JP2002184552A - スパークプラグ及びその製造方法 - Google Patents

スパークプラグ及びその製造方法

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JP2002184552A JP2000380825A JP2000380825A JP2002184552A JP 2002184552 A JP2002184552 A JP 2002184552A JP 2000380825 A JP2000380825 A JP 2000380825A JP 2000380825 A JP2000380825 A JP 2000380825A JP 2002184552 A JP2002184552 A JP 2002184552A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 主体金具表面を覆うクロメート層として六価
クロム含有量が少ないものを使用しつつ、加締め部及び
取付ねじ部の双方における防食性能を十分に確保するこ
とができるスパークプラグを提供する。 【解決手段】 スパークプラグ100は、主体金具1の
外周面に取付ねじ部7が形成されるとともに、絶縁体2
側の加締め受部2eに向けて曲げ加締めすることにより
加締め部1dが形成される。主体金具1は、鋼鉄製の下
地本体部が、加締め部1dの外面と取付ねじ部7とを含
む外周面が、加締め部1dの外面における厚さが5〜1
5μmとなるように形成された電解ニッケルメッキ層4
1と、その電解ニッケルメッキ層41上に接して形成さ
れるとともに、含有されるクロム成分の95質量%以上
が三価クロムであって、膜厚が0.05〜0.5μmで
ある電解クロメート層42とからなる複合層によって被
覆される。該複合層は、硬さ測定用圧子の先端が電解ク
ロメート層42を貫通して電解ニッケルメッキ層41側
に食い込むように、荷重50mNにて測定した複合層の
ビッカース硬さが170〜650とされる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は内燃機関用のスパー
クプラグとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関、例えば自動車用等のガソリン
エンジンの点火に使用されるスパークプラグは、中心電
極の外側に絶縁体が、さらにその外側に主体金具が設け
られ、中心電極との間に火花放電ギャップを形成する接
地電極がその主体金具に取り付けられた構造を有する。
そして、主体金具の外周面に形成された取付ねじ部によ
り、エンジンのシリンダヘッドに取り付けて使用され
る。
【0003】スパークプラグの主体金具は一般に炭素鋼
等の鉄系材料で構成され、その表面には防食のための亜
鉛めっきが施されることが多い。亜鉛めっき層は鉄に対
しては優れた防食効果を有するが、よく知られている通
り、鉄上の亜鉛めっき層は犠牲腐食により消耗しやす
く、また、生じた酸化亜鉛(いわゆる白錆)により白く
変色して外観も損なわれ易い欠点がある。そこで多くの
スパークプラグでは、亜鉛めっき層の表面をさらにクロ
メート層で覆い、めっき層の腐食を防止することが行わ
れている。
【0004】また、白錆を発生しやすい亜鉛めっき層に
代えてニッケルめっき層を使用する提案も、例えば特公
平4−65158号公報においてなされている。この場
合、主体金具の取付ねじ部におけるプラグホールとの螺
合摺動を確保するために、主体金具に施されるニッケル
めっき厚を小さく抑えなければならないことから、ニッ
ケルめっき層の上にさらに電解クロメート層を形成する
ようにしている。
【0005】ところで、スパークプラグの主体金具に施
されるクロメート層としては、従来、いわゆる黄色(あ
るいは有色)クロメート層が用いられてきた。この黄色
クロメート層は、防食性能が良好であるため、例えば缶
詰内面被覆等をはじめ、スパークプラグ以外の分野にお
いても広く使用されてきたものである。しかしながら、
クロム成分の一部が六価クロムの形で含有されているこ
とが災いして、環境保護に対する関心が地球規模で高ま
りつつある近年では次第に敬遠されるようになってきて
いる。例えばスパークプラグが多量に使用される自動車
業界においては、廃棄スパークプラグによる環境への影
響を考慮して、六価クロムを含有するクロメート層の使
用は将来全廃しようとの検討も進められている。
【0006】こうした流れを受けて、六価クロムを含有
しないクロメート層、すなわちクロム成分の実質的に全
てが三価クロムの形で含有されている層の開発は、比較
的早くから進められてきた。その処理浴は概して六価ク
ロム濃度が低く、中には六価クロムを全く含有しない浴
も開発されていて、廃液処理の問題も軽減されている。
しかしながら、三価クロム系のクロメート層は、黄色ク
ロメート層に比べて防食性能が劣るという大きな欠点が
あり、スパークプラグの主体金具の被覆用としては、広
く用いられるに至っていない。特に、取付ねじ部での螺
合・摺動を確保するために下地のニッケルめっき層厚さ
が低く抑えられている場合は、耐食性の問題が特に生じ
やすく、電解めっき法において特にめっき層厚さが不足
しやすい、ねじの谷底部等での発錆等が生じやすくな
る。
【0007】また、スパークプラグの主体金具は、絶縁
体に対し、金具後端側の開口部を絶縁体側に加締めるこ
とにより固定されるが、この加締めに伴う変形時に、表
面に形成したニッケルめっき層やクロメート層に割れや
剥がれが生ずると、加締め部における主体金具の耐食性
を十分に確保できなくなる惧れがある。
【0008】本発明の課題は、主体金具表面を覆うクロ
メート層として六価クロム含有量が少ないものを使用し
つつ、加締め部及び取付ねじ部の双方における防食性能
を十分に確保することができるスパークプラグと、その
製造方法とを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】上記の課
題を解決するために、本発明のスパークプラグは、筒状
の絶縁体と、その絶縁体が軸線方向において内側に挿通
される筒状に形成されるとともに、その外周面には軸線
方向における第一端側に内燃機関への取付ねじ部が形成
される一方、第二端側の開口部に、絶縁体側の加締め受
部に向けて曲げ加締めすることにより加締め部が形成さ
れた鋼鉄製の主体金具とを有し、該主体金具は、鋼鉄製
の下地本体部を有するとともに、該下地本体部の加締め
部外面と取付ねじ部とを含む外周面が、加締め部外面に
おける厚さが5〜15μmとなるように形成された電解
ニッケルめっき層と、その電解ニッケルめっき層上に接
して形成されるとともに、含有されるクロム成分の95
質量%以上が三価クロムであって、膜厚が0.05〜
0.5μmである電解クロメート層とからなる複合層に
よって被覆されてなり、かつ、硬さ測定用圧子の先端が
電解クロメート層を貫通して電解ニッケルめっき層側に
食い込むように、荷重50mNにて測定した複合層のビ
ッカース硬さが170〜650であることを特徴とす
る。
【0010】また、本発明のスパークプラグの製造方法
は、筒状の絶縁体と、その絶縁体が軸線方向において内
側に挿通される筒状に形成されるとともに、その外周面
には軸線方向における第一端側に内燃機関への取付ねじ
部が形成される一方、第二端側の開口部に、絶縁体側の
加締め受部に向けて曲げ加締めすることにより加締め部
が形成された鋼鉄製の主体金具とをを有するスパークプ
ラグの製造方法であって、取付ねじ部と第二端側の加締
め予定部とを含む、加締め前の主体金具の外周面全面
に、加締め予定部における厚さが5〜15μmとなり、
かつ、荷重50mNにて測定したビッカース硬さが15
0〜630である電解ニッケルめっき層を形成するニッ
ケルめっき工程と、そのニッケルめっき層上に、含有さ
れるクロム成分の95質量%以上が三価クロムである電
解クロメート層を形成する電解クロメート処理工程と、
それら電解ニッケルめっき層と電解クロメート層とから
なる被覆層にて外面が覆われた主体金具の内側に絶縁体
を挿入し、第二端側の加締め予定部を該絶縁体の加締め
受部に向けて加締める加締め工程と、を含むことを特徴
とする。
【0011】なお、本明細書においては、ビッカース硬
さHvの試験方法については、JIS:Z2244に規
定された方法を用いるものとする。また、ビッカース硬
さ試験に用いる試験機は、JIS:B7725に適合す
るものを使用する。また、本明細書においてニッケルめ
っき層とは最も含有率の高い金属成分がニッケルである
めっき層をいい、ニッケル合金めっき層を概念として含
む。
【0012】上記本発明においては、鋼鉄製の主体金具
表面に形成する被覆層が、電解ニッケルめっき層と電解
クロメート層とからなる複合層を含む。そして、六価ク
ロム低減のため、含有されるクロム成分の95質量%以
上が三価クロムである電解クロメート層を採用する。す
なわち、通常の黄色クロメート層では、クロム成分の2
5〜35質量%程度が六価クロムであるのに対し、本発
明の層では、クロム成分に対する六価クロムの含有率が
5質量%以下と少ないので、六価クロムを削減しようと
する環境対策上の効果を高めることができる。電解クロ
メート層は、六価クロム成分を、不可避不純物レベルの
ものを除いて実質的に含有しないものであることがより
望ましい。
【0013】他方、このような電解クロメート層(以
下、三価クロム系電解クロメート層という)は、黄色ク
ロメート層と比較した場合に耐食性が若干劣る。そこ
で、本発明では、後述する加締め工程での不具合発生防
止も考慮しつつ、電解ニッケルめっき層及び電解クロメ
ート層の加締め部での厚さ及び硬さを特有の範囲にて調
整した。
【0014】具体的には、本発明においては、複合層を
構成する三価クロム系電解クロメート層が、加締め部で
の厚さが0.5μm以下と、後述する電解ニッケルめっ
き層よりも十分小さな値に設定されることにより、防食
性能を確保しつつも加締め部を形成する際の電解ニッケ
ルめっき層に対する追従変形性が向上し、ひいては加締
め部において三価クロム系電解クロメート層に割れや剥
離等の不具合が生じ難くなる。他方、電解ニッケルめっ
き層は、加締め部での厚さが2μm以上に設定されるこ
とにより、取付ねじ部のねじ谷部におけるめっき層厚さ
が、上記三価クロム系電解クロメート層との組合せにお
いて、発錆防止等を図る上で必要十分な値に確保され
る。
【0015】他方、三価クロム系電解クロメート層をあ
る程度薄くしたとしても、下地の電解ニッケルめっき層
の加工性(あるいは延性)が不足していれば、加締め時
において、電解ニッケルめっき層に割れ等が生じやすく
なり、その影響は当然、これを覆う電解クロメート層に
も波及する。そこで、本発明においては、硬さ測定用圧
子の先端が電解クロメート層を貫通して電解ニッケルめ
っき層側に食い込むように、荷重50mNにて測定した
複合層のビッカース硬さ(以下、これを「加締め部複合
層硬さ」という)が650以下となるように調整する。
これにより、複合層全体の加工性ひいては加締めに伴う
追従変形性が向上し、電解ニッケルめっき層及び電解ク
ロメート層のいずれにおいても、加締め部に割れや剥離
などの不具合が生じ難くなる。かくして、加締め部及び
取付ねじ部の双方における防食性能が十分に確保された
スパークプラグが実現する。
【0016】三価クロム系電解クロメート層の加締め部
における膜厚が0.05μm未満になると、複合層の耐
食性が不足することにつながる。特に、電解クロメート
層の着きまわりがそれほどよくない取付ねじ部の谷部等
において耐食性が不足し、発錆等の不具合を生じやすく
なる。他方、該膜厚が0.5μmを超えると、電解クロ
メート層の可撓性あるいは追従変形性が不足し、加締め
時において割れや剥がれ等の不具合が生じることにつな
がる。該膜厚は、より望ましくは0.1〜0.3μmで
あるのがよい。
【0017】また、電解ニッケルめっき層の加締め部に
おける膜厚が5μm未満になると、複合層の耐食性が同
様に不足することにつながる。また、該膜厚が15μm
を超えると、めっき層の内部応力が増大し、加締め部に
おける割れや剥がれ等の問題が生じやすくなる。また、
取付ねじ部の寸法精度が確保できなくなり、プラグホー
ルに螺合させる際の摺動性が損なわれることにつなが
る。該膜厚は、より望ましくは7〜13μmであるのが
よい。
【0018】前記の加締め部複合層硬さは、下地をなす
のが電解ニッケルめっき層であることから、最低でも1
70程度には大きくなる。当該硬さは、スパークプラグ
に適用するに際して特に支障を生ずるようなものではな
い。他方、上記の硬さが650を超えて大きくなると、
複合層の変形能が不足し、加締め部における割れや剥が
れ等の問題が生じやすくなる。
【0019】なお、上記のようにして測定した加締め部
複合層硬さは、電解ニッケルめっき層の硬さと電解クロ
メート層との硬さとの兼ね合いにより定まるパラメータ
であるが、本発明においては、電解ニッケルめっき層の
ほうが電解クロメート層よりもはるかに膜厚が大きいた
め、上記複合層の硬さは主に電解ニッケルめっき層の硬
さに支配される形となる。従って、本発明では、電解ニ
ッケルめっき層を、硬さが過度に大きくならず、ある程
度延性に富んだ性状のものとなるように形成することが
重要である。例えば、電解ニッケルめっき層単独にて荷
重50mNにて測定したビッカース硬さ(本明細書にお
いては、主体金具の軸線を含む断面にて主体金具を切断
したときに、電解ニッケルめっき層の加締め部を覆う部
分の断面にて測定した硬さとして定義する:以下、これ
を「加締め部ニッケルめっき層硬さ」という)は、15
0〜630となっているのがよい。この加締め部ニッケ
ルめっき硬さは、電解クロメート層の厚さが0.3μm
以下になると、前述の加締め部複合層硬さと略同じ値と
なる。
【0020】次に、複合層により覆われた加締め部表面
の粗さ(以下、「加締め部表面粗さ」という)は、算術
平均粗さRaにて0.05〜0.9μmとなっているこ
とが望ましい。このように加締め部表面粗さを調整する
ことにより、加締め部を形成する際の加締め金型との摺
動性が向上するので、不均一変形等による複合層の割れ
や剥離等が生じ難くなり、耐食性を一層向上させること
ができる。また、最大高さRyは0.2〜18μm(い
ずれもJIS:B0607による)となっていることが
望ましい。なお、電解ニッケルめっき層は光沢ニッケル
めっき層とすることができる。なお、粗さ数値範囲の下
限値は製造コストを考慮して定めたものであるが、安価
に平滑な面が得られるのであれば粗さ(Ra及び/又は
Ry)をさらに小さな値に設定することも可能である。
【0021】なお、加締め部において複合層の割れや剥
離等が生じ難くするためには、電解ニッケルめっき層の
延性(すなわち加締め時の追従変形性)の向上と、複合
層により覆われた加締め部表面粗さを小さくすることの
両方が重要である。ここで、加締め部表面粗さは、電解
クロメート層の形成厚さが本発明では比較的小さいこと
から、電解ニッケルめっき層の表面粗さの影響を大きく
受ける。具体的には、加締め部表面の粗さを小さくする
には、電解ニッケルめっき層の表面を平滑に仕上げる必
要がある。そして、電解ニッケルめっき層の表面を平滑
にするには、めっき浴中に添加する光沢剤の量を増やさ
なければならないが、光沢剤の量が増すと形成される電
解ニッケルめっき層が硬くなり、電解ニッケルめっき層
の延性確保の観点においては不利に作用する。従って、
加締め部表面粗さが小さくなれば、加締め部複合層硬さ
がある程度大きくとも、複合層の割れや剥離等の少ない
健全な加締め部を形成することが可能である。例えば、
電解ニッケルめっき層の光沢を増すことで、加締め部表
面粗さが算術平均粗さRaにて0.8μm以下、最大高
さRyにて12μm以下とした場合、加締め部ニッケル
めっき層硬さは330〜630程度、加締め部複合層硬
さは350〜650程度と、やや大きな値となる場合が
ある。しかしながら、加締め部表面粗さが小さいことか
ら、健全な加締め部を問題なく形成することができる。
【0022】他方、従来のスパークプラグでは、光沢の
大きい亜鉛めっき層上にクロメート層を形成した主体金
具(以下、亜鉛クロメート処理品という)が使用されて
いたが、亜鉛めっき層を、より耐食性の良好なニッケル
めっき層に置き換える際に、光沢の小さいニッケルめっ
き層を使用したのでは、亜鉛クロメート処理品に慣れ親
しんでいたユーザーにとって外観上の違和感が甚だし
く、その抵抗感から必ずしもスムーズに製品が受け入れ
られない、といった不具合も生じうる。この場合、平滑
な電解ニッケルめっき層を形成することで主体金具の外
観が向上し、上記のような違和感を生じ難くすることが
できる。そして、このように平滑な電解ニッケルめっき
層を採用する場合においても、加締め部ニッケルめっき
硬さを650程度まで、加締め部複合層硬さを630程
度までに留めることで、加締め部表面粗さが小さくなる
こととも相俟って、健全な加締め部を問題なく形成する
ことができる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図
面を用いて説明する。図1に示す本発明の一例たる抵抗
体入りスパークプラグ100は、筒状の主体金具1、先
端部が突出するようにその主体金具1内に嵌め込まれた
筒状の絶縁体2、先端部を突出させた状態で絶縁体2の
内側に設けられた中心電極3、及び主体金具1に一端が
結合され、他端側が中心電極3の先端と対向するように
配置された接地電極4等を備えている。接地電極4と中
心電極3の間には火花放電ギャップgが形成されてい
る。
【0024】絶縁体2は、例えばアルミナあるいは窒化
アルミニウム等のセラミック焼結体により構成され、そ
の内部には自身の軸方向に沿って中心電極3を嵌め込む
ための貫通孔6を有している。貫通孔6の一方の端部側
に端子金具13が挿入・固定され、同じく他方の端部側
に中心電極3が挿入・固定されている。また、該貫通孔
6内において端子金具13と中心電極3との間に抵抗体
15が配置されている。この抵抗体15の両端部は、導
電性ガラスシール層16,17を介して中心電極3と端
子金具13とにそれぞれ電気的に接続されている。
【0025】主体金具1は、炭素鋼等の金属により円筒
状に形成されており、スパークプラグ100のハウジン
グを構成するとともに、その外周面には、スパークプラ
グ100を図示しないエンジンブロックに取り付けるた
めのねじ部7が形成されている。なお、1eは、主体金
具1を取り付ける際に、スパナやレンチ等の工具を係合
させる工具係合部であり、六角状の軸断面形状を有して
いる。他方、主体金具1の後方側開口部内面と、絶縁体
2の外面との間には、加締め受部をなすフランジ状の突
出部2eの後方側周縁と係合するリング状の線パッキン
62が配置され、そのさらに後方側にはタルク等の充填
層61を介してリング状のパッキン60が配置されてい
る。そして、絶縁体2を主体金具1に向けて前方側に押
し込み、その状態で主体金具1の開口縁をパッキン60
(ひいては加締め受部たる突出部2e)に向けて内側に
加締めることにより加締め部1dが形成され、主体金具
1が絶縁体2に対して固定されている。
【0026】また、主体金具1のねじ部7の基端部に
は、ガスケット30がはめ込まれている。このガスケッ
ト30は、炭素鋼等の金属板素材を曲げ加工したリング
状の部品であり、ねじ部7をシリンダヘッド側のねじ孔
にねじ込むことにより、主体金具1側のフランジ状のガ
スシール部1fとねじ孔の開口周縁部との間で、軸線方
向に圧縮されてつぶれるように変形し、ねじ孔とねじ部
7との間の隙間をシールする役割を果たす。
【0027】次に、主体金具1の下地層(例えば炭素
鋼)40の外面全体には、防食のための電解ニッケルめ
っき層41が形成され、そのさらに外側が三価クロム系
電解クロメート層(以下、単に「電解クロメート層」と
いう)42で覆われている。これら電解ニッケルめっき
層41と電解クロメート層とが複合層を形成する。ま
た、ガスケット30の外面にも、同様に電解ニッケルめ
っき層45と三価クロム系電解クロメート層46とが形
成される。
【0028】上記のようにして複合層が形成された金具
組立体Wすなわち主体金具1は、図1に示すように、絶
縁体2に加締め固定される。図7は主体金具1を絶縁体
2に加締め固定する工程の一例を示すものである(接地
電極4は省略して描いている)。まず図7(a)に示す
ような、主体金具1に対し、図7(b)のように貫通孔
6に中心電極3及び導電性ガラスシール層16,17、
抵抗体15及び端子金具13を予め組みつけた絶縁体2
を挿入開口部1p(加締め部1dとなるべき加締め予定
部200が形成されている)から挿入し、絶縁体2の係
合部2hと主体金具1の係合部1cとを、板パッキン6
3を介して係合させた状態とする。
【0029】そして、図7(c)に示すように、主体金
具1の挿入開口部1p側から内側に線パッキン62を配
置し、タルク等の充填層61を形成してさらに線パッキ
ン60を配置する。そして、加締め金型111により、
加締め予定部200を線パッキン62、充填層61及び
線パッキン60を介して、加締め受部としての突出部2
eの端面2nに加締めることにより、図7(d)に示す
ように加締め部1dが形成され、主体金具1が絶縁体2
に加締め固定される。その後、接地電極4を中心電極3
側に曲げ加工して火花放電ギャップgを形成することに
より、図1のスパークプラグ100が完成する。
【0030】上記主体金具1及びガスケット30におい
て、複合層をなす電解ニッケルめっき層及び電解クロメ
ート層は、いずれも同一の方法によって形成されるもの
であり、以下、主体金具1側で代表させて説明を行な
う。本発明においては、加締め部1dにおける電解ニッ
ケルめっき層41の追従変形性を高めるために、層の硬
さを低下させて延性に富むものとすることが望ましい。
具体的には、電解ニッケルめっき層41は、主体金具1
の軸線Oを含む断面にて主体金具を切断したときに、電
解ニッケルめっき層の加締め部1dを覆う部分の断面に
て荷重50mNにて測定したビッカース硬さが130〜
630の、光沢ニッケルめっき層として形成されるもの
である。図3(a)に示す、加締め部1dの外面におけ
る電解ニッケルめっき層41の厚さt1は5〜15μm
(望ましくは7〜13μm)である。他方、図3(b)
に示す、取付ねじ部7のねじ谷部における電解ニッケル
めっき層41の厚さt2は0.2〜2μmである。ま
た、工具係合部1eにおける電解ニッケルめっき層41
の厚さは3〜9μmである。
【0031】上記のような複合層を主体金具1の表面に
形成することにより、JIS H8502に規定された
めっきの耐食性試験方法における「5.中性塩水噴霧試
験方法」を行ったときに、鋼鉄製の下地層40の腐食に
由来する赤錆が加締め部の全表面のおよそ20%以上現
われるまでの耐久時間を、24時間以上とすることがで
きる。また、電解ニッケルめっき層の膜厚が不足しがち
な取付ねじ部においても、JISH8502に規定され
ためっきの耐食性試験方法における「5.中性塩水噴霧
試験方法」を行ったときに、下地層40の腐食に由来す
る赤錆が取付ねじ部の全表面のおよそ20%以上現われ
るまでの耐久時間を、24時間以上確保することができ
る。これらはいずれも、スパークプラグ100の主体金
具1が備えているべき耐食性のレベルとしては十分なも
のである。
【0032】上記のような電解ニッケルめっき層41
は、例えば公知のバレルめっき法により形成することが
できる。この場合、主体金具1には、その取付ねじ部7
側の開口部に接地電極4の基端側を溶接により取り付
け、金具組立体Wとしておく。この段階で接地電極4は
曲げ加工前であり、主体金具1の軸線方向に直線的に延
びた状態となっている。図2に、バレルめっきに使用す
る装置の一例を模式的に示している。バレルめっき装置
199においては、壁面が網や穴開き板等により液通に
構成された保持容器202内に、複数の金具組立体Wが
バラ積み状態で挿入され、めっき槽200内のニッケル
めっき浴L1内に浸漬される。また、めっき浴L1中には
対向電極203が配置される。モータ201により保持
容器202を水平な回転軸線周りに回転駆動しながら、
保持容器202内の通電電極205を介して、金具組立
体Wと対向電極203との間で直流電源204により通
電すれば、金具組立体Wは接地電極4を含むその外面全
面に電解ニッケルめっきが施されることとなる。バレル
めっきは、上記のような回転バレルめっきの他、揺動バ
レルめっきを採用することも可能である。
【0033】ニッケルめっき浴は、光沢ニッケルめっき
に適していて、しかも内部応力の小さい比較的軟質のニ
ッケルめっき層が得られるものを使用することが望まし
い。このようなニッケルめっき浴としては、例えば、硫
酸ニッケル(6水和物)を200〜380g/リットル
(望ましくは220〜290g/リットル)、塩化ニッ
ケル(6水和物)を20〜60g/リットル(望ましく
は40〜50g/リットル)、及びほう酸を20〜60
g/リットル(望ましくは40〜50g/リットル)の
割合にて含有するめっき浴(いわゆるワット浴)を、本
発明に好ましく用いることができる。
【0034】硫酸ニッケルはめっき浴の主成分をなすも
のであり、塩化ニッケルは、ニッケル陽極の溶解性を高
めて浴伝導度を高めることにより、電解ニッケルめっき
層41の主体金具1への着きまわり(特に、取付ねじ部
7への着きまわり)を良好なものとし、また、その平滑
性を高める働きをなす。ただし、塩化ニッケルの過剰の
添加は、得られる電解ニッケルめっき層41の硬さを上
記範囲の上限を超えて増加させることにつながり、該電
解ニッケルめっき層41の延性が低下して加締め部1d
において割れや剥離等の不具合を生ずることにつなが
る。
【0035】また、電解ニッケルめっき層41の硬さを
上記範囲のものとするためには、めっき浴のpHを2.
0〜4.8の範囲に調整することが望ましい。pHが
4.8を超えると、電解ニッケルめっき層41の内部応
力及び硬さの過度の上昇を招く。他方、pHが2.0未
満では、ニッケル陽極の溶解性が低下し、電解ニッケル
めっき層41の主体金具1への着きまわり不良を招く場
合がある。上記めっき浴のpHは、より望ましくは3.
8〜4.8の範囲にて調整するのがよい。なお、めっき
浴中のほう酸は、pHを該範囲に維持するための緩衝剤
として機能する。また、めっき層の平滑性を高める作用
も有する。ほう酸の添加量が不足すると、pHの上昇を
生じやすくなり、電解ニッケルめっき層41の内部応力
及び硬さの過度の増大につながる場合がある。他方、ほ
う酸の添加量が過剰になると、めっき浴温度が低下した
ときにほう酸の析出を生じやすくなる。
【0036】さらに、電解ニッケルめっき層41の硬さ
に影響を与える他の因子としては、陰極電流密度及びめ
っき浴温度などがある。めっき層の硬さはめっき速度が
速いほうが小さくなりやすく、柔軟なめっき層が得やす
くなるが、このためには陰極電流密度を上昇させるこ
と、例えば8〜10A/dm程度に調整するのがよ
い。また、陰極電流密度を高めるためにはめっき浴温度
をある程度上昇させることが有利であり、例えば浴温度
を45〜65℃、望ましくは50〜58℃に調整するの
がよい。
【0037】なお、めっき浴としては、上記説明したも
ののほか、めっき浴主成分として硫酸ニッケルに代え、
スルファミン酸ニッケルを300〜500g/リット
ル、ほう酸を30〜50g/リットル含有するめっき浴
(いわゆるスルファミン酸ニッケル浴;得られるめっき
層の硬さが前述の範囲内となる条件にて、必要に応じて
塩化ニッケルを30g/リットル程度までの範囲に添加
できる)、あるいは、硼弗化ニッケルを300〜450
g/リットル、ほう酸を20〜40g/リットルの割合
にて含有した硼弗化ニッケル浴などを、本発明に好適に
使用することができる。
【0038】次に、使用するめっき浴には、得られる電
解ニッケルめっき層の平滑性を高めるために、適量の光
沢剤を添加することが望ましい。光沢剤は、通常、1次
光沢剤と2次光沢剤とを併用する。1次光沢剤は、後述
する2次光沢剤の濃度範囲を広くするととともに応力を
減少させる働きをなし、2次光沢剤による光沢付与効果
を確実に引き出すためのいわば光沢助剤として作用す
る。一方、2次光沢剤は光沢作用の主を担うものであ
り、適量の1次光沢剤を添加することを前提に、少量の
添加でも、得られるめっき層を顕著に平滑化する働きを
有する。
【0039】1次光沢剤としては、具体的には、=C−
SO−の構造を分子中に含む有機化合物、例えば各種
のスルホン酸塩(例えば1,3,6ナフタレントリスル
ホン酸ナトリウム、1,5ナフタリンジスルホン酸ナト
リウム)、スルホンイミド(例えばサッカリン)、スル
ホンアミド(例えばパラトルエンスルホンアミド)ある
いはスルフィン酸を用いることができる。めっき浴中へ
の配合量は、例えば1〜5g/リットル程度が適当であ
る。1次光沢剤の配合量が1g/リットル未満になる
と、必要十分な光沢を得ようとした場合に二次光沢剤の
配合量を増やさざるを得なくなり、めっき層が脆く高硬
度のものとなりやすくなる。他方、1次光沢剤の配合量
が5g/リットルを超えると、めっき層の過剰な高硬度
化あるいは脆化を招かない程度に光沢剤の量を抑えよう
とした場合は、付与される光沢が不足することにつなが
り、後述する加締め工程の実施時に加締め金型との滑り
性が低下して、加締め部1dが正常に形成できなくなる
場合がある。他方、光沢を十分に付与しようとすれば、
2次光沢剤と合わせた合計添加量が過剰となり、めっき
層の過剰な高硬度化あるいは脆化を生じて、加締め加工
時にめっき層への割れや剥離が生じやすくなる。なお、
1次光沢剤の配合量は、望ましくは2〜4g/リットル
とするのがよい。
【0040】また、2次光沢剤としては、C=O、C=
C、C≡C、C=N、C≡N、N−C−S、N=Nある
いは−CH−CH−O−の少なくともいずれかの構造
を分子中に含む有機化合物がある。代表的なものとして
は、クマリン、2ブチン−1・4ジオール、エチレンシ
アンヒドリン、プロパギルアルコール、ホルムアルデヒ
ド、チオ尿素、キノリン、ピリジンなどを好ましく使用
することができる。めっき浴中への配合量は、例えば
0.1〜0.3g/リットル程度が適当である。1次光
沢剤の配合量が0.1g/リットル未満になると、付与
される光沢が不足することにつながり、後述する加締め
工程の実施時に加締め金型との滑り性が低下して、加締
め部1dが正常に形成できなくなる場合がある。他方、
添加量が0.3g/リットルを超えると、めっき層の過
剰な高硬度化あるいは脆化を生じて、加締め加工時にめ
っき層への割れや剥離が生じやすくなる。
【0041】なお、電解ニッケルめっき層41を主体金
具1の表面に形成するに先立って、主体金具1の表面に
はストライクめっき処理を行なうことが、電解ニッケル
めっき層41と主体金具1の下地層40との密着性、特
に、取付ねじ部7における電解ニッケルめっき層41の
密着性を向上させる上で望ましい。このストライクめっ
き処理は、めっき層の密着性改善効果が必要十分なレベ
ルにて得られる範囲にて、なるべく短時間にて行なうの
がよい。ストライクめっき処理は、例えばニッケルスト
ライクめっき処理とすることができ、そのめっき浴とし
ては、例えば塩化ニッケルを150〜250g/リット
ル(望ましくは180〜220g/リットル)及び塩酸
を120〜180g(望ましくは135〜165g/リ
ットル)を含有するものを使用することができる。
【0042】次に、三価クロム系電解クロメート層42
は、含有されるクロム成分の95質量%以上が三価クロ
ムであり、かつその膜厚が0.05〜0.5μm、望ま
しくは0.1〜0.3μmである。なお、クロム成分
は、なるべく多くの部分が三価クロム成分となっている
のがよく、望ましくはクロム成分の実質的に全てが三価
クロム成分となっているのがよい。
【0043】三価クロム系電解クロメート層42は、下
側の電解ニッケルめっき層41上に直接接して形成さ
れ、該電解ニッケルめっき層41とともに複合層を形成
する。そして、図5に示すように、硬さ測定用圧子80
の先端が電解クロメート層42を貫通して電解ニッケル
めっき層41側に食い込むように、荷重50mNにて測
定した該複合層のビッカース硬さ(加締め部複合層硬
さ)は150〜650である。
【0044】複合層により覆われた加締め部1dの表面
の粗さ(加締め部表面粗さ)は、算術平均粗さRaにて
0.05〜0.9μm、最大高さRyにて0.2〜18
μmとされる。また、電解クロメート層42を形成後に
おいて、上記のような表面粗さレベルが確保できるよ
う、電解クロメート層42を形成する前の、電解ニッケ
ルめっき層41の表面粗さは、算術平均粗さRaにて
0.1〜5μm、最大高さRyにて0.4〜25μmと
なっていることが望ましい。
【0045】なお、複合層を形成した主体金具1の外観
を向上させるために、加締め部表面粗さを算術平均粗さ
Raにて0.05〜0.8μm、最大高さRyにて0.
2〜12μm程度にまで高めることができる。この場
合、光沢剤の添加量を前記した望ましい数値範囲内にて
増加させる必要がある。その結果、形成される電解ニッ
ケルめっき層41の硬さも増加し、例えば加締め部複合
層硬さが350以上、加締め部ニッケルめっき層硬さが
330程度となる。この場合も、加締め部複合層硬さが
650以下、加締め部ニッケルめっき層硬さが630以
下となるように調整することで、加締め部1dの形成を
問題なく行なうことができる。
【0046】電解クロメート処理工程においては、重ク
ロム酸ナトリウム及び重クロム酸カリウムの一方又は双
方を含有する水溶液を電解クロメート処理浴として使用
することができる。これらの水溶液は、クロムイオンが
本質的に六価クロムを主体とする形で存在するものであ
るが、六価クロムを三価クロムに還元しながら陰極側の
主体金具1(の電解ニッケルめっき層41)上に三価ク
ロム系電解クロメート層42として電解析出させるもの
である。
【0047】この場合、電解クロメート処理の条件は、
六価クロムの還元反応を効率的に進行させ、ひいては得
られる電解クロメート層42中のクロム成分の95質量
%以上が三価クロムとなるように設定することが重要で
ある。例えば、電解クロメート処理浴中において、重ク
ロム酸ナトリウム及び重クロム酸カリウムの合計濃度は
2〜5質量%であるのがよい。該合計濃度が2質量%未
満では電解効率が低下し、所期の厚さの電解クロメート
層42を得るのに時間がかかりすぎる問題を生ずる。他
方、上記合計濃度が5質量%を超えると、電解クロメー
ト層42の密着性低下につながる問題を生ずる。また、
電解クロメート処理浴のpHは2〜5に調整するのがよ
い。pHが2未満では、電解クロメート層42中に取り
込まれる六価クロム成分が増加しやすくなり、また、所
期の厚さの電解クロメート層42を得るのに時間がかか
りすぎる問題を生ずる。他方、pHが5を超えると密着
性の良好な電解クロメート層42が得にくくなる。
【0048】また、クロメート処理浴の温度は、例えば
20〜40℃に調整するのがよい。温度が20℃未満で
は電解効率が低下し、所期の厚さの電解クロメート層4
2を得るのに時間がかかりすぎる問題を生ずる。また、
40℃を超えると電解クロメート層42の密着性低下に
つながる場合がある。また、陰極電流密度は、15〜3
0A/dmに調整するのがよい。陰極電流密度が15
A/dm未満では電解効率が低下し、所期の厚さの電
解クロメート層42を得るのに時間がかかりすぎる問題
を生ずるほか、電解クロメート層42中に取り込まれる
六価クロム成分も増加しやすくなる。他方、陰極電流密
度が30A/dmを超えると密着性の良好な電解クロ
メート層42が得にくくなる。
【0049】なお、電解クロメート処理工程は、電解ニ
ッケルめっきと類似のバレル処理に行なってもよいが、
形成される電解クロメート層42が電解ニッケルめっき
層41と比較すると脆いこと、及び電解クロメート層4
2の形成厚さがかなり小さいことから、静止めっき法
(いわゆる引っ掛けめっき法)を採用することが、欠陥
のより少ない電解クロメート層42を得る上で有利であ
る。図4はその一例を模式的に示すものであり、電解ニ
ッケルめっき層41を形成した金具組立体Wの片側の開
口に、直流電源の陰極側に接続された導体治具Jを弾性
的に圧縮しながら差し込み、該導体治具Jの弾性復帰力
により金具組立体Wを着脱可能かつ直流電源により通電
可能に支持する。その状態でクロメート処理浴中にて陽
極Aと対向させ、直流電源にて通電することにより、金
具組立体Wの電解ニッケルめっき層41上に電解クロメ
ート層42が形成される。
【0050】なお、複合層を形成した主体金具1には、
さらに防錆剤の塗布を行なうことも耐食性向上を図る上
で有効である。防錆剤は市販品を使用することができ、
例えば、P3A100(ヘンケルジャパン(株)製、成
分:水酸化カリウム30質量%、ケイ酸塩50質量%、
炭酸塩10質量%、重合リン酸塩5質量%、非イオン系
界面活性剤5質量%、脱イオン水等にて適当な濃度に希
釈して使用し、脱脂剤としての機能も兼ねる)を一例と
して挙げることができる。
【0051】
【実施例】(実施例1)JISG3539に規定された
冷間圧造用炭素鋼線SWCH8Aを素材として用い、図
7(a)に示す形状の主体金具1を冷間鍛造により製造
した。なお、主体金具1のねじ部7の呼びは14mmで
あり、軸方向長さは約19mmとした。これに接地電極
4を図2に示すように溶接接合し、脱脂・水洗を行なっ
た後、下記の条件によりニッケルストライクめっき処理
を、図2に示すバレルめっき処理により行なった。 (1)めっき浴組成(溶媒:脱イオン水) 塩化ニッケル:200g/リットル 塩酸:150g/リットル 溶媒:脱イオン水 (2)めっき条件 浴温:35℃ 浴pH:0.5 陰極電流密度0.7A/dm めっき時間:4分
【0052】ニッケルストライクめっき処理後の主体金
具は水洗後、図2に示すバレルめっき処理により以下の
条件にて電解ニッケルめっき処理を施すことにより電解
ニッケルめっき層41を形成した。 (1)めっき浴組成 硫酸ニッケル:250g/リットル 塩化ニッケル:45g/リットル 溶媒:脱イオン水 1次光沢剤:アクナB−1(奥野製薬工業(株)製、成
分:ナフタリンジスルホン酸塩5質量%、ベンゼンスル
ホン酸誘導体7質量%、イオン交換水88質量%)、添
加量:X(g/リットル) 2次光沢剤:アクナB−2(奥野製薬工業(株)製、成
分:2−ブチン−1,4−ジオール13質量%、アセチ
レン誘導体9質量%、イオン交換水78質量%)、添加
量:Y(g/リットル) 光沢剤添加量条件: ・条件1(実施例):X/Y=35/1.5 (2)めっき条件 浴温:53℃ 浴pH:4 陰極電流密度:0.8A/dm めっき時間:約6分(試験品1:比較例)、約30分
(試験品2:実施例)、約60分(試験品3:比較例)
【0053】電解ニッケルめっき処理の終了した主体金
具1は、水洗後、図4に示す静止めっき処理により下記
の条件にて電解クロメート処理した。 (1)めっき浴組成 重クロム酸ナトリウム:34g/リットル 溶媒:脱イオン水 (2)めっき条件 浴温:30℃ 浴pH:3.5 陰極電流密度:0.5A/dm めっき時間:約1.5分
【0054】上記各主体金具を、図7に示す方法により
絶縁体2に加締め固定することにより、加締め予定部2
00を加締め部1dとなしてスパークプラグ試験品を組
み立てた。加締め荷重は4〜5tとした。試験品は、後
述する種々の破壊試験ないし分析に供するために、各条
件とも複数個ずつ作製した。
【0055】加締め後のスパークプラグは、加締め部1
dにおいて前述の加締め部複合層硬さを測定した(荷重
50mNによるビッカース硬さ)。いずれの試験品にお
いても、硬さ測定用の圧子が電解ニッケルめっき層42
にまで食い込んでいることがわかった。なお、硬さ値
は、ばらつきの影響を軽減するために20点測定を行
い、その最大と最小をカットした残りの測定値の平均に
て求めるようにした。他方、絶縁体の軸線を含む断面に
て試験品を切断し、その断面にて加締め部ニッケルめっ
き層硬さを測定した。使用した微小ビッカース硬さ計は
(株)明石製作所製の微小硬度計(MVK−E)であ
る。また、走査型電子顕微鏡(SEM)にて断面を観察
することにより、加締め部1d及び取付ねじ部7のねじ
谷部における電解ニッケルめっき層42の形成厚さと、
加締め部1dにおける電解クロメート層41の厚さとを
測定した。ねじ谷部の電解ニッケルめっき層42の形成
厚さは、断面に現われる谷底位置から谷の深さ方向に測
定した厚さである。他方、加締め部1dの表面をSEM
にて観察することにより、複合層表面に割れや剥離等が
発生していないかどうかを確認した。さらに、加締め部
1dの表面における表面粗さプロファイルを、JIS:
B0601に規定された方法に従い測定し、算術平均粗
さRaと最大高さRyとを求めた。なお、使用した測定
装置は三鷹光器(株)製の非接触三次元測定機(NH−
3)である。
【0056】また、形成された電解クロメート層中のク
ロムの存在状態を、X線光電子分光分析法(XPS)に
より調べたところ、クロム成分のほとんど全てが三価ク
ロムになっていることが確認できた。
【0057】そして、以上の試験品に対し、JIS H
8502に規定されためっきの耐食性試験方法における
「5.中性塩水噴霧試験方法」を行い、鋼鉄製の下地層
の腐食に由来する赤錆が加締め部1dの全表面のおよそ
20%以上現われるまでの耐久時間(耐久時間と称す
る)と、同じく赤錆が取付ねじ部の全表面のおよそ20
%以上現われるまでの耐久時間(耐久時間と称する)
を、それぞれ測定した。以上の結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】本発明の範囲に属する試験品2について
は、加締め部1dにおける割れやクラックは観察され
ず、塩水噴霧試験における耐久性も良好である。他方、
電解ニッケルめっき層の厚さが不足する試験品1につい
ては、塩水噴霧試験における耐久性が不十分である。他
方、電解ニッケルめっき層の厚さが過剰な試験品5で
は、プラグホールへの取り付け時において、取付ねじ部
7に作用する締め付けトルクが過剰に大きく、取り付け
困難となった。また、加締め部1dにおいて複合層に若
干の割れが見られた。
【0060】(実施例2)ニッケルストライクめっき処
理までを実施例1と同様に行い、電解ニッケルめっき処
理を以下の条件にて行なった。 (1)めっき浴組成 硫酸ニッケル:250g/リットル 塩化ニッケル:45g/リットル 溶媒:脱イオン水 1次光沢剤:アクナB−1、添加量:X(g/リット
ル) 2次光沢剤:アクナB−2、(添加量:Y(g/リット
ル)) 光沢剤添加量条件: 条件2(実施例):X/Y=50/2(試験品4) 条件3(実施例):X/Y=55/2.5(試験品5) 条件4(比較例):X/Y=60/3(試験品6) (2)めっき条件 浴温:53℃ 浴pH:4 陰極電流密度:0.8A/dm めっき時間:約30分
【0061】電解ニッケルめっき処理の終了した主体金
具1は、実施例1と同様に電解クロメート層42を形成
した。そしてこれらを、図7に示す方法により絶縁体2
に加締め固定することにより、加締め予定部200を加
締め部1dとなしてスパークプラグ試験品を組み立て、
実施例1と同様の評価を行なった。以上の結果を表2に
示す。
【0062】
【表2】
【0063】本発明の範囲に属する試験品6及び7につ
いては、加締め部1dにおける割れやクラックは観察さ
れず、塩水噴霧試験における耐久性も良好である。他
方、加締め部複合層硬さが過剰な試験品6については、
加締め部1dにおいて複合層に割れが見られ、塩水噴霧
試験における耐久性に問題があることがわかる。
【0064】(実施例3)電解ニッケルめっき処理まで
を実施例1と同様に行い、その後、図4に示す静止めっ
き処理により下記の条件にて電解クロメート処理した。 (1)めっき浴組成 重クロム酸ナトリウム:34g/リットル 溶媒:脱イオン水 (2)めっき条件 浴温:30℃ 浴pH:3.5 陰極電流密度:0.5A/dm めっき時間:約10秒(比較例)、約1分(実施例)、
約10分(比較例)
【0065】そして、主体金具の上記各試験品を、図7
に示す方法により絶縁体2に加締め固定することによ
り、加締め予定部200を加締め部1dとなしてスパー
クプラグ試験品を組み立て、実施例1と同様の評価を行
なった。以上の結果を表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】本発明の範囲に属する試験品10について
は、加締め部1dにおける割れやクラックは観察され
ず、塩水噴霧試験における耐久性も良好である。他方、
電解クロメート層が不足する試験品7については、取付
ねじ部において塩水噴霧試験の耐久性に問題があること
がわかる。また、電解クロメート層が過剰な試験品9に
ついては、加締め部において電解クロメート層に割れが
見られ、塩水噴霧試験の耐久性が若干不足していること
がわかる。
【0068】なお、図6(a)は実施例1の番号2の試
験品について測定した、(b)は同じく実施例2の番号
7の試験品について測定した、加締め部の各表面粗さプ
ロファイルである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例たるスパークプラグを示す縦
半断面図。
【図2】電解ニッケルめっき処理の一例を示す工程説明
図。
【図3】加締め部及び取付ねじ部に形成されたニッケル
めっき層の断面模式図。
【図4】電解クロメート処理の一例を示す工程説明図。
【図5】加締め部複合層硬さの測定方法を概念的に示す
説明図。
【図6】加締め部における複合層の表面粗さプロファイ
ルのいくつかの測定例を示す図。
【図7】加締め工程の一例を示す工程説明図。
【符号の説明】
1 主体金具 1d 加締め部 2 絶縁体 2e 突出部(加締め受部) 3 中心電極 4 接地電極 30 ガスケット 41,45 電解ニッケルめっき層 42,46 電解クロメート層 100 スパークプラグ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浅野 常雄 名古屋市瑞穂区牛巻町4番6号 名古屋メ ッキ工業株式会社内 Fターム(参考) 3G019 KA01 5G059 AA04 CC02 GG01 GG03 GG05 GG07 GG09 JJ09

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 筒状の絶縁体と、 その絶縁体が軸線方向において内側に挿通される筒状に
    形成されるとともに、その外周面には軸線方向における
    第一端側に内燃機関への取付ねじ部が形成される一方、
    第二端側の開口部に、前記絶縁体側の加締め受部に向け
    て曲げ加締めすることにより加締め部が形成された主体
    金具とを有し、 該主体金具は、鋼鉄製の下地本体部を有するとともに、
    該下地本体部の前記加締め部外面と前記取付ねじ部とを
    含む外周面が、前記加締め部外面における厚さが5〜1
    5μmとなるように形成された電解ニッケルめっき層
    と、その電解ニッケルめっき層上に接して形成されると
    ともに、含有されるクロム成分の95質量%以上が三価
    クロムであって、膜厚が0.05〜0.5μmである電
    解クロメート層とからなる複合層によって被覆されてな
    り、 かつ、硬さ測定用圧子の先端が前記電解クロメート層を
    貫通して前記電解ニッケルめっき層側に食い込むよう
    に、荷重50mNにて測定した前記複合層のビッカース
    硬さが170〜650であることを特徴とするスパーク
    プラグ。
  2. 【請求項2】 前記主体金具の軸線を含む断面にて前記
    主体金具を切断したときに、前記電解ニッケルめっき層
    の前記加締め部を覆う部分の断面にて、荷重50mNに
    て測定した当該電解ニッケルめっき層のビッカース硬さ
    が150〜630である請求項1記載のスパークプラ
    グ。
  3. 【請求項3】 前記電解ニッケルめっき層は光沢ニッケ
    ルめっき層である請求項1又は2に記載のスパークプラ
    グ。
  4. 【請求項4】 前記クロメート層は、六価クロム成分を
    実質的に含有しない請求項1ないし3のいずれかに記載
    のスパークプラグ。
  5. 【請求項5】 筒状の絶縁体と、その絶縁体が軸線方向
    において内側に挿通される筒状に形成されるとともに、
    その外周面には軸線方向における第一端側に内燃機関へ
    の取付ねじ部が形成される一方、第二端側の開口部に、
    前記絶縁体側の加締め受部に向けて曲げ加締めすること
    により加締め部が形成された鋼鉄製の主体金具とをを有
    するスパークプラグの製造方法であって、 前記取付ねじ部と前記第二端側の加締め予定部とを含
    む、加締め前の主体金具の外周面全面に、前記加締め予
    定部における厚さが5〜15μmとなり、かつ、荷重5
    0mNにて測定したビッカース硬さが150〜630で
    ある電解ニッケルめっき層を形成するニッケルめっき工
    程と、 そのニッケルめっき層上に、含有されるクロム成分の9
    5質量%以上が三価クロムである電解クロメート層を形
    成する電解クロメート処理工程と、 それら電解ニッケルめっき層と電解クロメート層とから
    なる被覆層にて外面が覆われた主体金具の内側に前記絶
    縁体を挿入し、前記第二端側の加締め予定部を該絶縁体
    の前記加締め受部に向けて加締める加締め工程と、 を含むことを特徴とするスパークプラグの製造方法。
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