JP2002148232A - 射出成形品の熱変形解析方法 - Google Patents

射出成形品の熱変形解析方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 射出成形品の形状或は成形条件の変更に対し
て容易に対応でき、しかも高精度に加熱収縮特性を含め
た熱変形を解析可能にする射出成形品の熱変形解析方法
を提供する。 【解決手段】 射出成形品を所定温度まで昇温する際の
射出成形品の弾塑性変形を射出成形品の弾塑性変形特性
に基づいて計算する昇温時変形計算ステップS2と、射
出成形品を所定温度に所定時間置いたときの射出成形品
のクリープ変形を射出成形品のクリープ特性に基づいて
計算するクリープ変形計算ステップS3と、射出成形品
を所定温度から降温する際の射出成形品の弾塑性変形を
射出成形品の弾塑性変形特性に基づいて計算する降温時
変形計算ステップS4とを備える。このステップS4
に、射出成形品を金型から取り出した時点の型出し温度
に対応する射出成形品の熱収縮率を基に射出成形品の熱
収縮変形を解析する計算を組み込む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、昇降温に伴って生
じる射出成形品の変形と共に、昇降温の最中に時間の経
過に伴って生じる射出成形品のクリープ変形に加えて熱
収縮変形を解析するための射出成形品の熱変形解析方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】本出願人は特願平11−337865に
より、昇降温に伴って変形が生じると共に昇降温の最中
に時間の経過に伴って変形が生じる部材の熱変形を解析
する熱変形解析方法であって、昇降温の最中に時間の経
過に伴って生じる部材のクリープ変形に関するクリープ
特性と、昇降温の最中に時間の経過に伴って生じる部材
の熱収縮変形に関する熱収縮特性とに基づいて部材の熱
変形を解析する熱変形解析方法を提案した。これによ
り、樹脂成形品等の熱収縮特性を有する部材について熱
変形を熱収縮特性を含めて高精度に解析することができ
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような熱変形解析
に際して、樹脂成形品の熱収縮特性は、単純な方法とし
ては、対応の成形条件で対応の板厚に成形した試験片を
想定される試験の加熱温度で試験し、その収縮寸法によ
り収縮率を算出する方法がある。しかし、保圧力、金型
冷却時間等の成形条件が変更されると対応する試験片を
製作して試験を行い、さらに製品板厚が部位によりかな
り異なる場合も対応の試験が必要であり、加熱収縮のデ
ータを揃える試験回数が多くなる。
【0004】本発明は、特に射出成形品について加熱収
縮特性が成形終了時点の金型からの取出し温度に対応し
て変化することを確認したことを基に、射出成形品の形
状或は成形条件の変更に対して容易に対応でき、しかも
高精度に加熱収縮特性を含めた熱変形を解析可能にする
射出成形品の熱変形解析方法を提供することを目的とす
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、この目的を達
成するために、請求項1により、昇降温に伴って生じる
射出成形品の変形と共に、昇降温の最中に時間の経過に
伴って生じる射出成形品のクリープ変形及び熱収縮変形
を解析するための射出成形品の熱変形解析方法におい
て、射出成形品を金型から取り出した時点の型出し温度
に対応する射出成形品の熱収縮率を基に熱収縮変形を解
析することを特徴とする。
【0006】加熱収縮率は、型出し時点で射出成形品が
高温の場合には内部応力の緩和が進行して小さくなり、
逆に低温の場合には緩和が進行せずに大きくなる。ま
た、射出成形条件は型出し温度に反映される。型出し温
度に対応する熱収縮率は原料樹脂の組成により変化する
が、熱収縮変形はこのような種々の条件を反映する型出
し温度に対応するそれぞれの原料樹脂の熱収縮率を基に
独自の解析ステップで或は昇降温に伴って生じる熱変形
及びクリープ変形のいずれかの解析ステップに組み込ん
で解析される。
【0007】
【発明の実施の形態】図1乃至図4を基に本発明の実施
の形態による射出成形品の熱変形解析方法をポリプロピ
レン系の自動車のインストルメントパネルについてコン
ピュータ利用の有限要素法により実施する場合について
説明する。先ず、熱変形解析に際しては、次のようにし
て予め試験により加熱温度に達した時点の収縮長を基に
熱収縮率データを求めておく。
【0008】即ち、解析対象のインストルメントパネル
に対応する成形条件で、対応する組成のゴム、タルク等
が混入されたポリオレフィンの原料樹脂により、短冊形
の試験片を複数個射出成形する。即ち、例えば5℃程度
の型出し温度の低下に相当する時間経過ごとに最低2個
づつ順に型出して、試験の加熱温度80℃及び110℃
用に複数段階の型出し温度用の試験片を製作する。
【0009】次いで、2組の試験片を80℃及び110
℃に加熱し、加熱収縮が確実に飽和状態に達する時間経
過後に、その収縮寸法を測定して加熱収縮率を算出す
る。図2はこのようにして求めた型出し温度−加熱収縮
率特性を示すもので、それぞれ高い相関性を有する直線
特性に近似される。
【0010】続いて、80℃近辺及び110℃近辺間の
範囲内において加熱温度の変化に対して加熱収縮率が略
比例関係を有することが確認されているために、下記の
式(1)により、これらの2種類の型出し温度−加熱収
縮率特性を基に、加熱温度Txに対する各型出し温度の
加熱収縮率Cxを算出して、所定範囲の加熱温度につい
て型出し温度の変化に対する加熱収縮率データを作成す
る。
【0011】 Cx=C1+(C2−C1)×(Tx−80℃)/(30℃) (1) (C1は加熱温度80℃での加熱収縮率、C2は加熱温
度110℃での加熱収縮率)
【0012】尚、このようなデータは、2点以上の加熱
温度を基に作成しても良く、全て試験を基に作成しても
良く、また製品板厚、その他の射出成形条件が変更され
ても型出し温度の変化に反映されることにより、同種の
樹脂原料の射出成形品であれば共通に使用できる。
【0013】図3は、解析対象となる可能性のある異な
る組成のポリオレフィン製の試験片についての同様な試
験データを示すもので、前述の試験片に対してブロック
コポリマの重量設計が異なって相対的に低分子量で、タ
ルクが配合されていない樹脂原料の試験片の型出し温度
−加熱収縮率特性を高精度に近似する直線データとして
点線で示し、さらにブロックコポリマの重量設計が異な
り、ゴムが多く、タルクが少ない試験片を一点斜線で示
す。このような原料樹脂のインストルメントパネルを解
析対象とする可能性がある場合にも、所定範囲の加熱温
度について同様に型出し温度の変化に対する加熱収縮率
データを作成しておく。
【0014】熱変形解析は、このような試験データが作
成されているのを前提に、メッシュ状要素に分割された
図4に示すインストルメントパネルモデル(同図でメッ
シュ状要素は一部のみ記載して、他は省略してある)に
ついて、有限要素法により図1に示す手順で解析を行
う。
【0015】先ず、有限要素法により熱変形に加えて型
出し温度も解析するために、線膨張係数、ヤング率、ポ
アソン比、製品形状、その支持状態等のインストルメン
トパネルの条件、試験温度の条件、熱伝導率、比熱、P
VT線図等の原料樹脂の条件及び射出成形の条件を入力
する(ステップS1)。加熱時間は通常少なくとも加熱
収縮が飽和する時間に設定される。次いで、昇温時の弾
塑性変形を計算し(ステップS2)、さらに後述の周知
のナッティングの式によりクリープ変形を計算する(ス
テップS3)。続いて、熱収縮特性を弾塑性変形特性を
組み込んで降温時の弾塑性変形を次のようにして計算す
る(ステップS4)。
【0016】即ち、周知の樹脂流動解析ソフトにより入
力済みの製品形状、原料樹脂、射出成形等の解析条件を
基に解析された各要素の型出し温度に対応する各要素の
熱収縮率データを作成してをテキスト形式で出力させ
る。次いで、下記の(2)による熱収縮を線膨張に組み
込んだ見掛け上の線膨張係数β1を用いて降温時の弾塑
性変形の計算を行う。
【0017】 β1=β+α1/(T1−T2) (2) (βは解析対象のインストルメントパネルの線膨張係
数、α1はテキスト出力された各要素の熱収縮率、T1
は降温前の温度、T2は降温後の温度)
【0018】照合された試験片の加熱温度はT1、T2
に対応しており、見掛けの線膨張係数β1によりステッ
プS4の降温時の全体的な弾塑性変形の計算を行い、昇
降温に伴う変形及び昇降温の最中に時間経過に伴う変形
の解析を終了する。製品形状が変更された場合、有限要
素モデルを変更する必要があり、したがって各要素の型
出し温度も変化するが、型出し温度を再解析することに
より前述の型出し温度−加熱収縮率特性データを共用で
きる。射出流量、保圧力、保圧時間、冷却時間、金型温
度等の射出成形条件が変更された場合、その再入力によ
り型出し温度を再解析して同様にデータは共用できる。
【0019】別の実施の形態として、ステップS2の昇
温時の弾塑性変形の計算に熱収縮特性を弾塑性変形特性
を組み込んで、下記の式(3)による見掛け上の線膨張
係数β2を用いて行うこともできる。熱収縮率α2は前
述のものであり、T3は昇温前の温度、T4は昇温後の
温度であり、照合した試験片の加熱温度に対応してい
る。
【0020】 β2=β+α2/(T4−T3) (3)
【0021】また別の実施の形態として、計算時間がか
なり長くなるのを甘受するならば、熱収縮変形をステッ
プS3のクリープ変形の計算に組み込むこともできる。
即ち、下記の式(4)に示すように、少なくとも経過時
間tと解析対象のインストルメントパネルの応力σとの
関数で表現されるクリープ歪みεcr(σ,t,・・)
と、前述のものを経過時間tの関数で表現した熱収縮率
α(t)との和によりクリープ変形と熱収縮変形とに基
づく総合歪みεを考える。
【0022】 ε=εcr(σ,t,・・)+α(t) (4) (・・はその他の変数を表す)
【0023】そして、この総合歪みの時間微分を求めれ
ば、下記の式(5)に示すように、歪み速度を得ること
ができる。クリープ歪みεcr(σ,t,・・)として
周知の下記の式(6)のナッティングの式を用いれば、
歪み速度は式(7)のようになる。
【0024】 δε/δt=δεcr(σ,t,・・)/δt+δα(t)/δt (5) dεcr/dt=Aσntm (6) (A、n、mは材質により規定される定数) δε/δt=Aσntm+δα(t)/δt (7)
【0025】したがって、ステップS3のクリープ変形
の計算は、こうして求めた歪み速度を昇温開始時から降
温終了時までを積分区間として時間積分することにより
行うことができる。
【0026】さらに別の実施の形態として、前述の昇温
時変形計算ステップ又は降温時変形計算ステップに熱収
縮変形の計算を組み込む方法よりも僅かに計算時間は長
くなるが、図1においてステップS3ではクリープ変形
のみを解析し、射出成形品を所定温度に所定時間置いた
ときの射出成形品の熱収縮変形を射出成形品の熱収縮率
に基づいて計算する熱収縮変形計算ステップをステップ
S5として追加することもできる。
【0027】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、射出成形品の
型出し温度に対応する熱収縮率を基に熱変形解析を行う
ことにより、加熱により熱収縮する射出成形品の熱変形
解析が高精度に行われる。同一種の樹脂原料について製
品形状或は種々の成形条件の変動に対応して型出し温度
が変動することにより、種々の射出成形品の熱変形解析
が試験片による予備試験無しで高精度に行われる。その
際、請求項2の発明によれば、メッシュ分解した射出成
形品モデルの各要素もしくは節点の型出し温度を解析す
ることにより、複雑な製品形状或は支持構造の射出成形
品であっても高精度に熱変形解析を行うことができる。
請求項3又は請求項4の発明により、熱収縮特性による
熱変形は独自の計算ステップで又は昇降温の熱変形解析
もしくはクリープ変形の解析に組み込んで行うことがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による射出成形品の熱変形
解析方法の解析ステップの概略を説明する図である。
【図2】同方法を実施する際の試験片の型出し温度−加
熱収縮率特性を説明する図である。
【図3】さらに別種の樹脂原料の試験片の型出し温度−
加熱収縮率特性を説明する図である。
【図4】同方法の解析対象となる有限要素法によりメッ
シュ状に分解されたインストルメントパネルモデルの図
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉本 好央 神奈川県横須賀市田浦港町無番地 関東自 動車工業株式会社内 (72)発明者 工藤 伸治 神奈川県横須賀市田浦港町無番地 関東自 動車工業株式会社内 (72)発明者 高原 忠良 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 三上 雅弘 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 石田 敏和 千葉県袖ヶ浦市長浦580番32号 株式会社 グランドポリマー内 (72)発明者 鎌倉 彦一 千葉県袖ヶ浦市長浦580番32号 株式会社 グランドポリマー内 (72)発明者 陳 俊 福岡県福岡市中央区大名2丁目6番36号 株式会社ビーピーエイ内 Fターム(参考) 2F069 AA68 BB40 GG16 NN00 RR09 2G040 AB07 BA02 BA25 CA02 EB02 GB02 HA16 2G061 AB02 AC03 BA17 CA10 DA11 EC02 4F206 AM23 JA07 JL09 JW50 5B046 AA05 JA07

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 昇降温に伴って生じる射出成形品の変形
    と共に、昇降温の最中に時間の経過に伴って生じる射出
    成形品のクリープ変形及び熱収縮変形を解析するための
    射出成形品の熱変形解析方法において、 射出成形品を金型から取り出した時点の型出し温度に対
    応する前記射出成形品の熱収縮率を基に熱収縮変形を解
    析することを特徴とする射出成形品の熱変形解析方法。
  2. 【請求項2】 射出成形品モデルのメッシュ状に分解さ
    れた各要素もしくは節点の型出し温度に対応する熱収縮
    率を基に有限要素法により熱収縮変形を解析することを
    特徴とする請求項1記載の射出成形品の熱変形解析方
    法。
  3. 【請求項3】 射出成形品を所定温度まで昇温する際の
    前記射出成形品の弾塑性変形を前記射出成形品の弾塑性
    変形特性に基づいて計算する昇温時変形計算ステップ
    と、前記射出成形品を前記所定温度に所定時間置いたと
    きの前記射出成形品のクリープ変形を前記射出成形品の
    クリープ特性に基づいて計算するクリープ変形計算ステ
    ップと、前記射出成形品を前記所定温度から降温する際
    の前記射出成形品の弾塑性変形を前記射出成形品の弾塑
    性変形特性に基づいて計算する降温時変形計算ステップ
    と、前記射出成形品を前記所定温度に前記所定時間置い
    たときの前記射出成形品の熱収縮変形を前記射出成形品
    の熱収縮率に基づいて計算する熱収縮変形計算ステップ
    とを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載
    の射出成形品の熱変形解析方法。
  4. 【請求項4】 射出成形品を所定温度まで昇温する際の
    前記射出成形品の弾塑性変形を前記射出成形品の弾塑性
    変形特性に基づいて計算する昇温時変形計算ステップ
    と、前記射出成形品を前記所定温度に所定時間置いたと
    きの前記射出成形品のクリープ変形を前記射出成形品の
    クリープ特性に基づいて計算するクリープ変形計算ステ
    ップと、前記射出成形品を前記所定温度から降温する際
    の前記射出成形品の弾塑性変形を前記射出成形品の弾塑
    性変形特性に基づいて計算する降温時変形計算ステップ
    とを備え、 前記昇温時変形計算ステップ、前記クリープ変形計算ス
    テップ及び前記降温時変形計算ステップのいずれかに前
    記射出成形品の熱収縮変形の計算を組み込むことを特徴
    とする請求項1又は請求項2記載の射出成形品の熱変形
    解析方法。
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