JP2002294395A - 厚肉対応の耐摩耗低合金鋳鋼 - Google Patents

厚肉対応の耐摩耗低合金鋳鋼

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JP2002294395A
JP2002294395A JP2001097659A JP2001097659A JP2002294395A JP 2002294395 A JP2002294395 A JP 2002294395A JP 2001097659 A JP2001097659 A JP 2001097659A JP 2001097659 A JP2001097659 A JP 2001097659A JP 2002294395 A JP2002294395 A JP 2002294395A
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JP2001097659A
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Tsuneo Takada
恒夫 高田
Hiroaki Maedono
前殿  裕章
Haruki Sumimoto
治喜 炭本
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Kurimoto Ltd
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Kurimoto Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低合金厚肉鋳造品の耐摩耗性をさらに向上し
つつ靭性も維持することを目的とする。 【解決手段】 重量%としてC:0.35〜0.42、
Si:1.50〜2.00、Mn:0.80〜1.5
0、Cr:1.80〜2.20、Mo:0.30〜0.
40、Al:0.001〜0.1、Zr:0.05〜
0.20、を含み、鋳造後の低速度の昇温による焼鈍、
3点以上からの油焼入、300℃以下の焼戻し処理に
よって少なくとも100mmの製品断面の硬度が表面か
ら肉厚中心までほぼ均等にHRC55以上を維持しつつ
シャルピー衝撃値Vノッチ10J/cm 2以上を維持す
ることによって前記の課題を解決した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐摩耗低合金鋳鋼、
とくに厚肉の鋳造品に係る。
【0002】
【従来の技術】低合金鋼は普通炭素鋼に少量のMn、N
i、Cr、Moなどを配合した材料で、主として機械構
造用鋼の主体として多用され、その組成はJISやAS
TMに規格化され、最も一般的な汎用材とされている。
たとえばJIS G5111SCrM、同G 4105
SCM材などは典型的なCr−Mo合金鋼である。し
かし、機械構造用鋼の規格品として、たとえばSCM4
35材(重量%にしてC:0.33〜0.38、Si:
0.15〜0.35、Mn:0.60〜0.85、C
r:0.90〜1.20、Mo:0.50〜0.35)
では、靭性は申し分ないとしても硬度がHB269〜3
31の範囲に留まり、通常の構造用鋼であれば充分であ
っても、たとえば鉱石処理用の機械、廃棄物処理、浚渫
用機械など土石や石炭、鉱石などや廃自動車の破砕など
直接自らも過酷な摩耗作用に直面する部材には到底その
役務に耐えることができず、早々に更新せざるを得な
い。
【0003】このような摩耗部材に対応するには、特殊
な耐摩耗材を採用する必要があるが、金属摩耗としては
すべり摩耗ところがり摩耗とに大別され、本発明が特に
対象としているすべり摩耗では、C、および炭化物形成
元素であるCr、Moを加え、フェライト強化のためS
i、Mnを高めて、全体として硬度を上げて対応するの
が一般的であり、従来技術もこの狙いに絞って幾つかの
提案が開示されている。
【0004】特公昭48−34650号公報に係る従来
技術はC:0.30〜0.40、Si:1.30〜1.
70、Mn:0.80〜1.20、Ni:2.0〜3.
0、Cr:0.80〜1.20、Mo:0.40〜0.
60(重量%)の他、少量のV、Zr、Ce、Laを含
み、マクロ粒度の細粒化によってミクロ介在物やミクロ
収縮孔を減小し、窒素脆性を防止して靭性を高めるため
に上記の成分範囲を特定したとしている。この結果V、
Zr、Ce、Laを含む実施例と、ほぼ同じ成分である
がこれら微量成分を含まない比較例の機械的性質を比べ
てみると、引張力はほぼ同じレベルにあるが、伸び、絞
り、シャルピー衝撃値がほぼ2倍前後に向上し、明らか
な靭性の強化が認められると謳っている。なお、硬度H
Vは525、590の2例を挙げ、JISのSC46の
同125、JIS SCA3の215を大きく凌駕して
耐摩耗性の差を示唆しているが、La、Ceなど特殊な
希土類元素による差については触れていない。
【0005】特開昭51−142414号公報の従来技
術は、C:0.20〜0.35、Si:1.30〜2.
80、Mn:0.50〜1.50、Cr:3.00〜
4.50、Mo:0.10〜0.50(重量%)の成分
で焼入、低温焼戻しによってマルテンサイトと微細に適
量混合したフェライトの組織よりなる耐衝撃、耐摩耗の
低合金鋼を示している。この従来技術も比較的靭性と耐
摩耗性のバランスの取れた材質しして知られている低合
金鋼から出発し、さらに硬度を現状、またはそれ以上と
しつつ靭性を2〜3倍アップさせることによって用途を
一段と拡大することを目的とし、HRC50以上、シャ
ルピー衝撃値4kgm/cm2を目標として種々の成分
を組合せて前記の範囲を特定したとしている。
【0006】特公昭55−2463号公報の従来技術は
C:0.28〜0.50、Si:0.70〜1,20、
Mn:0.90〜1.40、Cr:0.90〜1.5
0、Mo:0.25〜0.50、またはB:0.000
2〜0.01(重量%)を含むCr−Mo系の強靱耐摩
耗鋼を提示し、耐摩耗と耐衝撃を要求される破砕機や建
設機械の刃材、反撥板などの使用を目的としている。こ
の材料は焼鈍後、900℃油焼入、200℃急冷の焼戻
しによってブリネル硬度500以上、シャルピー衝撃値
4kgm/cm2以上の良好な成績を残し、ほぼ同じ成
分でMo、またはBを含まない従来例に比べると硬度、
シャルピー衝撃値共に高い靭性が得られたとしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】構造用鋼の主体を占め
る低合金鋼、特にNi−Cr、Ni−Cr−Mo、また
はCr−Moの低合金鋼の靭性と硬度をバランスさせる
ことは長い開発の歴史が物語る息の長い挑戦であり、現
在に至るもオールマイティの材料はない。材質の競合が
日時と共に高いレベルでの優劣が問われるからであっ
て、これは供用される製品の使用条件がより厳密に細分
化され、ある用途に対しては最高の成績を残せても別の
用途に対しては必ずしも最高とは言えず、別の材質に優
位を譲ることはごく普通に見られるところである。現在
では強靱性と耐摩耗性とをどの点でバランスさせるかと
いうことは提供製品の製造条件や使用条件の違いによっ
て大きく変動するから、従来技術の評価もなかなか困難
であるが、一応、実用の記録から要望される通り耐用期
間を一段と延伸するためには、つぎのような指摘もでき
るのである。
【0008】特公昭48−34650号は希土類元素、
特にCe、Laのミッシュメタルを添加して不純物元素
の減小と微細化、不活性化によって靭性を上げることを
要旨とするが、このミッシュメタルはきわめて高価であ
る上、その反応はきわめて激しく、かつ、溶湯添加の効
果が時間と共に急激に失われることはよく知られてい
る。したがって多数の鋳型に逐次注湯する時間が長引け
ば、最初と最後の鋳型の鋳造品ではその作用、効果に著
しい差が生じ、ミッシュメタルにのみ依存する品質の改
善には個々の製品に大きなバラツキが生じる可能性が高
い。
【0009】特開昭51−142414号と特公昭55
−2463号の従来技術は、何れもCr−Moベースの
低合金鋼であって、硬度を現状、またはそれ以上を維持
しつつ靭性の向上を図ったものであって、前者はHRC
50以上、シャルピー衝撃値4kgm/cm2以上をバ
ランスと考え、後者はブリネル硬度500以上、シャル
ピー衝撃値4kgm/cm2以上を狙った材料である。
靭性の高い方が衝撃の激しい使用条件において割れの危
険性が少ないことは言うまでもないが、現在の高くレベ
ルアップした材料競争の立場から言えば、過激な摩耗条
件に対抗して使用期間をさらに延伸するためには、HR
C50程度、またはブリネル500程度の硬度では決し
て満足できる評価を得るまでには至らない数値である。
とくに家庭用ゴミなどの粗大化傾向、廃車処理の急増な
ど破砕設備の大型化に伴って耐摩耗部材、たとえばカー
シュレッダーミルのハンマーなども大型化する趨勢は避
け難いから、厚肉鋳造品の硬度の均一性が大きな課題と
して浮上してくる。如何に試験片の硬度が使用上適正で
あっても、熱間、冷間加工によって結晶粒や介在物、偏
析の分布を強制的に改善できない厚肉鋳造品の場合は、
製品の内部へ進むにつれて急激に硬度が失われるようで
は要望に応えられない。いわゆる焼入性の問題、具体的
には臨界直径(DI)の大小などを論議しなければ、厚
肉鋳造品として対応できないという課題がある。
【0010】本発明は従来技術と同様、耐摩耗性と耐衝
撃のバランスを求めた技術に当るが、とくに従来技術よ
りも一段と高い硬度によってより効率的な耐摩耗材料と
しての使命を果たすと共に、高硬度の結果、当然、危惧
が高まる製造中、使用中の割れに関して、従来技術では
ほとんど顧みられなかった独自の調査によって新たに知
見した原因に対応し、これを未然に防止する処置を確立
して大型化する耐摩耗鋳鋼の新たな提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係る厚肉対応の
耐摩耗低合金鋳鋼は、重量%としてC:0.35〜0.
42、Si:1.50〜2.00、Mn:0.80〜
1.50、Cr:1.80〜2.20、Mo:0.30
〜0.40、Al:0.001〜0.1、Zr:0.0
5〜0.20、その他実質的にFeおよび不可避的不純
物よりなり、鋳造後の焼鈍、A3点以上からの油焼入、
300℃以下の焼戻し処理によって少なくとも100m
mの製品断面の硬度が表面から肉厚中心までほぼ均等に
HRC55以上を維持しつつシャルピー衝撃値Vノッチ
10J/cm2以上を維持することによって前記の課題
を解決した。
【0012】この場合、Zrの歩留まりを向上し、溶湯
中へ均等に配分するために、AlとZrの添加がAl粒
とZr粒とを混合した脱酸・脱窒剤を出湯直前、または
出湯中に溶湯へ添加して完全に反応する実施形態が望ま
しく、また、硬度を向上させたことによって危惧される
製造上、使用時の割れ防止のためには、鋳造後の焼鈍が
常温より少なくとも50℃/Hr以下の緩慢な昇温速度
で650℃に達して1Hr以上保持し、さらに1000
℃に達して3Hr以上保持した後、炉冷することがきわ
めて有効な実施形態である。
【0013】本発明の成分範囲の限定理由を簡単に説明
する。 C:0.35〜0.42% Cは耐摩耗性を発揮するために硬いマルテンサイト組織
を得る目的から必須の元素である。焼入性が充分な場合
は硬さがCによって決定される。しかし、実際の製品の
場合、製品肉厚によっては焼入性が不十分な場合が多い
のでC%通りの硬さが得られないことが多い。本発明の
目的であるHRC55以上の硬さを得るためには0.3
5%以上が必要である。しかし、0.42%を越えると
非常に割れ易い脆性マルテンサイトとなるため、実用に
耐えられる上限値を0.42%とする。 Mn:0.80〜1.50% Mnは焼入性向上効果が最も高い元素であるので、厚肉
製品対応の場合、必須の元素である。0.8%以下の添
加は厚肉鋳鋼対応としては効果不十分である。しかし、
Mnは非常に偏析しやすい元素なので1.5%を越える
と偏析により靭性低下が著しい。 Si:1.5〜2.0% 鋳造には脱酸と湯流れ維持の上で必須の成分であるが焼
入性効果は小さい。しかし、Mnに比べて偏析傾向は小
さい元素である。厚肉鋳造品の場合、1.5%以下の添
加では焼入性改善効果は小さいが、2.0%を越えると
靭性低下が著しい。 Cr:1.8〜2.2% Cr:の焼入性向上効果はMoとSiの中間よりMo側
にあり、比較的偏析の傾向も少ないので厚肉鋳造品には
必須の成分である。Crはオーステナイト領域閉鎖型で
あり、A3変態の温度を上昇し変態速度が遅くなる元素
であるから、比較的容易にAr’’変態を起こしてマル
テンサイトとなり著しく硬化する。1.8%以下では焼
入性効果が不十分であるが、2.2%を越すと脆性の高
いCr系炭化物が過多となり靭性が大きく損なわれる。 Mo:0.3〜0.4% Moの焼入性向上効果はMnと同等できわめて顕著であ
る。しかし偏析傾向はMn以上である。厚肉製品対応の
場合は0.3%以下の添加ではその効果はやや不充分で
あり、0.4を越えると偏析による靭性低下の傾向が著
しい。 Ni:≦0.2% 高価な割りには焼入性向上効果が少ない元素である。
0.2%以上の添加は経験的に熱処理時に溶接時の割れ
を誘発し易いことが知られている。 Al:0.01〜0.1% 脱酸効果として0.05%付近に極大値がある。0.0
1%以下では脱酸効果が不十分であるが、0.1%を越
えると靭性面に非常に有害な巨大なAl23の晶出量が
増えて好ましくない。 Zr:0.05〜0.20% 少量添加で焼入性向上効果が強烈である。フェライト中
へ固溶して実用材では最強の脱窒剤であり、脱酸、脱硫
作用も大きい。結晶粗大化温度を高め、オーステナイト
の微細化にも有効である。これによって著しい清浄作用
が発揮される。一方、炭化物形成傾向も最大であり、Z
rC、ZrNが粒子の移動を阻害して転位を妨げ組織を
微細化する。焼入性向上には0.05%は必要である
が、0.2%以上の添加ではZrの炭化物、窒化物の晶
出が過大となって却って靭性を低下させる。本発明のZ
rは炭化物の形成によって直接硬度を高めるよりは、組
織の清浄化と微細化によって焼入性を向上させることを
指向した成分範囲の限定に意義があり、フェライトに固
溶するZrの作用を重視した点に特徴がある。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明に係る厚肉対応の耐摩耗低
合金鋼の実施形態を説明する。この発明の実施例の機械
的性質をCr−Mo系の同じ分類に属する従来技術と比
較するためにカーシュレッダーミルのハンマー(廃車の
破砕機)に実施される厚肉を想定して80mmの試験片
で4種類の成分タイプを選び、本発明の実施例および、
従来技術をほぼカバーする代表を比較例1,2,3と名
付けて対比した。選定した成分を表1に示す。
【0015】
【表1】
【0016】実施例、比較例、共に成分以外の要素、す
なわち溶湯の脱酸・脱窒作用や熱処理方法、などについ
ては、後述する最も好ましい実施形態に統一し、本発明
の従属請求項として定めた各条件に一致させてその影響
を打ち消し、純粋に成分差による材質差だけを評価する
ようにしたことは言うまでもない。機械的な試験結果を
次の表2に示す。
【0017】
【表2】
【0018】この結果を見れば、本発明の実施例では硬
度が比較例1,2に対して13%向上するのに対し、比
較例3に対してはわずかに低下しているが、衝撃値につ
いてはこの比較例3に対し5倍の向上を見せている。耐
摩耗性、具体的には硬度とシャルピー衝撃値とのバラン
スをどの一線で引くかは難しい選択であるが、同じこと
は既に述べた従来技術に対しても言えることで、単純な
材料試験の結果だけ見れば、先に引用した従来技術は何
れも本発明に比べて硬度は明らかに低いが、Uノッチか
らVノッチに換算したシャルピー衝撃値(1:約1.
7)においては優位を保っている。しかし、本発明では
耐摩耗材として最も優先する前提条件である硬度を最重
視し、高硬度に伴う厚肉製品独自の課題については、別
の手段で解消しようとする点に特徴がある。
【0019】本発明はCを0.4%前後に抑えて靭性の
出易い下部ベイナイト〜マルテンサイトの混合組織に変
態させる一方、焼入性を確保するための添加元素は、添
加量の増加と共に偏析して靭性を低下させるMn、Mo
を極力抑え、最大限の効果を出すための合金設計を行な
った結果、HRC55以上の硬度を維持しつつ、シャル
ピー衝撃値はVノッチで10J/cm2以上を維持する
理想的な材料に到達したのである。
【0020】本発明においてはZrの存在が重要なポイ
ントであるが、その効力を最高に発揮させるためには添
加手段が大きく左右する。通常の合金元素に添加する場
合と同じようにZr単体、またはFe−Zrの添加によ
るならば、Zrの溶融点はFeより遥かに高い1852
℃であるから、充分に溶湯に溶け込んで独自の作用を発
揮するか甚だ疑問である。本発明は溶湯の成分調整、精
練処理をほぼ終えて最終段階のAlによる強制脱酸時に
同時にZrを添加することによってZr−Al共存によ
る溶融点(例えばAl:20%とZr:80%を配合し
た合金の場合約1200℃)の低下を図り、Alの発熱
脱酸作用と併せて急速、かつ、完全に溶湯内へ溶融する
ことを要件としている。
【0021】Zrによる焼入性の向上効果については第
二の実験例によって確定する。表3は焼入性の優劣を判
断するために行なった別の試験に使用した試験片の成分
であり、本発明の実施例1、比較例4,5よりなる。
【0022】
【表3】
【0023】化学成分から言えば鉄鋼の延靭性は合金元
素の添加量が増すほど低下する。これは合金元素がFe
の結晶格子を乱し転位の動きを妨げ、塑性変形を邪魔す
るからとされる。この作用を合金元素体積と定義し、各
元素の原子半径よりFe原子の体積を1とした体積比率
を計算し、その数値に各元素の原子%を乗じた値の総和
を計算した。
【0024】一方、焼入性として普遍的に適用されるD
i(臨界直径)も各成分から算出してみた。Diは基本
的にはDi=(基本Dr)×fsi×fMn×fNi×...
で示されるが、成分値から実用的にはASTM A25
5−67の数表から各成分毎に定まる指数を各成分%に
乗じ、さらに結晶粒度毎に定まる指数をC%に乗じた総
和で表される。Diが大きい方が硬度は高い方へ、また
割れ易い方へ傾斜する。さらにMs点(マルテンサイト
変態の始まる温度)は合金元素の増加と共に低温側へ移
行し、いくつかの数式が提起され、低温側へ移行するに
つれて割れ易い方向へ進む。表3に示した実施例1、比
較例4,5の3成分について計算したのが表4であり、
理想的な臨界直径Di、変態開始点Ms、合金元素体積
の何れを見ても、実施例が比較例に比べて焼入性で優越
し、割れの危惧さえ有効に防止できるならば理想的な耐
摩耗材であることの傍証となるデータである。
【0025】
【表4】
【0026】図1は80mm厚さの試験片を鋳造後、同
じ標準熱処理(後述)を加え、中央から切断し、切断面
の黒皮表面からの距離mmを横軸に、HRC硬度を縦軸
にとって焼入深度の変遷を表したものである。図1の結
果から見て本発明の実施例である折線は鋳造品の黒皮
表面から肉厚中心の50mmに至るまで、ほとんど硬度
に変化がなく、少なくとも肉厚100mmの厚肉大型鋳
造品がほぼ均等な硬度HRC55以上で終始している顕
著な特徴を示している。これに対してNi:1,14
%、Cr:1.17%、Mo:0.79%の比較例5で
は折線のように黒皮表面20mmまではHRC54を
保持する。また、Cr:1.32%を含むCr−Mo系
低合金鋼の比較例4は折線のように表面から20mm
まではHRC51を保持しているが、比較例の2件は何
れも硬度の絶対値においても、またその有効深度におい
ても顕著な差違のあることは明白である。
【0027】硬度向上の反作用として割れ発生の可能性
増加の懸念を如何に克服するかということも本発明の重
要な焦点である。ただし硬度の増加が高硬度の炭化物の
晶出増加にのみ依存するものでなく、組織の清浄化、微
細化を主体とするから、硬度の増加が比例的に脆性の増
加に結び付くわけではなく、むしろ厚肉製品であるが故
の熱応力、変態応力による残留応力に起因する比重が大
きい。鋼は低温では強靱で弾性的であるが、高温になる
と多少の応力でも容易に変形を来す塑性的に変化するか
ら、冷却時に表面から中心部に温度勾配を生じると、表
面は引張られて塑性変形し、そのまま全体が冷却される
と表層に圧縮、中心に引張り応力が残留する。
【0028】本発明では焼入後に割れの発生した製品の
割れ破断面を走査型電子顕微鏡で調査した結果、割れの
起点は製品内部にあり、熱処理の各段階毎にチェックし
たところ、割れの起点発生は鋳造の残量応力が最も大き
い鋳放し状態から応力除去のために施す焼鈍の昇温段階
にあることを突き止めた。焼鈍時の割れの起点発生さえ
乗り切れば、高硬度を得るために不可欠の油焼入も、そ
の後の低温焼戻し脆性も耐えられることを確認したの
で、図2(B)に示す従来の熱処理履歴を同図(A)の
ように改めた結果、探傷テストによる割れの起点は消失
し、したがって油焼入、焼戻しの手順を無傷で通過する
手段が確立された。
【0029】
【発明の効果】本発明は以上述べた通り従来技術に比べ
ると耐摩耗性の一段の向上を求めて硬度をさらに上げる
が、そのために危惧される靭性の低下を極力抑止し、ま
た、その結果懸念される割れの多発を大部分の起点発生
時の対応によって大幅に抑止することによって理想的な
耐摩耗性と耐衝撃性の両立を実現した効果がある。硬度
の向上が脆性の硬質炭化物の分布による方法ではなく、
組織の清浄化と微細化の作用を主体とする点が前記両立
を可能とした根源にある。本発明ではミッシュメタルな
どの高価な添加物を必要とせず、しかも持続的な効力を
維持できるZrを最も合理的な態様で添加してその特殊
な作用を100%有効に発揮させ、結果的に硬度向上に
繋がったのであるから、経済的にも有利であり、品質的
にも安定して従来技術を凌駕する優れた操業条件を形成
する上で貢献する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例と代表的な比較例の焼入性を示す
図表である。
【図2】本発明実施例(A)と代表的比較例(B)の熱
処理仕様を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 炭本 治喜 京都府相楽郡加茂町大字例幣小字板谷垣内 25番地 Fターム(参考) 4K013 AA00 BA08 BA11

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%としてC:0.35〜0.42、
    Si:1.50〜2.00、Mn:0.80〜1.5
    0、Cr:1.80〜2.20、Mo:0.30〜0.
    40、Al:0.001〜0.1、Zr:0.05〜
    0.20、その他実質的にFeおよび不可避的不純物よ
    りなり、鋳造後の焼鈍、A3点以上からの油焼入、30
    0℃以下の焼戻し処理によって少なくとも100mmの
    製品断面の硬度が表面から肉厚中心までほぼ均等にHR
    C55以上を維持しつつシャルピー衝撃値Vノッチ10
    J/cm2以上を維持することを特徴とする厚肉対応の
    耐摩耗低合金鋳鋼。
  2. 【請求項2】 請求項1において、AlとZrの添加が
    Al粒とZr粒とを混合した脱酸・脱窒剤を出湯直前、
    または出湯中に溶湯へ添加して完全に反応したことを特
    徴とする厚肉対応の耐摩耗低合金鋳鋼。
  3. 【請求項3】 請求項1において、鋳造後の焼鈍が常温
    より少なくとも50℃/Hr以下の緩慢な昇温速度で6
    50℃に達して1Hr以上保持し、さらに1000℃に
    達して3Hr以上保持した後、炉冷することを特徴とす
    る厚肉対応の耐摩耗低合金鋳鋼。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN100417741C (zh) * 2006-12-19 2008-09-10 郑州煤矿机械集团有限责任公司 一种铸钢材料
CN103114245A (zh) * 2013-02-03 2013-05-22 宁波华电铸钢有限公司 一种耐磨衬板及其制备方法

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