JP2002093725A - 表面処理方法および半導体装置の製造方法 - Google Patents

表面処理方法および半導体装置の製造方法

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JP2002093725A
JP2002093725A JP2000285137A JP2000285137A JP2002093725A JP 2002093725 A JP2002093725 A JP 2002093725A JP 2000285137 A JP2000285137 A JP 2000285137A JP 2000285137 A JP2000285137 A JP 2000285137A JP 2002093725 A JP2002093725 A JP 2002093725A
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substrate
sic
mask
hydrogen
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JP2000285137A
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Inventor
Yoshiko Hiraoka
佳子 平岡
Naoharu Sugiyama
直治 杉山
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 Si基板またはSiGe基板上の所望の領域
に、所望の縦構造を実現するための表面処理方法を提供
する。 【解決手段】 SiまたはSi1-xGex(0<x<1)
からなる基板上に、ダイヤモンド層、SiC層、Si
1-yy(0<y<1)層、Si1-xGexC(0<x<
1)層、およびSi1-x-yGexy(0<x+y<1、
x≠0、y≠0)層からなる群から選択される少なくと
も1種を含むマスクを形成する工程と、前記マスクが形
成された前記基板に、原子状水素を含有するエッチング
ガスを照射して、前記基板の露出部を除去する工程を具
備する表面処理方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリコンあるいは
シリコンゲルマニウムの表面処理方法に係り、特に良質
な再成長膜を実現するための方法、およびこれを用いた
半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】シリコンの集積回路のさらなる高性能化
のためには、材料中を走行するキャリアの速度、即ち移
動度を高めること、および集積度を高めることが有効な
手段であることが知られている。
【0003】引っ張り歪み状態のシリコン結晶中では、
電子移動度が従来のシリコン単結晶中よりも高いこと、
また圧縮歪み状態のSiGe混晶では、ホール移動度が
シリコン単結晶よりも高いことが最近明らかになり、S
iとSiGeとのヘテロ構造を利用する試みがなされて
いる。
【0004】また、シリコン集積回路の応用範囲を広げ
るために、SiC層やSiGeC層をSi基板上にエピ
タキシャル成長し、これら新材料のデバイスをSi基板
上に実現することが最近注目されている。というのは、
SiCはSiよりもバンドギャップが広く耐圧が高い等
の特徴を有するので、高温、高耐圧電子デバイスへの応
用が期待されるからである。
【0005】このように、Si基板上にSiGe、Si
C、SiGeC等のIV−IV族化合物半導体や混晶半導体
を成長することによって、Si基板上に高性能、高機能
の回路を形成することが可能となる。しかしながら、そ
のためには、基板上にこれらの材料を組み合わせた所望
の縦構造と横構造とを実現しなければならない。実際に
は、Si基板上に薄膜を形成する技術、成長した薄膜の
位置に微細なパターンのマスクを形成し、マスクされて
いない部分を除去、すなわちエッチングする技術、さら
に、所望の薄膜を再成長する技術の確立といった多くの
技術課題が山積みされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、高性
能な半導体素子を得るためには、所望の縦構造と横構造
とを実現する技術が必要であり、そのためには、原子層
単位でコントロール可能であるとともに、基板へのダメ
ージが少なく、良好な再成長膜を実現できるような表面
処理方法の開発が要請されている。しかしながら、これ
を達成できる表面処理方法は、未だ得られていないのが
現状である。
【0007】本発明は上記事情を考慮してなされたもの
で、Si基板またはSiGe基板上の所望の領域に、所
望の縦構造を実現するための表面処理方法を提供するこ
とを目的とする。
【0008】また本発明は、Si基板またはSiGe基
板の所望の領域に所望の縦構造を有する半導体装置の製
造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明は、SiまたはSi1-xGex(0<x<1)
からなる基板上に、ダイヤモンド層、SiC層、Si
1-yy(0<y<1)層、Si1-xGexC(0<x<
1)層、およびSi1-x-yGexy(0<x+y<1、
x≠0、y≠0)層からなる群から選択される少なくと
も1種を含むマスクを形成する工程と、前記マスクが形
成された前記基板に、原子状水素を含有するエッチング
ガスを照射して、前記基板の露出部を除去する工程を具
備する表面処理方法を提供する。
【0010】また本発明は、SiまたはSi1-xGe
x(0<x<1)からなる基板上の一部の領域に、ダイ
ヤモンド層、SiC層、Si1-yy(0<y<1)層、
Si1-xGexC(0<x<1)層、およびSi1-x-y
xy(0<x+y<1、x≠0、y≠0)層からなる
群から選択される少なくとも1種を含むマスクを形成し
てソース領域となる第1の領域を得る工程と、前記マス
クが形成された前記基板に、原子状水素を含有するエッ
チングガスを照射して、前記基板の露出部を除去する工
程と、前記露出部が除去された基板上に、Si、Cおよ
びGeから選択される少なくとも1種を主成分とする結
晶膜を再成長して、チャネルおよびドレイン領域となる
第2の領域を得る工程と、前記第1の領域上にソース電
極を形成する工程と、前記第2の領域上にゲート電極お
よびドレイン電極を形成する工程とを具備する半導体装
置の製造方法を提供する。
【0011】本発明の表面処理方法は、前記露出部が除
去された基板および前記マスクの少なくとも一方の上
に、Si、CおよびGeから選択される少なくとも1種
を主成分とする結晶膜を再成長する工程をさらに具備す
ることができる。
【0012】以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】Si、GeおよびCを含有する薄膜におい
ては、Si−Si、Si−C、Si−Ge、およびC−
C等、種々のボンドの組み合わせが存在する。これらボ
ンドの結合の強さは、元素の組み合わせにより異なって
おり、例えば、C−C結合はSi−Si結合より切れに
くい。したがって、エッチャントのような反応性の高い
原子や分子がアタックした場合には、C−C結合は切れ
ないがSi−Si結合は切れるという場合が存在する。
【0014】ここで、活性原子として原子状水素を考え
る。原子状水素は、Si単結晶の表面Siと反応してS
iを脱離させること、すなわちエッチングすることが実
験から示されている。本発明者らは、そのメカニズムを
非経験的分子軌道計算で解析した結果、原子状水素がア
タックした表面SiはSiH4となって脱離することを
見出した。これに関して、以下に詳細に説明する。
【0015】なお、原子状水素とは、水素原子、すなわ
ち、中性原子を意味し、電子が1個存在しているため、
反応性の高いフリーラジカル状態である。通常、純粋な
水素ガスは、2個の水素原子が結合した水素分子の状態
で存在している。ただし、原子状水素を発生させるのは
簡単で、1800℃程度に加熱したタングステンフィラ
メントに水素分子を流すと、水素分子は解離して2個の
水素原子になる。また、水素化合物や水素分子を含む混
合ガスにプラズマをたてると、適切な条件で原子状水素
が生成することが知られている。ただし、この場合は励
起状態の原子状水素が生成することがあるが、励起状態
でも原子状水素であることに変わりなく、同様な効果が
得られる。また、水素化物を加熱することにより、熱分
解によって原子状水素を発生することも可能である。具
体的には、ホスフィンやアルシン等の水素化物を700
℃程度に加熱すると、原子状水素が発生することが知ら
れている。
【0016】Si(001)の最表面にあるSi原子に
は、無限に続く結晶を切断したことに起因して、2個の
ダングリングボンドが発生する。ダングリングボンドは
不安定なので、隣接する表面Si同士が結合し、ダイマ
ーを形成することによって安定化する。水素雰囲気中の
Si(001)表面は、基板温度や水蒸気圧等の条件に
依存して、下記化1に示すようにさまざまの構造をとる
ことが知られている。
【0017】
【化1】
【0018】室温でフッ素処理を施した基板では、Si
1個につき2個存在するダングリングボンドそれぞれに
水素が結合したダイハイドライド構造(DH)が出現す
る。基板温度を上げると、表面に結合している水素の一
部が脱離する。400〜600℃付近では、表面Siダ
ングリングボンドの1個に水素が結合し、残りの1個は
隣接するSiに結合したモノハイドライドダイマー構造
(MHD)をとることが知られている。より高温では、
水素がすべて脱離して、水素が結合していない清浄ダイ
マー構造(CD)になる。
【0019】原子状水素が供給された場合について、非
経験的分子軌道計算で解析した結果、下記化2ないし化
4に示すように反応が進むことが明らかになった。
【0020】出発点として、ダイハイドライド状態の表
面Siを考える。というのは、原子状水素が供給されて
いる場合には、直ちにダイハイドライド構造に変化し
て、安定化すると考えられるからである。この状態に最
初の1個の原子状水素(図中のH26)が供給された場合
が下記化2に示す反応(I−1)である。
【0021】
【化2】
【0022】反応の始状態が構造(I−A)で示されて
いる。ここでは、Siの(001)表面をクラスターモ
デル化している。もともと、結晶表面は無限の数の原子
で構成されているが、ab initio分子軌道計算
では、これら無限個の原子を計算することは不可能であ
る。そこで、反応に直接寄与する原子とその周辺の原子
のみを考慮し、これらをクラスターでモデル化する。具
体的には、Si(001)面の表面第1層にあるSiを
2個だけ取り出し、次に、これらに結合している第2層
目のSiを4個考えた。さらに、第3層目を2個、第4
層めを1個、すなわち、Siを9個考慮した。また、無
限に結合が続いている結晶の一部を切り出したクラスタ
ーには、周囲にダングリングボンドができる。これらの
ダングリングボンドは本来存在してはならないものなの
で、仮想的に水素を結合させることで終端した。この水
素は、あくまで仮想的な水素である。このようにして、
Si912クラスターができあがるが、さらに2個の表
面Siにそれぞれ2個づつ結合した、合計4個の表面水
素を加え、Si916クラスターでダイハイドライド表
面をモデル化した。このSi916クラスターと原子状
水素を示したのが、構造(I−A)である。構造(I−
B)は反応の遷移状態である。表面のSi(Si1
は、第2層目のSiと2個のSi−Siバックボンド
(Si1−Si2とSi1−Si3)、3個の水素とのSi
−Hボンド(Si1−H4、Si1−H5、およびSi1−
26)を形成している。この構造(I−B)の構造(I
−A)に対する相対エネルギーは、+0.41eVであ
る。この遷移構造(I−B)を経て、Si−Siバック
ボンド(Si1−Si3)が切断される。その結果、構造
(I−C)に示すようにトリハイドライドが形成され
て、エネルギー的に0.66eV安定化することが計算
からわかった。
【0023】反応(I−1)におけるエネルギー変化
は、図1のグラフに示すとおりである。途中にエネルギ
ー障壁が存在するが、これが遷移構造(I−B)に対応
している。反応の始状態に対する障壁の高さは、0.4
1eVであった。この程度のバリアーの高さであると、
室温付近の温度でも反応が起きることを示している。
【0024】2個目の原子状水素(H27)が供給された
場合には、下記化3に示す反応(I−2)が生じる。
【0025】
【化3】
【0026】反応(I−1)の結果、表面第2層目のS
i(Si3)にはダングリングボンドが形成されてい
る。このダングリングボンドに原子状水素H(H27)は
反応障壁なしに結合し3.8eV安定化する。Hが結合
して安定化した状態が構造(I−D)である。エネルギ
ー変化の様子を、図2のグラフに示した。図2のグラフ
に示されるように、構造(I−D)となる反応には、エ
ネルギー障壁は存在しない。
【0027】3個目の水素(H28)との反応は、下記化
4に示す反応(I−3)で表わされる。
【0028】
【化4】
【0029】HがトリハイドライドSi(Si1)をア
タックすると、5配位の遷移状態(I−E)を経て、S
i−Siバックボンド(Si1−Si2)が切れる。その
結果、構造(I−F)に示すように、SiH4が脱離す
る。エネルギー変化は図3のグラフで示してある。反応
障壁、すなわち、遷移状態の相対エネルギーは0.38
eVであった。
【0030】以上の結果から、Si基板に原子状水素が
供給された場合の一連の反応における律速段階は、前記
化2に示した反応(I−1)であり、その活性化エネル
ギーは0.41eVと小さいことが計算から明らかにな
った。0.41eVの反応エネルギーというのは、この
反応が室温程度で容易に生じることを示している。すな
わち、原子状水素Hが連続的に供給されると、表面Si
のSi−Siバックボンドが切れてトリハイドライドに
なり、ついには、SiH4として脱離していくことがわ
かった。
【0031】次に、同様な計算をSiCについて行なっ
た。SiCにおいては、構造元素がSiとCとの2種類
なので、原子状水素が最表面のCをアタックする場合
と、最表面のSiをアタックする場合の2種類を検討す
る必要がある。
【0032】下記化5ないし化7には、Hが最表面のC
をアタックした場合の計算結果を示した。
【0033】
【化5】
【0034】
【化6】
【0035】
【化7】
【0036】出発点として、前述のSiの場合と同様に
ダイハイドライド状態のCを考え、前記化2に示した反
応(I−1)から前記化4に示した反応(I−3)の3
種類に対応する反応について、必要な活性化エネルギー
をそれぞれ計算した。なお、計算には、すでに述べた純
粋なSiと同様な方法で、SiCのC表面をクラスター
モデル化したC4Si516クラスターを用いた。化5な
いし化7には、簡単のため、表面第1層目の2個のC原
子と、第2層目の4個のSi原子、表面Cに結合した4
個の水素およびアタックしてくる原子状水素を記載し、
他は省略して示した。以下の化学式でも同様の省略を行
なっている。
【0037】前記化5に示した反応(II−1)に示され
るように、Hがダイハイドライドをアタックし、バック
ボンドが切断されてトリハイドライドCを形成するのに
必要なエネルギーは、1.6eVであった。また、前記
化6に示した反応(II−2)のように、2個めのHが表
面に形成されたSiダングリングボンドを終端すること
により安定化するエネルギーは、−3.8eVであっ
た。さらに、前記化7に示した反応(II−3)のよう
に、3個目のHがトリハイドライドCをアタックして、
CH4が脱離するのに必要なエネルギーは、1.5eV
であった。
【0038】以上の結果から、SiC基板に原子状水素
が供給された場合の一連の反応の律速過程は、反応(II
−1)であり、その活性化エネルギーは1.6eVであ
ることがわかった。純粋なSiについて得られた活性化
エネルギーは0.4eVであるので、SiCの場合の活
性化エネルギーは非常に大きい。実際のところ、原子状
水素を供給してCH4を脱離させる反応を起こすために
は、少なくとも400〜500℃に基板を昇温する必要
がある。
【0039】次に、SiCを構成するもう一つの元素と
してSiについて、同様に計算した結果を下記化8ない
し化10に示す。
【0040】
【化8】
【0041】
【化9】
【0042】
【化10】
【0043】SiC表面のSiはバックボンドがSi−
C結合であるので、エッチャントのアタックに対するバ
ックボンドの切れ方は、当然、純粋なSiの場合とは違
ってくる。最初のH(H26)がアタックし、Si−Cバ
ックボンドを切って、トリハイドライドSiが得られる
反応は、前記化8に示される反応(III−1)であり、
1.1eVのエネルギーが必要とされる。その結果形成
したCダングリングボンドは、前記化9に示される反応
(III−2)のようにエネルギー障壁なしに次のH(H
27)と結合し、−4.8eVに安定化する。3個めのH
(H28)がトリハイドライドSiのSi−Cバックボン
ドを切って、SiH4が脱離するのに必要なエネルギー
は、前記化10の反応(III−3)に示されるように
0.9eVであった。
【0044】以上の結果から、SiCのSi面をエッチ
ングするのに必要なエネルギーとして1.1eVが計算
された。前述の化5ないし化7の結果と合わせると、S
iCを原子状水素でエッチングする際には、表面に露出
している元素によってエッチングに必要な活性化エネル
ギーが異なることがわかる。その活性化エネルギーは、
表面にCが露出している場合には1.6eVであり、表
面にSiが露出している場合には1.1eVとなる。S
iエッチングの活性化エネルギーは1.1eVと多少小
さめなので、室温でもSiH4脱離が生じる可能性はあ
る。しかしながら、その速度は純粋なSiに比べて、か
なり遅いと予想される。また、たとえSiC中の表面S
iがエッチングされたところで、次に表面に露出するの
はCである。Cのエッチング活性化エネルギーは1.6
eVと大きいので、SiCでは、C原子が表面に露出し
た状態で、エッチングがストップしてしまうことがわか
った。
【0045】最後に、純粋なC、すなわちダイヤモンド
に関して同様な検討を行なった結果を下記化11ないし
化15に示す。ダイヤモンド表面としては、モノハイド
ライド構造がよく知られている。これまでの計算では、
ダイハイドライド構造に原子状水素がアタックした場合
を計算してきたが、ダイヤモンドでは、モノハイドライ
ドから出発した方が、より現実的である。より一般的
に、水素が結合していない表面に順次原子状水素が結合
していく様子を、下記化11および化12を参照して説
明する。
【0046】
【化11】
【0047】
【化12】
【0048】上記化11に示される反応(IV−A)は、
水素が結合していない清浄ダイマー(CD)に水素が1
個づつ結合して、モノハイドライドダイマー(MHD)
に変化していく一連の反応を計算した結果である。モノ
ハイドライドダイマー(MHD)に変化するのには、エ
ネルギー障壁が存在しない。すなわち、仮に清浄ダイマ
ー(CD)が存在したとしても、原子状水素が照射され
れば、直ちにモノハイドライドダイマー(MHD)に変
化すると考えられる。
【0049】上記化12に示される反応(IV−B)に
は、モノハイドライドダイマー(MHD)に原子状水素
(H4)が近づいた場合に生じる反応を示した。表面C
ダイマー結合を切って、ダイハイドライドC(H4−C1
−H5)が形成される反応(IV−B1)にはエネルギー
障壁が存在し、そのバリアーは1.0eVであった。ま
た、モノハイドライドダイマー(MHD)のC−Cバッ
クボンド(C1−C3)を切って、ダイハイドライドを形
成する反応(IV−B2)も可能であり、この反応に必要
なエネルギーも1.0eVであった。したがって、モノ
ハイドライドダイマー(MHD)に原子状水素が近づい
た場合には、基板の温度をわずかに高めることによっ
て、前記化12に示した反応(IV−B1)と反応(IV−
B2)との2種類の反応が可能である。
【0050】ところで、最終的にCがエッチングされる
ためには、ダイハイドライドがトリハイドライドにな
り、さらに、トリハイドライドのC−Cバックボンドが
切れてCH4が脱離する必要がある。これを計算した結
果を、反応(IV−1)ないし反応(IV−3)として下記
化13ないし化15に示す。
【0051】
【化13】
【0052】
【化14】
【0053】
【化15】
【0054】ダイハイドライドがトリハイドライドにな
る反応は、前記化13に示した反応(IV−1)であり、
そのエネルギー障壁は2.4eVと非常に高かった。反
応(IV−1)の結果、C3にはダングリングボンドが形
成されている。前記化14に示した反応(IV−2)のよ
うに、このダングリングボンドには原子状水素(H27
が反応障壁なしに結合して安定化する。
【0055】また、トリハイドライドがCH4として脱
離する反応は、前記化15に示した反応(IV−3)であ
り、そのエネルギー障壁は2.0eVであった。すなわ
ち、ダイヤモンドが原子状水素でエッチングされるため
には、2.4eVのエネルギーが必要であり、この反応
や室温や400〜500℃に昇温した程度では不可能で
ある。
【0056】以上を総合すると、原子状水素を供給する
ことによって、Siは室温でもエッチングされるが、S
iCやC、すなわちダイヤモンドはエッチングされない
ことが計算から明らかになった。さらに、SiGeもま
た原子状水素でエッチングされることが明らかになって
いる。SiGeは、SiとGeとがランダムに位置した
混晶であり、多くの場合、Si中に30%程度のGeを
混合してデバイスに利用される。混晶であるので、Si
−Si結合、Ge−Ge結合、およびSi−Ge結合が
ランダムに存在する可能性があり、これらのさまざまな
組み合わせに関して計算する必要がある。
【0057】ここで、Geの濃度が低い場合に高い確率
で存在することが予想される表面原子配置を例に挙げ
て、原子状水素との反応の活性化エネルギーを計算し
た。下記化16ないし化18を参照しつつ、これについ
て説明する。
【0058】
【化16】
【0059】
【化17】
【0060】
【化18】
【0061】原子状水素(H26)がダイハイドライド状
態の表面Geを攻撃して、トリハイドライドGeが形成
される反応は、前記化16に示した反応(V−1)で表
わされ、これに必要なエネルギーは0.2eVである。
その結果形成したSiダングリングボンドは、前記化1
7に示される反応(V−2)のようにエネルギー障壁な
しに次のH(H27)と結合し、−3.8eVに安定化す
る。
【0062】また、トリハイドライドGeがGeH4
なって脱離するのに必要な反応は、前記化18に示した
反応(V−3)であり、そのエネルギーは0.1eVで
あった。したがって、表面のGeがエッチングされるの
に必要なエネルギーは0.2eVであり、純粋なSiの
場合より少し小さい。SiGeの可能な他の原子配置に
関しては、0.1から0.4eVが得られたので、Si
Geは原子状水素により容易にエッチングされると考え
られる。
【0063】したがって、SiやSiGeをエッチング
する際に、表面に形成したSiCやダイヤモンドをマス
クとして用い、原子状水素をエッチャントとして用いる
ことが可能である。従来、こうした基板のエッチングマ
スクとして利用されていたSiO2やレジストは絶縁体
であり、金属マスクは金属である。こうした絶縁体や金
属は、残留すると集積回路の汚染源となる場合が多いの
で、多くの場合、エッチング工程後には、マスクを完全
に剥離し、基板の洗浄を丹念に行なう必要があった。こ
れに対して、本発明においてマスク材料として用いられ
るSiCやダイヤモンドは半導体であり、集積回路の一
部としてそのまま利用することができる。したがって、
エッチング後にマスクを除去する工程を省くことができ
る。しかも、原子状水素で処理した後の基板表面は、ダ
メージが少なく非常に良好な結晶性を保つことができ
る。また、水素はCVD成長に本来用いられる元素であ
るので、エッチング後の基板上には、そのままSiやS
iGe,C、SiC、SiGeC等の薄膜を再成長でき
るという利点がある。
【0064】さらに、基板であるSiやSiGeとマス
ク材料であるSiCやCとでは、表面状態が異なるた
め、その上に半導体薄膜を再成長するのに必要な基板温
度が異なっている。というのは、水素化化合物を原料に
用いるCVDでは、結晶表面から水素が脱離することに
より、原料分子が表面に結合できるからである。具体的
には、SiやSiGe上では500〜600℃で表面水
素が脱離するので、この近傍の基板温度でCVD成長が
開始する。これに対して、SiやC上に薄膜をCVD成
長するためには、最低でも1000℃程度まで基板温度
を上げる必要がある。
【0065】したがって、本発明を用いてSiまたはS
iGe基板の表面を処理し、上述した特徴を利用するこ
とによって、さまざまなナノ構造をCVD成長で基板上
に作り込むことが可能である。
【0066】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態を説明する前
に、本発明の基本構成について説明する。
【0067】図4は、本発明に係わる表面処理方法の基
本プロセスを示す図である。Si基板11の一部には、
マスクとしてCが数原子層成長しているような構造が作
製されている。この図4においては、Cが2原子層12
として表わされているが、1原子層でも、数ミクロンで
もかまわない。また、Cの代わりにSiCでも、SiG
eC、あるいはこれらの積層膜をマスクとして形成して
も構わない。さらに、SiCやSiGeCはさまざまな
構造をとることが知られているが、それらのいずれの構
造の場合でも同様な効果が得られる。この構造の特徴
は、シリコン基板中のSi−Si結合に比べ、マスクと
なるCが持っているC−C結合、あるいはC−Si結合
の方が強いため、エッチャントに対する反応性が異なっ
ていることである。例えば、図示するように原子状水素
13を表面に照射した場合、Cマスク12で覆った部分
以外のSiはエッチングされて、SiH414として脱
離する。原子状水素を発生するためには、チャンバー内
にタングステンフィラメントを設置すればよい。このタ
ングステンフィラメントを加熱し、水素分子を通過させ
ることによって、容易に原子状水素を発生することがで
きる。
【0068】このように処理されたSi表面は、ダメー
ジや不純物が少なく良好な結晶性を有しているので、こ
のまま再成長を行なうことができる。しかも、マスクと
して用いたCやSiC、SiGeCも半導体であるの
で、そのまま構造に組み込むことができる。すなわち、
CやSiC、SiGeCマスクを形成する段階で、膜厚
や縦構造、ドーピング等の条件を素子の一部として設計
しておき、そのまま素子に組み込んで利用することが可
能である。また、同じ条件でエッチングを行なった場
合、エッチング速度は面方位により異なる場合がある。
前述の化2と化4とで示したように、Si(001)面
では、基板第1層のSiがSiH4として脱離するため
には、2個のSi−Siバックボンドを切る必要があ
る。これに対し、Si(111)面の表面第1層のSi
は、3個のSi−Siバックボンドで、表面第2層目の
Siと結合している。したがって、(111)面をエッ
チングするためには3個のバックボンドを切る必要があ
り、このことからだけでも、(111)面のエッチング
速度の方が遅そうである。実際に、基板温度や水素の供
給量等を変えることにより、Si(001)面とSi
(111)面とのエッチング速度比は変化するので、エ
ッチング条件の制御により、エッチング形状を制御する
ことも可能である。
【0069】ところで、SiやSiGeなどVI族結晶の
CVDによる薄膜成長では、表面の水素の脱離が律速過
程である場合が多いことが知られている。例えば、Si
の表面第1層に結合している水素が一部脱離して、Si
がむき出しになったとする。そのSiには孤立電子対や
ダングリングボンドが形成されるので、シランやジシラ
ンのような原料分子は。エネルギー障壁なしに解離吸着
して結晶成長が進行する。その詳細は参考文献(Y.
S.Hiraoka,Jpn.J.Appl.Phy
s.vol.38(1999)pp2745−274
6)に記載されている。Si−CVDでは、基板を50
0℃に加熱することによって表面水素の脱離が始まり、
水素の脱離と同時にエピタキシャル成長も開始する。基
板がSiGeの場合には、表面に存在するGe原子から
選択的に水素が脱離することが、abinitio分子
軌道計算から確認されたので、成長に必要な基板温度が
低下すると予想される。実験からも、同じ基板温度では
SiGeの成長速度はSiよりも速いことが知られてい
る。ところが、表面第1層がCであったとすると、表面
Cに結合したHが脱離するのに必要なエネルギーはSi
に比べてかなり大きく、1000℃以上であると予想さ
れる。したがって、上に述べた機構が支配するような成
長条件では、1000℃以上に基板温度を上げる必要が
ある。
【0070】図5には、本発明の表面処理方法を適用し
た基板上に、半導体薄膜を再成長する方法を表わす工程
断面図を示す。
【0071】図5(a)に示されるように、Si基板2
1上にC層からなるマスク22を形成し、本発明の方法
により原子状水素を含むエッチャントを供給して表面処
理を行なうことによって、Si基板21の露出部がエッ
チングされる。上述したように、エッチングされて露出
したSi基板21表面は、低温(500℃)で再成長可
能であり、一方、Cマスク22表面は、再成長を行なう
のに高温(1000℃)を必要とする。
【0072】したがって、Siの原料となるジシランと
Geの原料となるゲルマンとを供給し、基板温度を50
0℃に高めると、図5(b)に示されるようにSi基板
21の上にSiGe23が成長する。このとき、ドーパ
ントとなる不純物を同時に供給すればドープ層を成長さ
せることができる。すでに述べた理由により、500℃
程度の成長温度では、Cマスク22上の成長速度は遅
い。
【0073】次に、基板温度を1000℃以上に高めて
ジシランとエチレンとを供給すると、Cマスク21およ
びSi再成長層23の上には、図5(c)に示すように
SiC層24が成長する。
【0074】ここで、多くの場合、CVD成長の律速過
程は水素の脱離であり、この場合は上述したようなプロ
セスにより図5(c)に示すような構造を作製すること
ができるが、これに当てはまらない場合も存在する。そ
れは、原料が表面水素の脱離温度よりも低温で分解し、
CH3のような反応しやすい活性分子ができる場合であ
る。仮にCH3が表面に供給されれば、表面のCやSi
が水素で終端されていたとしても、CH3は強引に表面
に結合してしまう。この場合は、原料分子の分解速度が
律速過程になるので、例えば、500℃程度で分解し
て、活性なC化合物や活性なSi化合物あるいは活性な
Ge化合物を放出するような原料を用いれば、500℃
でマスクのC表面とエッチング後のSi表面に、同時に
SiGeCを再成長することが可能である。ただし、成
長温度が低すぎると、結晶の質が低下する場合が多い。
【0075】上述したような特徴を利用し、基板温度や
供給原料等を適宜選択することにより、原子状水素を用
いたエッチング後のSi基板上に再成長する際に、マス
クであるCやSiC、SiGeC上にも、任意に同時に
再成長させることが可能である。
【0076】なお、本発明の方法により処理された基板
の表面には、Si、CおよびGe以外にGaAs、In
P等のIII−V族化合物半導体やGaAlAs等の混
晶、GaN等の窒化物やZnSe等のII−VI半導体薄膜
を形成することも可能である。
【0077】さらに、こうした薄膜の再成長のみなら
ず、本発明の方法により処理された基板の表面には、電
極形成を行なうこともできる。具体的には、表面処理し
たSiやSiC上に直接Au等の金属を蒸着したり、S
iO2を形成してから金属を蒸着したりして、オーミッ
ク電極やゲート電極を形成することも可能である。これ
によって、耐圧や高周波特性等の優れた半導体装置を製
造することができる。
【0078】以下、図面を参照して、本発明をさらに詳
細に説明する。
【0079】(実施例1)図6および7には、本発明に
よる表面処理を用いて、高性能のFETを作製する際の
工程断面図を示す。
【0080】まず、図6(a)に示すように、シリコン
基板31上にSiO2パターン32を作製する。このパ
ターン作製方法の詳細は省略するが、通常のフォトマス
クを用いたプロセスを利用した。すなわち、Si基板に
レジストを塗布した後、フォトマスクを用いて露光し、
現像により一部のレジストを除去する。CVD炉にセッ
トし、SiO2膜を堆積する。SiO2膜の厚さは、原理
的には任意とすることができ、例えば、数nmから数千
ミクロンまで可能である。SiO2膜の厚さを適正化す
ることによって、その後のプロセスの簡略化を図ること
ができる。
【0081】SiO2膜を堆積した後、炉から取り出
し、フォトレジストを除去して図6(a)に示されるよ
うにSiO2パターン32を作製した。
【0082】また、SiO2膜の膜厚をより高精度に制
御するためには、Si基板31の表面を熱酸化し、その
酸化膜の一部を除去するという方法も可能である。ただ
し、すでに基板表面にエピタキシャル層が成長されてい
て、高温熱処理を避けたい場合には、この方法は適して
いない。
【0083】こうしてSiO2パターン32が形成され
た基板31をSiC、Si、およびSiGe等が成長で
きるCVD装置にセットする。本実施例においては、1
-7〜10-8Paの到達真空度をもつ、高性能な超高真
空(UHV)−CVD装置を用いた。この装置には、タ
ングステンフィラメントが備えてあり、これを加熱して
水素ガスを流すことにより、原子状水素を発生すること
が可能である。基板をCVD装置にセットした後、10
-7Pa程度の超高真空状態で基板を900℃に加熱し
て、短時間Si表面をクリーニングした。このクリーニ
ングプロセスは、マスクされていないSi基板31上の
自然酸化膜のみを除去し、マスク用に堆積されたSiO
232はそのパターンを保ったまま残るように、条件設
定されている。
【0084】次に、基板温度を700℃に設定して、9
9.9%程度のエチレンガスを2×10-4Pa供給し
た。数分後、SiO2でマスクされていないSi基板3
1表面の炭化が開始する。数原子層分のSiC合金層が
形成されて、炭化は飽和する。低温でゆっくり炭化した
場合には、その後、良好な立方晶(3C)SiC単結晶
膜が、基板のSiに格子整合して成長することが経験的
にわかっている。30分後、ジシランの供給を開始し
た。この際、ジシランの分圧は2×10-4Paに設定し
た。基板温度を1000℃程度に高めると、Si基板上
に良質のSiC単結晶が成長した。
【0085】本実施例においては、同時にジボランを供
給して、図6(b)に示すように高濃度p型SiC層3
3を成長した。この高濃度p型SiC層33は、30分
の成長時間で10nm成長した。
【0086】次に、基板の温度を室温まで下げた後、ジ
シラン、エチレン、およびジボランの供給を停止する。
CVD装置に備え付けてあるタングステンフィラメント
を加熱し、水素ガスを100SCCMの流量で流した。
これにより、原子状水素が基板表面に供給される。
【0087】原子状水素は、高濃度p型SiC層をエッ
チングしないが、SiO2をある程度エッチングする。
さらに、すでに説明したメカニズムに基づく本発明の表
面処理方法にしたがって、シリコン基板もエッチングす
る。本実施例では、基板を100℃に加熱した。このよ
うにして、図6(c)に示す構造が得られた。
【0088】なお、本実施例においては、SiO2マス
ク32の厚さをごく薄く設定してあったので、高性能p
型SiC層33をマスクとしてSiO2層32も同時に
エッチングしたが、これに限定されるものではない。図
6(b)に示した構造を作製した後、いったんCVD装
置から取り出して、化学的にSiO2マスク32を除去
することも可能である。SiO2層32の除去方法は、
このSiO2層32の厚さや膜質等に応じて選択するこ
とができる。なお、この処理条件でのSiのエッチング
速度は、〜10nm/minで非常にゆっくりとしたも
のであり、平坦かつダメージの少なく良質なエッチング
面が得られた。エッチング速度はSi基板温度ととも
に、1桁から2桁変化する。
【0089】なお、一般の化学反応では、室温から温度
を上げていくと反応速度が増加するが、本発明の原子状
水素によるSiのエッチングにおいては事情が異なる。
Siのエッチングが進行するためには、すでに説明した
ように表面にトリハイドライドが安定に存在する必要が
ある。しかしながら、基板温度を高めると、トリハイド
ライドが不安定になり、水素が脱離してダイハイドライ
ドやモノハイドライドになってしまう。すなわち、表面
トリハイドライドにHが結合してSiH4として脱離す
る反応が速く進行するためには、基板温度が高い方が有
利であるが、表面トリハイドライドの密度を高くするた
めには、基板温度が低いことが望まれる。これら2つの
相反する条件の兼ね合いによって、エッチング速度が決
まる。
【0090】原子状水素の供給量や発生方法、表面の状
態等によりこれらの兼ね合いは変化するので、一概には
いえないが、文献によると少なくとも−170℃から2
00℃の範囲でSiのエッチングが観測されている。
(S.K.Jo,B.Gong,G.Hess,J.
M.White,and J.G.Ekerdt,Su
rface Science vol.394(199
7)L162−167)。なお、400℃以上の高温に
すると、マスクのSiCもわずかにエッチングされるよ
うになるので、適度に低温に抑えておくことが望まれ
る。
【0091】また、今回は、(001)面のSi基板を
用いたが、他の面でも同様にSiCをマスクとして原子
状水素で処理することにより同様の効果が得られる。た
だし、基板の面方位により、エッチング速度は変化し、
例えば(111)面では若干遅くなる傾向があった。
【0092】次に、基板温度を650℃に高めて、ジシ
ランとドーパントガスのジボランとを供給した。その結
果、図7(a)に示すように、原子状水素でエッチング
したSi基板31表面のみに良質なボロンドープp型S
i単結晶層34が再成長した。なお、p型Si単結晶層
34の成長速度は、ジシランの分圧を20mPaとした
際に7nm/minであった。
【0093】図7(b)には、こうして得られた膜構造
を利用して作製した、高性能p型FETを示す。図示す
るように、p型Si層34上にショットキー電極36が
形成されており、ゲートとして作用する。またp型Si
層34上にはドレイン電極37となるオーミックコンタ
クトも形成されている。このFETの特徴は、ソース電
極35となるオーミック電極が高濃度の+p型SiC層
33上に形成されていることである。このFETが通常
のp型FETよりも高速動作する理由を、以下に図8を
参照して説明する。
【0094】図8は、SiCとSiとのヘテロ結合のバ
ンド構造である。本実施例で成長したSiCは立方晶で
あり、その禁制帯幅は2.4eVで、Siの1.1eV
より広い。ただし、バンド端の不連続は、大部分が価電
子帯側に集中していて、〜1.7eVの不連続がある。
したがって、図7(b)に示されるFETにおいては、
p型ソース電極35のあるSiC33からチャネルとな
るSi34に正孔が注入されたとき、この不連続により
正孔は加速され、高速でチャネルを走りぬけてドレイン
電極37に到達する。
【0095】(実施例2)図9には、本発明の表面処理
方法を適用して作製されたFETの他の例を示す。前述
の実施例1と異なるのは、マスクとして単一のSiC層
ではなく、SiGeC膜42とSiC膜43との積層膜
を用いたことである。Si基板に比べてSiCは格子定
数が小さいため、Si基板上に直接SiCを成長する場
合、格子欠陥が少ない良質の膜が得られる成長条件の範
囲が非常に狭い。したがって、高性能なCVD装置が必
要とされる。
【0096】ところで、GeはSiに比べて格子定数が
大きい。また、GeをSiにランダムに混合した混晶S
1-xGex(0<x<1)の格子定数は大きく、Geを
混ぜることにより共有結合の結合長を引き伸ばすことが
できる。したがって、SiCにGeを混合してなるSi
GeCの格子定数は、SiCの格子定数よりも大きく、
Siの格子定数に近づく。そこで、Si基板41上に緩
和層としてSiGeC層42を数原子層成長し、次にS
iC層43を成長することによって、広範囲の成長条件
で良質な積層膜を成長することができた。
【0097】次に、本発明の表面処理方法、すなわち、
SiGeC層42とSiC層43との積層膜をマスクと
して原子状水素を照射し、基板Siをエッチングした。
基板温度を500℃に高めて、僅かにホスフィンを混ぜ
たシランを基板に流すと、エッチング処理をしたSi基
板41上にのみ、低濃度n型にドープしたn-Si層4
4が選択再成長し、エッチングマスクであったSiGe
C42/SiC43積層膜上にはほとんど再成長しな
い。さらに、供給ガスをシランとゲルマンとに切り替え
て、アンドープSi0.7Ge0.3層45をn-Si層44
上に成長し、ジボランとジシランとに切り替えてp型S
i層46をその上に選択再成長した。その後、p型Si
C層43上にソース電極48を形成し、p型Si層46
上にゲート電極49およびドレイン電極50を形成し
て、図9に示す構造を作製した。
【0098】ところで、選択再成長膜の構造は、歪Si
Geを利用したヘテロ接合FETを実現するバンド構造
になっている。すでに述べたように、Si0.7Ge0.3
子定数はSiより大きい。したがって、図9に示される
ように単結晶Si上に成長したSi0.7Ge0.345に
は、基板面内に沿って圧縮するような歪が加わってい
る。圧縮歪状態のSi0.7Ge0.3は、Siよりも高い正
孔移動度を有することが知られている。また、p型Si
層46とアンドープSi0.7Ge0.3層45とのヘテロ接
合界面のSi0.7Ge0.3側には、p型Siから注入され
た二次正孔ガス47が形成される。Si面のSi0.7
0.3層45には不純物がドープされていないので、不
純物散乱が抑制され、通常のp型圧縮歪Si0.7Ge0.3
よりも高い正孔移動度が実現できる。また、Si0.7
0.3の下に成長してあるn−型Si層44は、正孔が
基板側に広がって流れるのを抑える障壁の役目を果たし
ている。したがって、このヘテロ構造にソース電極48
からp+型SiC層43を介して正孔を注入すると、実
施例1に示したpチャネルFETよりも、より高速動作
するpチャネルヘテロ接合FETが実現できた。
【0099】本実施例においては、マスクとしてSiG
eC層とSiC層との積層膜を用いたが、本発明の目的
は、マスクの最上層にCを含有する層が含まれていれば
達成することができる。したがって、マスクとして成長
した積層膜中にSi層やSiGe層が含まれていても構
わない。例えば、Si層、SiGe層、SiGeC層、
およびSiC層を順次積層した積層膜を作製して、これ
をマスクとして原子状水素で処理した場合にも、同様な
効果が期待できる。
【0100】以上、マスク最上層にp型SiC層を成長
し、このSiC層の上にソース電極を形成することによ
り、高性能のpチャネルFETやpチャネルヘテロ接合
FETを作製した例を挙げて本発明を説明したが、マス
クはソース領域以外にも用いることができる。例えば、
p型SiC層などのようなマスクの最上層にダイヤモン
ド薄膜を形成し、このダイヤモンド薄膜をゲート絶縁膜
等の絶縁膜として利用することも可能である。
【0101】ところで、上述したようなソース領域にS
iCを用いた高性能pチャネルFETの製造に当たって
は、Si層やSiGe層上にSiC層を成長した後、ド
レイン電極下のSiC層のみをエッチングする工程も考
えられる。しかしながら、SiCは化学的に非常に安定
で、エッチングするためには、スパッターやRIEなど
のようなダメージが大きな方法しかない。また、SiC
より安定なマスクが存在しないので、厚いレジストマス
クやメタルマスクを用いなければならないという問題点
があった。
【0102】本発明の表面処理方法を用いることによっ
て、こうした問題点を解決することができ、しかも、真
空チャンバーから取り出すことなく、選択エッチングや
選択成長が可能となった。
【0103】(実施例3)図10に、本発明の表面処理
方法を適用して形成される構造の他の例を表わす断面図
を示す。本実施例においては、Si基板51上にSiG
e層52を成長したものを用いた。この上に、前述の実
施例1と同様の手法によりSiO2パターン(図示せ
ず)を形成し、SiO2を除去した部分にSiCマスク
53をCVD法により成長する。次に、水素分子を含む
混合ガスをプラズマ発生装置に供給し、原子状水素をエ
ッチングガスとして含む混合プラズマを発生した。この
プラズマで、SiC53でマスクされていないSiO2
とSiGeとを高速エッチングし、基板のSiを露出さ
せた。なお、本実施例のように原子状水素を含むプラズ
マを用いてエッチングする場合には、SiCマスクの厚
さを数10nm程度に厚くすることが望ましい。
【0104】次に、基板温度を1200℃に設定して、
ジシランとメチレンとを供給して、図10(a)に示す
ようにSi基板51およびSiCマスク53の両方の上
にSiC層54を再成長した。
【0105】さらに、図10(b)に示すような構造を
作製することもできる。この場合には、上述の工程にお
いて、SiGeをエッチングした後、600℃でジシラ
ンを供給して、SiCマスク53以外の部分にSi層5
5を成長する。その後、基板温度を1200℃に設定し
て、シランとエチレンとを供給すると、図10(b)の
ようにSiGe層53とSi層55とをSiC層54で
覆ったような構造が実現できた。
【0106】(実施例4)以上の実施例においては、S
iCマスクを作製する際に、まず、SiO2パターンを
作製し、SiO2が存在しない表面にSiCマスクを成
長したが、マスクの作製方法はこれに限定されるもので
はない。
【0107】本実施例では、電子ビーム描画でSiCマ
スクを作製した例を説明する。
【0108】まず、Si基板を炭化水素ガス雰囲気中に
おき、電子ビームで表面に微細パターンを描画する。電
子ビームが照射された部分は、局所的に加熱されてSi
が炭化し、SiCが形成される。なお、電子ビームの強
度によって、SiCの結晶型が異なる場合がある。高出
力の場合には、六方晶、例えば4Hや6HのSiCが形
成されやすい。また、低出力では、SiC合金層が形成
される場合がある。いずれの場合でも、形成されたSi
Cはエッチングマスクとして利用することができる。
【0109】次に、炭化水素を排気した後、上述したよ
うな手法により原子状水素で表面処理を行なう。基板の
一部に不定形炭化水素等のよごれが残っている場合があ
るが、こうした炭素は原子状水素と反応して除去され
る。これは次のように説明される。汚れとなる炭素は、
多くの場合sp2型電子状態の炭素である。詳細は省略
するが、原子状水素で切断されない結合は、sp3型す
なわち、ダイヤモンドやSiCのように4配位の電子状
態の炭素が持つ結合であって、sp2型、すなわち、3
配位炭素の結合は、原子状水素で切断されることが、理
論計算から明らかになっている。その結果、sp2型の
電子状態をもつ不定形炭素は、原子状水素を用いた本発
明の表面処理方法により除去される。
【0110】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、S
i基板またはSiGe基板上の所望の部分に、所望の縦
構造を実現するための表面処理方法が提供される。また
本発明によれば、Si基板またはSiGe基板の所望の
領域に所望の縦構造を有する半導体装置の製造方法が提
供される。
【0111】本発明を用いることにより、IV−IV族半導
体混晶やIV−IV族化合物半導体混晶を用いた任意の縦お
よび横構造を実現することができ、その工業的価値は絶
大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】反応(I−1)におけるエネルギー変化を表わ
すグラフ図。
【図2】反応(I−2)におけるエネルギー変化を表わ
すグラフ図。
【図3】反応(I−3)におけるエネルギー変化を表わ
すグラフ図。
【図4】本発明にかかる表面処理方法の基本プロセスを
表わす概略図。
【図5】本発明の表面処理方法を適用した基板に半導体
薄膜を再成長して得られる構造を示した図。
【図6】本発明の表面処理方法を適用した高性能FET
の製造工程の一例を表わす断面図。
【図7】本発明の表面処理方法を適用した高性能FET
の製造工程の一例を表わす断面図。
【図8】SiCとSiとのヘテロ接合のバンド構造を表
わす図。
【図9】本発明の表面処理方法を適用して作製されたF
ETの他の例の構成を表わす断面図。
【図10】本発明の表面処理方法を適用して形成される
構造の他の例を表わす断面図。
【符号の説明】
11…Si基板 12…C原子層 13…H 14…SiH4 21…Si基板 22…Cマスク層 23…Si再成長層 24…SiC層 31…シリコン基板 32…SiO2マスク 33…高濃度p型SiC層 34…ボロンドープp型Si単結晶層 35…ソース電極 36…ゲート電極 37…ドレイン電極 41…Si基板 42…p型SiGeC層 43…p型SiC層 44…n-Si層 45…アンドープSi0.7Ge0.3層 46…p型Si層 47…二次正孔ガス 48…ソース電極 49…ゲート電極 50…ドレイン電極 51…Si基板 52…SiGe層 53…SiCマスク 54…SiC層 55…Si層
フロントページの続き Fターム(参考) 5F004 DA24 DB00 DB01 DB03 EA03 5F045 AB02 AB05 AB07 AC01 AC19 AD08 AD09 AD10 DA52 DB02 HA03 5F102 GB01 GC01 GD01 GJ02 GJ03 GQ01 GR01 HC15 HC21

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 SiまたはSi1-xGex(0<x<1)
    からなる基板上に、ダイヤモンド層、SiC層、Si
    1-yy(0<y<1)層、Si1-xGexC(0<x<
    1)層、およびSi1-x-yGexy(0<x+y<1、
    x≠0、y≠0)層からなる群から選択される少なくと
    も1種を含むマスクを形成する工程と、 前記マスクが形成された前記基板に、原子状水素を含有
    するエッチングガスを照射して、前記基板の露出部を除
    去する工程を具備する表面処理方法。
  2. 【請求項2】 前記露出部が除去された基板および前記
    マスクの少なくとも一方の上に、Si、CおよびGeか
    ら選択される少なくとも1種を主成分とする結晶膜を再
    成長する工程をさらに具備する請求項1に記載の表面処
    理方法。
  3. 【請求項3】 SiまたはSi1-xGex(0<x<1)
    からなる基板上の一部の領域に、ダイヤモンド層、Si
    C層、Si1-yy(0<y<1)層、Si1- xGex
    (0<x<1)層、およびSi1-x-yGexy(0<x
    +y<1、x≠0、y≠0)層からなる群から選択され
    る少なくとも1種を含むマスクを形成してソース領域と
    なる第1の領域を得る工程と、 前記マスクが形成された前記基板に、原子状水素を含有
    するエッチングガスを照射して、前記基板の露出部を除
    去する工程と、 前記露出部が除去された基板上に、Si、CおよびGe
    から選択される少なくとも1種を主成分とする結晶膜を
    再成長して、チャネルおよびドレイン領域となる第2の
    領域を得る工程と、 前記第1の領域上にソース電極を形成する工程と、 前記第2の領域上にゲート電極およびドレイン電極を形
    成する工程とを具備する半導体装置の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006351649A (ja) * 2005-06-14 2006-12-28 Showa Denko Kk 炭化珪素層製造方法、窒化ガリウム系半導体素子およびシリコン基板

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