JP2002213297A - 往復動型ウエットライナ水冷式内燃機関のシリンダブロック - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 往復動型ウエットライナ水冷式内燃機関のシ
リンダブロックにおいて、シリンダライナが倒れないよ
うにして、ピストンの摺動による機械的摩擦を低減す
る。 【解決手段】 前記シリンダライナのクランクシャフト
側の端部にシリンダヘッド方向に向って雌ネジを形成
し、クランクシャフトホルダまたはクランクケースとの
合せ面側から前記シリンダライナの雌ネジに向って前記
シリンダブロック本体にボルト挿通孔を形成し，該ボル
ト挿通孔を貫通して前記雌ネジにボルトを螺合し締結す
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本願発明は、シリンダライナ
がシリンダヘッド側からシリンダブロック本体に嵌脱自
在に嵌装され、該シリンダライナの外周面と前記シリン
ダブロック本体の内周面との間に冷却水通路が構成され
たウエットライナ水冷式内燃機関のシリンダッブロック
に関するものである。本明細書では、シリンダブロック
はシリンダブロック本体とシリンダライナとを包含した
ものとしている。

【０００２】

【従来の技術】シリンダライナの外周面が直接冷却水に
触れるウエットライナ型水冷式内燃機関においては，特
開平５−３９７４７号公報に記載のように、シリンダラ
イナの上端面をシリンダブロックの上端面よりも僅かに
上方へ突出させ、シリンダヘッドとシリンダブロックと
を結合するボルトの締め付け力を強化することにより、
シリンダヘッドとシリンダブロックとに介装されるガス
ケットの下面に、シリンダライナの上端面を強く圧接さ
せて、ガスケット下面とシリンダライナの上端面とに働
く摩擦力を増強し、シリンダライナの倒れを阻止しょう
としていた。

【０００３】

【解決しようとする課題】ところで、シリンダライナの
倒れを確実に阻止しようとして、シリンダヘッドとシリ
ンダブロックとを結合するボルトの締付け力を強化する
と、シリンダライナに大きな圧縮応力が生じて，該シリ
ンダライナが変形を起し、ピストン摺動による機械的摩
擦に悪影響を及ぼす可能性があった。

【０００４】

【課題を解決するための手段および効果】本願発明は、
このような難点を克服した往復動型ウエットライナ水冷
式内燃機関のシリンダブロックの改良に係り、請求項１
記載の発明は、シリンダライナがシリンダヘッド側から
シリンダブロック本体に嵌脱自在に嵌装され、該シリン
ダライナの外周面と前記シリンダブロック本体の内周面
との間に冷却水通路が構成され、前記シリンダブロック
本体とクランクシャフトホルダまたはクランクケースと
にクランクシャフトが挾持されて回転自在に軸支される
往復動型ウエットライナ水冷式内燃機関のシリンダブロ
ックにおいて、前記シリンダライナのクランクシャフト
側の端部に雌ネジが形成され、前記クランクシャフトホ
ルダとの合せ面側から前記シリンダライナの雌ネジに向
って前記シリンダブロック本体にボルト挿通孔が形成さ
れ，該ボルト挿通孔を貫通して前記雌ネジにボルトが締
結され、前記シリンダライナは、クランクシャフトの回
転軸の中心線方向に複数個配置されて，前記雌ネジおよ
びボルト挿通孔は少なくとも相隣るシリンダ孔の間に配
置されたことを特徴とするものである。

【０００５】請求項１に記載の発明では、前記クランク
ケースまたはクランクシャフトホルダとの合せ面側から
シリンダライナに向って、シリンダブロック本体に形成
されたボルト挿通孔を貫通するボルトが、前記シリンダ
ライナの雌ネジに螺合締結されるため、このボルトの締
付け力によって、前記シリンダブロック本体に対し前記
シリンダライナは確実強固に保持されて、該シリンダラ
イナの倒れが阻止される。締結ボルトがピストン側圧荷
重を分担するので、その分だけシリンダヘッドを前記シ
リンダブロック本体に結合するシリンダヘッド結合ボル
トの締め付け力を減少させることができ、シリンダ軸方
向の過大な荷重によるシリンダライナの変形が抑えら
れ、ピストン摺動による機械的摩擦の増大が回避でき
る。

【０００６】また、隣接するシリンダライナが互いに一
体的に連結構成される場合は、隣接するシリンダライナ
間の肉厚部に雌ネジを形成することができ、雌ネジ形成
のためにシリンダライナを特に肉厚にする必要がなく、
しかも、シリンダ列の幅方向寸法を増大することがな
く、シリンダブロックひいては内燃機関の小型化を推進
することができる。横からのボルト締結を含むが、この
場合メンテナンス性が良い。

【０００７】さらに、シリンダライナが、一体的に連結
されていない場合、すなわち、複数の単独ライナーの場
合も、シリンダ孔間に、下から、または横から通したボ
ルトが、ライナー下端部で締結される。作用・効果は前
記と同様、機械的摩擦の低減、コンパクト化、メンテナ
ンス性向上である。

【０００８】さらに、請求項２に記載のように発明を構
成することにより、シリンダライナの中心線に平行にボ
ルトを配置することができるので、横方向から斜めにボ
ルトを設ける場合に比して、シリンダライナの偏りを生
じることなく、安定した取り付けができる。また、ボル
ト挿通孔を短くでき、加工性が向上する上、シリンダラ
イナの大型化を抑制できる。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下、図１ないし図３に基づいて
本発明の第１実施形態について説明する。図１に示す４
ストロークサイクル直列４気筒往復動型水冷式内燃機関
１のシリンダブロック２では、アルミニウム合金製のシ
リンダブロック本体３よりも強度、剛性の高い金属製ま
たは繊維強化金属製のシリンダライナ６が、図２に示す
ように、シリンダブロック本体３のライナ嵌合孔４に嵌
合され、該ライナ嵌合孔４の段部５の頂面とシリンダラ
イナ６の下端とに弾性に富んだシールリング７が介装さ
れている。該シリンダライナ６は、図１に示すように、
クランクシャフト８の回転軸中心線８ａの方向に沿って
一直線状に並んだ状態で，相互に一体的に結合されてい
る。該シリンダブロック本体３の内周面とシリンダライ
ナ６の外周面との間には、図２および図３に示すよう
に、冷却水通路であるウオータジャケット９が構成され
ている。

【００１０】また、図３に示すように、シリンダブロッ
ク２の頂面にガスケット10を介してシリンダヘッド11が
重ねられ、隣り合うシリンダ孔の中間部において、該シ
リンダヘッド11を上方から下方へ貫通してシリンダブロ
ック本体３に設けられたボルト孔12（図１、図３）に螺
合緊締されるシリンダヘッド取り付けボルト13によっ
て、シリンダブロック本体３とシリンダヘッド11とが結
合されるようになっている。

【００１１】さらに、クランクシャフト８の回転軸は、
図３に示すように、シリンダブロック本体３の下部中央
の軸受部14とクランクシャフトホルダ15とに、軸受27を
介して、回転自在に枢支され、該クランクシャフトホル
ダ15は、該クランクシャフトホルダ15を下方から上方へ
貫通してシリンダブロック本体３に設けられたボルト孔
16（図１、図３）に螺合緊締されるホルダボルト17によ
って、軸受部14に一体に結合されている。

【００１２】さらにまた、図３に示すように、シリンダ
ブロック本体３の軸受部14の幅方向中央にクランクシャ
フト８の回転方向に沿った給油溝18が形成され，該給油
溝18からシリンダブロック本体３の給油通路19に向って
給油孔20が形成されている。

【００１３】さらに、図３に示すように、クランクシャ
フト回転軸の中心線８ａとシリンダライナ６の中心線を
含む面Ｘ−Ｘに関して給油孔20の開口部20ａとは反対の
側において、給油溝18から，隣り合うシリンダライナ６
の相互結合部６ａに向い垂直方向にボルト孔21（図１、
図３）が形成され、該ボルト孔21とシリンダライナ相互
結合部６ａの雌ネジ孔22とにスリーブ23が嵌装されると
ともに、該ボルト孔21およびスリーブ23を貫通して雌ネ
ジ孔22にライナ結合ボルト24が締結されている。雌ネジ
孔22の上端は下死点におけるピストン25のトップリング
31の位置より下方に設けられる。また、ボルト孔21や雌
ネジ孔22、スリーブ23、ライナ結合ボルト24等はシール
リングの外側に配置される。

【００１４】このように、シリンダライナ６がシリンダ
ブロック本体３に装着された状態において、シリンダブ
ロック本体３の頂面とシリンダライナ６の頂面とにフラ
イス加工が施され、これら両頂面とが面一な平面に仕上
げられる。

【００１５】しかも、シリンダライナ６にはそれぞれピ
ストン25が上下に摺動自在に嵌装され、該ピストン25と
クランクシャフト８とはコネクティングロッド26を介し
て連結されており、燃焼ガス圧力で下降するピストン25
からの動力を受けてクランクシャフト8は回転駆動され
るようになっている。

【００１６】図１ないし図３に図示の実施形態では、前
述したようにスリーブ23によって、シリンダライナ相互
結合部６ａの下端は、シリンダブロック本体３に対し前
後左右方向へずれないように固定され、また、ボルト孔
21およびスリーブ23を貫通して雌ネジ孔22に螺合緊締さ
れるライナ結合ボルト24によって、シリンダライナ６の
下端面は、シリンダブロック本体３におけるライナ嵌合
孔４の段部５の頂面に強く押し付けられ、しかも、シリ
ンダヘッド11を貫通してシリンダブロック本体３のボル
ト孔12に螺合緊締されるシリンダヘッド取り付けボルト
13によってシリンダライナ６の頂面は、ガスケット10の
図示されない山状ビードの両裾部に押し付けられるた
め、シリンダライナ６はシリンダブロック本体３に安定
して強固に取り付けられる。

【００１７】また、シリンダヘッド取り付けボルト13
は、シリンダヘッド11をシリンダブロック本体３に安定
して取り付け、しかもガスケット10のビードによるウオ
ータジャケット９の水密を確保するに必要な緊締力で足
りるため、シリンダライナ６には中心線方向に沿う過大
な荷重を与えないので、シリンダライナ６の変形が避け
られ、シリンダライナ６の内周面におけるピストン25の
摺動による機械的摩擦が低減する。

【００１８】雌ネジ孔22の上端を下死点におけるピスト
ン25のトップリング31の位置より下方に配設すること
で、ネジ孔部の影響がリングに及ばないので、ブローバ
イガスに影響を与えない。このように、給油溝18からボ
ルト孔21を形成することにより、クランク軸受面積の低
下を抑制することが可能であり、溝幅よりもボルト孔の
径が小さいと一層有利となる。さらに、給油孔20とは反
対側にボルト孔21を形成することにより、クランク軸受
部の剛性低下を未然に防止することができる。なお、シ
ールリング７の外側にボルト孔21、雌ネジ孔22、スリー
ブ23、およびライナ結合ボルト24を配置するので、シー
ルリング７のシール性に対する悪影響はない。

【００１９】上記実施形態では、クランクシャフトのベ
アリング面からシリンダライナに向ってボルト挿通孔を
形成したが、クランクシャフトホルダの合せ面またはそ
の他の個所からシリンダライナに向かって形成してもよ
い。

【００２０】上記実施形態では、クランクシャフトを支
えるものとして、クランクシャフトホルダ15を例示した
が、オートバイ等に用いられているクランクケースにお
いても、上記実施形態と類似の構成が可能である。

【００２１】次に、図４に基づいて本発明の第２実施形
態について述べる。図４は、第１実施形態の図１のIII-
III断面相当位置における断面を示してある。この実施
形態では、クランクシャフト回転軸の中心線８ａとシリ
ンダライナ６の中心線を含む面Ｘ−Ｘに関して、給油孔
20が設けてある側とは反対側の、シリンダブロック本体
３の外部から、隣り合うシリンダライナ６の相互結合部
６ａの下部に向って、横向きにボルト孔28と雌ネジ29が
設けられ、該ボルト孔28を貫通し該雌ネジに螺合するラ
イナ結合ボルト30によってシリンダライナ６がシリンダ
ブロック本体３に締結されている。シリンダライナ相互
結合部６ａ下部の上記雌ネジが設けられる部位には、フ
ランジ６ｂが設けられ、十分な雌ネジ寸法を確保するよ
うになっている。本実施形態の上記以外の部分の構成は
第1実施形態と同じであり、本実施形態は第1実施形態と
同様な効果を奏することができるうえに、メンテナンス
性が良い。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施形態に係る４ストロークサイ
クル直列４気筒往復動型水冷式内燃機関のシリンダブロ
ックの平面図である。

【図２】図１のII-II断面図である。

【図３】図１のIII-III断面図である。

【図４】本発明の第２実施形態に係る４ストロークサイ
クル直列４気筒往復動型水冷式内燃機関のシリンダブロ
ックの断面図であり、図１のIII-III断面相当位置にお
ける断面を示した図である。

【符号の説明】

１…往復動型水冷式内燃機関、２…シリンダブロック、
３…シリンダブロック本体、４…ライナ嵌合孔、５…段
部、６…シリンダライナ、６ａ…隣り合うシリンダライ
ナの相互結合部、６ｂ…フランジ、７…シールリング、
８…クランクシャフト、９…ウオータジャケット、10…
ガスケット、11…シリンダヘッド、12…ボルト孔、13…
シリンダヘッド取り付けボルト、14…軸受部、15…クラ
ンクシャフトホルダ、16…ボルト孔、17…ホルダボル
ト、18…給油溝、19…給油通路、20…給油孔、21…ボル
ト孔、22…雌ネジ孔、23…スリーブ、24…ライナ結合ボ
ルト、25…ピストン、26…コネクティングロッド、27…
クランクシャフト回転軸の軸受、28…ボルト孔、29…雌
ネジ、30…ライナ締結ボルト、31…トップリング。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シリンダライナがシリンダヘッド側から
   シリンダブロック本体に嵌脱自在に嵌装され、該シリン
   ダライナの外周面と前記シリンダブロック本体の内周面
   との間に冷却水通路が構成され、前記シリンダブロック
   本体とクランクシャフトホルダとにクランクシャフトが
   挾持されて回転自在に軸支される往復動型ウエットライ
   ナ水冷式内燃機関のシリンダブロックにおいて、 前記シリンダライナのクランクシャフト側の端部に雌ネ
   ジが形成され、前記クランクシャフトホルダとの合せ面
   側から前記シリンダライナの雌ネジに向って前記シリン
   ダブロック本体にボルト挿通孔が形成され，該ボルト挿
   通孔を貫通して前記雌ネジにボルトが締結され、 前記シリンダライナは、クランクシャフトの回転軸の中
   心線方向に複数個配置されて，前記雌ネジおよびボルト
   挿通孔は少なくとも相隣るシリンダ孔の間に配置された
   ことを特徴とする往復動型ウエットライナ水冷式内燃機
   関のシリンダブロック。
2. 【請求項２】 請求項１に記載のシリンダブロックであ
   って、 前記ボルト挿通孔の基端は、前記クランクシャフトを軸
   支する半円状切欠部に開口したことを特徴とする往復動
   型ウエットライナ水冷式内燃機関のシリンダブロック。