JP2002092817A - 薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法、並びに磁性層パターンの形成方法 - Google Patents

薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法、並びに磁性層パターンの形成方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁極幅を高精度に極微小化することが可能な
薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法、並びに細長い磁性
層パターンを高精度に形成することが可能な磁性層パタ
ーンの形成方法を提供する。 【解決手段】 大きい幅(>W2)を有すると共に、後
端部の幅方向に延びる端縁が直線状をなすように前駆磁
性層を形成したのち、この前駆磁性層上に形成した上部
磁性層12C(第1の磁極先端部12C(1) )をマスク
として、RIEにより前駆磁性層を選択的にエッチング
する。このような手法を用いることにより、極微小な一
定幅(例えば0.1μm)を有すると共に、後端面12
AMの幅方向に延びる端縁が直線状をすように第2の磁
極先端部12Aを形成することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、少なくとも書き込
み用の誘導型磁気変換素子を有する薄膜磁気ヘッドおよ
びその製造方法、並びに各種分野における磁性層パター
ンの形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ハードディスク装置の面記録密度
の向上に伴って、薄膜磁気ヘッドの性能向上が求められ
ている。薄膜磁気ヘッドとしては、書き込み用の誘導型
磁気変換素子を有する記録ヘッドと読み出し用の磁気抵
抗(以下、MR(Magneto Resistive )と記す。)素子
を有する再生ヘッドとを積層した構造の複合型薄膜磁気
ヘッドが広く用いられている。
【0003】記録ヘッドの性能のうち、記録密度を高め
るには、磁気記録媒体におけるトラック密度を上げる必
要がある。このためには、記録ギャップ(write gap)を
挟んでその上下に形成された下部磁極(ボトムポール)
および上部磁極(トップポール)のエアベアリング面で
の幅を数ミクロンからサブミクロンオーダーまで狭くし
た狭トラック構造の記録ヘッドを実現する必要があり、
これを達成するために半導体加工技術が利用されてい
る。
【0004】ここで、図39〜図44を参照して、従来
の薄膜磁気ヘッドの製造方法の一例として、複合型薄膜
磁気ヘッドの製造方法について説明する。
【0005】この製造方法では、まず、図39に示した
ように、例えばアルティック(Al 2 3 ・TiC)よ
りなる基板101上に、例えば酸化アルミニウム(Al
2 3 ;以下、単に「アルミナ」という。)よりなる絶
縁層102を、約5.0〜10.0μm程度の厚みで堆
積する。次に、絶縁層102上に、再生ヘッド用の下部
シールド層103を形成する。次に、下部シールド層1
03上に、例えばアルミナ層を100〜200nmの厚
みでスパッタ堆積し、シールドギャップ膜104を形成
する。次に、シールドギャップ膜104上に、高精度の
フォトリソグラフィ処理により所望のパターンとなるよ
うに、再生用のMR素子を構成するためのMR膜105
を数十nmの厚みで形成する。次に、MR膜105の両
側に、このMR膜105と電気的に接続する引き出し電
極層としてのリード層(図示せず)を形成したのち、こ
のリード層、シールドギャップ膜104およびMR膜1
05上に、シールドギャップ膜106を形成し、シール
ドギャップ膜104,106内にMR膜105を埋設す
る。次に、シールドギャップ膜106上に、再生ヘッド
および記録ヘッドの双方に用いる磁性材料、例えばニッ
ケル鉄合金(NiFe;以下、単に「パーマロイ(商品
名)」という。)よりなる上部シールド兼下部磁極(以
下、単に「下部磁極」という。)107を形成する。
【0006】次に、図40に示したように、下部磁極1
07上に、絶縁材料、例えばアルミナよりなる記録ギャ
ップ層108を形成する。次に、記録ギャップ層108
上に、高精度のフォトリソグラフィ処理により、フォト
レジスト膜109を所定のパターンとなるように形成す
る。次に、フォトレジスト膜109上に、電解めっき法
により、例えば銅(Cu)よりなる誘導型の記録ヘッド
用の薄膜コイル110を形成する。次に、フォトレジス
ト膜109および薄膜コイル110を覆うように、高精
度のフォトリソグラフィによりフォトレジストを所定の
パターンとなるように形成したのち、このフォトレジス
トに対して例えば250°Cの温度で加熱処理を施す。
この加熱処理により、薄膜コイル110の各巻線間を絶
縁させるためのフォトレジスト膜111が形成される。
【0007】次に、図41に示したように、磁路形成の
ために、薄膜コイル110よりも後方(図41における
右側)における記録ギャップ層108の一部を部分的に
エッチングして開口部108Aを形成し、下部磁極10
7の一部を露出させる。次に、下部磁極107の露出
面、フォトレジスト膜111および記録ギャップ層10
8を覆うように、電解めっき法により、記録ヘッド用の
磁性材料、例えばパーマロイよりなる上部ヨーク兼上部
磁極(以下、単に「上部磁極」という。)112を形成
する。この上部磁極112は、例えば、後述する図44
に示したような平面形状を有するものであり、ヨーク部
112Aおよびポールチップ部112Bを含んでいる。
上部磁極112は、開口部108Aにおいて下部磁極1
07と接触し、磁気的に連結されている。次に、上部磁
極112のポールチップ部112Bをマスクとして、そ
の周辺領域における記録ギャップ層108および下部磁
極107のそれぞれの一部をイオンミリングによって選
択的に約0.5μm程度エッチングして除去する(図4
3参照)。次に、上部磁極112を覆うように、例えば
アルミナよりなるオーバーコート層113を形成する。
最後に、機械加工や研磨工程により、記録ヘッドおよび
再生ヘッドのトラック面、すなわちエアベアリング面1
20を形成して、薄膜磁気ヘッドが完成する。
【0008】図42〜図44は、完成した状態の薄膜磁
気ヘッドの構造を表すものである。ここで、図42はエ
アベアリング面120に垂直な方向における薄膜磁気ヘ
ッドの断面を示し、図43はエアベアリング面120に
平行な方向における磁極部分500の断面を拡大して示
し、図44は薄膜磁気ヘッドの平面構造を示す。図41
は、図44におけるXXXXI−XXXXI線に沿った矢視断面に
相当する。なお、図42〜図44では、オーバーコート
層113等の図示を省略している。図44では、薄膜コ
イル110およびフォトレジスト膜111のそれぞれの
最外端のみを図示している。
【0009】図42および図44において、「TH」は
スロートハイト(Throat Height )を表し、「MRH」
はMRハイトを表している。ここで、「スロートハイト
(TH)」とは、記録ヘッドの性能を決定する要因のう
ちの一つであり、薄膜コイル110を他の導電部分と電
気的に分離するための絶縁層(フォトレジスト膜11
1)の最もエアベアリング面120に近い側の端縁の位
置、すなわちスロートハイトゼロ位置(TH0位置)か
らエアベアリング面120の位置までの長さである。記
録ヘッドの性能向上のためには、スロートハイト(T
H)の最適化が望まれている。このスロートハイト(T
H)は、エアベアリング面120を形成する際の研磨量
によって制御される。一方、「MRハイト(MRH)」
とは、MR膜105の最もエアベアリング面120から
遠い側の端縁の位置、すなわちMRハイトゼロ位置(M
RH0位置)からエアベアリング面120の位置までの
長さである。このMRハイト(MRH)もまた、エアベ
アリング面120を形成する際の研磨量によって制御さ
れる。
【0010】薄膜磁気ヘッドの性能を決定する要因とし
ては、スロートハイト(TH)やMRハイト(MRH)
等の他に、図42に示したエイペックスアングル(Apex
Angle:θ)がある。このエイペックスアングルθは、
フォトレジスト膜111のエアベアリング面120に近
い側の斜面の平均斜度である。
【0011】図43に示したように、記録ギャップ層1
08および下部磁極107のそれぞれの一部が上部磁極
112のポールチップ部112Bに対して自己整合的に
エッチングされた構造は、トリム(Trim)構造と呼ばれ
る。このトリム構造によれば、狭トラックの書き込み時
に発生する磁束の広がりによる実効トラック幅の増加を
防止することができる。「P2W」は、トリム構造を有
する部分(以下、単に「磁極部分500」という。)の
幅、すなわち磁極幅(または「トラック幅」)を表して
いる。「P2L」は、磁極部分500の一部を構成する
ポールチップ部112Bの厚み、すなわち磁極長を表し
ている。なお、MR膜105の両側には、このMR膜1
05と電気的に接続する引き出し電極層としてのリード
層121が設けられている。ただし、図39〜図42で
は、リード層121の図示を省略している。
【0012】図44に示したように、上部磁極112
は、その大部分を占めるヨーク部112Aと、磁極幅P
2Wとしてほぼ一定の幅を有するポールチップ部112
Bとを有している。ヨーク部112Aとポールチップ部
112Bとの連結部分において、ヨーク部112Aの外
縁は、エアベアリング面120と平行な面に対して角度
αをなしている。また、上記連結部分において、ポール
チップ部112Bの外縁は、エアベアリング面120と
平行な面に対して角度βをなしている。図44では、例
えば、αが約45度であり、βが約90度である場合を
示している。上記したように、ポールチップ部112B
は、トリム構造を有する磁極部分500を形成する際に
マスクとして機能する部分である。図42および図44
から判るように、ポールチップ部112Bは平坦な記録
ギャップ層108の上に延在し、ヨーク部112Aはフ
ォトレジスト膜111で覆われて丘陵状に盛り上がった
コイル部分(以下、「エイペックス部」という。)の上
に延在している。
【0013】なお、上部磁極の詳細な構造的特徴に関し
ては、例えば、特開平8−249614号公報に記載が
ある。この公報では、TH0位置よりも後側(エアベア
リング面120から離れる側)の部分の幅が徐々に大き
くなるような構造を有する上部磁極について記載してい
る。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】磁極部分500の磁極
幅P2Wは、磁気記録媒体上の記録トラック幅を規定す
るものである。記録密度を高めるためには、磁極部分5
00を高い精度で形成し、磁極幅P2Wを微小化する必
要がある。磁極幅P2Wが大きすぎる場合には、磁気記
録媒体上の所定の記録トラック領域以外の隣接領域にも
書き込みしてしまう現象、すなわちサイドイレーズ現象
が発生してしまい、記録密度を向上させることができな
いからである。特に、近年、高面密度記録を可能とする
ため、すなわち、狭トラック構造の記録ヘッドを形成す
るために、約0.3μm以下に至る磁極幅P2Wの極微
小化が要求されており、磁極幅P2Wの極微小化に係る
製造技術の確立は急務である。
【0015】上部磁極を形成する方法としては、例え
ば、特開平7−262519号公報に示されるように、
フレームめっき法が用いられる。フレームめっき法を用
いて上部磁極112を形成する場合には、まず、エイペ
ックス部を含む下地上に、全体に、例えばスパッタリン
グにより、例えばパーマロイよりなる薄い電極膜を形成
する。次に、電極膜上にフォトレジストを塗布してフォ
トレジスト膜を形成したのち、このフォトレジストも膜
に対してフォトリソグラフィ処理を施してパターニング
することにより、めっき処理を行うためのフレームパタ
ーン(外枠)を形成する。このフレームパターンは、上
部磁極112の平面形状に対応する開口パターンを有す
るものである。次に、このフレームパターンをマスクと
して用いると共に先工程において形成した電極膜をシー
ド層として用いて、電解めっき法により、フレームパタ
ーンの開口パターン中に、例えばパーマロイよりなる上
部磁極112を形成する。
【0016】ところで、エイペックス部と他の部分とで
は、例えば7〜10μm以上の高低差がある。このエイ
ペックス部上に、フォトレジストを3〜4μmの厚みで
塗布する。エイペックス部上のフォトレジストの膜厚が
最低3μm以上必要であるとすると、流動性のあるフォ
トレジストは低い方に集まることから、エイペックス部
の下方では、例えば8〜10μm以上の厚みのフォトレ
ジスト膜が形成される。
【0017】極微小な磁極幅P2Wを実現するために
は、この磁極幅P2Wに対応して極微小な幅(例えば
1.0μm以下)を有する開口パターンを備えたフレー
ムパターンを形成する必要がある。すなわち、8〜10
μm以上の厚みのあるフォトレジスト膜により、1.0
μm以下の極微小な幅を有する開口パターンを形成しな
ければならない。ところが、このような膜厚の厚いフォ
トレジスト膜を用いて、極微小な幅を有する開口パター
ンを備えたフレームパターンを形成することは、製造工
程上極めて困難であった。
【0018】しかも、エイペックス部等により構成され
た凹凸構造を有する領域に上部磁極112を形成する場
合には、以下のような理由により、上部磁極112の形
成精度は大きく低下してしまうという問題があった。す
なわち、上部磁極112を形成するためのフレームパタ
ーンの形成工程において、凹凸構造を有する領域に形成
されたフォトレジスト膜に対して露光処理を施した場合
には、下地(電極膜)の斜面部等から斜め方向または横
方向へ反射する反射光が生じる。この反射光は、フォト
レジスト膜中の露光領域を拡大または縮小させることと
なる。これにより、特に、フォトレジスト膜のうち、上
部磁極112のポールチップ部112Bに対応して極微
小な幅を有する開口パターンの幅が幅方向に拡大してし
まう。
【0019】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
ので、その目的は、磁極幅を高精度に極微小化すること
が可能な薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法、並びに細
長い磁性層パターンを高精度に形成することが可能な磁
性層パターンの形成方法を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の観点に係
る薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する記録媒体対向
面に近い側の一部に、ギャップ層を介して対向する2つ
の磁極を有する、互いに磁気的に連結された第1の磁性
層および第2の磁性層と、第1の磁性層と第2の磁性層
との間に配設された薄膜コイルと、薄膜コイルを第1の
磁性層および第2の磁性層から絶縁する絶縁層とを有す
る薄膜磁気ヘッドであって、第1の磁性層は、ギャップ
層より遠い側から順に配設された第1の磁性層部分およ
び第2の磁性層部分の積層体を含み、第2の磁性層部分
は、記録媒体の記録トラック幅を規定するための一定幅
を保ちつつ記録媒体対向面からこの面より離れる方向に
ギャップ層に隣接ながら延在して第1の位置で終端し、
第1の磁性層部分は、第2の磁性層部分の一定幅と同一
の幅を保ちつつ記録媒体対向面またはその近傍位置から
この面より離れる方向に延在して第1の位置と同一また
は近傍の第2の位置で終端する一定幅部分と、一定幅部
分の幅よりも大きな幅を有すると共に、第2の位置から
記録媒体対向面より離れる方向に延在して第3の位置で
終端する拡幅部分とを含むようにしたものである。
【0021】本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッド
では、ギャップ層より遠い側から順に第1の磁性層部分
および第2の磁性層部分が配設され、これらの2つの磁
性層部分を含んで第1の磁性層が構成される。第1の磁
性層部分の一定幅部分および第2の磁性層部分は互いに
同一の一定幅を有し、双方の部位によって記録媒体の記
録トラック幅が規定される。
【0022】本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッド
では、第1の磁性層部分の一定幅部分における記録媒体
対向面に近い側の端縁の位置が、記録媒体対向面の位置
と一致するようにしてもよいし、記録媒体対向面から離
れる方向にずれるようにしてもよい。
【0023】また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気
ヘッドでは、第1の磁性層部分の一定幅部分における記
録媒体対向面に近い側の端部の厚みが記録媒体対向面か
ら遠い側の端部の厚みよりも小さくなるようにするのが
好適である。
【0024】また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気
ヘッドでは、第1の磁性層部分と第2の磁性層部分との
境界面が平面をなすようにしてもよい。
【0025】また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気
ヘッドでは、絶縁層における記録媒体対向面に近い側の
位置が第1の位置と一致するようにしてもよい。このよ
うな場合には、第2の磁性層部分と絶縁層との境界面が
平面をなすようにし、その境界面が第2の磁性層部分の
延在方向に対して垂直になるようにしてもよい。
【0026】また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気
ヘッドでは、薄膜コイルが、その一部をなす第1の薄膜
コイルを含み、第1の薄膜コイルが、その最も多くの部
分が第2の磁性層部分の厚みに対応する空間領域に含ま
れるように配設されるようにしてもよい。このような場
合には、第2の磁性層部分の厚みが第1の薄膜コイルの
厚みよりも大きくなるようにするのが好適である。
【0027】また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気
ヘッドでは、第2の磁性層のうちの第1の磁性層に近い
側に窪み領域が設けられ、第1の薄膜コイルが窪み領域
に配設されるようにしてもよい。
【0028】また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気
ヘッドでは、薄膜コイルが、さらに、その一部をなすと
共に第1の薄膜コイルと電気的に接続された第2の薄膜
コイルを含む場合には、第2の薄膜コイルが、第1の磁
性層部分の一定幅部分の厚みに対応する空間領域に含ま
れるように配設されるようにしてもよい。
【0029】また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気
ヘッドでは、第3の位置が第1の薄膜コイルよりも記録
媒体対向面に近い側に位置し、第1の磁性層が、さら
に、第1の磁性層部分と部分的にオーバーラップして磁
気的に連結された第3の磁性層部分を含むようにしても
よい。このような場合には、第1の磁性層部分と第3の
磁性層部分とがオーバーラップするオーバーラップ領域
に、ギャップ層に隣接するようにして絶縁層の一部が配
設されるようにするのが好適である。
【0030】また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気
ヘッドでは、第2の磁性層部分を構成する磁性材料が、
第1の磁性層部分を構成する磁性材料の飽和磁束密度以
上の飽和磁束密度を有するものであるようにしてもよ
い。このような場合には、第1の磁性層部分が、鉄、ニ
ッケルおよびコバルトを含む磁性材料よりなるものであ
り、第2の磁性層部分が、ニッケル鉄合金またはコバル
ト鉄合金のいずれかを含む磁性材料よりなるものである
ようにするのが好適である。
【0031】また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気
ヘッドでは、第1の磁性層部分および第2の磁性層部分
のうちの少なくとも一方が、窒化鉄、ニッケル鉄合金ま
たはアモルファス合金のいずれか1つを含む磁性材料よ
りなるものであるようにしてもよい。アモルファス合金
としては、コバルト鉄合金、ジルコニウムコバルト鉄酸
化物合金またはジルコニウム鉄窒化物合金のいずれかで
あるようにするのが好適である。
【0032】また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気
ヘッドでは、第1の磁性層部分および第2の磁性層部分
のうちの少なくとも一方が、鉄、ニッケルおよびコバル
トを含む磁性材料よりなるものであるようにしてもよ
い。
【0033】本発明の第2の観点に係る薄膜磁気ヘッド
は、記録媒体に対向する記録媒体対向面に近い側の一部
に、ギャップ層を介して対向する2つの磁極を有する、
互いに磁気的に連結された第1の磁性層および第2の磁
性層と、第1の磁性層と第2の磁性層との間に配設され
た薄膜コイルと、薄膜コイルを第1の磁性層および第2
の磁性層から絶縁する絶縁層とを有する薄膜磁気ヘッド
であって、第1の磁性層が、記録媒体対向面からこの面
より離れる方向にギャップ層に隣接して延在すると共に
記録媒体の記録トラック幅を規定するトラック幅規定部
分を含み、このトラック幅規定部分が複数の磁性層から
なる積層構造を有するようにしたものである。
【0034】本発明の第2の観点に係る薄膜磁気ヘッド
では、複数の磁性層からなる積層構造を有するようにト
ラック幅規定部分が構成され、このトラック幅規定部分
により記録媒体の記録トラック幅が規定される。
【0035】本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッド
の製造方法は、記録媒体に対向する記録媒体対向面に近
い側の一部に、ギャップ層を介して対向する2つの磁極
を有する、互いに磁気的に連結された第1の磁性層およ
び第2の磁性層と、第1の磁性層と第2の磁性層との間
に配設された薄膜コイルと、薄膜コイルを第1の磁性層
および第2の磁性層から絶縁する絶縁層とを有すると共
に、第1の磁性層がギャップ層より遠い側から順に配設
された第1の磁性層部分および第2の磁性層部分を含
み、第2の磁性層部分が記録媒体の記録トラック幅を規
定するための一定幅を保ちつつ記録媒体対向面からこの
面より離れる方向にギャップ層に隣接して延在して第1
の位置で終端し、第1の磁性層部分が、第2の磁性層部
分の一定幅と同一の幅を保ちつつ記録媒体対向面または
その近傍位置からこの面より離れる方向に延在して第1
の位置と同一または近傍の第2の位置で終端する一定幅
部分と、一定幅部分の幅よりも大きな幅を有すると共に
第2の位置から記録媒体対向面より離れる方向に延在し
て第3の位置で終端する拡幅部分とを含む薄膜磁気ヘッ
ドの製造方法であって、第1の磁性層を形成する工程
が、ギャップ層上における記録媒体対向面が形成される
べき位置の近傍から第1の位置に至る領域に、第2の磁
性層部分の一定幅よりも大きい幅と、第1の位置におい
て第2の磁性層部分の幅方向に延びる直線状の端縁とを
有するように第2の磁性層部分の前準備層としての前駆
磁性層を選択的に形成する第1の工程と、少なくとも前
駆磁性層およびその周辺領域を覆うように絶縁層の前準
備層としての前駆絶縁層を形成する第2の工程と、少な
くとも前駆磁性層が露出するまで前駆絶縁層を研磨して
平坦化することにより絶縁層を形成する第3の工程と、
研磨後の平坦面上に、一定幅部分における第2の位置が
第1の位置よりも記録媒体対向面から遠い側に位置する
ように第1の磁性層部分を選択的に形成する第4の工程
と、第1の磁性層部分の一定幅部分をマスクとして用い
て前駆磁性層を選択的にエッチングすることにより第2
の磁性層部分を選択的に形成する第5の工程とを含むよ
うにしたものである。
【0036】本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッド
の製造方法では、まず、第1の工程において、ギャップ
層上における記録媒体対向面が形成されるべき位置の近
傍から第1の位置に至る領域に、第2の磁性層部分の一
定幅よりも大きい幅と、第1の位置において第2の磁性
層部分の幅方向に延びる直線状の端縁とを有するように
第2の磁性層部分の前準備層としての前駆磁性層が選択
的に形成される。続いて、第2の工程において、少なく
とも前駆磁性層およびその周辺領域を覆うように絶縁層
の前準備層としての前駆絶縁層が形成される。続いて、
第3の工程において、少なくとも前駆磁性層が露出する
まで前駆絶縁層が研磨されて平坦化されることにより絶
縁層が形成される。続いて、第4の工程において、研磨
後の平坦面上に、一定幅部分における第2の位置が第1
の位置よりも記録媒体対向面から遠い側に位置するよう
に第1の磁性層部分が選択的に形成される。最後に、第
5の工程において、第1の磁性層部分の一定幅部分をマ
スクとして用いて前駆磁性層が選択的にエッチングさ
れ、第2の磁性層部分が選択的に形成されることによ
り、第1の磁性層が形成される。
【0037】本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッド
の製造方法では、第5の工程において、第2の磁性層部
分の形成を反応性イオンエッチングを用いて行うように
するのが好適である。
【0038】また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気
ヘッドの製造方法では、第1の工程において、前駆磁性
層の形成を反応性イオンエッチングを用いて行うように
するのが好適である。
【0039】また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気
ヘッドの製造方法では、第5の工程において、ギャップ
層および第2の磁性層のうち、第1の磁性層部分の一定
幅部分の形成領域以外の領域をその厚み方向における所
定の位置まで除去するようにしてもよい。
【0040】また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気
ヘッドの製造方法では、ギャップ層上にスパッタリング
を用いて磁性材層を形成したのち、この磁性材層を選択
的にエッチングすることにより前駆磁性層を形成すると
共に、第1の磁性層部分をめっき膜の成長処理を用いて
形成するようにするのが好適である。
【0041】本発明の第2の観点に係る薄膜磁気ヘッド
の製造方法は、記録媒体に対向する記録媒体対向面に近
い側の一部に、ギャップ層を介して対向する2つの磁極
を有する、互いに磁気的に連結された第1の磁性層およ
び第2の磁性層と、第1の磁性層と第2の磁性層との間
に配設された薄膜コイルと、薄膜コイルを第1の磁性層
および第2の磁性層から絶縁する絶縁層とを有する薄膜
磁気ヘッドの製造方法であって、第1の磁性層を形成す
る工程は、ギャップ層より遠い側から順に配設された第
1の磁性層部分および第2の磁性層部分を含む積層体を
形成する工程を含み、第2の磁性層部分の形成工程にお
いて、記録媒体の記録トラック幅を規定するための一定
幅を保ちつつ記録媒体対向面からこの面より離れる方向
にギャップ層に隣接ながら延在して第1の位置で終端す
るように第2の磁性層部分を形成し、第1の磁性層部分
の形成工程において、第2の磁性層部分の一定幅と同一
の幅を保ちつつ記録媒体対向面またはその近傍位置から
この面より離れる方向に延在して第1の位置と同一また
は近傍の第2の位置で終端する一定幅部分と、一定幅部
分の幅よりも大きな幅を有すると共に第2の位置から記
録媒体対向面より離れる方向に延在して第3の位置で終
端する拡幅部分とを含むように第1の磁性層部分を形成
するようにしたものである。
【0042】本発明の第2の観点に係る薄膜磁気ヘッド
の製造方法では、ギャップ層より遠い側から順に第1の
磁性層部分および第2の磁性層部分を含む積層体が形成
されることにより、第1の磁性層部分が形成される。こ
のとき、第2の磁性層部分の形成工程において、記録媒
体の記録トラック幅を規定するための一定幅を保ちつつ
記録媒体対向面からこの面より離れる方向にギャップ層
に隣接ながら延在して第1の位置で終端するように第2
の磁性層部分が形成される。また、第1の磁性層部分の
形成工程において、第2の磁性層部分の一定幅と同一の
幅を保ちつつ記録媒体対向面またはその近傍位置からこ
の面より離れる方向に延在して第1の位置と同一または
近傍の第2の位置で終端するように第1の磁性層部分の
一部をなす一定幅部分が形成されると共に、一定幅部分
の幅よりも大きな幅を有すると共に第2の位置から記録
媒体対向面より離れる方向に延在して第3の位置で終端
するように第1の磁性層部分の一部をなす拡幅部分が形
成されることにより、一定幅部分および拡幅部分を含む
ように第1の磁性層部分が形成される。
【0043】本発明の第2の観点に係る薄膜磁気ヘッド
の製造方法では、薄膜コイルが、その一部をなす第1の
薄膜コイルを含む場合において、第1の薄膜コイルを、
その最も多くの部分が第2の磁性層部分の厚みに対応す
る空間領域に含まれるように形成するようにしてもよ
い。このような場合には、第2の磁性層のうちの第1の
磁性層に近い側の一部をその厚み方向における所定の位
置までエッチングすることにより窪み領域を形成し、こ
の窪み領域に第1の薄膜コイルを形成するようにしても
よい。
【0044】また、本発明の第2の観点に係る薄膜磁気
ヘッドの製造方法では、薄膜コイルが、さらに、その一
部をなすと共に第1の薄膜コイルと電気的に接続された
第2の薄膜コイルを含む場合において、第2の薄膜コイ
ルを、その大部分が第1の磁性層部分に対応する空間領
域に含まれるように形成するようにしてもよい。
【0045】本発明の磁性層パターンの形成方法は、所
定の下地層上に一定幅を有する細長い磁性層パターンを
形成するための磁性層パターンの形成方法であって、下
地層上に、磁性層パターンの一定幅よりも大きい幅と、
磁性層パターンの幅方向に延びる直線状の端縁とを有す
るように磁性層パターンの前準備層としての前駆磁性層
を選択的に形成する工程と、少なくとも前駆磁性層およ
びその周辺領域を覆うように非磁性層を形成する工程
と、少なくとも前駆磁性層が露出するまで非磁性層を研
磨して平坦化する工程と、研磨後の平坦面上に、前駆磁
性層における直線状の端縁と交差すると共に非磁性層の
表面領域から前駆磁性層の表面領域へ延在するように、
磁性層パターンの一定幅と同一の幅を有するエッチング
マスクを選択的に形成する工程と、エッチングマスクを
用いて前駆磁性層を選択的にエッチングすることにより
磁性層パターンを選択的に形成する工程とを含むように
したものである。
【0046】本発明の磁性層パターンの形成方法では、
まず、下地層上に、磁性層パターンの一定幅よりも大き
い幅と、磁性層パターンの幅方向に延びる直線状の端縁
とを有するように磁性層パターンの前準備層としての前
駆磁性層が選択的に形成される。続いて、少なくとも前
駆磁性層およびその周辺領域を覆うように非磁性層が形
成される。続いて、少なくとも前駆磁性層が露出するま
で非磁性層が研磨されて平坦化される。続いて、研磨後
の平坦面上に、前駆磁性層における直線状の端縁と交差
すると共に非磁性層の表面領域から前駆磁性層の表面領
域へ延在するように、磁性層パターンの一定幅と同一の
幅を有するエッチングマスクが選択的に形成される。最
後に、エッチングマスクを用いて前駆磁性層が選択的に
エッチングされることにより磁性層パターンが選択的に
形成される。
【0047】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て、図面を参照して詳細に説明する。
【0048】〔第1の実施の形態〕まず、図1〜図18
を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気
ヘッドの製造方法としての複合型薄膜磁気ヘッドの製造
方法の一例について説明する。
【0049】図1〜図10において、(A)はエアベア
リング面に垂直な断面を示し、(B)は磁極部分のエア
ベアリング面に平行な断面を示している。図11〜図1
7は主要な製造工程に対応する斜視構造を示している。
ここで、図11は図1に示した状態に対応し、図12は
図2に示した状態に対応し、図13は図5に示した状態
に対応する。また、図14は図6に示した状態に対応
し、図15は図7に示した状態に対応し、図16は図8
に示した状態に対応し、図17は図9に示した状態に対
応する。ただし、図17では、図9におけるオーバーコ
ート層17等の図示を省略している。図18は、図2に
示した状態に対応する平面構造を示している。
【0050】以下の説明では、図1〜図18の各図中に
おけるX軸方向を「幅方向」、Y軸方向を「長さ方
向」、Z軸方向を「厚み(深さ)方向または高さ方向」
として表記すると共に、Y軸方向のうちのエアベアリン
グ面70に近い側(または後工程においてエアベアリン
グ面70となる側)を「前側(または前方)」、その反
対側を「後側(または後方)」と表記するものとする。
【0051】<薄膜磁気ヘッドの製造方法>本実施の形
態に係る製造方法では、まず、図1に示したように、例
えばアルティック(Al2 3 ・TiC)よりなる基板
1上に、例えばアルミナよりなる絶縁層2を、約3.0
〜5.0μmの厚みで堆積する。次に、絶縁層2上に、
例えばフレームめっき法を用いて、例えばパーマロイ
(Ni:80重量%,Fe:20重量%)を約2.0〜
3.0μmの厚みで選択的に形成して、再生ヘッド用の
下部シールド層3を形成する。フレームめっき法に関す
る詳細については、後述する。下部シールド層3を形成
する際には、例えば、後述する図21に示したような平
面形状を有するようにする。なお、下部シールド層3を
形成するためのパーマロイとしては、上記したNi:8
0重量%,Fe:20重量%の組成を有するものの他、
例えば、Ni:45重量%,Fe:55重量%の組成を
有するものを用いるようにしてもよい。次に、全体を覆
うように、例えばアルミナ層を約4.0〜5.0μmの
厚みで形成したのち、例えばCMP(化学機械研磨)法
により、下部シールド層3が露出するまでアルミナ層の
表面を研磨して全体を平坦化する。これにより、下部シ
ールド層3の周辺領域を埋め込むように絶縁膜4が形成
される。
【0052】次に、図1に示したように、下部シールド
層3上に、例えばスパッタリングにより、例えばアルミ
ナよりなるシールドギャップ膜5を約100〜200n
mの厚みで形成する。次に、シールドギャップ膜4上
に、高精度のフォトリソグラフィ処理を用いて、再生ヘ
ッド部の要部であるMR素子を構成するためのMR膜6
を所望の形状となるように形成する。次に、MR膜6の
両側に、このMR膜6と電気的に接続する引き出し電極
層としてのリード層(図示せず)を形成する。次に、こ
のリード層、シールドギャップ膜5およびMR膜6上に
シールドギャップ膜7を形成して、MR膜6をシールド
ギャップ膜5,7内に埋設する。シールドギャップ膜7
の形成材料および形成方法等は、シールドギャップ膜5
の場合とほぼ同様である。
【0053】次に、図1に示したように、シールドギャ
ップ膜7上に、上部シールド層8を約1.0〜1.5μ
mの厚みで選択的に形成する。上部シールド層8の形成
材料および形成方法等は、下部シールド層3の場合とほ
ぼ同様である。次に、上部シールド層8上に、例えばス
パッタリングにより、例えばアルミナよりなる絶縁膜9
を約0.15〜0.2μmの厚みで形成する。
【0054】次に、図1に示したように、絶縁膜9上
に、高飽和磁束密度を有する磁性材料、例えば窒化鉄
(FeN)よりなる下部磁極10を選択的に形成する。
下部磁極10を形成する際には、例えば、後述する図2
1に示したような平面形状を有するようにする。
【0055】ここで、下部磁極10の形成は、以下のよ
うな手順により行う。すなわち、まず、絶縁膜9上に、
例えばスパッタリングにより、例えば窒化鉄層を約2.
0〜2.5μmの厚みで形成する。続いて、所定の形状
および材質(例えば、クロム等の金属材料)を有するマ
スクを用いて、例えばリアクティブイオンエッチング
(Reactive Ion Etching;以下、単に「RIE」とい
う)により窒化鉄層をエッチングしてパターニングする
ことにより、下部磁極10を選択的に形成する。下部磁
極10の表面は、その全域にわたってほぼ平坦となる。
一般に、RIEを用いた場合のエッチング速度は、イオ
ンミリングを用いた場合のエッチング速度よりも速い。
このため、エッチング方法としてRIEを用いることに
より、イオンミリングを用いる場合よりも、下部磁極1
0を短時間で形成することができる。RIEによるエッ
チング処理を用いて下部磁極10を形成する場合には、
特に、エッチング時に使用するエッチングガスの種類や
エッチング時の加工温度などのエッチング条件を適正化
することにより、下部磁極10の形成に要する時間をよ
り短縮させることが可能となる。このようなエッチング
条件の適正化に関する詳細については、後述する。な
お、下部磁極10の形成材料としては、窒化鉄の他、例
えば、窒化鉄と同様に高飽和磁束密度を有する磁性材料
として、コバルト鉄合金(FeCo)、ジルコニウムコ
バルト鉄酸化物合金(FeCoZrO)またはジルコニ
ウム鉄窒化物合金(FeZrN)などのアモルファス合
金を用いるようにしてもよい。窒化鉄層をパターニング
するためのエッチング方法としては、必ずしもRIEを
用いなければならないものではなく、イオンミリングを
用いるようにしてもよい。ここで、下部磁極10が、本
発明の第1,第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドまたはそ
の製造方法における「第2の磁性層」の一具体例に対応
する。
【0056】次に、図1に示したように、下部磁極10
上に、例えばスパッタリングにより、非磁性材料、例え
ばアルミナよりなる記録ギャップ層11を約0.1〜
0.15μmの厚みで平坦に形成する。記録ギャップ層
11を形成する際には、後工程において磁路接続部12
Bが形成されることとなる領域を覆わないようにする。
この領域は、下部磁極10と後工程において形成される
こととなる上部磁極12とを接続させるための開口部1
1Kとなる。なお、記録ギャップ層11の形成材料とし
ては、上記したアルミナの他、アルミナと同様の非磁性
金属材料、例えばニッケル銅合金(NiCu)などを用
いるようにしてもよい。ここで、記録ギャップ層11
が、本発明の第1,第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドま
たはその製造方法における「ギャップ層」の一具体例に
対応すると共に、本発明の磁性層パターンの形成方法に
おける「下地層」の一具体例に対応する。
【0057】次に、図1に示したように、全体を覆うよ
うに、例えばスパッタリングにより、高飽和磁束密度を
有する磁性材料、例えば窒化鉄よりなる基礎磁性層11
2を約0.8〜2.0μmの厚みで形成する。基礎磁性
層112を構成する磁性材料としては、例えば、後工程
において形成される上部磁性層12Cを構成する磁性材
料(例えば鉄ニッケルコバルト合金)の飽和磁束密度よ
りも大きい飽和磁束密度を有するものを用いるようにす
る。なお、基礎磁性層112の形成材料としては、窒化
鉄の他、例えば、窒化鉄と同様に高飽和磁束密度を有す
るコバルト鉄合金(FeCo)、ジルコニウムコバルト
鉄酸化物合金(FeCoZrO)またはジルコニウム鉄
窒化物合金(FeZrN)などのアモルファス合金など
を用いるようにしてもよい。ここで、基礎磁性層112
が、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方
法における「磁性材層」の一具体例に対応する。
【0058】次に、図1、図11および図18に示した
ように、基礎磁性層112上の所定の位置に、無機材
料、例えばアルミナよりなるマスク80A,80Bを選
択的に形成する。マスク80Aを形成する際には、その
形成領域が後工程において形成される上部ボールチップ
12Aの形成領域を含むようにする。具体的には、例え
ば、マスク80Aの後端の位置がMR膜6の後端の位置
よりも約0.5μmよりも小さい範囲内において後退す
るようにすると共に、マスク80Aの幅W1が後述する
第2の磁極先端部12Aの幅W2(図7および図15参
照)よりも十分に大きくなるようにする。また、マスク
80Bを形成する際には、その形成領域が後工程におい
て形成される磁路接続部12Bの形成領域に対応するよ
うにする(図11では図示せず)。なお、マスク80A
の後端の位置を必ずしもMR膜6の後端の位置よりも後
退させなければならないものではなく、両者の位置を互
いに一致させるようにしてもよい。マスク80A,80
Bの形成材料としては、上記したアルミナの他、窒化ア
ルミニウムなどを用いるようにしてもよい。
【0059】ここで、マスク80A,80Bの形成は、
例えば、以下のような手順により行う。すなわち、ま
ず、例えばスパッタリングにより、基礎磁性層112の
表面を覆うようにアルミナ層を形成する。続いて、この
アルミナ層上に、例えばフレームめっき法により、例え
ばパーマロイ(Ni:80重量%,Fe:20重量%)
よりなるマスクを形成する。このとき形成するマスクの
平面形状は、最終的に形成するマスク80A,80Bの
平面形状とほぼ同様となるようにする。続いて、パーマ
ロイよりなるマスクを用いて、例えばRIEによりアル
ミナ層をエッチングすることによりマスク80A,80
Bを形成する。
【0060】次に、マスク80A,80Bを用いて、例
えばRIEにより、基礎磁性層112をエッチングして
パターニングする。このエッチング処理により、基礎磁
性層112のうち、マスク80A,80Bの形成領域以
外の領域が選択的に除去され、図2および図12に示し
たように、記録ギャップ層11上における前方の領域に
前駆磁性層112Aが選択的に形成されると共に、開口
部11Kに上部磁極12の一部を構成する磁路接続部1
2Bが選択的に形成される。前駆磁性層112Aを形成
する際には、その後端部の幅方向に延びる端縁112A
Tが直線状をなすようにする。特に、基礎磁性層112
をエッチングするための手法としてRIEを用いること
により、前駆磁性層112Aの後端面112AMは平面
をなすと共に、記録ギャップ層11の平坦な表面11M
に対して垂直になる。前駆磁性層112Aは、後工程に
おいてエッチングしてパターニングされることにより第
2の磁極先端部12Aとなる前準備層である。以下の説
明では、このように後工程で所定の形状となるようにパ
ターニングされることとなる前準備層を「前駆層」と称
呼し、同様に表記するものとする。基礎磁性層112を
パターニングするためのエッチング方法としてRIEを
用いることにより、前駆磁性層112Aおよび磁路接続
部12Bを高精度かつ短時間で形成することができる。
なお、前駆磁性層112Aを形成するためのエッチング
処理によりマスク80A,80Bのそれぞれ自体もエッ
チングされ、それらの厚みは減少することとなる。エッ
チング処理が完了した時点で、マスク80A,80Bが
残存するようにしてもよいし(図2および図12参
照)、残存しないようにしてもよい。
【0061】次に、図3に示したように、全体を覆うよ
うに、例えばアルミナよりなる絶縁膜13を約0.2〜
0.5μmの厚みで形成する。
【0062】次に、図3に示したように、前駆磁性層1
12Aの形成領域よりも後方の領域(磁路接続部12B
の配設領域を除く)における平坦な絶縁膜13上に、例
えば電解めっき法により、例えば銅(Cu)よりなる誘
導型の記録ヘッド用の薄膜コイル14を約0.8〜1.
5μmの厚みで選択的に形成する。薄膜コイル14を形
成する際には、例えば、後述する図21に示したような
巻線構造を有するようにする。なお、図3では、薄膜コ
イル14の一部分のみを図示している。薄膜コイル14
を形成する際には、同時に、その内側の終端部となるコ
イル接続部14Sを絶縁膜13上に薄膜コイル14と一
体に形成する。このコイル接続部14Sは、薄膜コイル
14と後工程において形成されるコイル接続配線12C
H(図5参照)とを電気的に接続させるためのものであ
る。ここで、薄膜コイル14が、本発明の第1,第2の
観点に係る薄膜磁気ヘッドまたはその製造方法における
「薄膜コイル」または「第1の薄膜コイル」の一具体例
に対応する。
【0063】次に、薄膜コイル14(コイル接続部14
Sを含む)の各巻線間およびその周辺に、加熱時に流動
性を示す材料、例えばフォトレジストなどの有機絶縁材
料を高精度のフォトリソグラフィ処理により所定のパタ
ーンとなるように形成する。次に、このフォトレジスト
膜に対して、例えば200°C〜250°Cの範囲内に
おける温度で加熱処理を施す。この加熱処理により、図
3に示したように、フォトレジストが流動して薄膜コイ
ル14等の各巻線間を隙間なく埋めつくし、薄膜コイル
14等の各巻線間を絶縁化するための絶縁膜15が形成
される。絶縁膜15を形成する際には、絶縁膜15が薄
膜コイル14およびコイル接続部14Sの双方の上面を
覆わないようにしてもよいし(図3参照)、覆うように
してもよい。
【0064】次に、図3に示したように、全体を覆うよ
うに、例えばスパッタリングにより、例えば前駆絶縁層
16Pを約2.0〜3.0μmの厚みで形成して、前駆
磁性層112A、磁路接続部12Bおよび薄膜コイル1
4等によって構成された凹凸構造領域を埋設する。ここ
で、前駆絶縁層16Pが、本発明の磁性層パターンの形
成方法における「非磁性層」の一具体例に対応する。
【0065】次に、例えばCMP法により、前駆絶縁層
16Pの表面全体を研磨して平坦化する。この研磨処理
により、図4に示したように、薄膜コイル14等を埋設
する絶縁膜16が形成される。このときの研磨処理は、
少なくとも前駆磁性層112Aおよび磁路接続部12B
が露出するまで行う。薄膜コイル14を埋設する絶縁材
(絶縁膜13,15,16)と前駆磁性層112Aとの
境界面は平面をなし、かつ平坦な記録ギャップ層11の
表面に対して垂直になる。上記の絶縁材(絶縁膜13)
の前端の位置は、記録ヘッドの性能を決定する因子のう
ちの1つであるスロートハイト(TH)を決定するため
の基準の位置、すなわちスロートハイトゼロ位置(TH
0位置)となる。ここで、絶縁膜13,15,16が、
本発明の第1,第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドまたは
その製造方法における「絶縁層」の一具体例に対応す
る。
【0066】次に、図5に示したように、例えばRIE
またはイオンミリングにより、コイル接続部14Sの上
方を覆っている絶縁膜16を部分的にエッチングして、
コイル接続部14Sと後工程において形成されるコイル
接続配線12chとを接続させるための開口部16Kを
形成する。
【0067】次に、図5および図13に示したように、
前駆磁性層112A上から磁路接続部12B上にかけて
の平坦領域に、例えばフレームめっき法により、鉄(F
e)、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)を含ん
で高飽和磁束密度を有する磁性材料、例えば鉄ニッケル
コバルト合金(CoNiFe;Co:45重量%,N
i:30重量%,Fe:25重量%)よりなる上部磁性
層12Cを約2.0〜3.0μmの厚みで選択的に形成
する。上部磁性層12Cを形成する際には、同時に、開
口部16Kにおけるコイル接続部14Sの露出面上から
図示しない外部回路にかけての領域にコイル接続配線1
2CHを形成する。この上部磁性層12Cは、上部磁極
12の一部を構成するものである。なお、上部磁性層1
2C等の形成材料としては、上記した3つの金属元素と
共に、クロム(Cr)、ボロン(B)、リン(P)およ
び銅のうちの少なくとも1種を含むものを用いるように
してもよい。
【0068】上部磁性層12Cを形成する際には、例え
ば、後述する図21に示したように、後工程においてエ
アベアリング面70となる側(図5における左側)から
順に、第1の磁極先端部12C(1) 、中間部12C(2)
、後端部12C(3) およびヨーク部12C(4) を含む
ようにする。第1の磁極先端部12C(1) は、記録媒体
の記録トラック幅を規定する一定幅(約0.1〜0.2
μm)を有するものである。上部磁性層12Cを形成す
る際には、例えば、第1の磁極先端部12C(1)と中間
部12C(2) との連結位置P2(第2の位置)が前駆磁
性層112Aの後端の位置P1(第1の位置)よりも後
退するようにする。また、例えば、後端部12C(3) の
後端の位置P3(第3の位置)が磁路接続部12Bの後
端の位置と一致するようにする。上部磁性層12Cは、
その後方部分において、開口部11Kを通じて磁路接続
部12Bを介して下部磁極10と磁気的に連結される。
なお、上部磁性層12Cの構造的特徴については後述す
る。
【0069】ここで、第1の磁極先端部12C(1) が、
本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドまたは第1,
第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法における
「一定幅部分」の一具体例に対応すると共に、本発明の
磁性層パターンの形成方法における「エッチングマス
ク」の一具体例に対応する。また、中間部12C(2) 、
後端部12C(3) およびヨーク部12C(4) が、本発明
の第1,第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドまたはその製
造方法における「拡幅部分」の一具体例に対応する。さ
らに、上部磁性層12Cが、本発明の第1,第2の観点
に係る薄膜磁気ヘッドまたはその製造方法における「第
1の磁性層部分」の一具体例に対応する。
【0070】フレームめっき法によって上部磁性層12
Cを形成する際には、まず、例えば、スパッタリングに
より、電解めっき法におけるシード層となる電極膜(図
示せず)を約70μmの厚みに形成する。この電極膜の
形成材料としては、例えば、高飽和磁束密度を有する鉄
ニッケルコバルト合金(Co:45重量%,Ni:30
重量%,Fe:25重量%)などを用いるようにする。
次に、この電極膜上に、例えばポジティブ型のフォトレ
ジスト(以下、単に「フォトレジスト」という。)を塗
布して、フォトレジスト膜(図示せず)を形成する。次
に、所定の形状パターンを有するマスク(図示せず)を
用いて、フォトレジスト膜の所定の領域を選択的に露光
する。次に、フォトレジスト膜の露光領域を現像するこ
とにより、フレームめっき法においてめっき処理を行う
際に用いるフレームパターン(外枠)(図示せず)を形
成する。このフレームパターンは、上記の露光領域に対
応した開口部を備えるものである。次に、フレームパタ
ーンをマスクとして用いると共に先工程において形成し
た電極膜をシード層として用いて、電解めっき法によ
り、鉄ニッケルコバルト合金(Co:45重量%,N
i:30重量%,Fe:25重量%)よりなる上部磁性
層12Cを形成する。最後に、フレームパターンを除去
する。なお、コイル接続配線12CHもまた、上記した
上部磁性層12Cの場合と同様の形成材料および形成方
法を用いて形成する。
【0071】次に、図6および図14に示したように、
上部磁性層12Cの一部およびコイル接続配線12CH
等を覆うようにフォトレジスト膜90を選択的に形成す
る。フォトレジスト膜90を形成する際には、例えば、
その大部分が上部磁性層12cにおける第1の磁極先端
部12C(1) と中間部12C(2) との連結位置P2より
も後方側の部分を覆うようにすると共に、その一部(部
分90B)が上記の連結位置P2よりも前方側に突出し
て第1の磁極先端部12C(1) に部分的に乗り上げるよ
うにする。
【0072】次に、上部磁性層12Cおよびフォトレジ
スト膜90の双方をマスクとして、例えばRIEによ
り、前駆磁性層112Aおよびその周辺領域を選択的に
エッチングする。このエッチング処理により、上部磁性
層12Cにおける先端部12C位置と中間部12C(2)
との連結位置P2よりも前方側の領域における前駆磁性
層112Aおよび絶縁膜16等が選択的に除去され、図
7および図15に示したように、上部磁極12の一部を
構成する第2の磁極先端部12Aが形成される。前駆磁
性層112をパターニングするためのエッチング方法と
してRIEを用いることにより、第2の磁極先端部12
Aを高精度かつ短時間で形成することができる。この第
2の磁極先端部12Aは、上部磁性層12Cの第1の磁
極先端部12C(1) と同様に、記録媒体上の記録トラッ
ク幅を規定する一定幅を有するものである。第2の磁極
先端部12Aを形成するためのエッチング処理により、
マスク自体、すなわち上部磁性層12Cおよびフォトレ
ジスト膜90のそれぞれ自体もエッチングされ、その膜
厚は減少する。これにより、第1の磁極先端部12C
(1) における前側の部分の厚みは後側の部分の厚みより
も小さくなり、第1の磁極先端部12C(1) に段差が形
成される。このとき、フォトレジスト膜90(部分90
B)の前方部も徐々にエッチングされ、部分90Bの前
端の位置が除々に後退することにより、第1の磁極先端
部12C(1) のうちの部分90Bの近傍部分に対するエ
ッチング量が連続的に変化し、第1の磁極先端部12C
(1) に形成された段差部における段差面12CMは下地
(絶縁膜16)の平坦面16Mに対して斜面をなすこと
となる。
【0073】ここで、第2の磁極先端部12Aが、本発
明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドまたはその製造方
法における「第2の磁性層部分」の一具体例に対応する
と共に、本発明の磁性層パターンの形成方法における
「磁性層パターン」の一具体例に対応する。また、第2
の磁極先端部12A,磁路接続部12B,上部磁性層1
2Cによって構成される上部磁極12が、本発明の第
1,第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドまたはその製造方
法における「第1の磁性層」の一具体例に対応する。さ
らに、上部磁性層12Cの第1の磁極先端部12C(1)
および第2の磁極先端部12Aが、本発明の第2の観点
に係る薄膜磁気ヘッドにおける「トラック幅規定部分」
の一具体例に対応する。
【0074】第2の磁極先端部12Aを形成するための
RIEによるエッチング処理を行う際には、特に、例え
ば、塩素(Cl2 )、三塩化ボロン(BCl2 )、塩化
水素(HCl)、四フッ化炭素(CF4 )、六フッ化硫
黄(SF6 )および三臭化ボロン(BBr3 )のうちの
少なくとも1種に水素(H2 )、酸素(O2 )、窒素
(N2 )およびアルゴン(Ar)などを添加したものを
含むエッチングガスを用いると共に、加工温度を50°
C〜300°Cの範囲内となるようにするのが好適であ
る。このようなガス雰囲気中および温度下においてRI
Eによるエッチング処理を行うことにより、特に、窒化
鉄よりなる前駆磁性層112Aに対するエッチング処理
の化学反応が促進されるため、第2の磁極先端部12A
の形成に要する時間をより短縮することができる。
【0075】さらに、上部磁性層12Cおよびフォトレ
ジスト膜90をマスクとして、例えばRIEにより、記
録ギャップ層11および下部磁極10のそれぞれの一部
を約0.3〜0.4μm程度エッチングする。このエッ
チング処理により、上部磁性層12Cにおける第1の磁
極先端部12C(1) と中間部12C(2) との連結位置P
2よりも前方の領域において、記録ギャップ層11およ
び下部磁極10のうち、第1の磁極先端部12C(1) の
配設領域以外の部分が選択的に除去され、掘り下げられ
る。このエッチング処理により、図8および図16に示
したように、トリム構造を有する磁極部分100が形成
される。この磁極部分100は、上部磁性層12Cにお
ける第1の磁極先端部12C(1) と、記録ギャップ層1
1の一部と、第2の磁極先端部12Aと、下部磁極10
のうちの先端部12A等に対応する部分とによって構成
されている。磁極部分100を構成する上記の各部位
は、互いにほぼ同様の幅を有している。エッチング方法
としてRIEを用いることにより、磁極部分100を高
精度かつ短時間で形成することができる。
【0076】磁極部分100を形成するためのRIEに
よるエッチング処理を行う際には、特に、例えば、塩素
と三塩化ボロンとの混合ガスをエッチングガスとして用
いると共に、加工温度を100°C〜200°Cの範囲
内となるようにするのが好適である。このようなガス雰
囲気中および温度下においてRIEによるエッチング処
理を行うことにより、磁極部分100の形成に要する時
間をより短縮することができる。
【0077】次に、図9に示したように、全体を覆うよ
うに、絶縁材料、例えばアルミナなどの無機絶縁材料よ
りなるオーバーコート層17を約20〜40μmの厚み
で形成する。このときの上部磁性層12C周辺の構造
は、図17に示したようになる。
【0078】最後に、図10に示したように、機械加工
や研磨工程により記録ヘッドおよび再生ヘッドのエアベ
アリング面70を形成して、薄膜磁気ヘッドが完成す
る。上部磁性層12Cの第1の磁極先端部12C(1) お
よび第2の磁極先端部12Aは、エアベアリング面70
に露出する。
【0079】<薄膜磁気ヘッドの製造方法における作用
および効果>次に、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド
の製造方法における作用および効果について説明する。
【0080】本実施の形態では、後端部の幅方向に延び
る端縁112ATが直線状をなすように形成した前駆磁
性層112A上に、第1の磁極先端部12C(1) と中間
部12C(2) との連結位置P2(第2の位置)が前駆磁
性層112Aの後端の位置P1(第1の位置)よりも後
退するように上部磁性層12Cを形成したのち、第1の
磁極先端部12C(1) をマスクとして用いて前駆磁性層
112Aをエッチングしてパターニングすることにより
第2の磁極先端部12Aを形成するようにしている。こ
のような場合には、以下のような理由により、第2の磁
極先端部12Aを高精度に形成することができる。
【0081】ここで、図19は、本実施の形態に係る薄
膜磁気ヘッドの製造方法における作用を説明するための
ものである。図19において、(A)は本実施の形態に
係る薄膜磁気ヘッドの製造方法により形成された第2の
磁極先端部12Aの平面構造を拡大して表し、(B)は
比較例としての薄膜磁気ヘッドの製造方法(例えばフレ
ームめっき法)により形成された第2の磁極先端部21
2Aの平面構造を拡大して表している。薄膜磁気ヘッド
を製造する場合には、特に、記録ヘッドの性能を決定す
る要因のうちの1つであるスロートハイト(TH)を制
御するために、このスロートハイトを規定するための基
準の位置、すなわちスロートハイトゼロ位置(TH0位
置)を正確かつ一義的に決定する必要がある。しかしな
がら、図20(B)に示した比較例の場合には、フレー
ムめっき法を用いて極微小幅(例えば0.1μm)を有
するポールチップ部212Aを形成しようとすると、そ
の後端部の幅方向に延びる端縁212ATが丸みを帯
び、第2の磁極先端部212Aの幅が後方において小さ
くなってしまう。なぜなら、第2の磁極先端部212A
の平面形状に対応しためっきフレームとしてのフォトレ
ジストパターンを形成する工程において、フォトレジス
ト膜のうちの極微小幅を有する領域を選択的に露光しよ
うとしても、その領域の端部近傍(特にコーナー部分)
が十分に露光されず、フォトレジスト膜の露光領域が縮
小するためにフォトレジストパターンを精度よく形成す
ることができないからである。このような場合には、第
2の磁極先端部212Aの後端の位置において、薄膜コ
イル14を埋設する絶縁材(絶縁膜13,15,16)
の前端の位置(スロートハイトゼロ位置)を一義的に決
定することができなくなる。
【0082】これに対して、本実施の形態では、後端部
の幅方向に延びる端縁112ATが直線状をなすように
形成された前駆磁性層112A(図2および図12参
照)の一部として第2の磁極先端部12Aが形成される
ため、図19(A)に示したように、端縁112ATの
一部がそのまま残存して第2の磁極先端部12Aの端縁
12ATとなる。これにより、後微小な一定幅(例えば
0.1μm)を有すると共に端縁12ATが直線状をな
すように第2の磁極先端部12Aを形成することができ
る。このような場合には、比較例の場合とは異なり、第
2の磁極先端部12Aの後端の位置において、絶縁材
(絶縁膜13,15,16)の前端の位置(スロートハ
イトゼロ位置)を一義的に決定することが可能となる。
【0083】なお、上記した第2の磁極先端部12Aの
形成手法および効果は、薄膜磁気ヘッドの構成部品とし
ての第2の磁極先端部12Aを形成する場合にのみ適用
されるものではなく、薄膜磁気ヘッド以外の各種分野に
おいて極微小な幅を有する磁性層パターンを形成する場
合にも適用可能である。
【0084】また、本実施の形態では、特に、基礎磁性
層112をエッチングするための手法としてRIEを用
いるようにしているので、形成される前駆磁性層112
Aのエッチング端面は平面をなす。このとき、特に、前
駆磁性層112Aのエッチング端面が記録ギャップ層1
1の平坦な表面に対して垂直になるようにすることによ
り、前駆磁性層112Aの一部として形成される第2の
磁極先端部12Aの後端面12AM(図7および図15
参照)もまた、平面をなすと共に記録ギャップ層11の
平坦な表面に対して垂直をなすこととなる。このような
場合には、上記したスロートハイトゼロ位置の決定がよ
り容易になる。
【0085】さらに、エッチング手法としてRIEを用
いることにより、イオンミリングを用いる場合よりも、
前駆磁性層112Aを高精度かつ短時間で形成すること
ができる。エッチング手法としてRIEを用いた場合の
形成精度の向上および形成時間の短縮に関する効果は、
第2の磁極先端部12Aおよび下部磁極10等を形成す
る場合においても同様である。特に、RIEによるエッ
チング処理を適正なエッチング条件下において行うこと
により、第2の磁極先端部12A等の形成に要する時間
をより短縮することができる。
【0086】また、本実施の形態では、図5に示したよ
うに、前駆磁性層112Aをエッチングするためのマス
クとしての上部磁性層12Cを形成する場合に、第1の
磁極先端部12C(1) と中間部12C(2) との連結位置
P2(第2の位置)が前駆磁性層112Aの後端の位置
(第1の位置P1)よりも後退するようにしているた
め、以下のような理由により、この観点においても第2
の磁極先端部12Aの形成精度の向上に寄与する。ここ
で、図20は、上部磁性層12Cの形成位置に関する作
用を説明するためのものである。図20において、
(A)は、本実施の形態の場合と同様に第1の磁極先端
部12C(1) と中間部12C(2) との連結位置P2を第
2の磁極先端部12Aの後端の位置よりも後退させた場
合の第2の磁極先端部12Aおよび上部磁性層12Cの
平面構造を表し、(B)は、第1の磁極先端部12C
(1) と中間部12C(2) との連結位置P2を第2の磁極
先端部12Aの後端の位置と一致させた場合の第2の磁
極先端部12Aおよび上部磁性層12Cの平面構造を表
している。図20(B)に示した場合には、上部磁性層
12Cの形成過程において、上記した第2の磁極先端部
12Aの形成時におけるフォトレジストパターンの形成
精度の低下と同様の要因により、第1の磁極先端部12
C(1) と中間部12C(2) との連結部におけるコーナー
部12CNが丸みを帯びると、この上部磁性層12Cを
マスクとしたエッチング処理により形成される第2の磁
極先端部12Aの幅は後方において広がってしまう。こ
れに対して、図20(A)に示した場合には、コーナー
部12CNが丸みを帯びたとしても、第1の磁極先端部
12C(1) のうちの一定幅を有する部分をマスクとして
用いてエッチング処理を行うことにより、一定幅を有す
る第2の磁極先端部12Aを形成することができる。
【0087】また、本実施の形態では、記録ギャップ層
11の平坦な表面に上部磁性層12Cを形成しているの
で、凹凸構造を有する下地上に上部磁極112を形成し
ていた従来の場合とは異なり、上部磁性層12Cを形成
するためのフォトレジストパターンを高精度に形成する
ことができる。このため、フレームめっき法を用いた場
合においても上部磁性層12Cを高精度に形成すること
ができる。
【0088】また、本実施の形態では、上部磁性層12
Cの形成材料として、鉄、ニッケルおよびコバルトを含
む磁性材料、例えば鉄ニッケルコバルト合金(CoNi
Fe)を用いるようにしている。一般に、この鉄ニッケ
ルコバルト合金は、パーマロイやニッケル鉄等の磁性材
料よりも硬い磁性材料であるため、鉄ニッケルコバルト
合金に対するエッチング速度は、パーマロイや窒化鉄等
に対するエッチング速度よりも遅くなる。このため、前
駆磁性層112をパターニングするためのエッチング処
理時において、前駆磁性層112に対するエッチング量
よりも上部磁性層12C(第1の磁極先端部12C(1)
)に対するエッチング量を小さくし、上部磁性層12
C(第1の磁極先端部12C(1) )の膜減りを抑制する
ことができる。ただし、上部磁性層12Cの形成時に
は、エッチング処理時における「膜減り」を見こして、
上部磁性層12Cの厚みを必要かつ十分に確保しておく
必要がある。上部ヨーク(第1の磁極先端部12C(1)
)に対するエッチング量(膜減り量)は、エッチング
ガスの種類や加工温度などのエッチング条件を変更する
ことにより調整可能である。
【0089】なお、上部磁性層12Cの形成材料として
の鉄ニッケルコバルト合金は、形成されることとなる上
部磁性層12Cの膜厚が適度に薄い場合(例えば3.0
μm以下)にのみ使用するのが好ましい。なぜなら、例
えば、鉄ニッケルコバルト合金を形成材料として用い
て、3.0μmよりも大きい厚みを有する上部磁性層1
2Cを形成しようとすると、内部応力の蓄積に起因して
鉄ニッケルコバルト合金が部分的に割れたり、剥がれて
しまい、上部磁性層12Cを正常に形成することが困難
だからである。本実施の形態では、約2.0〜3.0μ
mの厚みを有するように上部磁性層12Cを形成してい
るので、鉄ニッケルコバルト合金などの硬い磁性材料を
用いた場合においても、上記の「割れ」または「剥が
れ」等を回避し、上部磁性層12Cの形成を安定化させ
ることができる。
【0090】また、本実施の形態では、磁極部分100
を形成するためのエッチング方法としてRIEを用いる
ようにしたので、上記した第2の磁極先端部12Aの形
成の場合と同様に、磁極部分100を高精度かつ短時間
で形成することができる。この場合においても、エッチ
ング条件を適正化することにより、磁極部分100の形
成に要する時間をより短縮することができる。
【0091】また、本実施の形態では、薄膜コイル14
(コイル接続部14Sを含む)の各巻線間を埋め込む絶
縁膜15の形成材料として、加熱時に流動性を示すフォ
トレジストなどの有機絶縁材料を用いるようにしたの
で、加熱時に流動性を示さないアルミナなどの無機絶縁
材料を用いる場合とは異なり、薄膜コイル14等の各巻
線間を隙間なく埋めつくすことができ、確実に絶縁する
ことができる。
【0092】また、本実施の形態では、絶縁膜16の形
成材料としてアルミナなどの無機絶縁材料を用いるよう
にしたので、フォトレジストなどの軟絶縁材料を用いる
場合とは異なり、CMP研磨盤の研磨面が目詰まりを起
こすことを防止できると共に、研磨後の表面をより平滑
に形成することができる。
【0093】<薄膜磁気ヘッドの構造>次に、図10
(A)、図18および図21を参照して、本実施の形態
に係る薄膜磁気ヘッドの平面構造について説明する。
【0094】図21は、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘ
ッドの製造方法により製造された薄膜磁気ヘッドの平面
構造の概略を表すものである。なお、図21では、絶縁
膜13,15,16およびオーバーコート層17等の図
示を省略している。また、薄膜コイル14については、
その最外周の一部のみを図示している。図10(A)
は、図21におけるXA−XA線に沿った矢視断面に相当す
る。なお、図21中のX,Y,Z軸方向に関するそれぞ
れの表記については、図1〜図18の場合と同様とす
る。
【0095】第2の磁極先端部12Aの後端の位置、す
なわち薄膜コイル14を埋設する絶縁材(絶縁膜13,
15,16)の前端の位置は、スロートハイト(TH)
を決定する際の基準となる位置、すなわちスロートハイ
トゼロ位置(TH0位置)である。スロートハイト(T
H)は、絶縁膜13の前端の位置(TH0位置)からエ
アベアリング面70までの長さとして規定される。図2
1における「MRH0位置」は、MR膜6の後端の位
置、すなわちMRハイトゼロ位置を表している。MRハ
イト(MRH)は、MRハイトゼロ位置からエアベアリ
ング面70までの長さである。スロートハイトゼロ位置
(TH0位置)とMRハイトゼロ位置(MRH0位置)
とは、例えば、ほぼ一致している。
【0096】上部磁極12は、上記したように、例え
ば、それぞれ別個に形成された第2の磁極先端部12
A、磁路接続部12Bおよび上部磁性層12Cによって
構成されている。すなわち、上部磁極12は、これらの
各部位の集合体である。
【0097】第2の磁極先端部12Aは、例えば、矩形
状の平面形状を有し、全域にわたって一定幅を有するも
のである。
【0098】上部磁性層12Cは、上記したように、エ
アベアリング面70から順に、第1の磁極先端部12C
(1) 、中間部12C(2) 、後端部12C(3) およびヨー
ク部12C(4) を含んでいる。これらのうち、第1の磁
極先端部12C(1) 、中間部12C(2) および後端部1
2C(3) は、例えば矩形状の平面形状を有している。第
1の磁極先端部12C(1) は、第2の磁極先端部12A
の幅と同様の一定幅を有すると共に、第2の磁極先端部
12Aの長さよりも大きな長さを有している。中間部1
2C(2) は、例えば第1の磁極先端部12C(1) の幅よ
りも大きな幅を有し、後端部12C(3) は、例えば中間
部12C(2) の幅よりも大きな幅を有している。すなわ
ち、第1の磁極先端部12C(1) と中間部12C(2) と
の連結部分には、幅方向の段差が形成されている。ヨー
ク部12C(4) は、薄膜コイル14により発生した磁束
を収容するものであり、後端部12C(3) の幅よりも大
きな幅を有している。ヨーク部12C(4) の幅は、例え
ば、その後方部においてほぼ一定であり、その前方部に
おいてエアベアリング面70に近づくにつれて徐々に狭
まるようになっている。上部磁性層12Cを構成する各
部位の幅方向の中心は互いに一致している。
【0099】第2の磁極先端部12Aおよび第1の磁極
先端部12C(1) は、上記したように、記録媒体上の記
録トラック幅を規定する部分である。すなわち、この記
録トラック幅を規定する部分は2層構造をなしている。
第2の磁極先端部12Aおよび第1の磁極先端部12C
(1) は、例えば、共にエアベアリング面70に露出して
いる。
【0100】第1の磁極先端部12C(1) と中間部12
C(2) との連結部分における段差面12CDの位置は、
例えば、TH0位置の位置よりも後退している。上記の
連結部分において、第1の磁極先端部12C(1) の側縁
面と段差面12CDとが交わるコーナー部における角度
γは、例えば90度である。なお、このコーナー部の角
度γは必ずしもこれに限られるものではなく、例えば9
0度ないし120度の範囲内となるようにするのが好適
である。角度γを上記の範囲内とすることにより、中間
部12C(2) から第1の磁極先端部12C(1) に流入す
る磁束の流れを円滑化することができるからである。
【0101】第2の磁極先端部12Aは、記録ギャップ
層11の平坦な表面上に延在している。上部磁性層12
Cは、第2の磁極先端部12A上から磁路接続部12B
上にかけての平坦な表面上に延在している。この上部磁
性層12Cは、開口部11Kにおいて、磁路接続部12
Bを介して下部磁極10と磁気的に連結されている。す
なわち、上部磁極12(第2の磁極先端部12A,磁路
接続部12B,上部磁性層12C)と下部磁極10とが
接続されることにより、磁束の伝播経路、すなわち磁路
が形成されている。
【0102】薄膜コイル14は、上記したように、渦巻
状の平面形状を有する巻線体である。薄膜コイル14の
うち、例えば、その内側の終端部にはコイル接続部14
Sが形成され、外側の終端部には端子14Xが形成され
ている。双方の部位は、薄膜コイル14と一体をなすも
のである。コイル接続部14S上にはコイル接続配線1
2CHが形成されており、薄膜コイル14とコイル接続
配線12CHとは、コイル接続部14Sを介して電気的
に接続されている。端子14Xおよびコイル接続配線1
2CHの後端部(図示せず)は、共に図示しない外部回
路に接続されており、この外部回路によって薄膜コイル
14を通電させることができるようになっている。図1
0(A)に示したように、薄膜コイル14等は、例え
ば、第2の磁極先端部12Aの厚みに対応する後方領域
に配設されている。
【0103】〈薄膜磁気ヘッドの作用および効果〉次
に、図10(A)、図18および図21を参照して、本
実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構造に関する作用お
よび効果について説明する。
【0104】ここでは、まず、薄膜磁気ヘッドの基本的
動作、すなわち、記録媒体に対するデータの記録動作お
よび記録媒体からのデータの再生動作について簡単に説
明する。
【0105】本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、
情報の記録動作時に図示しない外部回路を通じて薄膜コ
イル14に電流が流れると、これに応じて磁束が発生す
る。このとき発生した磁束は、上部磁性層12C内をヨ
ーク部12C(4) 、後端部12C(3)、中間部12C
(2) 、第1の磁極先端部12C(1) の順に伝播し、第1
の磁極先端部12C(1) のエアベアリング面70側の先
端部分に到達する。このとき、第1の磁極先端部12C
(1) に伝播した磁束の一部は、第1の磁極先端部12C
(1) と磁気的に連結されている第2の磁極先端部12A
にも伝播し、その先端部分まで到達する。第1の磁極先
端部12C(1) および第2の磁極先端部12Aの双方の
先端部分に到達した磁束により、記録ギャップ層11近
傍の外部に記録用の信号磁界が発生する。この信号磁界
により、磁気記録媒体を部分的に磁化して、情報を記録
することができる。優れたオーバーライト特性を確保す
るためには、磁束の伝播過程における磁束の伝播を円滑
にし、特に、第2の磁極先端部12Aの先端部分まで十
分な磁束を到達させる必要がある。
【0106】一方、再生時においては、再生ヘッド部の
MR膜6にセンス電流を流す。MR膜6の抵抗値は、磁
気記録媒体からの再生信号磁界に応じて変化するので、
その抵抗変化をセンス電流の変化によって検出すること
により、磁気記録媒体に記録されている情報を読み出す
ことができる。
【0107】本実施の形態では、記録媒体の記録トラッ
ク幅を規定する一定幅を有する部分を2層構造(第2の
磁極先端部12A,第1の磁極先端部12C(1) )とし
ているので、主要な磁束の伝播経路をなす上部磁性層1
2Cの構造を変更することなく、第2の磁極先端部12
Aの長さのみを変更することによりスロートハイト(T
H)を調整することができる。
【0108】また、本実施の形態では、記録媒体の記録
トラック幅を規定する一定幅を有する部分を2層構造
(第2の磁極先端部12A,第1の磁極先端部12C
(1) )とし、その上層部分である第1の磁極先端部12
C(1) の形成材料として鉄ニッケルコバルト合金を用
い、下層部分である第2の磁極先端部12Aの形成材料
としてニッケル鉄を用いるようにしたので、以下のよう
な理由により、優れたオーバーライト特性を確保するこ
とができる。すなわち、一般に、第1の磁極先端部12
C(1) の形成材料として用いられる鉄ニッケルコバルト
合金は、上記したように、その高い硬度特性によりエッ
チングマスクとして利用することが可能な反面、めっき
処理時におけるその組成制御が困難である。組成制御が
十分でないと、鉄ニッケルコバルト合金中において部分
的に磁束密度の差異が生じ、磁束の伝播特性に偏りが生
じてしまう可能性がある。一方、第2の磁極先端部12
Aの形成材料として用いられるニッケル鉄は、形成手法
としてスパッタリングを用いることにより、その組成を
比較的容易に制御することができる。これらのことか
ら、鉄ニッケルコバルト合金の組成が多少乱れ、第1の
磁極先端部12C(1) 内における磁束の伝播特性にばら
つきが生じたとしても、組成が適正に制御されたニッケ
ル鉄よりなる第2の磁極先端部12Aにおいて円滑な磁
束の伝播が確保され、その先端部分まで十分な磁束が到
達することとなる。このような効果は、特に、第2の磁
極先端部12Aを構成する磁性材料(窒化鉄)として、
上部磁性層12Cを構成する磁性材料(鉄ニッケルコバ
ルト合金)の飽和磁束密度よりも大きい飽和磁束密度を
有するものを用いることにより顕著となる。
【0109】また、本実施の形態では、第2の磁極先端
部12Aおよび上部磁性層12Cの形成材料として、共
に高飽和磁束密度を有する磁性材料(例えば、窒化鉄お
よび鉄ニッケルコバルト合金)を用いるようにしたの
で、記録密度を高めるために磁極幅を極微小化した場合
においても、磁束の飽和現象が抑制され、磁束の伝播が
円滑化される。これにより、第2の磁極先端部12Aお
よび上部ヨーク12Cの第1の磁極先端部12C(1) の
それぞれの先端部まで十分な量の磁束が供給されるた
め、優れたオーバーライト特性を確保することができ
る。
【0110】また、本実施の形態では、上部磁性層12
Cを構成するヨーク部12C(4) ,後端部12C(3) ,
中間部12C(2) ,第1の磁極先端部12C(1) の各部
位の幅がこの順に小さくなるようにしているので、各部
位の磁気ボリューム、すなわち、各部位の内部に収容可
能な磁束の許容量もまた同じ順に小さくなる。このた
め、上部磁性層12Cに流入した磁束は、ヨーク部12
C(4) から第1の磁極先端部12C(1) まで伝播する過
程において、磁気ボリュームの段階的な減少に応じて段
階的に収束され、磁束の伝播過程における磁束の飽和減
少が抑制される。これにより、第1の磁極先端部12C
(1) および第2の磁極先端部12Aには十分な量の磁束
が供給されるため、この点もまた、優れたオーバーライ
ト特性の確保に寄与する。
【0111】さらに、本実施の形態では、上部磁性層1
2Cにおける第1の磁極先端部12C(1) の前方部分の
厚みが後方部分の厚みよりも小さくなり、両者の間に厚
み方向の段差が形成されている。このような場合には、
「厚み」の減少に起因する磁気ボリュームの減少にとも
ない、上記した「幅」の減少に起因して磁気ボリューム
が減少する場合と同様に、第1の磁極先端部12C(1)
内を伝播する磁束が段階的に収束され、磁束の飽和現象
が抑制される。また、特に、上記の段差部における段差
面12CMが斜面をなすようにしたので、この斜面部の
近傍において、第1の磁極先端部12C(1) 内の磁束の
流れを円滑化することができる。
【0112】また、本実施の形態では、第2の磁極先端
部12Aと絶縁層16との境界面が平面をなすようにし
たので、上記の境界面が平坦でない場合とは異なり、薄
膜コイル14を埋設する絶縁材(絶縁膜13,15,1
6)の前端の位置、すなわちTH0位置を一義的に決定
することができる。
【0113】<第1の実施の形態に関する変形例>な
お、本実施の形態では、第1の磁極先端部12C(1) と
中間部12C(2) との連結位置P2(第2の位置)を前
駆磁性層112Aの後端の位置P1(第1の位置)より
も後退させるようにしたが、必ずしもこれに限られるも
のではなく、コーナー部12CN(図20参照)が丸み
を帯びる現象を回避し、上部磁性層12Cの形成精度を
十分に確保することが可能であるならば、位置P2と位
置P1とを互いに一致させるようにしてもよい。
【0114】また、本実施の形態では、基礎磁性層11
2(第2の磁極先端部12A)の形成材料として窒化鉄
またはアモルファス合金(コバルト鉄合金等)を用いる
ようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、
例えば、パーマロイ(例えばNi:45重量%,Fe:
55重量%の組成を有するもの)を用いるようにしても
よいし、鉄、ニッケルおよびコバルトを含む磁性材料
(例えば、鉄ニッケルコバルト合金)を用いるようにし
てもよい。ただし、基礎磁性層112の組成を適正に制
御し、最終的に形成される第2の磁極先端部12Aの内
部における磁束の伝播性を良好に確保しようとするなら
ば、基礎磁性層112の形成材料として窒化鉄やアモル
ファス合金を用いるようにするのが好適である。なお、
基礎磁性層112の形成方法としては、必ずしもスパッ
タリングおよびエッチング処理を用いる必要はなく、例
えば、フレームめっき法を用いるようにしてもよい。
【0115】また、本実施の形態では、基礎磁性層11
2を形成したのち、この基礎磁性層112をエッチング
してパターニングすることにより前駆磁性層112Aを
形成するようにしたが、必ずしもこれに限られるもので
はなく、例えば、エッチング処理を用いずに、前駆磁性
層112Aをフレームめっき法を用いて形成するように
してもよい。もちろん、フレームめっき法を用いる場合
においても、前駆磁性層112Aの後端部の幅方向に延
びる端縁112ATが直線状をなすようにする。
【0116】また、本実施の形態では、上部磁性層12
Cの形成材料として鉄ニッケルコバルト合金を用いるよ
うにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例
えば、パーマロイ(例えばNi:45重量%,Fe:5
5重量%の組成を有するもの)、窒化鉄またはアモルフ
ァス合金(例えば、コバルト鉄合金)のいずれかを用い
るようにしてもよい。ただし、前駆磁性層112Aのパ
ターニング時においてマスクとして機能する上部磁性層
12Cの膜減り量を抑制するならば、上記実施の形態に
おいて説明したように、上部磁性層12Cの形成材料と
して鉄ニッケルコバルト合金を用いるようにするのが好
適である。なお、上部磁性層12Cの形成方法として
は、必ずしもフレームめっき法を用いる必要はなく、例
えば、下部磁極10等を形成した場合と同様にスパッタ
リングおよびエッチング処理を用いるようにしてもよ
い。
【0117】また、本実施の形態では、基礎磁性層11
2(第2の磁極先端部12A)および上部磁性層12C
の形成材料として、共に高飽和磁束密度を有する磁性材
料を用いるようにしている。ここで、上記のそれぞれの
部位を形成するために用いる磁性材料の飽和磁束密度は
自由に設定することが可能である。具体的には、例え
ば、それぞれの部位の形成材料として、互いに等しい飽
和磁束密度を有する2種類の磁性材料を用いるようにし
てもよいし、または互いに異なる飽和磁束密度を有する
2種類の磁性材料を用いるようにしてもよい。いずれの
場合においても、上記実施の形態の場合とほぼ同様の効
果を得ることができる。ただし、互いに異なる飽和磁束
密度を有する磁性材料を用いる場合には、例えば、以下
のような理由により、基礎磁性層112を構成する磁性
材料の飽和磁束密度が、上部磁性層12Cを構成する磁
性材料の飽和磁束密度よりも大きくなるようにするのが
好ましい。すなわち、一般に、薄膜磁気ヘッドの動作
(例えば情報の記録等)は、主に、第2の磁極先端部1
2Aおよび上部磁性層12Cの第1の磁極先端部12C
(1) のうち、記録ギャップ層11に近い第2の磁極先端
部12Aの内部を伝播する磁束の作用により実行される
こととなる。このため、互いに異なる飽和磁束密度を有
する2種類の磁性材料を用いる場合には、記録媒体の記
録トラック幅を規定する一定幅部分(第2の磁極先端部
12A,第1の磁極先端部12C(1) )において、上層
領域としての第1の磁極先端部12C(1) よりも下層領
域としての第2の磁極先端部12Aにおいて飽和磁束密
度が大きくなるように磁束の分布状態(以下、「飽和磁
束密度プロファイル」ともいう。)を構築する必要があ
る。逆に言えば、異なる飽和磁束密度を有する2種類の
磁性材料を選択的に用いて2層構造よりなる一定幅部分
を構成するようにすることにより、この一定幅部分の飽
和磁束密度プロファイルを自由に調整することが可能と
なる。
【0118】また、本実施の形態では、第2の磁極先端
部12A等を形成するためのエッチング処理時における
マスク(フォトレジスト膜)に対するエッチング効果を
利用することにより、上部磁性層12Cの第1の磁極先
端部12C(1) に段差部分を設けるようにしたが、必ず
しもこれに限られるものではなく、段差部分を設けない
ようにしてもよい。このような場合には、例えば、上部
磁性層12C(第1の磁極先端部12C(1) )に対する
エッチング速度が周辺領域に対するエッチング速度より
も極めて遅くなるようにエッチング条件(エッチングガ
ス,エッチング温度等)を調整し、上部磁性層12Cが
エッチングされないようにする。
【0119】また、本実施の形態では、下部磁極10の
形成方法として、スパッタリングによって前駆層(例え
ば窒化鉄層)を形成したのち、その前駆層をエッチング
処理によってパターニングする手法を用いるようにした
が、必ずしもこれに限られるものではなく、フレームめ
っき法を用いるようにしてもよい。このような場合に
は、下部磁極10の形成材料として、例えば、Ni:8
0重量%,Fe:20重量%またはNi:45重量%,
Fe:55重量%などの組成を有するパーマロイを用い
るようにしてもよい。
【0120】また、本実施の形態では、下部シールド層
4および上部シールド層8の形成方法として電解めっき
法を用いるようにしたが、必ずしもこれに限られるもの
ではない。例えば、双方またはいずれか一方の部位の形
成方法として、下部磁極10等を形成する場合と同様の
手法、すなわちスパッタリングおよびエッチング処理を
用いるようにしてもよい。このような場合における上記
の各部位の形成材料としては、上記したパーマロイの
他、窒化鉄やアモルファス合金(例えば、コバルト鉄合
金,ジルコニウムコバルト鉄酸化物合金,ジルコニウム
鉄窒化物)等を用いるようにしてもよい。下部磁極10
等の場合と同様の手法を用いることにより、上記の各部
位を高精度かつ短時間で形成することができ、この点で
も薄膜磁気ヘッド全体の製造時間の短縮に寄与すること
となる。
【0121】また、本実施の形態では、絶縁膜15の形
成材料としてフォトレジストを用いるようにしたが、必
ずしもこれに限られるものではなく、例えば、フォトレ
ジストと同様に加熱時に流動性を示すポリイミド樹脂や
SOG(Spin on glass )などを用いるようにしてもよ
い。このような場合においても、上記実施の形態の場合
と同様の効果を得ることができる。
【0122】また、本実施の形態では、加熱処理により
流動したフォトレジストを薄膜コイル14の各巻線間に
埋め込むことにより絶縁膜15を形成するようにした
が、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、C
VD(Chemical Vapor Deposition )法を用いてアルミ
ナよりなる絶縁膜15を形成するようにしてもよい。C
VD法を用いることにより、加熱処理等を必要とせずに
薄膜コイル14の各巻線間にアルミナを埋め込むことが
できる。なお、CVD法を用いてアルミナよりなる絶縁
膜15を形成する場合には、後工程において形成される
絶縁膜16を絶縁膜15が兼ねるようにしてもよい。こ
のような場合には、絶縁膜15,16を別個に形成する
場合よりも製造工程を削減することができる。
【0123】また、本実施の形態では、記録ギャップ層
11の形成材料としてアルミナを用い、またその形成手
法としてスパッタリングを用いるようにしたが、必ずし
もこれに限られるものではない。記録ギャップ層11の
形成材料としては、アルミナの他、例えば窒化アルミニ
ウム(AlN)、シリコン酸化物、シリコン窒化物など
の無機絶縁材料を用いるようにしてもよいし、またはタ
ンタル(Ta),チタンタングステン(WTi),窒化
チタン(TiN)などの非磁性金属を用いるようにして
もよい。また、記録ギャップ層11の形成方法として
は、スパッタリングの他、CVD(Chemical Vapor Dep
osition )法を用いるようにしてもよい。このような方
法を用いて記録ギャップ層11を形成することにより、
ギャップ層内にピンホールなどが含有されることを抑制
できるので、記録ギャップ層11を介する磁束の漏れを
回避することができる。このような効果は、特に、記録
ギャップ層11の厚みを薄くした場合に有益である。
【0124】また、本実施の形態では、図18に示した
ように、上部磁性層12Cにおける第1の磁極先端部1
2C(1) の前端の位置が第2の磁極先端部12Aの前端
の位置と一致するようにしたが、必ずしもこれに限られ
るものではなく、例えば、図22に示したように、第1
の磁極先端部12C(1) の前端の位置が第2の磁極先端
部12Aの前端の位置よりも後退するようにしてもよ
い。上記したように、薄膜磁気ヘッドの動作は、主に、
第2の磁極先端部12Aの内部を伝播する磁束の作用に
より実行されることから、図22に示したような構造を
有する場合においても、上記実施の形態の場合(図1
8)とほぼ同様の効果を得ることができる。なお、図2
2に示したような構造を形成する際には、例えば、上部
磁性層12Cおよび第2の磁極先端部12A等を形成し
たのち、上部磁性層12Cの先端部2C(1) における前
方側の一部をエッチング(例えばイオンミリング等)し
て選択的に除去するようにする。
【0125】また、本実施の形態では、薄膜コイル14
の内側の終端部にコイル接続部14Sを配設するように
したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例え
ば、薄膜コイル14の外側の終端部にコイル接続部14
Sを配設するようにしてもよい。このような場合におい
ても、コイル接続部14Sと接続されるようにコイル接
続配線12CHを配設することにより、上記実施の形態
の場合とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0126】[第2の実施の形態]次に、本発明の第2
の実施の形態について説明する。
【0127】まず、図23〜図30を参照して、本発明
の第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法と
しての複合型薄膜磁気ヘッドの製造方法を説明する。図
23〜図27において、(A)はエアベアリング面に垂
直な断面を示し、(B)は磁極部分のエアベアリング面
に平行な断面を示している。図28〜図30は、主要な
製造工程に対応する斜視図である。ここで、図28は図
23に示した状態に対応し、図29は図24に示した状
態に対応し、図30は図27に示した状態に対応する。
ただし、図30では、図27におけるオーバーコート層
27等の図示を省略している。なお、図23〜図30に
おいて、各図中のX,Y,Z軸方向に関する表記は、上
記第1の実施の形態の場合と同様とし、また各図中の上
記第1の実施の形態における構成要素と同一部分には同
一の符号を付すものとする。
【0128】本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造
方法において、図23における絶縁層16を形成すると
ころまでの工程は、上記第1の実施の形態における図4
に示した同工程までと同様であるので、その説明を省略
する。
【0129】本実施の形態では、全体を研磨して平坦化
することにより絶縁層16を形成したのち、図23およ
び図28に示したように、前駆磁性層112A上から絶
縁層16上にかけての平坦領域に、例えばフレームめっ
き法により、鉄、ニッケルおよびコバルトを含んで高飽
和磁束密度を有する磁性材料、例えば鉄ニッケルコバル
ト合金(例えば、Co:45重量%,Ni:30重量
%,Fe:25重量%の組成を有するもの)よりなる上
部磁性層22Cを約1.0〜2.0μmの厚みで選択的
に形成する。上部磁性層22Cを形成する際には、同時
に、磁路接続部12B上に磁路接続部22Dを選択的に
形成する。上部磁性層22Cおよび磁路接続部22D
は、共に上部磁極22の一部を構成するものである。な
お、上部磁性層22C等の形成材料としては、上記した
3つの金属元素と共に、クロム(Cr)、ボロン
(B)、金(Au)および銅(Cu)のうちの少なくと
も1種を含むものを用いるようにしてもよい。
【0130】上部磁性層22Cを形成する際には、例え
ば、後述する図31に示したように、後工程においてエ
アベアリング面70となる側(図23における左側)か
ら順に、第1の磁極先端部22C(1) 、中間部22C
(2) および後端部22C(3) を含むようにする。このと
き、第1の磁極先端部22C(1) と中間部22C(2) と
の連結位置P2(第2の位置)が前駆磁性層112Aの
後端の位置P1(第1の位置)よりも後退するようにす
ると共に、後端部22C(3) の後端の位置P3(第3の
位置)が薄膜コイル14よりも前方に位置するようにす
る。なお、上部磁性層22Cの構造的特徴については後
述する。
【0131】ここで、第1の磁極先端部22C(1) が、
本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドまたは第1,
第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法における
「一定幅部分」の一具体例に対応すると共に、本発明の
磁性層パターンの形成方法における「エッチングマス
ク」の一具体例に対応する。また、中間部22C(2) お
よび後端部22C(3) が、本発明の第1,第2の観点に
係る薄膜磁気ヘッドまたはその製造方法における「拡幅
部分」の一具体例に対応する。さらに、上部磁性層22
Cが、本発明の第1,第2の観点に係る薄膜磁気ヘッド
またはその製造方法における「第1の磁性層部分」の一
具体例に対応する。
【0132】次に、図23に示したように、上部磁性層
22Cにおける第1の磁極先端部22C(1) と中間部2
2C(2) との連結位置P2よりも後方の領域を覆うよう
にフォトレジスト膜91を選択的に形成する。
【0133】次に、上部磁性層22Cおよびフォトレジ
スト膜91をマスクとして、例えばRIEにより、全体
にエッチング処理を施す。RIEによるエッチング処理
を行う際には、例えば、上記第1の実施の形態において
第2の磁極先端部12Aおよび磁極部分100を形成し
た場合と同様に、エッチング条件(エッチングガスのガ
ス種および加工温度等)を調整するようにする。このエ
ッチング処理により、第1の磁極先端部22C(1) と中
間部22C(2) との連結位置P2よりも前方の領域にお
ける前駆磁性層112A、絶縁膜13,16、記録ギャ
ップ層11および下部磁極10のそれぞれの一部が除去
され、図24および図29に示したように、上部磁極2
2の一部を構成する第2の磁極先端部12Aが形成され
ると共に、トリム構造を有する磁極部分200が形成さ
れる。このとき、例えば、上部磁性層22Cに対するエ
ッチング量が周辺領域に対するエッチング量よりも極め
て小さくなるようにエッチング条件を調整し、上部磁性
層22Cの膜厚が減少しないようにする。ここで、上部
ヨーク22Cの第1の磁極先端部22C(1) および第2
の磁極先端部12Aが、本発明の第2の観点に係る薄膜
磁気ヘッドにおける「トラック幅規定部分」の一具体例
に対応する。
【0134】次に、図25に示したように、例えばRI
Eまたはイオンミリングにより、コイル接続部14Sの
上方を覆っている絶縁膜16を部分的にエッチングし
て、コイル接続部14Sと後工程において形成される薄
膜コイル24とを接続させるための開口部16Kを形成
する。
【0135】次に、図25に示したように、上部磁性層
22Cの配設領域よりも後方の領域(磁路接続部22D
の配設領域を除く)における平坦な絶縁膜16上に、例
えば電解めっき法により、例えば銅よりなる誘導型の記
録ヘッド用の薄膜コイル24を約0.8〜1.5μmの
厚みで選択的に形成する。薄膜コイル24を形成する際
には、同時に、例えば、その内側の終端部におけるコイ
ル接続部14S上に、コイル接続部24SAを薄膜コイ
ル24と一体に形成する。薄膜コイル14と薄膜コイル
24とは、開口部16Kにおいて、コイル接続部14
S,24SAを介して接続される。ここで、薄膜コイル
24が、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドまた
は第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法における
「第2の薄膜コイル」の一具体例に対応する。また、薄
膜コイル14,24が、本発明の第1の観点に係る薄膜
磁気ヘッドまたは本発明の第2の観点に係る薄膜磁気ヘ
ッドの製造方法における「薄膜コイル」の一具体例に対
応する。
【0136】次に、図25に示したように、薄膜コイル
24等の各巻線間を絶縁化するための絶縁膜25を形成
する。絶縁膜25の形成材料、形成方法および構造的特
徴等は、上記第1の実施の形態において絶縁膜15を形
成した場合とほぼ同様である。
【0137】次に、図25に示したように、全体を覆う
ように、例えばスパッタリングにより、絶縁材料、例え
ば前駆絶縁層26Pを約3.0〜4.0μmの厚みで形
成して、上部磁性層22C、磁路接続部22D、薄膜コ
イル24およびコイル接続部24SA等によって構成さ
れた凹凸構造領域を埋設する。
【0138】次に、例えばCMP法により、前駆絶縁層
26Pの表面全体を研磨して平坦化する。この研磨処理
により、図26に示したように、薄膜コイル24等を埋
設する絶縁膜26が形成される。このときの研磨処理
は、少なくとも上部磁性層22Cおよび磁路接続部22
Dが露出するまで行う。ここで、絶縁膜13,15,1
6,25,26が、本発明の第1,第2の観点に係る薄
膜磁気ヘッドまたはその製造方法における「絶縁層」の
一具体例に対応する。
【0139】次に、図26に示したように、平坦化され
た領域のうち、例えば、上部磁性層22Cの後端部22
C(3) の上方から磁路接続部22D上にかけての平坦領
域に、上部磁極22の一部を構成する上部ヨーク22E
を約2.0〜3.0μmの厚みで選択的に形成する。上
部ヨーク22Eの形成材料および形成方法は、例えば、
上記第1の実施の形態における上部磁性層12Cの場合
とほぼ同様である。上部ヨーク22Eを形成する際に
は、例えば、後述する図31に示したような平面形状を
有するようにする。上部ヨーク22Eの構造的特徴につ
いては、後述する。ここで、上部ヨーク22Eが、本発
明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドにおける「第3の
磁性層部分」の一具体例に対応する。また、第2の磁極
先端部12A,22C、磁路接続部12B,22Dおよ
び上部ヨーク22Eによって構成される上部磁極22
が、本発明における第1,第2の観点に係る薄膜磁気ヘ
ッドまたはその製造方法における「第1の磁性層」の一
具体例に対応する。
【0140】次に、図26に示したように、全体を覆う
ように、絶縁材料、例えばアルミナなどの無機絶縁材料
よりなるオーバーコート層27を約20〜40μmの厚
みで形成する。このときの上部ヨーク22C周辺の構造
は、図30に示したようになる。
【0141】最後に、図27に示したように、機械加工
や研磨工程により記録ヘッドおよび再生ヘッドのエアベ
アリング面70を形成して、薄膜磁気ヘッドが完成す
る。
【0142】図31は、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘ
ッドの製造方法により製造された薄膜磁気ヘッドの平面
構造の概略を表すものである。図31において、上記第
1の実施の形態における図21に示した構成要素と同一
部分には同一の符号を付すものとする。なお、図31で
は、絶縁膜13,15,16,25,26およびオーバ
ーコート層27等の図示を省略している。また、薄膜コ
イル24については、その最外周の一部のみを図示して
いる。図27(A)は、図31におけるXXVIIA−XXVII
線に沿った矢視断面に相当する。なお、図31中のX,
Y,Z軸方向に関するそれぞれの表記については、図2
3〜図30の場合と同様とする。
【0143】上部磁極22は、上記したように、例え
ば、それぞれ別個に形成された第2の磁極先端部12
A,22C、磁路接続部12B,22Dおよび上部ヨー
ク22Eによって構成されている。
【0144】上部磁性層22Cは、上記したように、エ
アベアリング面70から順に、第1の磁極先端部22C
(1) 、中間部22C(2) および後端部22C(3) を含ん
でいる。これらの各部位は、例えば、上記第1の実施の
形態における上部磁性層12Cのうちの対応する各部位
(例えば、第1の磁極先端部22C(1) に対する第1の
磁極先端部12C(1) )とほぼ同様の構造的特徴を有す
るものである。
【0145】上部ヨーク22Eは、薄膜コイル14,2
4により発生した磁束を収容するたの大きな面積を有す
るヨーク部22E(1) と、ヨーク部22E(1) よりも小
さい一定幅を有する接続部22E(2) とを含んでいる。
ヨーク部22E(1) の幅は、例えば、その後方部におい
てほぼ一定であり、その前方部においてエアベアリング
面70に近づくにつれて徐々に狭まるようになってい
る。接続部22E(2) の幅は、例えば、上部磁性層22
Cの後端部22C(3) の幅よりも大きくなっている。た
だし、必ずしもこのような場合に限らず、例えば、前者
の幅が後者の幅よりも小さくなるようにしてもよい。上
部ヨーク22Eの前側の端縁面22ETの位置は、例え
ば、上部磁性層22Cにおける中間部22C(2) と後端
部22C(3) との連結位置P2よりも後退している。す
なわち、上部ヨーク22Eは、エアベアリング面70か
ら離れて位置している。なお、上部ヨーク22Eの配設
位置は、必ずしも上記のような場合に限らず、例えば、
端縁面22ETの位置が中間部22C(2) と後端部22
C(3) との連結位置とほぼ一致するようにしてもよい。
上部ヨーク22Eおよび上部磁性層22Cの各幅方向の
中心は、互いに一致している。
【0146】図27(A)、図30および図31に示し
たように、上部磁性層22Cは、第2の磁極先端部12
A上から絶縁膜16上にかけての平坦な領域上に延在し
ている。上部ヨーク22E、上部磁性層22Cにおける
後端部22C(3) 上から絶縁膜26上にかけての平坦な
領域上に延在している。上部ヨーク22Eは、開口部1
1Kにおいて磁路接続部12B,22Dを介して下部磁
極10と磁気的に連結されると共に、上部磁性層22C
を介して第2の磁極先端部12Aとも磁気的に連結され
ている。すなわち、上部磁極22(第2の磁極先端部1
2A,22C,磁路接続部12B,22D,上部ヨーク
22E)と下部磁極10とが接続されることにより磁路
が形成されている。
【0147】図31に示したように、薄膜コイル24お
よびコイル接続部24SAは、上記第1の実施の形態に
おける薄膜コイル14およびコイル接続部14Sと同様
の構造的特徴を有するものである。薄膜コイル14と薄
膜コイル24とは、開口部16Kにおいて、コイル接続
部14S,24SAを介して接続されている。薄膜コイ
ル14の外側の終端部に形成された端子14Xおよび薄
膜コイル24の外側の終端部に形成された端子24Xは
図示しない外部回路に接続されており、この外部回路を
通じて薄膜コイル14,24を通電させることができる
ようになっている。
【0148】なお、図31に示した上記以外の配設物に
関する構造的特徴は、上記第1の実施の形態の場合(図
21参照)と同様である。
【0149】本実施の形態では、図27および図30に
示したように、上部磁性層22Cと上部ヨーク22Eと
がオーバーラップするオーバーラップ領域22Rに、薄
膜コイル14,24を埋設する絶縁材の一部(絶縁膜1
3,16)が記録ギャップ層11に隣接して配設されて
いるため、以下のような理由により、優れたオーバーラ
イト特性を確保することができる。すなわち、上部磁極
22内を流れる磁束の伝播過程において、オーバーラッ
プ領域22Rでは、上部ヨーク22Eの接続部22E
(2) から上部磁性層22Cの後端部22C(3) へ向かう
下向きの磁束の流れが生じる。ここで、オーバーラップ
領域22Rに配設されている非磁性材料よりなる絶縁材
の一部は、磁束の遮蔽材として機能し、その上方領域か
ら下方領域に向かう磁束の流れを抑制することとなる。
このため、接続部22E(2) から後端部22C(3) へ流
入した磁束が記録ギャップ層11を通過して下部磁極1
0へ伝播すること(磁束の漏れ)を抑制することができ
る。したがって、上部磁性層22C内の磁束の伝播過程
において、「磁束の漏れ」に起因する磁束の伝播ロスが
抑制され、第1の磁極先端部22C(1) および第2の磁
極先端部12Aのそれぞれの先端部分まで必要十分な量
の磁束を供給することができる。なお、上記の絶縁材の
一部(絶縁膜13,16)は、上部磁性層22Cから下
部磁極10へ磁束が伝播することを抑制すると同時に、
下部磁極10から上部磁性層22Cへ磁束が伝播するこ
とをも抑制することができる。
【0150】また、本実施の形態では、CMP研磨後の
平坦面上に上部磁性層22Cを形成するようにしたの
で、上記第1の実施の形態において上部磁性層12Cを
平坦面上に形成した場合と同様の作用により、上部磁性
層22Cを高精度に形成することができる。なお、この
上部磁性層22Cの形成精度に係る効果は、上部ヨーク
22Eを形成する場合においても同様である。
【0151】なお、本実施の形態では、上部ヨーク(2
2E)が窒化鉄の単層構造からなる場合(図27参照)
について説明したが、必ずしもこれに限られるものでは
なく、例えば図32に示したように、上部ヨークが、例
えば窒化鉄などの高飽和磁束密度材層92と、例えばア
ルミナなどの無機絶縁材層93とが交互に積層された構
造よりなる(112E)ようにしてもよい。上部ヨーク
をこのような構造とすることにより、磁路における渦電
流の発生を防止し、高周波特性を向上させることができ
る。なお、上記の高飽和磁束密度材層92および無機絶
縁材層93の双方の形成もRIEによって行うことによ
り、形成時間を短縮することができる。なお、図32に
おいて、上部ヨーク112E以外の部分は、上記の図2
7の場合と同様である。
【0152】なお、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド
の構造およびその製造方法に関する上記以外の作用、効
果および変形例等は、上記第1の実施の形態の場合と同
様であるので、その説明を省略する。
【0153】[第3の実施の形態]次に、本発明の第3
の実施の形態について説明する。
【0154】まず、図33〜図35を参照して、本発明
の第3の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法と
しての複合型薄膜磁気ヘッドの製造方法を説明する。図
33〜図35において、(A)はエアベアリング面に垂
直な断面を示し、(B)は磁極部分のエアベアリング面
に平行な断面を示している。なお、図33〜図35にお
いて、各図中のX,Y,Z軸方向に関する表記は、上記
第1の実施の形態の場合と同様とし、また各図中の上記
第1の実施の形態における構成要素と同一部分には同一
の符号を付すものとする。
【0155】本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造
方法において、図33における前駆磁性層112Aを形
成するところまでの工程は、上記第1の実施の形態にお
ける図3に示した同工程までと同様であるので、その説
明を省略する。
【0156】本実施の形態では、前駆磁性層112Aを
形成したのち、図33に示したように、マスク80A,
80Bを用いて、例えば、上記第1の実施の形態におい
て磁極部分100を形成した場合とほぼ同様の条件下に
おけるRIEにより、マスク80A,80Bの形成領域
以外の領域における記録ギャップ層11および下部磁極
10のそれぞれの一部を選択的にエッチングする。この
エッチング処理により、下部磁極10の一部が除去さ
れ、窪み領域10Mが形成される。窪み領域10Mを形
成する際には、例えば、その深さが約0.5〜1.5μ
mになるようにする。
【0157】次に、図33に示したように、絶縁膜1
3、薄膜コイル14、絶縁膜15および前駆絶縁層16
Pを順に形成する。これらの各部位を形成する際の形成
材料、形成方法、形成位置等は上記第1の実施の形態の
場合とほぼ同様である。先工程において窪み領域10M
を形成することにより、薄膜コイル14の配設位置は、
窪み領域10Mを形成しない場合よりも低くなる。
【0158】次に、例えばCMP法により、前駆絶縁層
16Pの表面全体を研磨して平坦化する。この研磨処理
により、図34に示したように、薄膜コイル14等を埋
設する絶縁膜16が形成される。このときの研磨処理
は、少なくとも前駆磁性層112Aおよび磁路接続部1
2Bが露出すると共に、例えば、ポール上部磁性層前駆
層112Aの厚みが約0.5〜1.5μmとなるまで行
う。
【0159】なお、絶縁層16を形成したのち、上部磁
性層12C等を形成する工程は、上記第1の実施の形態
の場合と同様であるので、その説明を省略する。最終的
に完成する薄膜磁気ヘッドの断面構造は、図35に示し
た通りである。
【0160】本実施の形態では、下部磁極10の一部を
エッチングして掘り下げることにより窪み領域10Mを
形成し、この窪み領域10Mに薄膜コイル14を配設す
るようにしたので、薄膜コイル14を形成することとな
る下地の表面の位置は、エッチング処理を行わない場合
における下地の表面の位置よりも低くなる。このため、
後工程において、薄膜コイル14の上方には十分な厚み
を有する絶縁膜16が形成されることとなるので、薄膜
コイル14と後工程において形成される上部ヨーク12
Cとの間を確実に絶縁することができる。
【0161】また、薄膜コイル14を形成することとな
る下地の表面の位置を低くすることにより、薄膜コイル
14の上方における絶縁膜16の厚みを適正に確保しつ
つ、前駆磁性層112Aの厚みを薄くすることが可能と
なる。このような場合には、以下のような理由により、
後工程において形成される第2の磁極先端部12Aの幅
を高精度に一定とすることができる。すなわち、RIE
を用いて前駆磁性層112Aをエッチングすることによ
り第2の磁極先端部12Aを形成する場合には、前駆磁
性層112Aの厚みが大きいほど第2の磁極先端部12
Aの幅を一定に制御することが困難となる。なぜなら、
前駆磁性層112Aの厚みが大きいと、エッチング処理
が進行するにつれて発生するエッチングかすの量が多く
なり、このエッチングかすの再付着により第2の磁極先
端部12Aの幅が部分的に拡張してしまうからである。
逆に言えば、前駆磁性層112Aの厚みを薄くするほど
エッチング処理時におけるエッチングかすの発生量が低
減するため、第2の磁極先端部12Aの幅を高精度に一
定とすることが可能となる。
【0162】なお、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド
の構造およびその製造方法に関する上記以外の作用、効
果および変形例等は、上記第1の実施の形態の場合と同
様であるので、その説明を省略する。
【0163】なお、本実施の形態における窪み領域10
Mの形成に係る変形は、上記第2の実施の形態の場合に
も適用可能である。図36は、上記第2の実施の形態の
場合において窪み領域10Mを形成した場合の薄膜磁気
ヘッドの完成状態を表すものであり、図27に対応する
ものである。この場合においても、上記実施の形態の場
合と同様の効果を得ることができる。
【0164】以上、いくつかの実施の形態を挙げて本発
明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定さ
れず、種々の変形が可能である。
【0165】例えば、上記各実施の形態およびその変形
例では、複合型薄膜磁気ヘッドの製造方法について説明
したが、本発明は、書き込み用の誘導型磁気変換素子を
有する記録専用の薄膜磁気ヘッドや記録・再生兼用の誘
導型磁気変換素子を有する薄膜磁気ヘッドにも適用する
ことができる。また、本発明は、書き込み用の素子と読
み出し用の素子の積層順序を逆転させた構造の薄膜磁気
ヘッドにも適用することができる。
【0166】また、例えば、上記第1の実施の形態で
は、上部磁極12のうちの記録媒体の記録トラック幅を
規定する一定幅を有する部分が2層構造(第2の磁極先
端部12Aおよび第1の磁極先端部12C(1) )を有す
る場合について説明したが、必ずしもこれに限られるも
のではなく、3層以上の多層構造を有するようにしても
よい。このような場合においても、上記第1の実施の形
態の場合と同様の効果を得ることができる。特に、上部
磁性層を構成する各部位の形成材料として、互いに異な
る飽和磁束密度を有する複数の磁性材料を用いる場合に
は、上記したように、一定幅を有する部分の上層部から
下層部にかけて飽和磁束密度が大きくなるように飽和磁
束密度プロファイルを調整するようにするのが好まし
い。もちろん、一定幅を有する部分の飽和磁束密度プロ
ファイルを自由に調整することも可能である。なお、上
記した一定幅を有する部分の構造に係る変形は、上記第
2,第3の実施の形態についても適用可能である。
【0167】また、上記の各実施の形態で示した上部磁
極を構成する各磁性層部分(上部磁性層,上部磁性層,
上部ヨーク等)の平面形状は、必ずしも図21および図
31に示したものに限られるものではなく、各磁性層部
分の磁気ボリュームを適正化し、薄膜コイルで発生した
磁束を先端部の先端部分まで十分に供給し得る限り、自
由に変更することが可能である。
【0168】また、上記各実施の形態では、1層または
2層のコイル構造を有する薄膜磁気ヘッドの構造につい
て説明したが、各実施の形態における薄膜コイルの層数
は自由に変更することが可能である。薄膜コイルの層数
を増加させることにより、磁束の発生量を増加させるこ
とができる。
【0169】例えば、上記第1の実施の形態では、1層
のコイル構造(薄膜コイル14)を有する場合について
説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、図
37に示したように、2層のコイル構造を有するように
してもよい。図37は、上記第1の実施の形態の薄膜磁
気ヘッドの構造に関する変形例を表すものであり、図1
0に対応するものである。この薄膜磁気ヘッドは、1層
目の薄膜コイル14の他に、2層目の薄膜コイル34を
備えている。この薄膜コイル34は、例えば、上記第2
の実施の形態における薄膜コイル24とほぼ同様の構造
的特徴を有するものであり、開口部16Kにおいてコイ
ル接続部14S,34Sを介して薄膜コイル14と接続
されている。薄膜コイル34およびコイル接続部34S
は、例えばフォトレジストよりなる絶縁膜35により覆
われており、上部磁性層12Cは、絶縁膜35により構
成されたエイペックス部を覆うように配設されている。
【0170】また、例えば、上記第2の実施の形態で
は、2層のコイル構造(薄膜コイル14,24)を有す
る場合について説明したが、必ずしもこれに限られるも
のではなく、図38に示したように、3層のコイル構造
を有するようにしてもよい。図38は、上記第2の実施
の形態の薄膜磁気ヘッドの構造に関する変形例を表すも
のであり、図27に対応するものである。この薄膜磁気
ヘッドは、1層目の薄膜コイル14および2層目の薄膜
コイル24の他に、3層目の薄膜コイル44を備えてい
る。薄膜コイル44の外側の終端部および内側の終端部
にはそれぞれコイル接続部44SA,44SBが配設さ
れており、薄膜コイル44およびコイル接続部44S
A,44SBは、例えばフォトレジストよりなる絶縁膜
45により覆われている。また、上部ヨーク22Eは、
絶縁膜45により構成されたエイペックス部を覆うよう
に配設されており、上部ヨーク22Eの後方にはコイル
接続配線22EHが配設されている。薄膜コイル24と
薄膜コイル44とは、開口部26Kにおいてコイル接続
部24SB,44SAを介して接続されており、薄膜コ
イル44とコイル接続配線22EHとは、開口部45K
を通じて接続されている。薄膜コイル14の外側の終端
部に設けられた端子14X(図38では図示せず。図2
1参照)およびコイル接続配線22EHの後端部が外部
の接続回路に接続されており、この接続回路を用いて薄
膜コイル14,24,44を通電させることができるよ
うになっている。薄膜コイル34および絶縁膜35の形
成材料、形成方法および構造的特徴等は、上記第2の実
施の形態における薄膜コイル24および絶縁膜25の場
合とほぼ同様である。
【0171】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1ないし請
求項19のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッドまたは
請求項26ないし請求項29のいずれか1項に記載の薄
膜磁気ヘッドの製造方法によれば、第2の磁性層部分が
記録媒体の記録トラック幅を規定するための一定幅を保
ちつつ記録媒体対向面からこの面より離れる方向にギャ
ップ層に隣接ながら延在して第1の位置で終端し、第1
の磁性層部分が、第2の磁性層部分の一定幅と同一の幅
を保ちつつ記録媒体対向面またはその近傍位置からこの
面より離れる方向に延在して第1の位置と同一または近
傍の第2の位置で終端する一定幅部分と、一定幅部分の
幅よりも大きな幅を有すると共に、第2の位置から記録
媒体対向面より離れる方向に延在して第3の位置で終端
する拡幅部分とを含むようにしたので、主要な磁束の伝
播経路をなす第1の磁性層部分の構造を変更することな
く、第2の磁性層部分の長さのみを変更することによ
り、記録ヘッドの性能を決定する因子のうちの1つであ
るスロートハイトを調整することができるという効果を
奏する。
【0172】特に、請求項4記載の薄膜磁気ヘッドによ
れば、第1の磁性層部分の一定幅部分における記録媒体
対向面に近い側の端部の厚みが記録媒体対向面から遠い
側の端部の厚みよりも小さくなるようにしたので、一定
幅部分の厚みの減少に起因する磁気ボリュームの減少に
ともない、一定幅部分内を伝播する磁束が段階的に収束
され、磁束の飽和現象が抑制される。したがって、この
観点においても優れたオーバーライト特性の確保に寄与
することとなる。
【0173】また、請求項7または請求項8に記載の薄
膜磁気ヘッドによれば、第1の位置に位置する第2の磁
性層部分と絶縁層との境界面が平面をなすようにしたの
で、上記の境界面が平面をなしていない場合とは異な
り、絶縁層のうちの記録媒体対向面に近い側の位置、す
なわち記録ヘッドの性能を決定する要因のうちの一つで
あるスロートハイトゼロ位置を一義的に決定することが
できるという効果を奏する。
【0174】また、請求項10記載の薄膜磁気ヘッドに
よれば、第2の磁性層部分の厚みが第1の薄膜コイルの
厚みよりも大きくなるようにしたので、第1の薄膜コイ
ルの上方には十分な厚みを有する絶縁材が形成されるこ
ととなる。したがって、第1の薄膜コイルをその上方領
域から確実に絶縁することができるという効果を奏す
る。
【0175】また、請求項11記載の薄膜磁気ヘッドま
たは請求項28記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれ
ば、第2の磁性層のうちの第1の磁性層に近い側には窪
み領域が設けられており、第1の薄膜コイルが窪み領域
に配設されるようにしたので、第1の薄膜コイルを形成
することとなる下地の表面の位置は、エッチング処理を
行わない場合における下地の表面の位置よりも低くな
る。このような場合には、第1の薄膜コイルの上方には
より十分な厚みを有する絶縁材が形成されることとな
る。したがって、第1の薄膜コイルをその上方領域から
より確実に絶縁することができるという効果を奏する。
【0176】また、請求項14記載の薄膜磁気ヘッドに
よれば、第1の磁性層部分と第3の磁性層部分とがオー
バーラップするオーバーラップ領域に、ギャップ層に隣
接するようにして絶縁層の一部が配設されるようにした
ので、この絶縁層の一部により、その上方領域から下方
領域への磁束の伝播、すなわち磁束の漏れを抑制し、磁
束の伝播過程における伝播ロスを低減することができる
という効果を奏する。
【0177】また、請求項15または請求項16に記載
の薄膜磁気ヘッドによれば、第2の磁性層部分を構成す
る磁性材料が、第1の磁性層部分を構成する磁性材料の
飽和磁束密度以上の飽和磁束密度を有するようにしたの
で、第1の磁性層部分内における磁束の伝播特性にばら
つきが生じたとしても、第2の磁性層部分内において円
滑な磁束の伝播が確保される。したがって、この観点に
おいても優れたオーバーライト特性の確保に寄与するこ
ととなる。
【0178】請求項20記載の薄膜磁気ヘッドによれ
ば、第1の磁性層が、記録媒体対向面からこの面より離
れる方向にギャップ層に隣接して延在すると共に記録媒
体の記録トラック幅を規定するトラック幅規定部分を含
み、このトラック幅規定部分が複数の磁性層からなる積
層構造を有するようにしたので、最下層の磁性層の長さ
のみを変更することにより、記録ヘッドの性能を決定す
る因子のうちの1つであるスロートハイトを調整するこ
とができるという効果を奏する。
【0179】請求項21ないし請求項25のいずれか1
項に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、ギャッ
プ層上における記録媒体対向面が形成されるべき位置の
近傍から第1の位置に至る領域に、第2の磁性層部分の
一定幅よりも大きい幅と、第1の位置において第2の磁
性層部分の幅方向に延びる直線状の端縁とを有するよう
に第2の磁性層部分の前準備層としての前駆磁性層を選
択的に形成する第1の工程と、少なくとも前駆磁性層お
よびその周辺領域を覆うように絶縁層の前準備層として
の前駆絶縁層を形成する第2の工程と、少なくとも前駆
磁性層が露出するまで前駆絶縁層を研磨して平坦化する
ことにより絶縁層を形成する第3の工程と、研磨後の平
坦面上に、一定幅部分における第2の位置が第1の位置
よりも記録媒体対向面から遠い側に位置するように第1
の磁性層部分を選択的に形成する第4の工程と、第1の
磁性層部分の一定幅部分をマスクとして用いて前駆磁性
層を選択的にエッチングすることにより第2の磁性層部
分を選択的に形成する第5の工程とを含むようにしたの
で、極微小な一定幅を有すると共に、記録媒体対向面か
ら遠い側の端部における幅方向に延びる端縁が直線状を
なすように第2の磁性層部分を形成することができると
いう効果を奏する。
【0180】特に、請求項22記載の薄膜磁気ヘッドの
製造方法によれば、第5の工程において、第2の磁性層
部分の形成を反応性イオンエッチングを用いて行うよう
にしたので、第2の磁性層部分を高精度かつ短時間で形
成することができるという効果を奏する。
【0181】また、請求項23記載の薄膜磁気ヘッドの
製造方法によれば、第1の工程において、前駆磁性層の
形成を反応性イオンエッチングを用いて行うようにした
ので、記録媒体対向面から遠い側の端面が平面をなすと
共に下地に対して垂直になるように前駆磁性層を形成す
ることができるという効果を奏する。また、反応性イオ
ンエッチングを用いることにより、前駆磁性層を高精度
かつ短時間で形成することができる。
【0182】また、請求項25記載の薄膜磁気ヘッドの
製造方法によれば、ギャップ層上にスパッタリングを用
いて磁性材層を形成したのち、この磁性材層を選択的に
エッチングすることにより前駆磁性層を形成するように
したので、前駆磁性層の形成材料の組成を適正に制御す
ることができるという効果を奏する。
【0183】請求項30記載の磁性層パターンの形成方
法によれば、下地層上に、磁性層パターンの一定幅より
も大きい幅と、磁性層パターンの幅方向に延びる直線状
の端縁とを有するように磁性層パターンの前準備層とし
ての前駆磁性層を選択的に形成する工程と、少なくとも
前駆磁性層およびその周辺領域を覆うように非磁性層を
形成する工程と、少なくとも前駆磁性層が露出するまで
非磁性層を研磨して平坦化する工程と、研磨後の平坦面
上に、前駆磁性層における直線状の端縁と交差すると共
に非磁性層の表面領域から前駆磁性層の表面領域へ延在
するように、磁性層パターンの一定幅と同一の幅を有す
るエッチングマスクを選択的に形成する工程と、エッチ
ングマスクを用いて前駆磁性層を選択的にエッチングす
ることにより磁性層パターンを選択的に形成する工程と
を含むようにしたので、一定幅を有すると共に、記録媒
体対向面から遠い側の端部における幅方向に延びる端縁
が直線状をなすように磁性層パターンを形成することが
できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッ
ドの製造方法における一工程を説明するための断面図で
ある。
【図2】図1に続く工程を説明するための断面図であ
る。
【図3】図2に続く工程を説明するための断面図であ
る。
【図4】図3に続く工程を説明するための断面図であ
る。
【図5】図4に続く工程を説明するための断面図であ
る。
【図6】図5に続く工程を説明するための断面図であ
る。
【図7】図6に続く工程を説明するための断面図であ
る。
【図8】図7に続く工程を説明するための断面図であ
る。
【図9】図8に続く工程を説明するための断面図であ
る。
【図10】図9に続く工程を説明するための断面図であ
る。
【図11】図1に示した断面図に対応する斜視図であ
る。
【図12】図2に示した断面図に対応する斜視図であ
る。
【図13】図5に示した断面図に対応する斜視図であ
る。
【図14】図6に示した断面図に対応する斜視図であ
る。
【図15】図7に示した断面図に対応する斜視図であ
る。
【図16】図8に示した断面図に対応する斜視図であ
る。
【図17】図9に示した断面図に対応する斜視図であ
る。
【図18】図2に示した断面図に対応する平面図であ
る。
【図19】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘ
ッドの製造方法に関する作用を説明するための図であ
る。
【図20】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘ
ッドの製造方法に関する他の作用を説明するための図で
ある。
【図21】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘ
ッドの平面構造を表す平面図である。
【図22】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘ
ッドの構造に関する変形例を表す斜視図である。
【図23】本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘ
ッドの製造方法における一工程を説明するための断面図
である。
【図24】図23に続く工程を説明するための断面図で
ある。
【図25】図24に続く工程を説明するための断面図で
ある。
【図26】図25に続く工程を説明するための断面図で
ある。
【図27】図26に続く工程を説明するための断面図で
ある。
【図28】図23に示した断面図に対応する斜視図であ
る。
【図29】図24に示した断面図に対応する斜視図であ
る。
【図30】図26に示した断面図に対応する斜視図であ
る。
【図31】本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘ
ッドの平面構造を表す平面図である。
【図32】本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘ
ッドの構造に関する変形例を表す断面図である。
【図33】本発明の第3の実施の形態に係る薄膜磁気ヘ
ッドの製造方法における一工程を説明するための断面図
である。
【図34】図33に続く工程を説明するための断面図で
ある。
【図35】図34に続く工程を説明するための断面図で
ある。
【図36】本発明の第3の実施の形態に係る薄膜磁気ヘ
ッドの製造方法を第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッ
ドの製造に適用した場合に製造される薄膜磁気ヘッドの
断面図である。
【図37】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘ
ッドの構造に関する他の変形例を表す断面図である。
【図38】本発明の第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘ
ッドの構造に関する他の変形例を表す断面図である。
【図39】従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法の一工程を
説明するための断面図である。
【図40】図39に続く工程を説明するための断面図で
ある。
【図41】図40に続く工程を説明するための断面図で
ある。
【図42】従来の薄膜磁気ヘッドの要部構造を表す断面
図である。
【図43】図42に示した薄膜磁気ヘッドにおける磁極
部分のエアベアリング面に平行な断面を示す断面図であ
る。
【図44】従来の薄膜磁気ヘッドの構造を示す平面図で
ある。
【符号の説明】
1…基板、2…絶縁層、3…下部シールド層、4,9,
13,15,16,25,26,35,45…絶縁膜、
5,7…シールドギャップ膜、6…MR膜、8…上部シ
ールド層、10…下部磁極、10M…窪み領域、11…
記録ギャップ層、12A…第2の磁極先端部、12B,
22D…磁路接続部、12C,22C…上部磁性層、1
2C(1) ,22C(1) …第1の磁極先端部、12C(2)
,22C(2) …中間部、12C(3) ,22C(3) …後
端部、12C(4) …ヨーク部、12CH,22EH…コ
イル接続配線、14,24,34,44…薄膜コイル、
14S,24SA,24SB,34S…コイル接続部、
16P,26P…前駆絶縁層、17,27…オーバーコ
ート層、22E,112E…ヨーク部、22E(1) …ヨ
ーク部、22E(2) …接続部、70…エアベアリング
面、80A,80B…マスク、90,91…フォトレジ
スト膜、92…高飽和磁束密度材層、93…無機絶縁材
層、100,200…磁極部分、112…基礎磁性層、
112A…前駆磁性層、TH…スロートハイト、MRH
…MRハイト。

Claims (30)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 記録媒体に対向する記録媒体対向面に近
    い側の一部に、ギャップ層を介して対向する2つの磁極
    を有する、互いに磁気的に連結された第1の磁性層およ
    び第2の磁性層と、前記第1の磁性層と第2の磁性層と
    の間に配設された薄膜コイルと、前記薄膜コイルを前記
    第1の磁性層および第2の磁性層から絶縁する絶縁層と
    を有する薄膜磁気ヘッドであって、 前記第1の磁性層は、前記ギャップ層より遠い側から順
    に配設された第1の磁性層部分および第2の磁性層部分
    の積層体を含み、 前記第2の磁性層部分は、記録媒体の記録トラック幅を
    規定するための一定幅を保ちつつ前記記録媒体対向面か
    らこの面より離れる方向に前記ギャップ層に隣接ながら
    延在して第1の位置で終端し、 前記第1の磁性層部分は、 前記第2の磁性層部分の前記一定幅と同一の幅を保ちつ
    つ前記記録媒体対向面またはその近傍位置からこの面よ
    り離れる方向に延在して前記第1の位置と同一または近
    傍の第2の位置で終端する一定幅部分と、 前記一定幅部分の幅よりも大きな幅を有すると共に、前
    記第2の位置から前記記録媒体対向面より離れる方向に
    延在して第3の位置で終端する拡幅部分とを含むことを
    特徴とする薄膜磁気ヘッド。
  2. 【請求項2】 前記第1の磁性層部分の一定幅部分にお
    ける前記記録媒体対向面に近い側の端縁の位置は、前記
    記録媒体対向面の位置と一致していることを特徴とする
    請求項1記載の薄膜磁気ヘッド。
  3. 【請求項3】 前記第1の磁性層部分の一定幅部分にお
    ける前記記録媒体対向面に近い側の端縁の位置は、前記
    記録媒体対向面から離れる方向にずれていることを特徴
    とする請求項1記載の薄膜磁気ヘッド。
  4. 【請求項4】 前記第1の磁性層部分の一定幅部分にお
    ける前記記録媒体対向面に近い側の端部の厚みは前記記
    録媒体対向面から遠い側の端部の厚みよりも小さいこと
    を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に
    記載の薄膜磁気ヘッド。
  5. 【請求項5】 前記第1の磁性層部分と前記第2の磁性
    層部分との境界面は平面をなしていることを特徴とする
    請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の薄膜磁
    気ヘッド。
  6. 【請求項6】 前記絶縁層における前記記録媒体対向面
    に近い側の端縁の位置は前記第1の位置と一致している
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1
    項に記載の薄膜磁気ヘッド。
  7. 【請求項7】 前記第1の位置に位置する、前記第2の
    磁性層部分と前記絶縁層との境界面は平面をなしている
    ことを特徴とする請求項6記載の薄膜磁気ヘッド。
  8. 【請求項8】 前記第2の磁性層部分と前記絶縁層との
    境界面は、前記第2の磁性層部分の延在方向に対して垂
    直になっていることを特徴とする請求項7記載の薄膜磁
    気ヘッド。
  9. 【請求項9】 前記薄膜コイルは、その一部をなす第1
    の薄膜コイルを含み、 前記第1の薄膜コイルは、その最も多くの部分が前記第
    2の磁性層部分の厚みに対応する空間領域に含まれるよ
    うに配設されていることを特徴とする請求項1ないし請
    求項8のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッド。
  10. 【請求項10】 前記第2の磁性層部分の厚みは前記第
    1の薄膜コイルの厚みよりも大きいことを特徴とする請
    求項9記載の薄膜磁気ヘッド。
  11. 【請求項11】 前記第2の磁性層のうちの前記第1の
    磁性層に近い側には窪み領域が設けられており、前記第
    1の薄膜コイルは前記窪み領域に配設されていることを
    特徴とする請求項9または請求項10に記載の薄膜磁気
    ヘッド。
  12. 【請求項12】 前記薄膜コイルは、さらに、その一部
    をなすと共に前記第1の薄膜コイルと電気的に接続され
    た第2の薄膜コイルを含み、 前記第2の薄膜コイルは、その最も多くの部分が前記第
    1の磁性層部分の厚みに対応する空間領域に含まれるよ
    うに配設されていることを特徴とする請求項9ないし請
    求項11のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッド。
  13. 【請求項13】 前記第3の位置は、前記第1の薄膜コ
    イルよりも前記記録媒体対向面に近い側に位置し、 前記第1の磁性層は、さらに、前記第1の磁性層部分と
    部分的にオーバーラップして磁気的に連結された第3の
    磁性層部分を含むことを特徴とする請求項9ないし請求
    項12のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッド。
  14. 【請求項14】 前記第1の磁性層部分と前記第3の磁
    性層部分とがオーバーラップするオーバーラップ領域
    に、前記ギャップ層に隣接するようにして前記絶縁層の
    一部が配設されていることを特徴とする請求項13記載
    の薄膜磁気ヘッド。
  15. 【請求項15】 前記第2の磁性層部分を構成する磁性
    材料は、前記第1の磁性層部分を構成する磁性材料の飽
    和磁束密度以上の飽和磁束密度を有するものであること
    を特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1項
    に記載の薄膜磁気ヘッド。
  16. 【請求項16】 前記第1の磁性層部分は、鉄、ニッケ
    ルおよびコバルトを含む磁性材料よりなるものであり、 前記第2の磁性層部分は、ニッケル鉄合金またはコバル
    ト鉄合金のいずれか1つを含む磁性材料よりなるもので
    あることを特徴とする請求項15記載の薄膜磁気ヘッ
    ド。
  17. 【請求項17】 前記第1の磁性層部分および前記第2
    の磁性層部分のうちの少なくとも一方は、窒化鉄、ニッ
    ケル鉄合金またはアモルファス合金のいずれか1つを含
    む磁性材料よりなるものであることを特徴とする請求項
    1ないし請求項14のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘ
    ッド。
  18. 【請求項18】 前記アモルファス合金は、コバルト鉄
    合金、ジルコニウムコバルト鉄酸化物合金またはジルコ
    ニウム鉄窒化物合金のいずれかであることを特徴とする
    請求項17記載の薄膜磁気ヘッド。
  19. 【請求項19】 前記第1の磁性層部分および前記第2
    の磁性層部分のうちの少なくとも一方は、鉄、ニッケル
    およびコバルトを含む磁性材料よりなるものであること
    を特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか1項
    に記載の薄膜磁気ヘッド。
  20. 【請求項20】 記録媒体に対向する記録媒体対向面に
    近い側の一部に、ギャップ層を介して対向する2つの磁
    極を有する、互いに磁気的に連結された第1の磁性層お
    よび第2の磁性層と、前記第1の磁性層と第2の磁性層
    との間に配設された薄膜コイルと、前記薄膜コイルを前
    記第1の磁性層および第2の磁性層から絶縁する絶縁層
    とを有する薄膜磁気ヘッドであって、 前記第1の磁性層は、前記記録媒体対向面からこの面よ
    り離れる方向に前記ギャップ層に隣接して延在すると共
    に記録媒体の記録トラック幅を規定するトラック幅規定
    部分を含み、 このトラック幅規定部分は、複数の磁性層からなる積層
    構造を有することを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
  21. 【請求項21】 記録媒体に対向する記録媒体対向面に
    近い側の一部に、ギャップ層を介して対向する2つの磁
    極を有する、互いに磁気的に連結された第1の磁性層お
    よび第2の磁性層と、前記第1の磁性層と第2の磁性層
    との間に配設された薄膜コイルと、前記薄膜コイルを前
    記第1の磁性層および第2の磁性層から絶縁する絶縁層
    とを有すると共に、前記第1の磁性層が前記ギャップ層
    より遠い側から順に配設された第1の磁性層部分および
    第2の磁性層部分を含み、前記第2の磁性層部分が記録
    媒体の記録トラック幅を規定するための一定幅を保ちつ
    つ前記記録媒体対向面からこの面より離れる方向に前記
    ギャップ層に隣接して延在して第1の位置で終端し、前
    記第1の磁性層部分が、前記第2の磁性層部分の前記一
    定幅と同一の幅を保ちつつ前記記録媒体対向面またはそ
    の近傍位置からこの面より離れる方向に延在して前記第
    1の位置と同一または近傍の第2の位置で終端する一定
    幅部分と、前記一定幅部分の幅よりも大きな幅を有する
    と共に前記第2の位置から前記記録媒体対向面より離れ
    る方向に延在して第3の位置で終端する拡幅部分とを含
    む薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、 前記第1の磁性層を形成する工程が、 前記ギャップ層上における前記記録媒体対向面が形成さ
    れるべき位置の近傍から前記第1の位置に至る領域に、
    前記第2の磁性層部分の前記一定幅よりも大きい幅と、
    前記第1の位置において前記第2の磁性層部分の幅方向
    に延びる直線状の端縁とを有するように、前記第2の磁
    性層部分の前準備層としての前駆磁性層を選択的に形成
    する第1の工程と、 少なくとも前記前駆磁性層およびその周辺領域を覆うよ
    うに前記絶縁層の前準備層としての前駆絶縁層を形成す
    る第2の工程と、 少なくとも前記前駆磁性層が露出するまで前記前駆絶縁
    層を研磨して平坦化することにより前記絶縁層を形成す
    る第3の工程と、 研磨後の平坦面上に、前記一定幅部分における前記第2
    の位置が前記第1の位置よりも前記記録媒体対向面から
    遠い側に位置するように第1の磁性層部分を選択的に形
    成する第4の工程と、 前記第1の磁性層部分の前記一定幅部分をマスクとして
    用いて前記前駆磁性層を選択的にエッチングすることに
    より前記第2の磁性層部分を選択的に形成する第5の工
    程とを含むことを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方
    法。
  22. 【請求項22】 前記第5の工程において、前記第2の
    磁性層部分の形成を反応性イオンエッチングを用いて行
    うことを特徴とする請求項21記載の薄膜磁気ヘッドの
    製造方法。
  23. 【請求項23】 前記第1の工程において、前記前駆磁
    性層の形成を反応性イオンエッチングを用いて行うこと
    を特徴とする請求項21または請求項22に記載の薄膜
    磁気ヘッドの製造方法。
  24. 【請求項24】 前記第5の工程において、 前記ギャップ層および前記第2の磁性層のうち、前記第
    1の磁性層部分の一定幅部分の形成領域以外の領域をそ
    の厚み方向における所定の位置まで除去することを特徴
    とする請求項21ないし請求項23のいずれか1項に記
    載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  25. 【請求項25】 前記ギャップ層上にスパッタリングを
    用いて磁性材層を形成したのち、この磁性材層を選択的
    にエッチングすることにより前駆磁性層を形成すると共
    に、めっき膜の成長処理を用いて前記第1の磁性層部分
    を形成することを特徴とする請求項21ないし請求項2
    4のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  26. 【請求項26】 記録媒体に対向する記録媒体対向面に
    近い側の一部に、ギャップ層を介して対向する2つの磁
    極を有する、互いに磁気的に連結された第1の磁性層お
    よび第2の磁性層と、前記第1の磁性層と第2の磁性層
    との間に配設された薄膜コイルと、前記薄膜コイルを前
    記第1の磁性層および第2の磁性層から絶縁する絶縁層
    とを有する薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、前記第
    1の磁性層を形成する工程は、前記ギャップ層より遠い
    側から順に配設された第1の磁性層部分および第2の磁
    性層部分を含む積層体を形成する工程を含み、 前記第2の磁性層部分の形成工程において、記録媒体の
    記録トラック幅を規定するための一定幅を保ちつつ前記
    記録媒体対向面からこの面より離れる方向に前記ギャッ
    プ層に隣接ながら延在して第1の位置で終端するように
    前記第2の磁性層部分を形成し、 前記第1の磁性層部分の形成工程において、 前記第2の磁性層部分の前記一定幅と同一の幅を保ちつ
    つ前記記録媒体対向面またはその近傍位置からこの面よ
    り離れる方向に延在して前記第1の位置と同一または近
    傍の第2の位置で終端する一定幅部分と、 前記一定幅部分の幅よりも大きな幅を有すると共に、前
    記第2の位置から前記記録媒体対向面より離れる方向に
    延在して第3の位置で終端する拡幅部分とを含むように
    前記第1の磁性層部分を形成することを特徴とする薄膜
    磁気ヘッドの製造方法。
  27. 【請求項27】 前記薄膜コイルが、その一部をなす第
    1の薄膜コイルを含む場合において、 前記第1の薄膜コイルを、その最も多くの部分が前記第
    2の磁性層部分の厚みに対応する空間領域に含まれるよ
    うに形成することを特徴とする請求項26記載の薄膜磁
    気ヘッドの製造方法。
  28. 【請求項28】 前記第2の磁性層のうちの前記第1の
    磁性層に近い側の一部をその厚み方向における所定の位
    置までエッチングすることにより窪み領域を形成し、こ
    の窪み領域に前記第1の薄膜コイルを形成することを特
    徴とする請求項27記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  29. 【請求項29】 前記薄膜コイルが、さらに、その一部
    をなすと共に前記第1の薄膜コイルと電気的に接続され
    た第2の薄膜コイルを含む場合において、 前記第2の薄膜コイルを、その最も多くの部分が前記第
    1の磁性層部分に対応する空間領域に含まれるように形
    成することを特徴とする請求項27または請求項28に
    記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  30. 【請求項30】 所定の下地層上に一定幅を有する細長
    い磁性層パターンを形成するための磁性層パターンの形
    成方法であって、 前記下地層上に、前記磁性層パターンの前記一定幅より
    も大きい幅と、前記磁性層パターンの幅方向に延びる直
    線状の端縁とを有するように、前記磁性層パターンの前
    準備層としての前駆磁性層を選択的に形成する工程と、 少なくとも前記前駆磁性層およびその周辺領域を覆うよ
    うに非磁性層を形成する工程と、 少なくとも前記前駆磁性層が露出するまで前記非磁性層
    を研磨して平坦化する工程と、 研磨後の平坦面上に、前記前駆磁性層における前記直線
    状の端縁と交差すると共に前記非磁性層の表面領域から
    前記前駆磁性層の表面領域へ延在するように、前記磁性
    層パターンの前記一定幅と同一の幅を有するエッチング
    マスクを選択的に形成する工程と、 前記エッチングマスクを用いて前記前駆磁性層を選択的
    にエッチングすることにより前記磁性層パターンを選択
    的に形成する工程とを含むことを特徴とする磁性層パタ
    ーンの形成方法。
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