JP2002198041A - 鉛蓄電池用正極板の製造方法 - Google Patents

鉛蓄電池用正極板の製造方法

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JP2002198041A
JP2002198041A JP2000393910A JP2000393910A JP2002198041A JP 2002198041 A JP2002198041 A JP 2002198041A JP 2000393910 A JP2000393910 A JP 2000393910A JP 2000393910 A JP2000393910 A JP 2000393910A JP 2002198041 A JP2002198041 A JP 2002198041A
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Tomohiro Imamura
智宏 今村
Yoshihiro Eguchi
能弘 江口
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Yuasa Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高温環境下で充電が継続して行われる鉛蓄電
池において、高率放電性能の劣化を抑制し、長寿命にす
ることにある。 【構成】 本発明は、10〜20重量%の鉛丹を含む鉛
粉と、水と、希硫酸とを練合してペーストを作製し、次
いで、前記ペーストを4.3〜5.3g/mlの充填密度で
格子体に塗着することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉛蓄電池の製造方
法、殊に高温環境下で充電が継続して行われる鉛蓄電池
の正極板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】鉛蓄電池は安価で信頼性が高いという特
徴を有するため、無停電電源装置(UPS)や自動車用等
の電源に広く使用されている。これら用途での鉛蓄電池
は、停電時や自動車のエンジン始動時等の高率放電に備
えて、UPSでは待機時、自動車用では走行時に満充電状
態を確保する様に充電が継続して行われる。このとき、
その設置(配置)場所や周辺機器によって、70℃付近
の高温環境下で充電が行われる。近年、前記用途の鉛蓄
電池に対する長寿命化の要望が年々高くなってきてい
る。そこで、サイクル用途ではあまり重要視されていな
かった、高温環境下で充電が継続して行われる鉛蓄電池
の高率放電性能の劣化抑制が不可欠となっている。そし
て、この鉛蓄電池の高率放電性能の劣化抑制には、電池
の放電容量および寿命を制限している、正極板の改善が
有効である。
【0003】従来、正極板の良好な高率放電性能を実現
するためには、正極活物質層の比表面積を増加する為の
改良や、正極板に用いられている活物質の多孔度を増加
させ、充放電反応に関与する電解液中の硫酸イオンを、
電極の内部までより多く供給する活物質構造の改良など
が検討されている。
【0004】正極活物質の反応面積を増加する方法とし
ては、化成時に使用する希硫酸の濃度を高くする方法が
用いられている。また、極板の活物質の多孔度を増加さ
せる手段として、一酸化鉛を主成分とする鉛粉を希硫酸
で混練して作製するペースト状活物質中の水分量を増加
させるなどの手法が用いられている。
【0005】しかしながら、これらの方法を用いて作製
した鉛蓄電池は、サイクル用途のような深い充放電サイ
クルがほとんど行われないにもかかわらず、高温環境下
では高率放電性能の劣化が大きく、寿命が短くなる欠点
がある。これは、高温環境下で充電が継続して行われる
と、極板内へ硫酸イオンが容易に供給され、正極活物質
における自己放電反応が負極に比べて大幅に促進される
ことに起因する。前記自己放電反応で生成した硫酸鉛
は、電気化学的に生成する硫酸鉛に比較して反応性(活
性度)が著しく低いため、これが活物質間の結合部に生
成すると、前記結合面積(導電経路)が減少し、抵抗が
増大するので、電池の高率放電性能を低下させる。さら
に充電受け入れ性能が低下するので、充電時に多量の酸
素ガスが発生し、自己放電により発生する酸素ガスと共
に活物質間の結合を破壊し、結果として活物質が脱落
し、寿命性能を低下させる。
【0006】一方、良好な高率放電性能を実現するため
に、格子体に鉛および鉛丹の粉末を水および希硫酸で練
合したペーストを塗着した正極板を用いる手段が提案さ
れている。これにより、前記正極活物質層の比表面積を
増加させたり、正極活物質の多孔度を増加させなくて
も、初期の高率放電性能を向上させることが出来る。し
かしながら、鉛丹は混練、注液、または化成時に希硫酸
と化学反応を起こし、粉末単独で二酸化鉛と硫酸鉛に変
化するため、化成後の活物質間の結合面積(導電経路)
を小さくし、前記高率放電性能の劣化抑制の課題を解決
することが出来なかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の
課題を解決し、高温環境下で充電が継続して行われる鉛
蓄電池の高率放電性能の劣化を抑制し、長寿命な鉛蓄電
池を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の鉛蓄電池の製造
方法は、以上の課題を解決する為、10〜20重量%の
鉛丹を含む鉛粉と、水と、希硫酸とを練合してペースト
を作製し、次いで、前記ペーストを4.3〜5.3g/ml
の充填密度で格子体に塗着することを特徴とする。
【0009】
【作用】本発明に係る正極板は、格子体へ充填する直前
のペーストの密度(以下、充填密度という)を4.3g/
ml以上5.3g/ml以下と従来より大きくしているので、
活物質間の結合面積が大きくなり、結合力が増大する。
その結果、高温環境下で自己放電反応が増大しても、活
物質間の結合面積(導電経路)が確保され、また、充電
時に多量の酸素ガスが発生しても、結合力が強固なため
活物質の脱落を防止でき、長寿命となる。
【0010】また、ペーストに鉛丹を10〜20重量%
という狭い範囲で含ませると、化成時の活物質の二酸化
鉛化が良好になると共に、活物質間の適度な多孔度と強
固な密着性が得られるので、前記充填密度の作用と相ま
って初期における良好な出力性能と長寿命化を実現する
ことが出来る。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態ついて説
明する。
【0012】活物質原料である鉛粉中に添加する鉛丹
は、バートン法により製造した鉛粉をさらに焼成した、
鉛丹化率約90%のものを用いた。この鉛丹10〜20
重量%と、公知の鉛および酸化鉛からなる鉛粉とを混
ぜ、混合粉末とする。なお、鉛丹の含有量が10%未満
で作製した正極板を用いた鉛蓄電池では、初期の高率放
電性能を向上させる効果が得られず、20%を超えて作
製した正極板を用いた鉛蓄電池では、初期の出力性能は
大きくなるが、ペーストの格子体への充填密度に十分な
配慮をしても、高温環境下での充電の継続における高率
放電性能の低下が著しい。このため、鉛丹の含有量とし
ては10〜20%が適切である。次に、この鉛丹を含有
する混合粉体を常法に従って短繊維や黒鉛等の添加剤と
ともに水と希硫酸とで練合することにより密度3.5〜
4.5g/mlの活物質ペーストを作製した。
【0013】次に、長尺のエキスパンド格子体をベルト
上で搬送し、ホッパーから前記ペーストを充填して極板
を作製した。その後、前記極板の表面をプレスして所定
の形状に切断し、熟成、乾燥工程を経て未化成の正極板
を作製した。
【0014】なお、前記格子体は、鉛−カルシウム−錫
系合金からなるシートを格子状に展開したものである。
また、ペーストの格子体への充填密度は、4.3〜5.
3g/mlとする。その理由は、ペーストの充填密度が4.
3g/ml未満になると、高率放電性能を維持する効果が得
られず、5.3g/mlを超えると高率放電性能の低下抑制
効果は大きくなるが、鉛丹の添加量に十分な配慮をして
も、鉛丹の初期高率放電性能を向上する効果が得られな
いためである。
【0015】以上のように、鉛丹の量を増やし、格子体
へのペースト充填密度を5.3g/ml以下とすることによ
り、高温環境下で充電が継続して行われる鉛蓄電池の初
期の高率放電性能を優れたものにでき、鉛丹の量を少な
くしてペーストの充填密度を4.3〜5.3g/mlとする
ことにより前記電池の高率放電性能の低下を抑制するこ
とができる。従って、高温環境下で継続的に充電される
鉛蓄電池では、鉛丹による初期の良好な高率放電性能を
低下させないために、ペースト中の鉛丹の含有量とペー
ストの充填密度を同時に規定することが必要である。
【0016】
【実施例】以下に本発明の実施例を記載する。
【0017】図1は、本発明の実施例における初期高率
放電容量を示すグラフ、図2は、本発明の実施例におけ
る高温フロート寿命性能を示すグラフであるまず、前記
したようにバートン法により製造した鉛粉をさらに焼成
した、鉛丹化率約90%のものを作製した。これに通常
の鉛粉を混ぜ、鉛丹の含有量として0,5,10,1
5,20,30,40%を含む7種の混合粉末を得た。
次に、この粉末に、公知の方法に従って短繊維や黒鉛等
の添加剤と共に硫酸と水とで練合して充填密度が3.
3,3.8,4.3,4.8,5.3,5.5g/mlとな
る合計42種類のペーストを作製した。このペーストの
各々を格子体に充填して、公知の方法で熟成、乾燥し、
各種の未化成の正極板を得た。
【0018】なお、ペーストの充填密度を3.3g/ml以
下にすると、ペーストが柔らかくなりすぎるので格子体
から脱落する。一方、ペーストの充填密度を5.5g/ml
より大きくすると、ペーストの充填が困難となり、生産
性が低下する。このため、ペーストの充填密度としては
3.8〜5.5g/mlとした。そして、ペーストの充填量
は、鉛丹の添加量や充填密度によらず、鉛のモル数が同
じとなるようにした。また、格子体は、Caが0.08
重量%、Snが1.20重量%のその他がPbの合金か
らなるエキスパンド格子体を用いた。
【0019】次に、上記各未化成正極板を用いて常法に
より公称電圧12V定格容量38Ah(20時間率放
電)の鉛蓄電池を各々作製した。
【0020】そして、これら電池について、放電試験を
行い、高率放電性能を評価した。試験条件としては、周
囲環境温度25℃中で放電電流114A(3CA)の高
率放電を行い、放電終止電圧8.4Vに達するまでの放
電時間から放電容量を測定した。これら電池の初期の出
力性能は、図1に示す通りである。
【0021】ここで、各電池の放電容量は、鉛丹の含有
量0%、充填密度が3.8g/mlの電池の放電容量を10
0とした時の相対値を示す。
【0022】図1から明らかなように、各電池の初期の
高率放電性能は、鉛丹の含有量が多くなるほど良好にな
る傾向がみられるが、鉛丹含有量が10%以上の場合、
ペーストの充填密度が4.3〜5.3g/mlとした範囲で
は、鉛丹含有量が0%、充填密度が3.8g/mlものと比
べて、初期の高率放電性能が優れており、同じ鉛丹添加
量を用いる条件のもとでも90%以内に保つことができ
た。ペーストの充填密度が5.3g/mlを越えると放電容
量は極端に低下し、充填密度が3.8g/mlものと比べて
70%以下となった。
【0023】これは、活物質間の結合面積を、鉛モル量
を同一とする中で大きくしすぎたために、活物質の反応
面積が減少し、また、多孔度も減少することにより電解
液中の硫酸イオンが、活物質の表面に充分供給されなく
なったことによる。
【0024】そして、前記各電池について、次のような
環境温度が65℃と非常に高くなるような条件の下でフ
ロート寿命試験を行い、寿命特性を評価した。
【0025】フロート寿命試験条件としては、周囲環境
温度65℃で、設定電圧2.275Vとした。そして、
1ヶ月毎に3CA放電時の放電容量を測定した。そし
て、この放電容量が公称容量の50%を下回った時点を
寿命とした。ここで、各電池の寿命性能は、鉛丹の含有
量0%、充填密度が3.8g/mlの電池の寿命を100と
した時の相対値を示す。
【0026】このフロート寿命試験の結果を図2に示
す。寿命試験後、電池の解体調査を実施した結果、劣化
原因はほとんどの電池が正極活物質の脱落であった。
【0027】寿命特性は図2から明らかなように、鉛丹
の含有量が多くなるほど短くなる傾向がみられるが、鉛
丹含有量が20%以下の場合、ペーストの充填密度を高
くし4.3〜5.3g/mlとした範囲では、鉛丹含有量0
%で充填密度が3.8g/mlのものと比べて、その寿命性
能が優れる。ペーストの充填密度が4.3g/ml 未満、
またはペーストの充填密度が5.3g/mlを越えると寿命
は極端に低下し、鉛丹含有量0%で充填密度が3.8g/
mlのものと比べて約80%以下となった。
【0028】ペーストの充填密度が3.8g/ml のもの
は、鉛丹の含有量が増加すると、寿命特性が悪くなった
が、これは活物質の多孔度が、鉛モル量を同一とする中
で大きくしすぎたことと、鉛丹添加により、正極活物質
の粒子間の結合断面積が減少したことによる。また、充
填密度が5.5g/mlのものは、寿命性能の低下抑制効果
が見られるが、初期の高率放電容量が少ないため早期に
寿命に至ることがわかる。
【0029】
【発明の効果】以上述べたように、本発明により作製し
た正極板を用いた鉛蓄電池は、高率放電性能が優れ、高
温環境下で充電が継続して行われてもその寿命性能をほ
とんど低下させることがないので、その工業的価値は大
きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における初期高率放電容量を示
すグラフである。
【図2】本発明の実施例における高温フロート寿命性能
を示すグラフである。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 10〜20重量%の鉛丹を含む鉛粉と、
    水と、希硫酸とを練合してペーストを作製し、次いで、
    前記ペーストを4.3〜5.3g/mlの充填密度で格子体
    に塗着することを特徴とする鉛蓄電池用正極板の製造方
    法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005216741A (ja) * 2004-01-30 2005-08-11 Furukawa Battery Co Ltd:The 密閉型鉛蓄電池用正極板および前記正極板を用いた密閉型鉛蓄電池
JP2018029012A (ja) * 2016-08-18 2018-02-22 古河電池株式会社 鉛蓄電池用正極板の製造方法
JP2019186028A (ja) * 2018-04-10 2019-10-24 日立化成株式会社 格子体及び鉛蓄電池

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2005216741A (ja) * 2004-01-30 2005-08-11 Furukawa Battery Co Ltd:The 密閉型鉛蓄電池用正極板および前記正極板を用いた密閉型鉛蓄電池
JP2018029012A (ja) * 2016-08-18 2018-02-22 古河電池株式会社 鉛蓄電池用正極板の製造方法
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