JP2002225449A - 平版印刷版用支持体の製造方法 - Google Patents

平版印刷版用支持体の製造方法

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JP2002225449A
JP2002225449A JP2001029385A JP2001029385A JP2002225449A JP 2002225449 A JP2002225449 A JP 2002225449A JP 2001029385 A JP2001029385 A JP 2001029385A JP 2001029385 A JP2001029385 A JP 2001029385A JP 2002225449 A JP2002225449 A JP 2002225449A
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Hirokazu Sawada
宏和 澤田
Akio Uesugi
彰男 上杉
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】使用済み平版印刷版を原材料として用いてリサ
イクルする平版印刷版用支持体の製造方法であって、厳
密な原材料の管理をせずに、実用上問題のない平版印刷
版用支持体を得ることができる方法の提供。 【解決手段】アルミニウム溶湯に、使用済み平版印刷版
を1〜90質量%となる割合で投入して溶解させる工程
と、該使用済み平版印刷版を溶解させた後の該アルミニ
ウム溶湯からアルミニウム合金板を得る工程と、該アル
ミニウム合金板に電気化学的粗面化処理を含む粗面化処
理を行って平版印刷版用支持体を得る工程とを具備する
平版印刷版用支持体の製造方法であって、該使用済み平
版印刷版のうち、A1000系、A3000系の材料の
質量をそれぞれa、bとしたときに、b/a≦0.3を
満足する平版印刷版用支持体の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は平版印刷版用支持体
の製造方法に関し、詳しくは、使用済みの平版印刷版を
原材料として用い、安価に、かつ、簡単に行うことがで
きる平版印刷版用支持体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】平版印刷版用支持体に用いられるアルミ
ニウム合金板を製造する際には、一般的に、アルミニウ
ム合金を所定の組成にするため、Al含有量が99.7
質量%以上のアルミニウムインゴットを溶解させ、この
中にFe、Si、Cu、Ti等を所定量含有するアルミ
ニウム母合金を添加する方法がとられている。このアル
ミニウム母合金は、アルミニウムインゴットに比べて価
格が高いため、平版印刷版用支持体の製造コストを高く
する要因となっている。これに対し、発明者らは、包装
材料等が混入している使用済み平版印刷版等を原材料と
して用いてリサイクルする平版印刷版用支持体の製造方
法を提案している(特開平7−205534号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】また、発明者らは、溶
解炉で使用済み平版印刷版を1%以上含むアルミニウム
溶解原材料を溶解させて平版印刷版用支持体の製造に用
いてリサイクルする際に、事前に溶解保持したAl溶湯
中に使用済み平版印刷版を投入することにより、使用済
み平版印刷版を溶解する際のロスを減らす方法について
提案している(特願平11−165230号)。
【0004】ところで、平版印刷版用支持体に用いられ
るアルミニウム合金板としては、日本国内ではJIS
A1050材を主とするJIS A1000系の材料が
広く流通しているが、JIS A3000系の材料も輸
入品を中心に流通している。したがって、印刷業者等か
ら使用済みの平版印刷版を回収する際には、JISA1
000系の材料にJIS A3000系の材料が混入し
たかたちで回収される。この回収された使用済み平版印
刷版を原材料として用いてA1000系のアルミニウム
合金板を製造しようとすると、得られるアルミニウム合
金板に電気化学的粗面化処理(以下「電解粗面化処理」
ともいう。)を施した場合に、粗面(砂目形状等)が不
均一になるという問題が生ずることがあった。これは、
A3000系の材料(Mn含有量:0.3〜1.5質量
%)がA1000系の材料(Mn含有量:0.05質量
%以下)に比べて遙かに多くのMnを含有するため、原
材料として用いる使用済み平版印刷版にA3000系の
材料が多く混入している場合には、得られるアルミニウ
ム合金板のMn含有量がA1000系の規格よりも多く
なりすぎるためである。
【0005】これに対し、使用済みの平版印刷版におけ
るA3000系の材料の混入量を厳密に管理し、Al0
00系の材料のMn含有量の規格に応じて混入量を調整
する方法は、混入量の厳密な管理に費用がかかり、安価
な使用済み平版印刷版を原材料として用いる意義がなく
なる。
【0006】したがって、本発明は、使用済み平版印刷
版を原材料として用いてリサイクルする平版印刷版用支
持体の製造方法であって、厳密な原材料の管理をせず
に、実用上問題のない平版印刷版用支持体を得ることが
できる平版印刷版用支持体の製造方法を提供することを
目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記目的を
達成すべく鋭意研究した結果、使用済みの平版印刷版に
おけるA3000系の材料の混入量を簡易な方法で決定
しうることを見出し、更に、上記方法で決定した混入量
が所定範囲にあれば、電解粗面化処理により得られる粗
面の均一性等において実用上問題のない平版印刷版用支
持体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】即ち、本発明は、溶解炉でアルミニウムイ
ンゴットおよびアルミニウム母合金を溶解させて得られ
たアルミニウム溶湯に、使用済み平版印刷版を、全アル
ミニウム原材料の量に対する該使用済み平版印刷版の量
が1〜90質量%となる割合で投入して溶解させる工程
と、該使用済み平版印刷版を溶解させた後の該アルミニ
ウム溶湯からアルミニウム合金板を得る工程と、該アル
ミニウム合金板に電気化学的粗面化処理を含む粗面化処
理を行って平版印刷版用支持体を得る工程とを具備する
平版印刷版用支持体の製造方法であって、該使用済み平
版印刷版のうち、A1000系のアルミニウム合金を用
いている使用済み平版印刷版の質量をaとし、A300
0系のアルミニウム合金を用いている使用済み平版印刷
版の質量をbとしたときに、b/a≦0.3を満足する
ことを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法を提供
する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図を用いて本発明について
詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。図1は、平版印刷版用支持体の製造工程の一例
の概念図である。初めに、図1(A)に示すように、溶
解炉1で原材料となるアルミニウムインゴットおよびア
ルミニウム母合金を溶解させてアルミニウム溶湯を得
る。ついで、このアルミニウム溶湯に、使用済み平版印
刷版を、全アルミニウム原材料の量に対する該使用済み
平版印刷版の量が1〜90質量%となる割合で投入して
溶解させる。使用済み平版印刷版のほかに、工程条件上
不良品となった未使用の平版印刷版および/または平版
印刷版用支持体や、これらの切断くずを投入して溶解さ
せることもできる。「全アルミニウム原材料」とは、ア
ルミニウムインゴット、アルミニウム母合金、使用済み
平版印刷版、ならびに、任意に添加される工程条件上不
良品となった未使用の平版印刷版および/または平版印
刷版用支持体やそれらの切断くずをいう。
【0010】全アルミニウム原材料の量に対する該使用
済み平版印刷版の量は、コスト低減の点から、1質量%
以上であり、好ましくは10質量%以上、より好ましく
は50質量%以上である。また、全アルミニウム原材料
の量に対する該使用済み平版印刷版の量は、アルミニウ
ム溶湯への溶解性の点から、90質量%以下であり、好
ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以
下である。
【0011】本発明は、アルミニウム溶湯に投入して溶
解させる使用済み平版印刷版のうち、A1000系のア
ルミニウム合金を用いている使用済み平版印刷版の質量
をaとし、A3000系のアルミニウム合金を用いてい
る使用済み平版印刷版の質量をbとしたときに、b/a
≦0.3を満足することを特徴とする。上記式を満足す
ると、得られる平版印刷版用支持体の特性等において、
A3000系の材料の混入が実用上問題とならない。
【0012】本発明者は、平版印刷版用支持体の原料と
して使用済み平版印刷版を用いた場合のA3000系の
材料の混入量について鋭意研究した結果、実用上問題と
ならないA3000系の材料の混入量を見出した。更
に、本発明者は、現在、日本国内で低付加価値の屑アル
ミニウムとして回収されている使用済み平版印刷版を統
計的に解析した結果、A1000系とA3000系の材
料の比率はある程度安定しており、A3000系の材料
の混入量が多いロットは、A3000系の材料の一部を
取り除くことにより上述の実用上問題とならない混入量
とすることができ、取り除くための費用はそれほど高く
ならないことを見出した。更に、本発明者は、A300
0系の材料の混入の有無および混入量を簡易な方法で決
定しうることを見出した。そして、本発明者は、上記の
各知見に基づき、使用済み平版印刷版のリサイクルを低
コストで実現することができる本発明を完成したのであ
る。
【0013】A3000系の材料の混入有無および混入
量を決定する方法としては、アルミニウム溶湯に使用済
み平版印刷版を投入し溶解させた際に、発生するドロス
と呼ばれる酸化物の量を測定する方法が挙げられる。A
3000系の材料は、A1000系の材料よりドロスを
多く発生させるので、ドロスの発生量から、A3000
系の材料の混入量を決定し、b/a≦0.3を満足する
ように調整することができる。ここで、ドロスの発生量
は、溶解させる材料の前処理によって異なる。例えば、
包材等の非Alの部材を含む平版印刷版を使ったり、乾
燥不十分な平版印刷版を使ったりする場合は、ドロスの
発生量が多くなる。例えば、包材は含まないが印刷イン
キが若干付着している平版印刷版を十分に乾燥を行った
後に溶解する場合は、ドロスの発生量は、A1000系
1kgあたり約50g、A3000系1kgあたり約1
00gであり、使用済み平版印刷版を1kg投入し溶解
させた場合にドロスがxg発生したときは、b/a=
(x−50)/(100−x)と見積もることができ
る。
【0014】また、別の方法としては、使用済みの平版
印刷版から抜き取りを行い、触感でA1000系の材料
とA3000系の材料とを判別する方法が挙げられる。
これは、A3000系の材料がA1000系の材料より
も硬い触感を有することを利用したものである。印刷済
みの平版印刷版は、印刷機の版胴に固定するために、両
端に折り曲げられた部分を有するので、その部分を触る
ことにより、簡単に材料の判別ができる。印刷業者等
は、通常、それぞれが特定の平版印刷版を用いているの
で、抜き取りによりA3000系の材料と分かった場合
には、その印刷業者等から同時に回収された使用済み平
版印刷版はすべてA3000系の材料と推定することが
でき、b/a≦0.3を満足するように調整することが
できる。
【0015】使用済み平版印刷版等を投入して溶解する
際に、平版印刷版の表面にある感光層および平版印刷版
とともに回収された紙等の表面保護材、包装材料、粘着
テープ等の非金属不純物は、そのほとんどが燃焼し、灰
化する。この過程でドロスが多く発生する場合がある
が、これはロス分を増やすのみで、適切な溶湯清浄化処
理を行えば、これらのアルミニウム純度への影響はほと
んどない。なお、溶解炉へ投入する前に、ロータリーキ
ルン等の焙焼炉で非金属不純物をあらかじめ燃焼させ、
炭化させておいてもよいし、また、物理的に非金属不純
物をある程度除去しておいてもよい。
【0016】使用済み平版印刷版等を投入する前に、あ
らかじめ加熱処理をして付着した水分を除去しておく
と、水がアルミニウム溶湯内で急激に膨張して起こる水
蒸気爆発の危険性がなくなり、かつ、アルミニウム溶湯
中の溶存水素が少なくなり、鋳造時に欠陥を生じにくく
なるので、好ましい。
【0017】つぎに、使用済み平版印刷版を溶解させた
アルミニウム溶湯からアルミニウム合金板を得る。アル
ミニウム溶湯からアルミニウム合金板を得る方法は、特
に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
以下に、具体例を示して説明するが、本発明はこれらに
限定されるものではない。
【0018】本発明においては、上記のようにして得ら
れたアルミニウム溶湯に溶湯処理を行うのが好ましい。
溶湯処理は、上述した非金属不純物やその燃焼ガス、酸
化物等を除去するとともに、アルミニウム溶湯中に溶け
込んだH2 ガスやNaを除去することを目的として行わ
れる。溶湯処理の方法としては、フラックス、ガス、フ
ィルター等の公知の方法を適宜用いることができる。中
でも、図1(A)に示すように、第一の溶湯処理層2に
おいてガスを用いる溶湯処理を行い、ついで、第二の溶
湯処理層3においてフィルターを用いる溶湯処理を行う
2段階での溶湯処理が好ましい。
【0019】使用済み平版印刷版を溶解させたアルミニ
ウム溶湯は、好ましくは上記溶湯処理の後、図1(A)
に示されるように、溶湯供給ノズル4から双ロール連続
鋳造機5によって、2〜12mmの板に直接鋳造され、
鋳造板とされる。双ロール連続鋳造機5の代わりに、双
ベルト式連続鋳造機を用いてもよい。このようにして得
られた鋳造板はコイラ6によって巻き取ってもよいし、
引き続き冷間圧延等の後工程に送ってもよい。冷間圧延
は、必要に応じて、図1(B)に示されるような冷間圧
延機11によって行う。冷間圧延の前もしくは後、また
はその途中において、必要に応じて、焼鈍を行う。焼鈍
は、図1(C)に示されるような熱処理装置12によっ
て行う。なお、図1(C)はバッチ焼鈍式の熱処理装置
を示すが、Alを連続的に搬送しながら熱処理を行う方
式の熱処理装置を用いてもよい。更に、必要に応じて、
図1(D)に示されるような矯正装置13によって矯正
を行い、アルミニウム合金板が得られる。
【0020】また、使用済み平版印刷版を溶解させたア
ルミニウム溶湯から、図2に示されるような固定鋳型を
用いる鋳造機を用い、鋳塊を得た後、面削、均熱処理、
熱間圧延、焼鈍、冷間圧延、矯正等を適宜行って、アル
ミニウム合金板を得ることもできる。図2に示される鋳
造機は、図1に示される鋳造機と同様に、溶解炉1のア
ルミニウム溶湯を第一の溶湯処理層2および第二の溶湯
処理層3を通じて、溶湯供給ノズル7から供給される。
供給されたアルミニウム溶湯は、水冷鋳型8により水冷
され、鋳塊受け台9の上で鋳塊10として得られる。図
2に示されるような固定鋳型を用いる鋳造装置を用い、
鋳塊を得る方法は、現在、主流となっているDC鋳造と
いわれる方法で、生産能力が大きいという利点があるの
で、本発明においても好適に用いられる。
【0021】つぎに、上記のようにして使用済み平版印
刷版を溶解させたアルミニウム溶湯から得られたアルミ
ニウム合金板に電解粗面化処理を含む粗面化処理およ
び、必要に応じて、その他の処理を行って平版印刷版用
支持体を得る。粗面化処理の方法は、機械的粗面化(機
械的な砂目立て)、化学的粗面化、電気化学的粗面化
(電解粗面化、電気化学的砂目立て)およびそれらの組
み合わせ等を用いることができる。本発明においては、
アルミニウム合金板は、電解粗面化処理を含む粗面化処
理を施されるが、電解粗面化処理のみを施されてもよ
く、電解粗面化処理と、機械的粗面化処理および/また
は化学的粗面化処理とを組み合わせて施されてもよい。
機械的粗面化処理法としては、例えば、ボールグレイ
ン、ワイヤーグレイン、ブラシグレイン、液体ホーニン
グ法が挙げられる。また、電解粗面化処理法としては、
交流電解エッチング法が一般的に採用されている。この
場合、電流としては、普通の正弦波交流電流や、矩形波
等の特殊交番電流が用いられる。また、この電解粗面化
処理の前処理として、カセイソーダ等を用いてエッチン
グ処理を行うこともできる。また、電解粗面化処理は、
塩酸または硝酸主体の水溶液で交番電流を用いるのが好
ましい。以下、好ましい粗面化処理その他の処理の方法
について、詳細に説明する。
【0022】まず、アルミニウム合金板にアルカリエッ
チングを施す。アルカリエッチングに用いられるアルカ
リ剤としては、カセイソーダ、カセイカリ、メタケイ酸
ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、グルコン酸ソ
ーダ等が好ましい。アルカリエッチングは、アルカリ溶
液の濃度が0.01〜20質量%、アルカリ溶液の温度
が20〜90℃、時間は5秒〜5分の範囲から選択され
るのが適当であり、エッチング量が0.1〜5g/m2
であるのが好ましい。特に、Mn等の不純物の多いアル
ミニウム合金板を用いる場合、0.01〜1g/m2
適当である。
【0023】引き続き、アルカリエッチングにより、ア
ルミニウム合金板の表面にアルカリに不溶な物質(スマ
ット)が残存するので、必要に応じて、デスマット処理
を行う。
【0024】つぎに、電解粗面化処理を行う。電解粗面
化処理は、塩酸または硝酸を主体とする電解液中で交流
電解エッチングにより行うのが好ましい。交流電解電流
の周波数は、0.1〜100Hzであるのが好ましく、
0.1〜1.0Hzまたは10〜60Hzであるのがよ
り好ましい。電解液濃度は、3〜150g/Lであるの
が好ましく、5〜50g/Lであるのがより好ましい。
電解浴内のアルミニウムの溶解量は、50g/L以下で
あるのが好ましく、2〜20g/Lであるのがより好ま
しい。電解浴には、必要に応じて、添加物を入れること
もできるが、大量生産をする場合は、電解液濃度の制御
等が困難となる。また、電流密度は、5〜100A/d
2 であるのが好ましく、10〜80A/dm2 である
のがより好ましい。電源波形は、求める品質や用いられ
るアルミニウム合金板の成分によって適宜選択すること
ができるが、特公昭56−19280号公報および同昭
55−19191号公報に記載されている特殊交番波形
を用いるのが好ましい。これらの波形、液条件等は、電
気量と共に求める品質、用いられるアルミニウム合金板
の成分等によって適宜選択される。
【0025】更に、粗面化処理されたアルミニウム合金
板をデスマット処理するのが好ましい。デスマット処理
は、アルミニウム合金板をアルカリ溶液に浸せきさせ
て、または、スプレイでアルカリ溶液を供給して、スマ
ットを溶解させる。アルカリ剤としては、カセイソーダ
等の各種のアルカリを用いることができる。アルカリ剤
による処理は、アルカリ溶液がpH10以上、温度25
〜60℃で行うのが好ましく、また、処理時間は1〜1
0秒の極めて短時間とするのが好ましい。引き続き、ア
ルカリ剤による処理によって生じた生成物を酸性溶液で
溶解除去することで、デスマット処理が完了する。酸性
溶液としては、硫酸、塩酸、硝酸等が用いられる。酸性
溶液による処理は、温度20〜80℃で行われるのが好
ましい。また、処理時間は1〜10秒とするのが好まし
い。
【0026】引き続き、アルミニウム合金板の表面の耐
磨耗性を高めるために陽極酸化処理を行うのが好まし
い。陽極酸化処理は、アルミニウム合金板を硫酸を主体
とする液に浸せきすることにより行う。陽極酸化処理に
使用される電解質は、多孔質酸化皮膜を形成することが
できるものであれば、いかなるものでもよい。一般に
は、硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸、またはこれら
の混合物が用いられる。電解質の濃度は、電解質の種類
等によって適宜決められる。陽極酸化処理の条件は、電
解質によってかなり変動するので、特定しにくいが、一
般的には電解質の濃度が1〜80質量%、液温5〜70
℃、電流密度0.5〜60A/dm2 、電圧1〜100
V、電解時間1〜300秒であればよい。アルミニウム
合金板の表面に形成される陽極酸化皮膜の量は、0.1
〜10g/m2 であるのが好ましく、0.3〜5g/m
2 であるのがより好ましい。
【0027】このようにして得られた陽極酸化皮膜を有
する粗面化処理されたアルミニウム合金板は、それ自身
安定で親水性に優れたものであるから、そのまま感光性
塗膜を上に設けることもできるが、必要に応じて、更に
表面処理を施すこともできる。例えば、先に記載したア
ルカリ金属ケイ酸塩によるシリケート層、または、親水
性高分子化合物よりなる下塗層を設けることができる。
下塗層の塗布量は5〜150mg/m2 であるのが好ま
しい。
【0028】上述したように、アルミニウム合金板に、
電解粗面化処理を含む粗面化処理および、必要に応じ
て、その他の処理を行うことにより、平版印刷版用支持
体が得られる。
【0029】本発明の平版印刷版用支持体の製造方法に
より得られる平版印刷版用支持体を平版印刷版原版とす
るには、表面に感光剤を塗布し乾燥して、感光層を形成
すればよい。感光剤は、特に限定されるものではなく、
通常感光性平版印刷版原版に用いられるものを使用する
ことができる。そして、得られた平版印刷版原版に、リ
スフィルムを用いて画像を焼き付け、更に、現像処理お
よびガム引き処理を行うことで、印刷機に取り付け可能
な平版印刷版とすることができる。また、例えば、高感
度な感光層を設けると、レーザを使って画像を直接焼き
付けることもできる。
【0030】
【実施例】(実施例1〜5および比較例1〜3) 1.平版印刷版用支持体の製造 溶解炉でAl含有量99.7質量%以上のアルミニウム
インゴットと、Al−Fe母合金、Al−Si母合金お
よびAl−Cu母合金とを溶解させ、アルミニウム溶湯
を調製した。一方で、感光層を有し表面に印刷用インキ
が付着している使用済み平版印刷版をあらかじめ加熱炉
で約120℃に加熱して表面に付着した水分を蒸発させ
ておき、上記アルミニウム溶湯に、第1表に示す割合で
投入し、完全に溶解させた。使用済み平版印刷版におけ
るA1000系の材料の質量(a)に対するA3000
系の材料の質量(b)の比(b/a)の値は、第1表に
示した通りである。b/aの値は、溶解前に少量採取し
た溶湯に使用済み平版印刷版を溶解させ、発生したドロ
スの量から計算する方法で求めた。なお、比較例3にお
いては、使用済み平版印刷版の投入を行わなかった。
【0031】つぎに、各アルミニウム溶湯から、図2に
示した装置を用い、厚さ500mmのスラブを調製し、
図示せぬ面削装置で表面を10mm面削した後、580
℃で10時間均熱処理を施し、熱間圧延で厚さ5mmま
で圧延し、更に図1(B)に示す冷間圧延装置で厚さ2
mmまで圧延した後、図1(C)に示すバッチ焼鈍炉で
中間焼鈍を550℃で10時間行い、更に冷間圧延で厚
さ0.24mmに仕上げて図1(D)に示す装置で平面
性を矯正して、アルミニウムコイルを調製した。
【0032】引き続き、下記(a)〜(h)の処理を順
次行い、平版印刷版用支持体を得た。 (a)アルカリエッチング処理 濃度25質量%のカセイソーダ溶液(アルミニウムイオ
ンを6質量%含む。)を用いた。エッチング量は5g/
2 であった。 (b)水洗 (c)デスマット処理 濃度15質量%の硫酸溶液を用い、アルカリエッチング
処理で生じたスマットを除去した。 (d)電解粗面化処理 濃度1質量%の塩酸溶液(アルミニウムイオンを0.5
質量%含む。)を用い、交流電解粗面化処理を行った。 (e)アルカリエッチング処理:濃度25質量%のカセ
イソーダ溶液(アルミニウムイオンを6質量%含む。)
を用いた。エッチング量は0.3g/m2 であった。 (f)水洗 (g)デスマット処理 濃度15質量%の硫酸溶液(アルミニウムイオンを0.
5質量%含む。)を用い、アルカリエッチング処理で生
じたスマットを除去した。 (h)陽極酸化処理 濃度15質量%の硫酸溶液(アルミニウムイオンを0.
5質量%含む。)を用い、陽極酸化皮膜の量が2g/m
2 になるように直流電源を用いて陽極酸化処理を行っ
た。
【0033】2.平版印刷版原版の製造 上記で得られた各平版印刷版用支持体に、ポジの感光層
を塗布し乾燥した後、マットコーティングを行った。乾
燥後、所望の長さに切断して平版印刷版原版を得た。
【0034】3.平版印刷版用支持体の粗面の均一性の
評価 上記で得られた各平版印刷版用支持体の粗面の均一性を
評価するため、感光層を除去し、走査型電子顕微鏡(T
−20、日本電子社製)を用いて倍率1500倍のSE
M写真を撮影し、電解砂目形状について観察を行った。
【0035】4.アルミニウム原材料のコストの評価 平版印刷版用支持体の製造に用いた全アルミニウム原材
料(アルミニウムインゴット、各種アルミニウム母合金
および使用済み平版印刷版)のコストを比較例3を10
0として算出した。
【0036】平版印刷版用支持体の粗面の均一性および
アルミニウム原材料のコストの評価の結果を第1表に示
す。本発明の平版印刷版用支持体の製造方法(実施例1
〜5)は、得られた平版印刷版用支持体の粗面の均一性
に優れていたことが分かる。また、使用済み平版印刷版
を原材料として用いなかった場合(比較例3)に比べ、
アルミニウム原材料のコストを低くすることができたこ
とが分かる。これに対し、b/aが大きすぎた場合(比
較例1)、即ち、A3000系の材料の混入量が多すぎ
た場合は、電解粗面化処理で得られた粗面の均一性に劣
っていた。また、使用済み平版印刷版の割合が少なすぎ
た場合(比較例2)は、原材料のコスト削減の効果がほ
とんどなく、別途使用済み平版印刷版を投入する工程を
設けた意味がなかった。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】本発明の平版印刷版用支持体の製造方法
によれば、使用済み平版印刷版を原材料として用いてリ
サイクルする際に、厳密な原材料の管理をせずに、実用
上問題のない平版印刷版用支持体を得ることができ、原
材料コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法に用
いられる平版印刷版用支持体の製造工程の一例の概念図
である。(A)は双ロール連続鋳造工程を示し、(B)
は冷間圧延工程を示し、(C)は焼鈍工程を示し、
(D)は矯正工程を示す。
【図2】 本発明の平版印刷版用支持体の製造方法に用
いられる他の平版印刷版用支持体の製造工程の一例の概
念図である。
【符号の説明】
1 溶解炉 2 第一の溶湯処理層 3 第二の溶湯処理層 4、7 溶湯供給ノズル 5 双ロール連続鋳造機 6 コイラ 8 水冷鋳型 9 鋳塊受け台 10 鋳塊 11 冷間圧延機 12 熱処理装置 13 矯正装置

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】溶解炉でアルミニウムインゴットおよびア
    ルミニウム母合金を溶解させて得られたアルミニウム溶
    湯に、使用済み平版印刷版を、全アルミニウム原材料の
    量に対する該使用済み平版印刷版の量が1〜90質量%
    となる割合で投入して溶解させる工程と、該使用済み平
    版印刷版を溶解させた後の該アルミニウム溶湯からアル
    ミニウム合金板を得る工程と、該アルミニウム合金板に
    電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を行って平版印
    刷版用支持体を得る工程とを具備する平版印刷版用支持
    体の製造方法であって、 該使用済み平版印刷版のうち、A1000系のアルミニ
    ウム合金を用いている使用済み平版印刷版の質量をaと
    し、A3000系のアルミニウム合金を用いている使用
    済み平版印刷版の質量をbとしたときに、b/a≦0.
    3を満足することを特徴とする平版印刷版用支持体の製
    造方法。
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