JP2002195759A - 複層熱処理炉、熱処理装置、及び熱処理方法 - Google Patents
複層熱処理炉、熱処理装置、及び熱処理方法Info
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Abstract
を上げずに、金属製品の各部分に異なって求められる、
好ましい機械的性質を与え得る熱処理装置を提供するこ
と。 【解決手段】 複層熱処理炉1を使用し、一の層を、粒
状体からなり、熱効率及び熱分布の均一性に優れた流動
層2とし、流動層2の上部のフリーボード部分には、他
の層として、ガスからなる雰囲気層3を形成して、それ
ぞれの温度を異なるものとし、好ましい機械的性質に応
じて、被熱処理体たるワークピースの一の部分を所定の
温度の流動層2に浸漬し、他の部分を所定の温度の雰囲
気層3に露出して熱処理することが出来る熱処理装置の
提供による。
Description
用いる熱処理炉、熱処理装置、及び、熱処理方法に関す
る。詳細には、金属製品、例えば、アルミニウム合金か
らなる自動車用足回り部品の、機械的強度向上のために
行う熱処理に用いられ、流動層と雰囲気層の複層からな
る熱処理炉と、その熱処理炉を組み込んだ熱処理装置、
及び、その熱処理装置を用いた熱処理方法に関する。
って性質が変わる変態(広義の意味)を起こすことが知
られ、加熱と冷却を組み合わせた処理によって材料の強
度を向上させる等の熱処理が従来から行われている。特
に、複数の金属からなる合金の場合には、温度によって
溶解度が異なるので、熱処理によって一方の金属に溶け
込む他方の金属の量を異ならしめることによって、大き
く性質を変えることが出来る。
かからず利用し易いアルミニウム合金(以下、Al合金
とも記す)においては、航空機や自動車向け等の軽量化
が望まれる用途によく用いられているが、このアルミニ
ウム合金は、加熱、冷却を施すことによって、引っ張り
強さ、伸び等の機械的特性を変えることが可能である。
これは、アルミニウム合金が、アルミニウムに、銅、マ
グネシウム、珪素、亜鉛等を加えた合金であって、熱処
理によって、マトリックス中にこれらの元素を固溶さ
せ、水冷後、時効硬化をさせることにより実現される。
用のアルミニウム合金の1つに、銅を含み、より強度が
高いAl−Cu系合金があり、車両用足回り部品として
多く使用されているが、このAl−Cu系合金におい
て、銅の固溶率を変えることによって機械的性質を異な
るものとすることが可能である。
温で小さく、高温でα相領域になることが知られてい
る。従って、高温に加熱するとアルミニウム中に銅が固
溶したα相が形成される。そして、この後に、急な水焼
き入れを行い冷却したときと、徐々に冷却したときで
は、付される性質が相当異なってくる。これは硬さを決
定するアルミニウムと銅の化合物を析出したθ相の現れ
方に差が生じるからである。急冷したときはθ相を析出
することなく、高温時と同じ量の銅を固溶したまま過飽
和固溶体となる。この処理が溶体化処理である。
り常温で長く放置すると容易にθ相が現れ、安定した状
態になる。これを時効硬化といい、時効硬化を起こす処
理が時効処理である。通常は、温度を上げて時効硬化を
起こす人口時効処理(以下、単に時効処理ともいう)を
行う。人口時効処理を行うのは、処理時間短縮のためで
あり、且つ、一般に特定の高い温度で時効処理した方
が、常温で長く放置する自然時効処理よりも引っ張り強
さ等がより向上するからである。
品の機械的強度を向上するのに効果的な熱処理方法であ
る。しかしながら、金属製品によっては、その部分によ
って望まれる機械的性質が異なることがあって、金属の
一部だけをより硬化させたり、より延性を持たせること
が必要であったりすることがあるが、こういった要望に
応えていくと、より熱処理工程が複雑になり製造コスト
増加を招くので、通常は、その金属製品に、要求される
機械的性質を損なう部分が生じない範囲で、熱処理温度
を設定していた。
ル20では、アウターリム21とスポーク22はより強
度が高いことを重視するが、インナーリム23は強度と
ともに延性が重視される。このとき、従来の雰囲気炉を
用いた熱処理では、部分的に熱処理条件を変えることは
困難であるので、通常、強度向上を主目的とし、且つ、
延性が一定以上に保たれるような条件下で、アルミニウ
ムホイール20全体を熱処理していることが多い。従っ
て、金属製品の部分部分によって、熱処理条件を変える
ことが出来、それによって、金属製品の各部分に異なっ
た機械的性質を付与することが可能な熱処理装置及び熱
処理方法が求められていた。
従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とす
るところは、従来方式の熱処理装置を改良し、設備コス
トを上げずに、金属製品の各部分に異なって求められ
る、好ましい機械的性質を与え得る熱処理炉と、その熱
処理炉を含む熱処理装置、及び、その熱処理装置を用い
た熱処理方法を提供することにある。より望ましい機械
的性質を有する金属製品は、薄肉化が可能となり、製造
コストが低減される。特に、軽量化を目的として採用さ
れることが多いアルミニウム合金を用いた製品において
は、薄肉化によってより軽量化が図られるので、需要の
増大を導くことにも貢献する。
めに、金属の熱処理方法及び熱処理装置について、研究
を積み重ねた結果、熱処理装置を構成する熱処理炉を複
層構造とし、一の層を、粒状体からなり、熱効率、及
び、熱分布の均一性に優れた流動層とし、流動層の上部
のフリーボード部分にガスからなる雰囲気層を他の層と
して形成して、それぞれの温度を異なるものとし、望ま
れる機械的性質に応じて、被熱処理体たるワークピース
の一の部分を所定の温度の流動層に浸漬し、他の部分を
所定の温度の雰囲気層に露出して熱処理することによっ
て、上記の目的を達成出来ることを見出した。
ば、金属からなるワークピースの性質を改善する熱処理
に用いる熱処理炉であって、容器内に粒状物が充填さ
れ、その粒状物が容器内に吹き込まれる熱風により流動
化されて形成される流動層と、流動層の上部に備わり、
空気を熱媒体とした雰囲気層とを有し、ワークピース
が、一の部分を流動層内に浸漬し、他の部分を雰囲気層
中に露出して熱処理されることを特徴とする複層熱処理
炉が提供される。
ピースを複層熱処理炉内で移動して熱処理する移動手段
を有し、流動層内に浸漬するワークピースの一の部分と
雰囲気層中に露出するワークピースの他の部分との比率
が、0:100%〜100:0%の間で可変として熱処
理されることが好ましい。又、複数のワークピースを1
基の複層熱処理炉で同時に熱処理することも可能であ
る。
を吹き込む熱風管は、ヘッダー管及び分散管からなり、
少なくとも分散管が、流動層内に配設されることが好ま
しい。又、雰囲気層温度低減手段を備えることが好まし
い。更には、流動層界面自動調節機構、あるいは又、温
度自動調節機構をも備えることも好ましい。本発明の複
層熱処理炉は、アルミニウム合金製車両足回り部品を好
ましく熱処理出来る。
理炉を、時効処理炉として用いた熱処理装置であって、
溶体化処理炉と時効処理炉の他に、耐熱集塵機、熱交換
器を備え、溶体化処理炉から出る排ガスを耐熱集塵機に
より除塵した後、熱交換器によって排ガスの持つ廃熱を
回収し、時効処理炉の熱源として再利用することを特徴
とする熱処理装置が提供される。
ークピースを溶体化処理し、次いで時効処理を行い、ワ
ークピースの性質を改善する熱処理方法であって、容器
内に粒状物が充填され、その粒状物が容器内に吹き込ま
れる熱風により流動化されて形成される流動層と、流動
層の上部に備わり、空気を熱媒体とした雰囲気層と、を
有する複層熱処理炉を用いて、ワークピースの一の部分
を流動層内に浸漬し、他の部分を雰囲気層中に露出して
熱処理し、一の部分と他の部分とで、異なる熱処理効果
を得ることを特徴とする熱処理方法が提供される。少な
くとも時効処理に用い、ワークピースの部分によって時
効硬化を調節することが可能である。
おいては、流動層の温度を時効温度に調節することが好
ましく、又、雰囲気層の温度が狙った時効温度になるよ
うに流動層の温度を制御することも好ましい。この時効
温度は、ワークピースの材料がアルミニウム合金であれ
ば、概ね150〜210℃であることが好ましい。
いて、詳細に説明する。但し、本発明が以下の実施の形
態に限定されるものでないことはいうまでもない。
ワークピースの性質を改善する熱処理に用いられる。例
えば、Al合金において、機械的性質をより好ましいも
のとするために施される、溶体化処理及び時効処理とし
ては、一般に、空気を熱媒体としたトンネル炉などの雰
囲気炉が多く用いられているが、昇温速度が遅い他、温
度の振れが約±5℃と大きく、そのため、より高い温度
での溶体化処理が出来ない等の問題があり、又、従来の
トンネル炉などの雰囲気炉では、処理装置が大型となり
装置初期コストが高価となるので、最近になり、Al合
金の溶体化処理及び時効処理として、流動層を備えた熱
処理炉が用いられ始めている。
上部に雰囲気層を形成した複層を有する熱処理炉に関す
るものであり、更に、その複層熱処理炉を、時効処理炉
として用いた熱処理装置と、その熱処理装置を用いた熱
処理方法に関する発明である。
填され、その粒状物が容器内に吹き込まれる熱風により
流動化されて形成される流動層と、流動層の上部に備わ
り、ガスを熱媒体とした雰囲気層とからなる複層の熱処
理炉であって、熱処理されるワークピースが、一の部分
を流動層内に浸漬し、他の部分を雰囲気層中に露出して
熱処理される点に特徴を有する。流動層は、珪素酸化物
等の粒状物からなり、雰囲気層は、空気を代表とするガ
スからなるので、例えば、流動層のみを加熱する方法を
とった場合に、熱処理炉の流動層と雰囲気層の間に、ガ
スの熱伝導率により異なる温度差を生じさせることが可
能である。このとき、ワークピースの各部分によって接
する層を変えて熱処理すれば、熱処理温度が変わること
になり、ワークピースの各部分毎に異なる機械的性質を
与えることが可能となる。
に基づいて更に詳細に説明する。図1は、本発明に係る
複層熱処理炉の一実施例を示す断面図である。本発明の
複層熱処理炉1においては、ヘッダー管5及び分散管4
からなる熱風管を通して、熱風を、直接流動層2内に吹
き込む形式の加熱方法を用いることが好ましい。この加
熱方法を用いた流動層2は、容器内に充填された粉粒体
などの粒状物が容器内に吹き込まれた熱風により加熱さ
れ、且つ、流動されることにより均一に混合されて形成
されることになり、流動層2内部の温度が略均一になる
とともに伝熱効率に優れる。このとき流動層2を囲む容
器は、無駄な放熱を防ぐために、断熱性に優れた材料を
用いることが好ましい。
送られる空気をバーナ等で加熱する熱風発生装置(図示
しない)を用いて700〜800℃等の所定温度まで暖
めた熱風が、ヘッダー5を経て、分散管4から、内部に
粒状物が充填・収容された流動層2内に吹き込まれるこ
とによって行われる。流動層2内には、熱風管が配設さ
れている。ここで、熱風管は、圧力調整用のヘッダー5
と、圧力調整用のヘッダー5から分岐する複数の分散管
4から構成されている。又、分散管4には、多数の吹出
口が形成されており、これらの吹出口は、例えば、それ
それ下向きに開口している。熱風は流動層2内部に吹き
込まれ、粒状物を流動化させるとともに粒状物を加熱す
る。このようにして、流動層2内は、例えば、Al合金
の溶体化処理の場合には540〜550℃に加熱され、
ワークピースは迅速に加熱される。
れるガス層を雰囲気層3として用いる。雰囲気層3に直
接熱風を吹き込み、流動層2とは独立して加熱しても構
わないが、上記したように流動層2を断熱性の高い容器
で構成しながら、雰囲気層2側を開放するか、若しく
は、断熱性の低い材料の壁で構成することによって、流
動層2の熱が雰囲気層3側に逃げ易くすれば、必然的に
雰囲気層3が加熱され昇温する。熱源使用効率の点か
ら、雰囲気層3の昇温は、このような流動層2から熱が
伝搬して加熱される間接加熱方法により行われることが
好ましい。
と、雰囲気層3の上部を一部大気開放した上壁を有する
複層熱処理炉1においては、雰囲気層3と熱風で直接加
熱される流動層2とは、雰囲気層3を構成するガスの種
類によって決定される一定の温度差を形成する。例え
ば、この複層熱処理炉1の雰囲気層3を空気で構成すれ
ば、流動層2で時効温度の190℃としたときに、雰囲
気層3は概ね130℃前後となり、約60℃低い温度で
安定する。60℃前後の温度差で、充分に、熱処理効果
を変えられるので、雰囲気層3を構成するガスは、最も
安価な空気とすることが好ましい。
ガスの種類を変更して、温度差を変更することも好まし
い。又、雰囲気層温度低減手段を備えることも好まし
い。雰囲気層温度低減手段とは、例えば、冷風を吹き込
んだり、複層熱処理炉1の上面を所定の時間だけ、ある
いは、所定の面積だけ、開放又は密閉する等の手段であ
る。雰囲気層3を構成するガスの種類を変更することと
組み合わせれば、流動層2と雰囲気層3との温度差を、
上記したガスの種類によって決定される温度差に加え
て、種々に変更することが可能となる。
囲気層3からなる複層熱処理炉1に、被熱処理体たるワ
ークピースの一の部分を流動層2内に浸漬し、他の部分
を雰囲気層3中に露出して、熱処理、例えば、時効処理
を施せば、ワークピースの各部分によって、異なる温度
条件下で処理されることが可能になり、ワークピースの
各部分に望まれる異なった機械的性質を付与し得る。流
動層内で処理された部分は、昇温が速く、又、温度も高
いため、同一加熱時間でも最も時効硬化が進み、引っ張
り強さは最大となる。雰囲気層中で処理された部分は、
昇温が遅く、又、温度も低いため、同一加熱時間でも時
効硬化が進まず、亜時効状態となるため伸びが大きくな
る。
ホイール20では、アウターリム21とスポーク22は
より強度が高いことを重視するが、インナーリム23は
強度とともに延性が重視される。従って、例えば、図3
に示すように、アウターリムとスポークを流動層2内に
浸漬し、インナーリムを雰囲気層3中に露出するか、若
しくは、図4に示すように、インナーリムを流動層2内
に浸漬し、アウターリムとスポークを雰囲気層3中に露
出して熱処理すれば、それぞれの要求に応じた機械的性
質を付与可能となる。図3に示す方法では、流動層2の
温度及び時間を、最高時効となるように調整すればイン
ナーリムは亜時効となる。又、図4に示す方法では、流
動層2の温度及び時間を、過時効となるように調整すれ
ば、インナーリムは過時効となって延性が期待出来、雰
囲気層3中のアウターリムとスポークは最高時効に近い
条件となる。
ピースを移動可能とする移動手段を備えれば、流動層2
内に浸漬するワークピースの一の部分と雰囲気層3中に
露出するワークピースの他の部分との比率が、0:10
0%〜100:0%の間で可変となり、熱処理条件を更
に細かく調節可能となるので好ましい。例えば、移動手
段として、ワークピースを載置して上下する昇降機を備
えれば、ワークピースの一の部分が、所定の時間だけ、
より高温である流動層2内で熱処理され、又、所定の時
間だけ、より低温である雰囲気層3内で熱処理されると
いったことが可能となり、例えば、引っ張り強さと伸び
に関わる時効硬化をより細かく調節することが出来得
る。
た熱処理においては、温度の異なる流動層2と雰囲気層
3を備えているので、複数のワークピースを、1基の熱
処理炉で同時に熱処理することが可能となる。例えば、
異なる溶体化処理温度を有する複数のワークピースを、
それぞれのワークピースに適する温度に調節された流動
層2と雰囲気層3を用いて、一のワークピースを流動層
2内に浸漬し、他のワークピースを雰囲気層3中に露出
して溶体化処理することが出来る。この同時熱処理によ
って、スループットの向上が図られ、金属製品の製造コ
ストがより低減され得る。
手段を有することが好ましい。流動層界面自動調節手段
とは、必要に応じて、あるいは、意に反する界面変動が
生じたときに、流動層2の界面を自動で好ましい界面に
調節する手段をいう。流動層界面自動調節手段として
は、例えば、複層熱処理炉1の炉体が概ね直方体であっ
て水平断面が概ね四角形のときに、四角形の何れかの隅
に1基の流動層界面計測器(図示しない)を備え、計測
界面を基に、炉体上部に備えた粒状物供給機(図示しな
い)によって粒状物を補給する機構を備えることが好ま
しい。更に詳細には、流動層界面計測器とは、例えば、
透明な耐熱ガラスを通して光電管にて流動層を構成する
粒状体の界面を計る機器である。
えれば、1基の複層熱処理炉1において、必要に応じて
任意に、流動層2と雰囲気層3の容積を変更可能となる
ので、様々な大きさのワークピースに対応し易い。又、
単独で、あるいは、上記した複層熱処理炉1内でワーク
ピースを移動可能とする移動手段と併せれば尚更に、ワ
ークピースの各部分に応じた熱処理条件を調節し易くな
る。更には、異常な界面変動が防止出来るので、望まれ
る熱処理が施されず、金属製品の品質が劣化したり歩留
まりが低下するという問題も起こり難い。
手段を有することが好ましい。流動層温度自動調節手段
として、例えば、複層熱処理炉1の炉体が概ね直方体で
あって水平断面が概ね四角形のときに、四角形の四隅に
各々温度計測器(図示しない)を備え、計測温度を基
に、熱風管に繋がる配管に備えたガス量調節弁等によっ
て流動層2へ吹き込む熱風温度を制御する機構を用いる
ことが出来る。このような流動層温度自動調節手段を備
えれば、省マンパワーとなり、又、異常な温度変動が生
じ難くなり、熱処理によって期待される効果を発揮しな
いといった問題の発生を防止出来る。
ば、例えば、時効処理において、流動層2の設定温度を
時効温度とする制御を、より容易に行うことが出来る。
流動層2の設定温度を170℃の時効温度とした場合に
は、空気を熱媒体として用いる雰囲気層3では、流動層
2より温度が低くなる。
3の温度を、流動層2の設定温度によって調節すること
も可能である。この制御は、予め、承知の流動層2と雰
囲気層3との温度差を考慮して流動層2の設定温度を決
めてもよいが、雰囲気層3にも温度計測器を備えて、そ
の計測温度を基に、流動層2の設定温度を調節するカス
ケード制御を行うことがより好ましい。
製車両足回り部品、例えばホイールを好適に熱処理する
ことが出来るが、ワークピースの材料がアルミニウム合
金の場合には、時効温度は概ね150〜210℃であ
る。
処理装置(図示しない)について説明する。本発明の熱
処理装置は、複層熱処理炉を時効処理炉として用いて構
築される。この熱処理装置の特徴は、溶体化処理炉で用
いた熱風の熱エネルギーを下流側の時効処理炉において
再利用して、熱エネルギーの有効利用を図った点にあ
る。熱処理装置は、溶体化処理炉、時効処理炉の他に、
熱風発生装置と、溶体化処理炉と時効処理炉を結ぶ配管
系内に耐熱集塵機、及び、耐熱性の誘引・押込ファンを
備える。熱風発生装置は、自身に送風ファンを備え、送
風ファンから送られる空気と燃料とを熱風炉で混合燃焼
し、高温の熱風を発生する。熱風は、溶体化処理炉に導
入され、溶体化処理に熱を使用して、少し温度を下げて
溶体化処理炉から排出され、しかし高温のまま耐熱集塵
機に通され集塵される。集塵された熱風(溶体化処理炉
の排ガス)は、次いで、耐熱性の誘引・押込ファンを介
して時効処理炉に導入され、時効処理炉の熱源として再
利用される。その後、熱風(時効処理炉の排ガス)は、
必要に応じ集塵された後、誘引ファンを介して大気に放
出される。尚、熱交換器を、溶体化処理炉と時効処理炉
との間の耐熱集塵機の上流側に設置して、溶体化処理炉
の排ガスに対して熱交換を行い、時効処理炉に送る熱風
の熱源とすることも、温度調節の容易さ、集塵機の能
力、長期の運転安定性を考慮すると望ましいものであ
る。
的に説明する。 (実施例)複層熱処理炉を用いて、Al合金の溶体化処
理を実施した後、時効処理を行った。熱処理に用いた複
層熱処理炉は、一辺が1500mm×1500mmの角
タンク状で直胴部高さが750mm、下方部が台形状の
容器から構成されている。流動層の粒状物としては、平
均粒径が50〜500μmの砂を用いた。
鋳造されたアルミホイール(車両用:14kg)を用
い、テストピースの採取位置は、アウターリム(フラン
ジ)、インナーリム(フランジ)及びスポークの3ヶ所
とした。上記アルミホイールの組成は、Siを7.0質
量%、Mgを0.34質量%含有し、残部がAlであっ
た。
熱処理スケジュールを図5に示す。溶体化処理は、アル
ミホイールを流動層内に全て浸漬し、溶体化処理温度を
550℃、溶体化処理時間51を60分間継続とした。
時効処理は、図3に示すようにアルミホイールを、アウ
ターリムとスポークが流動層に浸漬されインナーリムが
雰囲気層中に露出するようにして、時効処理温度を19
0℃とし、時効処理時間52を60分間継続とした。
尚、上記した溶体化処理温度、時効処理温度はともに流
動層内の温度である。
イールからテストピースを採取し(n=4)、それぞれ
引張試験(引張強さ、0.2%耐力、伸び)、衝撃試験
(衝撃値)及び硬さ試験(硬度)を行った。得られた結
果を図7、図9に示す。尚、衝撃試験としては、JIS
で規定されたシャルピー試験法を用いて衝撃値を測定し
た。又、硬さ試験としては、JIS Z2245に規定
された試験法を用い、ロックウェル硬さを測定した。引
張強さ、0.2%耐力、及び、伸びという機械的特性
は、JIS Z2201で規定されている試験法に従っ
て求めた。
ールを流動層内に全て浸漬した以外は、実施例と同一条
件下で熱処理を行った。上記のようにして熱処理された
アルミホイールからテストピースを採取し(n=4)、
それぞれ引張試験(引張強さ、0.2%耐力、伸び)、
衝撃試験(衝撃値)及び硬さ試験(硬度)を行った。得
られた結果を図6、図8に示す。
験、衝撃試験及び硬さ試験の結果から、実施例により得
られたアルミホイールは、比較例により得られたアルミ
ホイールと比べて、インナーリムの0.2%耐力が低下
し、伸びが大きく向上したことが確認された。又、衝撃
値が大きくなり、硬度は低下した。アウターリム及びス
ポークについては、全ての試験項目について大きな変化
は見られなかった。本試験結果より、それぞれ温度が異
なる流動層と雰囲気層を有する複層熱処理炉を用いれ
ば、1基の熱処理炉を用いた1回の熱処理であっても、
同一のワークピースの各部分によって異なる望ましい機
械的性質を与え得ることは明らかである。
ば、金属製品の各部分に好ましい機械的性質を与え得る
熱処理炉と、その熱処理炉を含む熱処理装置、及び、そ
の熱処理装置を用いた熱処理方法が提供される。そし
て、薄肉化が可能となり、より製造コストが低減された
金属製品の生産が可能となる。特に、軽量化材料たるア
ルミニウム合金を用いた製品においては、コストを抑え
ながら薄肉化によってより軽量化が図られるので、需要
の増大を導くことにも貢献する。
断面図である。
ルミニウムホイールの断面図である。
一実施例を示す説明図である。
他の一実施例を示す説明図である。
ある。
ある。
グラフである。
グラフである。
散管、5…ヘッダー管、20…アルミニウムホイール
(ワークピース)、21…アウターリム、22…スポー
ク、23…インナーリム、51…溶体化処理(有効)時
間、52…時効処理(有効)時間。
Claims (13)
- 【請求項1】 金属からなるワークピースの性質を改善
する熱処理に用いられる熱処理炉であって、 容器内に粒状物が充填され、その粒状物が容器内に吹き
込まれる熱風により流動化されて形成される流動層と、 前記流動層の上部に備わり、ガスを熱媒体とした雰囲気
層と、を有し、 前記ワークピースが、一の部分を前記流動層内に浸漬
し、他の部分を前記雰囲気層中に露出して熱処理される
ことを特徴とする複層熱処理炉。 - 【請求項2】 請求項1に記載の複層熱処理炉であっ
て、 前記ワークピースを前記複層熱処理炉内で移動して熱処
理する移動手段を有し、 流動層内に浸漬する前記ワークピースの一の部分と雰囲
気層中に露出する前記ワークピースの他の部分との比率
が、0:100%〜100:0%の間で可変である複層
熱処理炉。 - 【請求項3】 複数のワークピースが、1基の熱処理炉
で同時に熱処理される請求項1又は2に記載の複層熱処
理炉。 - 【請求項4】 前記熱風を吹き込む熱風管が、ヘッダー
管及び分散管からなり、少なくとも前記分散管が、前記
流動層内に配設される請求項1〜3の何れか一項に記載
の複層熱処理炉。 - 【請求項5】 雰囲気層温度低減手段を備える請求項1
〜4の何れか一項に記載の複層熱処理炉。 - 【請求項6】 流動層界面自動調節手段を備える請求項
1〜5の何れか一項に記載の複層熱処理炉。 - 【請求項7】 流動層温度自動調節手段を備える請求項
1〜6の何れか一項に記載の複層熱処理炉。 - 【請求項8】 前記ワークピースが、アルミニウム合金
製車両足回り部品である請求項1〜7の何れか一項に記
載の複層熱処理炉。 - 【請求項9】 請求項1〜8の何れか一項に記載の複層
熱処理炉を、時効処理炉として用いた熱処理装置であっ
て、 溶体化処理炉と前記時効処理炉の他に、耐熱集塵機、熱
交換器を備え、 前記溶体化処理炉から出る排ガスを前記耐熱集塵機によ
り除塵した後、前記熱交換器によって前記排ガスの持つ
廃熱を回収し、前記時効処理炉の熱源として再利用する
ことを特徴とする熱処理装置。 - 【請求項10】 金属からなるワークピースを溶体化処
理し、次いで時効処理を行い、前記ワークピースの性質
を改善する熱処理方法であって、 容器内に粒状物が充填され、その粒状物が容器内に吹き
込まれる熱風により流動化されて形成される流動層と、
前記流動層の上部に備わり、空気を熱媒体とした雰囲気
層と、を有する複層熱処理炉を、少なくとも前記時効処
理に用い、 前記ワークピースの一の部分を前記流動層内に浸漬し、
他の部分を前記雰囲気層中に露出して熱処理を行うこと
によって、ワークピースの前記一の部分と他の部分とで
異なる熱処理効果を得ることを特徴とする熱処理方法。 - 【請求項11】 前記複層熱処理炉を時効処理に用い、 前記流動層の温度を時効温度とする請求項10に記載の
熱処理方法。 - 【請求項12】 前記複層熱処理炉を時効処理に用い、 前記雰囲気層の温度が時効温度になるように前記流動層
の温度を制御する請求項10に記載の熱処理方法。 - 【請求項13】 ワークピースの材料がアルミニウム合
金であって、 前記時効温度が、略150〜210℃である請求項11
又は12に記載の熱処理方法。
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