JP2002226827A - 近赤外線吸収化合物、それを用いた近赤外線吸収フィルターおよび当該フィルターを利用した近赤外線除去方法 - Google Patents

近赤外線吸収化合物、それを用いた近赤外線吸収フィルターおよび当該フィルターを利用した近赤外線除去方法

Info

Publication number
JP2002226827A
JP2002226827A JP2001027007A JP2001027007A JP2002226827A JP 2002226827 A JP2002226827 A JP 2002226827A JP 2001027007 A JP2001027007 A JP 2001027007A JP 2001027007 A JP2001027007 A JP 2001027007A JP 2002226827 A JP2002226827 A JP 2002226827A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
infrared
peak
infrared absorbing
compound
infrared ray
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001027007A
Other languages
English (en)
Inventor
Jun Yasui
潤 安井
Tetsuo Shimomura
哲生 下村
Shinya Onomichi
晋哉 尾道
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyobo Co Ltd
Original Assignee
Toyobo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyobo Co Ltd filed Critical Toyobo Co Ltd
Priority to JP2001027007A priority Critical patent/JP2002226827A/ja
Publication of JP2002226827A publication Critical patent/JP2002226827A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Coating Of Shaped Articles Made Of Macromolecular Substances (AREA)
  • Optical Filters (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 可視光線を光透過率が極めて高く透過するこ
とができ、かつプラズマディスプレイなどから放出され
るような、近赤外領域にある鋭いピークを効率的に吸収
することができる近赤外線吸収化合物、それを含んでな
る近赤外線吸収フィルター、および当該フィルターを利
用した近赤外線除去方法。 【解決手段】 後記一般式(1)または(2)の、78
0〜1300nmの範囲にある少なくとも1つの近赤外
線の特定のピークの透過率が20%以下であり、かつ可
視光線の透過率が70%以上である近赤外線吸収化合
物。 【化1】 (式中、R1〜R8およびXの定義は明細書と同義)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は近赤外線吸収化合
物、当該化合物を含んでなる近赤外線吸収フィルターお
よび当該フィルターを利用した近赤外線除去方法に関す
る。詳細には、可視光線を殆ど遮断せず、近赤外線、特
に鋭いピークを有する近赤外線を効率良く遮断する近赤
外線除去方法、および当該方法で用いることができる近
赤外線吸収化合物および近赤外線吸収フィルターに関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来から用いられてきた代表的な近赤外
線吸収フィルターとしては、下記のフィルターが挙げら
れる。 燐酸系ガラスに、銅や鉄などの金属イオンを含有した
フィルター(特開昭60−235740号公報、特開昭
62−153144号公報など)。 基板上に屈折率の異なる層を積層し、透過光を干渉さ
せることで特定の波長を透過させる干渉フィルター(特
開昭55−21091号公報、特開昭59−18474
5号公報など)。 共重合体に銅イオンを含有するアクリル系樹脂フィル
ター(特開平6−324213号公報)。
【0003】前記〜の近赤外線吸収フィルターに
は、それぞれ以下に示すような問題点があった。前記
の方式の場合、そのフィルターはある特定の近赤外領域
に急峻な吸収があるので、その領域における近赤外線遮
断率は非常に良好であるが、光学特性は自由に設計でき
ない。また、可視光領域の赤色の一部も大きく吸収して
しまうため透過色は青色に見える。ディスプレイ用途で
は色バランスが重視されるため、当該フィルターをこの
ような用途に使用するのは不適切である。さらに、当該
フィルターはガラス製であるため、加工性にも問題があ
る。
【0004】前記の方式の場合、屈折率に差のある層
を積層することによって、所望の特性を有するフィルタ
ーを製造することができる。この方式では、光学特性は
自由に設計でき、ほぼ設計通りの品質を有するフィルタ
ーを製造することが可能であるが、そのためには屈折率
に差のある層の積層枚数を非常に多くする必要があり、
製造コストが高くなるといった欠点がある。また、大面
積のフィルターを必要とする場合、全面積にわたって高
い精度の膜厚均一性が要求されるため、製造が困難であ
る。
【0005】前記の方式の場合、前記の方式と比較
すると、高分子樹脂製であるので加工性は改善されてい
るが、光学特性の設計の自由度が低く、可視光領域の赤
色部分にも吸収があるためフィルターが青く見える。さ
らに、銅イオンの近赤外線吸収が小さく、かつアクリル
樹脂に含有できる銅イオン量は限られているため、近赤
外線遮断率を良くするためには、銅イオン量を増加させ
る必要があるのでアクリル樹脂を厚くしなければならな
いという問題点もある。
【0006】従来から用いられてきた代表的な近赤外線
吸収化合物としては、下記の化合物が挙げられる。 (1)特開平8−120186号公報、特開平9−27
9125号公報および特開平8−120186号公報に
示されているような、フタロシアニン系色素およびナフ
タロシアニン系色素。 (2)特開昭60−43605号公報、特開昭61−1
15958号公報、特開昭61−291651号公報、
特開昭62−132963号公報および特開平1−17
2458号公報に示されているようなアントラキノン系
色素。 (3)特開昭60−236131号公報および特開平4
−174403号公報に示されているようなアミニウム
塩系色素。 (4)特開昭57−21458号公報、特開昭61−3
2003号公報、 特開昭62−187302号公報、
特公昭61−32003号公報および特開昭61−32
003号公報に示されているようなジチオール金属錯体
系色素。 (5)特開平5−178808号公報、特開平5−29
5967号公報および特開平9−310031号公報に
示されているようなジインモニウム塩系色素。
【0007】前記(1)〜(5)で示される近赤外線吸
収化合物を含有する近赤外線吸収フィルターは、加工性
や生産性に優れ、また安価に製造することができ、さら
に光学特性の設計の自由度も比較的大きい。しかしなが
ら、従来使用されてきた前記(1)〜(5)の近赤外線
吸収化合物には、それぞれ以下に示すような問題点があ
った。
【0008】前記(1)〜(3)の色素を用いて近赤外
線吸収フィルターを製造した場合、近赤外線の遮断が不
十分である上、着色しているフィルターしか得られな
い。前記(4)の色素を用いて近赤外線吸収フィルター
を製造した場合、殆ど着色はみられないが、近赤外線の
遮断が不十分なフィルターしか得られない。前記(5)
の色素を用いて近赤外線吸収フィルターを製造した場
合、着色は殆どしていないが、800〜900nmの領
域における近赤外線の遮断が不十分であるフィルターし
か得られない。
【0009】近年、薄型大画面ディスプレイとしてプラ
ズマディスプレイが注目されているが、プラズマディス
プレイから不要な近赤外線が放出されており、これによ
り近赤外線リモコンを使う電子機器等の誤動作を起こす
問題がある。従って、近赤外線を吸収し、かつ可視光線
を透過する材料をプラズマディスプレイの前面に設置す
ることが必要とされる。しかしながら、従来使用されて
きた前記(1)〜(5)の色素を用いた近赤外線吸収フ
ィルターは、色素を組み合わせることによって近赤外線
を遮断しているが、これをプラズマディスプレイから放
射される近赤外線の遮断に利用して近赤外線の鋭いピー
クを遮断するためには大量の色素が必要となり、また放
射ピーク以外の波長領域にも吸収ピークを有するため効
率的ではない。また、所望の吸収ピークにするための色
素の組み合わせが難しく、設計自由度が低かった。この
ため、鋭い放射ピークを効率的に、経済的に遮断するこ
とができる近赤外線吸収化合物や近赤外線吸収フィルタ
ー、それを用いた近赤外線除去方法の開発が望まれてい
た。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な状況に鑑みなされたものであって、その目的は、可視
光領域の光透過性が極めて高く、かつ近赤外領域(78
0〜1300nm)にある鋭いピークを効率的に吸収す
ることができる近赤外線吸収化合物、当該化合物を含ん
でなる近赤外線吸収フィルター、および当該フィルター
を利用した近赤外線除去方法を提供することである。
【0011】プラズマディスプレイから放射される近赤
外線には、固有の波長を有する鋭いピークを複数有して
おり、かつそのピーク間領域では近赤外線がほとんど放
射されていないという特徴がある。したがって、近赤外
線吸収化合物が鋭い放射ピークのみを効果的に吸収する
ことが可能であるならば、近赤外線吸収化合物を余分に
使用することなく、必要最小限の使用量でプラズマディ
スプレイから放射される不要な近赤外線を遮断すること
ができる。さらに、当該使用量が少ないことにより、可
視光領域での透明性が向上することも期待でき、その
上、パネルの製造工程および近赤外線吸収フィルター使
用期間における近赤外線吸収フィルターの変質防止や長
寿命化にも期待できる。従って、本発明の目的は、特
に、上記特性を有する近赤外線を効率的に遮断(吸収)
することができ、可視光領域の光透過性が極めて高く、
高性能で、設計自由度、加工性および生産性に優れた近
赤外線吸収フィルター、当該化合物を含んでなる近赤外
線吸収フィルター、および当該フィルターを利用した近
赤外線除去方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記のような
状況に鑑みなされたものであって、前記目的を解決する
ことができる近赤外線吸収化合物、当該化合物を含んで
なる近赤外線吸収フィルターおよび当該フィルターを利
用した近赤外線除去方法は以下の通りである。 [1] 一般式(1)
【0013】
【化5】
【0014】(式中、R1〜R4は、同一または異なっ
て、それを置換基とするモノ置換ベンゼンの光イオン化
ポテンシャルが8.00eV〜9.25eVのエネルギ
ー範囲にある原子または原子団を示し、環Aと環Bはさ
らに置換基を有してもよく、X-1はカウンターイオンを
示す。但し、R1〜R4の全てが同一または異なってジア
ルキルアミノ基である場合を除く。)、または一般式
(2)
【0015】
【化6】
【0016】(式中、R5とR6は、同一または異なっ
て、それを置換基とするモノ置換ベンゼンの光イオン化
ポテンシャルが8.00eV〜9.25eVのエネルギ
ー範囲にある原子または原子団を示し、環A’と環B’
はさらに置換基を有してもよく、R7とR8は、同一また
は異なって、炭素数1〜8のアルキル基を示し、X-1
カウンターイオンを示す。)で表され、780〜130
0nmの範囲にある少なくとも1つの近赤外線の下記ピ
ークBの透過率が20%以下であり、かつ380nm以
上780nm未満の可視光線の透過率が70%以上であ
る近赤外線吸収化合物(A)を含有してなる近赤外線吸
収フィルターに、近赤外線を通過させることを特徴とす
る近赤外線除去方法; ピークB:発光エネルギーが最大のピークまたは当該ピ
ークに対する相対強度が0.25以上であるピークであ
って、かつそのピークの発光エネルギーの2分の1にお
けるピーク幅が30nm以下であるピーク。 [2]近赤外線吸収化合物(A)が、近赤外線のピークB
の少なくとも1つとの波長差が30nm以内である吸収
ピークを有する、上記[1]の近赤外線除去方法。 [3]近赤外線吸収フィルターが、近赤外線吸収化合物
(A)および高分子樹脂を含有する層を基材上に積層し
てなる、上記[1]または[2]の近赤外線除去方法。 [4]近赤外線吸収フィルターが、近赤外線吸収化合物
(A)を少なくとも2つ含有し、かつ近赤外線吸収化合
物(A)がそれぞれ異なるピークBを吸収する、上記
[1]〜[3]のいずれかの近赤外線除去方法。 [5]近赤外線吸収フィルターが、近赤外線吸収化合物
(A)を含有する層を基材上に2以上積層してなる、上
記[4]の近赤外線除去方法。 [6]基材の380nm以上780nm未満の可視光線の
透過率が70%以上である、上記[3]〜[5]のいずれかの
近赤外線除去方法。 [7]基材が、厚さ75μm換算で、可視光から近赤外線
までの全領域上にわたる透過率が90%以上であるポリ
エステル系フィルムである、上記[3]〜[6]のいずれかの
近赤外線除去方法。 [8]ピークBの波長が824nm、882nm、920
nmまたは980nmである、上記[1]〜[7]のいずれか
の近赤外線除去方法。 [9]プラズマディスプレイ用である、上記[1]〜[8]のい
ずれかの近赤外線除去方法。 [10]近赤外線吸収化合物(A)の、一般式(1)の置換
基のR1〜R4の光イオン化ポテンシャルまたは一般式
(2)の置換基のR5とR6の光イオン化ポテンシャルを
制御して、当該化合物の吸収ピークの波長を制御する、
上記[1]〜[9]のいずれかの近赤外線除去方法。 [11]824±30nm、882±30nm、920±3
0nmおよび980±30nmの少なくとも1つの近赤
外線の波長のピークの透過率が20%以下であり、かつ
380nm以上780nm未満の可視光線の透過率が7
0%以上である、一般式(1)
【0017】
【化7】
【0018】(式中、R1〜R4は、同一または異なっ
て、それを置換基とするモノ置換ベンゼンの光イオン化
ポテンシャルが8.00eV〜9.25eVのエネルギ
ー範囲にある原子または原子団を示し、環Aと環Bはさ
らに置換基を有してもよく、X-1はカウンターイオンを
示す。但し、R1〜R4の全てが同一または異なってジア
ルキルアミノ基である場合を除く。)、または一般式
(2)
【0019】
【化8】
【0020】(式中、R5とR6は、同一または異なっ
て、それを置換基とするモノ置換ベンゼンの光イオン化
ポテンシャルが8.00eV〜9.25eVのエネルギ
ー範囲にある原子または原子団を示し、環A’と環B’
はさらに置換基を有してもよく、R7とR8は、同一また
は異なって、炭素数1〜8のアルキル基を示し、X-1
前記と同義である。)で表される近赤外線吸収化合物。 [12]近赤外線が、近赤外線吸収化合物が分解されないエ
ネルギー密度を有する、上記[11]の近赤外線吸収化合
物。 [13]上記[11]または[12]の近赤外線吸収化合物を含有し
てなる近赤外線吸収フィルター。 [14]プラズマディスプレイから放射される近赤外線を除
去するために使用される、上記[13]の近赤外線吸収フィ
ルター。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を詳細
に説明する。本発明におけるピークの位置は特に断りの
ない限り、そのピークのピークトップの波長で表す。ま
た、本発明における近赤外領域とは、特に断りのない限
り、780〜1300nmの波長領域のことであり、ま
た、本発明における可視光領域とは、特に断りのない限
り、380nm以上780nm未満の波長領域のことで
ある。
【0022】本発明における近赤外線吸収化合物の近赤
外線および可視光線の「透過率」は、近赤外線吸収化合
物を10mg/Lの塩化メチレン溶液とし、これをセル
巾が1cmの石英セルに入れ、分光光度計により測定し
た値のことである。
【0023】本発明は、近赤外線吸収フィルターに近赤
外線を通過させることによって、近赤外線を除去する方
法に関し、当該本発明の方法により、780〜1300
nmの範囲にある少なくとも1つの近赤外線の下記ピー
クBの透過率を20%以下にし、かつ380nm以上7
80nm未満の可視光線の透過率を70%以上にするこ
とができる。本発明の近赤外線除去方法で使用する近赤
外線吸収フィルターは、下記一般式(1)
【0024】
【化9】
【0025】(式中、R1〜R4は、同一または異なっ
て、それを置換基とするモノ置換ベンゼンの光イオン化
ポテンシャルが8.00eV〜9.25eVのエネルギ
ー範囲にある原子または原子団を示し、環Aと環Bはさ
らに置換基を有してもよく、X-1はカウンターイオンを
示す。但し、R1〜R4の全てが同一または異なってジア
ルキルアミノ基である場合を除く。)、または一般式
(2)
【0026】
【化10】
【0027】(式中、R5とR6は、同一または異なっ
て、それを置換基とするモノ置換ベンゼンの光イオン化
ポテンシャルが8.00eV〜9.25eVのエネルギ
ー範囲にある原子または原子団を示し、環A’と環B’
はさらに置換基を有してもよく、R7とR8は、同一また
は異なって、炭素数1〜8のアルキル基を示し、X-1
カウンターイオンを示す。)で表され、780〜130
0nmの範囲にある少なくとも1つの近赤外線の下記ピ
ークBの透過率が20%以下であり、かつ380nm以
上780nm未満の可視光線の透過率が70%以上であ
る近赤外線吸収化合物(以下、これらを近赤外線吸収化
合物(A)ともいう)を含有してなる。
【0028】ピークBとは、発光エネルギーが最大のピ
ークまたは当該ピークに対する相対強度が0.25以上
であるピークであって、かつそのピークの発光エネルギ
ーの2分の1におけるピーク幅が30nm以下であるピ
ークを意味する。このようなピークBは、鋭いピークで
あると言え、以下で「鋭いピーク」と表現しているもの
はすべて「ピークB」と同義である。
【0029】まず、本発明における定義の説明をする。
本発明におけるモノ置換ベンゼンの光イオン化ポテンシ
ャルのデータは、“HAND-BOOK OF HeI PHOTOELECTRON S
PECTRA OF FUNDAMENTAL ORGANIC MOLECULES, by K.KIMU
RA, S.KATSUMATA, Y.ACHIBA, T.YAMAZAKI and S.IWATA
; JAPAN SCIENCE SOCIE-TIES PRESS, 1981"から採用し
たものである。
【0030】R7とR8における炭素数1〜8のアルキル
基は、直鎖状または分岐鎖状であり、例えば、メチル、
エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブ
チル、tert−ブチル、イソブチル、ペンチル、ネオ
ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが挙げら
れる。
【0031】本発明の一般式(1)における環Aおよび
環B、並びに本発明の一般式(2)における環A’およ
び環B’は、さらに置換基を有してもよい。各環は、そ
れぞれ、1またはそれ以上の置換基を有していてもよ
く、環Aと1以上の環Bの両方が置換基を有していて
も、環A’と1以上の環B’の両方が置換基を有してい
てもよい。但し、該置換基としては、吸収波長に大きな
変化を与えないものに限定され、例えばアルキル基(好
ましくは炭素数1〜8のアルキル基;R7とR8における
炭素数1〜8のアルキル基と同義である)が挙げられ
る。環A、環B、環A’または環B’にアルキル基がさ
らに置換した場合、近赤外線吸収化合物(A)の溶剤へ
の溶解性を上げることができて好ましい。
【0032】本発明の一般式(1)のR1〜R4および一
般式(2)のR5とR6における、「それを置換基とする
モノ置換ベンゼンの光イオン化ポテンシャルが8.00
〜9.25eVのエネルギー範囲にある原子または原子
団」としては、例えば水素原子、アルコキシ基(好まし
くは炭素数1〜8であり、例えばn−ブトキシなど)、
アルキル基(好ましくは炭素数1〜8である)、ハロゲ
ン原子(フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原
子)などが挙げられる。
【0033】本発明の一般式(1)および(2)のX-1
における中性化のためのカウンターイオンとしては、例
えば過塩素酸塩(X-1=ClO4 -)、テトラフルオロホ
ウ酸塩(X-1=BF4 -)、トリクロロ酢酸塩(X-1=C
Cl3COO-)、トリフルオロ酢酸塩(X-1=CF3
OO-)、ピクリン酸塩(X-1=(NO236
2-)、ヘキサフルオロ砒酸塩(X-1=AsF6 -)、ヘ
キサフルオロアンチモン酸塩(X-1=SbF6 -)、ベン
ゼンスルホン酸塩(X-1=C65SO3 -)などの塩を形
成できる一価のイオンが挙げられる。
【0034】一般式(1)におけるX-1および置換基R
1〜R4の組み合わせ、並びに一般式(2)におけるX-1
および置換基R5、R6の組み合わせは、どのようなピー
クトップ波長を有する近赤外線ピークを除去するかによ
って決めればよい。例えば、一般式(1)において、X
-1がSbF6 -であり、置換基R1〜R4が全てメチル基
(トルエンの光イオン化ポテンシャルが8.83eV)
である、近赤外線吸収化合物(A)(実施例1の化合
物)を本発明の近赤外線吸収フィルターに適用すれば、
ピークトップ波長が882nmである放射ピークの透過
率を20%以下となるように遮断でき、かつ可視光領域
における透過率を70%以上とすることができる。
【0035】前記近赤外線吸収化合物(A)の合成方法
としては、まず前駆体である中性分子を公知の方法、例
えばShigeru Sasaki and Masa
hiko Iyoda,Chemistry Lett
ers,1995年に記載の方法に準じて合成し、次に
合成された前駆体(中性分子)を溶媒に加え、これに酸
化剤を加え、攪拌することによって得ることができる
(特公昭43−25335)。当該酸化に使用する溶媒
としては、例えばアセトン、N,N−ジメチルホルムア
ミドなどが挙げられ、N,N−ジメチルホルムアミドが
好ましい。酸化剤としては適当な酸の銀塩が使用でき
る。例えば過塩素酸塩(ClO- 4)、テトラフルオロホ
ウ酸塩(BF4 -)、トリクロロ酢酸塩(CCl3CO
-)、トリフルオロ酢酸塩(CF3COO-)、ピクリ
ン酸塩((NO2362-)、ヘキサフルオロ砒酸
塩(AsF6 -)、ヘキサフルオロアンチモン酸塩(Sb
6 -)、ベンゼンスルホン酸塩(C65SO3 -)のよう
なものが挙げられる。
【0036】次に、本発明における近赤外線吸収化合物
(A)について詳細に説明する。近赤外線を除去する際
に使用する近赤外線吸収化合物(A)における、近赤外
線の鋭いピークの透過率は5%以下が好ましく、380
nm以上780nm未満の可視光線の透過率は85%以
上が好ましい。
【0037】近赤外線を除去する際に使用する近赤外線
吸収化合物(A)としては、近赤外線のピークBの少な
くとも1つとの波長差が30nm以内である吸収ピーク
を有するのが好ましく、より好ましくは20nm以内、
さらに好ましくは10nm以内、さらにより好ましくは
5nm以内である。もちろん、同じ波長であるのが最も
好ましい。
【0038】例えば、プラズマディスプレイから放射さ
れる近赤外線を除去する際には、ピークBの波長が82
4nm、882nm、920nmまたは980nmであ
れば、好ましくは824nm、882nm、920nm
および980nmのうちの少なくとも1つの波長と30
nm以内、より好ましくは20nm以内、さらに好まし
くは10nm以内、さらにより好ましくは5nm以内の
波長、特に好ましくはその放射ピークと同じ波長に吸収
ピークを有する上記近赤外線吸収化合物(A)を用いれ
ばよい。
【0039】本発明の近赤外線の除去に使用する近赤外
線吸収化合物(A)は、最大波長の吸収ピークを第1ピ
ークとし、波長が二番目に大きいピークを第2ピークと
した場合、一般的に、第1ピークは近赤外領域に存在し
ており、第2ピークは近赤外領域または可視光領域に存
在する。本発明者らは、近赤外線吸収化合物(A)の有
する、一般式(1)の置換基のR1〜R4の光イオン化ポ
テンシャルや一般式(2)の置換基のR5とR6の光イオ
ン化ポテンシャルを制御することにより、吸収ピークの
波長を制御することができること、即ち、近赤外線領域
内で第1ピークを移動させ、特に第1ピークのピークト
ップ波長を吸収すべき放射ピークのピークトップ波長か
ら30nm以内(特に好ましくは放射ピークと同じ波
長)に移動させることができるので、吸収すべき放射ピ
ークのピークトップ波長における透過率が20%以下と
なるようにすることができるため、本発明の近赤外線除
去方法に使用できることを見出した。
【0040】さらに、近赤外線吸収化合物(A)の第2
ピークが可視光領域に存在する場合には、一般式(1)
の置換基のR1〜R4の光イオン化ポテンシャルや一般式
(2)の置換基のR5とR6の光イオン化ポテンシャルを
制御することにより、第2ピークを近赤外領域に移動さ
せることができるため、当該近赤外線吸収化合物(A)
の可視光線の吸収量を少なくすることができる。従っ
て、当該化合物を用いれば着色の少ない近赤外線吸収フ
ィルターを得ることができて好ましい。
【0041】上記式(1)および(2)の近赤外線吸収
化合物(A)は、824±30nm、882±30n
m、920±30nmおよび980±30nmの少なく
とも1つの近赤外線の波長のピークの透過率が20%以
下であり、かつ380nm以上780nm未満の可視光
線の透過率が70%以上であるので、当該化合物を含有
してなる近赤外線吸収フィルターは、近赤外線の除去、
特にプラズマディスプレイからの近赤外線の除去に有用
である。
【0042】本発明で検討している近赤外線は、近赤外
線吸収化合物が分解されないエネルギー密度を有してい
る。一般的に電磁場を吸収するという外部応答の性質に
は、線形性の部分と非線形性の部分とがあり、本発明に
おいては前者の場合を想定している。非線形性が問題に
なるのは、例えば高出力レーザーの場合のように、エネ
ルギー密度が高い場合である。非線形性吸収における吸
収波長が本発明の範囲であっても、この吸収強度は極め
て弱く問題とはならない。
【0043】次に、本発明における近赤外線吸収フィル
ターについては説明する。近赤外線を除去する際に使用
する近赤外線吸収フィルターは、近赤外線吸収化合物
(A)および高分子樹脂を含有する層(以下、近赤外線
吸収層ともいう)と基材とからなり、近赤外線吸収層が
基材上に積層している構成をとっている。当該フィルタ
ーは、780〜1300nmの範囲にある少なくとも1
つの近赤外線のピークBを透過率20%以下に吸収し、
かつ380nm以上780nm未満の可視光線を透過率
70%以上に透過する。
【0044】除去すべき近赤外線が2以上の鋭いピーク
を含んでいる場合、近赤外線を遮断するために、近赤外
線のそれぞれ異なる鋭いピークを吸収するような近赤外
線吸収化合物(A)を少なくとも2つ含む近赤外線吸収
フィルターが必要となる場合もある。近赤外線吸収化合
物(A)を2つ以上併用する必要がある場合、併用する
近赤外線吸収化合物(A)同士が分子間で相互作用等を
起こさない時()は、2つ以上の近赤外線吸収化合物
を同一層に配合することができるが、分子間で相互作用
等を起こす時()は、相互作用し合う近赤外線吸収化
合物同士を同一層に配合することはできないので、それ
ぞれを異なる層に配合する必要がある。勿論、の場合
には各近赤外線吸収化合物をそれぞれ異なる層に配合す
ることも可能であり、またこれらの配合方法および
を併用してもよい。
【0045】即ち、除去すべき近赤外線が2以上の鋭い
ピークを含んでいる場合、例えば次のような態様の近赤
外線吸収フィルターを利用すればよい。併用する近赤外
線吸収化合物(A)同士が上記の関係にある場合、近
赤外線吸収化合物(A)を少なくとも2つ含有し、かつ
近赤外線吸収化合物(A)がそれぞれ異なるピークBを
吸収する近赤外線吸収フィルター(A−)。
【0046】併用する近赤外線吸収化合物(A)同士が
上記の関係にある場合、近赤外線吸収化合物(A)を
含有する層を基材上に2以上積層してなり、かつ近赤外
線吸収化合物(A)がそれぞれ異なるピークBを吸収す
る近赤外線吸収フィルター(A−)。近赤外線吸収フ
ィルター(A−)においては、2以上の近赤外線吸収
層を基材へ積層する順序は特に限定はなく、また、2以
上の近赤外線吸収層は基材の片面のみに積層してもよい
し、両面に積層してもよい。
【0047】近赤外線吸収層に含まれる近赤外線吸収化
合物(A)と高分子樹脂の量や近赤外線吸収層の厚み
は、近赤外線吸収化合物(A)や高分子樹脂などの種類
などに依存するが、近赤外線吸収フィルターにおける近
赤外線の透過率が20%以下になり、かつ可視光線の透
過率が70%以上になるように調整すればよく、例え
ば、近赤外線吸収化合物(A)として後記実施例1記載
の構造式(4)で示される近赤外線吸収化合物(A)を
用い、かつ高分子樹脂として共重合ポリエステル樹脂を
用いる場合、近赤外線吸収層の厚み(μm)と当該層中
に含まれる高分子樹脂に対する近赤外線吸収化合物
(A)の含有量(重量%)との積は、好ましくは4.0
〜7.0、より好ましくは5.5〜6.5である。
【0048】本発明における高分子樹脂としては、本発
明の近赤外線吸収化合物(A)を溶解できるものであれ
ば特に限定されなく、例えばポリエステル系、アクリル
系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系
またはポリカーボネート系樹脂が好適である。
【0049】また、本発明の近赤外線吸収フィルターに
おける基材としては、380nm以上780nm未満の
可視光線の透過率が70%以上である基材を用いればよ
く、好ましくは、厚さ75μm換算で、可視光から近赤
外線までの全領域上にわたり透過率が90%以上である
基材が挙げられ、なかでも透明性が高く、低コストで取
り扱い易いという点からプラスチックフィルムが特に好
ましい。基材の厚さが75μmではない場合の厚さ75
μm換算での透過率とは、予め基材の厚みと透過率との
関係をプロットしたものの厚み75μm時の透過率のこ
とである。
【0050】具体的には、ポリエステル系、アクリル
系、セルロース系、ポリエチレン系、ポリプロピレン
系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリカーボ
ネート、フェノール系、ウレタン系樹脂から形成された
フィルムが挙げられ、物理的特性、光学特性、耐薬品性
や環境負荷などの観点から、厚さが75μm換算時の可
視光から近赤外線までの全領域上にわたる透過率が90
%以上のポリエステル系フィルムがより好ましい。
【0051】ポリエステル系フィルムとしては、ポリエ
チレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、
ポリエチレン−2,6−ナフタレート又はこれらの樹脂
の構成成分を主成分とする共重合体から形成された二軸
配向ポリエステル系フィルムが好ましく、中でもポリエ
チレンテレフタレートから形成された、二軸配向ポリエ
チレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0052】近赤外線吸収フィルターの製造において、
近赤外線吸収層の基材への積層方法としては特に限定さ
れなく、例えば共押出し法、コーティング法などが挙げ
られ、なかでもコーティング法が厚み均一性やコストの
点で好ましい。
【0053】コーティング法の場合、本発明の近赤外線
吸収化合物(A)と高分子樹脂が溶解できる溶剤にこれ
らを溶解させてコーティングを行う。この時の溶剤とし
ては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、イソブ
チルメチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、メタノ
ール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチルセ
ロソルブ、ブチルセロソルブ、ベンゼン、トルエン、キ
シレン、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、n−ヘプ
タン、塩化メチレン、クロロホルム、N,N−ジメチル
ホルムアミド、水などが挙げられ、1つまたは2つ以上
併用してもよく、またこれらに限定されるものではな
い。
【0054】コーティング法を具体的に説明すると、上
記溶剤に、高分子樹脂および少なくとも1つの近赤外線
吸収化合物(A)を添加して溶解させ、これを、例えば
基材上に高速でコーティングできるグラビアコート法、
リバースコート法、キスロールコート法、ロールコート
法などを用いて塗布することによって行うことができ、
当該方法は加工性や生産性の点も優れている。本発明の
近赤外線吸収層中の近赤外線吸収化合物(A)は、高分
子樹脂に溶解した状態であるのが好ましい。
【0055】基材の片面のみに近赤外線吸収層を積層さ
せた構成を有する近赤外線吸収フィルター(A−)
は、例えば、基材上に上記の方法で1層目の近赤外線吸
収層を設けた後、さらにコーティング法などにより2層
目以降の近赤外線吸収層を設けることにより得ることが
できる。1層目と2層目以降の近赤外線吸収層を形成す
るのに用いる、溶剤、バインダーおよび方法は同じであ
っても異なっていてもよい。2層目以降の近赤外線吸収
層をコーティング法により設ける場合、層の混合を避け
るため、1層目の近赤外線吸収層を乾燥後に設けるのが
好ましい。
【0056】基材の両面に近赤外線吸収層を積層させた
構成を有する近赤外線吸収フィルター(A−)は、例
えばコーティング法により製造することができ、コーテ
ィングにより基材の両側に同時に近赤外線吸収層を設け
ることもできるし、基材の片面に近赤外線吸収層を設け
たのち、その反対面に近赤外線吸収層を設けることもで
きる。近赤外線吸収層の形成方法、用いる溶剤、バイン
ダー等は、近赤外線吸収層1層だけ形成する場合と同じ
であっても異なってもよい。
【0057】近赤外線吸収層には、さらに慣用な各種添
加剤が含有されていても良い。当該添加剤として、例え
ば、帯電防止剤、UV吸収剤、安定剤等が挙げられる
が、透明性の点から、易滑性付与を目的とした不活性粒
子を実質上含有しないことが好ましい。
【0058】また、近赤外線吸収フィルターにおいて
は、基材と近赤外線吸収層との密着性を良くするために
基材の近赤外線吸収層を積層する側の面に予め易接着層
を積層しておくことが好ましい。易接着層の積層方法と
しては、特に好ましくは未延伸または一軸延伸後の基材
の少なくとも近赤外線吸収層を積層する面に易接着層を
積層後、これを、少なくとも一軸方向に延伸・熱固定処
理するインラインコート法に付す方法が挙げられる。上
記インラインコート法に付す方法により積層された易接
着層に、適切な粒径の微粒子を含有させることにより滑
り性をもたせておけば、良好なハンドリング性(滑り
性、巻き取り性など)、耐スクラッチ性を付与すること
ができる。このようにすれば、基材に易滑性付与を目的
として不活性粒子を含有させる必要がなくなるため高透
明な基材を得ることができ、例えば基材としてポリエチ
レンテレフタレートを用いる場合には全光線透過率は9
0%以上となる。
【0059】前記易接着層の樹脂としては、例えば共重
合ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル
系樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹
脂、アクリルグラフトポリエステル樹脂などが挙げら
れ、少なくとも1つ以上を使用することが好ましい。な
かでも、共重合ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系
樹脂からなる樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリ
エステル樹脂が特に好ましい。
【0060】以上から、近赤外線吸収化合物(A)は、
一般式(1)の置換基のR1〜R4の光イオン化ポテンシ
ャルや一般式(2)の置換基のR5とR6の光イオン化ポ
テンシャルを制御することによって当該化合物の吸収ピ
ークの波長を制御することができるため、当該化合物を
利用することにより、可視光領域の光透過性が高く、高
性能で、しかも従来のように色素を組み合わせる必要が
ないため、設計自由度、加工性および生産性に優れた、
近赤外線吸収フィルターを製造することができる。
【0061】本発明の近赤外線吸収フィルターは、近赤
外線を遮断する機能が必要な用途に広く適用することが
でき、例えば光学機器(例えば、ビデオカメラなど)の
受光素子や撮像素子の受光感度補正や色調補正、キャッ
シュカードやIDカード等の偽造防止、太陽光線に含ま
れる近赤外線を吸収するような調光材料、植物育成の制
御などを目的とした農業用資材や視覚保護医療材料(例
えば、保護メガネなど)、更には感光材料などにも利用
することができる。その上さらに、固有波長を有する鋭
いピークを複数有しており、かつそのピーク間領域では
近赤外線がほとんど放射されていない映像出力装置や照
明器具などの不要な近赤外線のみを遮断するといった高
機能性の用途にも適用でき、特にプラズマディスプレイ
から放射される不要な近赤外線を遮断する用途に用いる
ことができる。
【0062】
【実施例】本発明の近赤外線吸収化合物および近赤外線
吸収フィルターの製造方法について、基材としてポリエ
チレンテレフタレート(以下、PETと略す)を使用し
た場合を例にとって説明するが、本発明は当然これらに
限定されるものではない。また、実施例及び比較例中の
「部」は、特に断らない限り、「重量部」のことであ
り、本明細書に記載の分光特性は、自記分光光度計(日
立U−3500型)を用いて測定したものであり、測定
した波長は200〜1500nmの範囲である。
【0063】実施例1(近赤外線吸収化合物の合成) まず、下記構造式(3)で示される、近赤外線吸収化合
物の前駆体(中性分子化合物)を文献の方法(Shig
eru Sasaki and Masahiko I
yoda,Chemistry Letters,19
95年)により合成した。
【0064】
【化11】
【0065】(式中、−O−n−Buはn−ブトキシ基
の略である。) 次に、当該前駆体(1部)をアセトン(20部)に溶解
し、さらに当該前駆体対して2倍モル量のヘキサフルオ
ロアンチモン酸銀を加えた。室温で2時間攪拌したの
ち、析出した銀をろ別し、ろ液をエーテルで希釈し、析
出した固体をろ取し、これをエーテルおよびヘキサンで
洗浄することにより、下記構造式(4)で示される近赤
外線吸収化合物(4)(0.5部)を得た。
【0066】
【化12】
【0067】(式中、−O−n−Buはn−ブトキシ基
の略である。)
【0068】当該近赤外線吸収化合物を、塩化メチレン
に溶解して10mg/Lの溶液を調製した。調製液をセ
ル巾が1cmの石英セルに入れ、分光光度計により透過
率を測定した。当該近赤外線吸収化合物は、吸収ピーク
波長が882nm±30nmの範囲に存在しており、表
1に示されるように、波長882nmにおける近赤外領
域の吸収が大きく、かつ可視光領域の550nmにおけ
る透過率が高いという結果が得られた。
【0069】
【表1】
【0070】実施例2(近赤外線吸収フィルターの製
造) 温度計、撹拌機を備えたオートクレーブ中に、 テレフタル酸ジメチル 136重量部、 イソフタル酸ジメチル 58重量部、 エチレングリコール 96重量部、 トリシクロデカンジメタノール 137重量部、 三酸化アンチモン 0.09重量部 を仕込み、170〜220℃で180分間加熱してエス
テル交換反応を行った。次いで、反応系の温度を245
℃まで昇温し、系の圧力を1.33〜13.3hPaと
して180分間攪拌し続けることにより、共重合ポリエ
ステル樹脂(A1)を得た。共重合ポリエステル樹脂
(A1)の固有粘度は0.40dl/g、ガラス転移温
度は90℃であった。
【0071】上記共重合ポリエステル樹脂(A1)は、
NMR分析により、酸成分としてテレフタル酸が71モ
ル%、イソフタル酸が29モル%、アルコール成分とし
てエチレングリコールが28モル%、トリシクロデカン
ジメタノールが72モル%からなることがわかった。
【0072】次に、当該共重合ポリエステル樹脂(A
1)、実施例1に記載の構造式(4)で示される近赤外
線吸収化合物及び溶剤を、表2に示すような組成でフラ
スコにいれ、室温で30分間攪拌し、近赤外線吸収化合
物(4)及び共重合ポリエステル樹脂(A1)を溶剤に
溶解した。得られた溶解液を、近赤外線吸収層用塗布液
とした。
【0073】
【表2】
【0074】上記塗布液を、高透明二軸配向PETフィ
ルム基材(東洋紡績(株)社製、コスモシャインA43
00、厚み75μm、可視光領域の550nmにおける
透過率が90.4%)に、グラビアロールにより片面に
コーティングし、150℃の熱風をフィルム表面に風速
5m/秒で送りながら1分間乾燥して近赤外線吸収フィ
ルターを製造した。乾燥後のコート層(近赤外線吸収
層)の厚みは8.0μmであった。得られた近赤外線吸
収フィルターの分光特性を測定し、得られた結果を上記
表1に示す。上記表1に示されるように、得られた近赤
外線吸収フィルターは可視光領域の550nmの透過率
が高く、波長882nmにおける近赤外領域の吸収も大
きかった。
【0075】比較例1 近赤外線吸収化合物をジインモニウム塩系化合物(日本
化薬社製、IRG−022)に変更する以外は、実施例
1と全く同様の方法により製造し、そのものの分光特性
を測定した。上記表1に示されるように、ジインモニウ
ム塩系化合物は可視光領域(550nm)における透過
率は高いものの、近赤外領域(882nm)における吸
収が不十分であった。
【0076】比較例2 近赤外線吸収化合物をジインモニウム塩系化合物(日本
化薬社製、IRG−022)に変更する以外は、実施例
2と全く同様の方法により、近赤外線吸収フィルターを
製造し、そのものの分光特性を測定した。上記表1に示
されるように、得られた近赤外線吸収フィルターは可視
光領域(550nm)における透過率は高いものの、近
赤外領域(882nm)における吸収が不十分であっ
た。
【0077】
【発明の効果】本発明においては、近赤外線吸収化合物
(A)を含有してなる近赤外線吸収フィルターに近赤外
線を通過させることを特徴とする近赤外線除去方法を提
供しており、当該フィルターは、可視光線を高い透過率
で透過し、鋭いピークを伴って放射される近赤外線を効
率的に吸収することができ、さらに近赤外線吸収化合物
(A)の官能基の光イオン化ポテンシャルを制御するこ
とによって所望の放射ピークを吸収できるため、設計自
由度、加工性および生産性に優れている。また加えて、
当該フィルターの可視光線の透過率は70%以上である
ので、可視光領域の透過性が高いだけでなく、環境安定
性及び耐久性にも優れているといえる。以上から、本発
明の近赤外線吸収フィルターは、プラズマディスプレイ
用の近赤外線吸収フィルターをはじめ、波長選択調光材
料、視覚保護医療材料、その他光通信ならびに光検出へ
の障害を防止する近赤外線カットフィルター、近赤外線
感光材料、農業用波長選択近赤外線カットフィルターな
どに好適である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 尾道 晋哉 滋賀県大津市堅田2丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 Fターム(参考) 2H048 CA04 CA09 CA12 CA19 4F006 AA35 AB35 AB65 BA03 CA05

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(1) 【化1】 (式中、R1〜R4は、同一または異なって、それを置換
    基とするモノ置換ベンゼンの光イオン化ポテンシャルが
    8.00eV〜9.25eVのエネルギー範囲にある原
    子または原子団を示し、環Aと環Bはさらに置換基を有
    してもよく、X-1はカウンターイオンを示す。但し、R
    1〜R4の全てが同一または異なってジアルキルアミノ基
    である場合を除く。)、または一般式(2) 【化2】 (式中、R5とR6は、同一または異なって、それを置換
    基とするモノ置換ベンゼンの光イオン化ポテンシャルが
    8.00eV〜9.25eVのエネルギー範囲にある原
    子または原子団を示し、環A’と環B’はさらに置換基
    を有してもよく、R7とR8は、同一または異なって、炭
    素数1〜8のアルキル基を示し、X-1はカウンターイオ
    ンを示す。)で表され、780〜1300nmの範囲に
    ある少なくとも1つの近赤外線の下記ピークBの透過率
    が20%以下であり、かつ380nm以上780nm未
    満の可視光線の透過率が70%以上である近赤外線吸収
    化合物(A)を含有してなる近赤外線吸収フィルター
    に、近赤外線を通過させることを特徴とする近赤外線除
    去方法; ピークB:発光エネルギーが最大のピークまたは当該ピ
    ークに対する相対強度が0.25以上であるピークであ
    って、かつそのピークの発光エネルギーの2分の1にお
    けるピーク幅が30nm以下であるピーク。
  2. 【請求項2】 近赤外線吸収化合物(A)が、近赤外線
    のピークBの少なくとも1つとの波長差が30nm以内
    である吸収ピークを有する、請求項1記載の近赤外線除
    去方法。
  3. 【請求項3】 近赤外線吸収フィルターが、近赤外線吸
    収化合物(A)および高分子樹脂を含有する層を基材上
    に積層してなる、請求項1または2記載の近赤外線除去
    方法。
  4. 【請求項4】 近赤外線吸収フィルターが、近赤外線吸
    収化合物(A)を少なくとも2つ含有し、かつ近赤外線
    吸収化合物(A)がそれぞれ異なるピークBを吸収す
    る、請求項1〜3のいずれかに記載の近赤外線除去方
    法。
  5. 【請求項5】 近赤外線吸収フィルターが、近赤外線吸
    収化合物(A)を含有する層を基材上に2以上積層して
    なる、請求項4記載の近赤外線除去方法。
  6. 【請求項6】 基材の380nm以上780nm未満の
    可視光線の透過率が70%以上である、請求項3〜5の
    いずれかに記載の近赤外線除去方法。
  7. 【請求項7】 基材が、厚さ75μm換算で、可視光か
    ら近赤外線までの全領域上にわたる透過率が90%以上
    であるポリエステル系フィルムである、請求項3〜6の
    いずれかに記載の近赤外線除去方法。
  8. 【請求項8】 ピークBの波長が824nm、882n
    m、920nmまたは980nmである、請求項1〜7
    のいずれかに記載の近赤外線除去方法。
  9. 【請求項9】 プラズマディスプレイ用である、請求項
    1〜8のいずれかに記載の近赤外線除去方法。
  10. 【請求項10】 近赤外線吸収化合物(A)の、一般式
    (1)の置換基のR 1〜R4の光イオン化ポテンシャルま
    たは一般式(2)の置換基のR5とR6の光イオン化ポテ
    ンシャルを制御して、当該化合物の吸収ピークの波長を
    制御する、請求項1〜9のいずれかに記載の近赤外線除
    去方法。
  11. 【請求項11】 824±30nm、882±30n
    m、920±30nmおよび980±30nmの少なく
    とも1つの近赤外線の波長のピークの透過率が20%以
    下であり、かつ380nm以上780nm未満の可視光
    線の透過率が70%以上である、一般式(1) 【化3】 (式中、R1〜R4は、同一または異なって、それを置換
    基とするモノ置換ベンゼンの光イオン化ポテンシャルが
    8.00eV〜9.25eVのエネルギー範囲にある原
    子または原子団を示し、環Aと環Bはさらに置換基を有
    してもよく、X-1はカウンターイオンを示す。但し、R
    1〜R4の全てが同一または異なってジアルキルアミノ基
    である場合を除く。)、または一般式(2) 【化4】 (式中、R5とR6は、同一または異なって、それを置換
    基とするモノ置換ベンゼンの光イオン化ポテンシャルが
    8.00eV〜9.25eVのエネルギー範囲にある原
    子または原子団を示し、環A’と環B’はさらに置換基
    を有してもよく、R7とR8は、同一または異なって、炭
    素数1〜8のアルキル基を示し、X-1は前記と同義であ
    る。)で表される近赤外線吸収化合物。
  12. 【請求項12】 近赤外線が、近赤外線吸収化合物が分
    解されないエネルギー密度を有する、請求項11記載の
    近赤外線吸収化合物。
  13. 【請求項13】 請求項11または12記載の近赤外線
    吸収化合物を含有してなる近赤外線吸収フィルター。
  14. 【請求項14】 プラズマディスプレイから放射される
    近赤外線を除去するために使用される、請求項13記載
    の近赤外線吸収フィルター。
JP2001027007A 2001-02-02 2001-02-02 近赤外線吸収化合物、それを用いた近赤外線吸収フィルターおよび当該フィルターを利用した近赤外線除去方法 Pending JP2002226827A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001027007A JP2002226827A (ja) 2001-02-02 2001-02-02 近赤外線吸収化合物、それを用いた近赤外線吸収フィルターおよび当該フィルターを利用した近赤外線除去方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001027007A JP2002226827A (ja) 2001-02-02 2001-02-02 近赤外線吸収化合物、それを用いた近赤外線吸収フィルターおよび当該フィルターを利用した近赤外線除去方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002226827A true JP2002226827A (ja) 2002-08-14

Family

ID=18891729

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001027007A Pending JP2002226827A (ja) 2001-02-02 2001-02-02 近赤外線吸収化合物、それを用いた近赤外線吸収フィルターおよび当該フィルターを利用した近赤外線除去方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002226827A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100998744B1 (ko) 2008-04-04 2010-12-07 (주)아이씨비 근적외선 흡수 염료를 함유한 열 차폐필름용 색재 조성물
KR20190133760A (ko) 2017-04-07 2019-12-03 야마모토카세이 카부시키카이샤 프탈로시아닌계 화합물 및 그의 용도

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100998744B1 (ko) 2008-04-04 2010-12-07 (주)아이씨비 근적외선 흡수 염료를 함유한 열 차폐필름용 색재 조성물
KR20190133760A (ko) 2017-04-07 2019-12-03 야마모토카세이 카부시키카이샤 프탈로시아닌계 화합물 및 그의 용도
US11015061B2 (en) 2017-04-07 2021-05-25 Yamamoto Chemicals, Inc. Phthalocyanine-based compound and uses of same

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100705927B1 (ko) 근적외선 흡수 및 색보정 점착제 조성물 및 이를 이용한필름
EP1846423B1 (en) Borate and near-infrared ray absorption material
CN101542329B (zh) 补色滤色器、图像显示装置及液晶显示装置
EP1813615A1 (en) Optical filter and its applications, and porphyrin compound used in optical filter
JP5010123B2 (ja) フタロシアニン化合物およびこれを用いてなる近赤外吸収色素
CN101542328A (zh) 交联物、补色滤色器、光学构件、图像显示装置及液晶显示装置
JP3341741B2 (ja) 近赤外線吸収フィルタ−
JP5484841B2 (ja) フタロシアニン化合物
JP5289813B2 (ja) フタロシアニン化合物
JP4277615B2 (ja) 近赤外線吸収組成物及び近赤外線吸収フィルター
JP2010265254A (ja) フタロシアニン化合物
JP2014106309A (ja) 近赤外線吸収樹脂組成物及び近赤外線吸収フィルム
KR20000035490A (ko) 근적외흡수조성물
JPH06240146A (ja) 熱線遮蔽材
JPH10182995A (ja) 新規フタロシアニン化合物、その製造方法および近赤外吸収材料
JP2002226827A (ja) 近赤外線吸収化合物、それを用いた近赤外線吸収フィルターおよび当該フィルターを利用した近赤外線除去方法
JP2001247526A (ja) 近赤外線吸収化合組成物および近赤外線吸収フィルター
TWI249039B (en) Near infrared absorbing film and plasma display filter comprising the same
JP2002303720A (ja) 近赤外線吸収フィルター
JP4403473B2 (ja) 近赤外線吸収化合物および近赤外線吸収フィルター
JP2014105251A (ja) 近赤外線吸収樹脂組成物及び近赤外線吸収フィルム
JP3530789B2 (ja) プラズマディスプレイパネルのフィルター用近赤外吸収組成物
JP3940786B2 (ja) 赤外線吸収フィルター及びプラズマディスプレイパネル用フィルター
JP5972697B2 (ja) 塗料及び赤外線カットフィルタ
JP2001083889A (ja) プラズマディスプレイパネル用フィルター