX線管装置での焦点移動を説明するための図である。
先ず、従来の回転陽極X線管装置の代表例の構造につい
て説明する。
【0006】図13において、回転陽極X線管装置40は、
X線を発生する回転陽極X線管(以下、X線管と略称す
る場合もある)1と、X線管1を内包するX線管容器41
と、X線管1の陰極側の外囲器12を絶縁支持する陰極側
支持体46と、X線管1の陽極端を絶縁支持する陽極側支
持体42と、X線管1の回転陽極2のロータ5の外周に配設
され、ロータ5に回転力を付与するステータ47と、X線
管1の絶縁及び冷却をするためにX線管容器41内に充填
される絶縁油50と、X線管1で発生したX線を外部に取
り出すためにX線管容器41に取り付けられたX線放射窓
49と、X線管1の陰極及び陽極に高電圧を供給するため
のケーブルレセプタクル(図示せず)などから構成され
る。ここで、ステータ47は、陽極側支持体42の内周側に
支持されている。
【0007】次に、X線管1の構造について説明する。
X線管1は、電子線を放出する陰極11と、陰極11からの
電子線が衝突してX線を発生するターゲット3を備えた
回転陽極2と、陰極11と回転陽極2とを絶縁支持し、両電
極を真空気密に内包する外囲器12などから構成される。
外囲器12の側面にはX線を外部に取り出すためのX線放
射窓15が取付けられている。
【0008】X線管1の構成要素のうち、上記の焦点移
動に関係する部分は回転陽極2である。以下に、回転陽
極2の構造の詳細について説明する。回転陽極2は、回転
盤から成るターゲット3と、ターゲット3を支持するロー
タ5と、ロータ5を支持する回転軸8と、回転軸8を回転
自在に支持する1組(本例では2個)の軸受9と、軸受9を
支持する固定部10などから構成される。ターゲット3
は、陰極11からの電子線が衝突してX線を発生する焦点
面13と、焦点面13を保持しこれに入力する熱を蓄熱する
第1の蓄熱部3aと、第1の蓄熱部3aの裏面に貼り付けられ
てターゲット3の蓄熱容量を大きくするための第2の蓄熱
部3bとから成る。ここで、焦点面13にはタングステンや
タングステン合金などの高原子番号でかつ高融点の金属
が用いられ、第1の蓄熱部3aにはモリブデンやモリブデ
ン合金などの高融点で高強度で加工性の良い金属が用い
られ、第2の蓄熱部3bにはグラファイトなどの高融点で
比熱の大きい軽い材料が用いられている。
【0009】ロータ5は、ターゲット3の第1の蓄熱部3a
に結合してこれを支持するターゲット支持軸4と、ター
ゲット支持軸4を支持するロータ肩部6と、ロータ肩部6
に結合され、ステータ47から回転磁界を受けて回転する
ロータ円筒部5aとから構成される。ターゲット支持軸4
にはモリブデンやモリブデン合金などの高融点で高強度
の材料が用いられ、ロータ肩部6にはステンレス鋼など
の高強度の材料が用いられ、ロータ円筒部5aには銅など
の導電性の良い材料が用いられる。ロータ5の各部材は
鋳造またはろう付けにより結合されている。
【0010】ロータ5のロータ肩部6と回転軸8との間に
は、熱抵抗を高めるために断熱支持体7が配設され、こ
の断熱支持体7と回転軸8との結合体にてロータ5を支持
している。断熱支持体7は熱抵抗を大きくするため、薄
肉に加工され、ロータ肩部6と回転軸8との間の熱的経路
を長くしている。断熱支持体7にはステンレス鋼などの
高強度の材料が用いられる。
【0011】回転軸8は、フランジのついた棒状体で、
フランジの部分にて断熱支持体7とねじなどで結合さ
れ、棒状体の部分には2個の軸受9の内輪が形成されてい
る。この回転軸8の場合、その一部が軸受の内輪の役割
を分担しているが、内輪を具備する軸受を用いる場合に
は、回転軸8の棒状体の部分に取り付ければよい。回転
軸8には高速度工具鋼などの高硬度かつ高強度の材料が
用いられている。回転軸8は軸受9に回転自在に支持され
ている。軸受9には、回転軸8と同様に高速度工具鋼など
の高硬度かつ高強度の材料が用いられ、軸受9のボール
及びレース面には潤滑処理が施されている。
【0012】2個の軸受9の外輪は固定部10の軸箱部分で
ある開口部の内周に固定されている。固定部10は底付き
の円筒状体で、一端は開口部(軸箱部分)の入口とな
り、他端は陽極端となる。陽極端においては、X線管1
の外囲器12に結合されると共に、X線管装置40の陽極側
支持体42に支持される。固定部10には、銅などの熱伝導
率の高い材料が用いられている。
【0013】回転陽極2を構成する部材のうち、焦点移
動量に大きく寄与している部材は、熱的伸長量の大きい
固定部10とロータ肩部6であり、これらの2つの部材にて
焦点移動量の大部分を占めている。この原因としては、
第1に高温となるロータ肩部6の材料として熱膨張率の大
きいステンレス鋼を使用していること、第2に全長の最
も長い固定部10に熱膨張率の大きい銅を使用しているこ
とに起因する。
【0014】このため、上記の熱的伸長量の大きいロー
タ肩部6と固定部10について、熱膨張率の小さい材料に
変更することによって熱的伸長量を小さくして、焦点移
動量を低減することが考えられる。そこで、ロータ肩部
6と固定部10について、熱膨張率の低いモリブデン又は
モリブデン合金などの材料を適用することを考えた。先
ず、固定部10の場合、材料の銅を例えばモリブデンに変
更すると、熱膨張率は銅の17×10-6(1/℃)からモリブ
デンの4×10-6(1/℃)へと約1/4の減少、熱的伸長量も
約275μmだけ減少する。しかし、モリブデンの熱伝導率
は33×10-6(kcal/s.mm.℃)であり、銅の約1/3に低下
するため、固定部10における熱伝導が悪くなるという問
題が生じる。その結果、ターゲット3で発生した熱が回
転軸8に伝導した場合、固定部10を経由しての放熱が悪
くなるため、回転軸8の温度が上昇し、回転軸8に設けら
れた軸受9の内輪に施されている固体潤滑剤の蒸発が促
進され、回転不良の原因となってしまう。
【0015】また、ロータ肩部6の場合、材料のステン
レス鋼を例えばモリブデンに変更すると、熱膨張率がス
テンレス鋼の13.6×10-6(1/℃)からモリブデンの4.0
×10-6(1/℃)へと約1/3に減少し、熱的伸長量も約115
μmだけ減少する。しかし、構造上ロータ肩部6は断熱支
持体7と複数本のねじ7aを用いて固定されており、断熱
支持体7の材料にステンレス鋼が使用されているため、
両部材の間には熱膨張率に大きな差があるため、回転陽
極2が高温になったときにねじ7aの緩みが発生し、断熱
支持体7の位置ずれを生ずるという問題がある。
【0016】次に、回転陽極X線管装置(以下、X線管
装置と略称する場合もある)の焦点移動の挙動について
説明する。図14において、従来のX線管装置(本説明で
はX線管で代表する)をX線CT装置に搭載して使用す
る場合、X線管1の回転陽極2と陰極11との間に高電圧を
印加することによって、陰極11で生成された電子線が加
速されてターゲット3の焦点面13に衝突し、電子線が衝
突した部分(焦点)14でX線16が発生する。焦点14で発
生したX線16は外囲器12のX線放射窓15から外部に放射
される。外部に放射されたX線16は、X線CT装置に取
り付けられたコリメータ17のスリット18によって必要な
厚さを持つ扇状X線ビーム16に絞られる。
【0017】X線曝射回数の少ない初期の段階では、X
線ビーム16は直進し、その中心はX線検出器20の位置A
に入射する。しかし、X線曝射回数が増えてくると、タ
ーゲット3への負荷入力により回転陽極2の温度が上昇
し、回転陽極2の構成部材が熱膨張する。その結果、陽
極端を支持しているX線管1では、ターゲット3の焦点面
は実線の焦点面13の位置から破線の焦点面13aの位置ま
で移動する。同時に、X線管1の焦点は焦点14の位置か
ら焦点14aの位置まで移動する。このときの焦点14の移
動した距離ΔLが焦点移動量19である。この焦点14の移
動により、コリメータ17のスリット18を通過するX線ビ
ームはX線ビーム16aで示した方向に直進し、X線ビー
ム16aの中心はX線検出器20の位置Bに入射する。X線
CT装置では、焦点14とコリメータ17との間の距離S1
に対し、コリメータ17とX線検出器20との間の距離S2
が大きく設定されることになるので、X線管1上の焦点
移動量ΔL19に対し、X線検出器20上でのX線ビーム16
の移動量ΔK(AB間の距離。以下、X線検出器上の焦
点移動量と呼ぶことにする)21が大きくなる。実際のX
線CT装置の例では、上記の距離S1と距離S2の比率は
約1:4であるため、X線検出器上の焦点移動量ΔK21は
X線管上の焦点移動量ΔL19の約4倍(4ΔL)となって
いる。このように、X線検出器20上ではX線管1の焦点
移動量ΔL19が大幅に拡大されて検出されるため、画像
処理に悪影響を及ぼす問題が生じる。
【0018】現用のX線管装置では、回転陽極への負荷
(X線管電圧×X線管電流×撮影時間)を一定時間間隔
で入力することは殆どなく、撮影条件によって負荷入力
のパターンは様々である。このため、回転陽極が予定の
温度範囲に対し加熱されすぎたり、冷却されすぎたりし
て、焦点位置が補正可能範囲から外れるという問題があ
る。
【0019】上記の問題を解決するための方法の第1の
従来例としては、X線CT装置のX線管装置を支持する
台として、モータ駆動にてX線管装置の位置をX線管軸
方向に移動させることが可能なものを用意し、その台に
X線管装置を搭載することによって、焦点位置が上記の
補正可能範囲から外れそうになった際にはX線管装置を
焦点移動量が減少する方向に移動させて、焦点位置を補
正可能範囲に戻す方法がある。また、同様な方法(以
下、第2の従来例という)として、X線管装置の代り
に、X線検出器を移動させる方法も実用化されている。
【0020】また、第3の従来例として特開平11-292308
号公報に開示されたものがある。この第3の従来例はX
線検出器側で問題点を解決しょうとするものである。X
線検出器では通常X線管装置から放射される扇状X線ビ
ームに対しX線検出素子の長手方向が垂直になるように
配列されているが、固体検出器ではシンチレータとダイ
オードとの組合せから成るX線検出素子の長手方向にお
ける感度分布が一様でない。このため焦点移動が生じる
と、固体検出器の各X線検出素子が受光するX線ビーム
の厚さ方向のX線強度分布がわずかに変化し、その結果
断層像にアーチファクトが生じることになる。これらに
対し第3の従来例では、X線検出器の両端に複数個のレ
ファレンスチャンネル用素子を設け、レファレンスチャ
ンネル用素子の長手方向が扇状X線ビームの幅方向に、
各素子の幅方向が扇状X線ビームの厚さ方向に、それぞ
れ平行になるように配列している。このようなレファレ
ンスチャンネル用素子を設けることにより、焦点位置の
移動により扇状X線ビームの照射位置がX線ビームの厚
さ方向に移動しても、レファレンスチャンネル用素子の
受光面の全長にわたってX線が均一に照射されるため、
X線ビームの厚さ方向の照射位置の変化によって影響さ
れないレファレンス信号を得ることができる。このレフ
ァレンス信号を用いることにより適正なX線強度補正を
行うことができるので、焦点移動が生じた場合でもアー
チファクトのない断層画像を得ることができる。
【0021】また、第4の従来例として特開平11-295430
号公報に開示されたものがある。この第4の従来例は、
スライス方向に焦点移動が生じてもX線検出器の出力変
動がなく、また特別な装置を付加しなくても常に出力が
一定に保たれる固体検出器に関するものである。例えば
2スライス撮影可能なマルチスライスCT用固体検出器
において、従来品では1列目と2列目のX線検出素子間に
散乱X線遮蔽板が設けられており、焦点位置が移動する
とX線ビームは散乱X線遮蔽板に一部遮られ、焦点位置
移動前(初期)に比べ1列目と2列目のX線検出素子が検
出するX線ビームの幅が異なり、受光するX線強度に差
が生じてしまうため、アーチファクトが生じる問題があ
る。これに対して、第4の従来例では、上記の散乱X線
遮蔽板の高さを低くして、1列目と2列目のX線検出素子
の間にスペーサを挿入して距離を持たせることによっ
て、焦点移動後においても、各列のX線検出素子に入射
するX線ビームの幅が初期の値に比べ変化しないように
して、アーチファクトの発生を防止している。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】以上説明したX線CT
装置における焦点移動問題の対策方法の中で、第1の従
来例であるX線管装置を外部機構によってX線管軸方向
に移動する補正方法では、焦点位置を常時モニタ−しな
がらμmオーダーの精度で位置制御を行う必要があるた
め、その機構が複雑で大きくなるため、コストがかかる
と共に、X線CT装置の小型化に支障をきたしている。
また、第2の従来例であるX線検出器を移動する補正方
法についても、第1の従来例と同様の問題をかかえてい
る。
【0023】また、固体検出器側での焦点移動対策であ
る第3、第4の従来例に関しては、構造が複雑である上
に、組立に高い精度が要求されるために、その生産には
高い技術力が必要となる。更に、それぞれの補正方法は
独特であるため、適用範囲が限定され、汎用性が低いと
いう問題がある。
【0024】上記ではX線管装置以外での焦点移動対策
について述べたが、以下にはX線管装置側での焦点移動
対策例について述べる。特開平9‐63522号公報に第5の
従来例が開示されている。この第5の従来例では、X線
管装置内の回転陽極X線管の陽極を支持する陽極支持部
材に加熱用ヒータを取り付け、陽極支持部材を加熱する
ことにより焦点移動方向とは逆の方向に熱膨張させて、
焦点移動量をキャンセルする方法をとっている。しか
し、加熱用ヒータによる加熱操作では焦点移動量変化に
対する追従が難しいこと、更に外部にコントローラ等を
設ける必要があるため、コストがかかるという問題があ
る。
【0025】また、特開平12‐40480号公報には第6の従
来例が開示されている。この第6の従来例では、X線管
装置内の回転陽極X線管の回転陽極を構成する部材の中
で、焦点移動方向とは逆の方向に伸びる部分の長さを増
やし、かつ軸受を固定する固定部を2層構造として逆方
向に伸びる内層部を付加することにより、焦点移動方向
への伸び量をキャンセルする構造にしている。しかし、
この方法では、焦点移動量のキャンセル量が未だ不十分
であること、キャンセル量を十分にとろうとするとX線
管の構造と長さの制約を受けることなどの問題がある。
【0026】また、最近のX線CT装置では、短時間で
多くの断層像を得るために蓄熱容量が500万ヒートユニ
ット(HU:熱量の単位で、約0.71ジュール)以上の大
熱容量のターゲットを持つX線管装置を搭載し、1スキ
ャンを1秒以下で行う高速スキャン技術が行われてい
る。この高速スキャン技術では、X線管装置を搭載する
スキャナが高速度で回転するため、X線管装置にかかる
遠心力はスキャン速度の2乗に比例して増加する。ま
た、ターゲットの蓄熱容量の増加によりターゲットが大
型化しこれを支える部分に大きな荷重がかかることか
ら、X線管の回転陽極の強度自体が問題となり、会わせ
て回転陽極のたわみによる焦点移動も問題となり、回転
陽極の機械的強度の向上が必要となっている。
【0027】以上説明した如く、X線CT装置において
は、画像処理技術やX線検出器の技術が向上しているに
もかかわらず、焦点移動による断層像の画質劣化の問題
に対するX線管装置自体での対応は遅れており、不十分
である。また、X線管の回転陽極の機械的強度の向上も
必要である。このため、本発明では、X線CT装置での
焦点移動による画像劣化を防止し、装置システムの簡便
化のために、X線管装置自体にてX線管の回転陽極の機
械的強度の向上と、X線管装置全体としての焦点移動量
の大幅な低減を図るとともに、X線CT装置システムと
してX線管の回転陽極の熱的コントロールを行うことに
より、焦点移動の画質への影響を抑制することを目的と
する。
【0028】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明のX線管は、電子線を発生する陰極と、該陰極か
らの電子線が衝突してX線を放出する円盤状のターゲッ
ト、該ターゲットを支持し高導電性の円筒状部を備えた
ロータ、該ロータと同軸に結合する高熱抵抗性の断熱支
持体、該断熱支持体と同軸に結合するフランジ部と細径
軸とからなる回転軸、該回転軸の細径軸に結合され該回
転軸を回転自在に支持する軸受、及び該軸受の外輪をそ
の内周に支持する開口部と該開口部の入口と反対側の端
部に陽極端を備える底付き円筒状の固定部を有する回転
陽極と、前記陰極と前記回転陽極とを対向して絶縁支持
し、真空気密に内包する外囲器とを具備し、前記ロータ
が前記ターゲットを支持する棒状のターゲット支持部と
該ターゲット支持部を支持し前記断熱支持体と結合され
るロータ肩部と、該ロータ肩部の前記ターゲット支持部
との結合部とは反対側に結合される高導電性で円筒状の
ロータ円筒部とからなる回転陽極X線管において、前記
固定部は前記開口部と前記陽極端とを含む内筒部と、少
なくとも該内筒部の開口部の長さ方向全体を覆う外筒部
とからなり、該外筒部は低熱膨張率で高強度の金属材料
で、前記内筒部は高熱伝導率の金属材料で構成されてい
る(請求項1)。また、前記固定部の内筒部と外筒部と
の接合面に凹凸状の溝を設ける。(請求項2)。更に、
前記ロータ肩部は低熱膨張率で高強度の金属材料で構成
されている。
【0029】この構成では、X線管の回転陽極を構成す
る固定部について、その材料、構造を変え、ターゲット
温度上昇時の熱的伸長量の低減を図っているので、X線
管自体での焦点移動量が低減され、断層画像の画質改善
に寄与する。また、固定部の内筒部には高熱伝導率の金
属材料を使用しているので、軸受の温度上昇は抑制さ
れ、軸受の回転寿命も長く保持される。また、固定部の
内筒部と外筒部との接合面に凹凸状の溝を設けることに
よって、内筒部と外筒部とを接合すめために該外筒部に
銅を鋳込んだ場合、銅は前記溝内に入り込み、全体とし
て接合面積が増加し、径方向や長さ方向に生じる応力に
耐えることが可能となる。すなわち、内筒部と外筒部と
の接合部の接合強度の向上を図ることができる。また、
ロータ肩部の材料、構造変更によっても、ターゲット温
度上昇時の熱的伸長量の低減が図られ、焦点移動量が低
減され、断層画像の画質改善に寄与する。
【0030】本発明のX線管では更に、前記固定部の外
筒部又は/及び前記ロータ肩部の材料をモリブデン又は
モリブデン合金とし、前記固定部の内筒部の材料を銅と
する。この構成では、固定部の外筒部又は/及びロータ
肩部にモリブデン又はモリブデン合金を使用しているの
で、熱膨張率はステンレス鋼や銅の約1/3〜1/4となり、
両部分における熱的伸長量は約1/3〜1/4に低減され、X
線管自体での焦点移動量が低減される。又、固定部の内
筒部に銅を使用しているので、従来品と同等の熱伝導率
が保持され、軸受の温度上昇を抑制することができる。
【0031】本発明のX線管は、電子線を発生する陰極
と、該陰極からの電子線が衝突してX線を放出する円盤
状のターゲット、該ターゲットを支持し高導電性の円筒
状部を備えたロータ、該ロータと同軸に結合するフラン
ジ部と細径軸とから成る回転軸、該回転軸の細径軸に結
合され該回転軸を回転自在に支持する軸受、及び該軸受
の外輪をその内周に支持する開口部と該開口部の入口と
反対側の端部に陽極端とを備える底付き円筒状の固定部
を有する回転陽極と、前記陰極と前記回転陽極とを対向
して絶縁支持し、真空気密に内包する外囲器とを具備す
る回転陽極X線管において、前記ロータが、一端に前記
ターゲットを支持するターゲット支持部を有し他端に開
口部を有し、低熱膨張率で高強度の金属材料から成るタ
ーゲット支持軸と、該ターゲット支持軸の他端と結合す
るフランジ部、薄肉の円筒部及び前記回転軸のフランジ
部に結合される底面部を有し、該円筒部と底面部が前記
ターゲット支持軸の開口部内に収容され、比較的高い熱
膨張率で低熱伝導率の金属材料から成る断熱支持体と、
該断熱支持体のフランジ部の前記ターゲット支持軸との
結合部とは反対側の面に結合され、高導電性の金属材料
から成る円筒状のロータ円筒部とを備え、各部材間がろ
う付けによって結合されている(請求項3)。
【0032】この構成では、X線管の回転陽極を構成す
るロータについて、従来のターゲット支持軸とロータ肩
部を一体化し、断熱支持体とろう付けする構造としたこ
とにより、ターゲット温度上昇時の熱的伸長量の低減及
び機械的強度の向上を図っているので、X線管自体での
焦点移動量が低減され、断層画像の画質改善に寄与する
とともに、X線CT装置での高速スキャン時にも安定し
て高機能を発揮することができる。
【0033】本発明のX線管では、更に、前記ロータの
前記ターゲット支持軸をモリブデン又はモリブデン合金
で構成し、前記断熱支持体をステンレス鋼で構成し、両
者を銅ろうでろう付けしたものである。この構成では、
ターゲット支持軸が従来のロータ肩部を含めて一体化さ
れてモリブデン又はモリブデン合金から成り、断熱支持
体がステンレス鋼から成ることにより、焦点移動量は約
167μm低減され、また両者をろう付けしたことにより、
機械的強度が向上し、X線CT装置に搭載時の遠心力な
どに耐えられる構造となっている。
【0034】本発明のX線管では更に、前記ロータを構
成する前記ターゲット支持軸と前記断熱支持体とのろう
付け結合部では、前記断熱支持体のフランジ部の外周部
の一部が前記ターゲット支持体の開口部の外周部を覆う
形状にて両部材が嵌合され、前記ターゲット支持軸の開
口部の内周面及び前記断熱支持体の円筒部の外周面のう
ちの少なくとも一方の周面に凸状部が設けられ、該凸状
部においてろう材の融点付近の温度にて前記内周面と前
記外周面のそれぞれの一部がほぼ接触するように構成し
たものである(請求項4)。
【0035】この構成では、ロータのターゲット支持軸
と断熱支持体との結合部に回転陽極の中心軸と平行な嵌
合部を設け、更にターゲット支持軸の開口部の内周面と
断熱支持体の円筒部の外周面との間にろう付け時の軸心
出し構造を設けているので、ロータの機械的強度の向上
と、回転陽極の軸心のずれ防止が図られ、大熱容量のタ
ーゲットを安定して支持し、X線CT装置の高速スキャ
ンにも耐えることが可能となる。
【0036】本発明では更に、前記ロータの前記ターゲ
ット支持軸と前記断熱支持体との結合部の回転陽極の中
心軸と平行な嵌合部をねじ締結嵌合構造としたものであ
る。この構成では、ロータのターゲット支持軸と断熱支
持体との嵌合部をねじ締結嵌合としたことにより、機械
的強度が増加し、更にろう付け面積も増加し、結合強度
が増加するため、ろう付け部材の熱膨張率差と温度の上
昇、降下によって発生する種々の方向の熱応力に対しよ
り安全性が増加する。
【0037】本発明のX線管では更に、前記ロータの前
記ターゲット支持軸と前記断熱支持体とのろう付け後
に、使用したろう材に適した所定の温度、所定の時間で
の焼き鈍し処理を1回以上行うものである。この構成で
は、ろう付け後の焼き鈍し処理によって、ろう付けとそ
れ以降の加熱工程によって生じた各部材の残留歪みが均
一化されるために、回転陽極の軸心のずれによる回転ア
ンバランスの発生を防止することができ、安定した回転
陽極構造を得ることができる。
【0038】本発明のX線管では更に、前記固定部は、
前記開口部と前記陽極端とを含む内筒部と、少なくとも
該内筒部の開口部の長さ方向全体を覆う外筒部とから構
成され、該外筒部は低熱膨張率で高強度の金属材料から
成り、前記内筒部は高熱伝導率の金属材料から成る(請
求項5)。この構成では、回転陽極のロータの構造の改
良に加えて、固定部の構造の改良も行っているので、回
転陽極での焦点移動量は従来品に比べ、約401μmの低減
を図ることができる。
【0039】本発明のX線管装置は、回転陽極X線管
(以下、X線管と略称する)と、該X線管を内包する防
X線、防電撃構造のX線管容器と、前記X線管の外囲器
の陰極側を前記X線管容器の陰極側の内周壁に絶縁支持
する陰極側支持体と、前記X線管の陽極端を前記X線管
容器の陽極側の内周壁に絶縁支持する陽極側支持体と、
該陽極側支持体に支持されて前記X線管のロータの外周
に配設され、該ロータに回転力を付与するステータと、
前記X線管の陰極及び陽極に高電圧を導くためのケーブ
ルレセプタクルと、前記X線管の焦点から放射されるX
線を外部に取り出すためのX線放射窓と、前記X線管を
絶縁、冷却するために前記X線管容器に充填される絶縁
油を具備するX線管装置において、前記X線管が請求項
1乃至5記載のX線管であり、前記陽極側支持体は椀状体
で、前記X線管の回転陽極の固定部を覆うように前記タ
ーゲットの裏側の周辺部から前記陽極端にかけて延在
し、その大部分が高熱膨張率の耐熱性絶縁材料にて構成
されている(請求項6)。
【0040】この構成では、焦点移動量を低減させたX
線管を用いたX線管装置にて、X線管の陽極端を支持す
る陽極側支持体の材料として高熱膨張率の絶縁材料を用
いているので、X線管装置の温度上昇によりX線管の陽
極端が従来品よりも陽極側に移動することになるため、
X線管装置としての焦点移動量は更に低減される。
【0041】本発明のX線管装置では更に、前記陽極側
支持体の材料を耐熱性エポキシ樹脂とするものである。
この構成では、陽極側支持体に耐熱性エポキシ樹脂を使
用しているため、従来品の如くステータ支持部に金属材
料を使用したものと比べて、陽極側支持体全体としての
熱的伸長量が大きくなるため、X線管装置全体での焦点
移動量の低減量はX線管単体での値よりも大きくなり、
より大きな低減効果が得られる。
【0042】本発明のX線CT装置は、X線管装置とX
線検出器とを被検体が挿入される開口部を挟んで対向配
置して搭載した走査ガントリと、前記X線管装置に高電
圧負荷を印加するX線コントローラと、寝載した被検体
を前記開口部に挿入する撮影テーブルと、前記走査ガン
トリ、前記X線コントローラ及び前記撮影テーブルを制
御し、前記X線検出器にて収集したX線計測データに基
づいて被検体の断層画像を再構成する操作コンソールと
を具備するX線CT装置において、前記X線管装置が請
求項1〜6記載のX線管装置であり、撮影開始前及び撮影
間に長時間の大休止をとった後には前記X線管装置に予
熱のための負荷印加を行うウォームアップ操作とキャリ
ブレーション操作を行い、その後に撮影を行う(請求項
7)。また、前記長時間の大休止は2時間以上の休止であ
る。
【0043】この構成では、本発明に係るX線管装置を
X線CT装置に搭載しているので、焦点移動量は低減さ
れている。更に、X線CT装置での撮影を、X線管装置
に予熱のためのウォームアップ操作とキャリブレーショ
ン操作を実施した後に行っているため、撮影中の焦点移
動量の変動はキャリブレーション有効範囲内に納まり、
キャリブレーションで求めた補正係数がその後の一連の
撮影で得られた計測データの補正に適用できるので、計
測データの収集及び断層画像の再構成処理を効率よく実
施することができる。また、撮影間に長時間の、例え
ば、2時間以上の大休止が挿入された場合には、焦点移
動量がキャリブレーション有効範囲の下限値をはずれる
ことになるが、再度のウォームアップ操作及びキャリブ
レーション操作を実施した後に、撮影を再開することに
より、画質の良い断層画像が得られる。
【0044】本発明のX線CT装置では更に、前記X線
管装置の焦点移動量についてのキャリブレーション有効
範囲を設定して、その上限値をX線管装置に内挿したX
線管のターゲットに最大陽極蓄積熱量に相当する熱量が
蓄積された時の焦点移動量の値とし、その幅をキャリブ
レーションによって得た補正データの適用可能範囲と
し、前記ウォームアップ操作と前記キャリブレーション
操作後の焦点移動量が前記キャリブレーション有効範囲
に入った後に撮影を開始するものである。この構成で
は、撮影時の焦点移動量がキャリブレーション有効範囲
に入っているので、撮影時の計測データに対し、キャリ
ブレーションで得た補正データを有効に適用できるた
め、補正された計測データに基づき画像再構成すること
により、画質の良い断層画像が得られる。
【0045】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例について添
付図面に沿って詳細に説明する。図1に、本発明に係る
回転陽極X線管の第1の実施例の構造図を示す。本実施
例の回転陽極X線管では、回転陽極の構造を改良し、焦
点移動量を低減するものである。図1は、本実施例の回
転陽極X線管の構造を示している。本実施例の回転陽極
X線管30の構造は回転陽極31を除いて、図13に示した従
来例の回転陽極X線管1とほぼ同じである。図1におい
て、回転陽極31はターゲット3と、ロータ35と、断熱支
持体37と、回転軸8と、軸受9と、固定部32などから構成
される。回転陽極31の構成部材のうち、ターゲット3
と、回転軸8と、軸受9は従来のX線管1の回転陽極2のも
のとほぼ同様な構造、材料で作られている。
【0046】図1において、先ず本実施例の回転陽極31
の固定部32は、内側の軸受9と接する内筒部33とこれを
覆う外筒部34とから成り、両者が異なる材料で作られて
いる。内筒部33は2個の軸受9の外輪を支持する軸箱部分
となる開口部(穴部)33aと陽極端33bを備え、熱伝導性
の良い銅などの金属材料から成る。外筒部34は、ほぼ円
筒形状をしており、内筒部33の陽極端33bを除いた長さ
方向領域の大部分を覆っており熱膨張率の小さいモリブ
デン又はモリブデン合金などの金属材料から成る。この
ように、固定部32を二重構造にしたことにより、熱伝導
については内筒部33の高熱伝導性の効果が、熱膨張につ
いては外筒部34の低熱膨張率の効果が発揮される。先
ず、ターゲット3から回転軸8に伝達された熱は、内筒部
33の銅の部分を陽極端33bまで熱伝導して、効率よくX
線管30の外部(絶縁油など)へ熱放散されるため、固定
部32の温度上昇は抑制され、軸受9の温度上昇が抑制さ
れる。次に、内筒部33の熱膨張については、外筒部34が
延在する部分の熱的伸長量は外筒部34のモリブデン又は
モリブデン合金の部分の低い熱膨張により抑制されるた
め大幅に低減される。
【0047】本実施例の構造の固定部32と従来の銅製の
固定部10との熱的伸長量を比較した場合、固定部の全長
を約150mm、外筒部34の長さを約120mmとしたとき、平均
温度は大略150℃、銅とモリブデンの熱膨張率はそれぞ
れ17×10-6(1/℃)、4×10-6(1/℃)となり、それぞ
れの熱的伸長量は、本実施例では約149μm、従来例では
約383μmであり、本実施例の場合著しく(約1/3に)減
少し、上記の差から約234μmの焦点移動量の低減が達成
される。
【0048】次に、本実施例の回転陽極31のロータ肩部
36及び断熱支持体37については、構造及び材料の変更を
行い、熱的伸長量の低減を図っている。ロータ肩部36の
材料としては耐熱性があり熱膨張率の小さいモリブデン
又はモリブデン合金などの金属材料を用いている。ロー
タ肩部36とステンレス鋼製の断熱支持体37との結合部に
ついては銅などのろう材を用いてろう付けする構造と
し、更に結合強度を向上させるために、ろう付け結合部
をねじで締結する構造とした。このような構造にしたこ
とにより、回転陽極31が高温になった場合でも、ロータ
肩部36と断熱支持体37との間の位置ずれの発生を防止す
ることができる。
【0049】本実施例のロータ肩部36と従来のステンレ
ス鋼製のロータ肩部6との熱的伸長量を比較した場合、
ロータ肩部6、36の全長を約20mmとしたとき、平均温度
は約600℃、ステンレス鋼とモリブデンの熱膨張率はそ
れぞれ13.6×10-6(1/℃)、4×10-6(1/℃)であるの
で、それぞれの熱的伸長量は本実施例では約48μm、従
来例では約163μmであり、本実施例の場合著しく(約1/
4に)減少し、上記の差から約115μmの焦点移動量の低
減が達成される。
【0050】以上説明した如く、本実施例のX線管30で
は、回転陽極31の固定部32の構造と材料構成及びロータ
肩部36と断熱支持体37の結合部の構造と材料構成を変更
したことにより、前者では約234μm、後者では約115μ
m、全体で約349μmの焦点移動量の低減が可能となる。
この結果、従来品での最大焦点移動量は約500μmである
ので、本実施例では、X線管全体としての焦点移動量を
151μm以下にすることが期待できる。
【0051】図2に本発明に係るX線管装置の第1の実施
例の構造図を示す。本実施例のX線管装置では、本発明
に係る回転陽極X線管の第1の実施例を内挿し、更にX
線管の陽極の支持構造の改良を実施している。図2にお
いて、X線管装置40は、本発明に係る回転陽極X線管の
第1の実施例(以下、X線管と略称する)30と、これを
内包する防X線、防電撃構造のX線管容器41と、X線管
30の陽極端33bを絶縁支持する陽極側支持体42と、X線
管30の陰極側を外囲器12の部分にて絶縁支持する陰極側
支持体46と、X線管30のロータ35の外周に配置され、回
転陽極31に回転力を付与するステータ47と、X線管30の
回転陽極31及び陰極11に高電圧を導くためのケーブルレ
セプタクル(図示せず)と、X線管30を絶縁し、冷却す
るための絶縁油50と、X線管30で発生したX線を外部に
取り出すためのX線放射窓49などから構成される。
【0052】図2において、陽極側支持体42はX線管容
器41の中心部に近い内周壁に固定される円板状の陽極支
持リング45と、ステータ47を支持する円筒状のステータ
支持部44と、X線管30の陽極端33bを支持する椀状の陽
極端支持部43とから成り、全体としても椀状形をしてい
る。陽極側支持体42はX線管容器41の中央部に固定さ
れ、陽極側に延在して、X線管30の陽極端33bを支持し
ているため、この陽極側支持体42がX線管装置40の温度
上昇により熱膨張すると、X線管30の陽極端33bがX線
管装置の中心部(X線放射窓49の中心)を基準にして陽
極側に移動することになり、上記の焦点移動量を低減す
る効果がある。
【0053】従来例では、陽極側支持体42を構成する部
材の材料として、陽極端支持部43と陽極支持リング45に
は耐熱性絶縁物である耐熱性エポキシ樹脂が用いられ、
ステータ支持部44には熱伝導性の良いアルミニウムなど
の金属材料が用いられており、隣接する部材はそれぞれ
ねじ又は接着剤などで締結されていたが、本実施例で
は、全部材の材料を耐熱性エポキシ樹脂として構造を簡
略化している。
【0054】陽極側支持体42の温度は通常急激な変化を
することなく上昇し、その温度上昇は約50℃で飽和する
ように制限されている。ここで、ステータ支持部44の長
さを約70mm、陽極端支持部43の長さを約50mmとすると、
アルミニウムの熱膨張率が23×10-6(1/℃)、耐熱性エ
ポキシ樹脂の熱膨張率が41×10-6(1/℃)であるので、
温度上昇を50℃とした場合、陽極側支持体42の熱的伸長
量は従来品では約183μm、実施例では約246μmとなり、
実施例では約63μmだけ大きくなる。この結果、実施例
の陽極側支持構造では従来品と比べ約63μmの焦点移動
量の低減効果が期待できる。
【0055】本実施例のX線管装置40では、X線管30の
回転陽極31の構造の改良及び陽極側支持構造の改良を実
施しているので、焦点移動量の低減は両者の合算したも
のとなり、約412μmの焦点移動量の低減が期待できる。
これに対し、従来のX線CT装置での最大焦点移動量は
約500μm程度であるので、本実施例のX線管装置を適用
したX線CT装置では、焦点移動量を約90μm以下とす
ることが可能となる。
【0056】次に、図6及び図7を用いて、本発明に係る
回転陽極X線管の第2の実施例について説明する。本実
施例は、従来例及び第1の実施例の回転陽極X線管と比
べ、回転陽極の構造が相違するので、主として回転陽極
の構造について説明する。図6は、本発明に係る回転陽
極X線管の第2の実施例の回転陽極の全体構造を示す断
面図、図7は本実施例の回転陽極のロータの構造図を示
す。以下、図6を用いて本実施例の回転陽極の構造を、
図7を用いて本実施例の要部となるロータの構造と作り
方について説明する。図6において、本実施例の回転陽
極110は、ターゲット3と、ロータ111と、回転軸8と、軸
受9と、固定部10とから構成される。回転陽極110の構成
部材のうち、ターゲット3と、回転軸8と、軸受9と、固
定部10は従来のX線管1の回転陽極2のものとほぼ同様な
構造、材料で作られている。
【0057】図6において、本実施例の回転陽極110のロ
ータ111は、ターゲット支持軸112と、断熱支持体113
と、ロータ円筒部5aとから構成されている。本実施例で
は、ターゲット支持軸112は従来のターゲット支持軸(4)
(以下、支持軸115という)とロータ肩部(6)(以下、ロ
ータ肩部120という)とを一体化したもので、一端の支
持軸115にてターゲット3を支持し、他端のロータ肩部12
0で断熱支持体113とろう付けによって結合されている。
更に、断熱支持体113がロータ円筒部5aとろう付けによ
って結合されている。ターゲット3とロータ111のターゲ
ット支持軸112との結合は、ターゲット支持軸112の支持
軸115の先端にフランジ115a、嵌合部115b、ねじ115cが
設けられており、ターゲット3の中心穴3cと嵌合部115b
とを嵌合し、ターゲット3の背面がフランジ115aに接す
るようにして、固定ナット116をねじ115cに締めつける
ことによって固定する。
【0058】ロータ111と回転軸8との結合は、ロータ11
1の断熱支持体113にて行われている。断熱支持体113は
ターゲット支持軸112のロータ肩部120の端部と結合され
るフランジ部113aと、フランジ部113aに接続され、高熱
抵抗性を示す薄肉の円筒部113bと、円筒部113bの底とな
る底面部113cとから構成され、この底面部113cと回転軸
8のフランジ部とが複数個のねじ118で締結されている。
【0059】ターゲット支持軸112のロータ肩部120の外
径はロータ円筒部5a及び断熱支持体113のフランジ部113
aの外径とほぼ同じで、ロータ肩部120の陽極側には開口
部121が設けられ、その開口部121に断熱支持体113の円
筒部113bと底面部113cが収容されている。断熱支持体11
3は円筒部113bがフランジ部113aを基点として陰極側に
延在しているため、焦点移動量を低減する働きがある。
【0060】また、ターゲット支持軸112のロータ肩部1
20の陰極側には、回転軸8と断熱支持体113を結合するね
じ118を挿入するための穴122が複数個設けられており、
この穴122は開口部121まで貫通している。また、断熱支
持体113の底面部113cにはねじ118用の複数固の座ぐり穴
113dが設けられている。
【0061】ロータ肩部120と断熱支持体113との結合は
ろう付けで行われるが、ロータ肩部120の端部と断熱支
持体113のフランジ部113aとの間で、回転陽極110の中心
軸に平行な嵌合面(周面)124を設け、この嵌合面で両
者を嵌合させてろう付けを行う。また、断熱支持体113
とロータ円筒部5aとのろう付けは、断熱支持体113のフ
ランジ部113aの端面126で、両部材の端面を突き合わせ
て行う。
【0062】次に、図7を用いて、回転陽極110のロータ
111の構造の詳細及び作り方について説明する。図7
(a)は本実施例の回転陽極のロータの構造を示す断面
図、図7(b)は図7(a)の丸A部の拡大図である。図7
(a)において、ロータ111はターゲット支持軸112と、
断熱支持体113と、ロータ円筒部5aとから構成され、タ
ーゲット支持軸112はモリブデンやモリブデン合金など
の高融点、高強度で、熱膨張率の小さい金属材料から成
る。断熱支持体113はステンレス鋼(例えばSS304)など
の高強度で、熱膨張率の比較的大きい金属材料から成
る。ロータ円筒部5aは銅などの電気抵抗の小さい金属材
料から成る。また、ターゲット支持軸112と断熱支持体1
13との結合は、融点の比較的高い銅などをろう材として
ろう付けされ、断熱支持体113とロータ円筒部5aとの結
合は、融点が銅よりも低い金銅ろう又は銀ろうなどをろ
う材としてろう付けされる。
【0063】図7(a)のターゲット支持軸112と断熱支
持体113とのろう付け部(丸Aで示した部分)を拡大し
た図が図7(b)である。図7(b)において、ターゲット
支持軸112のろう付け面128aは外側から第1の平坦面130a
と、嵌合面124の外周面124aと、第2の平坦面132aとから
成る。一方、断熱支持体113のろう付け面128bは、外側
から第1の平坦面130bと、嵌合面124の内周面124bと、第
2の平坦面131bとから成る。更に、ターゲット支持軸112
と断熱支持体113とのろう付け時の軸心出し手段とし
て、ターゲット支持軸112の開口部121の内周面134に
は、凸状の軸心出し部136が第2の平坦面131bから適当な
距離Hだけ離れた位置に設けられている。この凸状の軸
心出し部は断熱支持体113の円筒部113bの外周面138に設
けてもよく、或いは両方の周面に設けてもよい。距離H
としては、ターゲット支持軸112と断熱支持体113のろう
付け時にろう材がターゲット支持軸112の開口部121の内
周面134と断熱支持体113の円筒部113bの外周面138との
間にたまるので、このろう材で埋まらないような位置ま
での距離として設定する必要がある。
【0064】ターゲット支持軸112と断熱支持体113との
ろう付け時の軸心出し手段の動作と効果について説明す
る。先ず、ターゲット支持軸112の開口部121の内周面13
8に設けた凸状の軸心出し部136の位置では、この軸心出
し部136と断熱支持体113の円筒部113bの外周面138との
隙間が、両部材の温度がろう付け温度の約1.100℃に上
昇したときにほぼ0となり、接触するように寸法設定さ
れている。この結果、ターゲット支持軸112と断熱支持
体113とを組み立てて、ろう付けのために、温度上昇し
て行くと、ろう付け温度にて、ターゲット支持軸112の
凸状の軸心出し部136と断熱支持体113の円筒部113bの外
周面138が接触するため、断熱支持体113とターゲット支
持軸112とは、ろう付け時に両者の軸心が一致する。ろ
う付け後、室温に戻ると、断熱支持体113の方が大きく
熱収縮するため、上記の接触面は離れ、両者の間には全
周均一な隙間が得られる。X線管の使用時には、断熱支
持体113とターゲット支持軸112の開口部121は約550℃程
度まで温度上昇するが、ろう付け温度よりも十分低いた
めに、使用中に断熱支持体113の円筒部113bの外周面138
と、ターゲット支持軸112の軸心出し部136とは接触する
ことなく、断熱支持体113による断熱効果は維持され
る。
【0065】ターゲット支持軸112と断熱支持体113との
ろう付けは、断熱支持体113の第1の平坦面130b及び第2
の平坦面132bにろう材(銅)を載せ、その上にターゲッ
ト支持軸112の第1の平坦面130a及び第2の平坦面132aが
密着するように載せて、両部材の嵌合面124を嵌合さ
せ、真空中又は還元性ガス雰囲気中で約1.100℃にて行
われる。また、断熱支持体113とロータ円筒部5Aとのろ
う付けは、両者を突き合わせて金銅ろう又は銀ろうを用
いて、真空中又は還元ガス性雰囲気中で約900℃又は約8
00℃にて行われる。
【0066】本実施例のロータ111の構造では、回転陽
極110の中心軸に対し平行な嵌合面124及び垂直な第1、
第2の平坦面130、132で、ターゲット支持軸112と断熱支
持体113を嵌合させて結合させているため、ろう付け時
や使用時に発生するあらゆる方向の引張応力や圧縮応力
に耐えられる構造になっている。また、ろう付け後室温
まで冷却すると、断熱支持体113の熱膨張率がターゲッ
ト支持軸112より大きいことから、図9(b)において、
断熱支持体113のフランジ部113aの外周部140がターゲッ
ト支持軸112のロータ肩部120の内周部142を締め付ける
構造となっているため、断熱支持体113の周上の不均一
な変形を防止することができる。さらに、断熱支持体11
3の円筒部113bの外周面138と、ターゲット支持軸112の
開口部120の内周面134との間には、断熱と接触防止のた
めに適当な間隔の隙間144が設けられている。
【0067】上記の如き構造にしたことにより、X線管
の使用時にロータ111が約550℃程度に加熱された場合で
も、断熱支持体113の薄肉の円筒部113bはターゲット支
持軸112のロータ肩部120によって締め付けられることが
ないため、その周上に不均一な変形は生じることはな
い。また、ターゲット支持軸112と断熱支持体113とは、
回転陽極110の中心軸と平行な嵌合面124をろう付け面と
して共有することにより、X線CT装置への搭載時に加
わる遠心力によって生じる回転陽極110のたわみを低減
する効果も得られる。
【0068】また、断熱支持体113の円筒部113bの外周
面138とターゲット支持軸112の開口部121の内周面134と
の間には、上述の如きろう付け時の軸心出し手段を設け
ているので、ロータ111全体の熱的伸びが不均一となっ
ても、軸の曲りが発生しにくく、また断熱支持体113と
ターゲット支持軸112の回転軸心のずれ量も非常に小さ
く押さえられる。
【0069】また、本実施例のロータ111の構造では、
ターゲット支持軸112のロータ肩部120の部分の長さを長
くすることによって、この開口部121に収容される断熱
支持体113の円筒部113の長さを長くすることができる。
ロータ肩部120と円筒部113bの熱的伸長方向は逆となる
が、円筒部113bの方が熱膨張率が大きいため、ロータ肩
部120の部分を長くすることは、ロータ111全体として焦
点移動量を低減するのに効果がある。この場合、断熱支
持体113の比較的薄肉の円筒部113bの長さが長くなる
と、この部分の剛性が低下するが、円筒部113の肉厚を
断熱効果が低下しない程度に厚くすることで剛性の問題
は回避される。断熱支持体113の断熱効果については、
円筒部113bの長さが長くなったことによって向上してい
るので、若干肉厚を厚くしても、従来品とほぼ同等の断
熱効果を維持することは可能である。
【0070】本実施例のロータ111では、ろう付け後使
用する前に予め熱処理を加えておく必要がある。ターゲ
ット支持軸112と断熱支持体113とのろう付け部128のろ
う材の肉厚は、上記の軸心出し手段によって、全周ほぼ
均一となるが、ろう付け時の加熱が終了した後、ろう材
が凝固し始めるのは全周同時ではない。このようなろう
材の凝固開始の不均一やろう付けされる部材の熱収縮の
不均一により、ろう付け部128には全周不均一な残留歪
みが生じる。この残留歪みはロータ111の使用時にロー
タ111の等方的な熱膨張を防げ、ロータ111の非等方的な
熱変形を起こす場合があり、ロータ111の軸心ずれを生
じさせる原因となっている。
【0071】このため、本実施例のロータ111では、タ
ーゲット支持軸112と断熱支持体113とのろう付け後、必
要な加工を施して完成したロータ111に対し、上記の残
留歪みを全周ほぼ均一に低減するために、焼き鈍し処理
を行う。焼き鈍し温度としては、銅ろうの場合、通常50
0℃から600℃が最適で、処理時間は1時間程度である。
焼き鈍し処理後は、徐冷する。また、処理回数は、1回
以上であればよく、実桟にて効果が確認されている。こ
の熱処理をロータ111に施すことによって軸心のずれに
よる回転陽極110の回転アンバランスの発生を防止する
ことができ、安定した回転陽極構造を得ることができ
る。
【0072】本実施例の回転陽極構造では、ロータの構
造を上記の如く改良したことにより、上記の如き機械的
強度の向上とともに、焦点移動量も従来のX線管と比べ
て大幅に低減されている。焦点移動量の低減に寄与した
部分は、ロータ肩部120をターゲット支持軸112と一体化
して低熱膨張率の金属材料(モリブデン又はモリブデン
合金など)を使用したことと、断熱支持体113の円筒部1
13bの長さを長くしたことである。本実施例のロータ111
と従来例のロータ5との熱的伸長量を比較した場合(ロ
ータ肩部と断熱支持体の部分のみ比較する)、ロータ肩
部の全長は両者とも25mm、断熱支持体の全長はそれぞれ
約16.5mmと13mmとしたとき、ロータ肩部の平均温度は約
600℃、断熱支持体の平均温度は約450℃、ステンレス鋼
とモリブデンの熱膨張率は13.6×10-6(1/℃)、4×10-
6(1/℃)であるので、それぞれの熱的伸長量は本実施
例では、約−52μm、従来例では約115μmである。この
結果、本実施例の場合焦点移動量は著しく減少し、上記
の差から約167μmの焦点移動量の低減が達成される。
【0073】図8は、本発明に係る回転陽極X線管の第3
の実施例の回転陽極の全体構造を示す断面図である。本
実施例のX線管では、回転陽極の構造を除いて第1及び
第2の実施例のX線管とほぼ同じであるので、以下本実
施例の要部である回転陽極の構造について図8により説
明する。図8において、図8(a)は本実施例の回転陽極
の構造を示す断面図、図8(b)は図8の丸A部の拡大図
である。図8において、本実施例の回転陽極150では、ロ
ータ151のろう付け部の構造が第2の実施例と異なる。す
なわち、ロータ151は、ターゲット支持軸152と断熱支持
体153とロータ円筒部5aとから構成されるが、銅ろう付
けされるターゲット支持軸152と断熱支持体153とのろう
付け面156のうち、回転陽極150の中心軸と平行なろう付
け面(この面はターゲット支持軸152と断熱支持体153と
の嵌合面となっているので、以下では嵌合面とも呼ぶこ
とにする)158に、ねじ嵌合構造160を設けたものであ
る。このように、ロータ151のろう付け面156の嵌合面15
8に、ねじ嵌合構造160を設けたことにより、ロータ151
の機械的強度が増加し、更にろう付け面積が増加して、
ろう付け強度が増加するため信頼性が向上する。
【0074】また、本実施例においても、第2の実施例
と同様に、ターゲット支持軸152の開口部121の内周面13
4と、断熱支持体153の円筒部153bの外周面138との間に
ろう付け時における軸心出し手段を採用しており、ター
ゲット支持軸152の内周面134には凸状の軸心出し部136
を設けている。また、ターゲット支持軸152と断熱支持
体153のろう付け後には、残留歪みを低減するために焼
き鈍し処理が行われる。
【0075】本実施例における焦点移動量の低減効果に
ついては、ロータ151の構造がねじ嵌合構造160の部分を
除いて第2の実施例とほぼ同じであるので、第2の実施例
とほぼ同じ効果が得られる。回転陽極150の機械的強度
については、ねじ嵌合構造160を設けたことにより、第2
の実施例よりも、遠心力などに対する機械的強度の向上
及び温度の上昇、降下によって発生する熱応力に対する
安全性の増加が図られる。
【0076】図9は、本発明に係る回転陽極X線管の第4
の実施例の回転陽極の全体構造を示す断面図である。本
実施例では、回転陽極の固定部の構造を第1の実施例と
同様に二層管構造とし、ロータの構造を第2又は第3の実
施例と同様にターゲット支持軸とターゲット肩部とを一
体化し、断熱支持体とろう付けする構造とし、焦点移動
量の低減効果を大きくし、機械的強度を向上したもので
ある。図9において、本実施例の回転陽極170はターゲッ
ト3と、ロータ111と、回転軸8と、軸受9と、固定部32と
から構成される。ロータ111は第2の実施例の回転陽極11
0のロータと同じ構造をしており、固定部32は第1の実施
例の回転陽極31の固定部と同じ構造をしており、ターゲ
ット3と、回転軸8と、軸受9は従来品のターゲット、回
転軸、軸受と同じ構造をしている。
【0077】本実施例では、回転陽極170の構造を上記
の如くしたことにより、第1の実施例の効果と第2の実施
例の効果が得られる。すなわち、焦点移動量の低減効果
としては、ロータ111の構造変更の分と固定部32の構造
変更の分が加算され、機械的強度の向上の効果としては
ロータ111の構造変更の寄与分が得られる。このため、
焦点移動量はロータ111にて約167μm、固定部32にて約2
34μm、合計約401μm低減される。また、回転陽極170の
機械的強度に関しては、ロータ111のろう付け部の結合
強度の向上、軸心のずれの低減が達成され、X線CT装
置実装時の遠心力などに対し安定した強度を発揮するこ
とができる。
【0078】また、第2〜第4の実施例の回転陽極X線管
は、第1の実施例と同様に図2に示したX線管容器41に内
挿されてX線管装置として組立てられる。このため、本
発明のX線管装置でのX線管の陽極側支持構造に基づく
焦点移動量の低減効果も付加される。このX線管の陽極
側支持構造に基づく焦点移動量の低減効果は上記の如く
約63μmであり、これを第4の実施例の回転陽極X線管の
場合の焦点移動量の低減効果である約401μmに加算する
と、全体としての低減量は約464μmとなり、焦点移動量
としては約36μm(=500−464)程度となり、100μm以
下にすることができる。
【0079】図10に、本発明に係る回転陽極X線管の第
5の実施例の構造図を示す。本実施例は、図1に示す第
1の実施例の固定部32の内筒部33と外筒部34との接合部
の接合強度を向上させるものである。図10において、二
重構造の固定部32の内筒部33と外筒部34との接合面に溝
加工を施して三角形状の凹凸の溝180を設けたものであ
る。前記内筒部33と外筒部34の接合は、例えば図11に示
す鋳造法を用いる。図11において、外筒部34の素材182
中に溶融した内筒部33の材料184を鋳込み、鋳込んだ後
に所望の形状186に仕上げ加工を行う。このように加工
することによって、三角形状の溝加工面180の接合が容
易に行える。なお、前記三角形状の溝加工は螺旋状に施
しても良く、その加工は比較的容易できる。図12は、内
筒部33と外筒部34の接合面の溝188を四角形状とした例
である。この形状の溝では、接合面積を広く取ることが
可能となり接合強度をさらに向上させることができる。
また、この形状を形成するための溝加工は螺旋状に施し
ても良い。なお、前記の溝180あるいは溝188は、図9に
示した第4の実施例に用いても良い。
【0080】次に、本発明に係るX線管装置を搭載した
X線CT装置の構成とX線CT装置の運転手順につい
て、図3と図4を用いて説明する。図3は本発明に係るX
線CT装置のシステム構成例を示したもの、図4は本発
明に係るX線CT装置の動作フローチャート例を示した
ものである。先ず、図3によりX線CT装置のシステム
構成について説明する。図3において、本発明に係るX
線CT装置60は主に走査ガントリ61と、操作コンソール
62と、撮影テーブル63とから成る。走査ガントリ61は本
発明に係るX線管装置40と、X線検出器20と、データ収
集部66と、X線ビームの厚さを変えるコリメータ17と、
コリメータ17を制御するコリメータコントローラ68と、
X線管装置40のX線発生を制御するX線コントローラ69
と、X線管装置40及びX線検出器20を開口部70aを挟ん
で対向して搭載して被検体の周りを回転させる回転部70
と、回転部70の回転を制御する回転コントローラ71など
から構成される。この走査ガントリ61では、回転部70の
開口部70aに、撮影テーブル63に載置した被検体を挿入
し、回転部70を回転させることにより、対向配置された
X線管装置40とX線検出器20とで被検体の周りを走査
し、複数回転角度方向における被検体のX線減弱データ
を計測し、計測データの収集を行い、計測データを操作
コンソール62に送る。
【0081】操作コンソール62は、データ収集部66から
の計測データを集めるデータ収集バッファ72と、計測デ
ータを用いて被検体の断層面の画像の再構成などを行う
中央処理装置73と、再構成された画像を表示する表示装
置74と、画像データを蓄積する記憶装置75と、中央処理
装置73を経由して装置全体を制御・操作する操作装置76
と、中央処理装置73と走査ガントリ61及び撮影テーブル
63をつなぐ制御インターフェース77などから構成され
る。この操作コンソール62では、操作装置76からX線C
T装置60全体の制御を行うとともに、走査ガントリ61に
て収集した被検体の計測データに基づいて被検体の断層
面の画像の再構成を行い、画像の表示と画像データの蓄
積などを行う。
【0082】撮影テーブル63は被検体を寝載するテーブ
ルで、載置された被検体を走査ガントリ61の回転部70の
開口部70aに挿入する。被検体の開口部70a内での挿入
位置(床面からの高さ、挿入深さなど)は、操作コンソ
ール62の操作装置76によって制御される。
【0083】次に、図4によりX線CT装置の運転手順
について説明する。X線CT装置の運転にあたっては、
撮影を始める前に、先ず第1の工程としてウォームアッ
プ101を行う。このウォームアップ101では、X線管装置
40に高電圧負荷を複数回印加してX線管装置40の予熱を
行い、耐電圧を安定させる。次に、第2の工程としてキ
ャリブレーション102を行う。このキャリブレーション1
02では、走査ガントリ61の回転部70の開口部70aに被検
体を挿入せずに、複数回のX線曝射を行い、X線検出器
20の感度特性を読み込み、断層画像を再構成する際に計
測データを補正するための補正データを得る。
【0084】次に、第3の工程として撮影103を行う。こ
の撮影103では被検体を回転部70の開口部70aに挿入し、
X線曝射を行って計測データを収集し、断層画像の再構
成を行う。このとき、計測データの補正を行うために、
上記のキャリブレーション102で得られた補正データを
利用する。次に、第4の工程として休止104を入れる。こ
の休止104では、撮影103の完了した被検体の入れ替えを
行う。これらの撮影103と休止104は、撮影を行う被検体
の数に応じて必要な回数だけ繰り返す。本発明に係るX
線管装置40では構造上焦点移動量の低減が図られている
ので、後に詳しく説明するように、前の撮影から次の撮
影までの休止時間が2時間未満であれば、焦点位置の移
動量が小さく、再度のキャリブレーションをしないで、
撮影103、すなわち計測データの収集を続行してもよい
範囲(以下、キャリブレーション有効範囲と呼ぶ)内に
収まっているため、再度のキャリブレーション102を行
うことなく継続して撮影103が可能である。
【0085】次に、第5の工程として2時間以上の大休止
105が入った場合には、X線管装置40の焦点位置が初期
のキャリブレーション有効範囲内に戻るように第6の工
程のウォームアップ106と第7の工程のキャリブレーショ
ン107を行った後に、第3の工程の撮影103を再開する。
第6の工程のウォームアップ106と第7の工程のキャリブ
レーション107は第1の工程のウォームアップ101と第2の
工程のキャリブレーション102とほぼ同じ操作を行う。
以上の如き運転手順でX線CT装置を動作させることに
より、X線管装置40の焦点位置はキャリブレーション有
効範囲内に収まり、キャリブレーション102で得られた
補正データによる計測データの補正が有効に行われ、ア
ーチファクトの生じない断層画像が得られる。
【0086】次に、本発明に係るX線CT装置の運転と
X線管装置の焦点移動との関係について図5を用いて
(図4を参照しながら)説明する。図5は本発明に係るX
線管装置(第1の実施例)での動作時の焦点移動量の変
化例を示したものである。図5に示したものは、本発明
に係るX線CT装置において、最大焦点移動量が90μm
であるX線管装置を搭載して撮影を行う場合の動作例で
ある。図5において、横軸に時間経過、縦軸にX線管装
置の焦点移動量を示している。先ず、撮影前にウォーム
アップ101とキャリブレーション102のX線曝射81を行う
ことで、焦点位置は初期焦点位置80から約60μmだけ移
動する。この移動後の焦点位置をキャリブレーション基
準位置82とする。キャリブレーション102で得られた補
正データで画像補正可能な焦点移動量範囲(上記のキャ
リブレーション有効範囲に相当する)83は60μm±33μm
である。
【0087】次に、撮影84と、被検体の入れ替えなどで
必要とする10分程度の撮影休止時間85とを複数回繰り返
すと、焦点移動量は最大の85μmの飽和位置86にて飽和
する。撮影84の開始から焦点移動量が飽和位置86に到達
するまでの間は、焦点位置はキャリブレーション許容範
囲83内にあり、良好な断層画像が得られる。
【0088】その後、休止時間が長くなり、次の撮影ま
でに2時間以上の大休止時間88がとられ、X線管装置の
回転陽極が冷却されると、焦点位置はキャリブレーショ
ン有効範囲83の下限位置87を越えてしまうことになる。
このため、X線CT装置で2時間以上の大休止時間88を
とった場合には、撮影91を再開する前に初期と同様にウ
ォームアップ101とキャリブレーション102のX線曝射89
を行うことにより焦点位置90は再びキャリブレーション
基準位置82に戻り、通常の撮影91を再開することができ
る。
【0089】次に、上記のキャリブレーション有効範囲
83とX線管装置及びX線CT装置との関係について説明
する。このキャリブレーション有効範囲83は上記の如く
キャリブレーションで得られた補正データで画像補正可
能な焦点移動量範囲で、図5の例では60μm±33μmとな
っている。このキャリブレーション有効範囲の上限値
は、X線管装置に内挿されるX線管のターゲットに最大
陽極蓄積熱量に相当する熱量が蓄積された時の焦点移動
量に対応し、上記の場合93μmとなっている。キャリブ
レーション有効範囲の幅はキャリブレーションによって
得られた補正データが計測データの補正のために適用で
きる焦点移動量の変動可能な範囲で、上記の場合には66
μmとなっている。前者はX線管装置の性能によって決
まり、後者はX線CT装置とX線管装置との組合せによ
って決まる。
【0090】上記の如く、キャリブレーション有効範囲
の上限値と幅が決まると、両者に基づいてキャリブレー
ション有効範囲の中央値、すなわちキャリブレーション
基準位置(60μm)とキャリブレーション下限値(27μ
m)が決まる。キャリブレーションはキャリブレーショ
ン有効範囲内で行えばよいが、よりよくはキャリブレー
ション基準位置の近くで行うのがよい。また、後続の撮
影を考慮すると、キャリブレーション下限値とキャリブ
レーション基準位置との間で行うのが実用的である。
【0091】
【発明の効果】以上説明した如く、本発明に係る回転陽
極X線管では、回転陽極を構成するロータ、固定部につ
いて構造の改良及び熱膨張率の小さい材料への変更を行
うことにより、回転陽極の温度上昇時の熱的伸長量を小
さくして、焦点移動量を約345μm以上低減することがで
きた。
【0092】また、本発明に係る回転陽極X線管では、
回転陽極のロータ構造に関し、ターゲット支持軸とロー
タ肩部とを一体化し、低熱膨張率の材料で構成し、断熱
支持体とろう付けする構造とし、ロータ肩部と断熱支持
体との間に軸心出し構造を採用したことにより、回転陽
極全体としての機械的強度を向上し、回転陽極の自重や
X線CT装置搭載使用時のスキャナ回転による遠心力に
耐え得る強度を付与することができた。この結果、X線
CT装置の画像処理において画質低下の要因となってい
る回転陽極のたわみに起因する焦点移動量も低減するこ
とができ、X線CT装置の高速スキャンに対応すること
ができる。
【0093】また、本発明に係るX線管装置では、上記
回転陽極X線管を使用し、このX線管の陽極端を支持す
る陽極側支持体の構造の改良及び一部の材料についての
熱膨張の大きい材料への変更を行うことにより、X線管
装置の温度上昇時の陽極側支持体の熱的伸長量を大きく
して、X線管装置としての焦点移動量を約60μm以上低
減し、全体としては約405μm以上低減することができ
た。
【0094】また、本発明に係るX線CT装置では、上
記X線管装置を搭載し、予めウォームアップとキャリブ
レーションによりX線管装置の構成部材を加熱して焦点
位置をキャリブレーション基準位置に移動させた後に撮
影を行うことにより、撮影中の焦点移動量をキャリブレ
ーション有効範囲内に収めることができ、焦点移動によ
る断層画像の画質劣化を防ぎアーチファクトのない良好
な断層画像を得ることができる。
【0095】また、本発明に係るX線CT装置では、焦
点移動量を補償するために、従来品のようにX線管装置
又はX線検出器を移動させる機構及びその機構を制御す
る機器などが不要となることによって、コストを削減す
ることができるとともに、システムを単純化し、かつ小
型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る回転陽極X線管の第1の実施例の
構造図。
【図2】本発明に係るX線管装置の第1の実施例の構造
図。
【図3】本発明に係るX線CT装置のシステム構成例。
【図4】本発明に係るX線CT装置の動作フローチャー
ト例。
【図5】本発明に係るX線管装置での動作時の焦点移動
量の変化例。
【図6】本発明に係る回転陽極X線管の第2の実施例の回
転陽極の全体構造を示す断面図。
【図7】第2の実施例の回転陽極のロータの構造を示す断
面図。
【図8】本発明に係る回転陽極X線管の第3の実施例の回
転陽極の全体構造を示す断面図。
【図9】本発明に係る回転陽極X線管の第4の実施例の回
転陽極の全体構造を示す断面図。
【図10】本発明に係る回転陽極X線管の第5の実施例の
構造図。
【図11】本発明に係る回転陽極X線管の第5の実施例の
内筒部33と外筒部34を鋳造で接合する説明図。
【図12】本発明に係る回転陽極X線管の第5の実施例の
別の構造図。
【図13】従来の回転陽極X線管の代表例の構造。
【図14】従来のX線管装置での焦点移動を説明するため
の図。
【符号の説明】
1、30…回転陽極X線管(X線管) 2、31、110、150、170…回転陽極 3…ターゲット 4、112、152…ターゲット支持軸 5、35、111、151…ロータ 6、36、120…ロータ肩部 7、37、113、153…断熱支持体 8…回転軸 9…軸受 10、32…固定部 11…陰極 12…外囲器 13、13a…焦点面 14、14a…焦点 15…X線放射窓 16、16a…X線(X線ビーム) 17…コリメータ 19…焦点移動量 20…X線検出器 21…拡大焦点移動量 33…内筒部 33a…開口部(穴部) 33b…陽極端 34…外筒部 40…回転陽極X線管装置(X線管装置) 41…X線管容器 42…陽極側支持体 43…陽極端支持部 44…ステータ支持部 45…陽極支持リング 47…ステータ 49…X線放射窓 50…絶縁油 60…X線CT装置 61…走査ガントリ 62…操作コンソール 63…撮影テーブル 66…データ収集部 69…X線コントローラ 70…回転部 70a…開口部 73…中央処理装置 76…操作装置 82…キャリブレーション基準位置 83…キャリブレーション有効範囲 84,103…撮影 101,106…ウォームアップ 102,107…キャリブレーション 85,104…休止 88,105…大休止 113a…フランジ部 113b…円筒部 113c…底面部 115…支持軸 118…ねじ 121…開口部 122…穴 124,158…嵌合面(ろう付け面) 126…端面 128,128a,128b,156…ろう付け面 134…内周面 136…軸心出し部 138…外周面 160…ねじ嵌合構造 180…三角形状の溝 182…外筒部の素材 184…内筒部の素材 186…二重構造の固定部の仕上げ形状 188…四角形状の溝
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 秋田 浩二 東京都千代田区内神田1丁目1番14号 株 式会社日立メディコ内 Fターム(参考) 4C092 AA01 AB04 AB19 AC01 AC08 AC17 BD06 CC10 CC11 CE11 CF11 CG20 CH12 EE12

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子線を発生する陰極と、該陰極からの
    電子線が衝突してX線を放出する円盤状のターゲット、
    該ターゲットを支持し高導電性の円筒状部を備えたロー
    タ、該ロータと同軸に結合する高熱抵抗性の断熱支持
    体、該断熱支持体と同軸に結合するフランジ部と細径軸
    とから成る回転軸、該回転軸の細径軸に結合され該回転
    軸を回転自在に支持する軸受、及び該軸受の外輪をその
    内周に支持する開口部と該開口部の入口と反対側の端部
    に陽極端とを備える底付き円筒状の固定部を有する回転
    陽極と、前記陰極と前記回転陽極とを対向して絶縁支持
    し、真空気密に内包する外囲器とを具備し、前記ロータ
    が前記ターゲットを支持する棒状のターゲット支持部
    と、該ターゲット支持部を支持し前記断熱支持体と結合
    されるロータ肩部と、該ロータ肩部の前記ターゲット支
    持部との結合部とは反対側に結合される高導電性で円筒
    状のロータ円筒部とからなる回転陽極X線管において、
    前記固定部は前記開口部と前記陽極端とを含む内筒部
    と、少なくとも該内筒部の開口部の長さ方向全体を覆う
    外筒部とからなり、該外筒部は低熱膨張率で高強度の金
    属材料で、前記内筒部は高熱伝導率の金属材料で構成さ
    れていることを特徴とする回転陽極X線管。
  2. 【請求項2】 前記内筒部と外筒部との接合面に溝を設
    けたことを特徴とする請求項1に記載の回転陽極X線
    管。
  3. 【請求項3】 電子線を発生する陰極と、該陰極からの
    電子線が衝突してX線を放出する円盤状のターゲット、
    該ターゲットを支持し高導電性の円筒状部を備えたロー
    タ、該ロータと同軸に結合するフランジ部と細径軸とか
    ら成る回転軸、該回転軸の細径軸に結合され該回転軸を
    回転自在に支持する軸受、及び該軸受の外輪をその内周
    に支持する開口部と該開口部の入口と反対側の端部に陽
    極端とを備える底付き円筒状の固定部を有する回転陽極
    と、前記陰極と前記回転陽極とを対向して絶縁支持し、
    真空気密に内包する外囲器とを具備する回転陽極X線管
    において、前記ロータが、一端に前記ターゲットを支持
    するターゲット支持部を有し他端に開口部を有し、低熱
    膨張率で高強度の金属材料から成るターゲット支持軸
    と、該ターゲット支持軸の他端と結合するフランジ部、
    薄肉の円筒部及び前記回転軸のフランジ部に結合される
    底面部を有し、該円筒部と底面部が前記ターゲット支持
    軸の開口部内に収容され、比較的高い熱膨張率で低熱伝
    導率の金属材料から成る断熱支持体と、該断熱支持体の
    フランジ部の前記ターゲット支持軸との結合部とは反対
    側の面に結合され、高導電性の金属材料から成る円筒状
    のロータ円筒部とを備え、各部材間がろう付けによって
    結合されていることを特徴とする回転陽極X線管。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の回転陽極X線管におい
    て、前記ロータを構成する前記ターゲット支持軸と前記
    断熱支持体とのろう付け結合部では、前記断熱支持体の
    フランジ部の外周部の一部が前記ターゲット支持体の開
    口部の外周部を覆う形状にて両部材が嵌合され、前記タ
    ーゲット支持軸の開口部の内周面及び前記断熱支持体の
    円筒部の外周面のうちの少なくとも一方の周面に凸状部
    が設けられ、該凸状部においてろう材の融点付近の温度
    にて前記内周面と前記外周面のそれぞれの一部がほぼ接
    触するように構成されていることを特徴とする回転陽極
    X線管。
  5. 【請求項5】 請求項3及び4記載の回転陽極X線管に
    おいて、前記固定部は、前記開口部と前記陽極端とを含
    む内筒部と、少なくとも該内筒部の開口部の長さ方向全
    体を覆う外筒部とから構成され、該外筒部は低熱膨張率
    で高強度の金属材料から成り、前記内筒部は高熱伝導率
    の金属材料から成ることを特徴とする回転陽極X線管。
  6. 【請求項6】 回転陽極X線管(以下、X線管と略称す
    る)と、該X線管を内包する防X線、防電撃構造のX線
    管容器と、前記X線管の外囲器の陰極側を前記X線管容
    器の陰極側の内周壁に絶縁支持する陰極側支持体と、前
    記X線管の陽極端を前記X線管容器の陽極側の内周壁に
    絶縁支持する陽極側支持体と、該陽極側支持体に支持さ
    れて前記X線管のロータの外周に配設され、該ロータに
    回転力を付与するステータと、前記X線管の陰極及び陽
    極に高電圧を導くためのケーブルレセプタクルと、前記
    X線管の焦点から放射されるX線を外部に取り出すため
    のX線放射窓と、前記X線管を絶縁、冷却するために前
    記X線管容器に充填される絶縁油を具備するX線管装置
    において、前記X線管が請求項1乃至5記載のX線管で
    あり、前記陽極側支持体は椀状体で、前記X線管の回転
    陽極の固定部を覆うように前記ターゲットの裏側の周辺
    部から前記陽極端にかけて延在し、その大部分が高熱膨
    張率の耐熱性絶縁材料にて構成されていることを特徴と
    する回転陽極X線管。
  7. 【請求項7】 X線管装置とX線検出器とを被検体が挿
    入される開口部を挟んで対向配置して搭載した走査ガン
    トリと、前記X線管装置に高電圧負荷を印加するX線コ
    ントローラと、寝載した被検体を前記開口部に挿入する
    撮影テーブルと、前記走査ガントリ、前記X線コントロ
    ーラ及び前記撮影テーブルを制御し、前記X線検出器に
    て収集したX線計測データに基づいて被検体の断層画像
    を再構成する操作コンソールとを具備するX線CT装置
    において、前記X線管装置が請求項6記載のX線管装置
    であり、撮影開始前及び撮影間に長時間の大休止をとっ
    た後には前記X線管装置に予熱のための負荷印加を行う
    ウォームアップ操作とキャリブレーション操作を行い、
    その後に撮影を行うことを特徴とするX線CT装置。
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