JP2002141214A - 磁性材料とこれを用いたコイル部品 - Google Patents
磁性材料とこれを用いたコイル部品Info
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Abstract
域での複素透磁率の虚数成分μ”を制御し、これにより
極めて良好なQ値が得られ、しかもAgあるいはその合
金との同時焼成が可能となる焼成温度で、焼結体密度が
高い磁性材料と、これを用いたコイル部品、特に内部導
体層にAgあるいはその合金を用いた積層型コイル部品
を提供する。 【解決手段】磁性材料は、少なくともFe、Ni、C
u、Coの酸化物を主成分として含有するスピネル型フ
ェライト焼結体に対し、(Cu0.2Ni0. 8)酸化
物相を分散含有し、かつ全体量に対する含有量が0から
10wt%(但し、0は含まず)となるBi2O3を分
散含有する。また、この磁性材料をコアあるいは積層構
造のインダクタの磁性体層に用いる。
Description
される磁性材料とその磁性材料を含有するコアを有する
バルク型コイル部品または磁性体層内に前記磁性材料を
有する積層型コイル部品に関する。
伴い、それらを構成する電子部品についても小型化、軽
量化が進んでいる。コイル、トランス等のコイル部品も
例外ではなく、小型化、軽量化が進み、一方で電子機器
の高周波化も進んでいる。特に移動体通信機器において
は10MHz以上の周波数帯でコイル等が使用されてお
り、小型で高周波領域まで動作し、高いQ値を持つコイ
ル等が望まれている。
るコアにワイヤを巻き付けたバルク型と、磁性体層と内
部導体層とを積層し焼結してなる積層型とがある。バル
ク型コイル部品は、磁性粉末にバインダーを加えて造粒
した後に所定の形状に成形し、加工し、空気中で850
℃から1300℃程度で焼成したコイル用コア(コアは
焼成後に加工する場合もある)にAu、Ag、Cu、F
e、Pt、Sn、Ni、Pb、Al、Coまたはそれら
の合金等からなるワイヤを巻いて作製する。
れていることから、漏れ磁束がなく、クロストークが抑
制され、高密度実装に適していること、大きなインダク
タンスLを持ちつつ小型化が可能なこと、堅牢性が高い
こと等を特徴としており、近年は多岐にわたる分野に使
用されている。積層型コイル部品は、通常、磁性体層用
ペーストと内部導体層用ペーストとを厚膜技術(印刷法
やドクターブレード法等)により積層し、一体化した
後、焼成し、得られた焼結体表面に外部電極用ペースト
を印刷し、焼き付けることにより製造される。そして、
内部導体材料はインダクタの直流抵抗、さらに製品のQ
値にも影響を及ぼすことから、抵抗の低いAgが用いら
れる。ここで重要なことは、磁性体層に用いられる磁性
材料は、前記のように内部導体と同時焼成されることか
ら、少なくともAgの融点(約960℃)以下で焼結で
きることである。
ても、フェライトによる磁性体層(コア)の比抵抗が高
いことが要求される。バルク型においては、コアにワイ
ヤにより巻線を施す際に、比抵抗が低ければボビン等の
絶縁物が必要となり、コアの小型化の障害となり、さら
にメッキによりコアに電極を形成する場合は比抵抗が低
いとメッキの信頼性が劣化する。また、コアの比抵抗が
低いとコアの素地までメッキされるおそれがあり、コイ
ルとしての信頼性も著しく低下する。
うち、高周波領域で使用される磁性材料としてNi−C
u−Zn系のフェライトが一般に用いられる。その理由
は、フェライトが立方晶の結晶構造であり、比抵抗が高
く、適度の透磁率を有しており、空芯コイルや非磁性体
をコイルのコアとして用いたコイルと同等のインダクタ
ンスを得るのであれば、これらに比べて巻線数を減らす
ことができ、素子の小型化に有利であり、また、高周波
領域まで高いQ値を得ることができるという特徴を有し
ている。
目的として、特許第2893302号公報には、Ni、
Cu、Co、Feの酸化物を主成分として含有するスピ
ネル型フェライト焼結体に対し、NiO相を0〜60w
t%(但し0を含まず)分散含有したものが開示されて
いる。また、このような組成とすれば、高周波領域での
Q特性が良好となり、Qの最大値が高周波側にシフト
し、コイル用コア材料のμ値については10MHzの値
を用い、インダクタンス値が高くとれ、さらにその効果
として、前記の手法により高周波帯域用磁芯材料として
適用可能な酸化物磁性材料が安価に得られる旨の記載が
ある。
記フェライト材料を金型を使用して圧縮成形し、大気中
で徐熱すると共に、炉内にて970℃で4時間保持して
フェライト焼結体を得た旨の記載がある。
密度の高いNi−Zn系フェライト材料の提供を目的と
して、Ni−Zn系フェライト材料の主成分に対し、B
i2O3を、4〜20wt%の範囲で添加含有させ、低
い焼成温度で高い焼結体密度およびQ値を持つ磁性材料
を得た例が開示されている。
る因子として品質係数:Q値が挙げられる。これはコイ
ルのリアクタンス成分と交流抵抗成分の位相角をθ(de
g)とすると、90(deg)−θ(deg)で表される損失
角δ(deg)を用いて表される損失:tanδの逆数であ
り、Q=1/tanδで表される。
はスヌーク(snoek)の限界線(透磁率の低いフェ
ライト程、高い周波数まで透磁率を維持する)が成り立
ち、コイルの形状および巻線数とそのパターンを同等と
した場合、透磁率の異なる材料をコイルに使用すること
により、適用する周波数を変えることが可能となる。こ
れは前記スヌークの限界線からも分かる通り、周波数が
高周波になることにより透磁率が減少する。この透磁率
の減少が生じる周波数は透磁率の大小により異なるが、
一般的にはスヌークの周波数限界線に沿って透磁率が減
少する。また、透磁率は複素成分を含めて表すと、実数
成分μ’と虚数成分μ”に分けられる。
数まで一定の値を保持し、その後周波数の増加と共に前
述したスヌークの限界線に沿って減少する。また、虚数
部分μ”は周波数の増加と共に増加し、μ’成分がフラ
ット領域の値の約半分に減少する周波数付近で最大とな
り、その後周波数の増加と共に減少する。
数部分μ”はコイルのインダクタンスLと交流抵抗Rを
用いると、下記の式で表される。
n2) ここに、le:実測による試料の実効磁路長(m) μ0:真空透磁率4×π×10−7(H/m) A0:実測による試料の実効断面積(m2) n:試料のコイル巻数 ω:角周波数(ラジアン/s)ω=2×π×f ここに、π:円周率、f:測定周波数(Hz) L:コイルのインダクタンス(H) Reff:試料を含めたコイルの損失抵抗(Ω) Rw:ワイヤの交流抵抗(Ω)
数部分μ”とを用いると、品質係数QはQ=μ’/μ”
=1/tanδで表される。このように、コイル用コアに
フェライトを用いる場合、使用するフェライト材料の複
素透磁率のμ’成分はもとより、虚数成分であるμ”の
大小がその特性を決める要因となる。スヌークの限界線
から分かるように、所望の周波数領域で品質係数の高い
(損失の少ない)コイルを得ようとすれば、適宜効果の
高い透磁率の磁性材料を用いることが肝要である。
領域の品質係数の高い(損失の少ない)コイルを得よう
とすれば、透磁率およびその実数部分μ’が低く、さら
に虚数部分μ”の増加を低く抑えた磁性材料を用いるこ
とが望ましい。
いては、Q値の向上、高周波化は窺えるものの、コイル
の性能を左右する高周波領域における透磁率の虚数成分
であるμ”の記載がなく、実数部分であるμ’について
も実効透磁率として10MHzの値が挙げられているに
すぎない。コイルとして高周波領域の信頼性を量る上で
はμ’/μ”で表されるQ値の他に、μ’もしくはμ”
についても明確にし、制御を行うことが必要である。
ては、スピネル型フェライト焼結体にNiO相を適宜分
散含有させたものとしているが、このNiO相の存在が
明確でない。なぜならば、スピネル相とNiO相の析出
量の測定をX線回折線の強度比からの推定で行っている
が、使用する回折ピークはスピネル相が(311)反射
と(222)反射と(400)反射からであり、NiO
相の測定に使用した回折ピークは(111)反射と(2
00)反射である。ところがNiO相の測定に使用した
(111)反射は回折角2θ=56.5°であって、
(200)反射は回折角2θ=66.3°であり、これ
らはそれぞれスピネル相の(222)反射の回折角2θ
=56.6°と、(400)反射の回折角2θ=66.
3°にそれぞれ等しい。このように、NiO相とスピネ
ル相は回折ピークが重なるため、NiO析出を断定する
ことには疑問があり、NiOがスピネル相に固溶してい
るとも考えられる。さらに前記公報には、「焼結体の結
晶組織を観察したところ、結晶が局部的に著しく偏在し
ているような状態は認められず、NiO相に分散した状
態になっていることが判明した」との記載があるよう
に、NiOのスピネル相への固溶状態を示すものと考え
られる。
は焼成温度が970℃で4時間保持であり、この温度で
はAgあるいはAg−Pdとの同時焼成は困難である。
に記載された製造法では、焼成温度が明確ではなく、B
i2O3を10wt%添加含有させた例では焼成温度が
950℃のとき、密度が4.86位であって、密度が望
ましい密度である5以上の場合は焼成温度が960℃以
上となり、AgあるいはAg−Pdとの同時焼成が困難
である。
法によると、Bi2O3の含有により100MHzにお
いてQ値が向上した例が開示されているが、コイルの性
能を左右するμ’およびμ”に関する記載はない。
以外の第2相を出現させると共に、この出現を明確にし
てその量を調整することにより、高周波領域での複素透
磁率の虚数成分μ”を制御し、これにより極めて良好な
Q値が得られる磁性材料とこれを用いたコイル部品を提
供することを目的とする。また本発明は、Agあるいは
その合金との同時焼成が可能となる焼成温度で、焼結体
密度が高く、極めて良好なQ特性が得られる磁性材料
と、これを用いたコイル部品、特に内部導体層にAgあ
るいはその合金を用いた積層型コイル部品を提供するこ
とを目的とする。
磁性材料は、少なくともFe、Ni、Cu、Coの酸化
物を主成分として含有するスピネル型フェライト焼結体
に対し、(Cu0.2Ni0.8)酸化物相を分散含有
し、かつ全体量に対する含有量が0から10wt%(但
し、0は含まず)となるBi2O3を分散含有すること
を特徴とする。
化物相をフェライト焼結体とは別に分散含有し、この量
を調整することにより、高周波領域での複素透磁率の虚
数成分μ”を制御することができ、これにより、高周波
領域で極めて良好なQ値を持つ磁性体が得られる。ま
た、Bi2O3を0〜10wt%含有することにより、
積層型コイル部品において、焼結体密度が5g/cm3
以上でAgとの同時焼成が可能な910℃以下の温度、
あるいはAg−Pd等のAg合金と同時焼成が可能な9
50℃以下の温度での焼成により、高周波領域で極めて
良好なQ特性の焼結体でなる磁性体を得ることができ
る。
料において、主成分としてさらにZnを含有することを
特徴とする。
ことにより、初透磁率を高めることができる。
部品であって、請求項1または2の磁性材料からなるコ
アを有することを特徴とする
CuO、ZnO、CoO等の主成分および場合によって
はP、Al、B、Mn、Ba、Sr、Pb、W、V等の
酸化物を副成分として所定の比率となるように秤量し、
ボールミル、サンドミル、振動ミル、湿式メディア攪拌
型ミル等を用い、混合粉砕した後、湿式の場合は乾燥
し、仮焼きし、ボールミル、サンドミル、振動ミル、湿
式メディア攪拌型ミル等を用いて粉砕し、湿式の場合は
乾燥を行う。そしてバルク型コアを得る。
ンダーを加え、造粒した後に所定の形状に成形加工した
後、空気中で850℃〜1300℃でコアとして焼成
し、Au、Ag、Cu、Fe、Rt、Sn、Ni、P
b、Al、Coまたはこれらの合金等からなるワイヤを
巻いて作製する。なお、前記コアの加工は焼成後に行っ
てもよい。
作製されたコアを有するため、焼成温度がAgまたはA
g−Pd等の合金の融点以下の低い焼成温度で、密度が
5g/cm3以上の焼結体で構成することができる。ま
た、高周波領域でのQ値も高温焼成のものと遜色のない
ものを提供できる。
導体層を有する積層型コイル部品であって、前記磁性体
層が請求項1または2の磁性材料からなることを特徴と
する。積層型コイル部品は、通常、磁性体層用ペースト
と内部導体層用ペーストとを厚膜技術(印刷法やドクタ
ーブレード法等)により積層して一体化した後、焼成
し、得られた焼結体表面に外部電極用ペーストを印刷
し、焼き付けることにより製造される。請求項4の磁性
体層用ぺーストは請求項1、2の磁性材料を用い、前記
バルク型コイル部品のコアと同様に粉末を作製し、バイ
ンダーと溶剤と共に混合してペーストを作製する。内部
導体層用ペーストは、通常、導電体粉末とバインダーと
溶剤とを混合して作製する。
に前記磁性材料を用いることにより、低温度で内部導体
層と同時焼成が可能な高密度の積層型コイル部品を提供
することができる。また、高周波領域におけるQについ
ても、高温焼成のものと遜色の無いものを提供できる。
のコイル部品であって、前記内部導体層がAgまたはA
g−Pdの合金を主成分とすることを特徴とする。
製品の直流抵抗を低減させ、Q値を向上するという理由
から、AgまたはAg−Pd等の合金が最適である。こ
のAgまたはその合金を導電材に用いる場合、焼成条件
や焼成雰囲気は磁性体や導電材の材質に応じて適宜決定
すればよいが、焼成温度は導電材にAgを用いた場合
は、好ましくは880〜910℃である。また、Ag−
Pdの合金を用いた場合は、好ましくは910〜950
℃である。焼成温度が低すぎると焼結不足となり、高す
ぎると、フェライト中に電極材料が拡散してチップの電
磁気特性を著しく悪化させるからである。また、焼成時
間は5分から2時間である。
内部導体層にAgもしくはAg−Pdの合金を主成分と
するので、内部導体層の抵抗を低いもので構成すること
ができ、Qの高い積層型コイル部品を提供することがで
きる。
e、Ni、Cu、Coを主成分とするものであり、さら
に必要に応じてZnを加えて主成分とする。さらにこの
フェライト焼結体に(Cu0.2Ni0.8)O相を有
するものである。この(Cu0.2Ni 0.8)O相の
含有率は好ましくは0〜31wt%(但し0を含ます)
である。また、この主成分に全体に対する含有量が0〜
10wt%(但し0を含まず)となるBi2O3を含む
ものである。また、不純物として、P、Al、B、M
n、Ba、Sr、Pb、W、V、Mo等を含有してもよ
い。
率、焼結体密度の特性を得る上で好ましくはFe2O3
は5〜51mol%、NiOは10〜94.49mol
%、CuOは0.5〜35mol%、ZnOは0〜35
mol%(但し0を含む)、CoOは0.01〜5mo
l%である。
ると、焼結体密度に劣化が見られる。そして、Fe2O
3は化学量論組成を超えた範囲から、空気中の焼成では
Fe 3O4の析出により、焼結体密度の劣化およびコア
としての比抵抗の劣化が始まる。この析出が顕著に見ら
れるのは、51mol%を超える範囲である。
と、(Cu0.2Ni0.8)O相の析出が見られず、
Q特性が向上しない。NiOはFe2O3、CuO、Z
nO、CoOの最低量がそれぞれ最低含有率となる場合
の残り全部を占める含有率(94.49mol%)まで
含有させることができる。
と、(Cu0.2Ni0.8)O相の析出が見られず、
35mol%を超えると、コアの比抵抗の劣化が見られ
る。
定すればよいが、初透磁率を管理する上で最も大きな要
因となるのがZnOである。所望の初透磁率が低い場合
にはZnO量を0とし、これより高い初透磁率を得たい
場合はZnO量を増加させることが必要となる。但し、
ZnOの含有量が35mol%を超えるとキュリー点が
下がり、実用上この値が限界である。
の制御を行う上で要因となるのがCoO量であるが、こ
の量が増加することにより、除々にではあるが、初透磁
率が低下し、高周波におけるQ特性が向上する。このC
oOの添加の効果が現れるのは0.01mol%以上で
ある。但しこのCoOの添加量が増加すると、透磁率の
温度特性に劣化が見られ、5mol%を超えると、透磁
率の温度に対する変化率が増加するので、実用上この値
が限界である。
いては、含有量の増加により低温での焼結体密度が向上
する。これは主成分として用いるCuOと同様である
が、低温で焼結体密度を向上させることを目的にCuO
量を増加させることにより、初透磁率やQ値に劣化が見
られた場合は、適宜Bi2O3量を調整することで、Q
値を劣化させず低温での焼結体密度を向上させることが
可能となる。但しBi2O3の含有量が10wt%を超
えると仮焼において、粒成長が急激に進み、次工程での
粉砕が困難となり、本焼成での緻密化に支障をきたす。
Bi2O3の含有量は0〜10wt%(但し0を含ま
ず)であり、より好ましくは0.3〜10wt%であ
る。
として酸化鉄(α−Fe2O3)と酸化ニッケル(Ni
O)と酸化第2銅(CuO)と酸化亜鉛(ZnO)と四
三酸化コバルト(Co3O4)とをボールミルにより5
時間湿式混合した。次にこれらの原料混合粉末を大気中
750〜900℃で2時間仮焼した後、ボールミルにて
比表面積が4m2/gとなるように湿式粉砕し、成形用
粉末を得た。
度が98.5、重合度2400のポリビニールアルコー
ル(PVA124)の3wt%水溶液を10重量部加え
て造粒し、後述の測定条件等に合わせて所定の形状に成
形し、空気中で880、910、940、950、98
0、1030、1060、1090、1120℃で焼成
してコアを作製した。
0.8)O相の析出が見られないNi−Cu−Znフェ
ライトを比較例1、2とし、本発明の実施例1、2、3
と同様の製造条件により作製した磁性材料を用意し、コ
アを作製した。
3、NiO、CuO、ZnO、CoOの組成をそれぞれ
実施例1、2、3と同じとし、いずれもBi2O3を含
まないサンプルを用意した。また、別の比較例6とし
て、Fe2O3、NiO、CuO、ZnO、CoOの組
成を実施例2と同じとし、Bi2O3の含有量を15w
t%としたものを用意した。
は、(株)島津製作所製流動式比表面積自動測定装置、
フローソープ2300型でBET一点法により測定し
た。
前述のように、900℃に仮焼成して粉砕した成形用粉
末について、表1に示した各サンプルの(Cu0.2N
i0.8)O相の有無の検出と析出量の測定をX線回折
装置により行った。
線回折線の強度比により行った。X線回折装置は、日本
電子(株)社製JDX−3530を用い、線源はCr−
Kα線を使用した。測定条件は、ステップスキャン法、
ステップ角度0.04°、計数時間20秒/ステップで
行った。
析出を確認した根拠について説明する。X線回折の結果
から、サンプル3〜9には、サンプル1、2(比較例
1、2)には見られない回折角2θ=102°、144
°に第2相の出現が見られた。さらに、スピネルのピー
クと同位置ではあるが、回折角2θ=56.5°、6
6.3°に強度の増加が見られた。これら4つのピーク
は、相と回折角2θとの関係を表すASTMカードN
o.25−1049に示される(Cu0.2N
i0. 8)O相のピークと重なることから、析出が確認
された相を(Cu0.2Ni0 .8)O相と同定した。
102°は(Cu0.2Ni0.8)O相における(2
20)反射、2θ=144°は(222)反射、2θ=
56.5°は(111)反射、2θ=66.3°は(2
00)反射であることが確認された。
Cuの元素分布は同位置に存在することが確認された。
このことは、先に示したX線回折の結果と一致し、析出
が確認された相を(Cu0.2Ni0.8)O相と断定
した。
含まないフェライトである。このサンプル1において
は、(Cu0.2Ni0.8)Oとスピネルの重なり合
うピークである回折角2θ=56.5°および2θ=6
6.3°のピークは増大するものの、スピネルのピーク
と重ならない2θ=102°の出現が無いことから、
(Cu0.2Ni0.8)Oのような第2相の存在は認
められない。
まず、化学量論的に余剰のNiOが析出されると考えら
れる組成において、Cr線源を用いても得られた回折角
のピークはスピネル相と重なりあうものとしか見られな
かった。
あるが、(Cu0.2Ni0.8)Oとスピネルの重な
り合うピークである2θ=56.5°と2θ=66.3
°のピークは増大するものの、スピネルのピークと重な
らない2θ=102°のピークの出現が無いことから、
(Cu0.2Ni0.8)Oのような第2相の存在は認
められない。
出量の定量結果を示す。(Cu0. 2Ni0.8)Oの
析出量の算出については、同定した(Cu0.2Ni
0.8)O相をASTMカードNo.25−1049に
示される3強線と同じ回折ピークから、その強度比を用
い、スピネル相との相対比率を算出した。
用粉末を用いて、外径30mm、内径18mm、高さ8
mmのトロイダル型となるように成形し、空気中で11
20℃で焼成し、ワイヤを3回巻きにすることにより実
際にコイル部品を作製した。そして、インピーダンスア
ナライザ(ヒューレットパッカード社製4291A)に
より、磁界を0.4A/m印加し、周波数を1、2、
3、5、7、10、20、30、50、70、100、
150、200、280、330、430、500MH
zとしてインダクタンスおよび交流抵抗、ワイヤの直流
抵抗を測定し、前述した式からμ’、μ”を求めた。ま
た、μ’をμ”で除算することにより、Q値を求めた。
各サンプルについてのμ’、μ”、Q値の周波数による
変化を、それぞれ図1、図2、図3に示す。
度は、前記μ’、μ”の測定に用いた焼結体の寸法から
堆積を求め、その質量を体積で除算して求めた。
ついて、実数部分μ‘の挙動に大きな差は見られない。
すなわち、(Cu0.2Ni0.8)O相の析出の有無
およびに関わらず、実数部分μ’の挙動に大きな差は見
られない。一方、虚数部分μ”は、図2(A)、(B)
から明らかなように、比較例3〜5、実施例1〜3の場
合、すなわち(Cu0.2Ni0.8)O相の析出が有
る場合、Bi2O3の有無に拘わらず、比較例1、2に
比較し、周波数の増加に伴う虚数部分μ”の増加する周
波数が高周波化している。
うに、(Cu0.2Ni0.8)O相の析出が有る比較
例3〜5および実施例1〜3の場合、比較例1、2に比
較し、Bi2O3の有無に拘わらず、ピーク値の高周波
化が窺え、その値も大きく向上していることが分かる。
このように、(Cu0.2Ni0.8)O相からなる第
2相の出現により虚数部分μ”の高周波化が可能であ
り、また、(Cu0.2Ni0.8)O相の量を調整す
ることによって高周波領域での虚数部分μ”を制御する
ことにより、極めて良好なQ値が得られる磁性材料とこ
れを用いたコイル部品が得られる。
態を形成しやすいため、NiOに対するFe2O3の組
成比Fe2O3/NiOを低減すること、好ましくは1
以下にすることにより、(Cu0.2Ni0.8)Oの
析出が実現し易くなる。表1、表2から、組成比Fe2
O3/NiOは、各サンプル3の場合、40.0/4
8.9=0.818、サンプル4の場合、10.0/8
6.7=0.115、サンプル5の場合、22.9/6
7.7=0.338である。特にサンプル4、5のよう
に、組成比Fe2O3/NiOが0.5以下になると、
(Cu0.2Ni 0.8)Oの析出がより出現しやすく
なり、図3に示すように、Q値の高い周波数領域がより
高周波化される。
について 焼結体の見かけ密度は、焼結体の焼結性の良し悪しを見
るものである。見かけ密度が低いことにより、焼結体内
部の空孔が多いものと判断することができ、このように
見かけ密度の低いものは、素子化した場合において、高
い湿温度下での使用により、この空孔が原因となり、シ
ョート不良等の信頼性に影響を及ぼしたり、また物理的
強度が脆弱となり、問題となる。このような問題が生じ
ない見かけ密度は、一般にNi−Cu−Zn系フェライ
トの理論密度(5.3〜5.5g/cm3)の95%以
上となる5.0g/cm3以上である。
ように、サンプル7、8(実施例2、3)ではAgとの
同時焼成に好適な910℃以下での焼成により、5g/
cm 3以上のものが得られる。また、サンプル6(実施
例1)ではAg−Pdとの同時焼成に好適な950℃以
下での焼成により、5g/cm3以上の見かけ密度が得
られる。
5)では910℃以下では勿論のこと、Ag−Pdの合
金との同時焼成に好適な950℃以下の焼成においても
5g/cm3の見かけ密度を得ることができない。すな
わち、Bi2O3の添加により、低温焼成であっても焼
結体密度を上げることができ、焼結性が向上し、Agや
Ag−Pd等のAg合金との同時焼成が可能なQ値の向
上した製品が得られる。Bi2O3の添加量は、微量で
あっても効果があるが、表3から明らかなように、この
添加量は0.3wt%以上であることがより好ましい。
超えると、仮焼において、粒成長が急激に進み、次工程
での粉砕が困難で成形性が悪くなり、本焼成での緻密化
に支障をきたす。表3ではBi2O3の添加量が15w
t%である場合について、成形性が悪いことを示してい
る。また、Bi2O3の添加量が増加すると、これが高
価であることから、コストアップを招くという問題もあ
る。
例の磁性材料を用いて作製したコアの複素透磁率の実数
部分μ’と周波数の関係を示す特性図である。
例の磁性材料を用いて作製したコアの複素透磁率の虚数
部分μ”と周波数の関係を示す特性図である。
例の磁性材料を用いて作製したコアの複素透磁率の実数
部分μ’と虚数部分μ”から算出されたQ値と周波数の
関係を示す特性図である。
Claims (5)
- 【請求項1】少なくともFe、Ni、Cu、Coの酸化
物を主成分として含有するスピネル型フェライト焼結体
に対し、(Cu0.2Ni0.8)酸化物相を分散含有
し、かつ全体量に対する含有量が0から10wt%(但
し、0は含まず)となるBi2O3を分散含有すること
を特徴とする磁性材料。 - 【請求項2】請求項1の磁性材料において、 主成分としてさらにZnを含有することを特徴とする磁
性材料。 - 【請求項3】バルク型コイル部品であって、請求項1ま
たは2の磁性材料からなるコアを有することを特徴とす
るコイル部品。 - 【請求項4】磁性体層と内部導体層を有する積層型コイ
ル部品であって、前記磁性体層が請求項1または2の磁
性材料からなることを特徴とするコイル部品。 - 【請求項5】請求項4のコイル部品であって、前記内部
導体層がAgまたはAg−Pdの合金を主成分とするこ
とを特徴とするコイル部品。
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JP2000331805A JP3939088B2 (ja) | 2000-10-31 | 2000-10-31 | 磁性材料とこれを用いたコイル部品と磁性材料の製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006165212A (ja) * | 2004-12-07 | 2006-06-22 | Sony Corp | インダクタンス素子及びその製造方法、並びに配線基板 |
JP2015103588A (ja) * | 2013-11-22 | 2015-06-04 | 悦夫 大槻 | インダクタ及びその製造方法 |
JP2020155589A (ja) * | 2019-03-20 | 2020-09-24 | Njコンポーネント株式会社 | 磁性材料、および積層チップ部品 |
-
2000
- 2000-10-31 JP JP2000331805A patent/JP3939088B2/ja not_active Expired - Lifetime
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