JP2002154482A - 水ジェット推進艇のポンプ室の遮音構造 - Google Patents

水ジェット推進艇のポンプ室の遮音構造

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エンジン性能を低下させることなく排気騒音
を低減できるようにする。 【解決手段】 ポンプ室6の排気出口6aとノズル26
との間に、ポンプ室6の内面とポンプハウジング9の外
面との間の空間Sの大部分を遮蔽しつつ排気ガス排出用
隙間tを形成する遮音板30,30´を設けて、この遮
音板30,30´は、所定以上の排気圧で後方へ撓み可
能に設定されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水ジェット推進艇
のポンプ室の遮音構造に関する。
【0002】
【従来の技術】水ジェット推進艇は、艇体の後下部に船
底板とともに画成されたポンプ室内にジェット推進機の
ポンプハウジングが収容され、このポンプハウジング内
のインペラの回転で、船底の水吸い込み口から水吸い込
みダクトに吸い込んだ水をポンプハウジングの後部のノ
ズルから後方に噴射させることにより、前方に推進され
るようになる。また、操舵ハンドルでディフレクターを
垂直軸回りに回動させることにより、前方に推進されな
がら旋回されるようになる。
【0003】そして、上記ポンプ室を構成する壁にはエ
ンジンの排気管が接続されて、排気ガスをポンプ室の排
気出口から艇外に排出させるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のような水ジェッ
ト推進艇においては、排気ガスがポンプ室の排気出口か
ら艇外に直接排出されることから排気騒音が高くなると
ともに、旋回中にノズルとディフレクターとの隙間から
溢れた噴流が逆流して排気出口を塞ぐことによりチョー
キング現象が発生してエンジン性能が低下するという問
題があった。
【0005】本発明は、上記問題を解決するためになさ
れたもので、エンジン性能を低下させることなく排気騒
音を低減できるようにした水ジェット推進艇のポンプ室
の遮音構造を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明は、艇体の後下部に船底板とともに形成され
たポンプ室内にジェット推進機のポンプハウジングが収
容され、このポンプハウジング内のインペラの回転で、
船底の水吸い込み口から水吸い込みダクトに吸い込んだ
水をポンプハウジングの後部のノズルから後方に噴射さ
せるとともに、上記ポンプ室を構成する壁にエンジンの
排気管が接続されて、排気ガスをポンプ室の排気出口か
ら艇外に排出させるようにした水ジェット推進艇におい
て、上記ポンプ室の排気出口とノズル噴出口との間に、
上記ポンプ室の内面とポンプハウジングの外面との間の
空間の大部分を遮蔽しつつ排気ガス排出用隙間を形成す
る遮音板が設けられて、この遮音板は、所定以上の排気
圧で後方へ撓み可能に設定されていることを特徴とする
水ジェット推進艇のポンプ室の遮音構造を提供するもの
である。
【0007】本発明によれば、ポンプ室とポンプハウジ
ングとの間の空間に遮音板を設けることにより、この遮
音板による遮音作用とともに、排気出口と排気ガス排出
用隙間との間のポンプ室に形成される大容積の空間(排
気膨張室に相当)による騒音エネルギーの減衰作用によ
って排気騒音が低減されるとともに、排気ガスは、低・
中航走時には遮音板の排気ガス排出用隙間を通って艇外
にスムーズに排出され、所定以上の排気圧となる高速航
走時には後方へ撓んで排気ガス排出用隙間を広げるので
排気効率が良好になる。また、遮音板は、旋回中の噴流
の逆流が排気出口を塞ぐことを阻止するので、チョーキ
ング現象が発生しなくなってエンジン性能が低下しなく
なる。
【0008】上記遮音板は、上側部分がポンプ室を構成
する壁の内面に固定されて、下側部分が後方に撓み可能
なゴム板で形成されている構造(請求項2)、或いは中
間部分がポンプハウジングの外面に固定されて、周囲部
分が後方に撓み可能なゴム板で形成されている構造(請
求項3)のいずれかを採用することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して詳細に説明する。
【0010】図1は水ジェット推進艇の側面図、図2は
平面図であって、水ジェット推進艇1の艇体2の上部に
は中央部よりやや前側における艇体中心線上に操舵ハン
ドル3が設けられ、その後側には船尾方向に延びるシー
ト台2bが形成され、このシート台2bの上面に着脱自
在な跨座式シート4が設けられ、その両側にはフートス
テップ2aが形成されている。
【0011】上記艇体2の内部には、前側にエンジン室
5、後側にポンプ室6がそれぞれ形成され、このエンジ
ン室5内には、上記シート4の下方であって艇体2の左
右方向の中央部にエンジン7が設置され、その前方には
燃料タンク8が設置されている。この燃料タンク8の前
方には、船外の空気を船内のエンジン室5に導入する吸
気ダクト20aが設けられている。なお、エンジン7の
後方にも、船外の空気を船内のエンジン室5に導入する
吸気ダクト20bが設けられている。
【0012】上記エンジン7は、クランク軸からカップ
リングとインペラシャフト10(図3参照)を介して上
記ポンプ室6内に収容されたポンプハウジング9のイン
ペラハウジング9a内のインペラ11(図3参照)を駆
動するように連結されている。
【0013】上記エンジン7は、クランクケースの艇体
右舷側に位置して吸気装置を備え、シリンダブロックの
艇体左舷側に位置して排気装置を備えている。
【0014】上記排気装置を構成する排気管は、シリン
ダブロックの艇体左舷側の排気口に接続されて排気通路
をエンジン7の前方へ延在させる排気マニホールド12
と、この排気マニホールド12の下流端部に接続されて
エンジン7の前上方をU字状に迂回して、エンジン7の
右舷側上方で後方に延びる排気膨張室13と、この排気
膨張室13の後端部に接続されてエンジン7の後方で、
艇体後面視で斜め左下方に延びる排気管15と、この排
気管15の後端部に可撓性のゴムホース16を介して接
続されたウォータロック17と、このウォータロック1
7の上部から上方に延びた後、ポンプ室6の上方を横切
り、右舷側を後下がりに延びてポンプ室6を構成する壁
に接続された排出管18とを備えている。そして、排気
ガスは、ポンプ室6の壁の排気出口6a(図3参照)か
らポンプ室6内を通って、ポンプ室6の後開口から艇外
に排出されるようになる。このポンプ室6の排気出口6
aは、水ジェット推進艇1の静止時又は低速航走時の喫
水線L(図3参照)よりも一部が下側となるように設定
されている。
【0015】上記ポンプ室6は、図3に示すように、艇
体2の後下部を上向きに凹ませて形成され、このポンプ
室6の下部には船底板21が設けられるとともに、上記
ポンプ室6の前端部には、艇体2の船底に形成された水
吸い込み口22から後上方に湾曲しながら延在する水吸
い込みダクト23の後端部が臨まされて、この水吸い込
みダクト23の後端部はポンプ室6内に収容されたポン
プハウジング9の前端部に接続されている。
【0016】上記水吸い込みダクト23の水吸い込み口
22には異物流入防止用スクリーン24が設けられてい
る。
【0017】上記ポンプハウジング9の後部にはノズル
26が設けられ、このノズル26の外周部には、操舵ハ
ンドル3で垂直軸回りに回動されるディフレクター27
が設けられるとともに、このディフレクター27には、
上下揺動操作可能なリバースバケット28が設けられて
いる。
【0018】一方、上記ポンプ室6の排気出口6aとノ
ズル26の噴出口との間に位置するポンプ室6の内面と
ポンプハウジング9の外面との間の空間Sには、カーテ
ン状のゴム製遮音板30が設けられている。
【0019】この遮音板30は、ポンプハウジング9の
外面に上方から嵌まり合うよう逆U字状に形成されて、
上記水ジェット推進艇1の静止時又は低速航走時の喫水
線Lよりも上側部分はポンプ室6の内周に複数本のボル
ト31で固定されて、所定以上の排気圧となる高速航走
時には、この排気圧で下側部分が後方に撓むようにな
る。なお、この遮蔽板30は、上側部分が固定されて撓
む必要がないので、例えば上側部分をプラスチック等で
形成するとともに、この上側部分にゴム製の下側部分を
連結する構成とすることもできる。
【0020】上記遮音板30は、ポンプ室6の内面とポ
ンプハウジング9の外面との間の空間Sの大部分を遮蔽
しつつ、下側部分の外縁とポンプ室6の内面及びポンプ
ハウジング9の外面との間に、排気ガス排出用隙間tを
形成するようにしている。
【0021】上記のように水ジェット推進艇1のポンプ
室6の遮音構造を構成すれば、ポンプ室6の内面とポン
プハウジング9の外面との間の空間Sにカーテン状のゴ
ム製遮音板30を設けたから、排気出口6aからポンプ
室6内に排出された排気ガスの騒音が遮音板30の遮音
作用によって遮音されるとともに、排気出口6aと排気
ガス排出用隙間tとの間のポンプ室6に形成される大容
積の空間S(排気膨張室に相当)による騒音エネルギー
の減衰作用によって排気騒音が低減されるようになる。
【0022】また、排気ガスは、低・中航走時には遮音
板30の排気ガス排出用隙間tを通って艇外にスムーズ
に排出され、所定以上の排気圧となる高速航走時には後
方へ撓んで排気ガス排出用隙間を広げるので排気効率が
良好になる。
【0023】さらに、遮音板30は、旋回中の噴流の逆
流が排気出口6aを塞ぐことを阻止するので、チョーキ
ング現象が発生しなくなってエンジン性能が低下しなく
なる。
【0024】図3の遮音板30は、上側部分をポンプ室
6の内面に固定して、下側部分が後方に撓み可能になっ
ているが、図4に示すように、遮音板30´の中間部分
にポンプハウジング9の外面に嵌まり合う穴30aをあ
けて、この遮音板30をポンプハウジング9のフランジ
固定用ボルト32に共締め固定して、周囲部分が後方に
撓み可能となるようにしても良い。また、二点鎖線aで
示すように、遮音板30´をノズル26の外面に固定し
ても良い。
【0025】図5に示すように、上記実施形態の遮音板
30,30´の有る場合(実線b参照)と無い場合(破
線a参照)の騒音を測定した結果、艇体の下部が水中に
没して、水を掻き分けながら航走する排水量航走状態
(トローリング状態)から、水面に対して艇体が大きい
傾角の前上がり姿勢で航走する遷移航走状態を経た後
に、水面に対して艇体が小さい傾角のほぼ一定の前上が
り姿勢で航走する完全滑走航走状態(完全プレーニング
状態)の内、比較的長時間で使用する遷移航走状態(ほ
ぼ3800rpm〜4800rpm)における排気騒音
の低減が著しく改善されたことが明らかになった。
【0026】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明は、ポンプ室とポンプハウジングとの間の空間に遮音
板を設けることにより、この遮音板による遮音作用とと
もに、排気出口と排気ガス排出用隙間との間のポンプ室
に形成される大容積の空間(排気膨張室に相当)による
騒音エネルギーの減衰作用によって排気騒音が低減され
るとともに、排気ガスは、低・中航走時には遮音板の排
気ガス排出用隙間を通って艇外にスムーズに排出され、
所定以上の排気圧となる高速航走時には後方へ撓んで排
気ガス排出用隙間を広げるので排気効率が良好になる。
また、遮音板は、旋回中の噴流の逆流が排気出口を塞ぐ
ことを阻止するので、チョーキング現象が発生しなくな
ってエンジン性能が低下しなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 水ジェット推進艇の側面図である。
【図2】 水ジェット推進艇の平面図である。
【図3】 第1実施形態のポンプ室であり、(a)は側
面断面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図4】 第2実施形態のポンプ室であり、(a)は側
面断面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図5】 騒音とエンジン回転数との関係を示すグラフ
である。
【符号の説明】
1 水ジェット推進艇 2 艇体 6 ポンプ室 6a 排気出口 7 エンジン 9 ポンプハウジング 11 インペラ 18 排出管 21 船底板 22 水吸い込み口 23 水吸い込みダクト 26 ノズル 30,30´ 遮音板 S 空間 t 排気ガス排出用隙間

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 艇体の後下部に船底板とともに画成され
    たポンプ室内にジェット推進機のポンプハウジングが収
    容され、このポンプハウジング内のインペラの回転で、
    船底の水吸い込み口から水吸い込みダクトに吸い込んだ
    水をポンプハウジングの後部のノズルから後方に噴射さ
    せるとともに、上記ポンプ室を構成する壁にエンジンの
    排気管が接続されて、排気ガスをポンプ室の排気出口か
    ら艇外に排出させるようにした水ジェット推進艇におい
    て、 上記ポンプ室の排気出口とノズル噴出口との間に、上記
    ポンプ室の内面とポンプハウジングの外面との間の空間
    の大部分を遮蔽しつつ排気ガス排出用隙間を形成する遮
    音板が設けられて、この遮音板は、所定以上の排気圧で
    後方へ撓み可能に設定されていることを特徴とする水ジ
    ェット推進艇のポンプ室の遮音構造。
  2. 【請求項2】 上記遮音板は、上側部分がポンプ室を構
    成する壁の内面に固定されて、下側部分が後方に撓み可
    能なゴム板で形成されている請求項1記載の水ジェット
    推進艇のポンプ室の遮音構造。
  3. 【請求項3】 上記遮音板は、中間部分がポンプハウジ
    ングの外面に固定されて、周囲部分が後方に撓み可能な
    ゴム板で形成されている請求項1記載の水ジェット推進
    艇のポンプ室の遮音構造。
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