JP2002266914A - ブレーキバンド - Google Patents

ブレーキバンド

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JP2002266914A
JP2002266914A JP2001070003A JP2001070003A JP2002266914A JP 2002266914 A JP2002266914 A JP 2002266914A JP 2001070003 A JP2001070003 A JP 2001070003A JP 2001070003 A JP2001070003 A JP 2001070003A JP 2002266914 A JP2002266914 A JP 2002266914A
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oil
lining
oil groove
clutch drum
cylindrical clutch
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JP2001070003A
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Hiroyuki Ushio
広幸 牛尾
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Original Assignee
Exedy Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ライニングの油溝形状を改良することによ
り、食い付き性を低下させることなく、焼け耐久性を向
上することにある。 【解決手段】 ブレーキバンド10は、円筒状クラッチ
ドラムの外側面を締め付けるためのストラップ12と、
円筒状クラッチドラムの外側面に圧接可能なライニング
13と、ストラップ12の両端に固定される一対のブラ
ケット14a,14bとを有している。ライニング13
には、円筒状クラッチドラムの軸に直交する方向に延び
る長孔形状の第1油溝13aと、円筒状クラッチドラム
の軸に傾斜する方向に延びる長孔形状の第2油溝13b
と、ストラップ12の油孔12cに対応する油孔13c
とが形成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ブレーキバンド、
特に、自動変速機の円筒状クラッチドラムを制動又は解
放するためのブレーキバンドに関する。
【0002】
【従来の技術】自動変速機においては、自動で変速を行
うために、複数のクラッチ装置やブレーキバンドが設け
られている。また、これらのクラッチ装置やブレーキバ
ンドは、湿式で、すなわち自動変速機の作動油中で使用
される。
【0003】ブレーキバンドは、クラッチ装置を構成す
る円筒状クラッチドラムの外周に設けられ、帯状の部材
をほぼ円形に巻いて形成されたストラップと、このスト
ラップの内側面に固定されたライニングと、ストラップ
の両端部に固定された一対のブラケットを有している。
【0004】このようなブレーキバンド装置では、一対
のブラケットを互いに近づけるように移動させること
で、ライニングが円筒状クラッチドラム外側面に強く巻
き付けられ、円筒状クラッチドラムの回転を制動する。
【0005】そして、円筒状クラッチドラムの回転が停
止させられることで、このクラッチ装置が連結状態にな
り、変速が行われる。ブレーキバンドの締結過程におけ
る円筒状クラッチドラムとライニングの間の油排出特
性、すなわち、食い付き性を向上させるために、ブレー
キバンドには複数の油孔が形成されている。さらに、ラ
イニングには油溝が形成されている。通常、油溝は、ラ
イニングの一部を打ち抜いて形成された円周方向に長く
延びる形状を有しており、その一部が油孔に連通され
て、速やかに油が排出されるようになっている。
【0006】このようなブレーキバンド装置では、近
年、自動変速機の小型化やエンジンの高出力化等に伴っ
てブレーキバンドの使用環境が厳しくなり、食い付き性
の向上とともに、焼け耐久性の優れたブレーキバンドが
必要となっている。ブレーキバンドの焼け耐久性を向上
するには、ブレーキバンドの締結過程においてライニン
グ内側面に生じる摩擦熱を油膜で効率よく冷却すること
が有効である。
【0007】この油膜による冷却を促進して焼け耐久性
を向上させるために、従来からライニング内側面に形成
される油孔及び油溝の形状に関して様々な工夫がなされ
ている。
【0008】例えば、特開平5−106664号公報に
示されたブレーキバンドのライニングは、両端がライニ
ング幅方向の端部に達していない傾斜油溝が円周方向に
周期的に配置されており、さらに、これらの油溝の両端
部にはストラップ内側面からストラップの外側面に貫通
した油孔が形成されている。これにより、ブレーキバン
ド締結時のライニング内側面の油膜形成を促進し、焼け
耐久性を向上させている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】前記従来技術において
は、ライニング内側面の油膜形成を促進することにより
焼け耐久性は向上するが、それに伴うライニング内側面
の食い付き性の低下については言及されておらず、この
ため、クラッチ装置の制動時間が長くなる等の制動応答
性が悪化するおそれがある。
【0010】本発明の課題は、ライニングの油溝形状を
改良することにより、食い付き性を低下させることな
く、焼け耐久性を向上することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載のブレー
キバンドは、自動変速機の円筒状クラッチドラムを制動
または解放するためのブレーキバンドであって、環状の
ストラップと、ストラップ両端の外側面に固定された一
対のブラケットと、ストラップの内側面に固定されたラ
イニングと、ライニング内側面から油を排出するための
油排出手段とを備えている。そして、ライニングは、油
排出手段に連通され円周方向に沿って延びる第1油溝
と、円周方向において第1油溝に隣接し第1油溝の形成
された方向と交差する方向に沿って延びる第2油溝とを
有している。
【0012】このブレーキバンドでは、円筒状クラッチ
ドラムの制動は、以下に示すように行われる。円筒状ク
ラッチドラムの制動前は、ライニング内側面と円筒状ク
ラッチドラム外側面との間に隙間があり、その隙間には
油が供給されている。また、円筒状クラッチドラムは回
転しているため、ライニング内周面と円筒状クラッチド
ラム外側面との隙間には油の流れが形成されている。
【0013】円筒状クラッチドラムの制動は、ストラッ
プの両端の一対のブラケットを近づけてストラップに固
定されたライニングの内側面を円筒状クラッチドラム外
側面に巻き付けることで行われる。制動初期にライニン
グ内側面と円筒状クラッチドラム外側面との隙間の油
は、ライニング内側面に形成された油排出手段から排出
される。そして、円筒状クラッチドラムの回転が停止す
るまでの間、ライニング内側面と円筒状クラッチドラム
外周面との間で摩擦制動が行われる。
【0014】制動初期において、ライニング内側面と円
筒状クラッチドラム外側面との隙間に供給されている油
は、円周方向に流れながら、主に、第1油溝を経由して
油排出手段からブレーキバンドの外周方向に排出され
る。その後、油が排出されるにつれて、ライニング内側
面と円筒状クラッチドラム外側面との間の摩擦により、
円筒状クラッチドラムの回転が停止する。このとき、ラ
イニング内側面と円筒状クラッチドラム外側面の間に生
じた摩擦熱は、第2油溝によって供給されるライニング
内側面の油膜に伝達されるため、ライニング内側面が冷
却される。
【0015】ここで、第1油溝は円周方向に沿って延び
る形状を有しており、円筒状クラッチドラムの回転方向
に沿って流れる油が流入しやすいため、油は速やかに排
出される。その結果、ライニングの食い付き性を向上す
ることができる。
【0016】また、第2油溝は第1油溝の形成された方
向と交差する方向に沿って延びる形状を有しており、油
溝内に油を保持しやすいため、油の流れ方向に沿って油
膜が形成される。その結果、ライニングの焼け耐久性を
向上することができる。さらに、第2油溝は、第1油溝
のライニングの円周方向に隣接した位置に形成されてい
るため、第2油溝による油膜形成と、油膜によるライニ
ング内側面の冷却と、第1油溝への油の流入と、ブレー
キバンドの外周方向への油の排出とを連続的に行うこと
ができる。
【0017】以上のように、このブレーキバンドでは、
ライニング内側面の油を排出を促進するための第1油溝
と、ライニングの円周方向において第1油溝に隣接して
形成されライニング内側面に油膜形成を促進するための
第2油溝とを有しているため、食い付き性を低下させる
ことなく焼け耐久性を向上することができる。
【0018】請求項2に記載のブレーキバンドは、請求
項1において、第1油溝は円筒状クラッチドラムの軸に
直交する方向に延びる長孔形状の油溝であり、油排出手
段はストラップ内側面からストラップ外側面に貫通する
油孔である。
【0019】このブレーキバンドでは、第1油溝が円筒
状クラッチドラムの軸に直交して延びる簡単な長孔形状
であるため、ライニングへの加工が容易である。また、
油排出手段は、第1油溝に連通されたストラップ内側面
からストラップ外側面に貫通する油孔であるため、ライ
ニング内側面の摩擦面の面積を減少させることがない。
【0020】請求項3に記載のブレーキバンドは、請求
項1,2において、第2油溝は円筒状クラッチドラムの
軸に平行、または、傾斜する方向に延びる長孔形状の油
溝である。
【0021】このブレーキバンドでは、第2油溝が円筒
状クラッチドラムの軸に平行、または、傾斜して延びる
簡単な長孔形状であるため、ライニング内側面の幅方向
の広範囲に油膜を形成することができる。また、ライニ
ングへの加工も容易である。
【0022】請求項4に記載のブレーキバンドは、自動
変速機の円筒状クラッチドラムを制動または解放するた
めのブレーキバンドであって、環状のストラップと、ス
トラップ両端の外側面に固定された一対のブラケット
と、ストラップの内側面に固定されたライニングと、ス
トラップ内側面からストラップ外側面に貫通する油孔と
を備えている。そして、ライニングは、油孔に連通し円
筒状クラッチドラムの軸の直交軸に対して3度以上10
度以下の角度で傾斜して延びる長孔形状の油溝が円周方
向に沿って周期的に形成されている。
【0023】このブレーキバンドでは、円筒状クラッチ
ドラムの制動は、以下に示すように行われる。円筒状ク
ラッチドラムの制動前は、ライニング内側面と円筒状ク
ラッチドラム外側面との間に隙間があり、その隙間には
油が供給されている。また、円筒状クラッチドラムは回
転しているため、ライニング内周面と円筒状クラッチド
ラム外側面との隙間には油の流れが形成されている。
【0024】円筒状クラッチドラムの制動は、ストラッ
プの両端の一対のブラケットを近づけて、ストラップに
固定されたライニングの内側面を円筒状クラッチドラム
外側面に巻き付けることで行われる。制動初期にライニ
ング内側面と円筒状クラッチドラム外側面との隙間の油
は、油溝に連通された油孔から排出される。そして、円
筒状クラッチドラムの回転が停止するまでの間、ライニ
ング内側面と円筒状クラッチドラム外周面との間で摩擦
制動が行われる。
【0025】制動初期において、ライニング内側面と円
筒状クラッチドラム外側面との隙間に供給されている油
は、円周方向に流れながら、主に、油溝を経由して油溝
に連通された油孔からブレーキバンドの外周方向へ排出
される。その後、油が排出されるにつれて、ライニング
内側面と円筒状クラッチドラム外側面の間の摩擦が大き
くなり、円筒状クラッチドラムの回転が停止される。こ
のとき、ライニング内側面と円筒状クラッチドラム外側
面の間に生じた摩擦熱は油溝から供給されるライニング
内側面の油膜に伝わるので、ライニング内側面が冷却さ
れる。
【0026】ここで、油溝は円筒状クラッチドラムの軸
の直交軸に対して傾斜しているため、ライニング内側面
への油膜形成を促進し焼け耐久性を向上することができ
る。しかし、油溝の傾斜を過度に大きくすると食い付き
性が低下する。そこで、油溝の傾斜角度を3度以上10
度以下の範囲に設定することにより、過度の食い付き性
の低下を防止している。
【0027】以上のように、このブレーキバンドでは、
油溝はライニング内側面の油の排出機能と、ライニング
内側面の油膜形成機能とを同時に有しているので、食い
付き性を低下させることなく焼け耐久性を向上すること
ができる。
【0028】請求項5に記載のブレーキバンドは、請求
項4において、油溝は、円筒状クラッチドラムの軸の直
交軸に対して傾斜して延びる複数の第1油溝と、円筒状
クラッチドラムの軸に対して第1油溝の傾斜を反転させ
た傾斜を有する複数の第2油溝とからなり、複数の第2
油溝のそれぞれは、各第1油溝の円周方向間に形成され
ている。
【0029】このブレーキバンドでは、上記の油溝の構
成により、第1油溝の端部と隣接する第2油溝の端部と
がライニングの円周方向において対向するように配置さ
れる。
【0030】これにより、円筒状クラッチドラム制動中
のライニング内側面における油の流れは油溝に沿うよう
に整流されるため、油溝の傾斜による油の排出能力の低
下を防ぐことができる。
【0031】
【発明の実施の形態】第1実施形態 (1)ブレーキバンド装置の構成(図1〜図3) 図1に本発明の一実施形態が採用されたブレーキバンド
装置1の縦断面図を示す。
【0032】ブレーキバンド装置1は、クラッチ装置を
構成する円筒状クラッチドラム(図示せず)の外側面に
圧接して円筒状クラッチドラムを制動させるブレーキバ
ンド10と、ブレーキバンド10の一端10aをブレー
キバンド10の他端10bに近づけてブレーキバンド1
0の内側面をクラッチドラムに圧接させるためのピスト
ンステム5と、ブレーキバンド10の他端10bをハウ
ジング9に固定するためのアンカーステム6と、ピスト
ンステム5を作動させるための駆動部2とを有してい
る。
【0033】駆動部2は複数の油室を有しており、各油
室に作動油を供給したりあるいは各油室の作動油をドレ
ンすることによって、ピストンステム5の移動が制御さ
れるようになっている。
【0034】図2に基づいて、ブレーキバンド10につ
いて説明する。図2に示されるように、ブレーキバンド
10は、円筒状クラッチドラムの外側面を締め付けるた
めのストラップ12と、円筒状クラッチドラムの外側面
に圧接可能なライニング13と、ストラップ12の両端
に固定される一対のブラケット14a,14bとを有し
ている。
【0035】ストラップ12は円弧状に形成された帯状
の鋼材である。ストラップ12は、例えば、SK5を材
質とする厚さ0.5〜0.75mmのバネ鋼からなる。
ストラップ12には、円周方向に円筒状クラッチドラム
外側面の油を排出するための複数の円形の油孔12a,
12b及び12cとが形成されている。油孔12a及び
12bは、後述の第1油溝15a及び第2油溝15bに
それぞれ連通している。また、油孔12cは、ストラッ
プ12の円周方向及び幅方向の中心に形成されている。
【0036】図2及び図3に基づいて、ライニング13
について、詳しく説明する。なお、図3はストラップ1
2及びライニング13の展開図をライニング13の内側
面から見た図であり、その他、後述の図5〜図7,図9
〜図12も同様である。
【0037】ライニング13は、円周方向及び円周方向
と直交する幅方向がストラップ12と同程度の長さに形
成された、厚さ約1mmの帯状摩擦部材である。ライニ
ング13は、例えば、繊維成分及び熱硬化性樹脂成分を
含む湿式摩擦部材である。そして、ライニング13は、
ストラップ12の内側面に貼り付けて固定されており、
円筒状クラッチドラムに圧接可能となっている。
【0038】ライニング13には、円筒状クラッチドラ
ムの軸に直交する方向に延びる長孔形状の第1油溝13
aと、円筒状クラッチドラムの軸に傾斜する方向に延び
る長孔形状の第2油溝13bと、ストラップ12の油孔
12cに対応する油孔13cとが形成されている。
【0039】第1油溝13aは、円筒状クラッチドラム
制動時に、ライニング13内側面と円筒状クラッチドラ
ム外側面との間の油排出を促進するために設けられてい
る。そして、本実施形態において、第1油溝13aは、
ライニング13の食い付き性を向上するために、ライニ
ング13の幅方向に3列並列、円周方向に4列並列して
形成されており、それぞれが、各油溝の長手方向中心に
おいてストラップ12に形成された油孔12aに連通し
ている。
【0040】第2油溝13bは、円筒状クラッチドラム
制動時に、ライニング13内側面の油膜形成を促進する
ために設けられている。本実施形態において、第2油溝
13bは、ライニング13の円周方向両端のブラケット
部に対応する位置に第1油溝13aに隣接して設置され
ており、それぞれが、各油溝の長手方向中心においてス
トラップ12に形成された油孔12bに連通している。
なお、第2油溝13bは、ライニング13内側面の油膜
形成の促進を主目的としているため、本実施形態のよう
に必ずしも油孔12bに連通する必要はない。
【0041】ブラケット14a及び14bは金属部材で
あり、ストラップ12の両端の外側面に固定されてい
る。ブラケット14a及び14bは、例えば、S50C
を材質とする厚さ2〜3mm程度の部材である。ブラケ
ット14a及び14bは、ブラケット14a及び14b
の一部が折り返されてなる支栓14cと、ブラケット1
4a及び14bの表面に形成された複数の孔14dとを
有している。
【0042】(2)ブレーキバンド装置の動作 次に、図1,図2及び図3に基づいて、ブレーキバンド
装置の動作について説明する。
【0043】クラッチ装置の切り替えが指定されると、
オフ側のブレーキバンド装置における駆動部2に作動油
圧が伝達されて、ピストンステム5は、駆動部2の制御
によりクラッチドラム方向に移動する。このとき、ピス
トンステム5は、ブレーキバンド10の一端10aをブ
レーキバンド10の他端10bに近づけるように押圧す
る。すると、ブレーキバンド10の他端10bはアンカ
ーステム6に固定されているため、ブレーキバンド10
は縮径して円筒状クラッチドラムの外側面に圧接され
る。この結果、ブレーキバンド10と円筒状クラッチド
ラムとの間の摩擦により、円筒状クラッチドラムが制動
され停止する。このようにして、円筒状クラッチドラム
は連結状態になる。
【0044】上記の円筒状クラッチドラムの制動中のラ
イニング13内側面の状態について、以下に詳述する。
円筒状クラッチドラムの制動前は、ライニング13内側
面と円筒状クラッチドラム外側面との間に隙間があり、
その隙間には油が供給されている。また、円筒状クラッ
チドラムは回転しているため、ライニング13内側面と
円筒状クラッチドラム外側面との隙間には油の流れが形
成されている。
【0045】制動初期において、ライニング13内側面
と円筒状クラッチドラム外側面との隙間に供給されてい
る油は、円周方向に流れながら、主に、第1油溝13a
を経由して油孔12aから系外へ排出される。その後、
油が排出されるにつれて、ライニング13内側面と円筒
状クラッチドラム外側面の間の摩擦が大きくなり、円筒
状クラッチドラムの回転が停止される。このとき、ライ
ニング13内側面とクラッチドラム外側面の間に生じた
摩擦熱は第2油溝13bによって供給されるライニング
13内側面の油膜に伝達されるため、ライニング13内
側面が冷却される。
【0046】このブレーキバンド10では、第1油溝1
3aはライニング13内側面の円周方向に沿って延びる
形状を有しており、円筒状クラッチドラムの回転方向に
沿って流れる油が流入しやすいため、油は速やかに排出
される。その結果、ライニング13の食い付き性を向上
することができる。
【0047】また、第2油溝13bは第1油溝13aの
形成された方向と交差する方向に沿って延びる形状を有
しており、油溝内に油を保持しやすいため、油の流れ方
向に沿って油膜を形成される。その結果、焼け耐久性を
向上することができる。さらに、第2油溝13bは、第
1油溝13aのライニング13内周面の円周方向に隣接
した位置に形成されているため、第2油溝13bによる
油膜形成と、油膜によるライニング13内側面の冷却
と、第1油溝13aへの油の流入と、ブレーキバンドの
外周方向への油の排出とを連続的に行うことができる。
【0048】以上のように、このブレーキバンド10で
は、ライニング13内側面の油を排出を促進するための
第1油溝13aと、ライニング13内側面の円周方向に
おいて第1油溝13aに隣接して形成されライニング1
3内側面に油膜形成を促進するための第2油溝13bと
を有しているため、食い付き性を低下させることなく焼
け耐久性を向上させることができる。
【0049】(3)食い付き性及び焼け耐久性の評価 本実施形態のライニングの油溝形状の食い付き性及び焼
け耐久性を評価するために、サイクル試験を実施し、サ
イクル試験中の摩擦係数を測定した。その結果を図4に
示す。なお、図4中の摩擦係数の値はサイクル試験初期
の摩擦係数の値であり、図4中のサイクル数の値はサイ
クル試験によってサイクル試験初期の摩擦係数の値より
も10%摩擦係数が低下した時点のサイクル数の値であ
る。
【0050】なお、本実施形態の第2油溝13bの設置
の効果を確認するために、本実施形態の第1油溝13a
に相当する油溝がライニング13の幅方向に3列並列に
形成された構成を有する従来例1(図5)及び従来例2
(図6)についても同様なサイクル試験を実施した。
【0051】試験の結果、本実施形態のサイクル数の値
は、従来例1及び従来例2に比べて明らかに大きく焼け
耐久性が優れている。また、ライニングの摩擦係数の値
についても従来例と同等以上であることから、焼け耐久
性の増加に対する食い付き性の低下も少ないことがわか
った。よって、第2油溝13bの設置による焼け耐久性
及び食い付き性に対する効果があることがわかる。
【0052】第2実施形態 (1)ブレーキバンド装置の構成(図7) 本実施形態のブレーキバンド装置1は、ライニング15
内側面の油溝の構成が異なる以外は、第1実施形態のブ
レーキバンド装置1と同様なので、説明を省略し、ライ
ニング15の構成のみについて、以下に説明する。
【0053】ライニング15には、円筒状クラッチドラ
ムの軸の直交軸に対して傾斜して延びる第1油溝15a
と、円筒状クラッチドラムの軸に対して第1油溝15a
の傾斜を反転させた傾斜を有する第2油溝15bとが形
成され、各第1油溝15aと第2油溝15bとは、ライ
ニング15の円周方向に交互に配置されている。さら
に、ライニング15の円周方向及び幅方向の中心には、
油孔15cが形成されている。なお、第1油溝15a,
第2油溝15b及び油孔15cは、それぞれ、ストラッ
プ12に形成された油孔12a、12b及び12cに連
通している。
【0054】第1油溝15aは、本実施形態において、
ライニング15の幅方向に2列並列、円周方向に3列並
列に形成されており、第1油溝15aの傾斜は、ライニ
ング15内側面の幅方向の中心線に対して7度傾斜して
いる。
【0055】第2油溝15bは、本実施形態において、
ライニング15の幅方向に2列並列、円周方向に3列並
列に形成され、第1油溝15aの傾斜は、ライニング1
5の幅方向の中心線に対して第1油溝15aの傾斜と反
転する方向に7度傾斜している。
【0056】これら2種類の油溝をライニング15の円
周方向に交互に配置することによって、第1油溝15a
の端部と隣接する第2油溝15bの端部とがライニング
15内側面の円周方向において対向して配置される。
【0057】(2)ブレーキバンド装置の動作 次に、図1,図2及び図7に基づいて、ブレーキバンド
装置の動作について説明する。なお、本実施形態のブレ
ーキバンド装置1は、円筒状クラッチドラムの制動時の
ライニング15の油溝の作用のみが異なる以外は、第1
実施形態のブレーキバンド装置1と同様なので、円筒状
クラッチドラムの制動中のライニング15内側面の状態
のみについて、以下に説明する。
【0058】制動初期において、ライニング15内側面
と円筒状クラッチドラム外側面との隙間に供給されてい
る油は、円周方向に流れながら、第1油溝15a及び第
2油溝15bを経由して油孔12a及び12bから系外
へ排出される。その後、油が排出されるにつれて、ライ
ニング15内側面とクラッチドラム外側面の間の摩擦が
大きくなり、クラッチドラムの回転が停止される。この
とき、ライニング15内側面とクラッチドラム外側面の
間に生じた摩擦熱は第1油溝15a及び第2油溝15b
から供給されるライニング15内側面の油膜に伝達され
るため、ライニング15内側面が冷却される。
【0059】このブレーキバンド装置1では、第1油溝
15a及び第2油溝15bは、円筒状クラッチドラムの
軸の直交軸に対して傾斜して延びる油溝であるため、油
溝内に油を保持して油膜を形成しやすくなっている。さ
らに、第1油溝15aの端部と第2油溝15bの端部と
が円周方向において対向するように配置されているた
め、円筒状クラッチドラム制動中のライニング15内側
面における油の流れが第1油溝15a及び第2油溝15
bに沿うように整流されて、油溝の傾斜による油の排出
能力の低下を防ぐことができる。
【0060】以上のように、このブレーキバンド10で
は、油溝を傾斜させることによる油の排出能力の低下を
防ぐことができるため、油溝を傾斜させて焼け耐久性を
向上させるとともに、食い付き性の低下を防ぐことがで
きる。
【0061】(3)食い付き性及び焼け耐久性の評価 本実施形態のライニングの油溝形状の食い付き性及び焼
け耐久性を評価するために、サイクル試験を実施し、サ
イクル試験中の摩擦係数を測定した。その結果を図8に
示す。なお、図8中の摩擦係数の値はサイクル試験初期
の摩擦係数の値であり、図8中のサイクル数の値はサイ
クル試験によってサイクル試験初期の摩擦係数の値より
も10%摩擦係数が低下した時点のサイクル数の値であ
る。
【0062】試験は、第1油溝15a及び第2油溝15
bの傾斜角度の影響を比較するために、各油溝の傾斜角
を0度から15度の間で変化させたものについて実施し
た。その結果、摩擦係数については、傾斜角度が0度の
ときが最大値であり、傾斜させると傾斜角度10度まで
は摩擦係数の値が徐々に低下し、さらに傾斜角度を15
度にしたときに、急激に摩擦係数が低下する傾向がみら
れた。また、サイクル数については、傾斜角0度のとき
が最小値であり、傾斜させるに従ってサイクル数が上昇
する傾向がみられ、特に、傾斜角度を3度としたとき
に、急激にサイクル数が増加する傾向がみられた。
【0063】これにより、焼け耐久性を向上させるに
は、油溝の傾斜角度を3度以上にすることが望ましく、
一方、食い付き性の低下を防止するには、油溝の傾斜角
度を10度以下にすることが望ましいことがわかった。
【0064】さらに、従来例3(図9)に示されるライ
ニング13内側面の幅方向に一列だけ第1実施形態にお
ける第1油溝13aが形成されている場合との比較試験
を実施した。
【0065】この試験は、ライニング13内側面の幅方
向の溝本数を1列から2列に増加させてライニングの食
い付き性を向上させたときの焼け耐久性への影響を確認
するために実施したものである。
【0066】試験の結果、本実施形態の摩擦係数及びサ
イクル数の値は、ともに、従来例3に比べて大きくなっ
た。ところで、従来例3は、従来からよく用いられてい
る形状のものであり、一般的には、本実施形態のような
幅方向に2列の油溝が形成されている場合に比べて、食
い付き性は劣るが、焼け耐久性については優れているも
のと予想していた。しかし、この試験において、いずれ
の値についても本実施形態のほうが優れているという結
果となった。
【0067】この結果により、ライニング13内側面の
幅方向の油溝本数を増加させて食い付き性を向上する場
合、本実施形態と同様な油溝を設けることによって、食
い付き性と焼け耐久性の両立を図ることができる。
【0068】他の実施形態 油溝の形状や位置については、上記の実施形態に限られ
るものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可
能である。
【0069】例えば、第1実施形態の変形例として、変
形例1(図10)及び変形例2(図11)のような油溝
を有するライニング13がある。変形例1では、第1実
施形態におけるライニング13において、各第1油溝1
3aのすべてに隣接するように第2油溝13bがさらに
形成されている。変形例2では、変形例1と同様に第1
油溝13a及び第2油溝13bが配置されているが、第
2油溝13bは傾斜溝ではなく、ライニング13の円周
方向軸に直交する油溝である。
【0070】また、第2実施形態の変形例として、図1
2のような油溝を有するライニング15がある。この変
形例では、第2実施形態と異なり、ライニング15の幅
方向に並んだ2列油溝は第1油溝15a及び第2油溝1
5bを1本づつ配置されているが、円周方向について
は、第2実施形態と同様に、第1油溝15aと第2油溝
15bとが交互に並んで配置されている。
【0071】
【発明の効果】本発明に係るブレーキバンド装置では、
上記のようなライニングの油溝形状の改良により、食い
付き性を低下させることなく、焼け耐久性を向上させる
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態が採用されたブレーキバン
ド装置を示す縦断面図。
【図2】第1実施形態のブレーキバンドを示す斜視図。
【図3】第1実施形態のライニング内側面の展開図。
【図4】第1実施形態のサイクル試験の試験結果のグラ
フ。
【図5】従来例1のライニング内側面の展開図。
【図6】従来例2のライニング内側面の展開図。
【図7】第2実施形態のライニング内側面の展開図。
【図8】第2実施形態のサイクル試験の試験結果のグラ
フ。
【図9】従来例3のライニング内側面の展開図。
【図10】第1実施形態の変形例1のライニング内側面
の展開図。
【図11】第1実施形態の変形例2のライニング内側面
の展開図。
【図12】第2実施形態の変形例のライニング内側面の
展開図。
【符号の説明】
1 ブレーキバンド装置 2 駆動部 5 ピストンステム 6 アンカーステム 9 ハウジング 10 ブレーキバンド 12 ストラップ 13 ライニング

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】自動変速機の円筒状クラッチドラムを制動
    または解放するためのブレーキバンドであって、 環状のストラップと、 前記ストラップ両端の外側面に固定された一対のブラケ
    ットと、 前記ストラップの内側面に固定されたライニングと、 前記ライニング内側面から油を排出するための油排出手
    段とを備え、 前記ライニングは、前記油排出手段に連通され円周方向
    に沿って延びる第1油溝と、円周方向において前記第1
    油溝に隣接し前記第1油溝の形成された方向と交差する
    方向に沿って延びる第2油溝とを有している、ブレーキ
    バンド。
  2. 【請求項2】前記第1油溝は、前記円筒状クラッチドラ
    ムの軸に直交する方向に延びる長孔形状の油溝であり、 前記油排出手段は、前記ストラップ内側面から前記スト
    ラップ外側面に貫通する油孔である、請求項1に記載の
    ブレーキバンド。
  3. 【請求項3】前記第2油溝は前記円筒状クラッチドラム
    の軸に平行、または、傾斜する方向に延びる長孔形状の
    油溝である、請求項1,2に記載のブレーキバンド。
  4. 【請求項4】自動変速機の円筒状クラッチドラムを制動
    または解放するためのブレーキバンドであって、 環状のストラップと、 前記ストラップ両端の外側面に固定された一対のブラケ
    ットと、 前記ストラップの内側面に固定されたライニングと、 前記ストラップ内側面から前記ストラップ外側面に貫通
    する油孔とを備え、 前記ライニングは、前記油孔に連通し前記円筒状クラッ
    チドラムの軸の直交軸に対して3度以上10度以下の角
    度で傾斜して延びる長孔形状の油溝が円周方向に沿って
    周期的に形成されている、ブレーキバンド。
  5. 【請求項5】前記油溝は、前記円筒状クラッチドラムの
    軸の直交軸に対して傾斜して延びる複数の第1油溝と、
    前記円筒状クラッチドラムの軸に対して前記第1油溝の
    傾斜を反転させた傾斜を有する複数の第2油溝とからな
    り、 前記複数の第2油溝は、前記各第1油溝の円周方向間に
    形成されている、請求項4に記載のブレーキバンド。
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