JP2002232265A - 弾性表面波フィルタ - Google Patents

弾性表面波フィルタ

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Abstract

(57)【要約】 【課題】弾性表面波電極を用いたラダー型フィルタ回路
を構成した弾性表面波フィルタにおいて、通過帯域の低
周波側肩特性を急峻にすることにある。 【解決手段】並列共振子群の弾性表面波電極57〜60
のうち、弾性表面波電極60は、得られるQ値を弾性表
面波電極57〜59のQ値よりも劣化させたQ値劣化構
造とすると共に、弾性表面波電極60の共振周波数Fr
を弾性表面波電極57〜59の反共振周波数Faよりも
低く、かつ弾性表面波電極57〜59の共振周波数Fr
よりも高くしたことにある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧電基板上に複数
の弾性表面波電極をラダー型に構成してなる弾性表面波
フィルタに関し、特に、フィルタの通過帯域における低
域側の肩特性を改善した弾性表面波フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】移動体通信機器において、高周波用の帯
域フィルタとして、複数の弾性表面波電極を圧電基板上
に構成してなる弾性表面波フィルタが知られている。例
えば、特開平5−183380号公報には、圧電基板上
に複数の弾性表面波電極によりラダー型フィルタ回路を
構成した弾性表面波フィルタが開示されている。
【0003】図8は、上記先行技術に開示されている弾
性表面波フィルタを説明するための模式的な回路図であ
る。従来の弾性表面波フィルタ510は、矩形の圧電基
板520を用いて構成されている。圧電基板520上に
は、弾性表面波電極(不図示)からなる共振子530,
540,550,560が配設されている。すなわち、
図に示すように、入力端子570と出力端子580との
間に構成される直列腕において共振子530,540が
直列に接続されている(各共振子530,540を直列
共振子と称す。また、共振子530,540を併せて直
列共振子群と称す。以下同じ。)。また、直列腕とグラ
ンド電極590との間に、共振子550,560が並列
に接続されている(各共振子550,560を並列共振
子と称す。また、共振子550,560を併せて並列共
振子群と称す。以下、同じ。)。なお、直列共振子53
0,540と並列共振子550,560とは入出力間に
おいて交互に配置されており、各並列共振子550,5
60は夫々インダクタンス555,565を介してグラ
ンド電極590に接続されている。この直列共振子53
0と並列共振子550の1組で1段のラダー型フィルタ
を構成しており、同様に直列共振子540と並列共振子
560の1組で1段のラダー型フィルタを構成してい
る。
【0004】従来の弾性表面波フィルタ510の動作原
理は以下の通りである。図9は直列・並列共振子530
〜560を形成する各弾性表面波電極の構造を説明する
図である。図では1ポート型弾性表面波共振子の電極部
分のみが模式的に示されている。
【0005】図において、700は弾性表面波電極であ
る。弾性表面波電極700は中央に配置されたIDT7
10の両側に反射器720,730を配置した構造を有
する。IDT710は、複数の電極指711を有する櫛
歯状電極710aと、複数の電極指712を有する櫛歯
状電極710bとを、互いの電極指711,712が間
挿し合うように交叉して配置した構造を有する。なお、
例えば、櫛歯状電極710aは入出力電極に接続され、
また櫛歯状電極710bはグランド電極に接続される。
【0006】このような構造の弾性表面波電極700の
IDT710に入力された信号により励振された表面波
が、反射器720,730で反射されて定在波とされ、
反射器720,730間に閉じ込められ高いQ値を有す
る共振子として動作する。この弾性表面波電極700の
インピーダンス特性においては、周知のように、共振周
波数でインピーダンスが低くなる極が存在し、反共振周
波数においてインピーダンスが高くなる極が現れる共振
特性を有するようになる。
【0007】このような構造の直列・並列共振子530
〜560を有した弾性表面波フィルタ510では、弾性
表面波電極700のインピーダンス特性を利用して所望
の帯域幅を有する通過帯域を得ている。すなわち、各直
列共振子530,540の共振周波数と、各並列共振子
550,560の反共振周波数とを略一致させることに
より、この間の周波数付近において入出力インピーダン
スを特性インピーダンスと整合させており、それによっ
て通過帯域を構成している。特にラダー型フィルタ回路
では、弾性表面波電極700は所定のインピーダンス特
性を有するため、直列共振子530,540の反共振周
波数付近では非常に高インピーダンスとなり、逆に並列
共振子550,560の共振周波数付近では非常に低イ
ンピーダンスとなるため、この特性を利用してラダー型
フィルタ回路では、高域側の阻止域から通過帯域を介し
て低域側の阻止域を形成した幅広のフィルタ特性を得る
ことになる。
【0008】このようなラダー型フィルタ回路において
減衰極の減衰量を改善する方法として共振子に弾性表面
波電極で形成したLC回路を設けたり(特開平9−23
2906)、外部接続時のワイヤ長を変えることでワイ
ヤ自体のもつインダクタンス値を変化させ減衰極の位置
を変え減衰量を調整する(特開平11−55067)技
術が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年の
移動体通信システムにおいては、電波の有効利用のため
に規格が決められており、例えば、米国のPCS規格で
は受信帯域が1930〜1990MHz、送信帯域が1
850〜1910MHz、送受信フィルタの通過帯域同
士の間隔は20MHzとなり、受信帯域に隣接して送信
帯域が形成されているため、受信用フィルタにおいて
は、広帯域を維持しつつ、充分な減衰量と通過帯域にお
ける低挿入損失を確保することが必要となる。従って、
隣接する受信帯域の低域側(左肩側)において阻止域か
ら通過帯域の急峻な特性が必要となるが、上述の特開平
9−232906や特開平11−55067の何れの技
術でもってしてもフィルタ特性における広帯域化・左肩
側の急峻化の達成は困難であった。
【0010】本発明は上述の課題に鑑みて案出されたも
のであり、その目的は、特別なLC回路等がなくても、
広域化を維持しつつ、フィルタの通過帯域における低域
側の急峻性を十分取ることができる弾性表面波フィルタ
を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上述の課題を解決するた
めに本発明は、圧電基板の表面に、入力端子と出力端子
との間に複数の弾性表面波電極が直列接続された直列共
振子群と、直列共振子群の各弾性表面波電極の入力端子
側あるいは出力端子側とグランドとの間に複数の弾性表
面波電極が並列に接続された並列共振子群とを配すると
共に、直列共振子群の弾性表面波電極で形成される共振
周波数と並列共振子群の弾性表面波電極で形成される反
共振周波数を略一致させることでフィルタの通過帯域を
形成した弾性表面波フィルタにおいて、前記並列共振子
群の弾性表面波電極のうち、一部の弾性表面波電極は、
得られるQ値を他の弾性表面波電極で得られるQ値より
も劣化させたQ値劣化構造とすると共に、前記一部の弾
性表面波電極で形成する共振周波数が他の並列共振子群
の弾性表面波電極で形成する反共振周波数よりも低く、
かつ他の並列共振子群の弾性表面波電極で形成する共振
周波数よりも高くしたことを特徴とする弾性表面波フィ
ルタを提供する。
【0012】本発明の構成によれば、前記一部の弾性表
面波電極はQ値劣化構造とし、その共振周波数が、他の
並列共振子群の弾性表面波電極で形成する反共振周波数
よりも低く、かつ他の並列共振子群の弾性表面波電極で
形成する共振周波数よりも高くしたために、フィルタ特
性において低域側の減衰極から通過帯域に入るまでの間
に新たな減衰極が形成され、これによりフィルタの通過
帯域が広帯域を確保しつつ、通過帯域の低域側の急峻度
が大きくなり十分な肩特性を確保する事が可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施例について
図面を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態に係
る弾性表面波フィルタの構造を示す図であり、図2は本
発明の特徴を説明するための並列共振子の拡大図であ
る。図1において弾性表面波フィルタAは、圧電基板1
の主面に、入力端子(IN)と出力端子(OUT)との
間に複数の弾性表面波電極54,55,56が直列に接
続された直列共振子群と、弾性表面波電極57,58,
59,60が入出力端子(IN,OUT)とグランド
(GND)に対して並列に接続された並列共振子群が形
成されている。以下、直列共振子群の弾性表面波電極5
4〜56の夫々を直列共振子と称し、並列共振子群の弾
性表面波電極57〜60の夫々を並列共振子と称す。
【0014】直列共振子群の弾性表面波電極54,5
5,56及び並列共振子群の弾性表面波電極57,5
8,59,60は、何れも中央に櫛歯状のインターデジ
タルトランスデューサ(以下、IDT)54a〜60a
を有し、その両側に反射器54b,54c,55b,5
5c・・・60b,60cを形成した構造を有する。
【0015】圧電基板1は所定カット角、所定伝搬方向
となるように矩形状に切断処理された水晶、ニオブ酸リ
チウム、タンタル酸リチウム、四ホウ酸リチウム等から
成る。また、弾性表面波電極54,55,56及び弾性
表面波電極57,58,59,60は、例えば、アルミ
ニウム薄膜からなり、その厚みは0.1〜0.3μmで所
定のパターンに被着形成されている。また、IDT54
a〜60a及びその両側の反射器54b,54c,55
b,55c・・・60b,60cの電極指幅及び電極指
間隔は、例えば、弾性表面波の波長λに対して略1/4
λとなっている。
【0016】IDT54a〜60aの構造としては、例
えば、並列共振子群の弾性表面波電極57〜60のID
T57a〜60aの構造は図2(a)(b)に示すよう
に、電極指A1及びそれに交叉する電極指A2が互いに
交叉して配設されており、発生する弾性表面波の伝搬方
向に直交して整列しており、例えば、電極指A1及び電
極指A2の電極幅Pwと各電極指A1、A2の電極指間
隔Ppは略同じ長さに設定されている。なお、本実施例
では電極幅Pwと電極指間隔Ppの長さは略同じに設定
したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、電極
幅Pwと電極指間隔Ppの長さを異ならせたとしても本
発明の同様の効果を得ることができる。
【0017】61は入力端子であり、62は出力端子で
ある。入力端子61から直列にIDT54a〜56aが
接続され出力端子62につながっている。これらにID
T57a〜60aの一方側が各反射器57b,58c,
59c,60bを通じて接続されており、他方側が各反
射器57c,58b,59b,60cにより各グランド
電極(GND)に接続されている。
【0018】ここで、本発明では、図3に示すように、
並列共振子群の弾性表面波電極57〜60の内、弾性表
面波電極60は、得られるQ値を劣化させるQ値劣化構
造となっている。更に、Q値劣化構造に加えて、弾性表
面波電極60の共振周波数Frが並列共振子群の弾性表
面波電極57〜59の反共振周波数Faよりも低く、か
つ弾性表面波電極57〜59の共振周波数Frよりも高
くになるようにした。
【0019】ここで、Q値は一般的にQ=2πFL/R
(F:共振周波数 L:インダクタンス R:共振抵
抗)としてあらわされるが、本発明は、弾性表面波電極
60の共振周波数Frがフィルタの通過帯域に近く、か
つ弾性表面波電極60で得られるQ値を低くすることで
通過帯域の左肩を急峻なものにすることを見出したもの
である。
【0020】Q値を劣化させる程度としては、弾性表面
波電極60の共振周波数Frでのインピーダンスが弾性
表面波電極57〜59の共振特性中で共振周波数Frと
反共振周波数Faで結ばれる軌跡に近づくように共振特
性の挿入損失を劣化させると良い。
【0021】Q値劣化構造としては、共振抵抗Rを高く
するように形成すれば良く、高くするためには以下のよ
うな具体的構成とすると良い。具体的に、弾性表面波電
極60の各電極指A1、A2の対数が弾性表面波電極5
7〜59の各電極指A1、A2の対数に比べて少なくす
ることで共振抵抗Rが高くなりQ値を劣化させることが
できる。また、弾性表面波電極60の各電極指A1、A
2同士が交叉した長さPxが他の弾性表面波電極57〜
59の各電極指同士が交叉した長さPxに比べて短くす
ることで共振抵抗Rを高くしてQ値を劣化させることが
できる。
【0022】さらに、図4に示すように、弾性表面波電
極601は櫛歯状電極から形成されたサブ電極61、6
2から構成され、そのサブ電極61、62が互いに直列
に接続されている。この櫛歯状電極からなるサブ電極6
1は一方が入力端子(IN)と出力端子(OUT)を結
ぶ線に接続される電極61aと、電極61aに対向する
電極61bと、電極61aに接続するサブ電極62の一
方の電極62aと、電極62aに対向してグランド側に
接続される電極62bとが直列に接続されている。この
直列接続のため、共振抵抗Rが図1の弾性表面波電極6
0に比べて高くなり、Q値を劣化させることができる。
【0023】一方、弾性表面波電極60で形成する共振
周波数Frが他の並列共振子群の弾性表面波電極57〜
59で形成する反共振周波数Faよりも低く、かつ他の
並列共振子群の弾性表面波電極57〜59で形成する共
振周波数Frよりも高くする為の手段としては、図2に
示すように、並列共振子群の弾性表面波電極57〜60
の電極指の幅Pwと各電極指同士の電極指間隔Ppで構
成する電極指ピッチを、弾性表面波電極60よりも他の
弾性表面波電極57〜59が長くなるように形成すると
よい。この場合、電極指ピッチを変えるのは、並列共振
子群の弾性表面波電極57〜60の各電極指の幅Pwを
略同じとし、各電極指同士の電極指間隔Ppを変更する
方法、各電極指同士の電極指間隔Ppを略同じとし、各
電極指の幅Pwを変える方法及び並列共振子群の弾性表
面波電極57〜60の各電極指の幅Pwを変更し、かつ
各電極指同士の電極指間隔Ppを変更する方法があげら
れる。
【0024】また、弾性表面波電極60のメタライゼー
ションレシオ(電極指ピッチに対する電極指幅Pwの比
をいう。以下同じ)よりも他の並列共振子群の弾性表面
波電極57〜59のメタライゼーションレシオが大きく
なるように形成する方法がある。例えば、図2(a)に
示す弾性表面波電極57〜59について、電極指A1、
A2の電極指幅をPw=0.500μm、電極指間隔P
p=0.500μmとし、図2(b)に示す弾性表面波
電極60について、電極指幅をPw=0.400μm、
電極指間隔Pp=0.600μmとすることで、得られ
る共振周波数を異ならせることができる。
【0025】また、他の方法としては、弾性表面波電極
60の電極厚みを他の並列共振子群の弾性表面波電極5
7〜59の電極厚みに比べて薄くしても良い。
【0026】なお、上述では並列共振子群の1つの弾性
表面波電極60で並列共振子群の他の弾性表面波電極5
7〜59により形成される減衰極よりも高周波側に極を
形成しているが、これに限定されることはなく並列共振
子群の2つ以上の弾性表面波電極で形成してもよい。こ
のような構成にしても同様の効果が得られる。
【0027】かくして、本発明の弾性表面波フィルタA
によれば、従来、並列共振子群の弾性表面波電極57〜
60の減衰極が通過帯域の低域側の減衰極を形成するの
に用いていたのに対して、並列共振子群の一つの弾性表
面波電極60をQ値劣化構造とすると共に、その共振周
波数Frが、他の弾性表面波電極57〜59の反共振周
波数Faよりも低く、かつ他の弾性表面波電極57〜5
9の共振周波数Frよりも高くなるようにしたために、
フィルタ特性において低域側の減衰極から通過帯域に入
るまでの間で新たにもう1つの極が形成され、これによ
りフィルタの通過帯域が広帯域を確保しつつ、通過帯域
の低域側の急峻度が大きくなり十分な肩特性を確保する
事が可能となる。しかも、通過帯域減衰特性はほとんど
変化しないため、従来の設計方法はそのまま使用できる
ものである。
【0028】また、従来は外部引きまわし電極であるア
ルミ線ワイヤや金線ワイヤのワイヤ長を変えることでワ
イヤのもつインダクタンス値を変えて低域側の減衰域の
減衰量を確保しており結線状態により極の位置が微妙に
ずれ、特性検査の歩留まりを落とす原因になっていた
が、本発明によれば、そのようなものを利用せずに通過
帯域低域側肩特性を急峻にできるため安定した歩留まり
も確保できるものである。
【0029】
【実施例】次に本発明の作用効果を確認するために本発
明の実施例を示す。 (実施例1)圧電基板1としては42°Y−Xタンタル
酸リチウム基板を用い、その表面にAlまたはAl合金
からなる直列共振子の弾性表面波電極54,55,56
及び並列共振子の弾性表面波電極57,58,59,6
0を図1の配線のように形成した。これにより、中心周
波数1.96GHzのラダー型SAWフィルタを製作し
た。
【0030】この場合、直列共振子の弾性表面波電極5
4,55,56の交叉幅PxはPx=10〜15λ、並
列共振子の弾性表面波電極57,58,59の交叉幅P
xは何れもPx=30λ、弾性表面波電極60の交差幅
PxはPx=20λとした。また、直列共振子の弾性表
面波電極54,55,56の電極対数を95対、並列共
振子の弾性表面波電極57,58,59の電極対数を4
5対、弾性表面波電極60の電極対数を15対としてい
る。また、弾性表面波電極57、58,59の電極指幅
Pw及び電極指間隔Ppの双方を、Pp、Pw=0.5
03μmとし弾性表面波電極60の電極指幅Pwと電極
指間隔Ppの双方をPw、Pp=0.500μmとして
弾性表面波電極57〜59よりも電極指ピッチを短くし
た。なお、直列共振子の弾性表面波電極54、55、5
6の電極指幅Pwと電極指間隔Ppの双方をPp、Pw
=0.4845μmとし、電極幅Pw及び電極指間隔P
pは同じ長さに設定されている。
【0031】このように形成した弾性表面波フィルタA
のフィルタ特性を図5に示す。このとき、図5の縦軸は
減衰量(5dB/div)であり、横軸は規格化周波数
(中心周波数f0:1960MHz、span:196MH
z)である。
【0032】図5において0.97近傍に並列共振子の
弾性表面波電極57〜59による減衰極が形成されてい
る。さらに、1.04近傍に直列共振子の弾性表面波電
極54,55,56による減衰極が形成されている。
【0033】図5に示すように、通過帯域低域側の極の
高周波側に並列共振子の弾性表面波電極60による減衰
極Bが形成されることで低域側の通過域肩特性が急峻と
なり通過域特性が広帯域となっていることがわかる。こ
れに対し比較例として、直列共振子の弾性表面波電極5
4,55,56の交叉幅Pxは何れもPx=10〜15
λ、並列共振子の弾性表面波電極57〜60の交叉幅P
xは何れもPx=30λとして同じ長さに形成し、また
並列共振子の弾性表面波電極57〜60のPwおよびP
pは何れもPw,Pp=0.503μmとした。また、
直列共振子の弾性表面波電極54,55,56の電極対
数を95対、並列共振子の弾性表面波電極57〜60の
電極対数を45対とし、電極幅Pw及び電極指間隔Pp
を同じ長さに設定した比較例の弾性表面波フィルタを形
成してフィルタ特性を図6に示した。図6の縦軸も減衰
量(5dB/div)であり、横軸は規格化周波数(中
心周波数f0:1960MHz、span:196MHz)
とする。このフィルタ特性によれば、通過帯域の低域側
肩特性のスペックを十分満足するものが得られてないこ
とがわかる。 (実施例2)図1で示す弾性表面波電極60を図4で示
す弾性表面波電極601(直列に接続されたサブ電極6
1、62の構造)とする以外は実施例1と同一条件で実
験を行った。なお、サブ電極61、62の何れもが交叉
幅PxはPx=20λ、電極指幅Pw及び電極指間隔P
pの双方をPp、Pw=0.5μmとした。また、電極
対数を45対としている。このように実験されたフィル
タ特性を図7に示す。この結果でもサブ電極61,62
で構成される直列共振子の弾性表面波電極601が図1
で示した弾性表面波電極60に比べて共振抵抗が増加し
て弾性表面波電極601のQ値が他の並列共振子群の弾
性表面波電極57〜59のQ値に比べて劣化しており、
さらに弾性表面波電極60の共振周波数を、弾性表面波
電極57〜59の反共振周波数よりも低く、かつ弾性表
面波電極57〜59の共振周波数よりも高くしているの
で、通過帯域の左肩に新たな減衰極が発生し、通過帯域
の低域側の急峻度が大きくなっていることが理解でき
る。
【0034】
【発明の効果】本発明の構成によれば、一部の弾性表面
波電極はQ値劣化構造とし、その共振周波数を、他の弾
性表面波電極の反共振周波数よりも低く、かつ他の弾性
表面波電極の共振周波数よりも高くしたために、フィル
タ特性において低域側の減衰極から通過帯域に入るまで
の間に新たな減衰極が形成され、これによりフィルタの
通過帯域が広帯域を確保しつつ、通過帯域の低域側の急
峻度が大きくなり十分な肩特性を確保する事が可能とな
る弾性表面波フィルタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の弾性表面波フィルタの平面図である。
【図2】(a)は弾性表面波電極57〜59を示す図、
(b)は弾性表面波電極60の構成を示す図である。
【図3】本発明の弾性表面波電極57〜59と弾性表面
波電極60との共振特性を示す図である。
【図4】本発明の他の弾性表面波フィルタを説明する回
路図である。
【図5】本発明のフィルタ特性を示す特性図である。
【図6】比較例のフィルタ特性を示す特性図である。
【図7】本発明の他の弾性表面波フィルタにおいてのフ
ィルタ特性を示す特性図である。
【図8】従来の弾性表面波フィルタを説明するための模
式的平面図である。
【図9】1ポート型弾性表面波電極を説明するための拡
大平面図である。
【符号の説明】
A:弾性表面波フィルタ 1:圧電基板 54〜56:直列共振子の弾性表面波電極 57〜60:並列共振子の弾性表面波電極 61:入力端子 62:出力端子

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧電基板の表面に、入力端子と出力端子
    との間に複数の弾性表面波電極が直列接続された直列共
    振子群と、直列共振子群の各弾性表面波電極の入力端子
    側あるいは出力端子側とグランドとの間に複数の弾性表
    面波電極が並列に接続された並列共振子群とを配すると
    共に、直列共振子群の弾性表面波電極で形成される共振
    周波数と並列共振子群の弾性表面波電極で形成される反
    共振周波数を略一致させることでフィルタの通過帯域を
    形成した弾性表面波フィルタにおいて、 前記並列共振子群の弾性表面波電極のうち、一部の弾性
    表面波電極は、得られるQ値を他の弾性表面波電極で得
    られるQ値よりも劣化させたQ値劣化構造とすると共
    に、前記一部の弾性表面波電極で形成する共振周波数が
    他の並列共振子群の弾性表面波電極で形成する反共振周
    波数よりも低く、かつ他の並列共振子群の弾性表面波電
    極で形成する共振周波数よりも高くしたことを特徴とす
    る弾性表面波フィルタ。
  2. 【請求項2】 弾性表面波電極を電極指が互いに交叉す
    るように対向配置された櫛歯状電極で構成しており、前
    記弾性表面波電極の電極指の幅と電極指同士の電極指間
    隔とからなる電極指ピッチを、前記一部の弾性表面波電
    極よりも前記並列共振子群の他の弾性表面波電極が長く
    なるように形成することで、前記一部の弾性表面波電極
    で形成する共振周波数が他の並列共振子群の弾性表面波
    電極で形成する反共振周波数よりも低く、かつ他の並列
    共振子群の弾性表面波電極で形成する共振周波数よりも
    高くしたことを特徴とする請求項1記載の弾性表面波フ
    ィルタ。
  3. 【請求項3】 弾性表面波電極を電極指が互いに交叉す
    るように対向配置された櫛歯状電極で構成しており、弾
    性表面波電極の電極指の幅と各電極指同士の電極指間隔
    とからなる電極指ピッチに対する電極指の幅の比を、前
    記一部の弾性表面波電極よりも前記並列共振子群の他の
    弾性表面波電極が大きくなるように形成することで、前
    記一部の弾性表面波電極で形成する共振周波数が他の並
    列共振子群の弾性表面波電極で形成する反共振周波数よ
    りも低く、かつ他の並列共振子群の弾性表面波電極で形
    成する共振周波数よりも高くしたことを特徴とする請求
    項1記載の弾性表面波フィルタ。
  4. 【請求項4】 前記弾性表面波電極を電極指が互いに交
    叉するように対向配置された櫛歯状電極で構成すると共
    に、前記一部の弾性表面波電極の電極厚みを他の並列共
    振子群の弾性表面波電極の電極厚みに比べて薄く形成す
    ることで、前記一部の弾性表面波電極で形成する共振周
    波数が他の並列共振子群の弾性表面波電極で形成する反
    共振周波数よりも低く、かつ他の並列共振子群の弾性表
    面波電極で形成する共振周波数よりも高くしたことを特
    徴とする請求項1記載の弾性表面波フィルタ。
  5. 【請求項5】 前記Q値劣化構造として、前記弾性表面
    波電極を電極指が互いに交叉するように対向配置された
    櫛歯状電極から構成すると共に、前記一部の弾性表面波
    電極の各電極指の対数を他の並列共振子群の弾性表面波
    電極の各電極指の対数に比べて少なくしたたことを特徴
    とする請求項1記載の弾性表面波フィルタ。
  6. 【請求項6】 前記Q値劣化構造として、前記弾性表面
    波電極を電極指が互いに交叉するように対向配置された
    櫛歯状電極から構成すると共に、前記一部の弾性表面波
    電極の各電極指同士が交叉した長さを他の並列共振子群
    の弾性表面波電極の各電極指同士が交叉した長さに比べ
    て短くしてなること特徴とする請求項1記載の弾性表面
    波フィルタ。
  7. 【請求項7】 前記Q値劣化構造として、前記弾性表面
    波電極を電極指が互いに交叉するように対向配置された
    櫛歯状電極から構成すると共に、前記一部の弾性表面波
    電極が前記櫛歯状電極から形成された複数のサブ電極の
    直列接続からなることを特徴とする請求項1記載の弾性
    表面波フィルタ。
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