JP2002293749A - D−アスパラギン酸含有蛋白質分解酵素の阻害剤 - Google Patents
D−アスパラギン酸含有蛋白質分解酵素の阻害剤Info
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Abstract
特にD−アスパラギン酸エンドペプチダーゼ(DAE
P)の阻害剤に関する。既存の阻害剤はプロテアソーム
阻害剤として知られるラクタシスチンだけであったが、
感度が悪く、またプロテアソームにも作用してしまうこ
とが欠点であった。 【解決手段】 本阻害剤i−DAEPは、DAEPが
D−Aspを含む基質を特異的に分解することに着眼
し、その類似体がDAEPの活性中心をふさぐことによ
ってDAEP活性を阻害する化合物を設計することによ
り、i−DAEPを得ることができた。D−Asp−C
H2Cl又はその誘導体を含むアミノ酸配列から成るD
−アスパラギン酸含有蛋白質分解酵素の阻害剤であり、
ベンゾイル−Arg−His−D−Asp−CH2C
l、ビオチニル−Arg−His−D−Asp−CH2
Cl又はビオチニル−Gly−Gly-D−Asp−C
H2Clから成ることが好ましい。
Description
ン酸含有蛋白質分解酵素、特にD−アスパラギン酸エン
ドペプチダーゼ(以下、DAEPという。)の阻害剤に
関する。
質は、従来L型のアミノ酸だけからなると考えられてい
た。しかしながら、近年になって、D型のアミノ酸を含
有する蛋白質が発見され、それらは病態との関係が指摘
されている。例えば、αA−クリスタリンでは、151
残基目のアスパラギン酸(Asp)が、L体からD体に
ラセミ化したものが報告されており、白内障との関係が
指摘されている。また、動脈の構造蛋白質であるエラス
チンやコラーゲンでもD−Aspの蓄積が指摘されてお
り、動脈硬化の原因の一つではないか、と言われてい
る。これらは、いずれも比較的代謝速度の遅い蛋白質で
あり、D−Asp含有蛋白質は、老化とともに増加する
傾向にある。なかでも、アルツハイマー病で脳内に蓄積
するアミロイドβ蛋白質(Aβ)には、1残基目、もし
くは7残基目のL−Aspが異性化してD体になってい
るもの(D−Aβ)が発見されている。D−Aβは、in
vitroでの凝集が早まることが確認されており、病態と
の関連が示唆されている。また、加齢と共にヒトの脳内
や体液中に遊離のD−Aspが増加していくことも明ら
かになっている。我々は、遊離のD−Aspの一部が、
D−Aβのような異常な蛋白質の分解に由来する物質で
はないかと仮定した。すなわち、DAEPというべき分
解酵素が我々の生体内に存在し、本酵素が防御システム
として、老化と共に増加するD−Aβのような異常な構
造を持つ蛋白質を分解し、排除していると考えた。
万の高分子複合体であり、その基本的な酵素としての性
質についてDAEPの活性がプロテアソーム阻害剤のラ
クタシスチンによって阻害されることなどを報告してい
る(木野内忠稔ら「哺乳類におけるD−アスパラギン酸
含有蛋白質に特異的な分解酵素について」第73回日本
生化学会大会(2000年5月25日))。これらの性
質は20Sプロテアソームと一致するものであるが、そ
の細胞内の局在が異なること、DAEPはD−Asp含
有蛋白質にのみ特異性を示すことなど、性質上の相違点
も多いこともわかってきている。
ン酸エンドペプチダーゼの活性を抑制する既存の阻害剤
はプロテアソーム阻害剤として知られるラクタシスチン
だけであった。ラクタシスチンの本酵素に対する阻害特
性は、感度が悪く、また、プロテアソームにも作用して
しまうことが欠点であり、DAEPの特性の調査には不
向きであった。
DAEP)は、DAEPの性質を詳細に調べる過程で開
発されたものであり、DAEPがD−Aspを含む基質
を特異的に分解することに着眼し、その類似体がDAE
Pの活性中心をふさぐことによってDAEP活性を阻害
する化合物を設計することにより、i−DAEPを得る
ことができた。結果的に本発明のi−DAEPはラクタ
シスチンに比べ10倍以上感度が良い。即ち、本発明の
目的は、D−Asp−CH2Cl又はその誘導体を含
み、かつ少なくとも3つのアミノ酸を含むアミノ酸配列
から成るD−アスパラギン酸含有蛋白質分解酵素の阻害
剤を提供することである。この阻害剤は、ベンゾイル−
Arg−His−D−Asp−CH2Cl、ビオチニル
−Arg−His−D−Asp−CH2Cl又はビオチ
ニル−Gly−Gly-D−Asp−CH2Clから成
ることが好ましい。
クタシスチンでその活性が阻害されることから、その高
次構造は、プロテアソーム様の構造を持つことが推測さ
れる。すでにプロテアソーム阻害剤として市販、利用さ
れている合成ペプチド阻害剤には、ALLN(N-acetyl-L-l
eucinyl-L-leucinyl-L-norleucinal)やZLLLal(benzylo
xycarbonyl-L-leucinyl-L-leucinyl-L-norleucinal)が
あり、いずれもトリペプチジル阻害剤である。一方、ア
ミノ酸数が1つ足りないZLLal(benzyloxycarbonyl-L-leu
cinyl-L-norleucinal)では、プロテアソーム活性を阻害
できないことから、2残基では、立体構造上、プロテア
ソームの活性中心へのアクセスに問題が生じるものと考
えられている。従って、DAEPにおいても最低3残基
からなる構造が必要である。また、近年発見されたジャ
イアントプロテアーゼも、70万の分子量を持つ超高分子
複合体で、その活性は一部、プロテアソームと類似し、
ラクタシスチンで阻害される。このジャイアントプロテ
アーゼに対して開発された阻害剤、即ち、L-Ala-L-Ala-
L-Phe-chloromethaneも3残基からなるトリペプチジル阻
害剤である。従って、これらのことからラクタシスチン
でその活性が阻害され、分子量が70万の超高分子複合
体型のプロテアーゼファミリーとしてDAEPをとらえ
ると、その活性を阻害する目的で合成されるペプチド阻
害剤も、溶液中での安定性などを考慮して、最低3残基
であることが望ましい。
や蛋白質の一次配列中にD−Aspが存在した場合、そ
のカルボキシ末端側で隣のアミノ酸との間を切断する分
解酵素の性質を示す。ただし、D−Aspが基質の一番
外側であるN末端にあった場合には、作用しない(即
ち、エクソ型のペプチダーゼではない。)。図1に、ウ
サギ肝ミトコンドリアから精製したDAEP(ミトコン
ドリアDAEP)に、合成した10残基のペプチド、(D
-Asp)-AEFRH-(D-Asp)-SGY(D-Aβ1-10と略す。)及び(L
-Asp)-AEFRH-(L-Asp)-SGY(L-Aβ1-10と略す。配列番
号:1)を作用させた様子を示す。これらの合成ペプチ
ドは、L−AspもしくはD−Aspを1残基目と7残
基目に含み、アルツハイマー病の原因蛋白質であるアミ
ロイド蛋白質(Aβ)の1〜10残基までの配列を表す。D
AEP酵素溶液と以上のD/L-Aβ1-10を混合し、37
℃、21時間インキュベートし、その後、100℃で1
分間加熱することにより反応を止め、この溶液を逆相カ
ラムにアプライし、分解されたD/L-Aβ1-10の断片を分
画した。クロマトグラムから、変化の見られたピークに
ついてペプチドシーケンサーで分析したところ、D-Aβ1
-10では、21時間後(図1(b))に0時間(図1
(a))で分解の観られなかったD-Aβ1-10のピークが
2つに分かれており、それぞれSGYとdAEFRHであること
が分かった。また、D-Aβ1-10のN末端側にあるD−As
pには作用していないことが分かった。一方、L-Aβ1-1
0は21時間後(図1(d))もクロマトグラムは変わ
らず、ペプチドシーケンサーによる解析の結果も0時間
(図1(c))と同様、分解されていないことが分かっ
た。即ち、DAEPはエンド型のペプチダーゼ活性を持
つことを示す。従って、DAEPとは、基質として一次
配列中にD−Aspを含むペプチドや蛋白質を、エンド
形の様式で分解する酵素の一群であるといえる。
て活性を確認できたのは、ミトコンドリアに存在するD
AEP(以下、「ミトコンドリアDAEP」という。)
と、核に存在するDAEP(以下、核DAEP)のみで
ある。その基本的な性質について表1に示す。
研究が進んでおらず、満足のいく精製法も開発されてい
ない。また、両者とも一次配列はまだわかっていない。
表2に両者の性格の比較を示す。
で両者は非常に性質が似ており、本発明の活性測定用基
質に対する親和性(Km)は、誤差の範囲内であり、両者
の蛋白質分解機能は同じと考えられる。また、臓器によ
ってミトコンドリアDAEP:核DAEPの活性比が異
なるため、その局在の違いは各臓器の性質と密接に関連
しているようである。一番の性質上の違いは、局在にあ
ると考えられる。ミトコンドリアDAEPは、膜にしっ
かり結合していて、なかなか回収が難しいが、核画分に
あるDAEPは、可溶性画分に回収されるため、膜に結
合する力が弱いか、もしくは、ほとんどが核内に存在し
ているものと考えられる。
核DAEPとを見分けるのは困難であり、精製の段階で
分けてくる以外に方法はない。従って、最終的に、両者
に最適な測定用基質や阻害剤を開発する必要があるかも
しれないが、エンド型D−Asp含有蛋白質分解酵素と
いう定義上では、ミトコンドリアDAEPと核DAEP
とは同一の範疇に分類される異なる2種類の酵素といっ
てよいと考えられる。
やTPCKなど)は、活性中心のセリンやヒスチジンに対し
て特異的にアルキル化し、酵素を不可逆的に失活させ
る。従って、この活性中心に入るように基質アナログと
してD-Aspを利用し、DAEPの作用部位たるカルボキ
シ末端側に-CH2Clを付けた。このような考え方に基づい
て阻害剤(i−DAEP)を構成した。D-Aβ1-10ペプ
チドを切断する活性がDAEPに存在することから、D-
AspからN末側3残基を選び、阻害剤の構造をBz-L-Arg-L-
His-D-Asp-CH2Clにし、また活性中心の標識のためにN
末端にビオチンを着けたものを合成した。最初に合成し
たのは、ベンゾイル−Arg−His−D−Asp−C
H2Clであり、その後、ビオチニル−Arg−His
−D−Asp−CH2Cl及びビオチニル−Gly−G
ly-D−Asp−CH2Clも阻害活性を示したの
で、阻害活性の基本構造はD−Asp−CH2Clにあ
ることがわかり、そのN末端側の構造には依存しないと
考えられる。
D−Asp含有蛋白質の分解などが挙げられる。活性酸
素や紫外線などの影響により、蛋白質のアスパラギン酸
残基は、その光学異性がL型からD型に非酵素的に変化
する。こうした局所的な変化は、その蛋白質全体に及
び、構造が崩れ、元来の生理機能を失ったり、場合によ
っては疎水性の局面が露出することによって凝集し、蓄
積することも考えられる。例えば、眼球のレンズに存在
するクリスタリンでは、60歳を過ぎた人で50%以上のア
スパラギン酸がD体に変化していることが分かってい
る。この変化と白内障の発症が良く相関するため、D−
Asp含有クリスタリンは、白内障の原因の一つと考え
られるようになった。この他にも、D−Asp含有エラ
スチンと動脈硬化の関係などが考えられている。こうし
て生じたD−Asp含有蛋白質は、生物にとって不要物
であるので、通常はプロテアソームなどの内在性タンパ
ク質分解酵素によって分解される。ところが、L型のア
ミノ酸からなるペプチド、もしくは蛋白質を認識して分
解している通常のプロテアーゼでは、D−Asp含有蛋
白質は、その構造の特異性から分解できない。
質は、いずれも細胞外に存在し、代謝性の低いものばか
りなので、DAEPによる作用から逃れることができ、
我々の目にとまるようになったと考えられる。逆に言え
ば、常に分解されているようでは、その本来の機能が発
揮できない。また、D型のアミノ酸を含むことにより、
微生物の細胞壁中のペプチドグリカンや、ある種の生物
毒では、分解されづらい性質を逆に利用して、その寿命
を長くし、効果を高めていると考えられる。従って、D
AEPの機能を利用することによって、内在性のD−A
sp含有蛋白質を分解することや外来のD−Aspを含
んだ毒物などを分解・解毒することができると考えられ
る。いずれ、DAEPの全容を解明し、発現調節法が可
能になれば、また、阻害剤の利用などでDAEPの活性
を調節できるようになれば、解毒や体内に蓄積するD−
Asp含有蛋白質の排除を目的とした利用が可能であ
り、様々な疾病の治療法にも使うことが可能になると考
えられる。同時に、特異的な基質によるDAEP活性測
定法も必要になると考えられる。
用法については、まずは、学術的な分野での利用法が挙
げられる。プロテアーゼの阻害剤は、新規のプロテアー
ゼに対して性質を決定することなどにも用いられてい
る。また、DAEPの局在場所であるミトコンドリアに
i−DAEPを作用させると、脱共役剤を作用させたと
きのように呼吸が速くなり、また、チトクロームcの放
出が確認された。これらと同様の効果が、唯一既存のD
AEP阻害剤であるラクタシスチンでも確認されている
ため、DAEPは、ミトコンドリアに特有な機能に深く
関与していることが示唆された。特に、チトクロームc
の放出に関与していることは、アポトーシスの誘導と深
く関連するため、今後、さらに改良を進めることによっ
て、既存の抗ガン剤との組み合わせにより、腫瘍細胞に
対して細胞死を誘導する薬剤としての利用可能であると
考えられる。
は本発明を制限するものではない。DAEPの精製 DAEPはミトコンドリアと核に局在しているので、細
胞抽出液でも十分に活性は測定できる。破砕に用いる緩
衝液には通常HEPESやPBSを用いる。培養細胞などのDA
EPを測定する場合には、細胞を回収し、懸濁後、超音
波破砕して上清を回収すればよい。ただし、DAEPは
膜タンパクでなので、半分以上が膜に残る。したがっ
て、高度に定量するのであれば、ミトコンドリアと核を
丁寧に分画する必要がある。本実施例で用いたミトコン
ドリアDAEPは以下の手順で精製した。まず、ウサギ
肝臓に10倍量以上の等張液(0.25M ショ糖、
0.2mMEDTA)を加え、ポッター型ホモジナイザ
ーで破砕した。その後遠心分離(100×g、5分、4
℃)し、その上澄みに1/2倍量の高張液(0.35M
ショ糖、0.2mM EDTA)を加え、遠心分離(8
00×g、15分、4℃)し、その上澄みを更に遠心分
離(9000×g、10分、4℃)し、その沈殿物に1
0倍量以上の等張液(0.25M ショ糖、0.2mM
EDTA)を加え、遠心分離(9000×g、7分、4
℃)し沈殿物を回収した。この沈殿物に等張液(0.2
5M ショ糖、0.2mM EDTA)を加え、ホモジナ
イザーで軽く懸濁し、20mg/mlに調製し、Opt
iprepを用いた密度勾配遠心分離(1.117〜
1.185g/ml)を行い、1.130〜1.140
g/mlを分画し、ミトコンドリア画分を得た。
0%duty cycle、2分)を行い、遠心分離
(100000×g、60分、4℃)し、その沈殿物に
抽出緩衝液(1.0%CHAPSを含むT10E1)を
加え、チューブローテーター(〜1rpm、45分、4
℃)で処理し、超遠心分離(100000×g、60
分、4℃)し、その沈殿物を上記抽出緩衝液に懸濁し再
抽出を繰り返し、その上澄みに順次100K限外ろ過
(MACROSEP)、強陰イオン交換(RESOUR
CE Q)、強陽イオン交換(RESOURCE S)
を行い、ヒドロキシアパタイト(Bio−Scale
CHT2−1)を加えて、ゲルろ過し(Superro
se 6HR10/30)、DAEP精製品を得た。
r-Gly-Tyr-Lys-2,4-Dinitrophenyl-Arg-NH2を用い、以
下の手順で活性測定を行った。通常、プロテアーゼの活
性測定には、測定用の蛍光基質を1mMに調製し(まず10m
MのDMSOで溶解した濃い基質溶液を調製し、これを10倍
に蒸留水で希釈する)、これを1/10量含む測定条件を設
定して、プロテアーゼの活性を測定する。反応液は、測
定すべきプロテアーゼの至適pHに調整した緩衝液、塩な
どを含み、最大活性が見られる反応温度で、15-30分間
反応させる。反応の終了操作は、反応液と同量の10%SD
Sを加え、さらに、念のため反応液に含まれる緩衝液のp
Hと逆のpHをもつ緩衝液を加え、完全に酵素反応を停止
する。(なお、96穴プレートを用いて蛍光プレートリー
ダーで蛍光強度を読みとってもよく、この場合には反応
停止操作は行わない。性能の良い蛍光プレートリーダー
を用いるとリアルタイムで蛍光強度が測れる。)。普通
のプロテアーゼであれば、10%SDSを加えただけで失活
するが、その後蛍光強度を測るときに用いる石英キュベ
ットの容積も考慮して、さらに至適pHと逆のpHをもつ緩
衝液を大量に加えてもよい。DAEPについては、反応
液として 1.0 M Tris/HCl (pH 8.5), 1 μl、5 MNaCl,
4 μl及び0.1 M MnCl2, 3 μl、蛍光基質(1mM)10
μl、並びに蒸留水72 μlから成る計90 μlの反応液
を用い、これに酵素液10 μlを加え、総量100 μlと
して、30℃でDAEPの場合15分間インキュベートし
た。蛍光強度は、10%SDS、100 μl、さらに0.1 M 酢
酸緩衝液 (pH 5.0)を加えて総量1.5 mlとして、蛍光光
度計(日立・F-2000形分光蛍光光度計)で測定した(測
定条件:励起波長380 nm、蛍光波長460 nm)。
た。活性測定に用いる蛍光基質の終濃度が0.1mMなの
で、当然、基質が完全分解されても、それ以上の蛍光物
質は遊離されない。そこで、検量線の上限に相当するNm
a濃度を0.1mMとして、1/10きざみで0.1μl位までの検量
線を蛍光光度計や蛍光プレートリーダーにインプットし
ておく。それに極めて近い結果が得られた場合は、反応
がプラトーに達していることを示しているので、酵素の
希釈率を高めるか、反応時間をもっと短くすることによ
り、酵素反応の一次反応領域で測定する必要性がある。
こうして作った検量線により、酵素の比活性を求めた。
(DNP)-Arg-Arg-NH 2 の合成 保護ペプチド樹脂の合成は、パラメチルベンズヒドリル
アミン樹脂(MBHA resin)を出発原料とし、第三ブチルオ
キシカルボニル(Boc)法を適用したABI430A自動ペプチド
合成機(アプライドバイオシステム社製)を用いて行っ
た。1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)エステルで
縮合する標準的なプロトコールに従い、0.5 mmolスケー
ルで、逐次アミノ酸誘導体を伸長した。用いたアミノ酸
側鎖保護基は以下に示すとおりである。アルギニンはト
シル(Tos)基、アスパラギン酸はシクロヘキシル(cHex)
基、セリンはベンジル(Bzl)基、チロシンは2-ブロモベ
ンジルオキシカルボニル(BrZ)基、ヒスチジンはベンジ
ルオキシメチル(Bom)基、リジンは2,4-ジニトロフェニ
ル(DNP)基で側鎖官能基が保護されている。得られたH-P
he-Arg(Tos)-His(Bom)-D-Asp(OcHex)-Ser(Bzl)-Gly-Tyr
(BrZ)-Lys(DNP)-Arg(Tos)-Arg(Tos)-MBHA樹脂に、N-メ
チルアントラニル酸(Nam)を縮合した。保護ペプチド樹
脂をパラクレゾール存在下に無水フッ化水素で-5℃、1
時間処理し、Nma基(N-メチルアントラニロイル基)及
びDNP基(2,4-ジニトロフェニル基)を除く全ての保護
基を除去することにより当該粗ペプチドを得た。粗ペプ
チドは、YMC Pack ODS (SH-363-5, 30 x 250 mm)カラム
を用いた19.8%アセトニトリル/0.1% TFAから39.8%アセ
トニトリル/0.1% TFAへの直線勾配による溶出(80分、流
速:20 ml/分)で精製した。 アミノ酸分析 (水解条件: 6 N HCl, 110℃, 22時間):
Asp(1) 1.00, Ser(1)0.91, Gly(1) 0.98, Tyr(1) 0.9
9, Phe(1) 0.99, His(1) 1.00, NH3(1) 1.25,Arg(3) 3.
06 ESI MS: 測定分子量 1619.55 (理論値: 1619.72)
ロフラン(100 ml)に溶かし、氷冷撹拌下にクロロギ酸イ
ソブチル2.71 ml(21.0 mmol)およびN-メチルモルフォリ
ン 2.31 ml(21.0 mmol)を加えた。10分間撹拌した後析
出した塩を濾去し、濾液にジアゾメタン/エーテル溶液
(200 ml)を加え、冷却下に1時間撹拌した。この反応液
に4.5 N塩酸/ジオキサン17.8 ml(80.0 mmol)を加え20分
間撹拌した後、水を加え洗浄した。有機層を飽和炭酸水
素ナトリウム水・飽和食塩水・10%クエン酸水・飽和食
塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウム上乾燥した。
有機層を減圧濃縮して油状物を得た。油状物に、4.5 N
塩酸/ジオキサン44 ml(0.20 mol)加え室温で30分間撹拌
した後、減圧濃縮した。残査にイソプロピルエーテルを
加え固化、5.40 g(95%)得た。 2.Boc-His(Bom)-OPac Boc-His(Bom)-OH 40 g (0.107 mol)のN,N-ジメチルホル
ムアミド(DMF)溶液(50ml)に、炭酸セシウム20.8 g (0.0
64 mol)水溶液を加え撹拌した。反応液を減圧濃縮し、
再びDMFに溶かし、氷冷撹拌下に臭化フェナシル(Pac-B
r)19.1 gを加えた。室温で4時間撹拌した後、反応液に
酢酸エチル(500 ml)と水(500 ml)を加え抽出した。酢酸
エチルを留去し、残査にヘキサンを加え固化した。47.3
g(74%)
(TFA, 70 ml)を加え、-5℃冷却化に10分間、室温で50分
間撹拌した。TFAを留去し、残査に4.5 N塩酸/ジオキサ
ン(9 ml, 40.5 mmol)を加え混ぜ合わせた後に、エーテ
ルより固化した。得られた塩酸塩およびBoc-Arg(Tos)-O
H 12.1 g (24.3 mmol)、HOBt(1-ヒドロキシベンゾトリ
アゾール) 2.87 g(21.2 mmol)をDMF(100 ml)に溶か
し、-10℃冷却撹拌下にEDC 3.89 ml(21.2 mmol)を加え
た。室温で2時間撹拌した後、反応液に酢酸エチル(500
ml)と水(500 ml)を加え抽出した。酢酸エチルを留去
し、残査にイソプロピルエーテルを加え固化した。8.0
g(49%) 4.Bz-Arg(Tos)-His(Bom)-OPac Boc-Arg(Tos)-His(Bom)-OPac 8.0 g(10.0 mmol)にTFA(6
0 ml)を加え、-5℃冷却化に10分間、室温で50分間撹拌
した。TFAを留去し、残査に4.5 N-HCl/ジオキサン(4.4
ml, 20.0 mmol)を加え混ぜ合わせた後に、エーテルよ
り固化した。得られた塩酸塩および安息香酸 1.46 g (1
2.0 mmol)、HOBt 1.61 g(12.0 mmol)をDMF(80 ml)に溶
かし、-10℃冷却撹拌下にEDC 2.19 ml(12.0 mmol)を加
えた。室温で4時間撹拌した後、反応液に酢酸エチル(50
0 ml)と水(500 ml)を加え抽出した。酢酸エチルを留去
し、残査にジエチルエーテルを加え固化した。固体を濾
取した。6.8 g(84.6%)
0 ml)に溶かし、45℃で加温しながら亜鉛末(15 g)を加
え1時間撹拌した。亜鉛末を除き、酢酸を留去した。残
査を、クロロホルム・メタノール混合溶媒(v/v = 4/1,
60 ml)に溶かし、1 N塩酸(17 ml)を加えた後減圧濃縮し
た。残査にジエチルエーテルを加え結晶化した。5.7 g
(98.3%) 6.Bz-Arg(Tos)-His(Bom)-D-Asp(OcHex)-CH2Cl Bz-Arg(Tos)-His(Bom)-OH 576 mg(0.835 mmol)、HCl・H
-D-Asp(OcHex)-CH2Cl237 mg(0.835 mmol)およびHOBt 12
5 mg(0.918 mmol)のDMF(5 ml)溶液を撹拌しながら、EDC
(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイ
ミド) 0.168 ml(0.918 mmol)を加えた。2時間後、反応
液に水を加え析出した個体を濾取した。水洗した後、減
圧乾燥し、811 mg(106%)得た。
5 mmol)およびパラクレゾール2.86 ml(27.7 mmol)をフ
ッ化水素(HF)反応管に入れ、無水HF(約26 ml)を導入し
た。反応管を氷冷し、1時間撹拌した。過剰のHFを留去
し、残査にジエチルエーテルを加え固化した。0.91 g得
た。この固体を水(30 ml)に溶かし、YMCPack ODS (SH-3
63-5, 30 x 250 mm)カラムに適用した。5%アセトニトリ
ル/0.1%TFAから30%アセトニトリル/0.1% TFAへの直線勾
配による溶出(60分、流速:20 ml/分)で精製した。当該
ペプチドを含む画分を集め、1 N塩酸(3 ml)を加え凍結
乾燥した。褐色粉末235 mg得た。 元素分析:C24H31N8O6Cl・2HClとしての計算値: C, 4
0.51; H, 5.86; N, 15.75%; 実測値:C, 40.36; H,
5.82; N, 15.87% アミノ酸分析 (水解条件: 6 N HCl, 150℃, 1時間):
Asp(0) 0.008, His(1)0.849, NH3 (1) 1.050, Arg (1)
1.000 ESI MS: m/z 563.3 ([M+H]+: 563.213), 282.1 ([M+
H]2+: 282.111)
ンドリアDAEPを用い、阻害剤としてBz-Arg-His-D-A
sp-CH2Clを用い、更に比較のためラクタシスチン(協和
メディックス株式会社、コードNo:OP18)とプロテアソ
ーム阻害剤のALLN(シグマアルドリッチジャパン株
式会社、コードNo:A6185)を用いたときのDAEPの
阻害活性を示す。阻害剤としての活性の測定条件は、ま
ず酵素液に阻害剤を加えて10μリットルとし、その後、
上記の方法によりDAEPの活性を測定した。この図か
らもわかるように本発明の阻害剤はDAEPの活性を有
効に阻害している。
索を示す図である。
る。
Claims (2)
- 【請求項1】 D−Asp−CH2Cl又はその誘導体
を含み、かつ少なくとも3つのアミノ酸を含むアミノ酸
配列から成るD−アスパラギン酸含有蛋白質分解酵素の
阻害剤。 - 【請求項2】 ベンゾイル−Arg−His−D−As
p−CH2Cl、ビオチニル−Arg−His−D−A
sp−CH2Cl又はビオチニル−Gly−Gly-D
−Asp−CH2Clから成る請求項1に記載の阻害
剤。
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