JP2002119133A - きのこの人工培養基及びそれを用いたきのこの人工栽培方法 - Google Patents

きのこの人工培養基及びそれを用いたきのこの人工栽培方法

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秀朗 石田
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悟 寺村
Kazuhiro Miyashita
和博 宮下
Kenichi Nishizawa
賢一 西澤
Masahiro Shiroishi
雅弘 城石
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Denka Co Ltd
Nagano Ken Noson Kogyo Research Institute
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NAGANO PREF GOV NOUSON KOGYO K
Denki Kagaku Kogyo KK
Nagano Ken Noson Kogyo Research Institute
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 きのこを高収率で得ることが可能となるきの
この人工培養基及びそれを用いたきのこの人工栽培方法
を提供すること。 【解決手段】 SiO2:20〜80%、MgO:10〜70%、Al
2O3:0〜60%で、ガラス化率が50%以上のケイ酸マグネ
シウム及び/又はアルミノケイ酸マグネシウム、さら
に、これと硫酸塩とを含有してなるきのこの人工培養
基、該人工培養基を用いてなるきのこの人工栽培方法を
構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、きのこの人工培養
基及びそれを用いたきのこの人工栽培方法に関する。な
お、本発明で使用する部や%は特に規定のないかぎり質
量基準である。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来、きのこの栽培は、くぬ
ぎ、ぶな、及びならなどの原木を利用した、ほだ木栽培
がほとんどであり、そのため、気象条件により収穫が左
右されることが多いという課題があった。
【0003】また、最近では、ほだ木栽培用の原木切り
出しのための労働力が不足していることなどによって、
原木の入手が困難になりつつあるという課題があった。
さらに、ほだ木栽培では栽培期間が長いこと、即ち、種
菌の接種から、きのこの収穫までに1年半から2年も要
することにより、生産コストが相当高くつくという課題
があった。
【0004】近年、えのきたけ、ひらたけ、なめこ、ま
いたけ、しめじ、及びしいたけなどの栽培として、鋸屑
に米糠を配合した培養基を用い、瓶又は箱で栽培を行う
菌床人工栽培方法が確立され、一年を通して、四季に関
係なく安定して、きのこが収穫できるようになってい
る。即ち、従来は農家での副業的性格が強く、小規模生
産に頼っていたきのこ栽培が、現在では大規模専業生産
が可能となり、かつ、原料が入手しやすい菌床人工栽培
方法に移りつつある。
【0005】しかしながら、菌床人工栽培方法において
も、きのこを大量に連続栽培するには、いまだ収率も低
く、かつ、栽培期間がかなり長いため、その生産コスト
は安価とはいえず、今後これら生産性の改善が切望され
ている。
【0006】例えば、(Al2O3)X(SiO2) (ただし、式中の
Xは1以上の数)で示される化合物を前記の人工培養基に
含有したものや、(MgO)W(Al2O3)X(SiO2)y(ただし、式中
Wは1〜3の数、Xは1〜5の数、yは0〜3の数)で示
される化合物を前記の人工培養基に含有したもの、ある
いは、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、酸化第
一鉄、酸化第二鉄、及び四三酸化鉄から選ばれるいずれ
か一種類の化合物を人工培養基に添加したものがある
が、充分な収率できのこを生産することができていない
のが現状である(特開平03−210126号公報、特開平03−
058716号公報、及び特開平07−322754号公報)。
【0007】本発明者は、エトリンガイト、カルシウム
アルミネート、アルミノケイ酸カルシウム、及びスラグ
粉等の化合物を人工培養基に含有させることにより、き
のこの収率が飛躍的に向上することを提案した(特開平1
1−155364号公報、特開平11−187762号公報、特開平11
−243773号公報、及び特開平11−299347号公報)。
【0008】本発明者は、さらに誠意検討を重ねた結
果、特定の化合物を使用することにより、低価格で、し
かも高収率できのこを栽培できることを見いだし、本発
明を完成するに至った。
【0009】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、SiO220
〜80%、MgO10〜70%、及びAl2O30〜60%の化学組成
で、ガラス化率が50%以上のケイ酸マグネシウム及び/
又はアルミノケイ酸マグネシウム、さらに、これと硫酸
塩とを含有してなるきのこの人工培養基であり、該人工
培養基を用いてなるきのこの人工栽培方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明をさらに詳しく説明
する。
【0011】本発明で使用するSiO220〜80%、MgO10〜7
0%、及びAl2O30〜60%の化学組成で、ガラス化率が50
%以上のケイ酸マグネシウム及び/又はアルミノケイ酸
マグネシウム(以下、SMAという)とは、きのこの収率
を向上するために必要なもので、ケイ石、ケイ砂、石
英、及びケイ藻土等のシリカ原料、酸化マグネシウム(M
gO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、及び炭酸マグネシ
ウム(MgCO3)等のマグネシア原料、アルミナ、ボーキサ
イト、ダイアスポア、長石、及び粘土等のアルミナ原
料、苦土橄欖石、蛇紋石、滑石、及び石綿等のシリカと
マグネシアの原料、スピネル等のマグネシアとアルミナ
の原料、粘土鉱物やろう石等のシリカとアルミナの原
料、並びに、緑泥石やアルミナ系柘榴石等のシリカ、マ
グネシア、及びアルミナの原料を所定の割合で配合した
後、ロータリーキルンなどで焼成したり、電気炉や高周
波炉等で溶融して得られるものである。SMA中のSiO2
含有率は20〜80%、MgO含有率は10〜70%、及びAl2O3
有率は0〜60%であり、SiO2含有率が30〜60%、MgO含有
率が20〜60%、及びAl2O3含有率が0〜35%がより好まし
い。この範囲外ではきのこの収率が向上しない場合があ
る。なお、前記のシリカ原料、マグネシア原料、及びア
ルミナ原料中には、CaO、Fe2O3、TiO2、K2O、及びNa2O
などの不純物が含まれているが、SiO2、MgO、及びAl 2O3
が本発明の化学組成の範囲内であれば特に制限されるも
のではない。SMAの具体的な化合物としては、SiO220
〜80%、MgO10〜70%、及びAl2O30〜60%のガラス質
や、MgO・SiO2、2MgO・SiO2、MgO・Al2O3、及び2MgO・2Al2O
3・5SiO 2などの結晶質が挙げられるが、少量の添加量
で、きのこの収率が向上することから溶融物を急冷して
得られるガラス質が好ましい。SMAのガラス化率は高
ければ高いほど、きのこの収率が向上することから好ま
しい。具体的には、50%以上であり、80%以上が好まし
く、90%以上がより好ましい。なお、ガラス化率(χ)
は、SMAを1,000℃、2時間加熱後、5℃/分の冷却
速度で徐冷し、粉末X線回折法により結晶鉱物のメイン
ピークの面積S0を求め、SMAの結晶のメインピーク
面積Sから、χ(%)=100×(1−S/S0)の式を用いて
求めた。SMAの粒度は、少量の添加量で、きのこの収
率が向上することから細かいほど好ましい。具体的に
は、SMAの平均粒子径は、1mm以下が好ましく、100
μm以下がより好ましく、10μm以下が最も好ましい。
SMAの平均粒子径が1mmを超えると、きのこの収率の
向上が得られない場合がある。SMAの使用量は、人工
培養基100部中、0.01〜20部が好ましく、0.1〜10部がよ
り好ましい。この範囲外では、きのこの収率の向上がみ
られない場合がある。
【0012】本発明において、SMAに硫酸塩を併用す
ることは、きのこの収率をさらに向上する面から好まし
い。硫酸塩としては、無水セッコウ、半水セッコウ、二
水セッコウ、無水硫酸アルミニウム、含水硫酸アルミニ
ウム、無水硫酸鉄、含水硫酸鉄、無水硫酸ナトリウム、
含水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウム、含水硫酸
マグネシウム、無水硫酸リチウム、及び含水硫酸リチウ
ムなどが好ましい。このうち、無水セッコウが収率向上
の面から最も好ましい。硫酸塩の粒度は、少量の添加量
で、きのこの収率が向上することから細かいほど好まし
い。具体的には、硫酸塩の平均粒子径は、1mm以下が好
ましく、100μm以下がより好ましく、10μm以下が最
も好ましい。硫酸塩の平均粒子径が1mmを超えると、き
のこの収率の向上が得られない場合がある。硫酸塩の使
用量は、人工培養基100部中、0.01〜20部が好ましく、
0.1〜10部がより好ましい。20部を超えて添加しても、
収率の向上は望めない場合がある。
【0013】本発明で使用する人工培養基としては、鋸
屑、もみ殻、コーンコブ、バガス、パルプ廃材、ビート
粕、及びデンプン粕等の基材に、米糠、もろこし粉砕
物、及びフスマなどの栄養源の一種又は二種以上を混合
した混合物に、SMA、又は、SMAと硫酸塩を混合し
たものを含有させたものを使用することが可能である。
きのこの種類、栽培環境、及び条件等に応じて、基材や
栄養源の種類、それらの配合割合は任意に変化するもの
で特に限定されるものではないが、栄養源の使用量は、
例えば、基材100部に対して、10〜150部が、きのこを高
収率で得る面からより好ましい。
【0014】本発明の人工培養基を用いて、きのこを栽
培する方法は、各々の環境や状況等に応じて任意に変え
ることができるので特に限定されるものではないが、通
常、SMA、又は、SMAと硫酸塩を含有した人工培養
基に水を加えて、人工培養基の水分含有量を50〜70%に
調整し、必要に応じて殺菌・冷却後、菌を接種し、各々
のきのこについて通常採用されている培養工程や生育条
件に従って行うことが好ましい。
【0015】例えば、ぶなしめじ栽培の場合は、菌を接
種した人工培養基を22〜26℃で約30日間培養後、24〜28
℃で40〜50日間熟成し、菌かき後に温度14〜17℃、湿度
95〜100%で20〜25日間育成を行って、ぶなしめじを栽
培し収穫する。また、しいたけ栽培の場合は、菌を接種
した人工培養基を20〜25℃で約30日間培養後、26〜30℃
で40〜50日間熟成し、その後、温度13〜17℃で1〜3日
間低温処理し、温度17〜20℃、湿度90〜95%で約10日間
発生を行ってしいたけを収穫し、この際に第1回目の収
穫後に再び発生にかけて第2回目のしいたけの収穫を行
うことも可能である。
【0016】本発明では、基材や栄養源の他にも、炭酸
マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、
卵殻粉末、貝殻粉末、及び消石灰等を併用することも可
能である。
【0017】本発明で栽培されるきのこは人工栽培でき
るきのこであり、例えば、えのきたけ、ひらたけ、なめ
こ、ぶなしめじ、まいたけ、きくらげ、さるのこしか
け、エリンギ、及びしいたけなどが挙げられる。
【0018】
【実施例】以下、本発明の実験例を示し、本発明をさら
に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0019】実験例1 シリカ原料、マグネシア原料、及びアルミナ原料を所定
の割合で混合し、高周波炉で溶融後、急冷し、表1に示
すSMAを合成し、粉砕し、平均粒子径10μmにして使
用した。広葉樹鋸屑250g、針葉樹鋸屑250g、米糠500g、
及び水140mlをビニール袋に入れ充分に混合し、水分含
水率65%の混合物を調製した。調製した混合物とSMA
からなる人工培養基100部中、SMAを3部添加混合し
た人工培養基500gをプラスチック製850mlの広口瓶に圧
詰めした。広口瓶の中央に直径約2cmの穴を開け、打栓
後、120℃で90分間殺菌した。冷却後、ひらたけの鋸屑
種菌を植菌し、暗所、温度25℃、湿度55%の条件下で30
日間培養した。次に、栓を外して培養基の上部から約1
cm菌かきして菌糸層を除いた後、水道水20mlを添加して
充分に吸水させた。4時間放置後、上部に残った水を取
り除いて、温度15℃、湿度95%、照度20ルックスの条件
下で、7日間培養して子実体原基を形成させ、さらに照
度を200ルックスに上げて、10日間培養を続け、SMA
の組成とガラス化率が子実体収量に及ぼす影響について
検討した。結果を表1に併記する。
【0020】<使用材料> シリカ原料:二酸化ケイ素、試薬SiO2 マグネシア原料:酸化マグネシウム、試薬MgO アルミナ原料:酸化アルミニウム、試薬Al2O3 広葉樹鋸屑:ぶな材の鋸屑 針葉樹鋸屑:すぎ材の鋸屑 米糠 :市販品
【0021】<測定方法> コントロール対比:(SMA+硫酸塩)添加の子実体収量
(g)/(SMA+硫酸塩)無添加の子実体収量(g)×100
(%)
【0022】
【表1】
【0023】表1から明らかなように、人工培養基に、
SMAを添加することにより、ひらたけの収率が向上し
た。
【0024】実験例2 表2に示すSMAタを用いたこと以外は実験例1と同様
に行った。結果を表2に併記する。
【0025】
【表2】
【0026】表2から明らかなように、人工培養基に、
SMAの使用量が5部の場合、最もひらたけの収率が向
上した。
【0027】実験例3 表3に示す平均粒子径のSMAタを用いたこと以外は実
験例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0028】
【表3】
【0029】表3から明らかなように、SMAの平均粒
子径が小さくなるほど、ひらたけの収率が向上した。
【0030】実験例4 人工培養基100部中、SMAタを3部と表4に示す硫酸
塩を用いたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を
表4に併記する。
【0031】<使用材料> 硫酸塩a :無水セッコウ、平均粒子径10μm 硫酸塩b :二水セッコウ、平均粒子径10μm 硫酸塩c :無水硫酸アルミニウム、平均粒子径10μm 硫酸塩d :硫酸アルミニウム18水塩、平均粒子径10μ
m 硫酸塩e :無水硫酸マグネシウム、平均粒子径10μm
【0032】
【表4】
【0033】表4から明らかなように、人工培養基に、
SMAと硫酸塩を併用することにより、ひらたけの収率
が向上した。
【0034】実験例5 広葉樹鋸屑350g、針葉樹鋸屑350g、米糠300g、及び水13
5mlをビニール袋に入れ充分に混合し、水分含水率63%
の混合物を調製した。さらに、蛇紋石、ボーキサイトの
原料を用い、最大電力負荷5,000kVAの直接通電式溶融炉
で溶融し、溶融体を水中に落下させて急冷し、表5に示
す化学分析値を持つSMAを製造した。このSMAのX
線回折結果は、結晶のピークが認められず、ガラス化率
100%であった。調製した混合物、SMA、及び硫酸塩
からなる人工培養基100部中、表6に示すSMAと硫酸
塩aを添加混合した人工培養基500gをプラスチック製85
0ml広口瓶に圧詰めした。広口瓶の中央に直径約2cmの
穴を開け、打栓後、120℃で90分間殺菌した。冷却後、
ぶなしめじの種菌を植菌し、温度23℃にて30日間培養
後、さらに、26℃にて45日間熟成を行った。次に、菌か
きをした後、温度15℃、湿度95%の条件下で生育を行
い、21日後にぶなしめじを収穫した。結果を表6に併記
する。
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】表6から明らかなように、人工培養基に、
SMA、又は、SMAと硫酸塩を併用することにより、
ぶなしめじの収率が向上した。
【0038】
【発明の効果】以上、詳細に説明したとおり、本発明に
よる栽培方法によれば、きのこを高収率で得ることが可
能となった。
フロントページの続き (72)発明者 宮下 和博 長野県須坂市大字須坂787番地1 社団法 人 長野県農村工業研究所内 (72)発明者 西澤 賢一 長野県須坂市大字須坂787番地1 社団法 人 長野県農村工業研究所内 (72)発明者 城石 雅弘 長野県須坂市大字須坂787番地1 社団法 人 長野県農村工業研究所内 Fターム(参考) 2B011 BA06 BA07 BA09 BA10 BA13 BA14 GA04 GA08

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 SiO220〜80%、MgO10〜70%、及びAl2O3
    0〜60%の化学組成で、ガラス化率が50%以上のケイ酸
    マグネシウム及び/又はアルミノケイ酸マグネシウムを
    含有してなるきのこの人工培養基。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のケイ酸マグネシウム及び
    /又はアルミノケイ酸マグネシウムと、硫酸塩とを含有
    してなるきのこの人工培養基。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の人工培養基を用い
    てなるきのこの人工栽培方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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