JP2002286710A - 食品の渋味評価方法及び渋味評価装置 - Google Patents
食品の渋味評価方法及び渋味評価装置Info
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Abstract
価するに際して、渋味の定量的な評価を十分に精度よく
且つ簡便に行うことが可能な装置及び方法を提供するこ
と。 【解決手段】 本発明の食品の渋味評価方法は、食品の
渋味成分とペプチドとを反応せしめて複合体を生成させ
るステップと、複合体の生成量に対応する所定の測定値
を得るステップと、予め得られている渋味の強度と所定
の測定値との相関に基づいて、得られた測定値から渋味
の強度を求めるステップとを含むことを特徴とするもの
である。
Description
置及び渋味評価方法に関するものであり、詳しくは、ビ
ール、ワイン、緑茶などの食品の渋味を定量的に評価す
る上で有用な方法及び装置に関するものである。
るものであり、従来より食品の味を評価する際には官能
評価試験がなされるのが一般的である。官能評価試験と
は、心理学(精神物理学)の分野で知られているカテゴ
リースケール、マグニチュードスケール、ラベルドマグ
ニチュードスケールなどの感覚尺度を用いて所定の評価
項目について評価を行うものである(Green, B. et a
l., Chemical Senses, 18,683(1993))。例えばビール
の場合、試作した数種類のビールを被検者が試飲して、
被検者の味覚に基づいて「苦味の強度や残存性」、「渋
味の強度や残存性」、「濃醇さ(コク)」、「キレ」な
どの味覚項目毎にその味が評価される。
ル、ワイン、緑茶などのおいしさにとって非常に重要な
ファクターであり、近年嗜好の多様化が著しいこれらの
食品の開発において、それぞれの嗜好に対応した開発す
るためには渋味を定量的に評価することが望ましい。
価試験における渋味の評価は被検者の味覚によってなさ
れるものであり、渋味という言葉の解釈にも個人差があ
る。したがって、食品の渋味を定量的に評価する場合に
は、被検者数を増加させたり各被検者の試験回数を増加
させるなど多くの時間と労力を要した。
みてなされたものであり、ビール、ワイン、緑茶などの
食品の渋味を評価するに際して、渋味の定量的な評価を
十分に精度よく且つ簡便に行うことが可能な方法及び装
置を提供することを目的とする。
を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、食品の渋味成分と
ペプチドとを反応せしめて複合体を生成させ、その複合
体の生成量や、複合体の脂質膜への吸着量に対応する所
定の測定値を得、更に、予め得られている渋味の強度と
生成量又は吸着量に対応する所定の測定値との相関に基
づいて、得られた測定値から渋味の強度を求めることに
よって、渋味の定量的な評価を十分に精度よく且つ簡便
に行うことが可能となることを見出し、本発明を完成す
るに至った。
渋味成分とペプチドとを反応せしめて複合体を生成させ
る複合体生成工程と、前記複合体の生成量に対応する所
定の測定値を得る複合体の生成量の測定工程と、予め得
られている渋味の強度と所定の測定値との相関に基づい
て、前記複合体の生成量の測定工程で得られた測定値か
ら渋味の強度を求める渋味評価工程とを含むことを特徴
とする食品の渋味評価方法である。
分とペプチドとを反応せしめて複合体を生成させる複合
体生成工程と、脂質膜センサーを用いて、前記複合体の
脂質膜への吸着量に対応する所定の測定値を得る複合体
の吸着量測定工程と、予め得られている渋味の強度と所
定の測定値との相関に基づいて、前記複合体の吸着量測
定工程で得られた測定値から渋味の強度を求める渋味評
価工程とを含むことを特徴とする食品の渋味評価方法で
ある。
成分とペプチドとを反応せしめて得られる複合体の生成
量を測定するためのセンサーと、前記センサーと電気的
に接続されており、予め得られている渋味の強度と前記
複合体の生成量との相関に基づいて、前記センサーによ
り得られた測定値から渋味の強度を求めるための情報処
理手段とを備えることを特徴とする食品の渋味評価装置
である。
味成分とペプチドとを反応せしめて得られる複合体の脂
質膜への吸着量に対応する所定の測定値を得るための脂
質膜センサーと、前記脂質膜センサーと電気的に接続さ
れており、予め得られている渋味の強度と所定の測定値
との相関に基づいて、前記脂質膜センサーにより得られ
た測定値から渋味の強度を求めるための情報処理手段と
を備えることを特徴とする食品の味評価装置である。
チドとを反応させたときに生成する複合体の生成量、或
いはその複合体の脂質膜への吸着量に対応する所定の測
定値が、簡便に且つ容易に、更に高水準の再現性をもっ
て得られる。更には、情報処理手段によって、予め得ら
れている渋味の強度と複合体の生成量又は吸着量に対応
する所定の測定値との相関に基づいて、得られた測定値
から渋味の強度がオンラインで求められる。したがっ
て、本発明の食品の渋味評価方法及び渋味評価装置によ
って、渋味の定量的な評価を十分に精度よく且つ簡便に
行うことが可能となる。
味成分とペプチドとの複合体の生成量又は当該複合体の
脂質膜への吸着量に対応する所定の測定値が用いられる
が、これらの測定値を用いることによって食品の渋味を
十分に精度よく定量的に評価できる理由について、本発
明者らは以下のように推察する。
渋味成分がペプチドと反応して複合体を形成し、その複
合体が舌の脂質膜に吸着したときの触刺激によって感知
されるものであり、味刺激によって感知される甘味や苦
味などとはその感知機構が異なるものと考えられる。そ
して、本発明においては、上記の渋味の感知機構におけ
る触刺激と相関する複合体の生成量又は所定の測定値が
十分に精度よく得られるので、食品の渋味を十分に精度
よく定量的に評価できるものと本発明者らは推察する。
ワイン及び緑茶からなる群より選ばれる少なくとも1種
であることが好ましい。
タンニン酸、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキ
ンガレート、ケルセチン、アントシアニジン及びポリフ
ェノン100からなる群より選ばれる少なくとも1種で
あることが好ましい。
が、マウス・プロリン・リッチ・ペプチド、ポリプロリ
ン、ゼラチン及びアルブミンからなる群より選ばれる少
なくとも1種であることが好ましい。
つ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
る。
程は、食品の渋味成分とペプチドとの反応によって複合
体を生成させるものである。
に制限されないが、おいしさを評価する上で渋味が重要
なファクターであるビール、ワイン、緑茶などの食品に
ついて渋味を評価する上で、本発明の渋味評価方法は非
常に有用である。
ばタンニン性渋味成分が挙げられる。かかるタンニン性
渋味成分としては、具体的には、タンニン酸、クエン
酸、リンゴ酸などの有機酸類、カテキン、エピカテキ
ン、エピガロカテキンガレート、ケルセチン、アントシ
アニジン、ポリフェノン100などポリフェノール類が
挙げられる。
上記の渋味成分と複合体を形成し得るものであれば特に
制限されないが、下記配列表の配列番号1に示す配列を
有するペプチド(以下、「プロリン・リッチ・ペプチ
ド」という)などのプロリン含有ペプチド、ゼラチン、
ポリ−L−プロリン又は牛血清アルブミンを用いると、
後述する複合体の生成量の測定工程において、複合体の
脂質膜への吸着量に対応する所定の測定値をより高水準
の精度をもって得ることができる傾向にあるので好まし
い。又、本発明にかかるペプチドの分子量は特に制限さ
れないが、ペプチドの重量平均分子量は数千〜数万の範
囲内であることが好ましい。
成分とペプチドとを反応させる際の両者の使用量は特に
制限されないが、ペプチドの使用量は食品の渋味成分1
00重量部に対して100〜15000重量部であるこ
とが好ましい。又、反応条件は渋味成分やペプチドの種
類や使用量に応じて適宜選択されるが、反応温度として
は20〜25℃が好ましく、反応時間としては0.5〜
10分が好ましい。
て、センサーを用いて、上記複合体生成工程で生成した
複合体の生成量が測定される。
いられるセンサーとしては、複合体の生成量に対応する
所定の測定値が得られるものであれば特に制限されない
が、例えば水晶発振子の電極にペプチドが固定化された
センサーを用いることができる。このようなセンサーを
用いると、電極に固定化されたペプチドと食品の渋味成
分とが反応して複合体を形成するときの、当該複合体の
生成量に対応する振動数変化量が十分に高い精度で測定
される。
ペプチドが電極に固定化されたセンサーを用いる場合、
センサーを食品にそのまま浸漬して測定を行ってもよ
く、予め食品の渋味成分を含有する溶液を調製して、そ
の溶液にセンサーを浸漬して測定を行ってもよい。他
方、ペプチドが電極に固定化されていないセンサーを用
いる場合には、食品にペプチドを添加して、その混合物
にセンサーを浸漬して測定を行ってもよく、予め食品の
渋味成分とペプチドとを含有する溶液を調製して、その
溶液にセンサーを浸漬して測定を行ってもよい。溶液を
調製する際に用いられる溶媒としては、具体的には、
水、緩衝液などが挙げられるが、中でも水又は緩衝液を
用いることが好ましい。溶媒として水又は緩衝液を用い
ると、脂質膜センサーの寿命が長くなる傾向にある。
又、これらの溶媒を用い、溶液のpHを所定の範囲内に
設定することによって複合体の生成量又は複合体の脂質
膜への吸着量に対応する所定の測定値がより高精度で得
られる傾向にある。
定条件は特に制限されないが、温度条件を一定にして測
定すると、渋味成分とペプチドとの複合体の脂質膜への
吸着量の温度依存性による影響が排除される傾向にある
ので好ましい。温度条件を一定に保つ方法としては、例
えば、食品の渋味成分とペプチドとを含有する溶液を所
定の容器に収容し、その容器を一定の温度に保持された
水浴中に保持しながら、センサーを溶液に浸漬して測定
を行う方法が挙げられる。
れている渋味の強度と所定の測定値との相関に基づい
て、上記複合体の生成量の測定工程において得られた所
定の測定値から食品の渋味の強度が求められる。
関は、例えば、食品の渋味について、心理学(精神物理
学)の分野で広く用いられているカテゴリースケール、
マグニチュードエスティメーション、ラベルドマグニチ
ュードスケールなどの感覚尺度を用いて官能評価試験を
行うことによって好適に得ることができる。中でも、感
覚尺度としてマグニチュードエスティメーションを用い
て官能評価試験を行うと、得られた結果をそのまま強度
として統計的に処理することができる傾向にあるので好
ましい。
ョンの一例を図3に示す。図3に示すマグニチュードエ
スティメーションにおいては、最大の強度である「とて
も強い」が5.0、最小の強度である「全く感じない」
が0、各強度の差が0.5となっている。このような感
覚尺度を用い、複合体の生成量に対応する所定の測定値
が既知の食品について被験者がその味覚に基づいて0〜
5.0のいずれかの評点を与えることによって、食品の
渋味と所定の測定値との相関が得られる。
は、後述する本発明の第1の装置を用いて好適に実施す
ることができる。
形態を示す概略構成図である。図1に示す装置はセンサ
ー1及び情報処理手段2を備えている。センサー1は、
表面にペプチドが固定化された電極3及び水晶板4によ
り構成される水晶発振子5と、水晶発振子5と電気的に
接続された振動数計測手段6とを備えており、容器7内
に収容された溶液8に水晶発振子5が浸漬するように配
置されている。そして、シリンダ10に収容された渋味
成分を含有する溶液11を溶液8に添加したときに、振
動数計測手段6から水晶発振子5に制御信号が送られる
と共に、水晶発振子5から振動数計測手段6に振動数変
化に関するデータ信号が送られることによって、食品の
渋味成分と電極3に固定化されたペプチドとの反応によ
り生成する複合体の生成量に対応する振動数変化量を測
定することが可能となっている。振動数計測手段6には
情報処理手段2が電気的に接続されており、振動数計測
手段6から情報処理手段2に振動数変化量に関するデー
タ信号が送られる。情報処理手段2には、予め得られて
いる渋味の強度と振動数変化量との相関が記憶されてお
り、その相関に基づいてセンサー1によって得られた測
定値から渋味の強度を求めることが可能となっている。
恒温槽12中に容器7を配置することによって所望の温
度条件下で行うことができる。また、容器7内に攪拌子
13を配置し、渋味成分を含む溶液11を溶液8に添加
するときに攪拌手段14により攪拌子を回転させること
によって、溶液8と溶液11との混合溶液を十分に均一
にすることができる。
としては、食品の渋味成分とペプチドとの複合体の生成
量に対応する所定の測定値を得ることが可能であれば特
に制限されないが、図1に示すセンサーのようにペプチ
ドが電極に固定化された周波数発振子(より好ましくは
水晶発振子)を備えるセンサーを用いると、複合体の生
成量に対応する振動数変化量がより高い精度で測定され
る傾向にあるので好ましい。
極にペプチドを固定化する方法の一例を示す説明図であ
る。図2においては、先ず、塩酸等を用いて、電極3の
表面に水酸基が配置されるように電極6表面を活性化
し、電極3表面の水酸基と3−アミノプロピルトリメト
キシシランとを反応させて電極3表面にアミノ基を導入
する。このようにしてアミノ基が導入された電極3表面
にグルタルアルデヒドを含有するリン酸緩衝液(好まし
くはpH6.5〜7.5、より好ましくはpH7.0)
を配置し、更に加熱溶解したゼラチンをリン酸緩衝液に
加える。その後、電極をパラフィルムなどで覆って密封
し、所定の時間整地することによって、電極にゼラチン
を固定化することができる。このようにして得られた電
極をセンサーに装着することによって、電極にゼラチン
が固定化されたセンサー(以下、「ゼラチン・センサ
ー」という)を得ることができる。又、図2におけるゼ
ラチンの代わりにL−ポリプロリンを用いることによっ
て、電極にL−ポリプロリンが固定化されたセンサー
(以下、「ポリプロリン・センサー」という)を得るこ
ともできる。
び第1の装置においては、食品の渋味成分とペプチドと
の複合体の生成量に対応する所定の測定値が十分に精度
よく得られる。そして、予め得られている食品の渋味強
度と所定の測定値との相関に基づいて、得られた測定値
から食品の渋味強度を情報処理手段によってオンライン
で求めるようにすることによって、食品の渋味強度が迅
速且つ簡便に、更に高水準の再現性をもって測定され
る。
る。
程は、上記第1の方法と同様に、食品の渋味成分とペプ
チドとを反応せしめて複合体を生成させるものである。
本発明の第2の方法にかかる食品及びその渋味成分、並
びにペプチドとしては、それぞれ上記第1の方法の説明
において例示された食品、渋味成分、ペプチドが上げら
れる。
て、脂質膜センサーを用いて、上記複合体生成工程で生
成した複合体の脂質膜への吸着量に対応する所定の測定
値が得られる。
いられる脂質膜センサーとしては、複合体の脂質膜への
吸着量に対応する所定の測定値を得ることが可能であれ
ば特に制限されず、脂質膜で被覆された水晶発振子など
の周波数発振子を備えるセンサーなどを用いることがで
きる。これらの脂質膜センサーの中でも、脂質膜で被覆
された周波数発振子(より好ましくは水晶発振子)を備
える脂質膜センサーを用いると、複合体の脂質膜への吸
着又は脱離に伴う振動数変化量が測定されるので、水素
イオンや水酸イオンなどの脂質膜に吸着しない物質の影
響を受けずにより高い精度で複合体の脂質膜への吸着量
に対応する所定の測定値が得られる傾向にあるので好ま
しい。
種類についても特に制限されず、具体的には、脂肪酸類
又はリン脂質類からなる脂質膜が挙げられるが、中で
も、ジオクタデシルジメチルアンモニウムポリスチレン
スルホン酸又はジパルミトイルホスファチジルエタノー
ルアミンからなる脂質膜を用いると、複合体の脂質膜へ
の吸着量に対応する所定の測定値が精度よく得られ、よ
り高水準の再現性をもって食品の渋味を定量的に評価す
ることができる傾向にあるので好ましい。
は、複合体を含有する溶液に脂質膜センサーを食品又は
食品を含有する溶液に浸漬して、複合体の脂質膜への吸
着量に対応する所定の測定値を得ることができる。ここ
で、食品を含有する溶液の溶媒としては、水、緩衝液な
どが挙げられるが、水又は緩衝液を用いることが好まし
い。又、複合体を含有する溶液のpHが3.5〜5.0
の範囲内であると、実際の食品のpHに近い状態を再現
することができ、当該所定の測定値がより高い精度で得
られる傾向にあるので好ましい。
用いる場合、ペプチドと溶媒との組み合わせは食品又は
その食品中に含まれる渋味成分に応じて適宜選択するこ
とが好ましい。例えば、食品がビールである場合にはゼ
ラチンと酢酸緩衝液との組み合わせ又はゼラチンと水と
の組み合わせが好ましく;食品がワインである場合には
アルブミンと酢酸緩衝液との組み合わせが好ましく;食
品が緑茶である場合にはアルブミンと水又は酢酸緩衝液
との組み合わせが好ましい。ペプチドと溶媒とを上記の
組み合わせで用いると、食品の渋味強度がより高い精度
で得られる傾向にある。
定条件は特に制限されないが、温度条件を一定にして測
定すると、渋味成分とペプチドとの複合体の脂質膜への
吸着量の温度依存性による影響が排除される傾向にある
ので好ましい。温度条件を一定に保つ方法としては、例
えば、食品の渋味成分とペプチドとを含有する溶液を所
定の容器に収容し、その容器を一定の温度に保持された
水浴中に保持しながら、脂質膜センサーを溶液に浸漬し
て測定を行う方法が挙げられる。
れている渋味の強度と所定の測定値との相関に基づい
て、上記複合体の吸着量の測定工程において得られた所
定の測定値から食品の渋味の強度が求められる。
関は、本発明の第1の方法と同様に、食品の渋味につい
てカテゴリースケール、マグニチュードエスティメーシ
ョン、ラベルドマグニチュードスケールなどの感覚尺度
を用いて官能評価試験を行うことによって好適に得るこ
とができる。中でも、感覚尺度としてマグニチュードエ
スティメーションを用いて官能評価試験を行うと、得ら
れた結果をそのまま強度として統計的に処理することが
できる傾向にあるので好ましい。
は、後述する本発明の第2の装置を用いて好適に実施す
ることができる。
形態を示す概略構成図である。図3に示す装置は、セン
サー1を構成する水晶発振子5の電極3が脂質膜9で被
覆されている点で図1の装置と相違する。そして、容器
7内に収容された食品の渋味成分とペプチドとを含有す
る溶液8’に水晶発振子5が浸漬するように配置され
て、振動数計測手段6から水晶発振子5に制御信号が送
られると共に、水晶発振子5から振動数計測手段6に振
動数変化に関するデータ信号が送られることによって、
食品の渋味成分とペプチドとの複合体の脂質膜9への吸
着量に対応する振動数変化量を測定することが可能とな
っている。振動数計測手段6には情報処理手段2が電気
的に接続されており、振動数計測手段6から情報処理手
段2に振動数変化量に関するデータ信号が送られる。情
報処理手段2には、予め得られている渋味の強度と振動
数変化量との相関が記憶されており、その相関に基づい
てセンサー1によって得られた測定値から渋味の強度を
求めることが可能となっている。
び第2の装置においては、食品の渋味成分とペプチドと
の複合体の脂質膜への吸着量に対応する所定の測定値が
十分に精度よく得られる。そして、予め得られている食
品の渋味強度と所定の測定値との相関に基づいて、得ら
れた測定値から食品の渋味強度を情報処理手段によって
オンラインで求めるようにすることによって、食品の渋
味強度が迅速且つ簡便に、更に高水準の再現性をもって
測定される。
更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら
限定されるものではない。
ず、水晶発振子を備えるセンサー(Fragrance Sensor S
F-105、相互薬工製)の金電極(直径:5mm)を1.
2N水酸化ナトリウム水溶液20mlに20分間浸漬し
た後、電極表面を蒸留水500mlで洗浄し、1.2N
希塩酸に2分間浸漬した。電極表面を蒸留水で洗浄し、
12N濃塩酸に5分間浸漬した後、電極を蒸留水で十分
に洗浄し、100℃で20分乾燥させて電極表面に水酸
基が配置された水晶発振子を得た。
ミノプロピルトリエトキシシラン/アセトン溶液0.3
mlに浸漬し、室温で20時間放置して電極表面にアミ
ノ基を導入した。次いで、水晶発振子にアセトン20m
l中で超音波洗浄処理を施し、70℃で90分乾燥させ
た。
2.5%グルタルアルデヒド/20mMリン酸緩衝液
(pH7.0)30μlを配置して室温で2時間静置し
た。その電極表面を20mMリン酸緩衝液20ml、蒸
留水20mlで順次洗浄した後、水相測定用センサーに
装着した。
h Chemical Company, Inc.製)を含有する溶液(濃度:
0.5mg/ml)50μlを電極表面に配置し、セン
サー素子測定部をパラフィルムで覆って密封し、室温で
一夜間反応させた後、電極表面を蒸留水で洗浄して、ゼ
ラチン2μgが電極に固定化されたゼラチン・センサー
を得た。
ーを用いて、図1に示す構成を有する渋味評価装置を作
製した。
関)得られた渋味評価装置を用いて、以下の手順に従っ
てカテキンとゼラチンとの複合体の生成量に対応する振
動数変化量を測定した。
定部を蒸留水100mlに30秒間浸漬して振動数が安
定したことを確認した。次に、この蒸留水にカテキン/
エタノール溶液0.1mlを添加し、添加4分後までの
振動数変化量を測定した。上記の測定を、カテキン濃度
の異なる2種類のカテキン/エタノール溶液を用いて行
い、蒸留水への添加直後のカテキン濃度を2ppm又は
6ppmとした。この測定により得られた、カテキン/
エタノール溶液添加後の時間と振動数変化量との相関を
図5に示す。
ケルセチン/エタノール溶液、エピカテキン/エタノー
ル溶液を用い、蒸留水への添加後の渋味成分の濃度が2
0μMとなるようにしたこと以外は上記と同様にして振
動数変化量を測定した。更に、比較試験として、蒸留
水、エタノール、カフェイン(苦味成分)/エタノール
溶液、ショ糖(甘味成分)水溶液、NaCl(塩味成
分)水溶液、グルタミン酸(酸味、旨味成分)水溶液の
それぞれを用いて同様の試験を行った。各溶液を添加し
て4分経過したときの振動数変化量を図6に示す。
備える渋味評価装置を用いた場合、カテキン濃度の増加
に伴い振動数変化量が大きくなり、カテキンとゼラチン
との複合体の生成量に対応する振動数変化量が十分に精
度よく測定されていることが確認された。又、図5、6
に示したように、カテキン、ケルセチン、エピカテキン
などの渋味成分を含有する溶液を用いた場合には振動数
の顕著な変化が認められたが、渋味成分を含有しない溶
液を用いた場合には振動数の変化は殆ど認められなかっ
た。
センサーを備える渋味評価装置を用い、2種類のビール
A、Bの各0.5mlを蒸留水100mlに添加したと
きの振動数変化量の測定を行った。得られた結果を図7
に示す。
を行ったところ、渋味の強度は強い順にA、Bであると
いう結果が得られ、図7に示す振動数変化量と渋味の強
度とが十分に良好な相関を示すことが確認された。
センサーを備える渋味評価装置を用い、上記振動数変化
量の測定1と同様にして、ビールC(ポリフェノール含
有量:173mg/l、アントシアニジン含有量:65
mg/l)と、ビールCにPVPP処理を施してアント
シアニジンなどのポリフェノール類の含有量を低減した
ビールD(ポリフェノン100含有量:76mg/l、
アントシアニジン含有量:14mg/l)について振動
数変化量の測定を行った。得られた結果を図8に示す。
なお、PVPP処理とは、ポリビニルポリピロリドンを
用いてタンニン性渋味成分などのポリフェノール類を吸
着除去する処理である。
を行ったところ、渋味の強度は強い順にC、Dであると
いう結果が得られ、図8に示す振動数変化量と渋味の強
度とが十分に良好な相関を示すことが確認された。)実施例2 (脂質膜センサーを備える渋味評価装置の作製)水晶発
振子を備えるセンサー(Fragrance Sensor SF-105、相
互薬工製)の電極をジオクタデシルアンモニウムポリス
チレンスルホン酸からなる脂質膜で被覆して脂質膜セン
サーを得た。この脂質膜センサーを用いて、図4に示す
構成を有する渋味評価装置を作製した。
量との相関)得られた渋味評価装置を用いて、以下の手
順に従ってプロリン・リッチ・ペプチドとタンニン酸と
の複合体の脂質膜への吸着量に対応する振動数変化量を
測定した。
ド(サワデー・テクノロジー製)を50、100、15
0mg/lとなるように溶解させた25mM酢酸緩衝液
(pH4.3)に脂質膜センサーのセンサー素子測定部
を浸漬して振動数が安定したことを確認した。次に、こ
のマウス・プロリン・リッチ・ペプチド/酢酸緩衝液に
タンニン酸0.1mlを添加し、添加5分後までの振動
数変化量を測定した。上記の測定において、タンニン酸
添加直後の緩衝液中のタンニン酸濃度は8mg/lであ
る。この測定により得られた、タンニン酸添加後の時間
と振動数変化量との相関を図9に示す。
の代わりにゼラチン(Aldrich Chemical Company, Inc.
製)又は牛血清アルブミン(和光純薬工業社製)を用
い、タンニン酸(緩衝液への添加後の濃度:8mg/
l、以下、単に「緩衝液中濃度」という)、ポリフェノ
ン100(緩衝液中濃度:50mg/l)を用いたこと
以外は上記と同様にして振動数変化量を測定した。更
に、比較試験として、ショ糖(甘味成分、緩衝液中濃
度:1.7mM)、キニーネ硫酸塩(苦味成分、緩衝液
中濃度:0.27μM)、酒石酸(酸味成分、緩衝液中
濃度:14μM)、NaCl(塩味成分、緩衝液中濃
度:1.1mM)、グルタミン酸(酸味、旨味成分、緩
衝液中濃度:30μM)を用いて同様の測定を行った。
ゼラチンを用い、各成分を添加して4分経過したときの
振動数変化量を図10に示す。又、牛血清アルブミンを
用い、各成分を添加して4分経過したときの振動数変化
量を図11に示す。
える渋味評価装置を用いた場合、タンニン酸濃度の増加
に伴い振動数変化量が大きくなり、タンニン酸とマウス
・プロリン・リッチ・ペプチドとの複合体の脂質膜への
吸着量に対応する振動数変化量が十分に精度よく測定さ
れていることが確認された。又、図9〜11に示したよ
うに、タンニン酸、ポリフェノン100などの渋味成分
の場合には振動数の顕著な変化が認められたが、渋味成
分を含有しない溶液を用いた場合には振動数の変化は殆
ど認められなかった。
関)脂質膜センサーを備える渋味評価装置を用いた上記
振動数変化量の測定1において、10mg/lゼラチン
(Aldrich Chemical Company, Inc.製)/25mM酢酸
緩衝液中のタンニン酸濃度を変化させたときの振動数変
化量を測定して、タンニン酸濃度と振動数変化量との相
関を求めた。得られた結果を図12に示す。図12に示
したように、タンニン酸濃度と振動数変化量との間には
十分に良好な相関が認められた。
又、ゼラチン(Aldrich Chemical Company, Inc.製)、
ポリ−L−プロリン(SIGMA製、重量平均分子量:50
00)、牛血清アルブミン(和光純薬工業社製)を用
い、酢酸緩衝液のpHを変化させたこと以外は上記と同
様にして振動数変化量を測定し、酢酸緩衝液のpHと振
動数変化量との相関を求めた。ゼラチンを用いて得られ
た結果を図13、ポリ−L−プロリンを用いて得られた
結果を図14、牛血清アルブミンを用いて得られた結果
を図15にそれぞれ示す。なお、図13〜15にはペプ
チド非存在下でタンニン酸のみを吸着させたときの結果
を併せて示した。
用いた場合にはpH4.0及びpH5.5〜6.5、ポ
リ−L−プロリンを用いた場合にはpH4.0〜4.
5、牛血清アルブミンを用いた場合にはpH4.3〜
5.0において非常に大きい振動数変化量が認められ
た。
える渋味評価装置を用い、2種類のビールE、Fの各5
mlを10mg/lゼラチン/25mM酢酸緩衝液(p
H4.5)95mlに添加したときの振動数変化量の測
定を行った。得られた結果を図16に示す。
を行ったところ、渋味の強度は強い順にE、Fであると
いう結果が得られ、図16に示す振動数変化量と渋味の
強度とが十分に良好な相関を示すことが確認された。
mg/lゼラチン水溶液95mlを用いたこと以外が上
記と同様にして、ビールE、Fをゼラチン水溶液に添加
したときの振動数変化量の測定を行った。得られた結果
を図17に示す。図17に示したように、ゼラチン水溶
液を用いた場合にも、官能評価試験で得られた渋味の強
度と振動数変化量とが十分に良好な相関を示した。
える渋味評価装置を用い、2種類のワインG、Hの各
0.1mlを10mg/l牛血清アルブミン水溶液10
0mlに添加したときの振動数変化量の測定を行った。
得られた結果を図18に示す。
を行ったところ、図19に示すように渋味の強度は強い
順にG、Hであるという結果が得られ、図18に示す振
動数変化量と渋味の強度とが十分に良好な相関を示すこ
とが確認された。
る渋味評価装置を用い、2種類の緑茶I、Jの各5ml
を10mg/l牛血清アルブミン/25mM酢酸緩衝液
(pH4.5)95mlに添加したときの振動数変化量
の測定を行った。得られた結果を図20に示す。
行ったところ、図21渋味の強度は強い順にJ、Kであ
るという結果が得られ、図20に示す振動数変化量と渋
味の強度とが十分に良好な相関を示すことが確認され
た。
食品の渋味成分とペプチドとを反応させたときに生成す
る複合体の生成量、或いはその複合体の脂質膜への吸着
量に対応する所定の測定値が、簡便に且つ容易に、更に
高水準の再現性をもって得られる。更には、情報処理手
段によって、予め得られている渋味の強度と複合体の生
成量又は吸着量に対応する所定の測定値との相関に基づ
いて、得られた測定値から渋味の強度がオンラインで求
められる。したがって、本発明の食品の渋味評価方法及
び渋味評価装置によって、渋味の定量的な評価を十分に
精度よく且つ簡便に行うことが可能となる。
概略構成図である。
法の一例を示す説明図である。
ニチュードエスティメーションの一例を示す説明図であ
る。
概略構成図である。
液添加後の時間と振動数変化量との相関を示すグラフで
ある。
きの振動数変化量を示すグラフである。
間と振動数変化量との相関を示すグラフである。
間と振動数変化量との相関を示すグラフである。
と振動数変化量との相関を示すグラフである。
覚成分を添加して4分経過したときの振動数変化量を示
すグラフである。
い、各成分を添加して4分経過したときの振動数変化量
示すグラフである。
数変化量との相関を示すグラフである。
の酢酸緩衝液のpHと振動数変化量との相関を示すグラ
フである。
用いたときの酢酸緩衝液のpHと振動数変化量との相関
を示すグラフである。
いたときの酢酸緩衝液のpHと振動数変化量との相関を
示すグラフである。
ン/酢酸緩衝液に添加したときの時間と振動数変化量と
の相関を示すグラフである。
ン水溶液に添加したときの時間と振動数変化量との相関
を示すグラフである。
アルブミン水溶液に添加したときの時間と振動数変化量
との相関を示すグラフである。
度についての官能評価試験結果を表すグラフである。
ルブミン/酢酸緩衝液に添加したときの時間と振動数変
化量との相関を示すグラフである。
についての官能評価試験結果を表すグラフである。
板、5…水晶発振子、6…振動数計測手段、7…容器、
8、8’…溶液、9…脂質膜、10…シリンダ、11…
渋味成分を含む溶液、12…恒温槽、13…攪拌子、1
4…攪拌手段。
Claims (10)
- 【請求項1】 食品の渋味成分とペプチドとを反応せし
めて複合体を生成させる複合体生成工程と、 前記複合体の生成量に対応する所定の測定値を得る複合
体の生成量の測定工程と、 予め得られている渋味の強度と所定の測定値との相関に
基づいて、前記複合体の生成量の測定工程で得られた測
定値から渋味の強度を求める渋味評価工程とを含むこと
を特徴とする食品の渋味評価方法。 - 【請求項2】 食品の渋味成分とペプチドとを反応せし
めて複合体を生成させる複合体生成工程と、 脂質膜センサーを用いて、前記複合体の脂質膜への吸着
量に対応する所定の測定値を得る複合体の吸着量の測定
工程と、 予め得られている渋味の強度と所定の測定値との相関に
基づいて、前記複合体の吸着量測定工程で得られた測定
値から渋味の強度を求める渋味評価工程とを含むことを
特徴とする食品の渋味評価方法。 - 【請求項3】 前記食品が、ビール、ワイン及び緑茶か
らなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴
とする、請求項1又は2に記載の食品の渋味評価方法。 - 【請求項4】 前記渋味成分が、タンニン酸、カテキ
ン、エピカテキン、エピガロカテキンガレート、ケルセ
チン、アントシアニジン及びポリフェノン100からな
る群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とす
る、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の食品の
渋味評価方法。 - 【請求項5】 前記ペプチドが、プロリン含有ペプチ
ド、ポリプロリン、ゼラチン及びアルブミンからなる群
より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の食品の渋味
評価方法。 - 【請求項6】 食品の渋味成分とペプチドとを反応せし
めて得られる複合体の生成量に対応する所定の測定値を
得るためのセンサーと、 前記センサーと電気的に接続されており、予め得られて
いる渋味の強度と所定の測定値との相関に基づいて、前
記センサーにより得られた測定値から渋味の強度を求め
るための情報処理手段とを備えることを特徴とする食品
の渋味評価装置。 - 【請求項7】 食品の渋味成分とペプチドとを反応せし
めて得られる複合体の脂質膜への吸着量に対応する所定
の測定値を得るための脂質膜センサーと、 前記脂質膜センサーと電気的に接続されており、予め得
られている渋味の強度と所定の測定値との相関に基づい
て、前記脂質膜センサーにより得られた測定値から渋味
の強度を求めるための情報処理手段とを備えることを特
徴とする食品の渋味評価装置。 - 【請求項8】 前記食品が、ビール、ワイン及び緑茶か
らなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴
とする、請求項6又は7に記載の食品の渋味評価装置。 - 【請求項9】 前記渋味成分が、タンニン酸、カテキ
ン、エピカテキン、エピガロカテキンガレート、ケルセ
チン、アントシアニジン及びポリフェノン100からな
る群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とす
る、請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載の食品の
渋味評価装置。 - 【請求項10】 前記ペプチドが、プロリン含有ペプチ
ド、ポリプロリン、ゼラチン及びアルブミンからなる群
より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、
請求項6〜9のうちのいずれか一項に記載の食品の渋味
評価装置。
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