JP2002106414A - シリンダブロックの鋳巣除去方法 - Google Patents

シリンダブロックの鋳巣除去方法

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JP2002106414A JP2000302358A JP2000302358A JP2002106414A JP 2002106414 A JP2002106414 A JP 2002106414A JP 2000302358 A JP2000302358 A JP 2000302358A JP 2000302358 A JP2000302358 A JP 2000302358A JP 2002106414 A JP2002106414 A JP 2002106414A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋳造されたシリンダブロックのボア表面の鋳
巣を除去することができ、品質の高い溶射ブロックの製
造が可能で、また、ボア表面の鋳巣を除去しておく前処
理としても広く利用可能なシリンダブロックの鋳巣除去
方法を提供する。 【解決手段】 シリンダブロックの鋳巣除去方法は、ア
ルミブロック11のボア表面12を覆うダミーライナ1
3を配置し、ブロック11のボア表面近傍15を加熱し
て再溶融させ、この後、再凝固したボア表面近傍15を
切除して円形孔を形成する工程を含む。ライナ13によ
り再溶融したボア表面近傍15の金属材料が外部へ流れ
出るのを防止しつつ、ボア表面近傍15の再溶融により
鋳巣が無くなる。この後、再凝固したボア表面近傍15
を切除して円形孔を形成することにより、鋳巣の無いボ
ア表面17が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両用エンジンの
製造に用いられるアルミダイカストシリンダブロックの
ような鋳造されたシリンダブロックの鋳巣除去方法に関
し、特に、ボア表面に溶射により耐摩耗性被膜を形成す
る工程等の前処理として実施するのに好適なシリンダブ
ロックの鋳巣除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、ダイカストシリンダブロックの
ような鋳造されたシリンダブロックでは、冷却条件等の
種々の要因により、例えば溶融金属を鋳型に早い勢いで
流し込むために溶融金属内部にエアが巻き込まれること
により、シリンダブロックのボア表面及びブロック内部
に鋳巣ができてしまう。
【0003】従来、アルミダイカストシリンダブロック
(以下、単にアルミブロックという)のボア表面に、耐
摩耗性被膜を溶射により形成する技術が知られている
(例えば、特開平7−317595号公報)。こうして
ダイカストシリンダブロックのような鋳造されたシリン
ダブロックのボア表面に耐摩耗性被膜を形成して作られ
たシリンダブロックを、以下の説明で「溶射ブロック」
という。
【0004】こうした溶射ブロックを製造する技術は、
シリンダブロックのボアに鋳鉄製等のシリンダライナを
鋳ぐるむ行程、或いは、同ボアにシリンダライナを圧入
する工程を不要にできる点で優れている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来技
術により溶射ブロックを製造する際に、アルミブロック
等のシリンダブロックのボア表面に鋳巣があると、その
表面に溶射により形成した耐磨耗性被膜の脱落や剥離が
生じてしまという問題があった。
【0006】こうした問題を回避するために、アルミダ
イカストのような鋳造技術自体を工夫して鋳巣を低減す
ることが考えられる。しかし、耐磨耗性被膜の脱落や剥
離が生じる原因となる有害な鋳巣のないシリンダブロッ
クを製造するのは非常に困難であった。
【0007】本発明は、こうした事情に鑑みてなされた
もので、その目的は、鋳造されたシリンダブロックのボ
ア表面の鋳巣を除去することができ、品質の高い溶射ブ
ロックの製造が可能で、また、ボア表面の鋳巣を除去し
ておく前処理としても広く利用可能なシリンダブロック
の鋳巣除去方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】以下、上記課題を解決す
るための手段およびその作用効果について記載する。請
求項1に係る発明は、鋳造されたシリンダブロックのボ
ア表面を覆うダミーライナを配置し、前記シリンダブロ
ックのボア表面近傍を加熱して再溶融させ、この後、再
凝固した前記ボア表面近傍を切除して円形孔を形成する
ことを特徴とするシリンダブロックの鋳巣除去方法であ
る。
【0009】この発明によれば、ボア表面を覆うダミー
ライナにより、再溶融したシリンダブロックの流れ出し
及び変形を防ぎつつ、再溶融によりボア表面近傍の鋳巣
を除去することができる。この後、再凝固したボア表面
近傍を切除して円形孔を形成することにより、不要とな
ったダミーライナが除去されるとともに鋳巣の無いボア
表面が得られる。
【0010】したがって、鋳造されたシリンダブロック
のボア表面の鋳巣を除去することができ、品質の高い溶
射ブロックを製造することができる。また、ボア表面に
耐摩耗性被膜を形成するための前処理としての利用だけ
でなく、次工程のためにボア表面の鋳巣を除去しておく
ための前処理としても広く利用することができる。さら
に、ボア表面近傍を再溶融させることにより、シリンダ
ブロックの残留応力も除去することができる。
【0011】請求項2に係る発明は、請求項1に記載の
シリンダブロックの鋳巣除去方法において、前記ボア表
面近傍の加熱を、電磁誘導により前記ダミーライナを介
して行うことを特徴としている。
【0012】この発明によれば、シリンダブロックのボ
ア表面近傍を直接加熱する場合よりも、ボア表面近傍を
効率的にかつ低出力で加熱することができるので、加熱
のための電力消費を低減することができる。
【0013】請求項3に係る発明は、請求項1又は2に
記載のシリンダブロックの鋳巣除去方法において、前記
ダミーライナは、前記シリンダブロックより透磁率の高
い金属材料で作られていることを特徴としている。
【0014】この発明によれば、ダミーライナをシリン
ダブロックより透磁率の高い金属材料で作ることによ
り、ダミーライナがシリンダブロックよりも早く加熱さ
れる。このため、ボア表面近傍をより効率的にかつより
低出力で加熱することができ、加熱のための電力消費を
より一層低減することができる。
【0015】請求項4に係る発明は、請求項1〜3のい
ずれか一項に記載のシリンダブロックの鋳巣除去方法に
おいて、前記加熱中或いは加熱後に、前記ダミーライナ
を前記シリンダブロックに対して動かすことを特徴とし
ている。
【0016】この発明によれば、ボア表面近傍の加熱中
或いは加熱後に、ダミーライナをシリンダブロックに対
して動かすことにより、再溶融したボア表面近傍にある
鋳巣が潰されて微細化され、或いは鋳巣が効率的に集め
られて鋳巣同士が合体し、外部へ押し出され易くなる。
これにより、再凝固したボア表面近傍を切除して円形孔
を形成することによりできるボア表面に残る鋳巣をより
少なく或いはより小さくすることができる。
【0017】請求項5に係る発明は、請求項4に記載の
シリンダブロックの鋳巣除去方法において、前記ダミー
ライナを、前記ボアの上下端の少なくとも一方より突出
させてあることを特徴としている。
【0018】この発明によれば、ボアの上下端の少なく
とも一方より突出させたダミーライナの突出部を工具等
で保持することができるので、ダミーライナをシリンダ
ブロックに対して容易に動かすことができるようにな
る。
【0019】請求項6に係る発明は、請求項2〜5のい
ずれか一項に記載のシリンダブロックの鋳巣除去方法に
おいて、前記電磁誘導による加熱時に、同加熱に用いる
高周波コイルを、前記ダミーライナ内で同ライナの軸線
に沿った方向に移動させることを特徴としている。
【0020】この発明によれば、高周波コイルによるダ
ミーライナ内面の被加熱部が同ライナの軸線に沿った方
向に移動し、この移動に伴いボア表面近傍の再溶融部が
順次移っていく。これにより、ダミーライナの内面全体
を一度に加熱する場合よりも、ボア表面近傍にある鋳巣
がより効率的に集められて鋳巣同士がより合体し易くな
り、この結果、鋳巣が外部へより押し出され易くなる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係るシリンダブロ
ックの鋳巣除去方法を、自動車等の車両用エンジンとし
て、例えば4気筒の自動車用エンジンのシリンダブロッ
クに適用した各実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】[第1実施形態]第1実施形態に係るシリ
ンダブロックの鋳巣除去方法を、図1及び図2に基づい
て説明する。
【0023】シリンダブロックの鋳巣除去方法は、以下
の工程(a)〜(c)を含む。 (a)アルミダイカストシリンダブロック11(アルミ
ブロック)に、そのボア表面12を覆うダミーライナ1
3を配置する。
【0024】(b)アルミブロック11のボア表面近傍
15を加熱して再溶融させる。 (c)この後、再凝固したボア表面近傍15を、切除加
工面16に沿って切除し、ボア表面17を形成する。
【0025】本実施形態では、ダミーライナ13は、ア
ルミブロック11より透磁率の高い金属材料、例えば鋳
鉄で作られた円柱状のライナである。同ダミーライナ1
3は、その上下端がアルミブロック11のアッパ部11
aの上下端(ボアの上下端)とそれぞれ一致するよう
に、アルミブロック11に鋳ぐるまれている。図1で符
号11bは、内部にクランクケースを形成するアルミブ
ロック11のロア部である。
【0026】また、本実施形態では、ボア表面近傍15
を加熱して再溶融させ、この後ボア表面近傍15を再凝
固させるのに、電磁誘導による高周波焼入れを実施す
る。図1で符号18は、同高周波焼入れに用いる高周波
コイルである。同高周波コイル18に不図示の装置によ
り高周波電流を流すことにより、ダミーライナ13が加
熱され、同ダミーライナ13を介してボア表面近傍15
が加熱される。この加熱時に、ダミーライナ13は、ア
ルミの溶融点以上に加熱するのが好ましい。
【0027】また、本実施形態では、ボア表面近傍15
の加熱中或いは加熱後に、高周波コイル18を、ダミー
ライナ13内で同ライナ13の軸線に沿った方向(図1
で上下方向)に相対移動させることにより、ダミーライ
ナ13の内面を順次加熱する。例えば、高周波コイル1
8を、ダミーライナ13の内面に沿って、その上端部側
から下端部側へ向かって一定の速度で移動させていくこ
とにより、ダミーライナ13をその上端部側から下端部
側へ向かって一定の速度で順次加熱していく。
【0028】以上説明した第1実施形態によれば、以下
の効果が得られる。 (1)アルミブロック11に、そのボア表面12を覆う
ダミーライナ13を配置した状態で、図2(a)で示す
ように鋳巣20が点在しているアルミブロック11のボ
ア表面近傍15を加熱して再溶融させる(上記工程
(a)及び(b))。このため、ボア表面12を覆うダ
ミーライナ13により、再溶融したボア表面近傍15の
流れ出し及び変形(シリンダブロックの流れ出し及び変
形)を防ぎつつ、再溶融によりボア表面近傍15の鋳巣
20が図2(b)で示すように除去される。
【0029】この後、電磁誘導による高周波焼入れによ
り冷却されて再凝固したボア表面近傍15を切除加工面
16に沿って切除して円形孔を形成することにより、鋳
巣20の無いボア表面17が得られる(図2(b)参
照)。
【0030】したがって、アルミブロック11のボア表
面17の鋳巣を除去することができる。また、この鋳巣
の除去されたボア表面17に、耐摩耗性被膜を溶射する
ことにより、耐摩耗性被膜の脱落や剥離の生じない品質
の高い溶射ブロックを製造することができる。
【0031】(2)ボア表面17に耐摩耗性被膜を溶射
する場合に限らず、次工程のためにボア表面17の鋳巣
を除去しておく前処理としても広く利用することができ
る。 (3)ボア表面近傍15を再溶融させることにより、ア
ルミブロック11の残留応力の残留応力も除去すること
ができる。
【0032】(4)ボア表面近傍15の加熱を、電磁誘
導による高周波焼入れによりダミーライナ13を介して
行うことにより、アルミブロック11のボア表面近傍1
5を直接加熱する場合よりも、ボア表面近傍15を効率
的にかつ低出力で加熱することができる。その結果、ボ
ア表面近傍15を加熱するための電力消費を低減するこ
とができる。
【0033】(5)ダミーライナ13は、アルミブロッ
ク11より透磁率の高い鋳鉄で作られているので、ダミ
ーライナ13がアルミブロック11よりも早く加熱され
る。このため、ボア表面近傍15をより効率的にかつよ
り低出力で加熱することができる。これにより、ボア表
面近傍15を加熱するための電力消費をより一層低減す
ることができる。
【0034】(6)ダミーライナ13を、アルミブロッ
ク11の溶融点以上に加熱することにより、ボア表面近
傍15をより短時間で効率的に加熱することができる。
これによっても、前記加熱のための電力消費をより一層
低減することができる。
【0035】(7)ボア表面近傍15の加熱中或いは加
熱後に、高周波コイル18を、ダミーライナ13内で同
ライナ13の軸線に沿った方向に移動させて、ダミーラ
イナ13の内面を順次加熱するようにしている。これに
より、高周波コイル18によるダミーライナ13内面の
被加熱部が同ライナ13の軸線に沿った方向に順次移動
し、この移動に伴いボア表面近傍15の再溶融部が順次
移っていく。このため、ダミーライナ13の内面全体
を、高周波コイル18を移動させずに同コイル18で一
度に加熱する場合よりも、ボア表面近傍15に点在する
鋳巣20がより効率的に集められて鋳巣同士がより合体
し易くなり、この結果、鋳巣20がアルミブロック11
外部へ(同ブロック11の下方へ)より押し出され易く
なる。
【0036】[第2実施形態]第2実施形態に係るシリ
ンダブロックの鋳巣除去方法を、図3及び図4に基づい
て説明する。
【0037】本実施形態に係るシリンダブロックの鋳巣
除去方法では、上記工程(b)での加熱中或いは加熱後
に、ダミーライナ13をアルミブロック11に対して、
同ライナ13の軸線に沿った方向に(例えば、図4
(b)の矢印で示す下方向に)動かすようにしている。
そのために、ダミーライナ13の上下端13a,13b
をアルミブロック11のアッパ部11aの上下端面11
c、11dよりそれぞれ突出させてある。その他は、上
記第1実施形態と同じである。
【0038】以上説明した第2実施形態によれば、上記
効果(1)〜(7)に加えて、以下の効果が得られる。 (8)ボア表面近傍15の加熱中或いは加熱後に、再溶
融状態にあるダミーライナ13をアルミブロック11に
対して同ライナ13の軸線に沿った方向に動かすことに
より、再溶融したボア表面近傍15にせん断力が加えら
れる。これにより、点在する鋳巣20(図4(a)参
照)が効率的に集められて鋳巣20同士が合体し、合体
した鋳巣20が図4(b)で示すエア21として外部へ
押し出され易くなる。したがって、再凝固したボア表面
近傍15を切除して円形孔を形成することによりできる
ボア表面17の鋳巣をより少なくすることができる。
【0039】(9)ダミーライナ13の上下端13a,
13bをアルミブロック11のアッパ部11aの上下端
面11c、11dよりそれぞれ突出させてある。このた
め、その突出部である上下端13a,13bの少なくと
も一方を工具等で保持することにより、ダミーライナ1
3をアルミブロック11に対して上記軸線に沿った方向
に容易に動かすことができる。
【0040】[第3実施形態]第3実施形態に係るシリ
ンダブロックの鋳巣除去方法を、図5及び図6に基づい
て説明する。
【0041】本実施形態に係るシリンダブロックの鋳巣
除去方法では、上記工程(b)での加熱中或いは加熱後
に、ダミーライナ13をアルミブロック11に対して、
同ライナの軸心を中心に図5の矢印で示す左右方向のい
ずれか一方へ回転させるようにしている。そのために、
本実施形態においても、上記第2実施形態と同様に、ダ
ミーライナ13の上下端13a,13bをアルミブロッ
ク11のアッパ部11aの上下端面11c、11dより
それぞれ突出させてある。
【0042】以上説明した第2実施形態によれば、上記
効果(1)〜(7)に加えて、以下の効果が得られる。 (10)ボア表面近傍15の加熱中或いは加熱後に、再
溶融状態にあるダミーライナ13をシリンダブロックに
対して、同ライナの軸心を中心に前記一方へ回転させる
ことにより、再溶融したボア表面近傍15にせん断力が
加えられる。これにより、点在する鋳巣20(図6
(a)参照)が図6(b)で示す鋳巣22のように潰さ
れて微細化される。したがって、再凝固したボア表面近
傍15を切除して円形孔を形成することによりできるボ
ア表面17の鋳巣をより小さくすることができる。
【0043】(11)ダミーライナ13の上下端13
a,13bの少なくとも一方を工具等で保持することに
より、ダミーライナ13をアルミブロック11に対し
て、同ライナの軸心を中心に容易に回転させることがで
きる。
【0044】[変形例]以上、本発明の各実施形態につい
て説明したが、各実施形態は以下に示すようにその構成
を変更して実施することもできる。
【0045】・上記各実施形態では、本発明をアルミダ
イカストシリンダブロック11に適用した例を示した
が、本発明はアルミ以外の金属材料を用いてダイカスト
以外の方法で鋳造されたシリンダブロックにも適用する
ことができる。
【0046】・上記各実施形態では、鋳鉄製のダミーラ
イナ13を、アルミブロック11に鋳ぐるんでいるが、
ダミーライナ13をアルミブロック11のボアに圧入す
るようにしてもよい。
【0047】・上記各実施形態において、ダミーライナ
13の内面全体を、図1及び図3の二点鎖線で示すよう
に、高周波コイル18を移動させずに同コイル18で一
度に加熱するようにしてもよい。
【0048】・上記各実施形態において、ダミーライナ
13を鋳鉄製ライナとしているが、ダミーライナ13を
鋳鉄以外の金属材料で作ってもよい。ただし、上述した
ように、同ダミーライナ13を、シリンダブロックの金
属材料よりも溶融点の高い金属材料で作るのが望まし
い。
【0049】・上記各実施形態に係るシリンダブロック
の鋳巣除去方法は、アルミブロック11等の鋳造された
シリンダブロックのボアに、シリンダライナを圧入する
タイプのシリンダブロックを製造する場合に、その圧入
の前処理としてボア表面を鋳巣の無い面にするためにも
有効に利用することができる。
【0050】・上記各実施形態では、本発明を自動車等
の車両用エンジンとして、4気筒の自動車用エンジンの
シリンダブロックに適用しているが、本発明は、4気筒
以外の多気筒の自動車用エンジンや、自動車以外の車両
用エンジンのシリンダブロックを製造する場合にも適用
可能である。
【0051】・上記各実施形態では、ボア表面近傍15
を、電磁誘導による高周波焼入れによりダミーライナ1
3を介して加熱しているが、本発明はその加熱法に限ら
ず、ダミーライナ13を介してボア表面近傍15を加熱
する方法全てを使用可能である。
【0052】・上記第2実施形態では、ダミーライナ1
3の上下端13a,13bをアルミブロック11のアッ
パ部11aの上下端面11c,11dよりそれぞれ突出
させてあるが、上下端13a,13bのいずれか一方を
突出させるようにしてもよい。
【0053】・上記第2実施形態では、上記工程(b)
での加熱中或いは加熱後に、ダミーライナ13をアルミ
ブロック11に対して、図4(b)の矢印で示す下方向
に動かすようにしているが、本発明はこれに限定されな
い。例えば、ダミーライナ13をアルミブロック11に
対して、同ライナ13の軸線に沿って上方或いは上下方
向へ動かすようにしてもよい。
【0054】・上記第3実施形態では、ダミーライナ1
3をアルミブロック11に対して、同ライナ13の軸心
を中心に図5の矢印で示す左右方向のいずれか一方へ回
転させるようにしているが、ダミーライナ13を、その
左右方向の他方へ或いは左右両方向へ往復回転させるよ
うにしてもよい。
【0055】以下、上記各実施例から把握できる技術思
想について説明する。 (イ)次工程で処理される鋳造品の端面或いは円形孔表
面の鋳巣を除去するために実施する前処理であって、前
記鋳造品の端面或いは円形孔表面を覆う金属板を同鋳造
品と一体化し、前記鋳造品の端面近傍或いは円形孔表面
近傍を加熱して再溶融させ、この後、再凝固した前記端
面近傍或いは円形孔表面近傍を切除して端面或いは円形
孔を形成することを特徴とする鋳造品の鋳巣除去方法。
【0056】この方法によれば、鋳造品の端面或いは円
形孔表面を覆う金属板により、再溶融した鋳造品の流れ
出し及び変形を防ぎつつ、再溶融により端面近傍或いは
円形孔表面近傍の鋳巣を除去することができる。この
後、再凝固した端面近傍或いは円形孔表面近傍を切除し
て最終的な端面或いは円形孔表面を形成することによ
り、不要となった金属板が除去されるとともに鋳巣の無
い端面或いは円形孔を有する鋳造品が得られる。
【0057】したがって、鋳造品の端面或いは円形孔表
面の鋳巣を除去することができ、次工程のために端面或
いは円形孔表面の鋳巣を除去しておくための前処理とし
て広く利用することができる。また、前記端面近傍或い
は円形孔表面近傍を再溶融させることにより、鋳造品の
残留応力も除去することができる。
【0058】(ロ)上記(イ)に記載の鋳造品の鋳巣除
去方法において、前記端面近傍或いは円形孔表面近傍の
加熱を、電磁誘導により前記金属板を介して行うことを
特徴とする。
【0059】この方法によれば、鋳造品の端面近傍或い
は円形孔表面近傍を直接加熱する場合よりも、同近傍を
効率的にかつ低出力で加熱することができるので、加熱
のための電力消費を低減することができる。
【0060】(ハ)上記(イ)又は(ロ)に記載の鋳造
品の鋳巣除去方法において、前記金属板は、前記鋳造品
より透磁率の高い金属材料で作られていることを特徴と
する。
【0061】この方法によれば、金属板を鋳造品より透
磁率の高い金属材料で作ることにより、金属板が鋳造品
よりも早く加熱される。このため、前記端面近傍或いは
円形孔表面近傍をより効率的にかつより低出力で加熱す
ることができ、加熱のための電力消費をより一層低減す
ることができる。
【0062】(ニ)上記(イ)〜(ハ)に記載の鋳造品
の鋳巣除去方法において、前記加熱中或いは加熱後に、
前記金属板を前記鋳造品に対して動かすことを特徴とす
る。
【0063】この方法によれば、前記端面近傍或いは円
形孔表面近傍の加熱中或いは加熱後に、金属板を鋳造品
に対して動かすことにより、再溶融した端面近傍或いは
円形孔表面近傍にある鋳巣が潰されて微細化され、或い
は鋳巣が効率的に集められて鋳巣同士が合体し、外部へ
押し出され易くなる。これにより、再凝固した前記端面
近傍或いは円形孔表面近傍近傍を切除してできる新たな
端面或いは円形孔表面に残る鋳巣をより少なく或いはよ
り小さくすることができる。
【0064】(ホ)上記(ニ)に記載の鋳造品の鋳巣除
去方法において、前記金属板を、前記端面の上下端の少
なくとも一方或いは前記円形孔の上下端の少なくとも一
方より突出させてあることを特徴とする。
【0065】この方法によれば、前記上下端の少なくと
も一方より突出させた金属板の突出部を工具等で保持す
ることができるので、金属板を鋳造品に対して容易に動
かすことができるようになる。
【0066】(ヘ)上記(イ)〜(ホ)に記載の鋳造品
の鋳巣除去方法において、前記電磁誘導による加熱時
に、同加熱に用いる高周波コイルを、前記金属板に沿っ
た方向に移動させて同金属板の加熱個所を順次移動させ
ることを特徴とする。
【0067】この方法によれば、高周波コイルによる金
属板の被加熱部が同金属板に沿った方向に移動し、この
移動に伴い前記端面近傍或いは円形穴表面近傍の再溶融
部が順次移っていく。これにより、金属板の内面全体を
一度に加熱する場合よりも、端面近傍或いは円形穴表面
近傍にある鋳巣がより効率的に集められて鋳巣同士がよ
り合体し易くなり、この結果、鋳巣が外部へより押し出
され易くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態に係るシリンダブロックの鋳巣
除去方法の説明に用いる同ブロックの部分断面図。
【図2】 (a)は加熱前の状態を示す図1の一部拡大
断面図、(b)は加熱後の状態を示す図1の一部拡大断
面図。
【図3】 第2実施形態に係るシリンダブロックの鋳巣
除去方法の説明に用いる同ブロックの部分断面図。
【図4】 (a)は加熱前の状態を示す図3の一部拡大
断面図、(b)は加熱後の状態を示す図3の一部拡大断
面図。
【図5】 第3実施形態に係るシリンダブロックの鋳巣
除去方法の説明に用いる同ブロックの一部を示す平面
図。
【図6】(a)は加熱前の状態を示す図5に示すシリン
ダブロックの一部拡大断面図、(b)は加熱後の状態を
示す同ブロックの一部拡大断面図。
【符号の説明】
11…鋳造されたシリンダブロックとしてのアルミブロ
ック、12…ボア表面、13…鋳鉄製のダミーライナ、
15…ボア表面近傍、16…切断加工面、17…ボア表
面(円形孔)、18…高周波コイル、20…鋳巣、22
…微小化された鋳巣。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3G024 AA22 AA36 AA37 AA45 AA47 DA17 EA01 FA00 FA06 GA02 GA06 GA10 GA22 HA02 HA07 4K031 AA08 AB08 BA08 EA05

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋳造されたシリンダブロックのボア表面
    を覆うダミーライナを配置し、 前記シリンダブロックのボア表面近傍を加熱して再溶融
    させ、 この後、再凝固した前記ボア表面近傍を切除して円形孔
    を形成することを特徴とするシリンダブロックの鋳巣除
    去方法。
  2. 【請求項2】 前記ボア表面近傍の加熱を、電磁誘導に
    より前記ダミーライナを介して行うことを特徴とする請
    求項1に記載のシリンダブロックの鋳巣除去方法。
  3. 【請求項3】 前記ダミーライナは、前記シリンダブロ
    ックより透磁率の高い金属材料で作られていることを特
    徴とする請求項1又は2に記載のシリンダブロックの鋳
    巣除去方法。
  4. 【請求項4】 前記加熱中或いは加熱後に、前記ダミー
    ライナを前記シリンダブロックに対して動かすことを特
    徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のシリンダ
    ブロックの鋳巣除去方法。
  5. 【請求項5】 前記ダミーライナを、前記ボアの上下端
    の少なくとも一方より突出させてあることを特徴とする
    請求項4に記載のシリンダブロックの鋳巣除去方法。
  6. 【請求項6】 前記電磁誘導による加熱時に、同加熱に
    用いる高周波コイルを、前記ダミーライナ内で同ライナ
    の軸線に沿った方向に移動させることを特徴とする請求
    項1〜5のいずれか一項に記載のシリンダブロックの鋳
    巣除去方法。
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