JP2002194433A - 被膜特性および磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
被膜特性および磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法Info
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- JP2002194433A JP2002194433A JP2000396103A JP2000396103A JP2002194433A JP 2002194433 A JP2002194433 A JP 2002194433A JP 2000396103 A JP2000396103 A JP 2000396103A JP 2000396103 A JP2000396103 A JP 2000396103A JP 2002194433 A JP2002194433 A JP 2002194433A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 Crを含有させた場合に発生する点状欠陥をほ
ぼ完全に抑制して密着性と外観の優れたフォルステライ
ト質被膜の生成を可能にし、さらにこの技術をBiを含有
する電磁鋼板に適用して優れた磁気特性と被膜特性を有
する方向性電磁鋼板を提供する。 【解決手段】 方向性電磁鋼板用鋼スラブの組成をCr:
0.01〜5.00%を含有するものとし、かつ、一連の方向性
電磁鋼板の製造工程中一次再結晶焼鈍に当たり均熱後80
0℃から200℃に冷却する際の冷却速度を30℃/s以下とす
る。
ぼ完全に抑制して密着性と外観の優れたフォルステライ
ト質被膜の生成を可能にし、さらにこの技術をBiを含有
する電磁鋼板に適用して優れた磁気特性と被膜特性を有
する方向性電磁鋼板を提供する。 【解決手段】 方向性電磁鋼板用鋼スラブの組成をCr:
0.01〜5.00%を含有するものとし、かつ、一連の方向性
電磁鋼板の製造工程中一次再結晶焼鈍に当たり均熱後80
0℃から200℃に冷却する際の冷却速度を30℃/s以下とす
る。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、変圧器やモータ
等の鉄心などに用いられる方向性電磁鋼板の製造方法に
関する。
等の鉄心などに用いられる方向性電磁鋼板の製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】方向性電磁鋼板は、その結晶方位がGoss
方位と呼ばれる{110}〈001〉方位に高度に集積した材料
であり、変圧器やモータ等の鉄心として広く用いられ
る。かかる方向性電磁鋼板は、一般に、インイビターと
呼ばれるMnS、MnSe、AlN、BN等を含む鋼スラブを加熱後
熱間圧延し、得られた熱延板に必要に応じて熱延板焼鈍
を施した上で、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間
圧延によって最終板厚とし、次いで脱炭焼鈍を兼ねる一
次再結晶焼鈍(以下、単に一次再結晶焼鈍という)を行
った後、鋼板に焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上げ焼
鈍を行うことによって製造される。
方位と呼ばれる{110}〈001〉方位に高度に集積した材料
であり、変圧器やモータ等の鉄心として広く用いられ
る。かかる方向性電磁鋼板は、一般に、インイビターと
呼ばれるMnS、MnSe、AlN、BN等を含む鋼スラブを加熱後
熱間圧延し、得られた熱延板に必要に応じて熱延板焼鈍
を施した上で、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間
圧延によって最終板厚とし、次いで脱炭焼鈍を兼ねる一
次再結晶焼鈍(以下、単に一次再結晶焼鈍という)を行
った後、鋼板に焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上げ焼
鈍を行うことによって製造される。
【0003】このようにして製造された方向性電磁鋼板
の表面には、通常、フォルステライト(Mg2SiO4)を主
体とする絶縁被膜(以下、単にフォルステライト質被膜
という)が形成されている。このフォルステライト質被
膜は、鋼板表面を電気的に絶縁するとともに、その低熱
膨張性に起因する引張応力を鋼板に付与することにより
鉄損、さらには磁気歪も効果的に改善する。
の表面には、通常、フォルステライト(Mg2SiO4)を主
体とする絶縁被膜(以下、単にフォルステライト質被膜
という)が形成されている。このフォルステライト質被
膜は、鋼板表面を電気的に絶縁するとともに、その低熱
膨張性に起因する引張応力を鋼板に付与することにより
鉄損、さらには磁気歪も効果的に改善する。
【0004】このフォルステライト質被膜の上には、さ
らにガラス質の絶縁コーティングが施されるが、この絶
縁コーティングは非常に薄く、かつ透明であるため、フ
ォルステライト質被膜が製品の最終的な外観を決定す
る。この外観の良否は製品価値を大きく左右するので、
フォルステライト質被膜の特性が製品の歩留まりに及ぼ
す影響は極めて大きい。
らにガラス質の絶縁コーティングが施されるが、この絶
縁コーティングは非常に薄く、かつ透明であるため、フ
ォルステライト質被膜が製品の最終的な外観を決定す
る。この外観の良否は製品価値を大きく左右するので、
フォルステライト質被膜の特性が製品の歩留まりに及ぼ
す影響は極めて大きい。
【0005】したがって、方向性電磁鋼板には、それを
変圧器やモータに組み立てるときの剪断、打ち抜きおよ
び曲げ加工に当たって表面のフォルステライト質被膜が
剥離しないよう密着性に優れることとともに外観が均一
で欠陥のないことが要求される。また、方向性電磁鋼板
は、積層して用いられるため、高い占積率を有すること
が要求され、そのため、フォルステライト質被膜は表面
が平滑であることが必要とされる。このような理由によ
り、均一で密着性の良いフォルステライト質被膜を形成
することは、優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板を
得る上で非常に重要である。
変圧器やモータに組み立てるときの剪断、打ち抜きおよ
び曲げ加工に当たって表面のフォルステライト質被膜が
剥離しないよう密着性に優れることとともに外観が均一
で欠陥のないことが要求される。また、方向性電磁鋼板
は、積層して用いられるため、高い占積率を有すること
が要求され、そのため、フォルステライト質被膜は表面
が平滑であることが必要とされる。このような理由によ
り、均一で密着性の良いフォルステライト質被膜を形成
することは、優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板を
得る上で非常に重要である。
【0006】このフォルステライト質被膜は、上記一連
の方向性電磁鋼板の製造工程脱炭焼鈍を兼ねる一次再結
晶焼鈍において鋼中Siを一部酸化させてSiO2を含むサブ
スケールを鋼板表面に生成させ、このサブスケールを最
終焼鈍の過程で焼鈍分離剤として用いられるMgOと次式
の反応、 2MgO + SiO2→Mg2SiO4 により形成される。
の方向性電磁鋼板の製造工程脱炭焼鈍を兼ねる一次再結
晶焼鈍において鋼中Siを一部酸化させてSiO2を含むサブ
スケールを鋼板表面に生成させ、このサブスケールを最
終焼鈍の過程で焼鈍分離剤として用いられるMgOと次式
の反応、 2MgO + SiO2→Mg2SiO4 により形成される。
【0007】上記のとおり、この反応は、一次再結晶焼
鈍時に鋼板表面に生成したSiO2を含有するサブスケール
を一方の原料として鋼板上に生成されるものであるか
ら、サブスケールの種類、量、分布等は、フォルステラ
イト質被膜の生成過程においてその核生成や粒成長挙動
に関与するだけでなく、結晶粒の粒界や粒そのものの強
度にも影響し、ひいては仕上焼鈍後の被膜の品質に多大
な影響を及ぼす。特にインヒビター成分としてAlNを含
む方向性電磁鋼板においては、このサブスケールの性状
が仕上焼鈍中のNの挙動(鋼板から焼鈍雰囲気への脱窒
あるいは焼鈍雰囲気から鋼板への浸窒)に大きな影響を
及ぼし、その結果、製品の磁気特性にも大きな影響を与
える。
鈍時に鋼板表面に生成したSiO2を含有するサブスケール
を一方の原料として鋼板上に生成されるものであるか
ら、サブスケールの種類、量、分布等は、フォルステラ
イト質被膜の生成過程においてその核生成や粒成長挙動
に関与するだけでなく、結晶粒の粒界や粒そのものの強
度にも影響し、ひいては仕上焼鈍後の被膜の品質に多大
な影響を及ぼす。特にインヒビター成分としてAlNを含
む方向性電磁鋼板においては、このサブスケールの性状
が仕上焼鈍中のNの挙動(鋼板から焼鈍雰囲気への脱窒
あるいは焼鈍雰囲気から鋼板への浸窒)に大きな影響を
及ぼし、その結果、製品の磁気特性にも大きな影響を与
える。
【0008】このように再結晶焼鈍において鋼板表面に
形成されるサブスケールの物性を制御することは、優れ
たフォルステライト質被膜を均一に形成させる上で、ま
た二次再結晶粒を適切に発現させる上で必須項目であ
り、多くの提案がなされている。たとえば、例えば特開
昭59-185725公報においては、再結晶焼鈍の鋼板の酸素
含有量を制御する方法が、特公平3-57167号公報におい
ては、再結晶焼鈍後の冷却を750℃以下の温度域では酸
化度を0.008以下として行う方法が、特開平6-336616号
公報においては均熱過程における水素分圧に対する水蒸
気分圧の比を0.70未満に、かつ昇温過程における水素分
圧に対する水蒸気分圧の比を均熱過程よりも低い値にす
る方法がそれぞれ開示さている。
形成されるサブスケールの物性を制御することは、優れ
たフォルステライト質被膜を均一に形成させる上で、ま
た二次再結晶粒を適切に発現させる上で必須項目であ
り、多くの提案がなされている。たとえば、例えば特開
昭59-185725公報においては、再結晶焼鈍の鋼板の酸素
含有量を制御する方法が、特公平3-57167号公報におい
ては、再結晶焼鈍後の冷却を750℃以下の温度域では酸
化度を0.008以下として行う方法が、特開平6-336616号
公報においては均熱過程における水素分圧に対する水蒸
気分圧の比を0.70未満に、かつ昇温過程における水素分
圧に対する水蒸気分圧の比を均熱過程よりも低い値にす
る方法がそれぞれ開示さている。
【0009】さらに、特開昭59-226115号公報には、素
材中にMoを0.003〜0.1%含有させるとともに、一次再結
晶焼鈍を820〜860℃の温度で、かつP(H2O)/P(H2)で表さ
れる雰囲気酸化度が0.30〜0.50となる条件で行い、鋼板
表面に形成されるサブスケール中のファイヤライト(Fe
2SiO4)とシリカの比Fe2SiO4/SiO2を0.05〜0.45の範囲
に調整することによってフォルステライト質被膜に現れ
る点状欠陥(点状の地鉄の露出部)を防止する手段が開
示されている。
材中にMoを0.003〜0.1%含有させるとともに、一次再結
晶焼鈍を820〜860℃の温度で、かつP(H2O)/P(H2)で表さ
れる雰囲気酸化度が0.30〜0.50となる条件で行い、鋼板
表面に形成されるサブスケール中のファイヤライト(Fe
2SiO4)とシリカの比Fe2SiO4/SiO2を0.05〜0.45の範囲
に調整することによってフォルステライト質被膜に現れ
る点状欠陥(点状の地鉄の露出部)を防止する手段が開
示されている。
【0010】しかしながら、上述した方法は一定の効果
が認められるものの、いずれも完全なものではなく、磁
気特性やフォルステライト質被膜の密着性、厚みあるい
は均一性などが鋼板の幅方向または長手方向でばらつく
場合があった。歩留まりの低下優れた品質を有する製品
を安定して生産し、より一層の歩留まり向上を図るため
には、なお改善の余地がある。
が認められるものの、いずれも完全なものではなく、磁
気特性やフォルステライト質被膜の密着性、厚みあるい
は均一性などが鋼板の幅方向または長手方向でばらつく
場合があった。歩留まりの低下優れた品質を有する製品
を安定して生産し、より一層の歩留まり向上を図るため
には、なお改善の余地がある。
【0011】このような問題を解決するために、本発明
者らは特願平11-168317号において、Crを鋼中に含有さ
せることによって一次再結晶焼鈍後に形成される酸化膜
中にスピネル型のCr酸化物を生成させ、被膜特性が改善
することを提案しており、これにより被膜特性が飛躍的
に向上させた。しかしながら、この提案によってもな
お、仕上焼鈍後の鋼板には若干の点状欠陥が認められ
る。
者らは特願平11-168317号において、Crを鋼中に含有さ
せることによって一次再結晶焼鈍後に形成される酸化膜
中にスピネル型のCr酸化物を生成させ、被膜特性が改善
することを提案しており、これにより被膜特性が飛躍的
に向上させた。しかしながら、この提案によってもな
お、仕上焼鈍後の鋼板には若干の点状欠陥が認められ
る。
【0012】方向性電磁鋼板を製造する上では、上記の
フォルステライト被膜の健全な生成とともに、製品の磁
気特性が優れていることが挙げられる。これは公知のよ
うに主としてB8、すなわち磁化力800A/mにおける磁束密
度、W17/50、すなわち励磁磁束密度1.7T、励磁周波数50
Hzにおけるエネルギー損失によって評価される。これら
の磁気特性を改善するには、公知のように鋼板の集合組
織が高度にゴス方位に集積していることが必要であり、
そのための手段が数多く提案されている。なかでも、イ
ンヒビターとしてBiを利用すると磁気特性が非常に向上
することが知られている(たとえば特公昭54-32412号公
報、特公昭62-56924号公報等)。しかしながら、Biを含
有させた場合は、仕上焼鈍時に形成されるフォルステラ
イト質被膜が劣ることが多い。
フォルステライト被膜の健全な生成とともに、製品の磁
気特性が優れていることが挙げられる。これは公知のよ
うに主としてB8、すなわち磁化力800A/mにおける磁束密
度、W17/50、すなわち励磁磁束密度1.7T、励磁周波数50
Hzにおけるエネルギー損失によって評価される。これら
の磁気特性を改善するには、公知のように鋼板の集合組
織が高度にゴス方位に集積していることが必要であり、
そのための手段が数多く提案されている。なかでも、イ
ンヒビターとしてBiを利用すると磁気特性が非常に向上
することが知られている(たとえば特公昭54-32412号公
報、特公昭62-56924号公報等)。しかしながら、Biを含
有させた場合は、仕上焼鈍時に形成されるフォルステラ
イト質被膜が劣ることが多い。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の方向静
電所鋼板を製造する上での問題点の解決を図るものであ
って、Crを含有させた場合に発生する点状欠陥をほぼ完
全に抑制して密着性と外観の優れたフォルステライト質
被膜の生成を可能にし、さらにこの技術をBiを含有する
電磁鋼板に適用して優れた磁気特性と被膜特性を有する
方向性電磁鋼板を提供することを目的とする。
電所鋼板を製造する上での問題点の解決を図るものであ
って、Crを含有させた場合に発生する点状欠陥をほぼ完
全に抑制して密着性と外観の優れたフォルステライト質
被膜の生成を可能にし、さらにこの技術をBiを含有する
電磁鋼板に適用して優れた磁気特性と被膜特性を有する
方向性電磁鋼板を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、Crを方向
性電磁鋼板の素材スラブに含有させた場合に起こる若干
の点状欠陥の発生原因について詳細に調査した結果、欠
陥は一次再結晶焼鈍の冷却時にサブスケールに発生する
クラックが原因であることを見出し、その冷却速度を制
御すればかかるクラックを抑制できることを知見し、さ
れに上記Cr含有の効果がBiを含有する素材にも利用しう
ることを確認して本発明を完成した。
性電磁鋼板の素材スラブに含有させた場合に起こる若干
の点状欠陥の発生原因について詳細に調査した結果、欠
陥は一次再結晶焼鈍の冷却時にサブスケールに発生する
クラックが原因であることを見出し、その冷却速度を制
御すればかかるクラックを抑制できることを知見し、さ
れに上記Cr含有の効果がBiを含有する素材にも利用しう
ることを確認して本発明を完成した。
【0015】本発明は、方向性電磁鋼板用鋼スラブを13
00℃以上の温度に加熱した後、熱間圧延し、必要に応じ
て熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍をはさむ2
回以上の冷間圧延を施し最終板厚とした後、脱炭焼鈍を
兼ねる一次再結晶焼鈍を施し、焼鈍分離剤を塗布して最
終仕上げ焼鈍を施す一連の方向性電磁鋼板の製造工程に
おいて、前記方向性電磁鋼板用鋼スラブを、質量比で
C:0.002〜0.10%、Si:2.0〜5.0%、Mn:0.04〜0.50%、A
l:0.003〜0.035%及び/又はB:0.0005〜0.0050%、N:
0.0015〜0.0100%を含み、かつCr:0.01〜5.00%を含有
し、残部は不可避的不純物を除き実質的にFeからなるも
のとし、かつ前記一次再結晶焼鈍に当たり均熱後800℃
から200℃に冷却する際の冷却速度を30℃/s以下とする
こととするものである。
00℃以上の温度に加熱した後、熱間圧延し、必要に応じ
て熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍をはさむ2
回以上の冷間圧延を施し最終板厚とした後、脱炭焼鈍を
兼ねる一次再結晶焼鈍を施し、焼鈍分離剤を塗布して最
終仕上げ焼鈍を施す一連の方向性電磁鋼板の製造工程に
おいて、前記方向性電磁鋼板用鋼スラブを、質量比で
C:0.002〜0.10%、Si:2.0〜5.0%、Mn:0.04〜0.50%、A
l:0.003〜0.035%及び/又はB:0.0005〜0.0050%、N:
0.0015〜0.0100%を含み、かつCr:0.01〜5.00%を含有
し、残部は不可避的不純物を除き実質的にFeからなるも
のとし、かつ前記一次再結晶焼鈍に当たり均熱後800℃
から200℃に冷却する際の冷却速度を30℃/s以下とする
こととするものである。
【0016】この発明において、上記方向性電磁鋼板用
鋼スラブはさらにSおよびSeから選んだ1種又は2種を合
計で0.010〜0.040%含有すること、Biを0.005〜0.07%含
有すること、あるいはさらにCu、Sb、Snから選んだ1種
又は2種以上を合計で0.05〜0.50%含有することを好適と
する。
鋼スラブはさらにSおよびSeから選んだ1種又は2種を合
計で0.010〜0.040%含有すること、Biを0.005〜0.07%含
有すること、あるいはさらにCu、Sb、Snから選んだ1種
又は2種以上を合計で0.05〜0.50%含有することを好適と
する。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、上記知見を得る
に至った実験結果を含め詳細に説明する。
に至った実験結果を含め詳細に説明する。
【0018】(素材組成)本発明においては以下の組成
を有する鋼スラブを出発素材とする。 C:0.002〜0.10% Cは変態を利用して熱延組織を改善するのに有効な成分
であるとともにいわゆるゴス方位結晶粒の発生に有用な
成分である。かかる作用を有効に発揮させるためには0.
002%以上の含有を必要とするが、過剰に含有すると一次
再結晶焼鈍時に脱炭不良を引き起こすため0.10%以下に
しなければならない。
を有する鋼スラブを出発素材とする。 C:0.002〜0.10% Cは変態を利用して熱延組織を改善するのに有効な成分
であるとともにいわゆるゴス方位結晶粒の発生に有用な
成分である。かかる作用を有効に発揮させるためには0.
002%以上の含有を必要とするが、過剰に含有すると一次
再結晶焼鈍時に脱炭不良を引き起こすため0.10%以下に
しなければならない。
【0019】Si:2.0〜5.0% Siは電気抵抗を高め、鉄損を改善する必須元素である
が、2.0%未満ではその効果に乏しく、またγ変態を生じ
熱延組織が大きく変化するほか、最終仕上げ焼鈍におい
て変態し、良好な磁気特性を得ることができない。一
方、5.0を超えると鋼板の加工性が悪化し、かつ飽和磁
束密度も低下する。そのため、Siは2.0〜5.0%の範囲で
含有させる。
が、2.0%未満ではその効果に乏しく、またγ変態を生じ
熱延組織が大きく変化するほか、最終仕上げ焼鈍におい
て変態し、良好な磁気特性を得ることができない。一
方、5.0を超えると鋼板の加工性が悪化し、かつ飽和磁
束密度も低下する。そのため、Siは2.0〜5.0%の範囲で
含有させる。
【0020】Mn:0.04〜0.50% Mnは熱間圧延時の加工性を向上させ、かつSやSe化合物
となり析出物を形成し、インヒビターとしての効果を発
揮する。その量が0.04%未満の場合は上記効果が不十分
となり、一方0.50%を超えると上記析出物が粗大化し、
インヒビターとしての効果が激減する。そのため、Mnは
0.04〜0.50%の範囲で含有させる。
となり析出物を形成し、インヒビターとしての効果を発
揮する。その量が0.04%未満の場合は上記効果が不十分
となり、一方0.50%を超えると上記析出物が粗大化し、
インヒビターとしての効果が激減する。そのため、Mnは
0.04〜0.50%の範囲で含有させる。
【0021】Al:0.003〜0.035%及び/又はB:0.0005〜
0.0050% Al及びBは鋼中でAlN又はBNを形成してインヒビターの効
果を発揮する有用成分であるが、Alが0.003%、Bが0.000
5%に満たない場合は析出物の量が十分ではなく効果がな
い。一方Alが0.035%、Bが0.0050%を超えると析出物が粗
大化し、インヒビターとしての効果が激減するため、Al
の含有量は0.003〜0.035%、Bの含有量は0.0005〜0.0050
%の範囲とした。なお、AlとBはともに窒化物形成元素で
あり、実質的に同等の効果を奏するので相互に置換する
ことができる。
0.0050% Al及びBは鋼中でAlN又はBNを形成してインヒビターの効
果を発揮する有用成分であるが、Alが0.003%、Bが0.000
5%に満たない場合は析出物の量が十分ではなく効果がな
い。一方Alが0.035%、Bが0.0050%を超えると析出物が粗
大化し、インヒビターとしての効果が激減するため、Al
の含有量は0.003〜0.035%、Bの含有量は0.0005〜0.0050
%の範囲とした。なお、AlとBはともに窒化物形成元素で
あり、実質的に同等の効果を奏するので相互に置換する
ことができる。
【0022】N:0.0015〜0.0100% NはAlと結合して析出物を形成する。しかし、0.0015%に
満たない場合はその効果が乏しく、0.0100%を超えると
スラブ加熱時にふくれを生じる。そのため、N含有範囲
は0.0015〜0.0100%とする。
満たない場合はその効果が乏しく、0.0100%を超えると
スラブ加熱時にふくれを生じる。そのため、N含有範囲
は0.0015〜0.0100%とする。
【0023】Cr:0.01〜5.00% Crは本発明において最も重要な元素である。Crを含有さ
せることにより、被膜特性を飛躍的に向上させることが
できる。しかし、含有量が0.01%に満たない場合は被膜
特性向上の効果が得られず、5.00%を超える場合は、再
結晶焼鈍時の脱炭を阻害して磁気特性が劣化するためCr
の成分範囲を0.01〜5.00%とする。
せることにより、被膜特性を飛躍的に向上させることが
できる。しかし、含有量が0.01%に満たない場合は被膜
特性向上の効果が得られず、5.00%を超える場合は、再
結晶焼鈍時の脱炭を阻害して磁気特性が劣化するためCr
の成分範囲を0.01〜5.00%とする。
【0024】S及び/又はSe:単独又は合計で0.010〜0.
040% SやSeは、MnやCuと結合してMnSe、MnS、Cu2-xSe、Cu2-x
Sを形成し、鋼中の分散第二相としてインヒビターの効
果を発揮する有用成分であり、必要に応じて含有させる
ことができる。しかし、含有量が単独又は合計で0.010%
に満たないとその効果が乏しく、一方0.040%を超えると
スラブ加熱時の固溶が不完全となるだけでなく、製品表
面に欠陥が発生する原因となるため、含有量が単独又は
合計で0.010〜0.040%とする。
040% SやSeは、MnやCuと結合してMnSe、MnS、Cu2-xSe、Cu2-x
Sを形成し、鋼中の分散第二相としてインヒビターの効
果を発揮する有用成分であり、必要に応じて含有させる
ことができる。しかし、含有量が単独又は合計で0.010%
に満たないとその効果が乏しく、一方0.040%を超えると
スラブ加熱時の固溶が不完全となるだけでなく、製品表
面に欠陥が発生する原因となるため、含有量が単独又は
合計で0.010〜0.040%とする。
【0025】Bi:0.005〜0.070% Biは方向性電磁鋼板の磁気特性、特に磁束密度を飛躍的
に向上させるのに非常に有効な元素であるので必要に応
じて含有させる。しかし含有量が0.005%に満たないと効
果が得られず、一方0.070%を超える場合は、一次再結晶
粒成長が過度に抑制されて、かえって二次再結晶性を悪
化させるため、含有量は0.005〜0.070%とする。
に向上させるのに非常に有効な元素であるので必要に応
じて含有させる。しかし含有量が0.005%に満たないと効
果が得られず、一方0.070%を超える場合は、一次再結晶
粒成長が過度に抑制されて、かえって二次再結晶性を悪
化させるため、含有量は0.005〜0.070%とする。
【0026】Cu、Sb、Sn:1種又は2種以上の合計で0.05
〜0.50% Cuは鋼中でCu2-xSe、Cu2-xSを形成し、鋼中の分散第二
相としてインヒビターの作用を発揮する有用な元素であ
り、二次再結晶の安定化に寄与する。またSb、Snは結晶
粒界に偏析することで副次的にインヒビターの作用を強
化する作用を有しており、二次再結晶を安定化させる作
用を有する。また、これら元素は、フォルステライト被
膜形成に伴う表層インヒビター(AlN、MnSe、MnS、Cu
2-xSe、Cu2 -xSなど)の分解とそれに伴う二次再結晶不
良を防止する効果がある。したがって、これら元素を補
助的に利用する。しかし、これらの元素の合計含有量が
0.05%を下回るとインヒビターの強化作用が十分でな
く、0.50%を超えると熱延板の割れや製品の表面性状の
劣化などの問題が生じる。そのため0.05〜0.50%の範囲
とする。
〜0.50% Cuは鋼中でCu2-xSe、Cu2-xSを形成し、鋼中の分散第二
相としてインヒビターの作用を発揮する有用な元素であ
り、二次再結晶の安定化に寄与する。またSb、Snは結晶
粒界に偏析することで副次的にインヒビターの作用を強
化する作用を有しており、二次再結晶を安定化させる作
用を有する。また、これら元素は、フォルステライト被
膜形成に伴う表層インヒビター(AlN、MnSe、MnS、Cu
2-xSe、Cu2 -xSなど)の分解とそれに伴う二次再結晶不
良を防止する効果がある。したがって、これら元素を補
助的に利用する。しかし、これらの元素の合計含有量が
0.05%を下回るとインヒビターの強化作用が十分でな
く、0.50%を超えると熱延板の割れや製品の表面性状の
劣化などの問題が生じる。そのため0.05〜0.50%の範囲
とする。
【0027】以上述べた元素のほかに、インヒビターと
して作用する元素として、Ni、Geの1種又は2種を含有さ
せることができる。その範囲はこれら元素の含有量の合
計で0.0010〜1.30%とする。この範囲より少ない場合は
十分な抑制力を付与することができず、上記範囲を超え
る場合には熱間圧延や冷間圧延で割れが入りやすくな
り、製品の歩留が低下するからである。なお、必要に応
じて、Te、P、Zn、In、Pなどの公知のインヒビター元素
の添加も可能である。
して作用する元素として、Ni、Geの1種又は2種を含有さ
せることができる。その範囲はこれら元素の含有量の合
計で0.0010〜1.30%とする。この範囲より少ない場合は
十分な抑制力を付与することができず、上記範囲を超え
る場合には熱間圧延や冷間圧延で割れが入りやすくな
り、製品の歩留が低下するからである。なお、必要に応
じて、Te、P、Zn、In、Pなどの公知のインヒビター元素
の添加も可能である。
【0028】(圧延・熱処理工程)上記の組成を有する
鋼スラブは、インヒビター成分が十分固溶できる1350℃
以上に加熱されることが好ましく、熱間圧延により所望
の板厚の熱延板にする。しかる後必要に応じて850℃〜1
100℃の温度範囲で10秒以上の熱延板焼鈍を施し、1回ま
たは中間焼鈍をはさむ2回以上の冷間圧延より最終板厚
の冷延板に仕上げる。この際、1パス以上の温間圧延を
適用することも可能である。得られた冷延板には脱炭焼
鈍を兼ねる一次再結晶焼鈍を施し、焼鈍分離剤を塗布、
乾燥し、仕上焼鈍を施す。
鋼スラブは、インヒビター成分が十分固溶できる1350℃
以上に加熱されることが好ましく、熱間圧延により所望
の板厚の熱延板にする。しかる後必要に応じて850℃〜1
100℃の温度範囲で10秒以上の熱延板焼鈍を施し、1回ま
たは中間焼鈍をはさむ2回以上の冷間圧延より最終板厚
の冷延板に仕上げる。この際、1パス以上の温間圧延を
適用することも可能である。得られた冷延板には脱炭焼
鈍を兼ねる一次再結晶焼鈍を施し、焼鈍分離剤を塗布、
乾燥し、仕上焼鈍を施す。
【0029】本発明の特徴は、上記組成をもった鋼スラ
ブの圧延・熱処理工程中、特に脱炭焼鈍を兼ねる一次再
結晶焼鈍において均熱後の冷却速度を制御する点にあ
る。すなわち、本発明においては、脱炭焼鈍を兼ねる一
次再結晶焼鈍(以下、単に「一次再結晶焼鈍」という)に
おいて均熱後の冷却速度を30℃/s以下とするのである。
その根拠は、以下の実験結果に示されている。
ブの圧延・熱処理工程中、特に脱炭焼鈍を兼ねる一次再
結晶焼鈍において均熱後の冷却速度を制御する点にあ
る。すなわち、本発明においては、脱炭焼鈍を兼ねる一
次再結晶焼鈍(以下、単に「一次再結晶焼鈍」という)に
おいて均熱後の冷却速度を30℃/s以下とするのである。
その根拠は、以下の実験結果に示されている。
【0030】(実験1)C:0.055%、Si:3.41%、Mn:0.
072%、S:0.005%、Se:0.018%、Al:0.025%、N:0.0080
%、Cr:0.15%を含み、残部が実質的にFeからなる鋼スラ
ブを1420℃で30分加熱後、熱間圧延により2.5mmの熱延
板とした。ついで1000℃、1分の熱延板焼鈍を施し、冷
間圧延により1.6mmの板厚とした後、1000℃、1分で中間
焼鈍を行い、冷間圧延により最終板厚0.23mmに仕上げ
た。ついで、均熱温度850℃、均熱時間100秒、H2-H2O-N
2雰囲気で一次再結晶焼鈍を施し、冷却後MgOを主成分と
した焼鈍分離剤を塗布し、乾燥後、最高到達温度1200
℃、5時間の仕上焼鈍を施した。その際、一次再結晶焼
鈍における均熱後800℃から200℃までの温度範囲での冷
却速度を5℃/s〜急冷(水冷)まで種々変化させた。
072%、S:0.005%、Se:0.018%、Al:0.025%、N:0.0080
%、Cr:0.15%を含み、残部が実質的にFeからなる鋼スラ
ブを1420℃で30分加熱後、熱間圧延により2.5mmの熱延
板とした。ついで1000℃、1分の熱延板焼鈍を施し、冷
間圧延により1.6mmの板厚とした後、1000℃、1分で中間
焼鈍を行い、冷間圧延により最終板厚0.23mmに仕上げ
た。ついで、均熱温度850℃、均熱時間100秒、H2-H2O-N
2雰囲気で一次再結晶焼鈍を施し、冷却後MgOを主成分と
した焼鈍分離剤を塗布し、乾燥後、最高到達温度1200
℃、5時間の仕上焼鈍を施した。その際、一次再結晶焼
鈍における均熱後800℃から200℃までの温度範囲での冷
却速度を5℃/s〜急冷(水冷)まで種々変化させた。
【0031】得られた製品のフォルステライト質被膜の
外観と曲げ密着性を調査した。曲げ密着性は種々の径を
有する丸棒に試験片を巻きつけ、被膜が剥離しない最小
径を測定することにより行い、被膜外観は基準は以下の
基準により評価した。 ◎:非常に均一なフォルステライト質被膜が形成されて
いる。 ○:均一なフォルステライト質被膜外観が形成されてい
る。 △:被膜に点状欠陥が認められる。 ×:被膜の一部に地鉄が露出し、あるいは被膜は白色の
外観を呈する。 評価結果は前記冷却速度とともに表1に示す。
外観と曲げ密着性を調査した。曲げ密着性は種々の径を
有する丸棒に試験片を巻きつけ、被膜が剥離しない最小
径を測定することにより行い、被膜外観は基準は以下の
基準により評価した。 ◎:非常に均一なフォルステライト質被膜が形成されて
いる。 ○:均一なフォルステライト質被膜外観が形成されてい
る。 △:被膜に点状欠陥が認められる。 ×:被膜の一部に地鉄が露出し、あるいは被膜は白色の
外観を呈する。 評価結果は前記冷却速度とともに表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】表1に示すように、上記Crを含有する実験
材では、地鉄が露出する等の極めて被膜特性の悪い結果
は現れない。しかし800〜200℃の範囲内で冷却速度が大
きい場合には、点状欠陥が見られ、この範囲での冷却速
度を30℃/s以下とする必要があることが明らかとなっ
た。
材では、地鉄が露出する等の極めて被膜特性の悪い結果
は現れない。しかし800〜200℃の範囲内で冷却速度が大
きい場合には、点状欠陥が見られ、この範囲での冷却速
度を30℃/s以下とする必要があることが明らかとなっ
た。
【0034】上記実験で得られた点状欠陥発生材につい
て調査したところ、一次再結晶焼鈍後の鋼板表面酸化膜
層にクラックが発生していることが明らかとなった。図
1は、そのようにして調査したクラック発生量と一次再
結晶焼鈍後の冷却速度との関係を示す。なお、クラック
発生量は一辺が3cmのサンプルに発生したクラックを目
視または顕微鏡を用いて観察し、片面についてその数を
測定したものである。図1から、一次再結晶焼鈍後の冷
却速度が30℃/sを超えるとクラック数が急増することが
分かる。
て調査したところ、一次再結晶焼鈍後の鋼板表面酸化膜
層にクラックが発生していることが明らかとなった。図
1は、そのようにして調査したクラック発生量と一次再
結晶焼鈍後の冷却速度との関係を示す。なお、クラック
発生量は一辺が3cmのサンプルに発生したクラックを目
視または顕微鏡を用いて観察し、片面についてその数を
測定したものである。図1から、一次再結晶焼鈍後の冷
却速度が30℃/sを超えるとクラック数が急増することが
分かる。
【0035】これらのデータを総合してみると、フォル
ステライト質被膜に発生する点状欠陥の原因は、一次再
結晶焼鈍の冷却時に形成される酸化膜層のクラックにあ
り、このクラックの発生部位で仕上焼鈍時のフォルステ
ライト質被膜形成が阻害されるためと推測された。この
ような、実験結果及びその考察に基づいて、本発明では
一次再結晶焼鈍後の冷却速度を、800〜200℃の範囲で30
℃/sの徐冷とする。
ステライト質被膜に発生する点状欠陥の原因は、一次再
結晶焼鈍の冷却時に形成される酸化膜層のクラックにあ
り、このクラックの発生部位で仕上焼鈍時のフォルステ
ライト質被膜形成が阻害されるためと推測された。この
ような、実験結果及びその考察に基づいて、本発明では
一次再結晶焼鈍後の冷却速度を、800〜200℃の範囲で30
℃/sの徐冷とする。
【0036】(実験2)C:0.068%、Si:3.39%、Mn:0.0
70%、S:0.010%、Se:0.019%、Al:0.023%、N:0.0081
%、Bi:0.037%、Cr:0.40%を含み、残部は実質的にFeか
らなる鋼スラブを1420℃で30分加熱後、熱間圧延により
2.5mmの熱延板とした。得られた熱延板に1000℃、1分の
熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延により1.6mmの中間板
厚とした後、1000、1分の中間焼鈍を行い、最終冷間圧
延により板厚0.23mmの冷延板に仕上げた。得られた冷延
板にH2-H2O-N2雰囲気で均熱温度850℃、均熱時間100秒
の一次再結晶焼鈍を施し、冷却後MgOを主成分とした焼
鈍分離剤を塗布し、乾燥後、最高到達温度1200℃、5時
間の仕上焼鈍を施した。その際、一次再結晶焼鈍後の冷
却速度を5℃/s〜急冷(水冷)まで種々変化させた。
70%、S:0.010%、Se:0.019%、Al:0.023%、N:0.0081
%、Bi:0.037%、Cr:0.40%を含み、残部は実質的にFeか
らなる鋼スラブを1420℃で30分加熱後、熱間圧延により
2.5mmの熱延板とした。得られた熱延板に1000℃、1分の
熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延により1.6mmの中間板
厚とした後、1000、1分の中間焼鈍を行い、最終冷間圧
延により板厚0.23mmの冷延板に仕上げた。得られた冷延
板にH2-H2O-N2雰囲気で均熱温度850℃、均熱時間100秒
の一次再結晶焼鈍を施し、冷却後MgOを主成分とした焼
鈍分離剤を塗布し、乾燥後、最高到達温度1200℃、5時
間の仕上焼鈍を施した。その際、一次再結晶焼鈍後の冷
却速度を5℃/s〜急冷(水冷)まで種々変化させた。
【0037】得られた製品のフォルステライト質被膜の
外観と曲げ密着性を先の実験1と同様の方法により調査
した。試験結果は、表2に示す。表2から、Crの他にBiを
含有する素材についても、一次再結晶後の冷却条件を80
0〜200℃温度範囲内で冷却速度30℃/s以下とすれば、健
全なフォルステライト質被膜が形成されることが確認さ
れた。なお、上記実験で得られた点状欠陥発生材につい
て実験1と同様の調査し、図2に示す結果を得た。Biを
含有する素材についても、一次再結晶焼鈍後の冷却速度
が30℃/sを超えるとクラック数が急増することが分か
る。
外観と曲げ密着性を先の実験1と同様の方法により調査
した。試験結果は、表2に示す。表2から、Crの他にBiを
含有する素材についても、一次再結晶後の冷却条件を80
0〜200℃温度範囲内で冷却速度30℃/s以下とすれば、健
全なフォルステライト質被膜が形成されることが確認さ
れた。なお、上記実験で得られた点状欠陥発生材につい
て実験1と同様の調査し、図2に示す結果を得た。Biを
含有する素材についても、一次再結晶焼鈍後の冷却速度
が30℃/sを超えるとクラック数が急増することが分か
る。
【0038】
【表2】
【0039】このように、本発明においてはCrとともに
Biを含有させた素材を処理するに当たり、一次再結晶焼
鈍後の冷却速度を30℃/s以下の徐冷とすることにより、
健全なフォルステライト質被膜を形成させるものであ
る。以下、実施例を示し、本発明の実施形態を明らかに
する。
Biを含有させた素材を処理するに当たり、一次再結晶焼
鈍後の冷却速度を30℃/s以下の徐冷とすることにより、
健全なフォルステライト質被膜を形成させるものであ
る。以下、実施例を示し、本発明の実施形態を明らかに
する。
【0040】
【実施例】(実施例1)C:0.072%、Si:3.35%、Mn:0.
075%、S:0.003%、Se:0.020%、Al:0.023%、N:0.0075
%、Cr:0.36%を含み、残部実質的にFeからなる鋼スラブ
を1420℃で30分加熱後、熱間圧延により2.5mmの熱圧延
とした。この熱延板に1000℃、1分の熱延板焼鈍を施
し、一次冷間圧延により1.6mmの中間板厚とした後、100
0℃、1分で中間焼鈍を行い、最終冷間圧延により板厚0.
23mmの最終板厚に仕上げた。ついで、H2-H2O-N2雰囲気
で均熱温度850℃、均熱時間100秒の一次再結晶焼鈍を施
した。一次再結晶焼鈍後の冷却速度(800〜200℃間)は
表3に示すとおりであった。このようにして得られた一
次再結晶焼鈍後の冷延板にMgOを主成分とした焼鈍分離
剤を塗布し、乾燥後、最高到達達温度1200℃、5時間の
仕上焼鈍を施し製品とした。
075%、S:0.003%、Se:0.020%、Al:0.023%、N:0.0075
%、Cr:0.36%を含み、残部実質的にFeからなる鋼スラブ
を1420℃で30分加熱後、熱間圧延により2.5mmの熱圧延
とした。この熱延板に1000℃、1分の熱延板焼鈍を施
し、一次冷間圧延により1.6mmの中間板厚とした後、100
0℃、1分で中間焼鈍を行い、最終冷間圧延により板厚0.
23mmの最終板厚に仕上げた。ついで、H2-H2O-N2雰囲気
で均熱温度850℃、均熱時間100秒の一次再結晶焼鈍を施
した。一次再結晶焼鈍後の冷却速度(800〜200℃間)は
表3に示すとおりであった。このようにして得られた一
次再結晶焼鈍後の冷延板にMgOを主成分とした焼鈍分離
剤を塗布し、乾燥後、最高到達達温度1200℃、5時間の
仕上焼鈍を施し製品とした。
【0041】得られた製品のフォルステライト質被膜の
外観と曲げ密着性を、先に示した実験1と同様にして評
価した。また、製品の磁気特性を鉄損W17/50および磁束
密度B 8について測定した。結果を表3に示す。表3か
ら、素材の組成および一次再結晶焼鈍後の冷却速度が所
定範囲内にあるときに被膜特性が良好で磁気特性が優れ
た方向性電磁鋼板が得られることがわかる。
外観と曲げ密着性を、先に示した実験1と同様にして評
価した。また、製品の磁気特性を鉄損W17/50および磁束
密度B 8について測定した。結果を表3に示す。表3か
ら、素材の組成および一次再結晶焼鈍後の冷却速度が所
定範囲内にあるときに被膜特性が良好で磁気特性が優れ
た方向性電磁鋼板が得られることがわかる。
【0042】
【表3】
【0043】(実施例2)C:0.066%、Si:3.32%、Mn:
0.071 %、S:0.006%、Se:0.020%、Al:0.027%、N:0.0
085%、Bi:0.032%、Cr:0.33%、を含み、残部は実施例
にFeからなる鋼スラブを準備した。この鋼スラブに対し
実施例1と同様の条件で圧延と熱処理を行い、方向性電
磁鋼板を製造した。得られた製品のフォルステライト質
被膜の性状、および製品の磁気特性は表4に示すとおり
である。表4からBi含有材においても、素材の組成およ
び一次再結晶焼鈍後の冷却速度(800〜200℃間)が所定
範囲内にあるときに被膜特性が良好で磁気特性が優れた
方向性電磁鋼板が得られることが確認できる。
0.071 %、S:0.006%、Se:0.020%、Al:0.027%、N:0.0
085%、Bi:0.032%、Cr:0.33%、を含み、残部は実施例
にFeからなる鋼スラブを準備した。この鋼スラブに対し
実施例1と同様の条件で圧延と熱処理を行い、方向性電
磁鋼板を製造した。得られた製品のフォルステライト質
被膜の性状、および製品の磁気特性は表4に示すとおり
である。表4からBi含有材においても、素材の組成およ
び一次再結晶焼鈍後の冷却速度(800〜200℃間)が所定
範囲内にあるときに被膜特性が良好で磁気特性が優れた
方向性電磁鋼板が得られることが確認できる。
【0044】
【表4】
【0045】(実施例3)表5記載する成分を含み、残
部は実質的にFeからなる鋼スラブを、実施例1と同様の
条件で処理し、方向性電磁鋼板を製造した。ただし、一
次再結晶焼鈍後の冷却速度は10〜50℃/sの範囲で変化さ
せた。得られた製品のフォルステライト質被膜の性状、
および磁気特性を表6に示す。
部は実質的にFeからなる鋼スラブを、実施例1と同様の
条件で処理し、方向性電磁鋼板を製造した。ただし、一
次再結晶焼鈍後の冷却速度は10〜50℃/sの範囲で変化さ
せた。得られた製品のフォルステライト質被膜の性状、
および磁気特性を表6に示す。
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】
【0048】表6から、本発明に従う組成を有し、かつ
本発明に従う一次再結晶焼鈍後の冷却速度条件を満足す
る場合は、良好な被膜特性および磁気特性を有する方向
性電磁鋼板を製造しうることが確認できる。
本発明に従う一次再結晶焼鈍後の冷却速度条件を満足す
る場合は、良好な被膜特性および磁気特性を有する方向
性電磁鋼板を製造しうることが確認できる。
【0049】以上、本発明の実施形態に係る方向性電磁
鋼板の製造方法を良好なフォスルテライト質被膜及び優
れた電磁特性の面から説明した。しかし、本発明の実施
形態は上記実施例に限られるものではない。たとえば、
仕上焼鈍の後、必要に応じて張力付与コーティングや絶
縁コーティング鋼板表面に焼き付けたのち平坦化焼鈍を
施して製品とすることもできる。また、いわゆる磁区細
分化処理を公知の手段により行うこともできる。さら
に、最終仕上げ焼鈍後、必要に応じて表面の酸化物を除
去した後、ゾルゲル法、TiN蒸着など高知の方法で張力
被膜を形成させることもできる。
鋼板の製造方法を良好なフォスルテライト質被膜及び優
れた電磁特性の面から説明した。しかし、本発明の実施
形態は上記実施例に限られるものではない。たとえば、
仕上焼鈍の後、必要に応じて張力付与コーティングや絶
縁コーティング鋼板表面に焼き付けたのち平坦化焼鈍を
施して製品とすることもできる。また、いわゆる磁区細
分化処理を公知の手段により行うこともできる。さら
に、最終仕上げ焼鈍後、必要に応じて表面の酸化物を除
去した後、ゾルゲル法、TiN蒸着など高知の方法で張力
被膜を形成させることもできる。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば、Crを含有させた場合に
発生する点状欠陥をほぼ完全に抑制して密着性と外観の
優れたフォルステライト質被膜を形成させることがで
き、さらに素材中にBiを含有させた場合には、磁気特性
と被膜特性を有する方向性電磁鋼板を製造することが可
能になる。
発生する点状欠陥をほぼ完全に抑制して密着性と外観の
優れたフォルステライト質被膜を形成させることがで
き、さらに素材中にBiを含有させた場合には、磁気特性
と被膜特性を有する方向性電磁鋼板を製造することが可
能になる。
【図1】 クラック発生量と一次再結晶焼鈍後の冷却速
度との関係を示す図面である。
度との関係を示す図面である。
【図2】 Biを含有する材料におけるクラック発生量と
一次再結晶焼鈍後の冷却速度との関係を示す図面であ
る。
一次再結晶焼鈍後の冷却速度との関係を示す図面であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高宮 俊人 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 戸田 広朗 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 黒沢 光正 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社水島製鉄所内 Fターム(参考) 4K033 AA02 BA01 BA02 CA01 CA02 CA03 CA06 CA07 FA01 FA12 HA01 HA03 JA04 JA06 5E041 AA02 AA19 CA02 CA04 HB11 NN01 NN18
Claims (4)
- 【請求項1】 方向性電磁鋼板用鋼スラブを1300℃以上
の温度に加熱した後、熱間圧延し、必要に応じて熱延板
焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍をはさむ2回以上の
冷間圧延を施し最終板厚とした後、脱炭焼鈍を兼ねる一
次再結晶焼鈍を施し、焼鈍分離剤を塗布して最終仕上げ
焼鈍を施す一連の方向性電磁鋼板の製造工程において、 前記方向性電磁鋼板用鋼スラブは、質量比でC:0.002〜
0.10%、Si:2.0〜5.0%、Mn:0.04〜0.50%、Al:0.003〜
0.035%及び/又はB:0.0005〜0.0050%、N:0.0015〜0.0
100%を含み、かつCr:0.01〜5.00%を含有し、残部は不
可避的不純物を除き実質的にFeからなるものであり、 かつ前記一次再結晶焼鈍に当たり均熱後800℃から200℃
に冷却する際の冷却速度を30℃/s以下とすることを特徴
とする被膜特性及び磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の
製造方法。 - 【請求項2】 方向性電磁鋼板用鋼スラブはさらにSお
よびSeから選んだ1種又は2種を合計で0.010〜0.040%含
有することを特徴とする請求項1に記載の被膜特性およ
び磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項3】 方向性電磁鋼板用鋼スラブはさらにBiを
0.005〜0.07%含有することを特徴とする請求項1または2
に記載の被膜特性及び磁気特性に優れた方向性電磁鋼板
の製造方法。 - 【請求項4】 方向性電磁鋼板用鋼スラブはさらにCu、
Sb、Snから選んだ1種又は2種以上を合計で0.05〜0.50%
含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記
載の被膜特性及び磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製
造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000396103A JP2002194433A (ja) | 2000-12-26 | 2000-12-26 | 被膜特性および磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000396103A JP2002194433A (ja) | 2000-12-26 | 2000-12-26 | 被膜特性および磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002194433A true JP2002194433A (ja) | 2002-07-10 |
Family
ID=18861460
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000396103A Withdrawn JP2002194433A (ja) | 2000-12-26 | 2000-12-26 | 被膜特性および磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法 |
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JP (1) | JP2002194433A (ja) |
-
2000
- 2000-12-26 JP JP2000396103A patent/JP2002194433A/ja not_active Withdrawn
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