JP2002241385A - ホスファチジルセリンの分画法 - Google Patents

ホスファチジルセリンの分画法

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JP2002241385A
JP2002241385A JP2001038430A JP2001038430A JP2002241385A JP 2002241385 A JP2002241385 A JP 2002241385A JP 2001038430 A JP2001038430 A JP 2001038430A JP 2001038430 A JP2001038430 A JP 2001038430A JP 2002241385 A JP2002241385 A JP 2002241385A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 天然あるいは人工的に調製されたリン脂質混
合物からホスファチジルセリンを簡便に濃縮する分画法
を得る。 【解決手段】 ホスファチジルセリンを含むリン脂質混
合物をアルコール類に溶解した後、該溶解液中に金属塩
を添加することによりホスファチジルセリンを不溶化せ
しめ、該不溶部を分離するもの。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リン脂質混合物か
らホスファチジルセリンを濃縮するための分画法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】ホスファチジルセリン(以下、「PS」
と記載する。)は、痴呆症の予防や治療などを目的とし
た脳機能改善剤の他、免疫性疾患の治療剤や界面活性剤
としての利用が期待されている。このPSは動物の脳や
筋肉に含まれる他、化学合成法やホスホリパーゼDを使
用したホスファチジル基転移反応により人工的に製造す
ることも可能である。
【0003】PSは主に医薬や食品、化粧品として使用
されていることから、前記天然物や反応物等からPSを
分画し、PS含量を高めることが重要である。ところ
が、動物の脳や筋肉に含まれるPS量は少なく、また化
学合成法やホスファチジル基転移反応により製造した場
合にも、PS含量の多い製品を安価に製造することは難
しいことから、使用に際してはPSの濃縮(精製)が必
要となる場合が多い。
【0004】PSの濃縮(精製)法としては、従来、溶
媒による分画やカラムクロマトグラフィーが用いられて
きた。しかし、溶媒分画のみでは充分なPS純度を得る
ことは困難であり、一方、クロマトグラフィーのような
煩雑な操作は、コスト面、作業性の面で問題があった。
このため、PSを安価かつ簡便に濃縮する方法の開発が
望まれている。
【0005】特に、PSは他のリン脂質、すなわち、ホ
スファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノー
ルアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(P
I)やホスファチジン酸(PA)等と分離することが困
難であるため、これらを含むリン脂質混合物から、PS
を安価に濃縮する方法を確立することが望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは上記課題
を解決するために鋭意研究を重ねた結果、PSを含むリ
ン脂質混合物をアルコール類に溶解し、さらに金属塩あ
るいはその溶液を添加することによりPSを沈殿せし
め、沈殿部に濃縮できることを見出した。
【0007】本発明は、天然あるいは人工的に調製され
たリン脂質混合物からPSを簡便に濃縮する分画法を得
ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載された発
明に係るPSの分画法は、PSを含むリン脂質混合物を
アルコール類に溶解した後、該溶解液中に金属塩を添加
することによりPSを不溶化せしめ、該不溶部を分離す
るものである。
【0009】請求項2に記載された発明に係るPSの分
画法は、請求項1に記載の金属塩として、リチウム塩、
カリウム塩及びナトリウム塩から選ばれる1種又は2種
以上を用いるものである。
【0010】請求項3に記載された発明に係るPSの分
画法は、請求項1又は2に記載の金属塩として、塩化リ
チウム、塩化カリウム又は塩化ナトリウムを用いるもの
である。
【0011】請求項4に記載された発明に係るPSの分
画法は、請求項1〜3の何れかに記載のアルコール類と
して、エチルアルコールを用いるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明においては、PSを含むリ
ン脂質混合物をアルコール類に溶解した後、該溶解液中
に金属塩を添加するという簡略な操作によって、PSを
不溶化(沈殿、凝集等)させることにより、不溶物(沈
殿部、凝集部等)を分離・濃縮する。これにより、天然
あるいは人工的に調製されたリン脂質混合物からPSを
簡便に濃縮することができる。
【0013】本発明に用いられるPSを含むリン脂質混
合物としては、天然物、天然物からの抽出物又は該抽出
物を精製したもの、或いは合成リン脂質等PSを含む混
合物であれば、いずれを用いてもよい。具体的には、大
豆レシチン、菜種レシチン、卵黄レシチン、トウモロコ
シレシチン或いは綿実レシチンや、化学合成法やホスフ
ァチジル基転移反応により調製したリン脂質混合物、牛
脳の溶媒抽出物等が挙げられる。中でも、ホスファチジ
ル基転移反応により調製したPSを含むリン脂質混合物
を用いれば、金属塩を添加した場合の濃縮効果が高く、
原料の確保のしやすさやコスト面からも好ましい。
【0014】また、本発明に用いられる金属塩として
は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウ
ム塩、マグネシウム塩等の金属塩、あるいはこれらを豊
富に含む天然物、例えば、食塩、苦汁、かん水、ドロマ
イト、食用真珠層粉等いずれを用いても良いが、リチウ
ム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩を用いることが濃
縮効率の点から好ましく、特に塩化リチウム、塩化ナト
リウムまたは塩化カリウムが好ましい。これらの金属塩
は、1種または2種以上を組み合わせて用いることがで
きる。
【0015】これら金属塩の添加量は、PSを沈殿させ
得る量であれば特に限定されないが、リン脂質1gあた
り、0.15〜10ミリモル、特に0.5〜5ミリモル
であることが、PSの回収率および沈殿中のPS含量が
高い点から好ましい。
【0016】また、本発明に用いられるアルコール類と
しては、リン脂質混合物を溶解可能なアルコール類であ
ればいずれも好適に用いられるが、中でもメチルアルコ
ール、エチルアルコール、ブチルアルコール、プロピル
アルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコー
ル類が好ましい。また、これらの混合物を利用すること
もできるが、エチルアルコールは食品へ利用し易く、安
全面での問題も少ないため、これを用いることが特に好
ましい。
【0017】リン脂質混合物をアルコール類に溶解する
際の濃度は特に限定されないが、この混合物が完全に溶
解できる以上の量とすることが好ましく、アルコール類
の重量に対し1〜50%、特に2〜20%とすること
が、PS濃縮効率や操作性の点から好ましい。
【0018】本発明において、リン脂質混合物からのP
Sの分画は、例えば以下のようにして行うことができ
る。まず、ホスファチジル基転移反応法等により調製さ
れ、PC、PE又はPA等PS以外のリン脂質を成分中
に含むリン脂質混合物を、エチルアルコール等のアルコ
ール類に溶解する。この時、溶解温度等の溶解の条件は
特に限定されず、混合物の成分の種類、それらの量等に
合わせ好適な条件を選択し用いればよい。
【0019】こうして得られる溶液中では、PSやP
C、PA等のリン脂質は溶媒層に抽出されるが、場合に
よっては一部の不溶性成分が生成する。このため、遠心
分離、ろ過等の手段により溶媒から不溶性成分(沈殿
物、凝集物等)を除いてから金属塩の添加を行う。不溶
性成分中にも少量のPSが残存している場合には、前記
アルコール類による抽出処理は、数度繰り返し行っても
よい。
【0020】次いで、アルコール溶液に対して、金属塩
を添加し、溶媒層に抽出されたPSを分画する。すなわ
ち、溶媒層中のPS以外のリン脂質の大部分は、金属塩
の添加によっても沈殿しないが、PSはその大部分が沈
殿するため、これを回収することによりPSの濃縮を行
うことができる。このとき、金属塩は粉末のまま加えて
も、水やアルコール等の溶媒に溶かしてから加えてもよ
い。その際の各種条件も特に限定されず、混合物の成分
の種類、それらの量等に合わせ好適な条件を選択すれば
よい。具体的には10℃〜30℃で30分以上保持して
PSを不溶化させればよい。
【0021】金属塩の添加により不溶化されたPSは、
遠心分離、ろ過、静置分離等の手段により、回収するこ
とができる。また、公知の精製手段、例えばカラムクロ
マトグラフィー等の手段により、更に精製することも可
能である。本発明のPS濃縮物は他のリン脂質等の含量
が顕著に低下しているため、このような精製手段も比較
的簡便に行うことができる。
【0022】本発明のPS濃縮物は、医薬品、食品、化
粧品等の形態で投与することができる。例えばリン脂質
の生理効果を訴求する医薬品や栄養補助食品等の形態で
用いる場合であれば、カプセル剤、顆粒剤、錠剤、散剤
等の固形製剤、或いはシロップ剤等の液状製剤として経
口投与することができる。また、経口投与剤でなくと
も、注射剤、皮膚外用剤、直腸投与剤等非経口形態で投
与することも可能である。
【0023】各製剤の製造時には、乳糖、澱粉、結晶セ
ルロース、乳酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグ
ネシウム、無水ケイ酸等の賦形剤、白糖、ヒドロキシプ
ロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等の結合剤、
カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロ
ースカルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウ
ム、タルク、モノグリセリド、蔗糖脂肪酸エステル等の
滑沢剤や、その他、医薬・食品として許容され得る成分
を適宜使用すればよい。
【0024】また、同様の生理効果を期待して一般食品
形態(「明らか食品」の形態)で用いる場合には、本発
明の方法により得られたPS濃縮物をそのまま或いは適
宜精製処理したものを油脂、錠菓、発酵乳、飴、調味
料、ふりかけ等の飲食品に添加し、常法を用いて製造す
ればよい。
【0025】これら医薬品、食品等の形態での使用に際
しては、本発明の方法により得られたPSが濃縮された
リン脂質組成物を適宜配合することができる。また、P
Sの生理効果を訴求する場合であれば、その効果を得ら
れかつ過剰摂取等の問題が生じない程度の量、50mg
〜1000mg/日程度の摂取が見込まれる量を適宜配
合しておけばよい。
【0026】更に、本発明のリン脂質は乳化剤として用
いてもよく、その際には、医薬品、食品、化粧品等へ
0.01〜10%添加するのが好ましい。
【0027】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明を説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】実施例1 大豆レシチン(PC80:クロクラーン社製)10.0
gと大豆油2.0gを100ccメジウム瓶に取り、こ
こに90.0g(100mL)の酢酸エチルを加えてス
ターラーで撹拌しながら加温溶解した。L−セリン1.
2gとPLD−Y1((株)ヤクルト本社製)1,50
0単位を秤り取り、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液
(pH7.0)5.8mLを加えて溶解した。
【0029】PC80溶液全量の入ったメジウム瓶を5
0℃に保温しておき、ここに50℃に保温した(L−セ
リン+PLD−Y1)溶液の全量を加えて反応を開始
し、スターラーで緩やかに攪拌しながら50℃で5時間
反応させた。30分間氷冷してリン脂質を沈殿させて回
収した後、熱湯中に20分放置して酵素を失活させた。
【0030】回収したリン脂質層にエタノール40mL
を加えて良く混合し、4℃に一晩放置することにより沈
殿を形成させ、上清を回収した。沈殿部にはさらにエタ
ノール12mLを加えて良く混合後30分間放置し、遠
心分離により上清を集め、先の上清と混合することによ
り大豆転移レシチン/エタノール溶液を得た。
【0031】このようにして得た大豆転移レシチン/エ
タノール溶液2.0mL(固形分約0.33g,リン脂
質中のPS含量=32.5%)に0.1M酢酸ナトリウ
ム/エタノール溶液を1.0mL加えて−20℃で1時
間放置し、生じた沈殿(60mg)を遠心操作により分
離してエタノールで洗浄した(PptNa−1)。上清
を−20℃で数日間保存した結果、さらに沈澱(7m
g)を生じたので遠心操作により上清(SupNa,乾
固重量=227mg)と分離し、エタノールで洗浄した
(PptNa−2)。
【0032】各試料を乾固した後、希釈溶媒(ヘキサ
ン:ジエチルエーテル:イソプロパノール=2:2:
1)に溶解し、薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:ク
ロロホルム:メタノール:酢酸=13:5:2)で展開
してから、Dittmer−Lester試薬によりリ
ン脂質を発色させ、ゲルパターン画像解析システムによ
りリン脂質含量を定量した。結果を次の表1に示す。
【0033】表1に示す通り、リン脂質中のPS含量
(モル%)は分画前は32.5%であったのに対して、
分画後のPptNaでは81.9%、SupNaでは
5.6%であることがわかり、PSが効率よく濃縮でき
ることが確認された。
【0034】
【表1】
【0035】実施例2 実施例1で調製した大豆転移レシチン/エタノール溶液
を減圧乾燥し、そのうちの900mgを50ccメジウ
ム瓶に取り、クロロホルム22.5mLとメタノール1
5mLの混合液に溶解させた。こうして調製した大豆転
移レシチン/クロメタ溶液を4.0mLずつ6.0cc
メジウム瓶に分注し、ここに1M塩類溶液(a.塩化リ
チウム、b.塩化カリウム、c.塩化ナトリウム、d.
塩化マグネシウム、e.塩化カルシウム、f.塩化アン
モニウム、g.硫酸アンモニウム)を0.8mL加え
た。瓶を振って数回混合した後、静置してクロロホルム
層を回収し、その内の1.0mLを秤量した試験管に取
り窒素下に乾燥した。
【0036】こうして得られた乾燥物(約50mg,リ
ン脂質含量=約25mg)に対して0.10mlのジエ
チルエーテルを加えて溶解し、ここに1.0mLのエタ
ノールを徐々に加えて沈澱を形成させ、懸濁液全体を遠
心分離して上清と沈澱とを分けた。
【0037】エタノール抽出液は2.5倍希釈液を5μ
L、沈澱は全体を2.5mLのクロロホルムに溶解した
もの5μLを薄層板にアプライし、実施例1の条件で展
開後、Dittmer−Lester試薬によりリン脂
質を発色させゲルパターン画像解析システムによりリン
脂質含量を定量した。結果を次の表2に示す。
【0038】表2に示すように、使用した8種類の塩の
中で塩化リチウムが最も成績が良く、1回のエタノール
沈澱により純度80%のPS標品を得ることができた。
さらに、塩化リチウムでは全PAのうちの約4分の3が
エタノール上清に分画されており、PAの除去効率が際
立って良いことがわかった。
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】なお、全体的な傾向としては陽イオンの原
子番号が小さいほどPAの除去効率が良く、2価の陽イ
オンではPCも沈澱することがわかった。また、アンモ
ニウム塩の場合にはPSを含む大部分のリン脂質が沈殿
せず分離には適さなかった。沈殿の成績のよい塩化リチ
ウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムに関して、エタノ
ール沈澱および上清画分中のリン脂質含量を表3に示
す。
【0042】実施例3 実施例1で調製した大豆転移レシチン/エタノール溶液
を減圧乾燥し、そのうちの900mgを50ccメジウ
ム瓶に取り、クロロホルム22.5mLとメタノール1
5mLの混合液に溶解させた。こうして調製した大豆転
移レシチン/クロロホルム−メタノール溶液に1M塩化
リチウム溶液を8.0mL加え、瓶を振って数回混合し
た後、静置してクロロホルム層を回収し減圧乾固した。
【0043】得られた乾燥物に5.0mLのジエチルエ
ーテルを加えて溶解し、ここに40mLのエタノールを
徐々に加えて溶解し(20℃)、懸濁液全体を遠心分離
して上清(S1)と沈澱(P1)とを分離した。P1に
再び5.0mLのジエチルエーテルを加えて溶解し、こ
こに50mLのエタノールを徐々に加えて溶解し(20
℃)、懸濁液全体を遠心分離して上清(S2)と沈澱
(P2)とを分けた。
【0044】大豆転移レシチンは10mg/mL、P2
(湿潤状態)は20mg/mLのクロロホルムに溶解し
たものを5μL,S1はクロロホルムで2.5倍に希釈
したものを5μL、そしてS2は原液10μLを薄層板
にアプライし、実施例1の条件で展開後、Dittme
r−Lester試薬によりリン脂質を発色させゲルパ
ターン画像解析システムによりリン脂質含量を定量し
た。
【0045】エタノール沈澱物をもう一度エタノールで
洗浄して得たP2画分中のPS含量は96.9%であっ
た。CMセルロースを用いたイオン交換法における回収
率は20%程度(参考例参照)であったが、本発明によ
る分画法における回収率は約90%と高く、高純度品を
用いた効力評価や作用機構の解明、あるいは医薬品開発
に際しての有用な精製手段となり得る。
【0046】
【表4】
【0047】実施例4 実施例1で調製した大豆転移レシチン/エタノール溶液
を減圧乾燥し、そのうちの900mgを50ccメジウ
ム瓶に取り、クロロホルム22.5mLとメタノール1
5mLの混合液に溶解させた。こうして調製した大豆転
移レシチン/クロロホルム−メタノール溶液を4.0m
Lずつ6.0ccメジウム瓶に分注し、ここに種々のp
Hのクエン酸−クエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.
8,3.6,4.1,4.6,5.0)に溶解した2M
食塩水を0.8mL加えた。瓶を振って数回混合した
後、静置してクロロホルム層を回収し、その内の2.5
mLを秤量した試験管に取り窒素下に乾燥した。
【0048】乾燥物(約120mg)に対して0.2m
Lのジエチルエーテルを加えて溶解し、ここに2.0m
Lのエタノールを徐々に加えて溶解し、懸濁液全体を遠
心分離して上清と沈澱とを分離した。エタノール抽出液
は10倍希釈液を10μL、沈澱は全体を10.0mL
のクロロホルムに溶解したものを5μL、薄層板にアプ
ライし、実施例1の条件で展開後Dittmer−Le
ster試薬によりリン脂質を発色させ、ゲルパターン
画像解析システムによりリン脂質含量を定量した。
【0049】pH3.6以上の条件ではPSもPAも共
に沈澱画分に回収され(PA/PS=0.23)、両者
を分離することはできなかった。これに対してpH2.
8では沈澱に含まれるPA量が相対的に低く(PA/P
S=0.15)、この条件でのエタノール処理を繰り返
せばナトリウム塩の状態でPSを分画できる可能性が示
された。
【0050】実施例5 PC含量40%の大豆レシチン200gにセリン水溶液
190g(セリン70g+水120g)とホスホリパー
ゼD(PLD−Y1、(株)ヤクルト本社製)の水溶液
(24mg/mL)を10mL練り込んで55℃で5時
間反応させた結果、リン脂質中のPS含量が46.7%
の反応生成物が得られた。
【0051】反応生成物5.0gにエチルアルコール2
0mLを加え45℃で抽出後、残渣(沈殿)をさらにエ
チルアルコール5mLで2回抽出した。3回の抽出液を
混合し、そのうちの5mLに25%食塩水0.20mL
を加え、45℃に加温後、室温に放置して沈殿を形成さ
せた。その結果、上清中のPS含量は乾燥固形分中3.
3%であったのに対して、沈殿物では62.1%であ
り、PSは沈殿部に効率よく濃縮されることがわかっ
た。
【0052】実施例6 実施例5で調製した抽出液の混合物5mLに酢酸ナトリ
ウム粉末50mgを加え45℃に加温後、室温に放置し
て沈殿を形成させた。その結果、上清中のPS含量は乾
燥固形分中3.5%であったのに対して、沈殿物では6
1.8%であり、食塩水を用いた場合と同じく、PSは
沈殿部に効率よく濃縮されることがわかった。
【0053】実施例7 実施例5で調製した抽出液の混合物に対して25%食塩
水を加えてPSの不溶物を形成させ、沈殿リン脂質中の
PS含量と、沈殿部に回収されるPS量とを測定した。
その結果として、食塩添加量と沈殿へのPS回収率及び
リン脂質中のPS含量との関係を表5に示す。
【0054】
【表5】
【0055】表5に示す通り、何れの条件でもPSは沈
殿画分に濃縮されたが、特に抽出液混合物中のリン脂質
1gあたりに加える食塩の量が10ミリモル以下の範囲
において、沈殿リン脂質中のPS含量は55%以上であ
り、沈殿部にPSが効率よく濃縮されていた。一方、食
塩添加量が0.05ミリモル以下の場合には、沈殿への
PSの回収率は60%以下であり、40%以上が上清部
に存在していた。以上の結果から、何れの添加量でもP
Sを沈殿に濃縮することが可能であるが、アルコールに
溶解したリン脂質1gに対する食塩の添加量が0.15
〜10ミリモルの範囲が特に実用に適した添加量と考え
られた。
【0056】参考例 CM−セルロース・カラムクロマ
トグラフィーによる精製 牛脳からのPSの精製例(新生化学実験講座4、脂質II
リン脂質、p.127)に準じて実施例1で得た大豆転
移レシチンからPSを精製することを試みた。
【0057】(1) Na+型CM−セルロースの調
製:CM−52(Whatmann社、膨潤型)50g
を0.5N水酸化ナトリウム500mL中に徐々に加え
て約30分間静置した後に吸引瀘過した。瀘液が中性に
なるまで蒸留水で洗浄(500mL×2回)した後、
0.5N塩酸500mLを流し蒸留水で瀘液が中性にな
るまで再度洗浄(500mL×2回)した。このゲルを
0.5N水酸化ナトリウム500mL中にかきまぜなが
ら加え30分間静置したのち、蒸留水で中性になるまで
洗浄(500mL×1回)し、さらにメタノール500
mLで洗浄後、最終的にメタノール懸濁液として室温に
保存した。
【0058】(2) クロマトグラフィー:(1)で調
整したCM−52を内径30mmのカラムに充填(ベッ
ド体積70mL)し、クロロホルムを500mL流して
コンディショニングした後、実施例1の大豆転移レシチ
ン1.0gを10mLのクロロホルムに溶解して沈澱を
除いた溶液をカラムにアプライした後、クロロホルムで
溶出させ、200mLのクロロホルム溶出画分(Fr.
1)を得た。
【0059】更に、クロロホルム−メタノール(85:
15,v/v)400mL(Fr.2+3)、クロロホ
ルム−メタノール(75:25,v/v)400mL
(Fr.4+5)、クロロホルム−メタノール(65:
35,v/v)400mL(Fr.6+7)、クロロホ
ルム−メタノール(50:50,v/v)400mL
(Fr.8+9)を流して200mLずつを分画し、シ
リカゲル薄層クロマトグラフィーによりリン脂質を分析
した。
【0060】その結果、クロロホルム溶出画分(Fr.
1)にはほとんどリン脂質が検出されなかったが、クロ
ロホルム−メタノール(85:15,v/v)画分の前
半(Fr.2)には白濁状態でアプライしたエタノール
沈澱物とほぼ同じ組成の物が0.29g(乾燥重量)溶
出された。クロロホルム−メタノール(75:25,v
/v)画分(Fr.4+5)にはPCは含まれなかった
がPSとPAの両方が含まれており、特にPAが多く溶
出されていた。そして、クロロホルム−メタノール(6
5:35,v/v)画分の前半(Fr.6)にはまだ
8.0%のPAが含まれていたが、後半(Fr.7)以
降にはPAが含まれておらず、PS以外には原点にわず
かの発色が見られるのみで純度は97.7%であった。
なお、クロロホルム−メタノール(50:50,v/
v)画分の前半(Fr.8)には相当量のPSが含まれ
ていたが、後半(Fr.9)にはほとんど溶出物がなか
った。
【0061】以上の結果から、大豆転移レシチンからも
牛脳分画物とほぼ同様の条件の陽イオン交換クロマトに
よりPSを精製できることが明らかになったが、回収率
は極めて低く(Fr.7以降のみを回収した場合,20
%程度)、大量の精製PSを得るには適さない方法であ
ることがわかった。
【0062】
【発明の効果】本発明は以上説明した通り、天然あるい
は人工的に調製されたリン脂質混合物からPSを簡便に
濃縮する分画法を得ることができるという効果がある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 工藤 聰 東京都港区東新橋1丁目1番19号 株式会 社ヤクルト本社内 Fターム(参考) 4H050 AA02 AD15 AD17 AD30 BB14 BE61

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホスファチジルセリンを含むリン脂質混
    合物をアルコール類に溶解した後、該溶解液中に金属塩
    を添加することによりホスファチジルセリンを不溶化せ
    しめ、該不溶部を分離することを特徴とするホスファチ
    ジルセリンの分画法。
  2. 【請求項2】 前記金属塩として、リチウム塩、カリウ
    ム塩及びナトリウム塩から選ばれる1種又は2種以上を
    用いることを特徴とする請求項1に記載のホスファチジ
    ルセリンの分画法。
  3. 【請求項3】 前記金属塩として、塩化リチウム、塩化
    カリウム又は塩化ナトリウムを用いることを特徴とする
    請求項1又は2に記載のホスファチジルセリンの分画
    法。
  4. 【請求項4】 前記アルコール類として、エチルアルコ
    ールを用いることを特徴とする請求項1〜3の何れかに
    記載のホスファチジルセリンの分画法。
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