JP2002088101A - アルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素複合体、ヨードホール、ヨードホールの製造方法、殺菌性組成物 - Google Patents

アルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素複合体、ヨードホール、ヨードホールの製造方法、殺菌性組成物

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JP2002088101A
JP2002088101A JP2000283632A JP2000283632A JP2002088101A JP 2002088101 A JP2002088101 A JP 2002088101A JP 2000283632 A JP2000283632 A JP 2000283632A JP 2000283632 A JP2000283632 A JP 2000283632A JP 2002088101 A JP2002088101 A JP 2002088101A
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Tatsuaki Yamaguchi
達明 山口
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 温和な条件で製造でき、十分な即効殺菌性お
よび持続殺菌性を有し、有機物の存在下においても機能
し、環境に優しいヨードホール。 【解決手段】 アルキルアンモニウムキトサン及びヨウ
素を含んでなり、アルキルアンモニウムキトサン及びヨ
ウ素は実質的に複合体を形成しているヨードホール。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヨウ素とアルキル
アンモニウムキトサンとからなる複合体、その複合体の
製法、その複合体を用いてなる殺菌性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】キトサンは甲殻類等の殻からタンパク質
および無機塩類等を除去して得られるキチンを、濃アル
カリで脱アセチル化して得られる。キトサンは水に不溶
であるが、キトサンの構成単位であるグルコサミンの側
鎖アミノ基にヨウ化アルキル等を反応させ、これをアル
キルアンモニウム化する事で水溶性を付与することがで
きる。水溶性キトサン誘導体は、凝集剤、イオン交換
剤、分離膜、製剤素材等として用いられている。
【0003】また、キトサンには、それほど活性は高く
はないが殺菌作用があり、水に不溶な性質を生かして、
樹脂および繊維等をコーティングし殺菌作用を付与する
等の利用が成されている。
【0004】更に、アルキルアンモニウム化キトサンに
も殺菌活性があり、殺菌性溶液として用いることも可能
であるが、キトサンと同様に活性が低いため、溶液タイ
プの殺菌剤としては実用化されていない。
【0005】一方、ヨウ素は強い殺菌作用を有し、古く
から殺菌剤として用いられているが、刺激性および腐食
性が高いため、ヨウ素と複合体を形成する性質のあるポ
リマー及び界面活性剤等にヨウ素を担持させ、ヨウ素の
刺激性および腐食性を抑制した、いわゆるヨードホール
が開発されている。中でも、ポビドンヨードは最も広範
に用いられているヨードホールである。
【0006】キトサンはヨウ素と複合体を形成する性質
があり、特公昭60−19762号公報にヨードホール
として用いることが開示されているが、水溶性が低くヨ
ウ素徐放タイプの固形殺菌剤として利用されるに留まっ
ている。
【0007】ポビドンヨードは、水溶性ポリマーである
ポリビニルピロリドン(PVPとも記載する)とヨウ素
との複合体(PVP−Iとも記載する)であり、水に高
濃度で溶解し、ヨウ素の刺激性、腐食性および揮発性が
抑制された殺菌剤であり、医療分野の殺菌および消毒は
もとより、酪農および食品衛生等の分野におけるヨウ素
系殺菌剤として広く利用されている。ポビドンヨードの
製法は、例えば米国特許第2739922号公報に開示
されている。
【0008】また、米国特許第3028300号公報に
おいても、PVP−Iに関して記載されている。
【0009】なお、PVP以外に、ヨードホール用のヨ
ウ素担体としては、ポリエーテルグリコール、ポリビニ
ルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリオキ
シアルキレン等が挙げられるが、いずれもPVPの代替
になりうるほどの性能は有しておらず、ごく限られた用
途分野で利用されるに留まっている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】キトサンは、酢酸、乳
酸、グルタミン酸等の有機酸;希薄な無機酸等には溶解
するが、水、アルカリ、有機溶媒等に不溶であり、また
殺菌活性も低いため、殺菌剤としてあまり利用されてい
ない。ヨウ素とキトサンの複合体も同様に水に不溶であ
るが、水中で殺菌活性の高いヨウ素を徐放する性質があ
り、ヨウ素徐放タイプの殺菌剤として用いることが可能
である。しかしながら、水溶性が不十分なため、実用化
されていない。
【0011】キトサンに水溶性を付与したアルキルアン
モニウム化キトサンは、水溶性が高く従来のキトサンの
性質を溶液状で発揮させることが可能あり、凝集剤、イ
オン交換剤、分離膜、製剤素材等としての有用性は高い
が、殺菌剤として利用するにあたっては、キトサンと同
様に殺菌力が低いため、価格の面からも実用化されてい
ない。
【0012】一方、従来から汎用されているヨード系殺
菌剤であるPVP−Iは低刺激性、低揮発性で安全性が
高く、水溶性も高いため、医療分野のみならず、食品加
工、一般環境殺菌分野など多方面で利用されている。
【0013】しかしながら、PVP−Iの製造において
は、粉末状PVP及びヨウ素を、長時間の間、90〜9
5℃というような高温で混合する必要があった。また、
有効成分であるヨウ素は、低濃度で即効殺菌性を示す
が、殺菌力の持続性が不足する場合があり、また、有機
物等が多量に存在するとヨウ素が失活するため、十分な
殺菌性が確保できない場合もあった。更に、ヨウ素の担
体であるPVPは生分解性がなく、環境中に分解せずに
残留してしまうことも懸念される。
【0014】以上の様な状況に鑑み、本発明において
は、PVP−Iと同等以上の即効殺菌性能を有し、温和
な条件で製造でき、持続殺菌性を有し、有機物の存在下
においても機能し、環境に優しいヨードホールを提供す
ることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明によれば、アルキルアンモニウムキトサン及び
ヨウ素からなる複合体が提供される。
【0016】また本発明によれば、アルキルアンモニウ
ムキトサン及びヨウ素を含んでなり、該アルキルアンモ
ニウムキトサン及び該ヨウ素は実質的に複合体を形成し
ていることを特徴とするヨードホールが提供される。
【0017】なお、本発明において、ヨードホールと
は、ヨウ素およびヨウ素担体の複合体より主になるもの
を意味する。この様なヨードホールは、固体状および液
体状の殺菌性組成物(ヨードホール製剤とも記載する)
として、殺菌を目的に好適に使用される。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明のヨードホールは、アルキ
ルアンモニウムキトサン−ヨウ素複合体よりなり、殺菌
性等の機能を発現する活性ヨウ素は、キトサン骨格中の
アルキルアンモニウムの対アニオンとしてではなく、ま
た単なる混合状態としてではなく、ヨウ素の担体である
アルキルアンモニウムキトサンに安定に固定されている
と考えられる。このため、本発明のヨードホールは、以
下の様な特性を有する。
【0019】(ア)活性ヨウ素はアルキルアンモニウム
キトサンに安定に固定化されているため、通常の保存状
態において、活性ヨウ素は実質的に揮発および変性せ
ず、貯蔵安定性に優れている。なお、実質的に揮発しな
いとは、ヨウ化カリウム−デンプン含浸試験紙が変色せ
ず、ヨウ素臭がしないことを意味しており、これらの特
性をもって、アルキルアンモニウムキトサン及びヨウ素
が実質的に複合体を形成していると考えられる。
【0020】なお、アルキルアンモニウムキトサン及び
ヨウ素が安定な複合体を形成する理由は明らかではない
が、キトサン骨格のアルキルアンモニウム基と活性ヨウ
素(I2及びI3 -等)とが強く相互作用し、錯体等を形
成しているためだと推察している。
【0021】(イ)ヨウ素の担体としてアルキルアンモ
ニウムキトサンを使用しているため、従来のキトサンを
担体とするヨードホールと比較して、高い溶解性を有す
る。このため、用途分野の自由度が高い。
【0022】(ウ)活性ヨウ素は強力な殺菌性を有する
ため、低濃度の場合においても十分な抗菌即効性が実現
できる。しかしながら、ヨウ素は不純物等と急速に反応
し、短時間で失活する。また、有機物存在下では有機物
と反応して失活するため、十分な殺菌作用を実現できな
い場合もある。特に、ヨードホールを殺菌剤として使用
する場合には、菌の増殖に必要な栄養素等の有機物が存
在している場合があり、ヨウ素単独では、十分な殺菌作
用を示さない場合がある。
【0023】これに対し、ヨウ素担体であるアルキルア
ンモニウムキトサンは、ヨウ素の様な強い殺菌作用を示
さないものの、持続的な殺菌性有する。また、この殺菌
性は有機物により阻害されない。
【0024】このため、アルキルアンモニウムキトサン
−ヨウ素複合体を有効成分とする殺菌性組成物は、ヨウ
素に由来する殺菌即効性と、アルキルアンモニウムキト
サンに由来する殺菌持続性との両者を有し、有機物存在
下においても有効である。
【0025】(エ)PVP−Iと比較して、低温でアル
キルアンモニウムキトサン−ヨウ素複合体を製造するこ
とができる。即ち、PVP−Iの製造は、90〜95℃
と高温で行われるのに対し、アルキルアンモニウムキト
サン−ヨウ素複合体は室温においても製造可能である。
この様な低温製造が可能な理由は明らかではないが、キ
トサン骨格のアルキルアンモニウム基と活性ヨウ素(I
2及びI3 -等)とが強く相互作用し、錯体等を形成する
ためだと推察している。
【0026】このため、製造工程において、アルキルア
ンモニウムキトサンの骨格が熱劣化する等の不具合が抑
制され、高品位のヨードホールを製造することができ
る。また、製造に際して加熱装置等を必要としないた
め、経済性および工程制御性に優れる。
【0027】具体的には、キトサンのアミノ基をアルキ
ルアンモニウム塩として、アルキルアンモニウムキトサ
ンを合成する第1工程と、得られたアルキルアンモニウ
ムキトサン及びヨウ素を粉体混合しながらヨウ素を気化
させ、アルキルアンモニウムキトサン及びヨウ素を反応
させてアルキルアンモニウムキトサン及びヨウ素の複合
体を形成する第2工程と、を含む方法により、アルキル
アンモニウムキトサン−ヨウ素複合体を製造することが
できる。
【0028】この様にして製造されたアルキルアンモニ
ウムキトサン−ヨウ素複合体は、例えば、殺菌等を目的
とするヨードホール等として、好適に使用される。
【0029】さて、第1工程のアルキルアンモニウムキ
トサンの合成は、例えば、A.Damard、M.Ri
naudo及びC.Terrassin著、Int.
J.Biol.Macromol.誌、第8巻、第10
5頁(1986年刊)に記載される方法により行うこと
ができる。
【0030】例えば、キトサンをアルコール水溶液中に
懸濁させ、これにヨウ化アルキルを滴下し加熱して反応
させる。この反応液をアセトン中に投入して析出する粗
結晶を濾取しアセトン洗浄した後、これを水への再溶解
し、アセトン析出を数回繰り返して精製し、真空乾燥し
て、N,N,N−トリアルキルアンモニウムキトサンア
イオダイド等が得られる。
【0031】なお、アルキルアンモニウムキトサンのア
ルキル基は、ヨウ化アルキルがキトサンのアミノ基と十
分な反応性を有する、活性ヨウ素の固定化能が高い等の
理由により、メチル基、エチル基またはプロピル基が好
ましい。
【0032】この段階で、アルキルアンモニウムキトサ
ンの対アニオンはヨウ化物イオンであるが、良好な再結
晶性を実現する等の必要に応じて、アルキルアンモニウ
ムキトサンの対アニオンを所望のイオンに交換する場合
もある。
【0033】対アニオンとしては、良好な生産性、活性
ヨウ素の固定化能等の観点から、塩化物イオン、臭化物
イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン又は炭酸イオンが
好ましい。
【0034】対イオンが塩化物イオン又は臭化物イオン
のアルキルアンモニウム化キトサンを得る際には、キト
サン及びヨウ化アルキルの反応液をアセトン中に投入し
て析出するN,N,N−トリアルキルアンモニウムキト
サンアイオダイドの粗結晶を濾取したのち、水に再溶解
し、これに塩化ナトリウム又は臭化ナトリウムを溶解
し、対イオンを塩化物イオン又は臭化物イオンにイオン
交換する。
【0035】次いで、必要に応じて、N,N,N−トリ
アルキルアンモニウムキトサンアイオダイドの精製の場
合と同様の操作を行い、N,N,N−トリアルキルアン
モニウムキトサンクロライド又はN,N,N−トリアル
キルアンモニウムキトサンブロマイドを得ることができ
る。
【0036】アルキルアンモニウムキトサン及びヨウ素
の複合体は、アルキルアンモニウムキトサン及びヨウ素
を密閉容器に入れ混合することにより得られる。混合の
経過に伴い、ヨウ素が徐々に気化し、アルキルアンモニ
ウムキトサン及びヨウ素の複合体形成が進行する。
【0037】混合に使用される密閉容器を具備する装置
としては、ボールミル及びヘンシェルミキサー等を使用
することができる。
【0038】なお、ヨウ素ガスの漏出を防ぎ、アルキル
アンモニウムキトサン−ヨウ素複合合体形成を定量的に
進行させるために、密閉性に優れる容器を使用する必要
がある。
【0039】また、容器の内壁はヨウ素等により腐食等
の劣化を起こさない材質である必要があり、ガラス、磁
器等が好ましい。
【0040】反応温度は、十分な複合化を実現するため
に、10℃以上が好ましく、15℃以上がより好まし
い。一方、反応温度の上限については、既に記載した通
り低温とすることができ、特に制限はない。しかしなが
ら、経済性および工程制御性等の観点から、45℃以下
が好ましく、40℃以下がより好ましく、35℃以下が
更に好ましい。
【0041】なお、反応温度が高い程、反応時間を短縮
することができる。具体的には、反応温度が室温程度の
場合で、反応時間は5時間以上40時間以下とすること
ができる。また、アルキルアンモニウムキトサンに対
し、1〜10質量%の水を噴霧したものを用いることに
よっても、反応時間を短縮できる。
【0042】上記方法により有効ヨウ素含有量がヨード
ホール全体の30質量%以下のアルキルアンモニウムキ
トサン−ヨウ素複合体を調製できるが、殺菌性組成物と
して利用するに当たっては、安定性、水溶性、コストの
面から15質量%以下がより好ましい。一方、同様の理
由から、含有量の下限は0.1質量%以上が好ましく、
1質量%以上がより好ましい。
【0043】具体的には、有効ヨウ素含有量が0.1質
量%以上であれば、ヨウ素の安定な保持に関与しないア
ルキルアンモニウムキトサンの比率を低減することがで
き、低コスト化を実現できる。一方、30質量%以下で
あれば、アルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素複合体
中のヨウ素を安定化できる。また、これを液状の殺菌性
組成物として利用する際に、良好な溶解性を実現でき
る。
【0044】なお、有効ヨウ素含有量は、チオ硫酸ナト
リウムによる滴定分析法により定量化できる。具体的に
は、濃度既知のチオ硫酸ナトリウム水溶液を試料水溶液
に滴下する。試料水溶液はヨウ素を含有しているため、
滴定前の時点では茶褐色であるが、滴定の進行に伴い、
淡黄色へと変色する。この段階で、終点検出用の指示薬
として、デンプン溶液を添加し、試料水溶液を紫色とす
る。その後、滴定を続行し、試料水溶液が無色となる時
点を終点とし、終点までに添加したチオ硫酸ナトリウム
の総量より、有効ヨウ素含有量を算出できる。
【0045】アルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素複
合体を殺菌用途で利用するにあたっては、本発明のヨー
ドホールと適当な媒体とを含んでなる殺菌性組成物(ヨ
ードホール製剤)とすることが好ましい。
【0046】ヨードホール製剤の形態は特に制限されな
いが、例えば以下の様な形態で使用される。
【0047】第1に、ヨードホールが液体媒体に溶解さ
れてなる液体状のヨードホール製剤を例示できる。
【0048】なお、液体媒体としては、ヨードホール、
アルキルアンモニウムキトサン及びヨウ素の良好な溶解
性を確保するために、水、エタノール、メタノール又は
イソプロピルアルコールが好ましく、必要に応じてこれ
らの混合溶媒を用いることもできる。
【0049】これらの溶媒中で有効ヨウ素が1質量%程
度となるよう濃厚な殺菌性組成物の原液を調製し、これ
を50倍〜1000倍に希釈して殺菌に使用することが
一般的である。なお、アルキルアンモニウムキトサン−
ヨウ素複合体は、高濃度な原液中においては、たとえ溶
媒中においてもアルキルアンモニウムキトサンと活性ヨ
ウ素とが実質的に解離せず、安定な複合体を形成してお
り貯蔵安定性に優れる。一方、希釈後は有効ヨウ素が遊
離し、殺菌性が発現される。
【0050】また、濃厚な殺菌性組成物(原液)を調製
することなく、有効ヨウ素が10〜100質量ppm程
度になるように、アルキルアンモニウムキトサン−ヨウ
素複合体を溶媒に直接溶解させ、殺菌剤として使用する
こともできる。
【0051】第2のヨードホール製剤の形態として、ヨ
ードホールが固体媒体中に存在している固形状の殺菌性
組成物を挙げることができる。
【0052】具体的には、ヨードホールと樹脂等のマト
リックスとを混合する、ヨードホールを樹脂等のマトリ
ックスに混練分散する、ヨードホール溶液を樹脂等のマ
トリックスに含浸する等により固体状のヨードホール製
剤を作製することができる。
【0053】例えば、アルキルアンモニウムキトサン−
ヨウ素複合体を、水に対して不溶あるいは難溶性の固体
媒体中に分散させ、得られた混合物を成形し、この成形
物を、微生物等が存在する水中に浸漬させて、殺菌剤と
して使用することもできる。この場合、アルキルアンモ
ニウムキトサン−ヨウ素複合体が徐々に溶解する、ヨウ
素徐放タイプの殺菌性組成物として利用することができ
る。配合するアルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素複
合体の割合はヨウ素放出速度に合わせ任意に設定する。
【0054】第3には、アルキルアンモニウムキトサン
及びヨウ素が液体媒体に溶解された液体状のヨードホー
ル製剤を例示できる。
【0055】即ち、ヨウ素およびアルキルアンモニウム
キトサンの各々を溶媒に溶解してなる殺菌性組成物を、
アルキルアンモニウムキトサンを水等の溶媒に溶解し、
この溶液にヨウ素を添加して溶解することで容易に調製
することができる。
【0056】また、ヨウ素の溶解性を促進するためにヨ
ウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等のヨウ化アルカリを
添加しても良く、それらを添加しても組成物中でのヨウ
素の保持特性は低下しない。
【0057】こうして得られるアルキルアンモニウムキ
トサン−ヨウ素複合体あるいは複合体構成成分であるヨ
ウ素とアルキルアンモニウムキトサンを含有してなる殺
菌性組成物中において、ヨウ素の安定性、組成物の扱い
易さから、有効ヨウ素含有量は、殺菌性組成物の0.0
01質量%以上が好ましい。一方上限としては、同様の
理由から10質量%以下が好ましく、特に水等の溶媒に
含有させる場合においては5質量%以下がより好まし
い。
【0058】また、アルキルアンモニウムキトサンの含
有量については、上記と同様の理由から、殺菌性組成物
の0.01質量%以上が好ましい。一方、上限として
は、30質量%以下が好ましく、特に水等の溶媒に含有
させる場合においては15質量%以下が好ましい。
【0059】また、同様の理由から、殺菌性組成物中の
有効ヨウ素含有量に対するアルキルアンモニウムキトサ
ン含有量が3質量倍以上100質量倍以下となるよう調
製することが好ましい。
【0060】各成分の含有量または組成比が上記の上限
以下であれば、組成物の粘性が増大したり、保存中に不
溶物が析出し、安定性、取り扱い性が悪くなる等の不具
合が抑制される。また、上記の下限以上であれば、アル
キルアンモニウムキトサンおよびヨウ素成分が強固な複
合体を形成し、ヨードホールとして良好な性能を実現で
きる。
【0061】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明する。なお、特に断りのない限り、%は質量基準であ
り、試薬は市販の高純度品を使用した。
【0062】(製造例1)先ず、アルキルアンモニウム
キトサンを以下の様に製造した。
【0063】キトサン(加ト吉製 キトサン10B)1
0.0gを40%メタノール水溶液1000mlに添加
し、50℃に加熱しながら攪拌して分散させた。この分
散液にヨウ化メチル40mlを滴下し、窒素気流中で5
0℃に加熱して48時間攪拌して反応させた。この反応
液をアセトン5000ml中に滴下して析出する粗結晶
を減圧濾過して取り出した。この粗結晶を純水500m
lに再溶解し、次いで塩化ナトリウム29.0gを溶解
し、室温で1時間攪拌して、対イオンのヨウ化物イオン
を塩化物イオンに変換した。この反応液をアセトン50
00ml中に滴下して晶析させ、減圧濾過して粗結晶中
を取り出し不純物の除去を行った。この精製操作をもう
1サイクル行った。精製された結晶を凍結乾燥により乾
燥してアルキルアンモニウムキトサンクロライド9.3
gを得た。
【0064】(実施例1)次に、アルキルアンモニウム
キトサンを用いて、アルキルアンモニウムキトサン−ヨ
ウ素複合体を製造した。
【0065】製造例1で得られたアルキルアンモニウム
キトサンクロライド9.0gとヨウ素2.3gとを30
0mlボールミルに入れ、これに20mm径のアルミナ
ボール20個を入れて密閉し、室温で36時間混合し、
褐色のアルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素複合体1
0.6gを得た。この複合体を水に溶解したのちチオ硫
酸ナトリウム水溶液で滴定分析して複合体中の有効ヨウ
素含有量を測定したところ、13.5%であった。
【0066】(分析例1)製造例1で使用したキトサン
と、製造例1で得られたアルキルアンモニウムキトサン
クロライドと、実施例1で得られたアルキルアンモニウ
ムキトサン−ヨウ素複合体とを、それぞれIR及び固体
13C−NMRにより分析した。得られた結果を、図1及
び表1に示した。
【0067】図1より、アルキルアンモニウムキトサン
−ヨウ素複合体およびアルキルアンモニウムキトサンク
ロライドには、キトサンのアミノ基に導入されたメチル
基の炭素に由来する新たなピークが生じており、アルキ
ルアンモニウム化の進行が確認できた。また、アルキル
アンモニウムキトサン−ヨウ素複合体およびアルキルア
ンモニウムキトサンクロライドのピーク形状が同じであ
ることから、上記の製造方法によりキトサン骨格の劣化
等は生じていないことが確認された。
【0068】また、表1より、アルキルアンモニウムキ
トサン−ヨウ素複合体およびアルキルアンモニウムキト
サンクロライドには、キトサンのアミノ基に導入された
メチル基に由来するピークの変化が生じており、アルキ
ルアンモニウム化の進行が確認できた。また、アルキル
アンモニウムキトサン−ヨウ素複合体およびアルキルア
ンモニウムキトサンクロライドのピーク形状が同じであ
ることから、上記の製造方法によりキトサン骨格の劣化
等は生じていないことが確認された。
【0069】
【表1】
【0070】(比較例1)アルキルアンモニウムキトサ
ンクロライドに代えてポリビニルピロリドン(重量平均
分子量:40000)を用いた以外は実施例1と同様の
方法で、ポリビニルピロリドン−ヨウ素複合体(PVP
−I複合体とも記載する)10.7g得た。複合体中の
有効ヨウ素含有量を測定したところ、17.0%であっ
た。
【0071】(試験例1)実施例1で調製したアルキル
アンモニウムキトサン−ヨウ素複合体と、比較例1で調
製したPVP−I複合体と、原料であるアルキルアンモ
ニウムキトサンクロライドとを用いて以下の試験を行
い、実施例1で製造されたものが単なる混合物ではなく
複合体であることを確認した。また、併せてヨードホー
ルとして用いる際の適性を評価した。
【0072】(ヨウ素揮発性試験)アルキルアンモニウ
ムキトサン−ヨウ素複合体2gと、PVP−I複合体2
gとを、それぞれ20mlのスクリュー管に入れて、こ
の中にヨウ化カリウム−デンプン含浸試験紙をサンプル
と接触しない様に挿入し、瓶および蓋で挟み込んで固定
した。これを室内暗所で1日間放置した後、試験紙の変
色と、蓋を開けた時のヨウ素臭の有無とから、ヨウ素の
揮発性を評価した。
【0073】得られた結果を表2に示した。表2より明
らかな通り、アルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素複
合体の場合に付いては、ヨウ素による試験紙の変色、及
びヨウ素臭が認められず、ヨウ素が全く揮発していない
ことが確認された。このことから複合体中のヨウ素が単
なる混合状態で存在しているのではなく、アルキルアン
モニウムキトサンと完全に複合体を形成していることが
わかる。
【0074】一方、アルキルアンモニウムキトサン−ヨ
ウ素複合体と同一条件で調製したPVP−Iの場合は、
PVPとヨウ素とが完全な複合体を形成せず、一部の遊
離ヨウ素が混在した状態であり、ヨウ素揮発による試験
紙の着色、及びヨウ素臭が認められた。
【0075】
【表2】
【0076】(保存安定性試験)アルキルアンモニウム
キトサン−ヨウ素複合体3gと、PVP−I複合体3g
とを、それぞれスクリュービンに入れ、40℃で30日
間保存し、複合体中の有効ヨウ素含有量を測定し、保存
安定性を評価した。
【0077】複合体中の有効ヨウ素含有量は、保存前後
のサンプルを水に溶解し、その溶液中の有効ヨウ素をチ
オ硫酸ナトリウム水溶液を用いて滴定分析し、複合体中
の有効ヨウ素含有量を算出して評価した。
【0078】得られた結果を表3に示した。表3より明
らかな通り、アルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素複
合体については、保存中に有効ヨウ素が失活することは
なく、非常に安定であったが、PVP−Iについては、
有効ヨウ素の損失が認められた。
【0079】供試したPVP−Iは比較のためアルキル
アンモニウムキトサン−ヨウ素複合体と同一条件で製造
したものである。加熱せずに室温下で混合しているた
め、PVPとヨウ素との複合体化が低温では進行しにく
く、上の試験で示したように複合体化しないヨウ素が遊
離した状態で混在しており、このため、40℃での保存
安定性試験を実施している間にI2からI-への転換が起
こり、ヨウ素とPVPとの複合体化が進んだものと考え
られる。
【0080】以上より、低温で製造したPVP−Iは完
全な複合体を形成していないにも関わらず、低温で製造
したアルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素は、実質的
に複合体を形成しており、ヨウ素の揮発は実質的にな
く、保存安定性にも優れることが分かった。
【0081】
【表3】
【0082】(溶解性試験)アルキルアンモニウムキト
サン−ヨウ素複合体と、アルキルアンモニウムキトサン
−ヨウ素複合体の原料であるアルキルアンモニウムキト
サンクロライドとの25℃での水に対する溶解度を測定
した。この結果、各々10%程度の溶解性を示すことが
確認された。
【0083】即ち、アルキルアンモニウムキトサンにヨ
ウ素を付加させても溶解度が著しく低下することはない
ことが分かった。また、10%アルキルアンモニウムキ
トサン−ヨウ素複合体水溶液を0.31%になるまで2
倍希釈の操作を重ねたが、途中でヨウ素が析出すること
はなく、10%以下の濃度であれば任意の濃度の水溶液
が調製可能であることを確認した。
【0084】以上の試験に示したように、本発明のアル
キルアンモニウムキトサン−ヨウ素複合体については、
ヨウ素特有の揮発性が全く認められず、また、保存安定
性も高いことから、アルキルアンモニウムキトサンとヨ
ウ素が完全に複合体を形成し安定化していることが示さ
れ、単なる混合物ではないことが確認された。また、水
溶性も高く、ヨードホールとして用いるに当たって、取
扱い性が良好であることが確認された。
【0085】(実施例2)次に、以下の様にして、アル
キルアンモニウムキトサン−ヨウ素系殺菌性組成物を製
造した。即ち、50mlのネジ口三角フラスコに、実施
例1で得られたアルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素
複合体3.8gを入れ、これに蒸留水46.2gを添加
し、キャップをして室温下で撹拌して溶解させ、殺菌性
組成物を得た。この溶液中の有効ヨウ素濃度を測定した
ところ1.01%であった。
【0086】また、アルキルアンモニウムキトサンの殺
菌性組成物に対する含有量は、6.57質量%であり、
有効ヨウ素含有量の6.5質量倍であった。
【0087】(実施例3)また、他の方法により、アル
キルアンモニウムキトサン−ヨウ素系殺菌性組成物を製
造した。即ち、100mlのネジ口三角フラスコに、ア
ルキルアンモニウムキトサンクロライド3.3gを入
れ、これに蒸留水45.9gを添加後、ヨウ素0.50
g及びヨウ化カリウム0.34gを撹拌しながら添加
し、キャップをして室温下で撹拌を継続して溶解させ、
殺菌性組成物を得た。この溶液中の有効ヨウ素濃度をチ
オ硫酸ナトリウムで直接滴定して測定したところ0.9
8%であった。
【0088】また、アルキルアンモニウムキトサンの殺
菌性組成物に対する含有量は6.60質量%であり、有
効ヨウ素含有量の6.7質量倍であった。
【0089】(比較例2)比較のために、PVP−I系
殺菌性組成物を製造した。即ち、50mlのネジ口三角
フラスコにポリビニルピロリドン(重量平均分子量:4
0000)3.3gを入れ、これに蒸留水44.2gを
添加後、ヨウ素0.50g及びヨウ化カリウム0.34
gを撹拌しながら添加し、室温下で撹拌して溶解させ、
PVP−I系殺菌性組成物を得た。
【0090】この溶液中の有効ヨウ素濃度をチオ硫酸ナ
トリウムで滴定して測定したところ0.98%であっ
た。
【0091】(比較例3)比較のために、ヨウ素−ヨウ
化ナトリウム水溶液を調製した。即ち、100mlの三
角フラスコにヨウ素0.50g及びヨウ化ナトリウム
0.69gを入れ、これに蒸留水48.8gを添加し室
温下で撹拌して溶解させ、ヨウ素−ヨウ化ナトリウム水
溶液を得た。このヨウ素−ヨウ化ナトリウム水溶液中の
有効ヨウ素濃度をチオ硫酸ナトリウムで直接滴定して測
定したところ1.00%であった。
【0092】(比較例4)比較のため、アルキルアンモ
ニウムキトサンクロライド水溶液を調製した。即ち、1
00mlのネジ口三角フラスコに蒸留水46.7gを入
れ、これにアルキルアンモニウムキトサンクロライド
3.3gを撹拌しながら添加し、室温下で撹拌を継続し
て溶解させ、アルキルアンモニウムキトサンクロライド
水溶液を得た。
【0093】(試験例2)実施例2及び3で調製した殺
菌性組成物のヨードホールとしての性能について、以下
の試験を行って評価した。
【0094】(保存安定性試験)実施例2で調製したア
ルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素系殺菌性組成物の
溶液と、比較例2で調製したPVP−I系殺菌性組成物
の溶液とを、それぞれガラス製容器に入れて密栓し、4
0℃の恒温器内で30日間保存後、含有する有効ヨウ素
濃度の残存率を測定した。また、併せて不溶物析出の有
無、液性変化の観察を行い、ヨウ素の安定性を評価し
た。
【0095】得られた結果を表4に示した。表4より明
らかな通り、アルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素系
殺菌性組成物の保存安定性は、PVP−I系殺菌性組成
物の保存安定性と同程度に良好であることが分かった。
【0096】
【表4】
【0097】(ヘプタン−水分配係数によるヨウ素の安
定性評価)液体ヨードホール中のヨウ素のヘプタン−水
相への分配係数を測定して、ヨードホール中のヨウ素の
安定性を評価した。即ち、実施例2及び3で調製したア
ルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素系殺菌性組成物
と、比較例3で調製したヨウ素−ヨウ化ナトリウム水溶
液とについて、ヨウ素の安定性を評価した。
【0098】具体的には、100mlの分液ロートに2
5℃のヘプタン25mlを入れ、この中にヨードホール
1mlを添加して1分間激しく撹拌し、ヨードホール中
のヨウ素をヘプタン相とヨードホール相に分配平衡させ
た後、直ちに25℃の恒温槽内に入れて3分間静置し
た。その後、ヘプタン相をガラスセルに取り、分光光度
計で520nmにおける吸光度を測定し、あらかじめヘ
プタン中のヨウ素濃度と吸光度の相関から作成しておい
た検量線を用いて、平衡時のヘプタン相中のヨウ素濃度
を算出した。
【0099】また、あらかじめ供試ヨードホール中の有
効ヨウ素濃度を測定しておき、ヘプタン相へ移動したヨ
ウ素量を差し引いて、平衡時のヨードホール相中の有効
ヨウ素濃度を算出した。平衡時のヘプタン相およびヨー
ドホール相(水相)中のヨウ素濃度から、以下の式
(1)に基づき分配係数を算出した; 分配係数 = ヨードホール相中のヨウ素濃度(mg/ml) /ヘプタン相中のヨウ素濃度(mg/ml) (1)。
【0100】なお、分配係数はヨードホール中における
ヨウ素とヨウ素担体との結合性の強さを評価する指標で
あり、この数値が大きいほどヨウ素は揮発しにくいこと
を示している。
【0101】得られた結果を表5に示した。表5より明
らかな通り、ヨウ素−ヨウ化ナトリウム水溶液はヨウ素
担体を含まないため、ヨウ素を水相に留めておく作用が
ほとんどなく、分配係数は2と極端に低い値を示した。
【0102】これに対し、実施例2及び3で得られたア
ルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素系組成物では、分
配係数がそれぞれ38及び42であり、組成物中にアル
キルアンモニウムキトサンが存在することにより、水相
でのヨウ素の留まり易さが約20倍に向上していること
が分かった。
【0103】
【表5】
【0104】(ヨウ素揮発性試験)実施例2で調製した
アルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素系殺菌性組成物
の溶液30mlと、比較例2で調製したPVP−I系殺
菌組成物の溶液30mlと、比較例3で調製したヨウ素
−ヨウ化ナトリウム水溶液30mlとを、それぞれ50
mlのビーカーに入れ、室温下で蓋をせずに24時間ス
ターラーで撹拌し、一定時間経過する毎に溶液中の有効
ヨウ素濃度を測定して、溶液からのヨウ素揮発性を評価
した。
【0105】得られた結果を表6に示した。表6より明
らかな通り、分配係数が2であるヨウ素−ヨウ化ナトリ
ウム水溶液は、経時で著しくヨウ素濃度が低下し、ヨウ
素が揮発し易いことが分かった。一方、分配係数が38
のアルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素系殺菌性組成
物については、PVP−I系殺菌性組成物の場合と同様
に、ヨウ素濃度の低下は確認されなかった。なお、経時
により有効ヨウ素濃度が僅かに増大しているのは、水分
の蒸発によるものと考えている。
【0106】
【表6】
【0107】(殺菌即効性の評価)実施例2で調製した
アルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素系殺菌性組成物
と、比較例2で調製したPVP−I系殺菌性組成物と、
比較例3で調製したヨウ素−ヨウ化ナトリウム水溶液
と、比較例4で調製したアルキルアンモニウムキトサン
クロライド水溶液とを用いて、以下の方法により、バク
テリアに対する殺菌即効性を評価した。
【0108】表7に示す供試菌株をブイヨン培地に接種
し37℃で24時間培養した菌液を、生理食塩水で1×
106細胞数/mlに希釈したものを供試菌液とした。
次に、上記殺菌性組成物を滅菌水で100倍、200
倍、400倍に希釈した希釈液10mlに、供試菌液
0.1mlを添加して素早く攪拌し、20℃の水浴に浸
して振盪した。その後、1、2及び5分経過毎に0.1
mlを採取して、ブイヨン寒天培地に接種し、37℃で
24時間培養して生育の有無を観察して、殺菌性を評価
した。
【0109】なお、この様な方法によれば、採取時間が
5分以下と短いため、殺菌力の即効性を評価しているこ
とになる。
【0110】得られた結果を、生育が認められたものに
ついては「+」、生育が阻止されたものについては
「−」として、表8に示した。表8より明らかな通り、
アルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素系組成物を実用
濃度に希釈し殺菌剤として使用する場合、ヨウ素特有の
殺菌作用により、PVP−1及びヨウ素−ヨウ化ナトリ
ウム水溶液と同等の殺菌即効性が実現できることが分か
った。
【0111】また、アルキルアンモニウムキトサンクロ
ライド水溶液には殺菌即効性がないことから、ヨウ素担
体であるアルキルアンモニウムキトサンには殺菌即効性
がないことが分かった。
【0112】
【表7】
【0113】
【表8】
【0114】(抗菌持続性の評価)実施例2で調製した
アルキルアンモニウムキトサン−ヨウ素系殺菌性組成物
と、比較例2で調製したPVP−I系殺菌性組成物と、
比較例3で調製したヨウ素−ヨウ化ナトリウム水溶液
と、比較例4で調製したアルキルアンモニウムキトサン
クロライド水溶液とを用いて、以下の方法で有機物存在
下でのバクテリアに対する抗菌持続性を評価した。
【0115】表7に示すE.coliをブイヨン培地に
接種し37℃で24時間培養した菌液を、生理食塩水で
1×106細胞数/mlに希釈したものを供試菌液とし
た。次に、抗菌即効性試験で供試した殺菌性組成物をブ
イヨン培地で100倍に希釈して有機物含有希釈液10
0mlを調製した。そして、この有機物含有希釈液に、
供試菌液1.0mlを添加して素早く攪拌し、30℃の
水浴に浸して振盪培養した。その後、2、4及び6時間
経過毎に培養液を採取し、波長660nmにおける濁度
を測定し、微生物繁殖による濁度増大傾向から抗菌性を
評価した。なお、評価の信頼性を確保するために、殺菌
性組成物を添加しない場合についても培養を行った。
【0116】なお、この様な方法によれば、採取時間が
6時間と長いため、抗菌力の持続性を評価していること
になる。また、有機物含有希釈液を使用しているため、
有機物が多量に存在する場合の抗菌力を評価しているこ
とにもなる。
【0117】得られた結果を表9に示した。表9より明
らかな通り、PVP−I系組成物およびヨウ素−ヨウ化
ナトリウム水溶液添加系の場合、殺菌性組成物を添加し
なかった場合と同程度の濁度増加が見られ、菌の繁殖が
確認された。一方、アルキルアンモニウムキトサン−ヨ
ウ素系組成物およびアルキルアンモニウムキトサンクロ
ライド水溶液添加系の場合、濁度増加は見られず、菌の
増殖が抑制された。
【0118】これより、ヨウ素は低濃度でも有効な殺菌
性を示すが、短時間で失活する場合があることが分かっ
た。また、有機物存在下では、有機物と反応して失活す
るため、十分な殺菌作用を示さない場合があることも分
かった。
【0119】一方、アルキルアンモニウムキトサンクロ
ライドの場合には、増殖抑制効果が確認されたことか
ら、ヨウ素担体であるアルキルアンモニウムキトサン
は、ヨウ素のような強い殺菌作用を示さないものの、持
続的な抗菌性有することが分かった。
【0120】以上より、アルキルアンモニウムキトサン
−ヨウ素系組成物は、ヨウ素に由来する殺菌即効性と、
アルキルアンモニウムキトサンに由来する抗菌持続性と
の両者を有していることが分かった。
【0121】また、ヨウ素の担体に抗菌性のあるアルキ
ルアンモニウムキトサンを用いることにより、ヨウ素に
よる殺菌即効性が期待できない有機物が存在する系にお
いてもアルキルアンモニウムキトサンの抗菌作用によ
り、長期にわたり菌の増殖を抑制する効果があり、今ま
でのヨードホールと比較しても非常に有用性の高いこと
が分かった。
【0122】
【表9】
【0123】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明のアルキ
ルアンモニウムキトサン−ヨウ素複合体は、アルキルア
ンモニウムキトサンとヨウ素を密閉容器内で室温にて混
合するのみで製造できる安定な複合体であり、この複合
体を殺菌用途に用いるにあたっては、固体状のヨードホ
ール製剤として用いることは元より、液体状のヨードホ
ール製剤として用いるにあたっても、水溶性が高い、保
存安定性が良い、ヨウ素が揮発しないため腐食性、刺激
性示さない等といったヨードホール製剤として必要な基
本特性を満足する。
【0124】また、優れた抗菌特性を持つことから、広
範に使用されているPVP−I系ヨードホールと同等以
上の性能を有する殺菌性組成物となりうるものである。
【0125】更に、ヨウ素の担体であるアルキルアンモ
ニウムキトサンは天然物由来の誘導体であり生分解性が
あるので、本発明のアルキルアンモニウムキトサン−ヨ
ウ素複合体は、環境にも優しいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルキルアンモニウムキトサン−ヨウ
素複合体のNMRチャートである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08K 3/02 C08K 3/02 C08L 5/08 C08L 5/08 Fターム(参考) 4C086 AA01 AA02 EA23 HA09 HA24 MA02 MA04 NA14 ZB35 4C090 AA09 BA47 BB53 BB62 BB66 DA23 4H011 BA01 BA06 BB02 BB18 BB19 BC03 BC18 DA13 DD01 DF02 DH10 4J002 AB051 DA006 FD186 GB01

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルキルアンモニウムキトサン及びヨウ
    素からなる複合体。
  2. 【請求項2】 アルキルアンモニウムキトサン及びヨウ
    素を含んでなり、該アルキルアンモニウムキトサン及び
    該ヨウ素は実質的に複合体を形成していることを特徴と
    するヨードホール。
  3. 【請求項3】 前記アルキルアンモニウムキトサンのア
    ルキル基は、メチル基、エチル基またはプロピル基であ
    ることを特徴とする請求項2記載のヨードホール。
  4. 【請求項4】 前記アルキルアンモニウムキトサンの対
    アニオンは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イ
    オン、硫酸イオン又は炭酸イオンであることを特徴とす
    る請求項2又は3記載のヨードホール。
  5. 【請求項5】 有効ヨウ素含有量は、ヨードホール全体
    に対して0.1質量%以上30質量%以下であることを
    特徴とする請求項2乃至4何れかに記載のヨードホー
    ル。
  6. 【請求項6】 キトサンのアミノ基をアルキルアンモニ
    ウム塩として、アルキルアンモニウムキトサンを合成す
    る第1工程と、該アルキルアンモニウムキトサン及びヨ
    ウ素を粉体混合しながら該ヨウ素を気化させ、アルキル
    アンモニウムキトサン及びヨウ素を反応させてアルキル
    アンモニウムキトサン及びヨウ素の複合体を形成する第
    2工程と、を含むことを特徴とするヨードホールの製造
    方法。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の第1工程と、前記アルキ
    ルアンモニウムキトサンの対アニオンを交換する工程
    と、請求項6記載の第2工程と、を含むことを特徴とす
    るヨードホールの製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項2乃至5何れかに記載のヨードホ
    ールと媒体とを含んでなることを特徴とする殺菌性組成
    物。
  9. 【請求項9】 請求項2乃至5何れかに記載のヨードホ
    ールが液体媒体に溶解していることを特徴とする殺菌性
    組成物。
  10. 【請求項10】 アルキルアンモニウムキトサン及びヨ
    ウ素が液体媒体に溶解していることを特徴とする殺菌性
    組成物。
  11. 【請求項11】 前記液体媒体は、水、エタノール、メ
    タノール及びイソプロピルアルコールからなる群より選
    ばれる1種以上であることを特徴とする請求項9又は1
    0記載の殺菌性組成物。
  12. 【請求項12】 請求項2乃至5何れかに記載のヨード
    ホールが固体媒体中に存在していることを特徴とする殺
    菌性組成物。
  13. 【請求項13】 有効ヨウ素含有量は、殺菌性組成物の
    全体に対して0.001質量%以上10質量%以下であ
    ることを特徴とする請求項8乃至12何れかに記載の殺
    菌性組成物。
  14. 【請求項14】 前記アルキルアンモニウムキトサンの
    含有量は、殺菌性組成物の全体に対して0.01質量%
    以上30質量%以下であることを特徴とする請求項8乃
    至13何れかに記載の殺菌性組成物。
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