JP2002224916A - 鉄芯の切断方法及び切断装置 - Google Patents

鉄芯の切断方法及び切断装置

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JP2002224916A
JP2002224916A JP2001021494A JP2001021494A JP2002224916A JP 2002224916 A JP2002224916 A JP 2002224916A JP 2001021494 A JP2001021494 A JP 2001021494A JP 2001021494 A JP2001021494 A JP 2001021494A JP 2002224916 A JP2002224916 A JP 2002224916A
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cutting
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JP2001021494A
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Michio Tatsuno
三千生 竜野
Fumio Kitamura
文男 北村
Masahiro Abe
正広 阿部
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KITAMURA KIDEN KK
TOKYO SEIDEN KK
JFE Engineering Corp
Original Assignee
KITAMURA KIDEN KK
TOKYO SEIDEN KK
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エッチング処理などを行うことなく、鉄芯切
断面に生じるバリを容易に且つ確実に除去する。 【解決手段】 砥石切断用の円盤状の切断砥石に電解研
磨加工用の円盤状電極としての機能を持たせ、切断砥石
による鉄芯の切断工程において切断砥石−鉄芯間で通電
を行うことにより、鉄芯切断面に生じたバリを切断中又
は切断直後に電解研磨加工により除去するようにしたも
ので、導電性が付与された円盤状の切断砥石により鉄芯
を切断するとともに、この切断時又は/及び切断完了後
の切断砥石空転時に、鉄芯被切断箇所に電解液を供給し
つつ、切断砥石と鉄芯間で通電を行う。また、これに用
いる装置は、導電性が付与された円盤状の切断砥石と、
該切断砥石と被加工鉄芯間で通電を行うための通電手段
と、前記鉄芯の被切断箇所に電解液を供給するための電
解液供給手段とを有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】この発明は、電磁鋼板を巻取
り成形して得られた巻鉄芯などの切断に好適な鉄芯の切
断方法及び装置に関するもので、特に巻鉄芯にエアギャ
ップを形成する際に好適な切断方法及び装置である。ま
た他の発明は、この切断方法を利用した巻鉄芯の製造方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、珪素鋼板などの電磁鋼板からな
るリアクトル用の鉄芯では、磁路に空隙(エアギャッ
プ)を設けることにより、所定のインダクタンスを得る
とともに磁束の飽和を防止している。電磁鋼板を用いた
鉄芯は、焼結などにより得られるフェライト鉄芯や圧粉
鉄芯に較べて鉄芯磁束密度を高く設計することができ、
このため形状を小型化でき、しかも比較的安価である利
点がある。
【0003】電磁鋼板を用いた鉄芯としては、短冊状の
板を積み重ねた所謂積層鉄芯と、帯材を巻き取り成形し
た所謂巻鉄芯とがあり、いずれの場合も鉄芯の材料積層
方向での断面形状は矩形が一般的である。通常、これら
の鉄芯には大電流を通すために太い丸導線や平角導線な
どを用いたコイルが巻かれるが、このコイルを矩形断面
の鉄芯に沿って矩形状に巻くことは困難であり、コイル
は鉄芯に対して円形に巻かざるを得ない。このため図7
に示すようにコイル20と鉄芯21との間に大きな隙間
22(空間)が生じてしまい、この隙間22によってリ
アクトルの効率が大きく低下してしまう。
【0004】このような問題は鉄芯の断面形状を円形に
することにより解消でき、これによってリアクトルの効
率を大きく改善することができる。このような観点から
本発明者らは、図11(A)に示すような平面形状を有
する長尺の帯材(但し、この図では、帯材の長手方向を
1/200程度に縮尺して示してある)を、図示した巻
取中心線に沿って円形リング状に複数回(例えば、数百
回程度)巻き取ることにより、図8〜図10に示すよう
な断面形状が円形の巻鉄芯23を成形し、この巻鉄芯2
3の略全周に亘って導線を巻き付けてコイル24を構成
したリアクトルを開発した。
【0005】このようなリアクトルでは、円形リング状
の巻鉄芯の周方向の1箇所に図8に示すようなエアギャ
ップ25(切断部)を設けることにより、巻鉄芯23は
カットコアのように2分されることなく一体構造のまま
であるため、積層鉄芯やカットコアのような組み立てに
要する部品や工数が全く必要なく、また、連結金具など
も不要とすることができ、このため構造が単純且つ頑丈
で、製造コストも安い高性能な製品を得ることができ
る。
【0006】ところで、電磁鋼板を用いた鉄芯の欠点と
しては、渦電流やヒステリシス損失による鉄損が大きい
ことが挙げられる。特に、渦電流は電磁鋼板の厚みにほ
ぼ比例して流れ、発熱や効率の低下をもたらし、特に周
波数が高い場合に渦電流が大きくなる。渦電流を小さく
するために、最近では厚さ0.02〜0.1mm程度の
極薄珪素鋼板やアモルファス金属板を用いた鉄芯が実用
化され、この結果、高周波での使用が可能になり、近年
高周波化が著しいパルス変調方式のインバータのパルス
電源回路などの用途において使用量が増加している。し
たがって、図8〜図10に示すような円形断面で且つ円
形リング状の巻鉄芯23を極薄電磁鋼板で構成すること
により、特に有用な高周波用リアクトルが得られるもの
と考えられる。
【0007】しかし、このような極薄電磁鋼板を使用し
た円形リング状の巻鉄芯の製造にあたって、特に問題に
なるのはエアギャップの加工である。巻鉄芯に図8に示
すようなエアギャップ25を形成するために鉄芯を切断
する方法としては、放電加工方式、電解加工方式、ラッ
ピング加工方式、砥石切断方式、鋸切断方式などが考え
られるが、これらのうち放電加工、電解加工、ラッピン
グ加工の各方式は切断速度が極めて遅く、非実用的であ
る。また、鋸切断方式は切断速度については問題はない
が、切断面が粗く、しかも鉄芯に与える衝撃や歪み応力
が大きいため特に極薄電磁鋼板からなる鉄芯の切断には
適さず、さらに極薄電磁鋼板は硬度が高いものが多いこ
ともあり、巻鉄芯の切断方法としては不適当である。
【0008】これに対して砥石切断方式は、上記のよう
な他の方式の問題が殆どなく、最も実用的な方法である
といえる。すなわち、この砥石切断方式は、エアギャッ
プの開口寸法と同じ厚みの切断砥石で巻鉄芯を切断する
もので、切断速度が速く、切断面が平滑でしかも切断精
度も良好であり、巻鉄芯に与える衝撃や歪みも比較的少
ない。このため従来は、小型から中型のカットコアなど
の切断にも広く用いられている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この砥石切断
方式には以下のような問題点がある。すなわち、砥石切
断方式で巻鉄芯の切断を行った場合、切断された巻鉄芯
の薄鋼板一枚毎に図14に示すようなバリが発生し、こ
のバリによって隣接している薄鋼板どうしが短絡してし
まうという問題である。このように薄鋼板どうしが短絡
した巻鉄芯をリアクトルに使用すると大きな渦電流(短
絡電流)が発生し、鉄損を大きく増加させてしまう。こ
のような鉄損の増加は、特に高周波のリアクトルで著し
い。
【0010】通常、巻鉄芯に用いられる電磁鋼板には絶
縁皮膜が塗布されるか又は酸化皮膜による絶縁層が形成
されており、積層した薄鋼板間での短絡が生じないよう
にしている。しかし、極薄電磁鋼板の絶縁皮膜は鉄芯の
占積率を低下させないようにするため厚さが極めて薄く
(例えば、3μm程度)、このため僅かなバリが生じた
だけで隣接する薄鋼板どうしを容易に短絡させてしま
う。
【0011】従来、スリット加工によって電磁鋼板から
鉄芯材料(積層鉄芯用の短冊状の材料や巻鉄芯用の帯
材)を切り出す際に生じたバリを除去するために、化学
研磨処理として強酸によるエッチング処理が行なわれる
ことがある。しかし、このエッチング処理では鉄芯をエ
ッチング液に浸さなければならず、エッチング液を処理
後に完全に洗浄除去することは困難であるため、残留し
たエッチング液が鉄芯を腐食させるという問題がある。
【0012】したがって、このエッチング処理をエアギ
ャップを形成するために砥石切断された鉄芯に適用した
場合、鉄芯をエッチング液に浸した後に洗浄を行って
も、僅かに残留したエッチング液が長期間にわたって鋼
板を腐蝕させる。このため錆の成長や肥大によって切断
面の状態が変化し、エアギャップに挟み込んだ保持片を
押してギャップ寸法を拡げたり、鉄芯性能やリアクトル
コイルの絶縁性能を劣化させたりする。特に、エアギャ
ップを2箇所設けるためにリング状の巻鉄芯を2分割す
る場合や同じく鉄芯を2分割するカットコアの場合に
は、切断面のみをエッチング液に浸せばよいのに対し
て、エアギャップを1箇所設けるためにリング状の巻鉄
芯の1箇所のみを切断した場合は、巻鉄芯の半分程度を
エッチング液に浸さなければならず、後日、鉄芯全体に
錆を発生する可能性が高い。
【0013】また、砥石切断加工時には成長するバリが
隣接する鋼板を強く押し、特に極薄電磁鋼板はバリ成長
に対する抵抗力が弱いため、鋼板どうしを接着している
接着剤層や絶縁皮膜(実際は接着層は絶縁皮膜どうしを
接着している)が剥離して微小な隙間ができ、この隙間
にエッチング液が滲み込んでしまう。この隙間は極く微
小なものであるため、これに滲み込んだエッチング液を
完全に洗浄除去する方法はなく、不可避的にエッチング
液が残留してしまう。また、特に円形断面の巻鉄芯で
は、これを構成する帯材の幅が非常に狭い部分があり、
この部分は特にバリに押されて簡単に剥離し、隙間がで
きやすい。
【0014】また、エッチング処理は、その処理時間が
砥石切断の数倍程度必要であり、それに要する時間やコ
ストが問題になる。また、エッチング液は作業者にとっ
て危険であるとともに、洗浄後の廃液による環境汚染も
問題となる。一方、エッチング処理以外でバリを除去す
る方法として、電解研磨法が考えられる。この方法は、
電解液(食塩水、硝酸ソーダ水溶液など)中で鉄芯切断
面と電極板とを対向させて、鉄芯を陽極、電極板を陰極
として電流を流す方法であり、この通電によって鉄芯側
が電気分解によって溶解し、特にバリなどの先端部分が
選択的に速く削られ、短時間で効果的なバリの除去がで
きる。また、電解液としては腐蝕性のないものを使用で
きる。
【0015】しかし、リング状の巻鉄芯に1箇所のみエ
アギャップを加工した場合、このエアギャップに電極を
挿入して電解研磨しようとしても、エアギャップの間隙
は狭い(例えば、2mm程度)ために、電解研磨作用に
必要な電解液の流量を与えることが困難である。一方、
電極として回転する円盤状電極を用い、電解液を巻き込
みながら通電すれば必要な電解液の流量は確保できる
が、巻鉄芯の外面は積層した帯材のエッジによる凹凸が
あり、しかも巻鉄芯の外面は全体が曲面であって平面部
分がないために固定手段に対して坐りが悪く、このため
巻鉄芯を精度良く位置決め固定し、円盤状電極を鉄芯切
断面との間で正確な距離に保つことが難しい。すなわ
ち、リング状の巻鉄芯に1箇所のみエアギャップを加工
した場合、狭い切断溝に円盤状電極に挿入して、この電
極とギャップ切断面との間隔と平行度が例えば0.1m
m程度の精度に保たれるように巻鉄芯を固定しなければ
ならず、このために多くの手間と時間がかかる。また、
2箇所以上のエアギャップを設けるためにリング状の巻
鉄芯を複数に分割した場合には、分割された巻鉄芯構成
部材の外面に凹凸があることに加えて形状がリング形状
ではないため、電極に対して精度良く位置決め固定する
ことがさらに難しくなる。したがって、従来の電解研磨
法を工業的に巻鉄芯切断面の研磨加工に適用することは
困難である。
【0016】このように従来のバリ除去技術を、リング
状の巻鉄芯のエアギャップ切断面に適用するには大きな
問題がある。したがって本発明の目的は、このような従
来技術の課題を解決し、エッチング処理などを行うこと
なく、鉄芯切断面に生じるバリを容易に且つ確実に除去
することができる鉄芯切断方法及び装置を提供すること
にある。また、本発明の他の目的は、積層した帯材間で
の短絡が適切に防止された巻鉄芯を安定して製造するこ
とができる巻鉄芯の製造方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、残留した
処理液による鉄芯腐食のおそれがない電解研磨法を利用
して鉄芯切断面のバリを除去する方式について検討する
過程で、砥石切断加工と電解研磨加工を同時に行なうこ
とができれば、困難な電解研磨加工のための位置決め固
定が不要となるとともに、電解研磨工程自体に要する手
間と時間も殆ど不要になり、この結果大幅な工数削減が
可能となるという着想を得た。そして、これを可能とす
る具体的な方法について検討を進めた結果、砥石切断用
の円盤状の切断砥石に電解研磨加工用の円盤状電極とし
ての機能を持たせ、切断砥石による鉄芯の切断工程にお
いて切断砥石−鉄芯間で通電を行うことにより、鉄芯切
断面に生じたバリを切断中又は切断直後に電解研磨加工
により除去する、という新たな方法を創案した。
【0018】すなわち、本発明の鉄芯の切断方法及び切
断装置は以下のとおりである。 [1] 導電性が付与された円盤状の切断砥石により鉄芯を
切断するとともに、この切断時又は/及び切断完了後の
切断砥石空転時に、鉄芯被切断箇所に電解液を供給しつ
つ、切断砥石と鉄芯間で通電を行うことで鉄芯切断面を
電解研磨することを特徴とする鉄芯の切断方法。 [2] 上記[1]の切断方法において、砥石全体に導電性が
付与された切断砥石を用いることを特徴とする鉄芯の切
断方法。
【0019】[3] 上記[1]の切断方法において、径方向
における中心側領域にのみ導電性が付与された切断砥石
を用い、鉄芯の切断完了後、切断砥石の前記中心側領域
を鉄芯切断面と対面させた状態で切断砥石を空転させつ
つ通電を行い、鉄芯切断面を電解研磨することを特徴と
する鉄芯の切断方法。 [4] 導電性が付与された円盤状の切断砥石と、該切断砥
石と被加工鉄芯間で通電を行うための通電手段と、前記
鉄芯の被切断箇所に電解液を供給するための電解液供給
手段とを有することを特徴とする鉄芯の切断装置。
【0020】[5] 上記[4]の切断装置において、切断砥
石が、砥石全体に導電性が付与された切断砥石であるこ
とを特徴とする鉄芯の切断装置。 [6] 上記[4]の切断装置において、切断砥石が、径方向
における中心側領域にのみ導電性が付与された切断砥石
であることを特徴とする鉄芯の切断装置。 [7] 砥石全体に、又は径方向における中心側領域にの
み、導電性が付与された構造を有することを特徴とする
切断砥石。
【0021】[8] 帯材積層断面形状が円形、楕円形、六
角形以上の多角形、両端が円弧又は楕円弧で且つ該両円
弧又は楕円弧間が略直線である形状、四角形以上の多角
形の角部を円弧又は楕円弧状にした形状のうちのいずれ
かになるように、帯材を円形又は楕円形リング状に巻い
て巻鉄芯を成形し、この巻鉄芯の周方向における1箇所
以上を、エアギャップ形成のために上記[1]〜[3]に記載
のいずれかの切断方法で切断することを特徴とする巻鉄
芯の製造方法。
【0022】[9] 上記[8]の製造方法において、成形さ
れた巻鉄芯の帯材積層断面形状が、円形、楕円形、六角
形以上の多角形(但し、当該多角形の外形線のうちの大
部分が帯材積層断面内の巻取中心線と非平行な多角
形)、両端が円弧又は楕円弧で且つ該両円弧又は楕円弧
間が略直線である形状(但し、当該形状の外形線のうち
の大部分が帯材積層断面内の巻取中心線と非平行な形
状)、四角形以上の多角形(但し、当該多角形の外形線
のうちの大部分が帯材積層断面内の巻取中心線と非平行
な多角形)の角部を円弧又は楕円弧状にした形状のうち
のいずれかであることを特徴とする巻鉄芯の製造方法。
【0023】[10] 上記[8]の製造方法において、成形さ
れた巻鉄芯の帯材積層断面形状が、円形、楕円形、六角
形以上の多角形(但し、当該多角形の外形線が帯材積層
断面内の巻取中心線と非平行な多角形)、両端が円弧又
は楕円弧で且つ該両円弧又は楕円弧間が略直線である形
状(但し、当該形状の外形線が帯材積層断面内の巻取中
心線と非平行な形状)、四角形以上の多角形(但し、当
該多角形の外形線が帯材積層断面内の巻取中心線と非平
行な多角形)の角部を円弧又は楕円弧状にした形状のう
ちのいずれかであることを特徴とする巻鉄芯の製造方
法。
【0024】
【発明の実施の形態】図1〜図3は、本発明の鉄芯切断
方法及び装置の一実施形態を示すもので、1は円盤状の
切断砥石、2は被加工対象物である巻鉄芯、3は通電手
段、4は電解液供給手段である。通常、鉄芯を切断する
円盤状の切断砥石(例えば、厚さ2mm程度)は砥粒と
結合剤からなるとともに、内部に無数の微細な気孔を有
している。また、切断砥石には、砥粒を固める結合剤の
違いによってゴム系砥石、レジノイド砥石、メタルボン
ド砥石などの種類がある。一般に、このような切断砥石
は、湿式(冷却液を注ぎながら鉄芯を切断する)で使用
され、砥石中の無数の気孔が冷却と切屑(スラッジ)を
排出する作用をする。
【0025】本発明法で使用される切断砥石1には導電
性が付与される。本実施形態は、特に砥石全体に導電性
が付与された切断砥石1を用いる例を示している。切断
砥石1に導電性を付与するための構成に特別な制約はな
く、例えば図3に示すように砥石体10の内部(例え
ば、厚さ方向の中心側部分又は両外側部分或いは厚さ方
向の全体)に導電性のある金属板、金属網、金属繊維、
炭素繊維などの導電体3を埋め込む方法を採ることがで
きる。また、導電性のある金属粉や炭素粉などの導電体
が砥石体10の内部に略均一に分散して埋め込まれるよ
うにしてもよい。
【0026】なお、切断砥石の中に埋め込まれる導電体
は、砥石円盤の外周面の砥粒の消耗とともに消耗し、砥
粒切刃の邪魔をすることがないような材質、形態のもの
が好ましく、このような観点からは金属粉や炭素粉、ま
た粉体以外の導電体の場合には銅繊維、炭素繊維などの
繊維質のものが好ましい。また、金属粉や炭素粉などの
導電体が砥石中に均一に分散しているような場合、これ
らの導電体が砥石側面に露出することによって短絡電流
が流れるが、砥石が高速回転する際の振動や電解液の表
面張力作用によって、実際は導電体と鉄芯切断面との平
均接触面積や接触時間は少なく、したがって、導電体に
よる導電率を適宜調節しておけば接触による短絡電流は
緩和され、短絡による異常電流が流れるような問題は起
こらない。
【0027】このような導電性を有する切断砥石1を得
るには、砥粒を結合剤で固める工程で厚み方向中心側又
は両外側或いは厚み方向全体に、導電体である銅などの
金属板、金属繊維、金属網、金属粉や炭素繊維、炭素粉
などを埋め込むか或いはこれらを混ぜ込んで成型する。
金属粉や炭素粉などの導電体どうしは必ずしも接触して
いなくても、近接していればよく、砥石内部の気孔を通
じて浸透した電解液を通して電流の通路が形成される。
【0028】前記切断砥石1に通電を行うために、切断
砥石1が保持される回転自在な砥石保持軸6も導電体で
ある金属などで構成され、電源Aに通じる前記通電手段
3の一方の端子30がこの砥石保持軸6に接続される。
また、通電手段3の他方の端子31は被加工対象物であ
る巻鉄芯2に接続される。前記電解液供給手段4は、巻
鉄芯2の被切断箇所に電解液を供給することができる注
液ノズルにより構成されている。
【0029】本発明法では、前記切断砥石1により巻鉄
芯2を切断するが、この切断時又は/及び切断完了後の
切断砥石空転時(すなわち、切断を完了して砥石側面が
鉄芯切断面に対面した状態での切断砥石空転時)に、巻
鉄芯2の被切断箇所に電解液供給手段4から電解液を供
給しつつ、前記通電手段3により切断砥石1と巻鉄芯2
間で通電(本実施形態では直流電源であるため、切断砥
石1を陰極、巻鉄芯2を陽極とした通電)を行い、巻鉄
芯2の切断面を電解研磨する。通電手段3を通じて流さ
れる電流は、砥石保持軸6から切断砥石1中の導電体3
を通り、砥石中の気孔に浸透した電解液を通じて流れ、
鉄芯切断面の電解研磨がなされる。なお、通電手段3の
電源は直流、交流のいずれでもよい。
【0030】電解液は切断砥石1の高速回転によって遠
心力で飛ばされるが、電解液供給手段4からの注液によ
って常に切断箇所に補給される。供給された電解液は、
切断部の冷却と発生するガスやスラッジを除去する作用
も行う。前記電解加工電流は例えば数百アンペア程度流
れるので、その発熱を冷却し且つ発生するガスやスラッ
ジの除去作用に必要な電解液の流量が必要である。な
お、電解液としては、例えば食塩水や硝酸ソーダ水溶液
などのような公知の電解液を用いることができる。
【0031】切断砥石1による巻鉄芯2の切断作用は、
常に砥石円盤の外周縁の砥粒が切刃となって行なわれ、
この際に鉄芯切断面に発生したバリは砥石側面からの電
流による電解研磨作用によって除去される。切断と電解
研磨(通電)を同時に行なう場合、切断面に対して電解
研磨作用が及ぼされる時間は、切断始端部の切断面部分
と切断終端部の切断面部分とで異なるが、電解研磨作用
はバリに対して選択的に速く作用する性質があることか
ら、電流を適宜調節しておけば、切断始端部の切断面部
分がバリの除去を超えて不必要に電解研磨(過研磨)さ
れ、エアギャップ寸法が広がってしまうようなことはな
い。また、切断終端部の切断面部分の電解研磨時間が不
足する場合は、切断後もしばらく切断砥石をその位置に
止めて空転させ、電解研磨を行えばよい。
【0032】また、図2に示すように切断完了後の切断
砥石空転時(すなわち、切断を完了して砥石側面が鉄芯
切断面に対面した状態での切断砥石空転時)にのみ通電
を行うこともできる。この場合は、切断砥石1を巻鉄芯
2の切断が完了した状態のままで或いは切断砥石1をさ
らに巻鉄芯側に押し込んだ状態で通電を行い、鉄芯切断
面の電解研磨を行う。この方法によれば、切断中に電解
研磨を行う方法に較べて鉄芯切断面の電解をより均一に
行なうことができる。また、電流を強くすれば電解研磨
時間は切断時間の数分の一程度で済むので、1つの工程
で切断とバリ取りができる利点は十分に生かせる。
【0033】また、このような方法に使用する切断砥石
としては、本実施形態のように砥石全体に導電性が付与
されたものを用いることもできるが、図4に示すような
径方向における中心側領域xにのみ導電性が付与された
切断砥石1aを用いることもできる。このような切断砥
石1aを用いる場合には、巻鉄芯2の切断完了後、切断
砥石1aをさらに巻鉄芯側に押し込み、前記中央側領域
xを鉄芯切断面に対面させた状態で切断砥石1aを空転
させつつ通電を行い、鉄芯切断面を電解研磨する。
【0034】一般に切断砥石は、ある程度直径が小さく
なるまで消耗すると切断性能が悪くなるので廃棄され
る。また、切断砥石の内部に導電体を埋め込む際には砥
石の機械的強度が確保されるように十分に配慮する必要
がある。したがって、上記切断砥石1aのように中心側
領域xのみを導電性にすれば、内部に埋め込まれた導電
体により切断性能が阻害されず、機械的強度も十分に確
保され且つ必要な導電性を持った切断砥石を容易に得る
ことができる。なお、図4に示す切断砥石1について
も、導電性を付与するための構造や砥石保持軸6の構成
などは図1〜図3の実施形態と同様である。
【0035】以上のような本発明法を実施するに当た
り、巻鉄芯2に電流を流すためには鉄芯自体の導電性も
問題になる。すなわち、巻鉄芯はその1箇所を切断する
と今まで一枚の帯状鋼板であったものが分断され、バリ
等で絶縁皮膜が短絡されていない状態では隣接した鋼板
の一枚一枚が互いに絶縁されることになる。したがっ
て、このような状態になると鉄芯切断面全体に電流を通
すことは困難となり、巻鉄芯周方向の2箇所以上を切断
する場合に2箇所目以降の切断に支障を来たすことにな
る。通常、巻鉄芯の外周面は積層した鋼板のエッジ部に
よる凹凸がかなりあり、このため円形断面の巻鉄芯であ
っても、例えば針金などを巻き付けて積層した鋼板一枚
一枚の短絡を図ったとしても全部の導通を得ることは容
易にはできない。
【0036】そこで、巻鉄芯2に確実に電源を接続する
方法として、以下のような方法を採ることが好ましい。 (1) 図5に示すように、金属繊維や金網などを集合させ
た弾力性のある金属マット7(例えば、細かい金網を適
宜丸めて毛布状にした帯)を巻鉄芯2に巻き付け、この
金属マット7に電源A(通電手段3の端子31)を接続
する。この方法では、弾力性のある金属マット7の細か
い凹凸が鉄芯外表面の凹凸に馴染んで接触し、電流が供
給可能となる。また、さらに好ましくは金属マット7の
上から電解液を供給すれば、より確実な通電が可能とな
る。
【0037】(2) 図6に示すように巻鉄芯2に銅板8
(又は銅箔)を巻き付け、この銅板8(又は銅箔)に電
源A(通電手段3の端子31)を接続するとともに、巻
鉄芯2と銅板8(又は銅箔)との間の通電性を確保する
ため、巻鉄芯2と銅板8(又は銅箔)との隙間に電解液
を供給する。この方法では、電流は上記電解液を通じて
巻鉄芯2に流れる。なお、電解液が供給される上記隙間
内では、電解研磨加工面と同様に発熱やガス発生がある
ので、電解液はある程度の流量が必要である。
【0038】以上のような本発明法によれば、エアギャ
ップ形成などのための鉄芯の切断とこの切断により生じ
たバリの除去を実質的に1つの工程で迅速且つ確実に行
うことができるが、さらに以下に述べるように、従来の
砥石切断方法に較べて切断速度の向上、切断精度の改
善、砥石消耗の大幅低下という大きな効果を得ることが
できる。切断砥石による切断加工の加工作用は、切断砥
石の外径最外側面の砥粒が切刃となって被加工物を切削
し切断するものであるが、本発明ではこのような砥石に
よる切削作用に加えて砥石への通電による電解加工作用
が働くため、通常の砥石式切断加工よりも切断速度が向
上する。
【0039】さらに本発明法によれば、砥石への通電に
より砥石の目詰りが効果的に防止される結果、以下のよ
うな顕著な効果が得られる。通常、砥石式切断加工で
は、砥石の切刃によって切削された微細な切り屑が砥石
表面や切刃表面を覆い、砥石目詰りとなって切刃の切れ
味を悪くする。この結果、切断速度が低下するととも
に、切断抵抗が増加して発熱が生じ、被加工物の焼けを
引き起こしたり、切断精度が悪化するなどの問題が起き
る。このため一般には、砥石の目詰り防止のために砥粒
を荒くする、結合剤を柔らかくする、砥石の気孔率を高
める等の対策により、砥粒の消耗、脱落の促進を図ると
ともに目詰りした切刃の早期更新を図っている。しか
し、これらの対策は切断加工面の精度を悪くし、荒い仕
上がりとなり、砥石の消耗を大幅に増加させる。
【0040】このような砥石式切断加工の問題に対し
て、本発明法では砥石への通電による電解加工作用によ
り微細な切り屑が容易に溶解除去されるため砥石の目詰
りが生じにくく、このため上述したような砥石構造上の
目詰り対策を大幅に緩和することができる。この結果、
切断速度の向上、切断精度の改善、砥石消耗の大幅低下
という従来にない効果を得ることができる。
【0041】本発明による鉄芯切断法は、高周波リアク
トル用巻鉄芯のエアギャップの加工に特に効果が大きい
が、その他にも、高周波リアクトル用巻鉄芯や一般のカ
ットコアの切断にも同様に効果がある。また、場合によ
っては積層鉄芯の切断にも適用でき、その適用対象に制
限はない。また、本発明のような電解加工作用を伴う砥
石切断方式による効果、特に上述したような切断速度の
向上、切断精度の改善、砥石消耗の大幅低下といった効
果は、鉄芯の切断に限らず、金属材料一般の切断にも極
めて有用であり、したがって、本発明の砥石切断方法は
金属材料一般の切断にも適用することができる。
【0042】次に、以上述べた鉄芯切断方法を利用し
た、本発明の巻鉄芯製造方法について説明する。本発明
法が製造の対象とする巻鉄芯は、図8〜図10に示すよ
うな、帯材を円形(又は楕円形)リング状に巻き取るこ
とより成形される断面形状が円形等の巻鉄芯である。従
来、高周波用リアクトルには、極薄珪素鋼板などの軟磁
性薄板を積層させた積層鉄芯が用いられている。この積
層鉄芯は、図7に示すような軟磁性薄板から切り出した
材料片を積層して形成した四角形断面の各1対の鉄芯ブ
ロックを組み立てて構成され、この積層鉄芯の対向する
1対の鉄芯ブロックに各々コイルが円形に巻き付けられ
る。
【0043】上記積層鉄芯の積層材料表面には薄い絶縁
皮膜が形成され、積層材料間での短絡が防止されるよう
にしてあるが、同じ寸法の材料片を積層させて鉄芯を構
成しているため、材料片の切断面に発生しているバリ
(スリット加工によって電磁鋼板から鉄芯材料を切り出
す際に切断面に発生するバリ)が隣接する材料片のダレ
部分(通常、この部分の絶縁皮膜は破壊されている)に
接触して短絡を起こし、特に高周波では鉄損が顕著に増
大するという問題がある。このバリとダレは、実用的な
切断加工(せん断)の際に程度の差はあれ必ず発生し、
これに伴う短絡は宿命的なものとされてきた。
【0044】またその他にも、上記のような積層鉄芯を
用いた高周波用リアクトルには、以下のような問題があ
る。 (1) コイルを構成する導線どうしが密着しているため、
導線どうしの直列キャパシタンスが大きい。このため寄
生コンデンサーを介して高周波電流が漏洩するスイッチ
ングノイズが大きく、これを抑えるために外部にノイズ
対策部品が必要となる。 (2) リアクトルを極力小型化するために並列に配置され
た左右のコイルが近接しているため、左右のコイル間の
並列キャパシタンスが大きい。このため矩形波の電流を
OFFした場合にコイル内に共振電流が発生し、これが
スイッチングノイズ特性の悪化原因となる。
【0045】(3) 並列に配置された左右のコイルが近接
しているため、絶縁耐電圧を持たせるための絶縁材料を
必要とする。 (4) コイルを構成している導線どうしが密着しているた
め、近接効果によって増加する交流実効抵抗によりコイ
ルに発熱損失が発生する。 (5) コイルを構成している導線どうしが密着しているた
め、コイルと空気との接触面積が導線の側縁面(コイル
の外周面)に限定され、しかも並列に配置された左右の
コイルが近接しているため、効果的な放熱ができない。
その結果、放熱面積を大きくするためにリアクトルが大
型化・重量化し、これに加えて絶縁材料も必要であるた
め材料費も嵩むことになる。
【0046】(6) コイルの形状が円筒状であるのに対し
て、これに内接する鉄芯ブロックの断面形状が四角形で
あるため、コイルと鉄芯との間に無駄な空間が存在し、
その分鉄損等が増大する問題がある。すなわち、断面形
状が円形である鉄芯(その外周全体がコイルに内接して
いる鉄芯)を用いたリアクトルを仮定してこれと比較し
た場合、以下のようになる。まず、鉄芯断面積を同一条
件とした場合、四角形断面を有する鉄芯は円形断面を有
する鉄芯に較べてコイル1巻長が長くなるため、導体抵
抗(=直流抵抗+表皮効果+近接効果)が増大し、リア
クトルの導体損失が増大する。また、コイル内径を同一
条件とした場合、四角形断面を有する鉄芯の断面積は円
形断面を有する鉄芯の断面積に較べて約36%少なく、
このため磁束密度が高くなり、リアクトルの鉄損が増加
することになる。また、従来タイプのリアクトルは、上
述のようにコイルと鉄芯間の空間(空隙)が大きいた
め、コイルの振動、騒音を防止するのが困難である。
【0047】(7) コイルが導線をストレートな筒状に巻
いて形成したものであるため、コイル各端部からの漏洩
磁束が大きい。 (8) 複数の鉄芯ブロックを相互に結合固定するための構
造部材(締め付け部材など)が必要とされ、また、この
ために多大な組立工数が必要となる。また、締め付け材
などが導電性の金属の場合にはコイルとの絶縁処理が必
要である。
【0048】このように従来のリアクトルにはその構造
に由来する種々の問題点がある。近年、電源機器の小型
化、高効率化を目的として機器の高周波化が進むなか
で、リアクトルに対する低鉄損、低導損(銅損)、低騒
音化の要求が益々厳しさを増しており、上記のような問
題を有する従来のリアクトルでは、そのような低損失・
低騒音化の厳しい要求に対応できなくなりつつある。
【0049】このため本発明者らは、従来のリアクトル
に較べて特に損失及び騒音特性が顕著に改善され且つ製
造も容易なリアクトルを得るため、鉄芯およびコイルを
含めたリアクトルの構造と材質について抜本的な検討を
行った。その結果、鉄芯を、帯材をその積層断面形状が
円形や楕円形などの形状となるように円形又は楕円形リ
ング状に巻いた巻鉄芯により構成するとともに、コイル
(特に好ましくは平角導線縦巻きコイル)を上記巻鉄芯
の略全周に形成し、コイルを構成する導線が巻鉄芯内周
側から外周側に向けて放射状(或いは扇状)に拡がるよ
うな形態とすることにより、上記課題を解決できる低損
失(低鉄損及び低導損)・低騒音リアクトルが得られる
ことを見い出した。
【0050】すなわちこのリアクトルは、帯材積層断面
形状が円形、楕円形、六角形以上の多角形、両端が円弧
又は楕円弧で且つ該両円弧又は楕円弧間が略直線である
形状、四角形以上の多角形の角部を円弧又は楕円弧状に
した形状のうちのいずれかになるように、帯材を円形又
は楕円形リング状に巻いて形成された巻鉄芯を有し、こ
の巻鉄芯の略全周に亘ってコイルを巻き付けたリアクト
ルである。また、このリアクトルでは、巻鉄芯の周方向
の1箇所又は2箇所以上を切断してエアギャップを設け
ることにより高周波特性を効果的に向上させることがで
きる。
【0051】本発明の製造方法は、このような巻鉄芯の
製造法を目的としたものであり、帯材積層断面形状が円
形、楕円形、六角形以上の多角形、両端が円弧又は楕円
弧で且つ該両円弧又は楕円弧間が略直線である形状、四
角形以上の多角形の角部を円弧又は楕円弧状にした形状
のうちのいずれかになるように、帯材を円形又は楕円形
リング状に巻いて巻鉄芯を成形し、この巻鉄芯の周方向
における1箇所以上を、エアギャップ形成のために先に
述べた電解研磨加工を併用した砥石切断方法で切断する
ものである。
【0052】また、製造される巻鉄芯のより好ましい帯
材積層断面形状は、円形、楕円形、六角形以上の多角形
(但し、当該多角形の外形線のうちの大部分が帯材積層
断面内の巻取中心線と非平行な多角形)、両端が円弧又
は楕円弧で且つ該両円弧又は楕円弧間が略直線である形
状(但し、当該形状の外形線のうちの大部分が帯材積層
断面内の巻取中心線と非平行な形状)、四角形以上の多
角形(但し、当該多角形の外形線のうちの大部分が帯材
積層断面内の巻取中心線と非平行な多角形)の角部を円
弧又は楕円弧状にした形状のうちのいずれかであり、さ
らに好ましい帯材積層断面形状は、円形、楕円形、六角
形以上の多角形(但し、当該多角形の外形線が帯材積層
断面内の巻取中心線と非平行な多角形)、両端が円弧又
は楕円弧で且つ該両円弧又は楕円弧間が略直線である形
状(但し、当該形状の外形線が帯材積層断面内の巻取中
心線と非平行な形状)、四角形以上の多角形(但し、当
該多角形の外形線が帯材積層断面内の巻取中心線と非平
行な多角形)の角部を円弧又は楕円弧状にした形状のう
ちのいずれかである。
【0053】図8〜図10は、本発明法により製造され
る巻鉄芯及びこれを用いたリアクトルの一実施形態を示
すもので、図8は平面図、図9は図8中のIX−IX線
に沿う断面図、図10は巻鉄芯の帯材積層方向での断面
図である。なお、図9及び図10においては帯材の断面
ハッチングは省略してある。本実施形態のリアクトル
は、帯材を帯材積層断面形状が円形となるように円形リ
ング状に巻いて形成された巻鉄芯23と、この巻鉄芯2
3の略全周に亘って巻き付けられたコイル24とからな
る。本実施形態のコイル24は平角導線を縦巻きしたも
のであるが、導線は丸導線、リッツ線などでもよい。な
お、本発明では巻鉄芯の帯材積層方向での断面形状を
「帯材積層断面形状」という。
【0054】前記円形リング状の巻鉄芯23は、図11
に示すような帯材(但し、この図では、帯材の長手方向
を1/数百程度に縮尺して示してある)を材料とし、こ
れを図示した巻取中心線に沿って例えば円形断面の軸体
(治具)に複数回(例えば、数百回程度)巻き取ること
により得られる。ここで、巻鉄芯23の帯材積層断面形
状は、積層した帯材の板厚断面の集合からなるものであ
り、したがって帯材積層断面形状が「円形」とは帯材板
厚断面の集合により構成される近似的な円形を指す。な
お、この点は後述する楕円形、多角形などの他の断面形
状についても同様である。
【0055】前記巻鉄芯23を形成する帯材としては軟
磁性薄板が用いられる。この軟磁性薄板の種類は特に限
定されず、例えば、方向性又は無方向性珪素鋼板(通
常、Si含有量:4mass%未満)、高珪素鋼板(通常、
Si含有量:4〜7mass%程度)、アモルファス薄板な
どが適用できる。但し、高珪素鋼板はSi含有量(板厚
方向での平均Si含有量):略6.65mass%付近で最
も優れた磁気特性を示し、固有抵抗値が大きく且つ渦電
流損失が小さくなる性質があり、また、Si含有量(板
厚方向での平均Si含有量):6.2〜6.9mass%の
高珪素鋼板は磁歪が低く、特に顕著な低騒音化が達成で
きる。また、板厚方向に特定のSi濃度分布を有する高
珪素鋼板、具体的には、板厚方向において板表層側ほど
Si濃度が高く且つ板厚中心部に対して板厚方向で略対
称なSi濃度分布を有するとともに、板表層部のSi濃
度が6.0〜7.0mass%であって且つ板厚中心部との
Si濃度差が0.5mass%以上である高珪素鋼板につい
ても、高周波で使用される際に渦電流が板表層部に流れ
ることによって低鉄損効果が効率的に得られ、良好な低
騒音、低鉄損効果が発揮される。また、この高珪素鋼板
は、板厚中心部を低Si濃度にすることによってSi濃
度が高い板表層部の脆性をカバーすることができ、素材
鋼板を図11に示すような曲線状或いは屈曲した形状に
切り抜く際の連続加工を容易にする。
【0056】したがって、使用する帯材としては、板厚
方向での平均Si含有量が6.2〜6.9mass%(特に
望ましく略6.65mass%)の高珪素鋼板若しくは板厚
方向において板表層側ほどSi濃度が高く且つ板厚中心
部に対して板厚方向で略対称なSi濃度分布を有すると
ともに、板表層部のSi濃度が6.0〜7.0mass%で
あって且つ板厚中心部とのSi濃度差が0.5mass%以
上である高珪素鋼板が好ましい。一般に、このような高
珪素鋼板は、Si含有量が比較的低い鋼板(通常、Si
含有量:4mass%未満)を浸珪処理して表層にSiを浸
透させた後、表層のSiを板厚方向に拡散させる(但
し、板厚方向に特定のSi濃度分布を有する高珪素鋼板
の場合には、この拡散処理を途中で打切り、板厚方向に
特定のSi濃度分布を形成させる)ことにより製造され
る。なお、前者の板厚方向での平均Si含有量が6.2
〜6.9mass%の高珪素鋼板としては、Si含有量が板
厚方向で略均一なもの、Si濃度が板厚方向で一定の分
布を有するもののいずれでもよい。帯材の板厚にも特に
制約はないが、高周波用途としては0.02〜0.1m
m程度の板厚のものが好ましい。
【0057】巻鉄芯23とコイル24との間に余分な空
間が生じないようにするという観点からは、巻鉄芯23
の帯材積層断面形状は円形が最も好ましいと言える。但
し、帯材積層断面形状が円形の場合ほどではないが、従
来タイプのリアクトルに較べて鉄芯とコイルとの間の空
間を十分に小さくできるという点から、巻鉄芯23の帯
材積層断面形状を、楕円形、六角形以上の多角形、
両端が円弧又は楕円弧で且つ該両円弧又は楕円弧間が
略直線である形状、四角形以上の多角形の角部を円弧
又は楕円弧状にした形状、のうちのいずれかにしてもよ
い。なお、これらの断面形状及び先に述べた円形断面形
状は、それぞれの文言が意味する厳密な形状である必要
はなく、ある程度変形していてもよい。
【0058】重なり合った帯材のエッジ(切断面)間で
の切断バリによる短絡を防止するためには、重なり合っ
た帯材のエッジ部位置が帯材幅方向でなるべく一致しな
いようにすることが必要があり、したがって上記〜
の場合には、重なり合った帯材のエッジ部位置の大部分
で帯材幅方向で一致しないようにすることが好ましい。
すなわち、上記の場合の「多角形」はその外形線(多
角形の全辺)の大部分、好ましくは全部が帯材積層断面
内の巻取中心線と非平行な多角形とすることが好まし
く、また、上記の場合の「形状」はその外形線の大部
分、好ましくは全部が帯材積層断面内の巻取中心線と非
平行な形状とすることが好ましく、また、上記の場合
の基本となる「多角形」もその外形線(多角形の全辺)
の大部分、好ましくは全部が帯材積層断面内の巻取中心
線と非平行な多角形とすることが好ましい。
【0059】図12(a)〜(e)は、巻鉄芯23が上
記〜の帯材積層断面形状を有する実施形態を示して
いる。なお、この図12においては帯材の断面ハッチン
グは省略してある。図12(a)は巻鉄芯23の帯材積
層断面形状が楕円形の場合の一実施形態を示している。
この巻鉄芯23は、図11(B)に示すような帯材(但
し、この図では、帯材の長手方向を1/数百程度に縮尺
して示してある)を材料とし、これを図示した巻取中心
線に沿って例えば円形断面の軸体(治具)に複数回(例
えば、数百回程度)巻き取ることにより得られる。ここ
で、本発明において帯材積層断面形状が楕円形とは、本
来的な楕円形以外に非真円で且つ全周が弧状であるよう
な形状も含むものとする。
【0060】図12(b)は巻鉄芯23の帯材積層断面
形状が六角形の場合の一実施形態を示している。この巻
鉄芯23は、図11(C)に示すような帯材(但し、こ
の図では、帯材の長手方向を1/数百程度に縮尺して示
してある)を材料とし、これを図示した巻取中心線に沿
って例えば円形断面の軸体(治具)に複数回(例えば、
数百回程度)巻き取ることにより得られる。この例で
は、六角形の外形線(全辺)の全部が帯材積層断面内の
巻取中心線と非平行となるような帯材積層断面形状とし
ている。
【0061】図12(c)は巻鉄芯1の帯材積層断面形
状が、両端が円弧(又は楕円弧)で且つ該両円弧(又は
楕円弧)間が略直線である形状の場合の一実施形態を示
している。この巻鉄芯23は、図11(D)に示すよう
な帯材(但し、この図では、帯材の長手方向を1/数百
程度に縮尺して示してある)を材料とし、これを図示し
た巻取中心線に沿って例えば円形断面の軸体(治具)に
複数回(例えば、数百回程度)巻き取ることにより得ら
れる。この例では、上記形状の外形線の全部が帯材積層
断面内の巻取中心線と非平行となるような帯材積層断面
形状としている。
【0062】図12(d)は巻鉄芯23の帯材積層断面
形状が、角部が円弧(又は楕円弧)状である四角形の場
合の一実施形態を示している。この巻鉄芯23は、図1
1(E)に示すような帯材(但し、この図では、帯材の
長手方向を1/数百程度に縮尺して示してある)を材料
とし、これを図示した巻取中心線に沿って例えば円形断
面の軸体(治具)に複数回(例えば、数百回程度)巻き
取ることにより得られる。この例では、基本となる四角
形の外形線(全辺)の全部が帯材積層断面内の巻取中心
線と非平行となるような帯材積層断面形状としている。
【0063】図12(e)は巻鉄芯23の帯材積層断面
形状が八角形の場合の一実施形態を示している。この巻
鉄芯23は、図11(F)に示すような帯材(但し、こ
の図では、帯材の長手方向を1/数百程度に縮尺して示
してある)を材料とし、これを図示した巻取中心線に沿
って例えば円形断面の軸体(治具)に複数回(例えば、
数百回程度)巻き取ることにより得られる。この場合に
は、八角形の外形線(全辺)のうち2辺を除く外形線
(すなわち、大部分の外形線)が帯材積層断面内の巻取
中心線と非平行となるような帯材積層断面形状としてい
る。なお、図11(A)〜(F)に示す材料の形状は、
幅方向両縁部が直線状の素材鋼板から巻鉄芯材料を切り
抜く際に、加工性及び歩留りを考慮して決められたもの
である。
【0064】また、コイル24を構成する導線が巻鉄芯
内周側から外周側に向けて放射状(或いは扇状)に拡が
るような形態を、巻鉄芯23の周方向で均一に形成する
という観点からは、巻鉄芯23は円形リング状であるこ
とが最も好ましいが、場合によっては巻鉄芯23を楕円
形リング状としてもよい。このように巻鉄芯23を楕円
形リング状とした場合には、隣接する導線の間隔が巻鉄
芯周方向位置で異なることになる。ここで、本発明にお
いて巻鉄芯23のリング形状が楕円形とは、本来的な楕
円形以外に非真円で且つ全周が弧状であるような形状も
含むものとする。巻鉄芯のリング形状を円形、楕円形の
なかから適宜選択できることにより、機器への取付の自
由度が得られる。
【0065】本発明の製造方法では、以上のような巻鉄
芯を帯材を円形又は楕円形リング状に巻き取ることによ
り成形し、この成形された巻鉄芯の周方向における1箇
所以上を先に述べた砥石切断方法で切断し、エアギャッ
プを形成する。すなわち、この砥石切断では、導電性が
付与された円盤状の切断砥石により鉄芯を切断するとと
もに、この切断時又は/及び切断完了後の切断砥石空転
時に、鉄芯被切断箇所に電解液を供給しつつ、切断砥石
と鉄芯間で通電を行う。これにより切断によるバリが除
去され、バリによる短絡が適切に防止されたエアギャッ
プを加工することができる。
【0066】図13(a)〜(c)は巻鉄芯に対するエア
ギャップの形成形態の例を示すもので、図13(a)は
巻鉄芯23の周方向の1箇所にエアギャップ25を設け
たものである。また、図13(b)は巻鉄芯23の周方
向の2箇所に、図13(c)は巻鉄芯23の周方向の4
箇所にそれぞれエアギャップ25を設けたものであり、
したがって、図13(b)の場合はリング状の巻鉄芯2
3を2分割し、図13(c)の場合はリング状の巻鉄芯
23を4分割したものである。このようにエアギャップ
25を設けることにより高い電流に対してもインダクタ
ンスが低下せず、またギャップの数が多いほど、より高
電流側までインダクタンスの低下が防止できる。したが
って、エアギャップ25は2箇所以上(特に好ましくは
4箇所以上)設けることが好ましい。
【0067】また、通常、このエアギャップ25を維持
するためにエアギャップ25内には例えばプラスチック
製などの絶縁材(図示せず)が配置される。通常、巻鉄
芯23の外側には塗装又は樹脂フィルムなどによる絶縁
用被覆が施されるか、若しくは巻鉄芯23が絶縁用のプ
ラスチックカバーで覆われ、その上でコイル24が外装
される。
【0068】本発明により製造される巻鉄芯23は、帯
材を円形又は楕円形リング状に巻いたものであるため、
帯材の巻き取りの際に歪が導入されにくく、このため帯
材の巻き取り成形及びエアギャップの形成後、歪取焼鈍
を施さないものをそのまま用いることができる。
【0069】また、帯材として板厚方向での平均Si含
有量が6.2〜6.9mass%の高珪素鋼板(特に好まし
くは略6.65mass%高珪素鋼板)を用いた場合には、
この高珪素鋼板は磁歪が小さく(略6.65mass%高珪
素鋼板で磁歪は最小となる)、物理的歪/磁気感受性が
極めて小さいため、歪取焼鈍の必要性がより少ないとい
う利点があり、焼鈍の省略による省エネルギー効果も大
きい。また、板厚方向において板表層側ほどSi濃度が
高く且つ板厚中心部に対して板厚方向で略対称なSi濃
度分布を有するとともに、板表層部のSi濃度が6.0
〜7.0mass%であって且つ板厚中心部とのSi濃度差
が0.5mass%以上である高珪素鋼板を用いた場合にも
良好な低騒音、低鉄損特性が得られるため、歪取焼鈍の
必要性がより少ないという利点があり、上記高珪素鋼板
と同様に焼鈍の省略による省エネルギー効果が大きい。
【0070】また、軟磁性薄板を積層させて鉄芯を形成
する場合、占積率を下げないためには絶縁皮膜の膜厚を
極めて薄くする必要があるが、このような薄い絶縁皮膜
は加熱などによって損傷を生じ易い。したがって、歪取
焼鈍を行うとその際の加熱によって帯材表面の絶縁皮膜
が損傷し、積層した材料が短絡して鉄損が増加するとい
う問題があるが、上記のように歪取焼鈍を省略すること
ができれば、そのような問題を解決することができる。
したがって、巻鉄芯を重なり合った帯材のエッジ部位置
がなるべく帯材幅方向で一致しないような帯材積層断面
形状とすることによって、バリによる短絡が防止される
という効果を、より確実なものとすることができる。
【0071】以上のような本発明の製造方法によれば、
積層した帯材間での短絡が最も理想的に防止された巻鉄
芯を得ることができる。すなわち、先に述べたように従
来タイプの積層鉄芯は、同じ寸法の材料片を積層させて
鉄芯を構成しているため、材料片の切断面のバリによっ
て積層した材料片間で短絡が起きやすく、これが鉄損の
増加要因となる問題がある。これに対して本発明の製造
方法により得られる巻鉄芯は、その材料として長手方向
の大部分が連続的に異なる幅にスリット切断された帯材
を用い、重なり合った帯材のエッジ部位置が帯材幅方向
でなるべく一致しないような帯材積層断面形状としてあ
るため、重なり合った帯材のエッジ(切断面)間での切
断バリによる短絡を、帯材表面の絶縁皮膜によって適切
に防止でき、しかも、エアギャップを形成するための切
断を先に述べた特定の切断方法で行うことにより、切断
面でのバリが適切に除去され、このバリによる短絡を適
切に防止できる。これらの結果、巻鉄芯を構成する積層
した帯材間での短絡をほぼ完全に防止でき、この巻鉄芯
が適用されるリアクトルなどの鉄損の増加を効果的に防
止できる。
【0072】また、本発明により製造された2箇所にエ
アギャップを有する巻鉄芯(2分割された巻鉄芯)を用
いたリアクトルと、鉄芯を4分割してエアギャップを4
箇所に設けた従来タイプのリアクトルのインダクタンス
の直流重畳特性を比較すると、本発明法により得られた
巻鉄芯を用いたリアクトルは高い直流バイアス電流に対
してもインダクタンスの低下が少なく、抵抗成分が少な
い直流重畳特性が実現される。具体的には、コイル内径
を同一条件とした場合、本発明法により得られた巻鉄芯
(円形断面)の断面積は、従来タイプのリアクトルが有
する四角形断面の鉄芯の断面積よりも最大で57%増加
し、その分磁束密度が低くなるため鉄芯の磁束が飽和し
にくくなり、鉄芯のエアギャップが大きく取れるため、
大きな電流に対してもインダクタンスが低下しない。
【0073】一般的に、リアクトルに用いる鉄芯のエア
ギャップ数を増やすとより平坦なインダクタンスの直流
重畳特性が実現できるが、四角形断面の鉄芯を4分割し
てエアギャップを4箇所に設けた従来タイプのリアクト
ルに較べて、本発明法により得られた巻鉄芯を用いたリ
アクトルでは、エアギャップを2箇所しか設けなくても
より優れたインダクタンスの直流重畳特性が実現でき
る。
【0074】さらに、本発明の製造方法により得られる
巻鉄芯を用いたリアクトルは、以下のよう優れた利点が
ある。 (1) コイルが円形又は楕円形リング状の巻鉄芯の略全周
に亘って導線を巻き付けることにより構成されるため、
コイルを構成する導線が巻鉄芯内周側から外周側に向け
て放射状(或いは扇状)に拡がるような形態となり、こ
のため従来タイプのリアクトルのようにコイルの隣接す
る導線どうしが密着しない。このようなコイルの形態に
より、隣接する導線どうしの直列キャパシタンスが小さ
くなり、従来タイプのリアクトルに較べて寄生コンデサ
ーを介して電流が漏洩するスイッチングノイズが約1/
10以下にまで激減するという顕著な効果が得られる。
このため従来タイプのリアクトルに較べて、スイッチン
グノイズを抑えるために外部に付属させるノイズ対策部
品を大幅に簡素化することができる。
【0075】(2) コイルリングの内径が従来タイプのリ
アクトルの左右のコイル間の間隔よりもかなり大きいた
め、リアクトル径方向で対向するコイル部分間の並列キ
ャパシタンスが従来タイプのリアクトルに較べて著しく
小さく(約1/10以下)なる。この結果、矩形波の電
流をOFFした場合にコイル内に共振電流が発生しにく
くなり、従来タイプのリアクトルに較べてEMI特性が
顕著に改善される。 (3) コイルを構成する導線が巻鉄芯内周側から外周側に
向けて放射状(或いは扇状)に拡がるような形態であ
り、隣接する導線が離れているため、近接効果による交
流実効抵抗が低減し、従来タイプのリアクトルに較べて
コイル発熱損失が25〜51%も少なくなる。
【0076】(4) 隣接する導線が密着せずに離れてお
り、しかもコイルリングの内径が従来タイプのリアクト
ルの左右のコイル間の間隔よりもかなり大きいため、コ
イル各部と空気又はコイル接着固定用の樹脂との接触面
積が十分に確保され(従来タイプのリアクトルの約10
倍以上)、効果的な放熱が可能である。その結果、リア
クトルが大幅に小型化、軽量化される。 (5) コイルを構成する導線が巻鉄芯内周側から外周側に
向けて放射状(或いは扇状)に拡がるような形態となる
ため、隣接する導線間にはその周方向の大部分において
間隙が形成され、この間隙は空気層又はコイル接着固定
用の樹脂層であるため、隣接する導線間でのピンホール
に起因する絶縁破壊の危険性は極めて小さい。
【0077】(6) コイルリングの内径が従来タイプのリ
アクトルの左右のコイル間の間隔よりもかなり大きいた
め、従来タイプのリアクトルのような絶縁耐電圧を持た
せるための絶縁処理が不要となる。 (7) 巻鉄芯の帯材積層断面形状が円形、楕円形、六角形
以上の多角形、両端が円弧又は楕円弧で且つ該両円弧又
は楕円弧間が略直線である形状、四角形以上の多角形の
角部を円弧又は楕円弧状にした形状、のいずれかであ
り、鉄芯がコイルの内側と近接するため、コイルと鉄芯
の間の空間が小さくなる。この結果、リアクトルの小型
化が可能となるとともに、鉄芯の断面積が増大して磁束
密度が低減することで鉄損の低減が実現できる。また、
鉄芯とコイルとの密着性の向上により振動騒音の発生も
効果的に抑制できる。
【0078】(8) 特に、帯材積層断面形状が円形の場合
にはコイルと鉄芯の間の空間が殆どなくなるため、同一
コイル条件においてリアクトルを最も小型化でき、従来
の四角形断面の鉄芯に較べて最大で占積率が57%も向
上し、磁束密度が相対的に約36%程度も低減(帯材積
層断面形状が四角形である円形リング状の巻鉄芯を用い
た場合に較べた場合)することで、鉄損の効果的な低減
が実現できる。また、空間による振動騒音の発生もより
効果的に抑制できる。 (9) コイルはリング状の巻鉄芯の略全周に巻かれている
ため内鉄型リアクトルの漏洩磁束が小さく、周辺への影
響を少なくできる。
【0079】(10) 帯材を円形又は楕円形リング状に巻
いたものであり、急激な折り曲げ加工がなされないた
め、帯材の巻き取りの際の歪が導入されにくい。このた
め帯材の巻き取り後、歪取焼鈍を施さないものをそのま
ま用いることができ、また、上記のような高珪素鋼板は
磁歪が小さい上に物理的歪/磁気感受性が極めて小さい
ため、これを帯材とした場合には歪取焼鈍の必要性はよ
り少なくなる。そして、このように歪取焼鈍を省略でき
ることによりエネルギーコストを低減させることができ
るだけでなく、歪取焼鈍により絶縁皮膜を損傷させるこ
とがないため、絶縁皮膜の損傷が原因の鉄損の増加を抑
制することができる。
【0080】(11) 以上述べた以外にも、複数の鉄芯
ブロックを相互に結合固定するための構造部材(締め付
け部材など)が不要であり、またこのため締め付け材と
コイル間の絶縁処理が不要である、ギャップ締め付け
材が不要である、鉄芯がブロックを相互に結合固定す
る構造でないため、鉄芯ブロックを結合固定させた場合
のような高周波の電磁振動の力による振動音又は共振音
が発生しない、鉄芯が円形又は楕円形リング状の巻鉄
芯であるため、連続スリット切断して得られた帯材を円
形又は楕円形リング状に連続して高速巻き取りすること
によって短時間で製造でき、また、鉄芯の製造工数が従
来タイプのリアクトルに較べて格段に少なくできる、
リアクトルを廃棄分解処理する場合に、解体分離される
材料が鉄芯、鉄芯絶縁材、銅線だけであるため、解体作
業が容易でしかも分別・再利用(リサイクル)も容易で
ある、などの利点がある。
【0081】以上述べたように本発明法により製造され
る巻鉄芯とこれを用いたリアクトルは、従来タイプの巻
鉄芯とリアクトルが抱えていた問題を全て解消できる画
期的な性能を有するものであり、近年益々厳しさを増し
ているリアクトルの省エネルギー化、低損失・低騒音
化、小型軽量化の要求に十分に対応することができる。
【0082】
【発明の効果】以上述べたように本発明の鉄芯切断方法
及び装置によれば、従来のエッチング処理や電解研磨加
工のような問題を生じることなく、エアギャップ形成な
どのための鉄芯の切断とこの切断により生じたバリの除
去を実質的に1つの工程で迅速且つ確実に行うことがで
きる。さらに、切断により生じる微細な切り屑が電解作
用によって容易に溶解除去されるので砥石の目詰りが生
じにくく、このため砥石構造上の目詰り対策を大幅に緩
和することができる。この結果、切断速度の向上、切断
精度の改善、砥石消耗の大幅低下という従来にない効果
を得ることができる。
【0083】また、本発明の巻鉄芯の製造方法によれ
ば、重なり合った帯材のエッジ(切断面)間での切断バ
リによる短絡を適切に防止できるとともに、エアギャッ
プの切断面でのバリによる短絡も適切に防止できるた
め、積層した帯材間での短絡がほぼ完全に防止された理
想的な巻鉄芯を得ることができ、巻鉄芯が適用されるリ
アクトルなどの鉄損の増加を効果的に防止することがで
きる。さらに、この巻鉄芯を高周波用リアクトルに適用
した場合、先に(1)〜(11)に述べたような性能が得ら
れ、従来タイプのリアクトルの問題を全て解消すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鉄芯切断方法及び装置の一実施形態を
示す説明図
【図2】図1の実施形態において、切断砥石を巻鉄芯側
にさらに押し込んだ状態を示す説明図
【図3】図1の実施形態で使用される切断砥石の断面図
【図4】本発明の鉄芯切断法において使用される切断砥
石の他の実施形態を示す説明図
【図5】本発明の鉄芯切断法において、巻鉄芯への通電
を行うのに好適な方法の一実施形態を示す説明図
【図6】本発明の鉄芯切断法において、巻鉄芯への通電
を行うのに好適な方法の他の実施形態を示す説明図
【図7】従来のリアクトルの断面を示す説明図
【図8】本発明法により製造される巻鉄芯とこれを用い
たリアクトルの一実施形態を示す平面図
【図9】図8中のIX−IX線に沿う断面図
【図10】図8に示す巻鉄芯の帯材積層方向での断面図
【図11】本発明法により製造される巻鉄芯用の帯材の
平面形状例を示す説明図
【図12】本発明法により製造される巻鉄芯の他の実施
形態について、帯材積層方向での断面を示す説明図
【図13】本発明法により製造される巻鉄芯について、
エアギャップの形成形態の例を示す説明図
【図14】従来の砥石切断法により切断された巻鉄芯の
切断面を示す説明図
【符号の説明】
1,1a…切断砥石、2…巻鉄芯、3…通電手段、4…
電解液供給手段、5…導電体、6…砥石保持軸、7…金
属マット、8…銅板、10…砥石体、23…巻鉄芯、2
4…コイル、25…エアギャップ、30,31…端子、
A…電源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竜野 三千生 東京都杉並区宮前4丁目28番21号 東京精 電株式会社内 (72)発明者 北村 文男 長野県茅野市湖東3434番地 北村機電株式 会社内 (72)発明者 阿部 正広 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 3C058 AA03 AA09 AC04 BA02 BB02 CB03 CB05 DA12 3C059 AA02 AB08 GA02 GB01 GC01

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性が付与された円盤状の切断砥石に
    より鉄芯を切断するとともに、この切断時又は/及び切
    断完了後の切断砥石空転時に、鉄芯被切断箇所に電解液
    を供給しつつ、切断砥石と鉄芯間で通電を行うことで鉄
    芯切断面を電解研磨することを特徴とする鉄芯の切断方
    法。
  2. 【請求項2】 砥石全体に導電性が付与された切断砥石
    を用いることを特徴とする請求項1に記載の鉄芯の切断
    方法。
  3. 【請求項3】 径方向における中心側領域にのみ導電性
    が付与された切断砥石を用い、鉄芯の切断完了後、切断
    砥石の前記中心側領域を鉄芯切断面と対面させた状態で
    切断砥石を空転させつつ通電を行い、鉄芯切断面を電解
    研磨することを特徴とする請求項1に記載の鉄芯の切断
    方法。
  4. 【請求項4】 導電性が付与された円盤状の切断砥石
    と、該切断砥石と被加工鉄芯間で通電を行うための通電
    手段と、前記鉄芯の被切断箇所に電解液を供給するため
    の電解液供給手段とを有することを特徴とする鉄芯の切
    断装置。
  5. 【請求項5】 切断砥石が、砥石全体に導電性が付与さ
    れた切断砥石であることを特徴とする請求項4に記載の
    鉄芯の切断装置。
  6. 【請求項6】 切断砥石が、径方向における中心側領域
    にのみ導電性が付与された切断砥石であることを特徴と
    する請求項4に記載の鉄芯の切断装置。
  7. 【請求項7】 砥石全体に、又は径方向における中心側
    領域にのみ、導電性が付与された構造を有することを特
    徴とする切断砥石。
  8. 【請求項8】 帯材積層断面形状が円形、楕円形、六角
    形以上の多角形、両端が円弧又は楕円弧で且つ該両円弧
    又は楕円弧間が略直線である形状、四角形以上の多角形
    の角部を円弧又は楕円弧状にした形状のうちのいずれか
    になるように、帯材を円形又は楕円形リング状に巻いて
    巻鉄芯を成形し、この巻鉄芯の周方向における1箇所以
    上を、エアギャップ形成のために請求項1、2又は3に
    記載の切断方法で切断することを特徴とする巻鉄芯の製
    造方法。
  9. 【請求項9】 成形された巻鉄芯の帯材積層断面形状
    が、円形、楕円形、六角形以上の多角形(但し、当該多
    角形の外形線のうちの大部分が帯材積層断面内の巻取中
    心線と非平行な多角形)、両端が円弧又は楕円弧で且つ
    該両円弧又は楕円弧間が略直線である形状(但し、当該
    形状の外形線のうちの大部分が帯材積層断面内の巻取中
    心線と非平行な形状)、四角形以上の多角形(但し、当
    該多角形の外形線のうちの大部分が帯材積層断面内の巻
    取中心線と非平行な多角形)の角部を円弧又は楕円弧状
    にした形状のうちのいずれかであることを特徴とする請
    求項8に記載の巻鉄芯の製造方法。
  10. 【請求項10】 成形された巻鉄芯の帯材積層断面形状
    が、円形、楕円形、六角形以上の多角形(但し、当該多
    角形の外形線が帯材積層断面内の巻取中心線と非平行な
    多角形)、両端が円弧又は楕円弧で且つ該両円弧又は楕
    円弧間が略直線である形状(但し、当該形状の外形線が
    帯材積層断面内の巻取中心線と非平行な形状)、四角形
    以上の多角形(但し、当該多角形の外形線が帯材積層断
    面内の巻取中心線と非平行な多角形)の角部を円弧又は
    楕円弧状にした形状のうちのいずれかであることを特徴
    とする請求項8に記載の巻鉄芯の製造方法。
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