JP2002213559A - 動力伝達部品およびその製造方法 - Google Patents

動力伝達部品およびその製造方法

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JP2002213559A
JP2002213559A JP2001012880A JP2001012880A JP2002213559A JP 2002213559 A JP2002213559 A JP 2002213559A JP 2001012880 A JP2001012880 A JP 2001012880A JP 2001012880 A JP2001012880 A JP 2001012880A JP 2002213559 A JP2002213559 A JP 2002213559A
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power transmission
compressive stress
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cutting
rolling
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JP2001012880A
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Hirokazu Nakajima
碩一 中島
Kikuo Maeda
喜久男 前田
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NTN Corp
Original Assignee
NTN Corp
NTN Toyo Bearing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ショットピーニングよりも安価な方法により
大きな圧縮応力を表層に与えることができ、それにより
長い耐久寿命を確保できる摩擦駆動、動力伝達装置の動
力伝達部品およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 本発明の動力伝達部品は、高面圧ですべ
りを伴いながら転動する動力伝達部品において、転動面
が焼入れ鋼切削加工した後に超仕上げ加工をした構成を
有することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、動力伝達部品およ
びその製造方法に関し、特にトラクションドライブやI
VT(Infinitely Variable Transmission)、CVT
(Continuously Variable Transmission)装置の入出力
部材や転動体などのように、用途上、すべりを伴いなが
ら動力を伝達する部品およびそれらから構成された駆動
装置およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】トラクションドライブやIVT、CVT
のように転がりあるいは転がりすべりにより動力を伝達
する装置が高能率化のために採用される機運にある。こ
れらの摩擦駆動、動力伝達装置の動力伝達部である、入
出力部材や転動体などの動力伝達部品には、その機構
上、表面に接線力やすべりが作用する。このような用途
では、表面に疲労亀裂が発生しやすく、したがって耐表
面亀裂強度を向上させる必要がある。既にこれらの部品
に浸炭鋼を用い、これにショットピーニングを施して表
層に大きな圧縮応力を形成して上記強度を向上させる技
術が公開されている(特開平7−286649号公
報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記公報に開
示されたショットピーニングにより強度向上を図る方法
では、ショットピーニングによる表面の荒れが生じる。
CVTなどでは、すべりが大きいため、油膜が切れやす
く、面粗さが小さくないと表面損傷や焼付きが生じる。
このため、後加工として研磨を行なわないと、超仕上げ
だけでは必要な面粗さや形状精度面での必要な機能が満
足できない。折角、表層に大きな圧縮応力を与えても、
研磨によりその圧縮応力を与えた表層が除去されるた
め、耐表面亀裂強度を向上させる手法として効率が悪い
という問題があった。また、当然ながら、ショットピー
ニングと研磨との組合せはコストアップの要因にもなっ
ていた。
【0004】このようにショットピーニングによる圧縮
応力の付与は工程の増大と後研磨の必要によるコストア
ップを招く。
【0005】そこで、本発明の目的は、ショットピーニ
ングに代わる安価な方法によって表層に大きな圧縮応力
を与えることにより、長い耐久寿命を確保できる摩擦駆
動、動力伝達装置の動力伝達部品およびその製造方法を
提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の動力伝達部品
は、高面圧ですべりを伴いながら転動する動力伝達部品
において、転動面が焼入れ鋼切削加工した後に超仕上げ
加工した構成を有することを特徴とするものである。
【0007】本発明の動力伝達部品によれば、焼入れ鋼
を切削加工することにより、この加工条件を制御するこ
とで表層部に加工硬化による硬度上昇と大きな圧縮応力
を付加することができる。また、後研削を行なわずに超
仕上げ加工だけで製品にする工程をとることで、形成さ
れた大きな残留圧縮応力を除去せずに有効に利用し、か
つ構成部品に必要な表面粗さレベルを確保することがで
きる。
【0008】また、後研削を行なわずに超仕上げ加工だ
けで製品にすることができるため、製造工程を簡略化す
ることができ、製造コストを低減することが可能とな
る。また切削加工により圧縮応力を付加できるため、高
面圧ですべりが作用する部分において接線力による表面
亀裂を起点とする剥離を防止することができ、長い耐久
寿命を確保することができる。
【0009】ここで焼入れ鋼切削加工とは、本願におい
てはセラミック、サーメットなどの専用チップを用い
て、焼入れ後の高硬度鋼を旋削で仕上げる加工のことを
意味する。この技術は大型軸受の軌道面などには既に適
用されているが、意識的に圧縮応力を作るような条件で
の旋削ではない。
【0010】圧縮応力を作るために旋削条件を厳しくす
ると、発熱が生じ、表面層が高温で焼戻されて逆に圧縮
応力が小さくなったり、表層硬度が低下する場合が多
い。このため、熱の発生を抑えながら大きな圧縮応力を
与えるような焼入れ鋼切削の技術はこれまでなかった。
【0011】本願発明者らは、種々の試行を繰返すこと
により、所定の条件で焼入れ鋼を切削すると鋼種によら
ず大きな圧縮応力が表面下一定の深さまで生成されるこ
とを見出して本発明に至った。
【0012】上記の動力伝達部品において好ましくは、
焼入れ鋼切削加工した後に超仕上げ加工したことによ
り、転動面は、表面から0.1mmまでの深さに−50
0MPa以上の圧縮応力を有し、かつHV730以上の
表層硬度を有し、かつ0.5μm以下の表面粗さRtを
有する。
【0013】上記のように焼入れ鋼切削加工した後に超
仕上げ加工をすることにより、表層に−500MPa以
上の圧縮応力を与えることができるとともに表層硬度を
HV730以上にすることができ、さらに表面粗さRt
を0.5μm以下にすることができる。
【0014】本願においては、マイナス符号の残留応力
を「残留圧縮応力」としている。このため、その絶対値
が大きくなるほど残留圧縮応力が大きくなり、絶対値が
小さくなるほど残留圧縮応力が小さくなることになる。
よって、−500MPa以上の圧縮応力とは、絶対値が
500MPa以上の圧縮応力を意味している。
【0015】本発明の動力伝達部品の製造方法は、高面
圧ですべりを伴いながら転動する動力伝達部品の製造方
法において、焼入れ鋼切削加工した後に超仕上げ加工す
る工程を有し、切削加工はすくい面が切削方向に対して
直角よりも切削方向側に傾斜した状態で行なわれること
を特徴とするものである。
【0016】本発明の動力伝達部品の製造方法によれ
ば、すくい面を切削方向側に傾斜させることで、つまり
すくい角をネガにすることで、切れを少し悪くして切削
抵抗を与えることにより、大きな圧縮応力が付加され
る。
【0017】また、この加工条件を制御することで加工
硬化により表層部の硬度を高くすることができる。ま
た、後研削を行なわずに超仕上げ加工だけで製品にする
工程をとることで、形成された大きな残留圧縮応力を除
去せずに有効に利用し、かつ構成部品に必要な表面粗さ
レベルを確保することができる。また、後研削を行なわ
ずに超仕上げ加工だけで製品にすることができるため、
製造工程を簡略化することができ、製造コストを低減す
ることが可能となる。
【0018】上記の動力伝達部品の製造方法において好
ましくは、素材に浸炭鋼を用い、浸炭あるいは浸炭窒化
により素材の表層に−250MPa以上の圧縮応力を与
えた後、転動面を焼入れ鋼切削加工した後に超仕上げ加
工することにより、転動面は、表面から0.1mmまで
の深さに−500MPa以上の圧縮応力を有し、かつH
V730以上の表層硬度を有し、かつ0.5μm以下の
表面粗さRtを有することを特徴とする。
【0019】上記の動力伝達部品の製造方法において好
ましくは、素材にずぶ焼入れ用鋼を用い、高周波焼入れ
により素材の表層に−250MPa以上の圧縮応力を与
えた後、転動面を焼入れ鋼切削加工した後に超仕上げ加
工することにより、転動面は、表面から0.1mmまで
の深さに−500MPa以上の圧縮応力を有し、かつH
V730以上の表層硬度を有し、かつ0.5μm以下の
表面粗さRtを有することを特徴とする。
【0020】このように浸炭あるいは浸炭窒化、または
高周波焼入れにより、表層に予め−250MPa以上の
圧縮応力を与えることにより、切削加工後の圧縮応力を
さらに大きくすることができる。
【0021】なお、すくい面は、切削方向に対して直角
よりも切削方向側へ0°より大きく10°以下の角度範
囲で傾斜していることが好ましい。
【0022】すくい角としてネガ角が大きすぎると抵抗
が大きくなり表面発熱が伴うため、硬度が低下したり、
逆に表面応力が小さくなる。よって、すくい角(ネガ
角)は10°以下であることが好ましい。またすくい角
がネガ角でないと、残留圧縮応力ができ難いため、すく
い角(ネガ角)は0°よりも大きい。
【0023】また切削加工における周速は100m/m
in以下であることが好ましい。周速が大きすぎると発
熱も大きくなるため、収束の上限は100m/minで
ある。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図に基づいて説明する。
【0025】図1は、本発明の一実施の形態における動
力伝達部品の製造方法を示す図である。図1を参照し
て、まず焼入れが施された後(ステップS1)、切削加
工が施される(ステップS2)。
【0026】この切削加工では、図2に示すようにすく
い面が切削方向に対して直角よりも切削方向側に傾斜し
た状態、つまりすくい角がネガの状態で行なわれる。こ
のすくい角はネガ角で0°より大きく10°以下である
ことが好ましい。
【0027】この後、超仕上げ加工が施されて(ステッ
プS3)、動力伝達部品が製造される。
【0028】図2に示すようなすくい角で切削加工が行
なわれるため、この切削加工時には少し切れが悪くなっ
て切削抵抗が生じる。これにより、動力伝達部品の表層
部に加工硬化によりHV730以上の表層硬度が与えら
れ、かつ表面から0.1mmまでの深さに−500MP
a以上の圧縮応力が与えられる。この後、表面の研削は
行なわずに超仕上げ加工だけで製品とされるため、表層
に与えられた大きな残留圧縮応力は除去されずに残存
し、かつ構成部品に必要な0.5μm以下の表面粗さR
tを得ることができる。
【0029】なお、焼入れ工程(ステップS1)は、素
材に浸炭鋼を用いてその素材に浸炭あるいは浸炭窒化を
施すことにより表層に−250MPa以上の圧縮応力を
与えるよう行なわれることが好ましい。また焼入れ工程
(ステップS1)は、素材にずぶ焼入れ用鋼を用いてそ
の素材に高周波焼入れを施すことにより表層に−250
MPa以上の圧縮応力を与えるよう行なわれることが好
ましい。これらにより、最終製品における表層部の残留
圧縮応力をさらに大きくすることが可能となる。
【0030】このような優れた性能を有する本実施の形
態の合金を、遊星コーン型動力伝達装置、コーン型CV
T装置、またはトロイダル型CVT装置に適用した場合
について以下に説明する。
【0031】(a) 遊星コーン型動力伝達装置 図3は、遊星コーン型動力伝達装置の構成を概略的に示
す一部断面斜視図である。図3を参照して、入力軸1に
嵌合された太陽コーン6は、これに圧接している数個の
遊星コーン3を伝動回転(自転)させる。遊星コーン3
は、他方の円錐面を固定されたリング5の内周面にそれ
ぞれ圧接し、リング5の内周面を自転しながら公転運動
する。この公転速度が遊星コーンホルダ4により自動調
圧機構7を経て出力軸2に伝えられる。
【0032】この際、たとえばハンドル操作によりリン
グ5が遊星コーン3の円錐面に沿って移動する。これに
より、遊星コーン3のリング5に対する接触有効径が変
化し、それだけ遊星コーン3の公転速度が変化して、出
力軸2の回転速度が入力軸1の回転速度に対して無段階
に変化する。
【0033】このような遊星コーン型動力伝達装置にお
いて、たとえば遊星コーン3やリング5や太陽コーン6
などの部品は、上記の方法(図1、図2)で製造され
る。これにより、各動力伝達部品の転動面は、HV73
0以上の表層硬度と、表面から0.1mmまでの深さに
−500MPa以上の圧縮応力と、0.5μm以下の表
面粗さRtとを有している。
【0034】(b) コーン型CVT装置 図4は、コーン型CVT装置の構成を概略的に示す断面
図である。図4を参照して、入力軸11に固定されたリ
ング15は、その内周面にてダブルコーン13に圧接さ
れる。ダブルコーン13はキャリア14に支持され、リ
ング15の内周面を自転しながら公転運動することでド
ライブコーン16を伝動回転させる。このドライブコー
ン16の回転により回転駆動力が出力軸12に伝えられ
る。
【0035】このコーン型CVT装置においては、キャ
リア14が移動することにより、ダブルコーン13のリ
ング15に対する接触有効径が変化し、それだけダブル
コーン13の公転速度が変化する。これにより、出力軸
12の回転速度が入力軸11の回転速度に対して無段階
に変化する。
【0036】このようなコーン型CVT装置において、
たとえばダブルコーン13やリング15やドライブコー
ン16などの部品は、上記の方法(図1、図2)で製造
される。これにより、各動力伝達部品の転動面は、HV
730以上の表層硬度と、表面から0.1mmまでの深
さに−500MPa以上の圧縮応力と、0.5μm以下
の表面粗さRtとを有している。
【0037】(c) ハーフトロイダル型CVT装置 図5は、ハーフトロイダル型CVT装置の構成を概略的
に示す断面図である。図5を参照して、このCVT装置
では、入力軸21のトルクはローリングカムおよびカム
ローラを経て入力ディスク22に伝えられる。入力ディ
スク22に伝えられたトルクは、さらにパワーローラ2
3を介して出力ディスク24へと伝達される。出力ディ
スク24は入力軸21にはつながっていないため入力軸
21を軸にした空回りをする。これにより出力ディスク
24に固定された歯車25が回転し、この歯車25の歯
車部25aを介して他の歯車部にトルクが伝達され、た
とえば出力軸に出力される。
【0038】このハーフトロイダル型CVT装置におい
ては、パワーローラ23の傾きによって駆動力伝達時の
変速比が決定する。すなわち、変速比は、(出力ディス
ク24とパワーローラ23との接触部における出力ディ
スク24の回転半径)÷(入力ディスク22とパワーロ
ーラ23との接触部における入力ディスク22の回転半
径)により決まる。このようにパワーローラ23の傾き
を連続的に変化させることにより、無段階の変速比を得
ることができる。
【0039】このようなハーフトロイダル型CVT装置
において、たとえば入力ディスク22やパワーローラ2
3や出力ディスク24などの部品は、上記の方法(図
1、図2)で製造される。これにより、各動力伝達部品
の転動面は、HV730以上の表層硬度と、表面から
0.1mmまでの深さに−500MPa以上の圧縮応力
と、0.5μm以下の表面粗さRtとを有している。
【0040】(d) フルトロイダル型CVT装置 図6は、フルトロイダル型CVT装置の構成を概略的に
示す断面図である。図6を参照して、このCVT装置で
は、入力軸のトルクは入力ディスク31に伝えられる。
この入力ディスク31に伝えられたトルクは、さらにロ
ーラ33を介して出力ディスク32へと伝達される。出
力ディスク32は入力軸には繋がっていないため、入力
軸を軸にした空回りをする。これにより出力ディスク3
2に固定された歯車(図示せず)が回転し、この歯車の
歯車部を介して他の歯車部にトルクが伝達され、出力さ
れる。
【0041】このフルトロイダル型CVT装置において
は、ローラ33の傾きによって駆動力伝達時の変速比が
決定する。すなわち、変速比は、(出力ディスク32と
ローラ33との接触部における出力ディスク32の回転
半径)÷(入力ディスク31とローラ33との接触部に
おける入力ディスク31の回転半径)により決まる。こ
のようにローラ33の傾きを連続的に変化させることに
より、すべりを伴なった転動が行なわれ、無段階の変速
比を得ることができる。
【0042】このようなフルトロイダル型CVT装置に
おいて、たとえば入力ディスク31や出力ディスク32
やローラ33などの部品は、上記の方法(図1、図2)
で製造される。これにより、各動力伝達部品の転動面
は、HV730以上の表層硬度と、表面から0.1mm
までの深さに−500MPa以上の圧縮応力と、0.5
μm以下の表面粗さRtとを有している。
【0043】なお、本発明の動力伝達部品は、上記した
図3〜図6の構成のものに限られず、たとえばIVT装
置なども含むような広くすべりを伴いながら転動する動
力伝達部品である。
【0044】
【実施例】以下、本発明の実施例(開発材)および比較
例(比較材)について説明する。
【0045】(実施例)表2に示すずぶ焼入れ鋼と浸炭
鋼とを素材として、転がりすべり条件での転動寿命とピ
ーリング、スミアリング(焼付)強度評価用試験片を製
作した。種々の焼入れ焼戻し処理を施した後、表1の条
件で焼入れ鋼切削を行なったものを製作した。一部、浸
炭窒化を行なった試験片も製作した。これらの各試験片
の材質を表3に開発材として示す。
【0046】なお、ずぶ焼入れ鋼としてはSUJ2を代
表として用い、通常の熱処理(焼入れ焼戻し)の他、表
層部だけを高周波加熱焼入れし、表層に圧縮応力を形成
したものも作製した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】(比較例)表2に示すずぶ焼入れ鋼と浸炭
鋼とを素材として、実施例と同じ転がりすべり条件での
転動寿命とピーリング、スミアリング(焼付)強度評価
用試験片を製作した。これらの各試験片の材質を表3に
比較材として合わせて示す。
【0051】実施例(開発材)と同一の種々の焼入れ焼
戻し処理を施した後、通常の研磨を行なったもの、およ
びショットピーニングと研磨を行なったものを製作し
た。ショットピーニング後、研磨をなくし超仕上げ加工
のみで仕上げた試験片も作製したが、研磨なしでは表面
粗さが非常に粗く、他の試験片のレベルに仕上げること
はできなかった(比較材8〜10)。
【0052】上記実施例および比較例の試験片サンプル
については、転動寿命試験、ピーリング試験、スミアリ
ング試験を実施した。各試験の概要と結果は以下のとお
りである。
【0053】(1) 転がりすべり転動疲労試験 転がりすべり試験は、円筒部に緩やかな曲率を有するリ
ング状の試験片を駆動軸と、この駆動軸に平行な従動軸
とに取付け、両試験片の円筒面を互い押し当てて転動さ
せるものである。試験片の寸法は、片方(駆動側)が直
径60.5mm、幅15mm、円筒部の副曲率半径25
mmであり、もう片方(従動側)が直径59.5mm、
幅15mm、円筒部の副曲率半径25mmであり、駆動
軸側試験片の円筒面、従動軸側試験片の円筒面ともに鏡
面仕上げが施されている。転動強度は、両試験片を同じ
回転速度で転動することで、一定のすべり率を与えた場
合の表面剥離発生までの試験時間で評価される。以下の
試験条件で試験を行なった。
【0054】なお、駆動軸側および従動軸側の試験片
は、同種のサンプルのものをペアとして用いた。
【0055】・試験片の最大表面粗さ:駆動軸側、従動
軸側ともに表3の粗さ ・接触面圧Pmax:4.6GPa ・潤滑油:トラクション油 ・駆動軸回転速度:3000rpm ・従動軸回転速度:2806rpm ・すべり率:5% ・油温:約60℃ ・寿命:片方(主に従動側)試験片に表面剥離が発生す
る試験時間 この試験結果を表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】表4の結果より、実施例(開発材)の焼入
れ鋼切削試験片は、同一材質の場合、研磨試験片に比べ
て2倍以上長い寿命の時間を示しており、ショットピー
ニング品に近い性能が得られている。表3の焼入れ鋼切
削品の材質と関連付けると、表層部の圧縮応力が大き
く、硬度も高いほど長寿命になる傾向がある。
【0058】なお、ショットピーニング後、研磨せずに
超仕上げを行なった試験片No.8〜10は面粗さが悪
いために振動が大きく(機能を満足せず)、試験できな
かった。
【0059】(2) ピーリング試験 ピーリング試験は、円筒部に緩やかな曲率を有するリン
グ状の試験片を駆動軸と、この駆動軸に平行な従動軸と
に取付け、両試験片の円筒面を互いに押し当てて転動さ
せるものである。各試験片の寸法は、直径40mm、高
さ12mm、円筒部の副曲率半径60mmであり、駆動
軸側試験片の円筒面はRt3μmの粗さに研削仕上げ、
従動軸側試験片の円筒面は鏡面仕上げされる。ピーリン
グ強度は、試験終了時の従動軸側試験片円筒面のピーリ
ング発生面積率で評価される。以下の試験条件でピーリ
ング試験を行なった。
【0060】なお、駆動軸側および従動軸側の両試験片
は、同種のサンプルのものをペアとして用いた。
【0061】・試験片の最大表面粗さ:3.0μm(駆
動軸側)、表3の粗さ(従動軸側) ・接触面圧Pmax:4.6GPa ・潤滑油:タービン油VG46 ・駆動軸回転速度:2000rpm ・総回転数:4.8×105回 試験結果を表4に合わせて示す。
【0062】表4の結果より、同一材質で比較して、実
施例(開発材)は比較例(比較材)に比べていずれもピ
ーリング強度が1.5倍以上(ピーリング発生面積率が
70%以下)であり、ショットピーニング品と同レベル
までピーリング強度が向上している。
【0063】(3) スミアリング試験 スミアリング試験は、ピーリング試験と同じ装置を用い
て、ピーリング試験と同一形状の2つのリング状試験片
を同様に転動させるものである。この試験の場合は、従
動軸は一定速度で回転駆動され、駆動軸は従動軸と等速
回転から徐々に増速される点が異なる。また、従動軸側
試験片の円筒面が駆動軸側試験片と同じ表面粗さに仕上
げられる点も異なる。なお、通常は表面粗さRt3μm
同士で評価するが、今回は超仕上げ同士(表3)の粗さ
の組合せで評価した。スミアリング強度は、試験片の円
筒面にスミアリングが発生した時点の駆動軸と従動軸と
の速度比で評価される。以下の試験条件でスミアリング
試験を行なった。
【0064】なお、この試験においても、摺動されるペ
アの試験片は同種のサンプルのものとした。
【0065】 ・試験片の最大表面粗さ:表3と同一の粗さ ・接触面圧Pmax:2.1GPa ・潤滑油:タービン油VG46 ・駆動軸回転速度:200rpmから100rpmずつ
増速 ・従動軸回転速度:200rpm一定 試験結果を表4に合わせて示す。
【0066】表4の結果より、同一材質でのスミアリン
グ発生寿命は、実施例(開発材)のものが比較例(比較
材)に対して、15〜30%大きな速度比までスミアリ
ングが発生しない。ショットピーニング品はこれよりや
や優れるが、大差はない。
【0067】以上の各試験結果より、実施例のものは、
転がりすべり転動寿命に優れ、ピーリングやスミアリン
グが生じ難いので、表面損傷が生じやすいすべりや接線
力を伴う動力伝達部品に適した性能を有することがわか
る。
【0068】今回開示された実施の形態および実施例は
すべての点で例示であって制限的なものではないと考え
られるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではな
くて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と
均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれるこ
とが意図される。
【0069】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、トラクシ
ョンドライブやCVT装置の入出力部や転動体などのよ
うに、用途上、大きなすべりを伴う動力伝達部品の転動
面を焼入れ鋼切削することで、表層に大きな圧縮応力を
与えるとともに加工硬化により大きな硬度を与えること
によって、表面損傷(表面亀裂、ピーリング、スミアリ
ング)の発生を抑えて、高接線力、高すべり条件下で使
用される上記動力伝達部品の耐久寿命を延長させるとと
もにその信頼性を向上させることができる。また、ショ
ットピーニングのように表面を大きく荒らすことがない
ため、後工程としての研磨が省略でき、切削加工によっ
て与えられた表層を有効に利用できるとともにコストダ
ウンを図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態における動力伝達部品
の製造方法を示す図である。
【図2】 本発明の一実施の形態における動力伝達部品
の製造方法における切削工程を説明するための図であ
る。
【図3】 遊星コーン型の動力伝達装置の一部断面斜視
図である。
【図4】 コーン型CVT装置の構成を概略的に示す断
面図である。
【図5】 ハーフトロイダル型CVT装置の構成を概略
的に示す断面図である。
【図6】 フルトロイダル型CVT装置の構成を概略的
に示す断面図である。
【符号の説明】
3 遊星コーン、5,15 リング、6 太陽コーン、
13 ダブルコーン、16 ドライブコーン、22 入
力ディスク、23 パワーローラ、24 出力ディス
ク。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C21D 6/00 C21D 6/00 K C23C 8/22 C23C 8/22 8/32 8/32 F16H 15/52 F16H 15/52 A

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高面圧ですべりを伴いながら転動する動
    力伝達部品において、転動面が焼入れ鋼切削加工した後
    に超仕上げ加工した構成を有することを特徴とする、動
    力伝達部品。
  2. 【請求項2】 焼入れ鋼切削加工した後に超仕上げ加工
    したことにより、前記転動面は、表面から0.1mmま
    での深さに−500MPa以上の圧縮応力を有し、かつ
    HV730以上の表層硬度を有し、かつ0.5μm以下
    の表面粗さRtを有することを特徴とする、請求項1に
    記載の動力伝達部品。
  3. 【請求項3】 高面圧ですべりを伴いながら転動する動
    力伝達部品の製造方法において、焼入れ鋼切削加工した
    後に超仕上げ加工する工程を有し、前記切削加工はすく
    い面が切削方向に対して直角よりも切削方向側に傾斜し
    た状態で行なわれることを特徴とする、動力伝達部品の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 素材に浸炭鋼を用い、浸炭あるいは浸炭
    窒化により前記素材の表層に−250MPa以上の圧縮
    応力を与えた後、前記転動面を前記焼入れ鋼切削加工し
    た後に前記超仕上げ加工することにより、前記転動面
    は、表面から0.1mmまでの深さに−500MPa以
    上の圧縮応力を有し、かつHV730以上の表層硬度を
    有し、かつ0.5μm以下の表面粗さRtを有すること
    を特徴とする、請求項3に記載の動力伝達部品の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 素材にずぶ焼入れ用鋼を用い、高周波焼
    入れにより前記素材の表層に−250MPa以上の圧縮
    応力を与えた後、前記転動面を前記焼入れ鋼切削加工し
    た後に前記超仕上げ加工することにより、前記転動面
    は、表面から0.1mmまでの深さに−500MPa以
    上の圧縮応力を有し、かつHV730以上の表層硬度を
    有し、かつ0.5μm以下の表面粗さRtを有すること
    を特徴とする、請求項3に記載の動力伝達部品の製造方
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN111677834A (zh) * 2020-06-03 2020-09-18 韩石全 一种液力偶合器镜面转子及其加工处理方法

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