JP2002206541A - 転動装置 - Google Patents

転動装置

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JP2002206541A
JP2002206541A JP2001333424A JP2001333424A JP2002206541A JP 2002206541 A JP2002206541 A JP 2002206541A JP 2001333424 A JP2001333424 A JP 2001333424A JP 2001333424 A JP2001333424 A JP 2001333424A JP 2002206541 A JP2002206541 A JP 2002206541A
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volume
hardness
rolling
titanium alloy
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JP2001333424A
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Koji Ueda
光司 植田
Kenji Yamamura
賢二 山村
Hideyuki Uyama
英幸 宇山
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NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高い耐食性と耐摩耗性に優れる転動装置を提供
する。 【解決手段】 内外輪1,2がチタン合金からなると共
に、玉3がセラミックからなる転がり軸受である。上記
内外輪1,2は、Moを10質量%以上40質量%以下
含有し残部をTiとするマトリックスに対し、セラミッ
ク粒子を強化相として30体積%以上80体積%以下含
有したTi基複合材料から構成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食品機械、半導体
製造機器や化学繊維製造機等、水や海水、化学薬品等の
腐食性の環境下、または半導体装置、液晶製造装置、X
線、電子線を使用した計測装置等の特殊環境下で使用さ
れる転がり軸受、直動案内装置、ボールねじ等の転動装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】精密機器、食品機械、半導体関連機器等
においては、従来から、転がり軸受、リニアガイド(直
動案内装置)、及びボールねじ等の各種の転動装置が使
用されている。これらの転動装置は、その構成部品とし
て外方部材と、内方部材と、その間を転動する転動体と
を備えており、上記転動体が、外方部材に形成された第
1の案内面(転動体との接触面)及び内方部材に形成さ
れた第2の案内面(転動体との接触面)に沿って転動す
ることで、内方部材に対し、外方部材が相対的に回転や
直進移動などの変位が可能となっている。
【0003】ここで、上記外方部材とは、転がり軸受に
あっては外輪を、リニアガイドにあってはスライダ又は
案内レールを、ボールねじにあってはナットを指す。ま
た、上記内方部材とは、転がり軸受にあっては内輪を、
リニアガイドにあっては案内レール又はスライダを、ボ
ールねじにあってはねじ軸を指す。また、上記両案内面
については、転がり軸受にあっては、外輪の軌道面が第
1の案内面、内輪の軌道面が第2の案内面となる。ま
た、リニアガイドにあっては、スライダ(又は案内レー
ル)の軌道溝が第1の案内面、案内レール(又はスライ
ダ)の軌道溝が第2の案内面となる。また、ボールねじ
にあっては、ナットのねじ溝が第1の案内面、ねじ輪の
ねじ溝が第2の案内面となる。
【0004】そして、転がり軸受その他の転動装置の転
動体である玉やころ、及び外方部材や内方部材である、
内輪、外輪、スライダ、案内レール、ナット、ねじ軸等
の材料としては、一般に、軸受鋼ではSUJ2、肌焼鋼
ではSCR420相当の鋼材が使用されている。しか
し、転がり軸受等の転動装置は、その使用環境が多種多
様であり、構成部品を上記鋼材により形成したものは、
水や海水が混入した程度でも早期に発錆して使用不能と
なる。したがって、腐食環境下においては、上述したよ
うな低合金鋼を使用した転動装置では耐食性が不十分で
あるので、耐食性に優れる高Cr系ステンレス軸受鋼と
してマルテンサイト系のSUS440C等の鋼材が従来
より使用されている。
【0005】しかしながら近年、軸受等の転動装置の使
用環境が過酷化し、マルテンサイト系のSUS440C
等でも腐食が進行するような腐食性の環境下で使用され
ることもある。このような使用環境の過酷化に対応すべ
く、特開平11−223221号公報においては、軌動
輪に耐食性に優れる(β型)チタン合金を使用し、転動
体にセラミックをした転がり軸受が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、チタン
合金は、非常に活性な金属であり、同等の硬さの鋼と比
較して比熱・熱伝導率が小さいために凝着を生じ易く、
耐摩耗・耐焼付き性に劣る。このため、上記従来のチタ
ン合金製の軌道輪を、高面圧等、負荷が大きい環境下で
使用すると、摩耗が激しく長時間の使用に耐えられない
という問題があった。
【0007】また、耐摩耗性を改善するために表面硬化
熱処理や硬質被膜処理等の表面硬化処理を施すことも行
われているが、表面硬化処理時に高温保持されることで
軌道輪が軟化して、当該軌道輪の負荷容量が低下した
り、コストアップに繋がるという問題点がある。ここ
で、耐食性、耐摩耗性については、内方部材及び外方部
材にセラミック系の材料を使用することで改善できる。
しかし、セラミックは靭性に劣り、割れ、欠けが生じ易
いので信頼性に劣り、適用範囲が限定されてしまう問題
がある。
【0008】本発明は、上記のような問題点に着目して
なされたものであり、高い耐食性と耐摩耗性に優れる転
動装置を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明のうち請求項1に記載した発明は、外方部材
の案内面と内方部材の案内面との間に転動体を介挿し、
上記転動体が上記両案内面に沿って転動することで、内
方部材に対し外方部材が相対変位可能となっていると共
に、上記外方部材及び内方部材がチタン合金から形成さ
れ且つ転動体がセラミックから形成される転動装置にお
いて、上記外方部材及び内方部材の少なくとも一方を、
Moを10質量%以上40質量%以下含有し残部をTi
とするマトリックスに対し、セラミック粒子を強化相と
して30体積%以上80体積%以下分散したTi基複合
材料から形成したことを特徴とするものである。
【0010】つまり、転動体がセラミック、内外方部材
がチタン合金である転がり軸受などの転動装置におい
て、内外方部材の少なくとも一方について、組成が質量
比でMo:10〜40%、残部Tiからなるマトリック
(結合相)のチタン合金中に、セラミック粒子を分散し
て強化したTi基複合材料を採用することにより、耐食
性を損なわずに硬度が従来のチタン合金より増大して負
荷容量が向上し、更に、耐摩耗性に優れる転動部材を提
供するものである。
【0011】ここで、上記セラミック粒子としては、チ
タン系セラミック粒子が好ましい。 「作用」セラミックス粒子を強化粒子として分散させた
Ti基複合材料を使用した場合、セラミックス粒子が強
化相として作用し、硬度が向上する。また、マトリック
スであるチタン合金は結合相として作用し、Ti基複合
材料は、セラミックス単体の場合に比較して靭性が高
く、衝撃荷重が付与される条件下において欠損を生じな
いので、セラミックス単体の場合に比べて信頼性が高
い。
【0012】結合相のチタン合金組成については、Mo
を添加することによって固溶強化されて、当該結合相が
強化される。また、強化相のセラミックス粒子は非常に
耐摩耗性・耐焼付き性に優れるため、セラミックス粒子
を分散していないチタン合金に比べて、Ti基複合材料
から形成される内外方部材の摩耗量を大幅に低減させ、
耐焼付き性も向上する。また、複合材料化することによ
り、強化粒子を含有しないチタン合金に比較してヤング
率が増大する。ヤング率が増大することにより、同一荷
重下での弾性変形量が減少する。従って、ボールねじの
ねじ軸またはリニアガイドの案内レールのように高荷重
を受ける部品(内外方部材)においては、たわみ量が小
さくなり、位置決め精度が向上する。
【0013】また、強化相のセラミック粒子および結合
相(マトリックス)のチタン合金はいずれも耐食性に優
れるため、水、海水、酸、アルカリ等の腐食環境下で
も、腐食による精度低下、腐食摩耗が生じないので腐食
環境下で特に好適に使用できる。さらに、セラミック系
分散粒子およびマトリックスのチタン合金は、いずれも
比重が鋼よりも小さいことから、Ti基複合材料からな
る内外方部材に対する、高速回転時におけるの遠心力が
低減される。この結果、高速回転下で好適に使用するこ
とができる。また、転動体もセラミック製であるので軽
量である。
【0014】強化相のセラミック分散粒子の種類として
は、SiC、TiC、TiN、TiCN、A12 3
が例示できる。ただし、複合化した際に、セラミック粒
子がマトリックスのチタン合金と反応しない系で、かつ
マトリックスと強化粒子相の界面でのはく離を防止する
観点から、線膨張係数が結合相のチタン合金に近いもの
が望ましい。具体的には、チタン系セラミック粒子であ
るTiC、TiN、TiCNが特に好適である。
【0015】ここで、上記請求項1の発明における数値
限定の理由について説明する。マトリック中のMoが質
量比で10%未満では、純Tiと比べてあまり腐食量に
変化は見られないが、10%以上になると腐食量が急激
に改善される。このため、下限値を10質量%とした
(図3参照)。また、Mo含有量の増大に伴って、腐食
量は減少するが、Mo量が40%を超えると耐食性改善
効果が飽和する。特に、Mo量が30%を超えると、M
oの増加に対する腐食の改善の割合が鈍くなる(図3参
照)。このため、マトリック中のMo含有量の上限値を
40質量%とした。より好ましくは上限値は30質量%
である。
【0016】また、セラミック粒子の量が30体積%未
満の場合には、硬さがHRC40以下となり、負荷容量
が不足する(図2参照)。このため、下限値を30体積
%とした。また、強化粒子であるセラミック粒子の配合
が増加するのに伴い、硬さが増大して耐摩耗性が向上す
る。しかし、体積率が80%を超えるとセラミック粒子
の量が増加しても、硬さが飽和し、セラミック粒子の増
加の効果は認められなくなる。特に、体積率が70%を
越えたあたりから、セラミック粒子の増加量に対する硬
さの増加の割合が鈍くなる(図2参照)。
【0017】以上のことから強化相としてのセラミック
粒子の量の上限を完成品の80体積%とした。より好ま
しくは70体積%以下である。次に、請求項2に記載し
た発明は、外方部材の案内面と内方部材の案内面との間
に転動体を介挿し、上記転動体が上記両案内面に沿って
転動することで、内方部材に対し外方部材が相対変位可
能となっていると共に、上記外方部材及び内方部材がチ
タン合金から形成され、転動体がセラミックス若しくは
チタン合金から形成される転動装置において、上記外方
部材、内方部材、及び転動体の少なくとも一つを、Mo
を10質量%以上40質量%以下含有し残部をTiとす
るマトリックスに対し、チタン系セラミック粒子を30
体積%以上80体積%以下分散し且つα相及びω相の少
なくとも1種類以上の相が析出してなる強化相を有する
Ti基複合材料から形成することを特徴とするものであ
る。
【0018】マトリックスにα相やω相を析出して強化
することで、さらに寿命が向上する。次に、請求項3に
記載した発明は、請求項2に記載した発明に対し、上記
Ti基複合材料のマトリックスのチタン合金は、熱処理
によって硬さがHv400以上になっていると共に、上
記チタン系セラミック粒子の含有量が、5体積%以上8
0体積%以下であることを特徴とするものである。
【0019】ここで、上記熱処理による硬さとは、セラ
ミック粒子を除いた部分での硬さを指す。次に、請求項
4に記載した発明は、請求項3に記載した構成に対し上
記チタン系セラミック粒子の含有量が、5体積%以上3
0体積%以下であることを特徴とするものである。上記
請求項1で使用されるようなTi基複合材料は、焼結
(合金化)後に、徐冷したままで使用されるのが一般的
であり、この場合、マクロ的な硬さは、HRC40〜5
0程度の値が得られるが、マトリックス(基地)のチタ
ン合金の硬さが低く、転がり軸受などの転動装置の構成
部品に適用した場合に、疲労特性においては、柔らかい
チタン合金の部分の負荷容量が不足して、安定した寿命
が得られない可能性がある。
【0020】上述した問題点を解決するために、請求項
2〜請求項4の発明においては、内外方部材、及び転動
体の少なくとも一つを、チタン系の硬質粒子を強化相と
すると共に、マトリックス(基材)のチタン合金の組成
が質量比でMoが10〜40%のTi基複合材料に対
し、上記マトリックスのチタン合金を熱処理することで
α相やω相を析出させてマトリックスを強化すること
で、長寿命化を図ったものである。 「作用」セラミッ
クス粒子を分散させたTi基複合材料を使用した場合、
セラミックス粒子が強化相として作用し、硬度を向上さ
せる。また強化相のセラミックス粒子は非常に耐摩耗性
・耐焼付き性に優れるため、セラミックス粒子を分散し
ていないチタン合金に比べて、摩耗量を大幅に低減さ
せ、かつ耐焼付き性も向上する。
【0021】マトリックスのチタン合金に関しては、M
oは、チタン合金においてBCC構造のβ相を安定化さ
せる元素であり、マトリックスのMo濃度が10〜40
質量%の範囲では、β相が安定となり、図4(a)の模
式図に示すように、焼結後の冷却時に変態を起こさずに
β相のまま室温で残存して、強化粒子セラミックスとβ
相マトリックスとの組織が得られる。このβ相は、ビッ
カース硬度でHv250〜300前後と非常に柔らかい
ため、高荷重が付与された場合に硬さが低いβ相が起点
となってはくりを起こしやすい。
【0022】これに対し、請求項2〜請求項4の発明で
は、このβ相が準安定相であることに基づき、時効処理
によってα相、ω相のいずれか単独またはα、ωの両方
をβ相のマトリックス中に析出して、図4(b)の模式
図に示すようにα+β相、β+ω相またはα+β+ωの
組織としている。これら時効処理で析出するα、ω相
は、非常に微細に析出するので著しく硬化する。これに
よって、請求項2〜請求項4の発明では、マトリックス
が強化されて、長寿命化を図ることができる。
【0023】また、強化相のセラミックスおよび結合相
のチタン合金はいずれも耐食性に優れるため、水、海
水、酸、アルカリ等の腐食環境下でも腐食による精度低
下、腐食摩耗が生じないので腐食環境下で持に好適に使
用でき、また、熱処理によってマトリックスのチタン合
金にα相やω相を析出させた場合においても、マトリッ
クスの耐食性は劣化しない。また、マトリックスがβ相
で軟質な場合には、研磨、または超仕上げ時に、強化セ
ラミック粒子とマトリックスの硬さの差が大きく、とく
にマトリックスがβ相のままであると、Hv300前後
と柔らかいために、軟質なβ相が優先的に削られてしま
い、セラミック粒子とマトリックスのチタン合金で段差
が生じ、良好な表面粗さを得ることが難しい。
【0024】これに対し、請求項2〜請求項4のよう
に、熱処理によってマトリックスを析出硬化させること
によって、強化セラミックスとマトリックスとの硬さの
差が減少し、研削または超仕上げ時にマトリックスのチ
タン合金が優先的に削られるのを防止することができ、
表面仕上げ精度が大幅に向上して、回転精度が大幅に向
上する。ここで、Moの含有量の数字限定、及び強化セ
ラミックの含有限定の理由は、上記説明と同様である。
【0025】但し、マトリックスの硬度を400Hv以
上に析出硬化で強化すると、請求項1の発明と異なり、
強化粒子としてのセラミックは30体積%以下であって
も、上記効果が得られた。このため、請求項3及び請求
項4にあっては、セラミック含有量の下限を30体積%
より小さく規定している(表2及び図6を参照)。特
に、請求項4にあっては、マトリックスの硬度を400
Hv以上とすることで、強化粒子としてのセラミックは
30体積%以下であっても長寿命化の効果が得られたた
め、上限値を30体積%としている(表2参照)。
【0026】ただし、5体積%以下の場合には、セラミ
ック粒子の量が不足し、複合強化の効果が得られないた
め、下限値を5体積%と規定している。ここで、焼結
(合金化)後、冷却したままでは、セラミックの体積率
を30%以上にしないと、転動部材に必要な硬さHRC
40以上の硬さが得られない。しかし、請求項2〜請求
項4のようにマトリックスのチタン合金が強化されるこ
とによって、相対的に硬さが増加するので、セラミック
粒子の体積率を低減しても、転動部材に必要な硬さHR
C40以上の軌道面硬さが得られ、安定した寿命が得ら
れる。
【0027】特に、請求項4のように、セラミック粒子
の体積率を低減することによって、靭性が向上するの
で、衝撃が付与されるような場合において特に好適とな
る。
【0028】
【発明の実施の形態】次に、本発明に実施形態について
説明する。本実施形態では、転動装置として転がり軸受
を例に挙げて説明する。本実施形態の転がり軸受は、図
1に示すように、内輪1の軌道面1aと外輪2の軌道面
2aとの間に玉3(転動体)が介挿されて構成される。
なお、不図示の保持器が上記内輪1と外輪2との間に配
設される。
【0029】上記玉3は、セラミックを焼結して構成さ
れる。玉3となるセラミックの種類としては、Si3
4 、SiC、部分安定化ジルコニア、A12 3 等があ
るが、強度、靭性の高いSi3 4 が特に好適である。
また、内外輪1,2と同様に、本発明に係るセラミック
粒子で強化したTi基複合材料からなる玉(転動体)も
好適に使用できる。また、上記内輪2及び外輪3は、T
i、Mo、TiCの各粉末を所定量混合して環状に成形
した後に1300℃〜1600℃で真空焼結して形成さ
れる。その焼結体に仕上加工を施して製品としての内輪
及び外輪とする。
【0030】ここで、上記Ti粉末とMo粉末の比を
7:3などに設定することにより、Ti粉末とMo粉末
との合計の質量に対する、Mo粉末の配合比を10質量
%以上40質量%以下に設定してある。また、焼結後の
TiCの体積率が30体積%以上80体積%以下となる
ように、TiC粉末の添加量を調整した。ここで、本発
明に係るTi基複合材料による内外輪1,2の作製方法
としては、複合材料化することによって、硬度が増大し
て切削性が低下するので、バルク状の素材から切削によ
って作製するのは、コスト高となる。従って、内外輪
1,2の作製方法としては、複雑形状の部品をニアネッ
トシェイプで量産することができる粉末冶金法が好適で
ある。
【0031】上記構成の転がり軸受では、次のような作
用・効果を有する。内外輪1,2を構成するチタン合金
は、分散されたチタン系のセラミック粒子が強化相とし
て作用することで硬度が向上し、耐摩耗性及び耐焼き付
き性に優れた内外輪1,2となる。また、複合材料化す
ることにより、強化粒子を含有しないチタン合金に比較
してヤング率が増大する。ヤング率が増大することによ
り、同一荷重下での弾性変形量が減少する。従って、高
荷重を受けてもたわみ量が小さくなる。
【0032】また、強化相のセラミックおよび結合相
(マトリックス)のチタン合金はいずれも耐食性に優れ
るため、水、海水、酸、アルカリ等の腐食環境下でも腐
食による精度低下、腐食摩耗が生じないので腐食環境下
で特に好適に使用できる。さらにセラミック系分散粒子
およびマトリックスのチタン合金(Ti−X%Mo)
は、いずれも比重が鋼に対して小さいことから、Ti基
複合材料からなる内外輪1,2が高速回転しても遠心力
が低減される。この結果、本実施形態の転がり軸受を高
速回転下で好適に使用することができる。
【0033】ここで、強化相のセラミック分散粒子の種
類としては、TiCに限定されず、SiC、TiC、T
iCN、A12 3 等のセラミック粉体であっても良
い。ただし、チタン系セラミック粒子であるTiC、T
iN、TiCNが特に好適である。また、上記実施形態
では、内外輪1,2の両方をTi基複合材料とした場合
を例示しているが、内外輪1,2の一方を(β型)チタ
ン合金から形成しても良い。
【0034】また、転動体として玉3を例示している
が、ころであっても良い。又、上記実施形態では、転が
り軸受の例を示したが、リニアガイド、ボールネジ等の
直動装置に本発明を適用しても同様の効果が得られる。
なお、鋼製の玉と上記内外輪1,2とを組み合わせた場
合には、複合材料中のマトリックスのチタン合金と鋼
(玉)とが異種金属接触して、腐食環境下で鋼製の玉が
選択的に溶解するので好ましくない。
【0035】次に、第2実施形態について、上記第1実
施形態と同じ図面を参照しつつ説明する。なお、上記実
施形態と同様な部品には同一の符号を付して説明する。
本実施形態の転がり軸受は、図1に示すように、内輪1
の軌道面1aと外輪2の軌道面2aとの間に玉3(転動
体)が介挿されて構成される。なお、不図示の保持器が
上記内輪1と外輪2との間に配設される。上記玉3は、
セラミックを焼結して構成される。
【0036】玉3となるセラミックの種類としては、S
3 4 、SiC、部分安定化ジルコニア、A12 3
等があるが、強度、靭性の高いSi3 4 が特に好適で
ある。また、内外輪1,2と同様に、本発明に係るセラ
ミック粒子で強化したTi基複合材料からなる玉(転動
体)も好適に使用できる。また、上記内輪2及び外輪3
は、Ti、Mo、TiCの各粉末を所定量混合して環状
に成形した後に1400℃〜1600℃で2時間、真空
焼結して形成される。
【0037】さらに、上記焼結(合金化)後のTi基複
合材料を、室温まで冷却したのちに、時効処理、または
溶体化処理後に時効処理を施すことによりα相を析出さ
せて、マトリックスのチタン合金をHv400以上など
の硬度に析出強化することによって、マトリックスを強
化する。これによって、上記第1実施形態と同様な効果
を発揮するばかりか、長寿命化を図ることができる。熱
処理条件としては、焼結後に、300〜500℃で時効
処理を行なうか、または700〜1000℃で溶体化処
理後、水冷またはガス冷などで急速冷却したのち、上述
の温度で時効処理を行なう。また、時効処理後の冷却過
程で徐冷して、冷却中にω相を析出させてもよい。
【0038】その焼結体に仕上加工を施して製品として
の内輪及び外輪とする。ここで、上記Ti粉末とMo粉
末の比を7:3などに設定することにより、Ti粉末と
Mo粉末との合計の質量に対する、Mo粉末の配合比を
10質量%以上40質量%以下に設定してある。また、
焼結後のTiCの体積率が5体積%以上80体積%以下
となるように、TiC粉末の添加量を調整した。
【0039】ここで、析出硬化後のマトリックの硬度が
Hv250〜400の範囲にある場合には、強化セラミ
ックの体積率を30〜80体積%とすることが好まし
く、マトリックの硬度がHv400以上であれば、強化
セラミックの体積率を5〜80体積%、好ましくは5〜
30体積%とする。また、Ti基複合材料による内外方
部材の作製方法としては、複合材料化することによっ
て、硬度が増大して切削性が低下するので、バルク状の
素材から切削によって作製するのは、コスト高となる。
従って、内外方部材の作製方法としては、上述したよう
に、複雑形状の部品をニアネットシェイプで量産するこ
とができる粉末冶金法が好適であり、また、メタル・イ
ンジェクション・モールディング(MIM)も好適であ
る。特に強度・靭性を必要とする場合には、焼結後、H
IP処理を施して、残留気孔を無くすのが好適である。
原料粉末は、チタン系セラミック粉(TiC、TiN、
TiCN)、Ti粉末、Mo粉末を混合じて焼結する素
粉末混合法が低コストで好適であるが、セラミック粉末
とTi−Mo合金粉を混合して焼結しても良い。
【0040】また、粉末の混合時に、成形材として有機
系バインダを混合する。この有機系バインダは、焼結前
に脱バインダ工程によって、大部分は除去されるが、一
部、除去されずにバインダが残存して、焼結時に有機系
バインダと原料粉末中のTiが反応して、TiCを形成
する。この結果、原料粉末として混合したチタン系セラ
ミック粉末の体積率より、焼結後のTiC体積率の方が
多くなり、また粒子径も増加する。
【0041】バインダの種類として、多成分系とワック
ス系に大別され、具体的には、ワックス−アクリル、ワ
ックス−ポリプロピレン、アクリル−エチレン酢酸ビニ
ル−ワックス−フタル酸ブチル、ポリプロピレン−エチ
レン酢酸ビニル−パラフィンワックス−カルナウバワッ
クス−フタル酸ジオクチルなどが例示できる。強化粒子
のチタン系セラミック粒子については、微細に均一分散
させたほうが、強度および靭性が向上する。したがっ
て、完成品におけるセラミック粒子径の範囲は、0.5
〜100μmとするのが望ましい。特に添加するTiC
粉末が微粉になるほど、その効果は大きいので、セラミ
ック粒子の平均粒度としては、上述した0.5〜100
μm範囲を外れない大きさの粉末を使用するのがよい。
【0042】また、マトリックスのチタン合金の組織に
おいても、微粉を用いた方が焼結後の結晶粒径が細かく
なって機機的性質が向上するので、セラミック粒子同様
に平均粒度としては、0.5〜100μmの粉末を用い
るのが望ましい。
【0043】
【実施例】「実施例1」強化粒子であるチタン系セラミ
ック粒子の配合が増加するのに伴い、硬さが増大して耐
摩耗性が向上する。最適なチタン系セラミック量を明ら
かにするため、TiC粒子について以下の実験を行な
い、評価を行なった。
【0044】Ti、Mo、TiCの各粉末を所定量混合
後、1500℃で真空焼結を行なった。Ti粉末とMo
粉末の比は7:3と一定に設定し、TiCの配合比を変
えて焼結した、焼結後のTiCの体積率と硬さを測定し
た。図2に、焼結後のTiC体積率と硬さの関係を示
す。図2から分かるように、焼結後のTiC量が30体
積%未満の場合には、硬さがHRC40以下となり、負
荷容量が不足する。
【0045】一方、TiCの増加に伴って硬さも増加
し、体積率30%以上ではHRC40以上の硬さにな
る。しかし、体積率が80%を超えると、TiC量が増
加しても硬さが飽和し、TiCの増加の効果は認められ
なくなる。特に、体積率が70%を越えたあたりから、
TiCの増加量に対する硬さの増加の割合が鈍くなる。
従って、転動部材として必要な硬さが得られる強化粒子
のTiCの量は体積率で30体積%以上80体積%以
下、好ましくは30体積%以上70体積%以下であるこ
とが分かる。
【0046】「実施例2」結合相(マトリックス)の耐
食性は、Mo含有量によって影響をうける。そこで、耐
食性の観点から、結合相のTi合金中の最適なMo含有
量を決定するため以下の実験を行なった。Ti粉末、M
o粉末、及びチタン系セラミック粒子としてのTiC粉
末を用いて、Ti−X%Mo−33%TiC組成(Xは
マトリックス中のMoの質量%を表す。X=0〜50)
になるように混合し、200MPaの圧力で、直径33
mmφ、厚さ35mmの環状の試験片(に成形後、1500
℃で真空焼結した。得られた焼結体について、表面を#
800のエメリー紙で研磨した後、試験に供した。試験
条件は以下の通りである。
【0047】腐食液 :1N−HCl水溶液 試験時間:20時間 試験前後の試験片の重量変化を測定し、腐食減量によっ
て評価をおこなった。また、焼結後における結合相であ
るTi合金相中のMo含育量をEPMAにて分析した。
純Tiの腐食量を1とした場合の比でまとめた。図3に
その結果を示す。
【0048】図3から分かるように、焼結後の結合相中
のMoが質量比で10%未満では、純Tiに対して腐食
量に変化は見られないが、10%以上になると腐食量が
急激に改善される。また、Mo含有量の増大に伴って、
腐食量は減少するが、Mo量が40%を超えると耐食性
改善効果が飽和する。特に、Mo量が30%を超える
と、Moの増加に対する腐食の改善の割合が鈍くなる。
【0049】以上の結果から、本発明に係るTi基複合
材料の結合相のTi−Mo系合金の組成は、焼結後、M
o含有量は10%以上40%以下が望ましく、更に望ま
しくは10%以上30%以下であることが分かる。 「実施例3」また、上述したチタン系セラミック粒子を
分散させたTi−Mo系Ti基複合材料を用いて、以下
の実験を行ない性能を比較した。
【0050】所定量のTi、Moおよびチタン系セラミ
ック粒子粉末をらい潰機にて1時間混合し、196MP
aにてプレス成形してリング状の圧粉体に成形し、14
00〜1600℃で2時間真空焼結することで、表1中
の組成のTi基複合材料を作製し、深溝玉軸受6001
の内外輪とした。比較例として、Ti−6Al−4V合
金(α+β型チタン合金)およびSUS440Cステン
レス鋼の軌動輪を使用した。完成品状態での強化粒子体
積率、結合相のTi合金中のMo含有量および転動体の
材質を表1に示す。なお、保持器は冠型フッソ樹脂系の
保持器を用いた。
【0051】
【表1】
【0052】<腐食環境下の回転試験>5N−HClの
腐食液に浸漬した状態で軸受の回転試験を行い、振動値
を測定し 振動値が初期値の5倍に適した時点を軸受の
寿命として、寿命に適するまでの時間を測定した、寿命
は比較例14の値を1とした場合の比で示した。また、
外観の判定は、変色、しみ、面荒れの有無を目視確認す
ることで行い、変色などがないものを、「○」と表示し
てある。
【0053】回転試験条件を以下に示す。 ラジアル荷重 :98.0N アキシアル荷重 :19.6N 回転数 :1000rpm 潤滑 : 無潤滑 試験の結果を表1に併示する。
【0054】表1から分かるように、本発明の実施例N
o.1〜15は、いずれも酸中で良好な耐食性を示し、
回転性能も良好である。また、実施例No.16〜20
はチタン系セラミック粒子としてTiN、実施例No.
21〜25はチタン系セラミックとしてTiCNを適用
した場合であるが、いずれもTiC同様、良好な性能を
示し、その効果は明らかである。一方、比較例No.1
〜5は、結合相のTi合金組成は本発明の範囲である
が、TiC体積率が本発明範囲の30%未満の場合であ
る。強化相であるTiCが少ないため硬さが不足し、耐
摩耗性が劣化したため、短寿命である。
【0055】比較例6〜10は、Ti基複合材料中のM
o組成およびTiCの体積率は、本発明の範囲である
が、転動体をSUS440Cとした場合であり、転動体
の耐食性が不足し、更に異種金属接触となるため、転動
体の腐食が優先的に進行し、軸受が早期に精度低下を生
じたため、酸中での寿命が短い。比較例11および12
は、結合相のチタン合金のMo組成が10%未満の場合
であり、耐食性が不足するため、腐食摩耗によって、短
寿命となっている。
【0056】比較例No.13はチタン合金単体でセラ
ミックを分散しない場合であり、外観上著しい腐食は認
められないが、短寿命である。この理由は、チタン合金
単体では、硬質なTiC粒子を含有しないために耐摩耗
性に劣ることから、転動体との転がり摩擦によって著し
く摩耗が進行したためと考えられる。また、比較例N
o.14は、軌道輪にSUS440Cを使用した場合で
あり、耐食性が低いため、腐食摩耗によって短寿命とな
った。 「実施例4」上記第2実施形態に基づき、チタン系セラ
ミック粒子を分散させたTi−Mo系Ti基複合材料を
用いて、深溝玉軸受6001の内外輪を作製し、以下の
実験を行なって性能を評価した。
【0057】所定量のTi(0.5〜100μmの範囲
で平均粒径25μm)、Mo粉(平均粒径5μm)およ
びチタン系セラミック粒子粉末(平均粒径1μm)を、
らい潰機にて1時間混合し、196MPaにてプレス成
形し、リング状の圧粉体を成形し、1400〜1600
℃で2時間真空焼結後、徐冷した。一部のTi基複合材
料においては、さらに、750〜950℃で1時間加熱
後、Arガスで急冷したのち、350〜500℃で5〜
100時間、大気中で時効処理を行い、マトリックスの
チタン合金をそれぞれ時効硬化させた。
【0058】なお、保持器は冠型フッソ樹脂系の保持
器、転動体は窒化珪素を用いた。また、マトリックスの
チタン合金中のMo含有量は、質量比で28〜32%の
範囲に収まるように調整した。
【0059】
【表2】
【0060】マトリックスのチタン合金の硬さについて
は、株式会社エリオニクス株式会社製の超微小押し込み
硬さ試験機(ENT−1100a)にて押し込み硬さを
測定した。本試験機で得られる硬さは、押し込み硬さで
あるので、押し込み硬さをビッカース硬さに換算するた
めに、マイクロビッカース硬さ標準硬さ試験片(Hv4
00、Hv600)を上述の硬さ試験機で測定し、検量
線を作成してHv換算した。測定値を表2に併示する。
【0061】また、理学電機株式会社製X線回折装置R
INT2500でマトリックスの構成組織の同定を行
い、表2に併示した。 <腐食環境下回転試験>また、5N−HC1中で軸受回
転試験を行い、振動値を側定し、振動値が初期値の5倍
に達した時点を軸受の寿命として、寿命に達するまでの
時間を側定した。寿命は比較例1の値を1とした場合の
比で示した。
【0062】回転試験条件を以下に示す。 ラジアル荷重 :147N アキシアル荷重 :19.6N 回転数 :1000rpm 潤滑 :無潤滑 表2に結果を併示する。
【0063】表2中、比較例No.1〜13は、いずれ
も本願発明の範囲外のものである。すなわち、比較例N
o.1〜6は、セラミック粒子の体積率が30%未満
で、かつマトリックスのチタン合金の硬さがHv400
未満の場合である。この場合には、セラミック粒子が不
足し、さらにマトリックスのチタン合金の硬さも低く、
軌道輪としての負荷容量が不足しているために、短寿命
であった。また、比較例No.7〜10は、マトリック
スの硬さは、請求項3の発明範囲内であるHv400以
上であるが、セラミック粒子の体積率が本発明の範囲外
の5%未満の場合である。この場合には、マトリックス
は強化されているが、セラミックス粒子の体積比が小さ
く、十分な強度が得られず、短寿命であった。
【0064】また、実施例No.37〜45は、請求項
1若しくは請求項2の発明に対応するものであり、マト
リックスの硬さは、Hv400以下であるが、セラミッ
クスの体積率が30〜80%であることから、上記比較
例に比べて寿命が向上していることが分かる。このと
き、例えば、No.40とNo.41,42との比較か
ら分かるように、請求項2の発明に対応するNo.4
1,42のように、α相を析出させた方が若干、寿命が
向上する。
【0065】さらに、マトリックスのチタン合金をHv
400以上に析出強化した請求項3又は請求項4に対応
する実施例No.1〜36では、上述したNo.37〜
40に比較して、マトリックスが強化されたことによっ
て、寿命延長効果が特に大きくなっていることが分か
る。特に、マトリックスのチタン合金をHv400以上
に析出強化することで、実施例No.1〜3のように、
セラミックス粒子の体積率を5〜30%の範囲と比較的
少ない値としても、十分な寿命が得ることができること
が分かる。
【0066】また、本発明の実施例のNo.25〜36
に示すように、チタン系セラミック粒子の種類によら
ず、TiC、TiNまたはTiCNを適用した場合で
も、同様の効果が得られることが分かる。図5に、マト
リックスのチタン合金の硬さと腐食環境下での転がり寿
命の比率を整理した結果を示す。この図5から分かるよ
うに、マトリックスのチタン合金をHv400以上とす
ることにより、寿命延長の効果は著しい。
【0067】ここで、マトリックスの硬さの上限値につ
いては、特に規定はしないが、Hv600を超えると、
脆化相のω相やチタンの金属間化合物の析出が支配的と
なって、硬さが増大するが靭性が低下する傾向になる。
したがって、強度・靭性を両立させるためにはHv60
0以下にするのが望ましい。また、セラミックス粒子の
体積率が30〜80%の場合には、チタン合金のマトリ
ックスを強化しなくてもある程度の寿命が得られる。し
かしながら、比較例No.12〜13のマトリックス硬
さがHv250未満の場合、強度不足によるはくりが生
じやすくなる。したがって、請求項1に対応するセラミ
ックス粒子の体積率が30〜80%で、マトリックスを
強化しない場合には、マトリックスのチタン合金の硬さ
を、Hv250以上とするのが望ましい。
【0068】また、比較例No.7〜10では、マトリ
ックスのチタン合金の硬さはHv400以上に強化され
ているが、チタン系セラミック粒子の体積率が、4%以
下と少ないために十分な耐摩耗性、耐焼付性が得られな
いため、不適である。以上のように、TiC、TiC
N、TiN系のセラミック粒子を分散し、Mo含有量が
10〜40質量%であるチタン合金をマトリックスとす
るTi基複合材料において、セラミック粒子の体積比を
5〜80体積%、好ましくは5〜30体積%の範囲に
し、かつ熱処理によってマトリックスのチタン合金をH
v400以上に硬化させることによって、寿命延長効果
が著しいことが明らかになった。
【0069】図6に、本発明に係るセラミックス粒子の
体積率およびマトリックスのチタン合金の硬さ範囲を示
す。本発明の実施例は、転がり軸受に適用した例のみを
示したが、リニアガイド、ボールネジ等の直動装置に本
発明を適用しても同様の効果が得られることを確認して
いる。
【0070】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明の転動
装置を採用すると、高い耐食性と耐摩耗性に優れる転動
装置を提供することができる。また、内外方部材及び転
動体が鋼よりも比重が小さいことから高速回転下の使用
に好適な転動装置となる。特に、請求項3又は請求項4
に係る発明を採用すると、マトリックスの硬さ不足によ
る早期剥離を抑制でき、腐食環境下で長寿命な転動部材
を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る転がり軸受を示
す断面図である。
【図2】TiCの含有量と硬さとの関係を示す図であ
る。
【図3】Mo含有量と腐食量との関係を示す図である。
【図4】熱処理前後の組織の模式図であり、(a)は熱
処理前を(b)は熱処理後をそれぞれ示している。
【図5】マトリックス硬さと寿命比との関係を示す図で
ある。
【図6】セラミック粒子の体積率とマトリックス硬さと
の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 内輪(内方部材) 2 外輪(外方部材) 3 玉(転動体)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宇山 英幸 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 Fターム(参考) 3J101 BA10 BA70 DA01 EA01 EA41 FA08 FA31 4K018 AD04 BA03 BA09 BA11 BC12 DA21 DA32 FA06 KA02 KA03

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外方部材の案内面と内方部材の案内面と
    の間に転動体を介挿し、上記転動体が上記両案内面に沿
    って転動することで、内方部材に対し外方部材が相対変
    位可能となっていると共に、上記外方部材及び内方部材
    がチタン合金から形成され且つ転動体がセラミックから
    形成される転動装置において、 上記外方部材及び内方部材の少なくとも一方を、Moを
    10質量%以上40質量%以下含有し残部をTiとする
    マトリックスに対し、セラミック粒子を強化相として3
    0体積%以上80体積%以下分散したTi基複合材料か
    ら形成することを特徴とする転動装置。
  2. 【請求項2】 外方部材の案内面と内方部材の案内面と
    の間に転動体を介挿し、上記転動体が上記両案内面に沿
    って転動することで、内方部材に対し外方部材が相対変
    位可能となっていると共に、上記外方部材及び内方部材
    がチタン合金から形成され、転動体がセラミックス若し
    くはチタン合金から形成される転動装置において、 上記外方部材、内方部材、及び転動体の少なくとも一つ
    を、Moを10質量%以上40質量%以下含有し残部を
    Tiとするマトリックスに対し、チタン系セラミック粒
    子を30体積%以上80体積%以下分散し且つα相及び
    ω相の少なくとも1種類以上の相が析出してなる強化相
    を有するTi基複合材料から形成することを特徴とする
    転動装置。
  3. 【請求項3】 上記Ti基複合材料のマトリックスのチ
    タン合金は、熱処理によって硬さがHv400以上にな
    っていると共に、上記チタン系セラミック粒子の含有量
    が、5体積%以上80体積%以下であることを特徴とす
    る請求項2に記載した転動装置。
  4. 【請求項4】 上記チタン系セラミック粒子の含有量
    が、5体積%以上30体積%以下であることを特徴とす
    る請求項3に記載した転動装置。
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