JP2002207027A - 微小流路を有する樹脂製部材の作製方法、その方法により作製された部材およびそれを用いた計測装置 - Google Patents
微小流路を有する樹脂製部材の作製方法、その方法により作製された部材およびそれを用いた計測装置Info
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Abstract
な化学修飾が施された微小流路を有する樹脂製チップを
作製する。 【解決手段】 鋳型15を準備し(A)、クロスリンカ
ーの種類及び濃度を調整した高分子モノマー溶液を鋳型
15に流し込み、形状が変化しない程度に重合し、かつ
完全には重合していない樹脂製部材3を形成し(B)、
鋳型15から取り外す(C)。鋳型17の平坦面17a
上に入出ポート形成用部材19と支持部材21により保
持した光学窓11を配置し(D)、工程(B)で用いた
のと同じ高分子モノマー溶液を鋳型17に流し込み
(E)、樹脂製部材5が完全に重合する前に部材19,
21を取り除き、入出ポート9、光学窓11及び開口1
3を備えた樹脂製部材5を得る(F)。樹脂製部材3と
樹脂製部材5を重ね合わせ、樹脂製部材3を完全に重合
させて樹脂製部材3,5を接合する(G)。
Description
微小流路を有する樹脂製部材(樹脂製チップという)の
作製方法、その方法により製造された樹脂製チップおよ
びそれを用いた計測装置に関するものである。樹脂製の
ものを含む微小流路を有するチップは、各種分析分野や
検査分野において使用されている。特に近年は、微小流
路を有するチップを用いるμ−TAS(Micro Total An
alysis Systems)分野の研究が盛んに行われており、高
速分析、省試料、省溶媒、小型化、オンサイト分析とい
った特長を生かした新市場を分析分野や検査分野におい
て将来形成するものとして期待されている。
微小流路を有するチップの材料としては、主としてガラ
スや石英が用いられてきた(Andreas Manz, D. Jed Har
rison,Elisabeth M. J. Verpoort, James C.Fettinger,
Aran Paulus, Hans Ludi andH. Michael Widmer; Plan
ar Chips Technology for Miniaturization and Integr
ation of Separation Techniques into Monitoring Sys
tems, Journal of Chromatograpy; 1992; 593; 253-258
参照)。ガラスを材料として用いたチップ(以下、ガ
ラスチップという)や、石英を材料として用いたチップ
(以下、石英チップという)は堅牢で、光学的に透明で
あり、微細加工が可能などの特徴を有する。
形成される微小流路は、単なる液体の通路又は微小空間
を形成する目的で用いられていた。この微小流路の表面
を目的に応じて処理することはできる(Stephen C. Jac
obson, Roland Hergenroder,Lance B. Koutny, and J.
Michael Ramsey; Open Channel Electrochromatography
on a Microchip; Analytical Chemistry; 66; 2369-23
73 参照)。しかし、微小流路内壁の定量的で高機能な
化学修飾は困難であるという問題があった。
S用のチップ(以下、樹脂製チップという)の作製方法
も報告されている(Randy M. McCormick, Robert J. Ne
lson, M. Goretty Alonso-Amigo, Dominic J. Benvegn
u, and Herbert H. Hooper; Microchannel Electrophor
etic Separations of DNA in Injection-Molded Plasti
c Substrates, Analytical Chemistry; 1997; 69(14);
2626-2630 参照)。この作製方法は、射出成型により微
小流路に対応する凸型形状を備えた鋳型に溶融状態の高
分子レジンを流し込み、微小流路に対応する溝を有する
部材(一方の樹脂製部材)を成型し、溝を形成した表面
に別途成型した高分子からなる部材(他方の樹脂製部
材)を接合することにより微小流路を有する樹脂製チッ
プを成型するものである。樹脂製チップは、ガラスチッ
プや石英チップに比べて量産及びコストの面で有利であ
る。
型の形状を忠実に再現するのが困難であるという問題が
あった。また、一方の樹脂製部材と他方の樹脂製部材の
接合には、接着剤を用いて接合する方法や熱的に接合す
る方法などが用いられている。しかし、前者は余分な接
着剤が微小流路にはみ出して流路を潰してしまうという
問題があり、後者は熱的な歪みで微小流路が変形してし
まうという問題があった。また、樹脂製チップでは、微
小流路内壁に化学修飾をしない場合、試料が流路内壁に
吸着することがある。そのため、微小流路内壁に化学修
飾を施す必要があるが、定量的な化学修飾は困難であっ
た。
つ微小流路を有する樹脂製チップを作製することであ
る。本発明の第2の目的は、流路内壁に定量的な化学修
飾が施された微小流路を有する樹脂製チップを提供する
ことである。本発明の第3の目的は、本発明の樹脂製チ
ップを用いた計測装置を提供することである。
ップの作製方法の第1の局面は、複数の樹脂製部材が接
合されてそれらの樹脂製部材間に形成された微小流路を
有する樹脂製チップの作製方法であって、接合される一
対の樹脂製部材のうち、少なくとも一方の樹脂製部材を
微小流路に対応する凸型の構造をもつ鋳型を用いて高分
子モノマーを重合させて成型し、少なくとも一方の樹脂
製部材が、形状が変化しない程度に重合し、かつ完全に
は重合していない状態で両樹脂製部材を密着させて重合
を完了させることにより両樹脂製部材の接合を行なう。
第2の局面は、複数の樹脂製部材が接合されてそれらの
樹脂製部材間に形成された微小流路を有する樹脂製チッ
プの作製方法であって、接合される一対の樹脂製部材の
うち、少なくとも一方の樹脂製部材を微小流路に対応す
る凸型の構造をもつ鋳型を用いて高分子モノマーを重合
させて成型し、一方の樹脂製部材の接合面と他方の樹脂
製部材の接合面間を、形状が変化しない程度に重合し、
かつ完全には重合していない状態の高分子モノマー層を
介して密着させて重合を完了させることにより両樹脂製
部材の接合を行なう。
に、接合される一対の樹脂製部材のうち、少なくとも一
方の樹脂製部材を微小流路に対応する凸型の構造をもつ
鋳型を用いて高分子モノマーを重合させて成型すること
により、微小流路を構成する溝を樹脂製部材の表面に形
成する。これにより、分子レベルで鋳型をトレースでき
る。さらに接合時に、溝を潰したり溝に熱応力がかかっ
たりしないので、微小流路を高精度に形成することがで
きる。さらに、第1の局面においては樹脂製部材の材
料、第2の局面においては樹脂製部材及び高分子モノマ
ー層の材料である高分子モノマー溶液の重合開始剤の濃
度、重合時の温度、時間を調節することにより接合の再
現性を向上することができる。
材が接合されてそれらの樹脂製部材間に形成された微小
流路を有する樹脂製チップであって、樹脂製部材は、高
分子モノマーと反応する架橋剤(クロスリンカー)とし
て分子内に2重結合、チオール基、アミノ基、カルボキ
シル基及びエポキシ基のうち少なくとも1種類の官能基
を有する化合物が添加されて重合されたものである。
た樹脂製部材の表面にはクロスリンカーの官能基が存在
しており、微小流路内壁に存在するクロスリンカーが化
学修飾と同じ作用を及ぼす。樹脂製部材を重合する際に
添加物の濃度が調整されることにより、微小流路内壁に
定量的な化学修飾が施される。
プを用い、その樹脂製チップを保持するためのチップ保
持機構と、樹脂製チップに形成された微小流路の両端に
電圧を印加するための電圧印加機構と、樹脂製チップの
微小流路内の特定物質を検出するための検出機構とを備
えたものである。
において、重合時のクロスリンカーの種類や量を適切に
選ぶことで、流路内壁を定量的に化学修飾することや、
流路内壁への吸着現象を制御することが可能となる。そ
こで、樹脂製部材の重合反応の際に、高分子モノマーと
反応するクロスリンカーとして、分子内に2重結合、チ
オール基、アミノ基、カルボキシル基及びエポキシ基の
うち少なくとも1種類の官能基を有する化合物を添加す
ることが好ましい。その結果、クロスリンカーを定量的
に添加することにより、樹脂製チップの流路内壁を定量
的に化学修飾することが容易にできる。高分子モノマー
としては、例えば不飽和ポリエステル、メチルメタクリ
レート、エポキシ樹脂、スチレンなどを用いることがで
きる。
て、クロスリンカーとして、一方の末端に2重結合をも
ち、他方の末端にアルコール性水酸基をもつものを1〜
10%(W/W)の濃度で添加するようにすれは、樹脂
製部材表面、ひいては微小流路内壁を親水性にすること
ができる。そのクロスリンカーの一例は、4−ペンテン
−1−オール、7−オクテン−1−オール、10−ウン
デセン−1−オール及び17−オクタデセン−1−オー
ルのうちのいずれかである。
は、クロスリンカーとして一方の末端に2重結合をも
ち、他方の末端にアルコール性水酸基をもつものを1〜
10%(W/W)の濃度で含むものであり、そのクロス
リンカーの一例は、4−ペンテン−1−オール、7−オ
クテン−1−オール、10−ウンデセン−1−オール及
び17−オクタデセン−1−オールのうちのいずれかで
ある。上記のようなクロスリンカーが添加されて形成さ
れた樹脂製部材表面、ひいては微小流路内壁は親水性を
もつ。微小流路内壁を化学修飾しない場合、微小流路内
に水溶液を導入するのが困難であるが、この態様では微
小流路内壁が親水性をもつので水溶液を容易に導入する
ことができる。さらに、微小流路内の気泡の発生も抑制
することができる。また、微小流路内壁は、その内壁表
面は親水性であり、内壁を構成する樹脂材料の内部は疎
水性であるという特徴をもつので、血清中薬物の分離を
前処理無しに行なうことができる。
示す工程断面図である。図2は樹脂製チップの一実施例
を示す構成図であり、(A)は上側の樹脂製部材の上面
図、(B)は下側の樹脂製部材の上面図、(C)は両樹
脂製部材を重ね合わせた状態での側面図である。図1
は、図2のA−A位置に対応する断面図である。まず図
1(G)及び図2を参照して樹脂製チップの構成につい
て説明する。
5により構成される。下側の樹脂製部材3の一表面に微
小流路を構成する溝7が形成されている。上側の樹脂製
部材5には溝7の両端に対応する位置に、液体試料を導
入するための薬液の入出ポート9を構成する貫通穴が形
成されている。図では、説明の便宜上、入出ポート9は
溝7から離れた位置に示されている。さらに樹脂製部材
5には溝7の一部分に対応する位置に光学検出するため
の例えばホウケイ酸ガラスからなる光学窓11が埋め込
まれており、光学窓11の上方に開口13が形成されて
いる。樹脂製チップ1は、溝7を内側にし、開口13を
外側にした状態で樹脂製部材3,5を重ねて接合して形
成され、溝7の内壁及び溝7の位置に対応する樹脂製部
材5の表面により微小流路23が形成されている。
の一実施例を説明する。 (A)微小流路23に対応した微細な凸型の形状を有す
る鋳型15を準備する。 (B)クロスリンカーの種類及び濃度を調製した樹脂製
部材3用の高分子モノマー溶液を鋳型15に流し込み、
形状が変化しない程度に重合し、かつ完全には重合して
いない状態(半分固まった状態、例えば重合度45〜9
5%の状態)まで高分子モノマーを重合させて樹脂製部
材3を形成する。高分子モノマー溶液としては、例えば
不飽和ポリエステル(フマル酸とエチレングリコールか
らなるカルボン酸エステル、平均分子量2300、70
重量%)とスチレン(30重量%)の混合物14グラム
に、数十μl(マイクロリットル)の触媒、例えば過酸
化ベンゾイルとジメチルアニリンを混合し、さらにクロ
スリンカー、例えば10−ウンデセン−1−オールを1
0重量%の割合で混合したものを用いた。温度条件は室
温(15〜25℃)、重合時間は40分で行なった。 (C)半分固まった状態の樹脂製部材3を鋳型15から
取り外す。樹脂製部材3の位置表面には鋳型15の微細
な凸型の形状に対応して溝7が転写されている。
し、平坦面17a上に複数の入出ポート形成用部材19
を密着して配置し、光学窓11を平坦面17aとは間隔
をもって外部から支持部材21により保持する。 (E)工程(B)で用いたのと同じ高分子モノマー溶液
を鋳型17に流し込み、形状が変化しない程度に重合
し、かつ完全には重合していない状態まで高分子モノマ
ーを重合させて樹脂製部材5を形成する。温度条件は室
温(15〜25℃)、重合時間は40分で行なった。 (F)樹脂製部材5が完全に重合する前に、入出ポート
形成用部材19と光学窓支持部材21を取り除き、液体
試料を導入するための複数の入出ポート9と、光学検出
するための光学窓11が配置され、開口13が形成され
た樹脂製部材5を得る。その後、樹脂製部材5を80分
間重合させて完全に重合させる。
完全に重合して固化した樹脂製部材5を、溝7を内側に
し、開口13を外側にした状態で重ね合わせ、樹脂製部
材3を完全に重合させることで樹脂製部材3,5を接合
する。条件は室温(15〜25℃)で12時間程度放置
した。なお、実際には120分程度で重合するものと思
われる。このとき、溝7の形状が変形することはない。
これにより、高精度な寸法をもつ微小流路23を有する
樹脂製チップ1を作製することができる。
にクロスリンカーを定量的に添加することにより、樹脂
製部材3,5の表面を定量的に化学修飾することが容易
にできる。すなわち溝7の内壁及び溝7の位置に対応す
る樹脂製部材5の表面により構成される微小流路23の
内壁を定量的に化学修飾することが容易にできる。この
実施例では、クロスリンカーとして親水性のものを用い
たので、微小流路23の内壁を親水性にすることがで
き、クロスリンカーの濃度を調製することにより微小流
路23の内壁への試料の吸着現象をコントロールするこ
とも可能である。さらに、高分子モノマー溶液の重合開
始剤の濃度、重合時の温度、重合時間を調節することに
より接合の再現性を向上することができる。
0−ウンデセン−1−オールを10重量%の濃度で添加
しているが、10−ウンデセン−1−オールの濃度を低
くすると重合時間は短くなる。10−ウンデセン−1−
オールの濃度を例えば5重量%にすると、図1での工程
(B)での重合時間は30分、工程(E)での重合時間
は30分、工程(F)での重合時間は40分、工程
(G)での重合時間は100〜120分になる。
樹脂製部材3と完全に重合して固化した樹脂製部材5を
重ね合わせて接合しているが、本発明の作製方法はこれ
に限定されるものではなく、完全に重合して固化した樹
脂製部材3と半分固まった状態の樹脂製部材5を重ね合
わせて接合してもよいし、樹脂製部材3,5ともに半分
固まった状態で重ね合わせて接合してもよい。
例を示す工程断面図である。図1と同じ部分には同じ符
号を付し、その説明は省略する。高分子モノマー溶液の
組成は図1の実施例の説明で用いたものと同じである。 (A)微小流路23に対応した微細な凸型の形状を有す
る鋳型15を準備する。 (B)高分子モノマー溶液を鋳型15に流し込み、室温
(15〜25℃)、重合時間は120分の条件で高分子
モノマーを完全に重合させる。 (C)樹脂製部材3を鋳型15から取り外す。樹脂製部
材3の位置表面には鋳型15の微細な凸型の形状に対応
して溝7が転写されている。
に複数の入出ポート形成用部材19を密着して配置し、
光学窓11を平坦面17aとは間隔をもって外部から支
持部材21により保持する。 (E)工程(B)で用いたのと同じ高分子モノマー溶液
を鋳型17に流し込み、形状が変化しない程度に重合
し、かつ完全には重合していない状態まで高分子モノマ
ーを重合させて樹脂製部材5を形成する。温度条件は室
温(15〜25℃)、重合時間は40分で行なった。 (F)樹脂製部材5が完全に重合する前に、入出ポート
形成用部材19と光学窓支持部材21を取り除き、複数
の入出ポート9と、光学窓11が配置され、開口13が
形成された樹脂製部材5を得る。その後、樹脂製部材5
を室温(15〜25℃)で80分間重合させて完全に重
合させる。
5の樹脂製部材3と接合される面に、工程(B)及び
(E)で用いたのと同じ高分子モノマー溶液を入出ポー
ト9が塞がらないように塗布して高分子モノマー層24
を形成し、高分子モノマー層24を形状が変化しない程
度に重合し、かつ完全には重合していない状態まで重合
させる。温度条件は室温(15〜25℃)、重合時間は
120分で行なった。 (H)樹脂製部材3及び樹脂製部材5を高分子モノマー
層24を介して重ね合わせ、高分子モノマー層24を完
全に重合させることで樹脂製部材3,5を接合する。温
度条件は室温(15〜25℃)、重合時間は120分で
あった。この実施例でも、溝7の形状が変形することは
ないので、高精度な寸法をもつ微小流路23を有する樹
脂製チップ1を作製することができる。
みに高分子モノマー層24を形成して両樹脂製部材3,
5を接合しているが、本発明の作製方法はこれに限定さ
れるものではなく、樹脂製部材3の接合面のみに高分子
モノマー層を形成して両樹脂製部材3,5を接合しても
よいし、両樹脂製部材3,5のそれぞれの接合面に高分
子モノマー層を形成して接合してもよい。
ば、溝7を潰したり溝7に熱応力がかかったりしない状
態で、微小流路23の内壁に発現する機能を予測及び制
御しつつ、樹脂製部材3,5の接合が可能となる。さら
に、微小流路23内壁に対する試料の吸着挙動も制御可
能である。これを利用すれば、例えば、1)血球成分の
分離、2)チップフローサイトメトリー、3)試料毎に
機能を指定したテーラーメイドマイクロチップなどに使
用する樹脂製チップの提供が可能となる。
施例の説明では、クロスリンカーとして10−ウンデセ
ン−1−オールを用いているが、本発明の樹脂製チップ
及びその作製方法はこれに限定されるものではなく、他
のクロスリンカー、例えば4−ペンテン−1−オールや
7−オクテン−1−オール、17−オクタデセン−1−
オールなど、一方の末端に2重結合、他方の末端にアル
コール性水酸基をもつものを用いれば、微細流路内壁に
親水性をもたせることができる。さらに、クロスリンカ
ーはこれらの化合物に限定されるものではなく、目的に
応じて分子内に2重結合、チオール基、アミノ基、カル
ボキシル基及びエポキシ基のうち少なくとも1種類の官
能基を有する化合物を用いることができる。
エステル(フマル酸とエチレングリコールからなるカル
ボン酸エステル)を用いているが、高分子モノマーはこ
れに限定されるものではなく、例えばメチルメタクリレ
ート、エポキシ樹脂、スチレンなどを用いることができ
る。
計測装置の一実施例を示す。樹脂製チップ1を設置する
ためのチップ保持機構としてのX−Yステージ25が設
けられており、その上に樹脂製チップ1が配置されてい
る。樹脂製チップ1の微小流路23及び出入ポート9内
に試料溶液やバッファ液、分離媒体としてのポリマーな
どの溶液が充填されている。微小流路23の両端に対応
する2つの出入ポート9a,9b内には電極27a,2
7bが溶液に浸かるようにそれぞれ配置されており、一
方の出入りポート9aに対応する電極27aは高圧リレ
ー29を介して高圧電源31に電気的に接続されてお
り、他方の出入ポート9bに対応する電極27bは接地
(GND)されている。電極27a,27b、高圧リレ
ー29及び高圧電源31は電圧印加機構を構成する。
けられている。レーザー33の光路上にチョッパー3
5、レンズ37及びミラー39が配置されている。レー
ザー33からの励起光はチョッパー35により断続さ
れ、レンズ37により集光され、ミラー39により反射
されて樹脂製チップ1の開口13及び検出窓11を介し
て微小流路23に照射される。
23からの光を取り込むために、光ファイバー41の一
端が配置されている。光ファイバー41の他端は580
nm以下の波長の光を除去するロングパスフィルター4
3の付近に配置されている。ロングパスフィルター43
の光ファイバー41とは反対側に、ロングパスフィルタ
ー43を通過した光ファイバー41の他端からの光を検
出するための光電子増倍管45が配置されている。光電
子増倍管45には光電子増倍管45の検出信号を処理す
るための制御部47が電気的に接続されている。制御部
47には測定結果を表示するための記録計49が電気的
に接続されている。さらに制御部47にはチョッパー3
5も電気的に接続されており、チョッパー35の動作は
制御部47により制御されるとともに、チョッパー35
の周波数に同期して光電子増倍管45の信号を取り込む
ことにより、外乱光の影響を除去している。レーザー3
3、チョッパー35、レンズ37、ミラー39、光ファ
イバー41、ロングパスフィルター43及び光電子増倍
管45は検出機構を構成する。
ト9aに注入し、高圧電源31により高圧リレー29を
介して電極27aに高電圧を印加して電極27a,27
b間に電位差を生じさせ、試料を出入りポート9aから
微小流路23内へ導入し、微小流路23で出入りポート
9a側から出入りポート9b側へ電気泳動させて分離す
る。例えば化学発光、蛍光、レーザー励起蛍光、吸光
度、表面プラズモンなどの原理を利用して、レーザー3
3からの励起光照射位置に試料が到達したときの光学的
変化を光ファイバー41及びロングパスフィルターを介
して光電子増倍管45により検出する。光電子増倍管4
5の検出信号を制御部47により処理し、記録計49に
表示する。
離流路だけでなく、化学反応を行なわせるための容器と
しても用いることができる。微小流路23内で化学反応
を行なわせる場合、図4に示した装置を用いて反応後の
物質を検出することができ、さらには反応過程のモニタ
リングを行なうこともできる。図4に示した計測装置の
実施例では、光学的測定により微小流路23内の試料の
検出する検出機構を備えているが、本発明の計測装置は
これに限定されるものではなく、樹脂製チップ1の微小
流路23内に電極を形成すれば検出機構として電気伝導
度測定により試料の検出を行なうものを用いることがで
きる。
において、第1の局面では、接合される一対の樹脂製部
材のうち、少なくとも一方の樹脂製部材を微小流路に対
応する凸型の構造をもつ鋳型を用いて高分子モノマーを
重合させて成型し、少なくとも一方の樹脂製部材が、形
状が変化しない程度に重合し、かつ完全には重合してい
ない状態で両樹脂製部材を密着させて重合を完了させる
ことにより両樹脂製部材の接合を行なうようにし、第2
の局面では、接合される一対の樹脂製部材のうち、少な
くとも一方の樹脂製部材を微小流路に対応する凸型の構
造をもつ鋳型を用いて高分子モノマーを重合させて成型
し、一方の樹脂製部材の接合面と他方の樹脂製部材の接
合面間を、形状が変化しない程度に重合し、かつ完全に
は重合していない状態の高分子モノマー層を介して密着
させて重合を完了させることにより両樹脂製部材の接合
を行なうようにしたので、分子レベルで鋳型を転写で
き、接合時に溝を潰したり溝に熱応力がかかったりしな
いので、微小流路を高精度に形成することができる。さ
らに、高分子モノマー溶液のクロスリンカーの種類や量
を適切に選ぶことで、微小流路内壁を定量的に化学修飾
することや、微小流路内壁への吸着現象を制御すること
が可能となる。
を構成する樹脂製部材は、高分子モノマーと反応するク
ロスリンカーとして分子内に2重結合、チオール基、ア
ミノ基、カルボキシル基及びエポキシ基のうち少なくと
も1種類の官能基を有する化合物が添加されて重合され
たものを用いているので、樹脂製部材の表面にクロスリ
ンカーの官能基が存在し、微小流路内壁に存在するクロ
スリンカーの官能基により微小流路内壁に定量的な化学
修飾が施されている。
プを用い、その樹脂製チップを保持するためのチップ保
持機構と、樹脂製チップに形成された微小流路の両端に
電圧を印加するための電圧印加機構と、樹脂製チップの
微小流路内の特定物質を検出するための検出機構とを備
えているので、本発明の樹脂製チップを用いて電気泳動
による分析を行なうことができる。
(A)は上側の樹脂製部材の上面図、(B)は下側の樹
脂製部材の上面図、(C)は両樹脂製部材を重ね合わせ
た状態での側面図である。
る。
学測定装置の一例を示す構成図である。
Claims (9)
- 【請求項1】 複数の樹脂製部材が接合されてそれらの
樹脂製部材間に形成された微小流路を有する樹脂製チッ
プの作製方法において、 接合される一対の樹脂製部材のうち、少なくとも一方の
樹脂製部材を微小流路に対応する凸型の構造をもつ鋳型
を用いて高分子モノマーを重合させて成型し、少なくと
も一方の樹脂製部材が、形状が変化しない程度に重合
し、かつ完全には重合していない状態で両樹脂製部材を
密着させて重合を完了させることにより両樹脂製部材の
接合を行なうことを特徴とする作製方法。 - 【請求項2】 複数の樹脂製部材が接合されてそれらの
樹脂製部材間に形成された微小流路を有する樹脂製チッ
プの作製方法において、 接合される一対の樹脂製部材のうち、少なくとも一方の
樹脂製部材を微小流路に対応する凸型の構造をもつ鋳型
を用いて高分子モノマーを重合させて成型し、一方の樹
脂製部材の接合面と他方の樹脂製部材の接合面間を、形
状が変化しない程度に重合し、かつ完全には重合してい
ない状態の高分子モノマー層を介して密着させて重合を
完了させることにより両樹脂製部材の接合を行なうこと
を特徴とする作製方法。 - 【請求項3】 前記樹脂製部材の重合反応の際に、高分
子モノマーと反応する架橋剤として、分子内に2重結
合、チオール基、アミノ基、カルボキシル基及びエポキ
シ基のうち少なくとも1種類の官能基を有する化合物を
添加する請求項1又は2に記載の作製方法。 - 【請求項4】 前記架橋剤として、一方の末端に2重結
合をもち、他方の末端にアルコール性水酸基をもつもの
を1〜10%(W/W)の濃度で添加する請求項3に記
載の作製方法。 - 【請求項5】 前記架橋剤は、4−ペンテン−1−オー
ル、7−オクテン−1−オール、10−ウンデセン−1
−オール及び17−オクタデセン−1−オールのうちの
いずれかである請求項4に記載の作製方法。 - 【請求項6】 複数の樹脂製部材が接合されてそれらの
樹脂製部材間に形成された微小流路を有する樹脂製チッ
プにおいて、 前記樹脂製部材は、高分子モノマーと反応する架橋剤と
して分子内に2重結合、チオール基、アミノ基、カルボ
キシル基及びエポキシ基のうち少なくとも1種類の官能
基を有する化合物が添加されて重合されたものであるこ
とを特徴とする樹脂製チップ。 - 【請求項7】 前記樹脂製部材は、前記架橋剤として一
方の末端に2重結合をもち、他方の末端にアルコール性
水酸基をもつものを1〜10%(W/W)の濃度で含む
ものである請求項6に記載の樹脂製チップ。 - 【請求項8】 前記架橋剤は、4−ペンテン−1−オー
ル、7−オクテン−1−オール、10−ウンデセン−1
−オール及び17−オクタデセン−1−オールのうちの
いずれかである請求項7に記載の樹脂製チップ。 - 【請求項9】 請求項6から8のいずれかに記載の樹脂
製チップを用い、その樹脂製チップを保持するためのチ
ップ保持機構と、 樹脂製チップに形成された微小流路の両端に電圧を印加
するための電圧印加機構と、 樹脂製チップの微小流路内の特定物質を検出するための
検出機構と、を備えたことを特徴とする計測装置。
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